添付一覧
○局所皮膚適用製剤(半固形製剤及び貼付剤)の処方変更のための生物学的同等性試験ガイドラインについて
(平成22年11月1日)
(薬食審査発1101第1号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)
医療用医薬品の申請に際し添付すべき生物学的同等性に関する資料のうち、医療用後発医薬品の新規承認申請に係るものについては、平成18年11月24日薬食審査発第1124004号審査管理課長通知により、当該資料の作成にあたって実施する試験のガイドライン(以下、「後発医薬品ガイドライン」という。)を示しているところである。今般、既承認の医療用医薬品たる局所皮膚適用製剤について、有効成分以外の成分及び分量を一部変更(以下、「処方変更」という。)するための申請に際し添付すべき生物学的同等性に関する資料の作成にあたって実施する試験のガイドラインを、平成17年3月31日薬食発第0331015号医薬食品局長通知(平成21年3月4日薬食発第0304004号医薬食品局長通知により改正。)の記の第2の3に規定する試験の指針として別添のとおりとりまとめたので、下記の事項に御留意の上、貴管下関係業者に対し周知方よろしく御配慮願いたい。
記
1 本ガイドラインの適用対象
臨床試験により有効性及び安全性が確認され承認された先発医薬品、及び後発医薬品ガイドラインに従って先発医薬品との同等性が確認され承認された後発医薬品のうち、局所皮膚適用製剤に係る処方変更のための承認申請にあっては、生物学的同等性に関する資料を別添「局所皮膚適用製剤(半固形製剤及び貼付剤)の処方変更のための生物学的同等性試験ガイドライン」に従って作成すること。
2 本ガイドラインの適用時期
本ガイドラインは1の適用対象について、平成22年11月1日以降に行われる医療用医薬品たる局所皮膚適用製剤に係る処方変更のための承認申請に適用すること。ただし、平成23年10月31日までは、なお、従前の例によることができること。
(別添)
局所皮膚適用製剤(半固形製剤及び貼付剤)の処方変更のための生物学的同等性試験ガイドライン
目次
第1章 緒言
第2章 用語
第3章 製剤の処方変更水準と要求される試験
1.製剤の処方変更水準
1) A水準
2) B水準
3) C水準
4) D水準
2.要求される試験
1) A水準
2) B水準
3) C水準
4) D水準
第4章 In vitro試験
1.放出試験
1) 試験回数
2) 試験時間
3) 試験条件
4) 放出した薬物量の補正
2.動物の皮膚を用いた透過試験
1) 試験回数
2) 試験時間
3) 試験条件
4) 透過した薬物量の補正
第5章 放出挙動および透過挙動の同等性の判定
1.放出試験
1) 平均放出率による判定
2.動物の皮膚を用いた透過試験
1) 平均透過率による判定
第1章 緒言
本ガイドラインは,局所皮膚適用製剤のうち,軟膏剤,クリーム剤,ゲル剤等の半固形製剤及び貼付剤について,有効成分以外の成分及び分量を承認後に一部変更(以下,「処方変更」という)する場合の生物学的同等性試験の実施方法の原則を示したものである.承認されている処方変更前の製剤と処方変更後の製剤との間の生物学的同等性を保証することを目的としている.臨床試験で有効性及び安全性が確認された,又は生物学的同等性試験により先発医薬品との同等性が確認された製剤からの処方変更の程度に応じて,異なる試験を実施する.
第2章 用語
本ガイドラインで使用する用語の意味を以下に示す.
基準処方:臨床試験で有効性及び安全性が確認された,又はヒトを対象とした生物学的同等性試験により先発医薬品との同等性が確認された製剤の処方.
標準製剤:原則として処方変更前の製剤3ロットについて,第4章に示した放出試験において平均10%以上放出する試験条件,又は,標準製剤の規格及び試験方法に放出試験が設定されている場合には当該試験条件で放出試験を行い,中間の放出性を示すロットの製剤を標準製剤とする.ただし,繰り返し数は6回以上とする.
放出試験が不適切な場合には,それに代わる製剤の特性に応じた適当な物理化学的試験を行い,中間の特性を示したロットの製剤を標準製剤とする.標準製剤の含量又は力価はなるべく表示量に近いものを用いる.また,試験製剤と標準製剤の間の含量又は力価の差は表示量の5%以内であることが望ましい.
試験製剤:処方変更後の製剤であって,実生産におけるロットサイズで製造された,又はその1/10以上の大きさのロットサイズで製造されたもの.なお,実生産ロットと同等性試験に用いるロットの製法は同じで,両者の品質及びバイオアベイラビリティは共に同等であるものとする.
薬物の放出率あるいは透過率が低い製剤:第4章に示すin vitro試験により標準製剤の試験を行うとき,24時間後の平均放出率が20%に達しない製剤あるいは24時間後の平均透過率が10%に達しない製剤.
第3章 製剤の処方変更水準と要求される試験
1.製剤の処方変更水準
製剤の処方変更の水準は,処方の変更幅が小さく,in vitro試験により処方変更前後における製剤特性が変化していないことを担保できると考えられる処方変更範囲としてAからCの3水準とし,それ以上の範囲での処方変更をD水準とする.
処方変更水準は,基準処方を基にして計算する.
1) A水準
処方変更が僅かであり,製剤特性が変化しないと考えられる処方変更である.
・微量記載成分のみの変更.
・処方成分内での配合量の増減による処方変更および処方成分からある添加剤を除いた,あるいは新しい添加剤を追加した場合も含み,配合率が0.1%以下の添加剤の変更.
・処方成分内での配合量の増減による処方変更で,変更した添加剤の個々の添加剤の相対的な変化率が±5%以内で,かつ変更した添加剤の含有率の差の絶対値の和が5%以下の変更.ただし,この変化率及び含有率には,微量記載成分および配合率が0.1%以下の添加剤の変更は含まない.
2) B水準
処方変更の程度が小さく,製剤特性がほとんど変化しないと考えられる処方変更である.
・処方成分内での配合量の増減による処方変更で,変更した添加剤の個々の添加剤の相対的な変化率が±5%を超え±30%以内で,かつ変更した添加剤の含有率の差の絶対値の和が30%以下の変更.ただし,この変化率及び含有率には,微量記載成分及び配合率が0.1%以下の添加剤の変更は含まない.
3) C水準
処方変更により,製剤特性が変化するおそれがあると考えられる処方変更である.
・処方成分からある添加剤を除いた,あるいは新しい添加剤を追加した場合も含み,その変更した添加剤の含有率の差の絶対値の和が30%以下の変更.ただし,この変化率及び含有率には,微量記載成分及び配合率が0.1%以下の添加剤の変更は含まない.
4) D水準
処方変更の程度が大きく,製剤特性が著しく変化すると考えられる処方変更である.
・上記以外の処方変更の場合は,D水準とする.
2.要求される試験
1) A水準
生物学的同等性試験に係る資料の提出を要しない.
2) B水準
第4章に示す放出試験を行う.第5章に示す判定基準により放出挙動が同等と判定されるとき,試験製剤と標準製剤は生物学的に同等とみなす.
放出試験結果から放出挙動が同等とみなされなかった場合には,「局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン」に従って生物学的同等性試験を行う.
3) C水準
第4章に示す動物の皮膚を用いた透過試験及び放出試験を行う.第5章に示す判定基準により透過挙動及び放出挙動が共に同等と判定されるとき,試験製剤と標準製剤は生物学的に同等とみなす.
透過試験及び放出試験結果から透過挙動及び放出挙動が同等とみなされなかった場合には,「局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン」に従って生物学的同等性試験を行う.
薬物の放出率あるいは透過率が低い製剤は,「局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン」にしたがって生物学的同等性試験を行う.
4) D水準
「局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン」に従って生物学的同等性試験を行う.
第4章 In vitro試験
本節では,局所皮膚適用製剤の製剤特性の評価方法として,1.放出試験及び2.動物の皮膚を用いた透過試験を示すが,試験の実施方法,分析法,並びに,サンプル保存中及び分析操作中の薬物の安定性などについては,十分にバリデーションしておく.なお,標準製剤と試験製剤の有効成分量は同一とする.
1.放出試験
放出試験は,製剤からの薬物の放出性を評価する試験である.放出試験では,試験液の適切な選択や膜を使用する等して製剤の形状に変化をもたらさない試験条件を選択する.
試験において,製剤と試験液を隔てる膜を用いる場合は,透過過程が律速とならない膜を用いる.
1) 試験回数
各製剤12回以上の試験を行う.
2) 試験時間
試験時間は標準製剤で予試験を行い決定する.試験時間は最大24時間とする.ただし,標準製剤の放出曲線がプラトーになった時点あるいは放出率が70%を超えた時点で試験を終了することができる.
3) 試験条件
以下の条件で試験を行う.
装置:パドルオーバーディスク法,拡散セル法等
適用製剤の大きさ:放出及び透過する薬物量のばらつきを考慮して決める.
試験液の温度:32±0.5℃
試験液:通常,pH5~7の範囲における任意のpHの緩衝液(イオン強度0.05程度)を用いるが,同試験液で標準製剤の試験を行うとき,24時間後の平均放出率が20%に達しない場合には,イオン強度の変更,界面活性剤の添加,pHの変更を行ってもよい.また,製剤の形状に影響を与えなければ水―アルコール混液,有機溶媒等を用いることができる.
試験液量:パドルオーバーディスク法の場合は,原則として200mL,500mL又は900mLとし,拡散セル法等の場合は装置に応じた試験液量とする.
回転数:パドルオーバーディスク法の場合は50rpm,拡散セル法等の場合は装置に応じて適切な回転数とする.
サンプリング:試験時間の最終時点から遡って4点,最終時点を含め計5点以上とし,放出プロファイルが分かるようなサンプリング時点を設定する.
試験液の補充:サンプリング毎にサンプリングした試験液と同量の試験液を補充する.ただし,試験液を補充しなくても薬物放出量に影響を及ぼさないと考えられる場合には,試験液を補充しなくてもよい.
4) 放出した薬物量の補正
サンプリングすることによって試験液から取り除かれた薬物量を補正し,試験液へ放出した累積薬物量を算出する.
2.動物の皮膚を用いた透過試験
動物の皮膚を用いた透過試験は,添加剤の配合量及び種類の変更が薬物の皮膚吸収に影響を及ぼすかどうかを確認する試験である.
1) 試験回数
各製剤6回以上で試験を行う.
2) 試験時間
試験時間は標準製剤で予試験を行い決定する.試験時間は最大24時間とする.ただし,標準製剤からの薬物の透過速度が一定になった時点より6時間以上あるいは透過曲線がプラトーに達した時点で試験を終了することができる.
3) 試験条件
以下の条件で試験を行う.
動物の種類:ラット,マウス又はブタ等の少なくともいずれか1種類
動物の部位:腹部又は背部等
装置:拡散セル法
試験液の温度:32±0.5℃
試験液:試験液は皮膚のバリア機能に影響を及ぼさない試験液を用いる.原則,水又は緩衝液を用い,有機溶媒は使用しない.水又は緩衝液で試験ができない場合,皮膚に影響が少ない界面活性剤等を添加しても差し支えない.例えば,ポリソルベート80の場合には1%まで,ポリエチレングリコール400の場合には40%まで加えてもよい.
試験液量:装置に応じた試験液量とする.
回転数:適切な回転数とする.
サンプリング:試験時間の最終時点から遡って4点,最終時点を含め計5点以上とし,透過プロファイルが分かるようなサンプリング時点を設定する.
試験液の補充:サンプリング毎にサンプリングした試験液と同量の試験液を補充する.
4) 透過した薬物量の補正
サンプリングすることによって試験液から取り除かれた薬物量を補正し,試験液へ透過した累積薬物量を算出する.
第5章 放出挙動および透過挙動の同等性の判定
放出試験又は透過試験それぞれについて,以下に示す条件を満たすとき,標準製剤と試験製剤は,放出挙動又は透過挙動が同等と判定する.
1.放出試験
1) 平均放出率による判定
規定された試験時間又は放出曲線がプラトーに達した後の1時点および同時点の放出率の半分程度放出した時点の1点において,標準製剤の平均放出率に対する試験製剤の平均放出率が,その比で0.8から1.2の範囲である.ただし,試験製剤の放出率のばらつきは,標準製剤の放出率のばらつきと同程度かそれより小さいものとする.
2.動物の皮膚を用いた透過試験
1) 平均透過率による判定
規定された試験時間又は透過率がプラトーに達した後の1時点および同時点の透過率の半分程度透過した時点の1点において,標準製剤の平均透過率に対する試験製剤の平均透過率が,その比で0.7から1.3の範囲である.ただし,試験製剤の透過率のばらつきは,標準製剤の透過率のばらつきと同程度かそれより小さいものとする.
以上