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○加水分解コムギ末を含有する医薬部外品・化粧品の使用上の注意事項等について

(平成22年10月15日)

(/薬食安発1015第2号/薬食審査発1015第13号/)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局安全対策課長・厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)

最近、医薬品医療機器等安全性情報報告制度に基づき、複数の医療機関より加水分解コムギ末を含有する製品を使用後に、顔のかゆみ等が現れるほか、小麦含有食品を摂取した後の運動時にアナフィラキシー反応等の全身性のアレルギー(食物依存性運動誘発性アレルギー)を発症した症例(別添参照)が報告されています。これらの症例は、使用者が気づかないまま、製品に含有される加水分解コムギ末に感作されたことにより発症したことが否定できないため、今般、使用者に対して注意喚起を図る観点から、当該製品を含む加水分解コムギ末を含有する医薬部外品及び化粧品に関して注意喚起を行うこととしました。

つきましては、下記事項について、貴管下の関係の医薬部外品製造販売業者、化粧品製造販売業者及び関係団体等に対し周知及び指導方よろしくお願いします。

1.加水分解コムギ末を含有する医薬部外品・化粧品については、既に記載がされている場合を除き、次の事項の趣旨をその容器又は外箱等に記載すること。できるだけ速やかに、遅くとも本通知から半年以内には、製造販売する製品について、容器又は外箱等の表示を改訂すること。

なお、容器又は外箱等の表示を改訂するまでの間は、使用上の注意事項として、説明文書の配布や情報の掲示により情報提供するよう努めること。

1) 本製品に小麦由来成分が含まれている旨

2) 使用中に異常があった場合は使用を控える旨

例)

・使用中、赤み、かゆみ、刺激、眼に異物感が残る場合は使用をおやめください。

・お肌に合わないときは使用をおやめください。

2.各製造販売業者において、その製造販売する加水分解コムギ末を含有する製品の使用者で全身性のアレルギーを発症したとする研究報告を入手している場合は、薬事法施行規則第253条第3項に基づき、医薬品医療機器総合機構あて速やかに報告するとともに、当該作用について関連する情報も含めて情報収集と報告を行うこと。当該製品については全身性のアレルギーを発症するリスクが高い可能性があることから、1の1)、2)の注意事項に加え、以下の注意事項を記載すること。

また、すでに購入した者に対しても、直接の説明文書の送付や販売時の情報の掲示等により注意喚起に努めること。なお、その際、食品、化粧品等に含まれる小麦由来成分により、小麦を含む食事後に運動した際に全身性のアレルギー(食物依存性運動誘発性アレルギー)を発症した症例が報告されている旨も情報提供すること。

眼、鼻等の粘膜への使用を避けるとともに、使用中または使用後に、眼瞼のはれ、息苦しさ、じんましん、しっしん、顔や体のはれ・赤み、腹痛等の症状が現れた場合、速やかに医師に相談する旨

3.2に係る製品については、医薬部外品の場合、製品に含有する加水分解コムギ末を除去する、又は他の成分に切り換える承認申請を行う場合は、迅速に審査することとすること。

別添

参考.医薬品医療機器等安全性情報報告制度に基づき報告された症例について

加水分解コムギ末を含有する製品の使用後に、アナフィラキシー反応等の全身性のアレルギー(食物依存性運動誘発性を含む)を発症したとして報告があった主な症例の概要を以下に示す。

症例1

【症例】30代女性

【既往歴】通年性鼻炎、スギ花粉症、ハンノキ花粉症、リンゴで口腔アレルギー症状。

【経過及び処置】

約2年前

加水分解コムギ末を含有する石けんを使用。その頃から顔の痒み、口の周りの痒み、目の周りの痒みなどあり、近医皮膚科受診。アトピー性皮膚炎と診断され、タクロリムス軟膏やステロイド軟膏処方されるも改善に乏しかった。その後、その他の皮膚科、眼科転々と受診するもやはり改善を認めなかった。症状は特に入浴後に増悪することが多く、症状は経年的に増悪傾向にあった。

発現日

入浴後に強い鼻炎症状も出現するようになる。

会社の帰宅途中に目の痒み、眼瞼・眼周囲の腫脹、顔面の発赤腫脹などあった(詳細不明)。

約2カ月後

ラーメン、ビールなど摂取して5分歩行後、目の痒みが始まる。その後、眼瞼・眼周囲の発赤腫脹、手掌の発赤と腫脹、全身発赤と痒みを認めた。

約3カ月後

パン摂取した後テニスを開始し15分後、目の痒みから始まり、眼瞼発赤腫脹、顔面の発赤腫脹、手掌の発赤腫脹、全身の発赤と膨疹出現し、その後血圧低下、腹痛、下痢あり、アナフィラキシーの診断で入院加療した。

約4カ月後

入浴後に顔面に膨疹、眼瞼腫脹出現するようになる。

パスタ、ケーキ摂取後歩行し症状出現、目の痒みから始まり、眼瞼腫脹、全身の発赤と膨疹を認めた。

約半年後

小麦アレルギーと診断され紹介受診。食物負荷試験を行った。

【検査所見】血清総IgE値 440IU/mL

<CAP-RAST>小麦 14.20Ua/ml(class3)、グルテン 15.40Ua/ml(class3)

<Prick test 膨疹径>

当該石けん 3mm、0.3%加水分解小麦 12mm

<食物負荷試験>

入院管理下にて、パン摂取したのち運動負荷を行った。

眼の痒みと腫脹から始まるアナフィラキシーが誘発された。

【診断】

・当該石けん中の加水分解小麦による接触性蕁麻疹、アレルギー性結膜炎

・小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)

当該石けん中の加水分解小麦の感作がWDEIAの発症原因となっている可能性を疑い、小麦摂取後の運動の中止のみならず、当該石けん使用を中止した。

洗顔後の眼瞼腫脹、顔の痒みなどの症状すべて消失。

現在のところWDEIAが改善しているかどうかは評価できていない。

症例2

【症例】30代女性

【既往歴】通年性鼻炎のみ。

【経過及び処置】

約2年前

加水分解コムギ末を含有する石けんを使用。使用開始して洗顔後に皮膚の痒み、膨疹など出現していたが、使用を続けていた。

発現日

パン摂取後自転車で走行5―6分したあと、手掌の痒み、眼周囲の血管浮腫、鼻閉、全身発赤・膨疹、腹痛などあり。

その後も小麦製品摂取後に運動をして、アナフィラキシーを繰り返した。

約8カ月後

精査目的で受診。

【検査所見】血清総IgE値 220IU/ml

<CAP-RAST>小麦 2.58Ua/ml(class2) グルテン 4.48Ua/ml(class3)

<Prick test 膨疹径>

当該石けん 3mm、0.3%加水分解小麦 9mm、小麦 0mm、パン 0mm、Histamine(10mg/ml) 3mm

【診断】

・小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)

・加水分解小麦による接触性蕁麻疹

病歴とPrick test、CAP-RASTの結果から上記診断。

当該石けんの使用、小麦摂取後の運動を中止した。

症例3

【症例】20代女性

【既往歴】小児期からアトピー性皮膚炎。現在も皮疹あり。小児発症の食物アレルギーはなし。

【経過及び処置】

約2年前

加水分解コムギ末を含有する石けんを使用開始。

アトピー性皮膚炎による顔面の皮疹は常にあり、当該石けん使用時の痒み軽度にあり(もともとアトピー性皮膚炎があるためはっきりしない)。

発現日

カルボナーラ摂取後歩行し全身性蕁麻疹の後血圧低下。他院で小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)と診断され以後厳格に小麦除去。

約10カ月後

桜餅(小麦が入っていたことが後で判明)摂取後歩行15分。全身に地図状膨疹。

約11カ月後

食物負荷試験希望して受診。

【検査所見】血清総IgE値 1690IU/ml

<CAP-RAST>小麦 30.90Ua/ml(class4)、グルテン 44.30Ua/ml(class4)

<Prick test 膨疹径>

当該石けん 5mm、0.3%加水分解小麦 18mm、小麦 10mm、パン 16mm、 Histamine(10mg/ml) 5mm

<食物負荷試験>

ロールパン10g摂取後すぐに咳、くしゃみ。1時間20分後に全身に膨疹出現。ボスミン投与で軽快。

【診断】

・小麦アナフィラキシー

当該石けんの使用を中止し、小麦摂取を一切中止。

その後症状出現しない。