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4.生活機能とサービスに関する意見

(1) 移動

屋外歩行

日常生活での屋外歩行の状態について、以下の各選択項目の状態例にあてはめ、該当する□にレ印をつけて下さい。

自立

自分だけで屋外を歩いている状態。歩行補助具や装具・義足を用いている場合も含みます。外出するようには促しが必要でも、屋外は一人で歩いている場合も含みます。

介護があればしている

介護者と一緒に屋外を歩いている状態。直接介助されている場合だけでなく、そばで見守っている場合も含みます。

していない

屋外歩行をしていない状態。

歩こうとすれば歩けるが実際は歩いていない場合や、訓練の時だけ屋外歩行をしている場合を含みます。また車いすで屋外を移動している場合等を含みます。

車いすの使用

車いす(電動車いすも含む)を用いていることがある場合に、主に誰が操作(駆動)しているかについて、以下の各選択項目の状態例にあてはめ、該当する□にレ印をつけて下さい。車椅子を常時使っている場合だけでなく、例えば外出時だけの使用や、病院や通所施設等だけで使用している場合も含みます。

用いていない

全く使用していない状態

主に自分で操作

車いすを用いることがあり、その場合は主に自分だけで操作(駆動)している状態。

主に室内での状態で判断し、例えば室内は自分だけでこいでいるが、屋外は後ろから押してもらっている場合なども含みます。

主に他人が操作

車いすを用いていることがあり、その場合は主に他人に操作(押してもらう等)してもらっている状態。操作時に見守りを必要とする場合を含みます。

歩行補助具・装具の使用

日常生活での室内歩行や屋外歩行で、歩行補助具(杖等)や装具を用いている状態について、以下の各選択項目の状態例にあてはめ、該当する□にレ印をつけて下さい。屋内、屋外両方で使用している場合は両方の□にレ印をつけて下さい。

どちらか一方だけの使用の場合も含みますが、義足(切断の時に用いる)の使用は含めません。

使用していない

日常生活では、歩行補助具も装具も全く使用していない状態。訓練歩行の時だけは使っている場合も含みます。

屋外で使用

日頃の屋外歩行の時に使用している状態。例えば遠出の時だけの使用のように、時々使用している場合も含みます。

屋内で使用

日頃の室内歩行のときに使用している状態。例えば家事の時だけの使用のように、特定の生活行為を行う時のみ使用している場合も含みます。

(2) 栄養・食生活

高齢者に多くみられる栄養問題は、慢性的なエネルギー、たんぱく質の補給不足、あるいは疾患によってエネルギー、たんぱく質の欠乏した状態(以下「低栄養」という。)です。要介護高齢者の「低栄養」は、内臓たんぱく質及び筋たんぱく質の低下をきたし、身体機能及び生活機能の低下をはじめ、感染症、褥瘡などの誘発に関わります。そこで、要介護状態の改善及び重度化の予防の観点から、「低栄養」に関連する要因として考えられる食事行為、総合的な栄養状態を評価します。医学的観点から栄養・食生活上の留意点を認める場合には具体的な内容を記載してください。

食事行為

日常生活行為のうち食事について、どの程度、どのように自分で行っているかを評価します。以下の各選択項目の状態例にあてはめ、該当する□にレ印をつけてください。

自立ないし何とか自分で食べられる

自分一人で、ないし、見守り・励まし、身体的援助によって、自分で食べることができる。

全面介助

他の者の全面的な介助が必要である。

現在の栄養状態

現在の栄養状態を評価します。以下の各選択項目の状態にあてはめ、該当する□にレ印をつけてください。また、医学的観点から、改善に向けた留意点について、( )内に記入してください。

良好

①過去6ヶ月程度の体重の維持(概ね3%未満)、②BMI(体重(kg)/身長2(m2))18.5以上、③血清アルブミン値が明らかである場合には、3.5g/dlを上回る、の3項目全てが該当する状態。

上記指標が入手できない場合には、食事行為、食事摂取量(概ね3/4以上)、食欲、顔色や全身状態(浮腫、脱水、褥瘡などがない状態)から総合的に栄養状態が良いと判断される状態。

不良

①過去6ヶ月程度の体重の減少(概ね3%以上)、②BMI(体重(kg)/身長2(m2))18.5未満、③血清アルブミン値がある場合には、3.5g/dl以下、の3項目のうち1つでも該当する状態。

上記指標が入手できない場合には、食事行為、食事摂取量(概ね3/4以下)、食欲、顔色や全身状態(浮腫、脱水、褥瘡などがある状態)から総合的に栄養が不良又は不良となる可能性が高いと判断される状態。

(3) 現在あるかまたは今後発生の可能性の高い状態とその対処方針

日常の申請者の状態を勘案して、現在あるかまたは今後概ね6ヶ月以内に発生する可能性の高い状態があれば、該当する□にレ印をつけてください。また、具体的な状態とその際の対処方針(緊急時の対応を含む)について要点を記入してください。

(4) サービス利用による生活機能の維持・改善の見通し

現在の状態から、概ね3ヶ月から6ヶ月間、申請者が介護保険によるサービス(予防給付によるサービスを含む)やその他の高齢者に対するサービスを利用した場合の、生活機能の維持・改善の見通しについて、該当する□にレ印をつけてください。

傷病の症状としての見通しではなく、生活機能の維持・改善がどの程度期待できるか、という観点であることに留意してください。

(5) 医学的管理の必要性

医学的観点から、申請者が利用する必要があると考えられる医療系サービスについて、以下の各サービスの内容を参考に、該当するサービスの□にレ印をつけてください。各サービスについては、予防給付で提供されるサービスも含みます。

訪問歯科診療及び訪問歯科衛生指導については、口腔内の状態(例えば、歯の崩壊や喪失状態、歯の動揺や歯肉からの出血の有無、義歯の不適合等)をもとに、口腔ケアの必要性に応じて該当する□にレ印をつけてください。

また、特に必要性が高いと判断されるサービスについては、項目に下線を引いてください。

なお、本項目の記入は、ここに記入されているサービスについての指示書に代わるものではありませんのでご注意ください。

訪問診療

通院することが困難な患者に対して、医師等が計画的に訪問して行う診療や居宅療養指導等。

訪問看護

訪問看護ステーション及び医療機関からの訪問看護等、保健師、看護師等が訪問して看護を行うことをいう。

なお、保健師等が地域支援事業の訪問型介護予防として訪問して指導する行為は含まない。

看護職員の訪問による相談・支援

医療機関及び訪問看護ステーションの看護職員が訪問して、療養上の様々な課題・悩みに対する相談・支援を行うものをいう。

訪問リハビリテーション

病院、診療所及び訪問看護ステーションの理学療法士等が訪問して行うリハビリテーションをいう。なお、理学療法士、作業療法士あるいは言語療法士等が地域支援事業の訪問型介護予防として訪問して指導する行為は含まない。

通所リハビリテーション

病院、診療所、老人保健施設が提供するリハビリテーションをいう。なお、病院、診療所(医院)の外来でリハビリテーションを診療行為として受けた場合、保健所、市町村保健センター等で地域支援事業の機能訓練等を受けた場合はこれに含めない。

短期入所療養介護

病院、診療所及び介護老人保健施設に短期間入所させ、当該施設において、看護、医学的管理下における介護、機能訓練その他必要な医療及び日常生活上の世話を行うものをいう。

訪問歯科診療

居宅において療養を行っている患者であって、通院が困難なものに対して、患者の求めに応じ訪問して歯科診療を行った場合又は、当該歯科診療に基づき継続的な歯科治療が認められた患者に対してその同意を得て訪問して歯科診療を行うものをいう。

訪問歯科衛生指導

訪問歯科診療を行った歯科医師の指示に基づき、歯科衛生士、保健師、看護師等が訪問して療養上必要な指導として、患者の口腔内での清掃等に係わる指導を行うものをいう。

訪問薬剤管理指導

医師の診療に基づき計画的な医学的管理を継続して行い、かつ、薬剤師が訪問して薬学的管理指導を行うものをいう。

訪問栄養食事指導

医師の診療に基づき計画的な医学的管理を継続して行い、かつ、管理栄養士が訪問して具体的な献立等によって実技指導を行うものをいう。

その他の医療系サービス

上記以外の医学的管理をいう。地域支援事業の訪問型介護予防、機能訓練、保健所が実施する保健指導、入院等が必要とされる場合にその種類とともに記入する。

(6) サービス提供時における医学的観点からの留意事項

申請者がサービスを利用するにあたって、医学的観点から、特に留意する点があれば、「□あり」にレ印をつけ、サービスを提供する上で不安感を助長させないよう、( )内に具体的な留意事項を記載してください。また、血圧・嚥下等の項目以外に医学的観点からの留意事項があれば、「その他」の( )内に具体的な留意事項を記載してください。

血圧

血圧管理について、サービス提供時の留意事項があれば、具体的に記載してください。また、どの程度の運動負荷なら可能なのかという点等についても記入してください。

嚥下

嚥下運動機能(舌によって食塊を咽頭に移動する随意運動、食塊を咽頭から食道へ送るまでの反射運動、蠕動運動により食塊を胃に輸送する食道の反射運動)の障害について、サービス提供時の留意事項があれば、具体的に記載してください。

摂食

摂食について、サービス提供時の留意事項があれば、具体的に記載してください。

移動

移動(歩行に限らず、居室とトイレの移動や、ベッドと車椅子、車椅子と便座等への移乗等も含める)について、サービス提供時の留意事項があれば、具体的に記載してください。

運動

運動負荷を伴うサービスの提供時の留意事項があれば、具体的に記載してください。特に運動負荷を伴うサービス提供について、医学的観点からリスクが高いと判断される場合には、その状態を具体的に記載してください。

その他

その他、医学的観点からの留意事項があれば、( )内に具体的に記載してください。

(7) 感染症の有無

サービスの提供時に、二次感染を防ぐ観点から留意すべき感染症の有無について、該当する□にレ印をつけてください。有の場合には、具体的な症病名・症状等を( )内に記入してください。

5.特記すべき事項

申請者の主治医として、要介護認定の審査判定上及び介護保険によるサービスを受ける上で、重要と考えられる事項があれば、要点を記入してください。特に、他の項目で記入しきれなかったことや選択式では表現できないことを簡潔に記入してください。口腔内の状況から口腔清潔に関して、特に留意事項があれば、要点を記載してください。

また、専門医に意見を求めた場合にはその結果、内容を簡潔に記入してください。情報提供書や身体障害者申請診断書等の写しを添付していただいても構いません。なお、その場合は情報提供者の了解をとるようにしてください。

なお、平成21年度の要介護認定の見直しでは、調査員ごとのバラツキを減らすとともに、介護の不足等も適切に把握できるよう、認定調査の選択肢について、調査員の方に、できるだけ見たままを選んでいただき、介護認定審査会において、認定調査票の特記事項や主治医意見書の内容から、申請者に必要な介護の手間について総合的に把握し、判定することとしました。したがって、申請者にかかる介護の手間をより正確に反映するために、主治医意見書の重要性が増しており、主治医意見書の「5.特記すべき事項」に、申請者の状態やそのケアに係る手間、頻度等の具体的内容についても記載してください。

(別添3)

特定疾病にかかる診断基準

特定疾病にかかる診断基準について

介護保険制度において、40歳以上65歳未満の第2号被保険者が要介護認定を受けるためには、要介護状態等の原因である身体上及び精神上の障害が、介護保険施行令(平成10年政令第412号)第2条で定める16の疾病(特定疾病)によることが要件とされているところである。

特定疾病に該当するか否かは、主治医意見書の記載内容に基づき、市町村等に置かれる介護認定審査会が確認を行う。

本診断基準は、主治医意見書の記載にあたって、当該申請者が特定疾病に該当するかどうかについての基準を示したものである。

ここで示した基準は、特定疾患に該当するものについては、その基準を活用することとし、その他の疾患についても学会等で作成され専門家の評価を得ているものを利用している。

第2号被保険者に関する意見書記載にあたっては、本診断基準を参照して主治医意見書の「1.傷病に関する意見 (1)診断名 1.」欄に、介護を要する生活機能低下等の直接の原因となっている特定疾病名、また「(3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容」に診断上の根拠となる主な所見について記入されたい。

なお、意見書記載にあたっては、必ずしも、新たに診察・検査等を行う必要はなく、過去の診療録等を参考に記載することで差し支えないことを申し添える。

目次

1.がん【がん末期】

(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)

2.関節リウマチ

3.筋萎縮性側索硬化症

4.後縦靱帯骨化症

5.骨折を伴う骨粗鬆症

6.初老期における認知症

7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病

【パーキンソン病関連疾患】

8.脊髄小脳変性症

9.脊柱管狭窄症

10.早老症

11.多系統萎縮症

12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症

13.脳血管疾患

14.閉塞性動脈硬化症

15.慢性閉塞性肺疾患

16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

1.がん【がん末期】(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)

【定義】

以下の特徴をすべて満たす疾病である。

① 無制限の自律的な細胞増殖が見られること(自律増殖性)

本来、生体内の細胞は、その細胞が構成する臓器の形態や機能を維持するため、生化学的、生理学的な影響を受けながら細胞分裂し、増殖するものであるが、がん細胞はそういった外界からの影響を受けず無制限かつ自律的に増殖する。

② 浸潤性の増殖を認めること(浸潤性)

上記の自律的な増殖により形成される腫瘍が、原発の臓器にはじまり、やがて近隣組織にまで進展、進行する。

③ 転移すること(転移性)

さらに、播種性、血行性に遠隔臓器やリンパ行性にリンパ節等へ不連続に進展、進行する。

④ 何らかの治療を行わなければ、①から③の結果として死に至ること(致死性)

【診断基準】

以下のいずれかの方法により悪性新生物であると診断され、かつ、治癒を目的とした治療に反応せず、進行性かつ治癒困難な状態(注)にあるもの。

① 組織診断又は細胞診により悪性新生物であることが証明されているもの。

② 組織診断又は細胞診により悪性新生物であることが証明されていない場合は、臨床的に腫瘍性病変があり、かつ、一定の時間的間隔を置いた同一の検査(画像診査など)等で進行性の性質を示すもの。

注) ここでいう治癒困難な状態とは、概ね余命が6月間程度であると判断される場合を指す。なお、現に抗がん剤等による治療が行われている場合であっても、症状緩和等、直接治癒を目的としていない治療の場合は治癒困難な状態にあるものとする。

参考にした診断基準:

「特定疾病におけるがん末期の取扱いに係る研究班」による診断基準

2.関節リウマチ

自他覚症状5項目及び臨床検査2項目の7項目中、少なくとも4項目を満たすものをいう。

なお、自他覚症状の項目a.~d.は少なくとも6週間以上存在しなければならない。

(1) 自他覚症状

a.朝のこわばり持続時間(少なくとも1時間以上)

b.同時に3ヶ所以上の関節腫脹あるいは関節液貯留

c.手首、中手指節間関節(MCP)、近位指節間関節(PIP)のなかで少なくとも1ヶ所以上の関節腫脹

d.同時に両側の同一部位での関節炎

e.リウマトイド皮下結節

(2) 臨床検査

a.血清リウマトイド因子陽性

b.X線所見:手首、MCP、PIP関節に骨びらんあるいはオステオポローシス像

(3) 鑑別診断

a.五十肩、腱・腱鞘炎

b.痛風、仮性痛風

c.全身性エリトマトーデス、強皮症などの膠原病

d.ベーチェット病、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、サルコイドーシス

e.変形性関節症

f.結核性関節炎

参考にした診断基準:

厚生省長期慢性疾患総合研究事業による診断基準

3.筋萎縮性側索硬化症

1) 主要項目

(1) 以下の①―④のすべてを満たすものを、筋萎縮性側索硬化症と診断する。

① 成人発症である。

② 経過は進行性である。

③ 神経所見・検査所見で、下記の1か2のいずれかを満たす。

身体を、a.脳神経領域、b.頸部・上肢領域、c.体幹領域(胸髄領域)、d.腰部・下肢領域の4領域に分ける(領域の分け方は、2参考事項を参照)。

下位運動ニューロン徴候は、(2)針筋電図所見(①又は②)でも代用できる。

1.1つ以上の領域に上位運動ニューロン徴候をみとめ、かつ2つ以上の領域に下位運動ニューロン症候がある。

2.SOD1遺伝子変異など既知の家族性筋萎縮性側索硬化症に関与する遺伝子異常があり、身体の1領域以上に上位及び下位運動ニューロン徴候がある。

④ (3)鑑別診断で挙げられた疾患のいずれでもない。

(2) 針筋電図所見

① 進行性脱神経所見:線維性収縮電位、陽性鋭波など。

② 慢性脱神経所見:長持続時間、多相性電位、高振幅の大運動単位電位など。

(3) 鑑別診断

① 脳幹・脊髄疾患:腫瘍、多発性硬化症、頸椎症、後縦靭帯骨化症など。

② 末梢神経疾患:多巣性運動ニューロパチー、遺伝性ニューロパチーなど。

③ 筋疾患:筋ジストロフィー、多発筋炎など。

④ 下位運動ニューロン障害のみを示す変性疾患:脊髄性進行性筋萎縮症など。

⑤ 上位運動ニューロン障害のみを示す変性疾患:原発性側索硬化症など。

2) 参考事項

(1) SOD1遺伝子異常例以外にも遺伝性を示す例がある。

(2) 稀に初期から認知症を伴うことがある。

(3) 感覚障害、膀胱直腸障害、小脳症状を欠く。ただし一部の例でこれらが認められることがある。

(4) 下肢から発症する場合は早期から下肢の腱反射が低下、消失することがある。

(5) 身体の領域の分け方と上位・下位ニューロン徴候は以下のようである。

 

a.脳神経領域

b.頸部・上肢領域

c.体幹領域

(胸随領域)

d.腰部・下肢領域

上位運動ニューロン徴候

下顎反射亢進

口尖らし反射亢進

偽性球麻痺

強制泣き・笑い

上肢腱反射亢進

ホフマン反射亢進

上肢痙縮

萎縮筋の腱反射残存

腹壁皮膚反射消失

体幹部腱反射亢進

下肢腱反射亢進

下肢痙縮

バビンスキー徴候

萎縮筋の腱反射残存

下位運動ニューロン徴候

顎、顔面

舌、咽・喉頭

頸部、上肢帯、上腕

胸腹部、背部

腰帯、大腿、下腿、足

参考にした診断基準:

厚生労働省特定疾患調査研究班(神経変性疾患調査研究班)による診断基準

4.後縦靱帯骨化症

(1) 自覚症状ならびに身体所見

a.四肢・躯幹のしびれ、痛み、知覚障害

b.四肢・躯幹の運動障害

c.膀胱直腸障害

d.脊柱の可動域制限

e.四肢の腱反射亢進

f.四肢の病的反射

(2) 血液・生化学検査所見

一般に異常を認めない。

(3) 画像所見

a.単純X線

後縦靱帯骨化は側面像で椎体後縁に並行する骨化像として認められ、4型に分類される。黄色靱帯骨化は椎弓間に観察される。

b.CT

靭帯骨化の脊柱管内の拡がりや横断面での骨化の形態は、CTによりとらえられる。

c.MRI

靱帯骨化による脊髄の圧迫病態を見るには、MRIが有用である。

(4) 診断

脊椎X線像所見に加え、1に示した自覚症状並びに身体所見が認められ、それが靱帯骨化と因果関係があるとされる場合、本症と診断する。

(5) 鑑別診断

後縦靭帯骨化症に類似した症状又は徴候を呈するために鑑別診断上注意を要する疾患として次のものがある。強直性脊椎炎、変形性脊椎症、強直性脊椎骨増殖症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊柱奇形、脊椎・脊髄腫瘍、運動ニューロン疾患、痙性脊髄麻痺(家族性痙性対麻痺)、多発性神経炎、脊髄炎、末梢神経障害、筋疾患、脊髄小脳変性症、脳血管障害、その他。

参考にした診断基準:

厚生労働省特定疾患調査研究班(脊柱靱帯骨化症調査研究班)による診断基準

5.骨折を伴う骨粗鬆症

(1) 骨粗鬆症の診断

低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患又は続発性骨粗鬆症を認めず、骨評価の結果が下記の条件を満たす場合、原発性骨粗鬆症と診断する。

Ⅰ.脆弱性骨折(注1)あり

Ⅱ.脆弱性骨折なし

 

 

骨密度値

脊椎X線像での骨粗鬆化

正常

YAMの80%以上

なし

骨量減少

YAMの70%以上80%未満

疑いあり

骨粗鬆症

YAMの70%未満

あり

 

YAM:若年成人平均値(20歳~44歳)

注1 脆弱性骨折:低骨量(骨密度がYAMの80%未満、あるいは脊椎X線像で骨粗鬆化がある場合)が原因で、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折、骨折部位は脊椎、大腿骨頸部、橈骨遠位端、その他。

注2 骨密度は原則として腰椎骨密度とする。ただし、高齢者において、脊椎変形などのために腰椎骨密度の測定が適当でないと判断される場合には大腿骨頸部骨密度とする。これらの測定が困難な場合は、橈骨、第2中手骨、踵骨の骨密度を用いる。

注3 脊椎X線像での骨粗鬆症の評価は、従前の骨萎縮度判定基準を参考にして行う。

 

脊椎X線像での骨粗鬆化

従来の骨萎縮度判定基準

なし

骨萎縮なし

疑いあり

骨萎縮度Ⅰ度

あり

骨萎縮度Ⅱ度以上

 

(2) 骨折の診断

症状及びX線所見による。

参考にした診断基準:

日本骨代謝学会骨粗鬆症診断基準(2000年度改訂版)

6.初老期における認知症

「アメリカ合衆国精神医学会作成 精神疾患の分類と診断の手引き 第4版(DSM―Ⅳ―TR)」による基本的な診断基準を満たすものであって、以下の疾病によるものを除く。

1.外傷性疾患

頭部外傷、硬膜下血腫など

2.中毒性疾患

有機溶剤、金属、アルコールなど

3.内分泌疾患

甲状腺機能低下症、Cushing病、Addison病など

4.栄養障害

ビタミンB12欠乏症、ペラグラ脳症など

診断基準

(1) 以下のa.及びb.の両者による多彩な認知欠損の発現が認められること。

a.記憶障害(新しい情報を学習したり、以前に学習した情報を想起する能力の障害)

b.以下の認知障害の一つ(又はそれ以上)

ア.失語(言語の障害)

イ.失行(運動機能が損なわれていないにもかかわらず動作を遂行する能力の障害)

ウ.失認(感覚機能が損なわれていないにもかかわらず、対象を認識又は同定できないこと)

エ.実行機能(すなわち、計画を立てる、組織化する、順序立てる、抽象化する)の障害

(2) (1)のa.及びb.の認知欠損は、その各々が、社会的又は職業的機能の著しい障害を引き起こし、病前の機能水準からの著しい低下を示すこと。

(3) その欠損はせん妄の経過中にのみ現れるものではないこと。

参考にした診断基準:

精神疾患の分類と診断の手引き 第4版(DSM―Ⅳ―TR)(アメリカ合衆国精神医学会作成)

7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病

【パーキンソン病関連疾患】

1.進行性核上性麻痺

主要項目

(1) 40歳以降で発症することが多く、また、緩徐進行性である。

(2) 主要症候

① 垂直性核上性眼球運動障害(初期には垂直性眼球運動の緩徐化であるが、進行するにつれ上下方向への注視麻痺が顕著になってくる)

② 発症早期(概ね1―2年以内)から姿勢の不安定さや易転倒性(すくみ足、立直り反射障害、突進現象)が目立つ。

③ ほぼ対称性の無動あるいは筋強剛があり、四肢末梢よりも体幹部や頸部に目立つ。

(3) その他の症候

① 進行性の構音障害や嚥下障害

② 前頭葉性の特徴を有する進行性認知障害(思考の緩慢化、想起障害、意欲低下などを特徴とする)

(4) 画像所見(CTあるいはMRI)

進行例では、中脳被蓋部の萎縮、脳幹部の萎縮、第三脳室の拡大を認めることが多い。

(5) 除外項目

① L―DOPAが著効(パーキンソン病の除外)

② 初期から高度の自律神経障害の存在(多系統萎縮症の除外)

③ 顕著な多発ニューロパチー(末梢神経障害による運動障害や眼球運動障害の除外)

④ 肢節運動失行、皮質性感覚障害、他人の手徴候、神経症状の著しい左右差の存在(大脳皮質基底核変性症の除外)

⑤ 脳血管障害、脳炎、外傷など明らかな原因による疾患

(6) 判定

次の3条件を満たすものを進行性核上性麻痺と診断する。

① (1)を満たす。

② (2)の2項目以上がある、あるいは(2)の1項目及び(3)の1項目以上がある。

③ 他の疾患を除外できる。

参考事項

進行性核上性麻痺は、核上性注視障害、姿勢反射障害による易転側性が目立つパーキンソニズム、及び認知症を主症状とする慢性進行性の神経変性疾患である。神経病理学的には、中脳と大脳基底核に萎縮、神経細胞脱落、神経原線維変化、グリア細胞内封入体が出現する。

初発症状はパーキンソン病に似るが、安静時振戦は稀で、歩行時の易転倒性、すくみ足、姿勢反射障害が目立つ。進行するにつれて、頸部の後屈と反り返った姿勢、垂直性核上性眼球運動障害(初期には眼球運動の随意的上下方向運動が遅くなり、ついには下方視ができなくなる)、構音障害や嚥下障害、想起障害と思考の緩慢を特徴とする認知症や注意力低下が出現する。徐々に歩行不能、立位保持不能となって、寝たきりになる。

抗パーキンソン病薬への反応は不良である。一時的に抗うつ薬やドロキシドパで症状が改善することがある。

非定型例として「純粋無動症」と呼ばれる病型があり、パーキンソン病に似て、歩行障害、すくみ足、易転倒性を特徴とするが、筋強剛や振戦を欠く。眼球運動障害も末期になるまで出現しないことが多い。

2.大脳皮質基底核変性症

主要項目

(1) 中年期以降に発症し緩徐に進行する。

(2) 失行あるいはその他の大脳皮質徴候

① 肢節運動失行があり、左右差が目立つ。

② 肢節運動失行が明瞭でなくても、皮質性感覚障害、把握反応、「他人の手」徴候、反射性ミオクローヌスのいずれがあり、左右差が目立つ。

③ 観念運動失行が肢節運動失行よりも顕著な場合は、左右差は目立たないことが多い。

④ その他の認知機能障害として、稀に、認知症、異常行動、注意障害、失語などが早期から目立つ例がある。

(3) 錐体外路徴候

① パーキンソニズム(無動、筋強剛、振戦):障害は下肢よりも上肢に目立つことが多い。

② ジストニー

(4) その他の神経症状

① 偽性球麻痺(構音障害、嚥下障害)

② 尿失禁

(5) 画像所見

CT、MRI、SPECTで、一側優位性の障害(大脳半球の萎縮又は血流低下)は診断において、重要な支持的所見である。しかし、両側性あるいはび漫性に異常所見が出現する例もあるので、診断上必須所見とはしない。

(6) 除外すべき疾患

① パーキンソン病

② 進行性核上性麻痺

③ 多系統萎縮症(特に線条体黒質変性症)

④ 薬剤、脳炎、脳血管障害、外傷など

⑤ 類似症状を呈するその他の疾患

(7) 判定

次の3条件を満たすものを皮質基底核変性症と診断する。

① (1)を満たす。

② (2)の1項目以上、及び(3)の1項目以上がある。

③ 他の疾患を除外できる。

注:なお、必須ではないが、画像所見によって他の疾患を除外し、一側性優位性の障害を確認する事が望ましい。

参考所見

大脳皮質基底核変性症(CBD)は、一側優位性が目立つ大脳半球萎縮及び基底核変性を生じる神経変性疾患で、特有の大脳皮質症状と運動障害を呈する。

(1) 臨床的には、以下の所見がみられる。

① 中年期以降に発病し緩徐に進行する。

② 大脳皮質症状として、前頭・頭頂葉症状が見られる。最も頻度が高く特徴的な症状は肢節運動失行で、この他に観念運動失行、皮質性感覚障害、把握反応、他人の手徴候、反射性ミオクローヌスなどが出現する。

③ 錐体外路症状として、パーキンソニズム(無動、筋強剛、振戦)、ジストニーなどが出現する。症状は下肢よりも上肢のほうが顕著なことが多い。

④ 上記神経症状には、病初期から顕著な一側優位性がみられることが多い。

⑤ 注意障害、認知症、異常行動のような精神症状は、通常、運動症状よりも遅れて出現する。

⑥ 歩行障害、偽性球麻痺(構音障害、嚥下障害)などが早期から出現するために、進行性核上性麻痺と鑑別困難な症例がある。

(2) 画像所見

CT、MRI、SPECTで、一側優位性の大脳半球萎縮又は血流低下を認めた場合には、重要な支持的所見である。しかし、両側性あるいはび漫性の異常を認める例もあるので、診断上必須所見とはしない。

(3) 薬物等への反応

L―DOPAや他の抗パーキンソン病薬への反応は不良である。抗うつ薬、ドロキシドパ、経頭蓋磁気刺激などが試みられているが、効果はあっても一時的である。

(4) 病理学的所見

前頭・頭頂葉に目立つ大脳皮質萎縮が認められ、黒質の色素は減少している。顕微鏡的には皮質、皮質下、脳幹の諸核(視床、淡蒼球、線条体、視床下核、黒質、中脳被蓋など)に神経細胞減少とグリオーシスが認められる。ピック細胞と同様の腫大した神経細胞が大脳皮質及び皮質下諸核に認められる。黒質細胞には神経原線維変化がみられる。ガリアス染色やタウ染色ではグリア細胞にも広範な変性が認められ、特にastrocytic plaqueは本症に特徴的である。

3.パーキンソン病

以下の4項目のすべてを満たした場合、パーキンソン病と診断する。ただし、Yahrの分類のStageは問わない。1、2、3は満たすが、薬物反応を未検討の症例は、パーキンソン病疑い症例とする。

(1) パーキンソニズムがある。※1

(2) 脳CT又はMRIに特異的異常がない。※2

(3) パーキンソニズムを起こす薬物・毒物への曝露がない。※3

(4) 抗パーキンソン病薬にてパーキンソニズムに改善がみられる。

※1 パーキンソニズムの定義は、次のいずれかに該当する場合とする。

(1) 典型的な左右差のある安静時振戦(4~6Hz)がある。

(2) 歯車様筋強直、動作緩慢、姿勢歩行障害のうち2つ以上が存在する。

※2 脳CT又はMRIにおける特異的異常とは、多発脳梗塞、被殻萎縮、脳幹萎縮、著明な脳室拡大、著明な大脳萎縮など他の原因によるパーキンソニズムであることを示す明らかな所見の存在をいう。

※3 薬物に対する反応はできるだけドパミン受容体刺激薬又はL―DOPA製剤により判定することが望ましい。

参考にした診断基準:

厚生労働省特定疾患調査研究班(神経変性疾患調査研究班)による診断基準

8.脊髄小脳変性症

【主要項目】

脊髄小脳変性症は、運動失調を主要症候とする原因不明の神経変性疾患の総称であり、臨床、病理あるいは遺伝子的に異なるいくつかの病型が含まれる。臨床的には以下の特徴を有する。

(1) 小脳性ないしは後索性の運動失調を主要症候とする。

(2) 徐々に発病し、経過は緩徐進行性である。

(3) 病型によっては遺伝性を示す。その場合、常染色体優性遺伝性であることが多いが、常染色体劣性遺伝性の場合もある。

(4) その他の症候として、錐体路徴候、錐体外路徴候、自律神経症状、末梢神経症状、高次脳機能障害などを示すものがある。

(5) 頭部のMRIやX線CTにて、小脳や脳幹の萎縮を認めることが多く、大脳基底核病変を認めることもある。

(6) 脳血管障害、炎症、腫瘍、多発性硬化症、薬物中毒、甲状腺機能低下症など二次性の運動失調症を否定できる。

なお、オリーブ橋小脳萎縮症については、従前の診断基準では脊髄小脳変性症の一病型として取扱うこととしていたが、特定疾患治療研究事業における傷病区分の変更等を踏まえ、多系統萎縮症の一病型として取扱うこととしたため、注意を要する。(「11.多系統萎縮症」の診断基準を参照)

参考にした診断基準:

厚生労働省特定疾患調査研究班(運動失調調査研究班)による診断基準

9.脊柱管狭窄症

下記の症状(神経根、脊髄及び馬尾症状)と画像所見による脊柱管狭小化を総合的に診断されたものをいう。ただし、以下の各項に該当するものに限る。

a.頸椎部、胸椎部又は腰椎部のうち、いずれか1以上の部において脊柱管狭小化を認めるもの。

b.脊柱管狭小化の程度は画像上(単純X線写真、断層写真、CT、MRI、ミエログラフィーなど)脊柱管狭小化を認め、脊髄、馬尾神経又は神経根を明らかに圧迫する所見のあるものとする。

c.画像上の脊柱管狭小化と症状の間に因果関係の認められるもの。

症状

主として四肢・躯幹の痛み、しびれ、筋力低下、運動障害、脊椎性間欠跛行を呈する。排尿・排便障害を伴うことがある。これらの症状は増悪、軽快を繰り返し、次第に悪化して歩行が困難となる。転倒などの軽微な外傷機転によって症状が急激に悪化し、重篤な脊髄麻痺をきたすことがある。

鑑別疾患

変形性脊椎症(神経学的症状を伴わないもの)

椎間板ヘルニア

脊椎・脊髄腫瘍

脊椎すべり症(神経学的症状を伴わないもの)

腹部大動脈瘤

閉塞性動脈硬化症

末梢神経障害

運動ニューロン疾患

脊髄小脳変性症

多発性神経炎

脳血管障害

筋疾患

後縦靭帯骨化症

参考にした診断基準:

厚生労働省特定疾患調査研究班(脊柱靱帯骨化症調査研究班)による診断基準

10.早老症

ウェルナー症候群、プロジェリア症候群、コケイン症候群に該当するものをいう。

ウェルナー症候群に関しては、以下の確実例及び疑い例に該当するものをいう。

確実例:

(1)のすべてと(2)の2つ以上

(1)の2つと(3)

疑い例:(1)の2つと(2)の2つ以上

(1) 主徴候:

a.早老性外貌(白髪、禿頭など)

b.白内障

c.皮膚の萎縮、硬化又は潰瘍形成

(2) その他の徴候と所見

a.原発性性腺機能低下

b.低身長及び低体重

c.音声の異常

d.骨の変形などの異常

e.糖同化障害

f.早期に現れる動脈硬化

g.尿中ヒアルロン酸増加

h.血族結婚

(3) 皮膚線維芽細胞の分裂能の低下

参考にした診断基準:

厚生省特定疾患調査研究班(ホルモン受容機構異常調査研究班)によるウェルナー症候群の診断の手引き

11.多系統萎縮症

1.主要項目

(1) オリーブ橋小脳萎縮症

中年以降に発症し、初発・早期症状として小脳性運動失調が前景に現れる。経過とともにパーキンソニズム、自律神経症状(排尿障害や起立性低血圧など)を呈することが多い。頭部のMRIで、小脳、橋(特に底部)の萎縮を比較的早期から認める。この変化をとらえるにはT1WI矢状断が有用である。また、T2WI水平断にて、比較的早期から橋中部に十字サインが認められる。この所見では診断的意義が高い。

(2) 線条体黒質変性症

中年以降に発症し、パーキンソン病様の症状で発症し、振戦よりは筋固縮、無動が目立つ。抗パーキンソン病薬に対する反応は不良であるが、数年間にわたって有効な例もある。経過と共に、自律神経症候や運動失調が加わってくる。MRIにて、橋底部、小脳の萎縮、線条体の萎縮、被殻外側のスリット状のT2高信号域などが診断の補助となる。特に被殻外側のT2高信号像の診断的意義は高い。パーキンソン病やびまん性レビー小病体との鑑別には123I―MIBG心筋シンチグラフィーが有用である。パーキンソン病やレビー小病体では、心筋への集積低下が認められるのに対して、多系統萎縮症では集積低下は認めない。

(3) シャイ・ドレーガー症候群

中年以降に発症し、起立性低血圧(収縮期でも20mmHgもしくは拡張期で10mmHg以上)、排尿障害(100m・以上の残尿・尿失禁)、男性での陰萎を中心とした自律神経症状が前景となる。発症後1年間にわたり上記の自律神経症状が前景であった場合に、シャイ・ドレーガー症候群ととらえる。発症後5年以上経過しても自律神経症状のみである場合は、他疾患(純粋自律神経失調症pure autonomic failure;PAF)や他の自律神経ニューロパチー(アミロイド・ポリニューロパチーや糖尿病性ニューロパチー)との鑑別が必要である。

2.参考事項

これまで、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症、シャイ・ドレーガー症候群として分類されてきた疾患については、病変分布の濃淡(オリーブ、橋、小脳、線条体、黒質、自律神経系の変性がさまざまな分布で認められる)によって臨床症状に多少の異なりがあるものの、基本的な臨床像は共通していることに加え、病理学的にも、特徴的なオリゴデンドロサイト内嗜銀性封入体が観察されることから、同一の疾患としてとらえられるようになり、これらの疾患を多系統萎縮症と総称するようになった。臨床的には、小脳性運動失調症、パーキンソニズム、自律神経症状のいずれかを初発症状として発病し、経過と共にそれ以外の症状も明らかになってくる。進行例では声門開大障害に伴う特徴的ないびきや睡眠時無呼吸が観察されることが多く、突然死を起こすことがあり注意する必要がある。

参考にした診断基準:

厚生労働省特定疾患調査研究班(運動失調症調査研究班)による診断基準

12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症

(1)を満たした上で、(2)~(4)の各疾病に関する状態に該当するものをいう。

(1) 糖尿病の診断

a.空腹時血糖値≧126mg/dl、75gOGTT2時間値≧200mg/dl、随時血糖値≧200mg/dl、のいずれか(静脈血漿値)が、別の日に行った検査で2回以上確認できること。

(注1) これらの基準値を超えても、1回の検査だけの場合には糖尿病型と呼ぶ。

(注2) ストレスのない状態での高血糖の確認が必要である。1回目と2回目の検査法は同じである必要はない。1回目の判定が随時血糖値≧200mg/dlで行われた場合は、2回目は他の方法によることが望ましい。1回目の検査で空腹時血糖値が126―139mg/dlの場合には、2回目にはOGTTを行うことを推奨する。

b.1回だけの検査が糖尿病型を示し、かつ次のいずれかの条件がみたされること。

ア.糖尿病の典型的症状(口渇、多欲、多尿、体重減少)の存在

イ.HbA1c≧6.5%(日本糖尿病学会グリコヘモグロビン標準化委員会の標準検体による補正値)

ウ.確実な糖尿病網膜症の存在

c.過去において上記のa.ないしb.がみたされたことがあり、それが病歴などで確認できること。

(注1) 以上の条件によって、糖尿病の判定が困難な場合には、患者を追跡し、時期をおいて再検査する。

(注2) 糖尿病の診断に当たっては、糖尿病の有無のみならず、分類(成因、代謝異常の程度)、合併症などについても把握するように努める。

(2) 糖尿病性神経障害

以下の重症度評価表において4点以上であること。

重症度評価表