添付一覧
○要介護認定における「認定調査票記入の手引き」、「主治医意見書記入の手引き」及び「特定疾病にかかる診断基準」について
(平成21年9月30日)
(老老発0930第2号)
(各都道府県・各指定都市介護保険主管部(局)長あて厚生労働省老健局老人保健課長通知)
認定調査等の実施については「要介護認定における「認定調査票記入の手引き」、「主治医意見書記入の手引き」及び「特定疾病にかかる診断基準」について」(平成21年3月31日老老発第0331001号厚生労働省老健局老人保健課長通知。以下「課長通知」という。)に基づき実施しているところである。
今般「要介護認定の見直しに係る検証・検討会」での指摘を踏まえ、要介護認定等の方法を見直したことに伴い「認定調査票記入の手引き」(別添1)、「主治医意見書記入の手引き」(別添2)及び「特定疾病にかかる診断基準」(別添3)を定め、平成21年10月1日から適用することとしたので通知する。
なお、本通知の施行に伴い、課長通知は平成21年9月30日限りで廃止する。
(別添1)
[認定調査票記入の手引き]
Ⅰ 認定調査票の概要
1 認定調査票の構成
2 認定調査票(概況調査)の構成
3 認定調査票(基本調査)の構成
4 認定調査票(特記事項)の構成
Ⅱ 調査方法全般についての留意点
1 調査員による認定調査について
Ⅲ 認定調査票の記入方法
1 認定調査票(概況調査)の記入要綱
2 認定調査票(基本調査及び特記事項)の記入要綱
Ⅰ 認定調査票の概要
1 認定調査票の構成
認定調査票は、以下の三点から構成されている。
・認定調査票(概況調査)
・認定調査票(基本調査)
・認定調査票(特記事項)
2 認定調査票(概況調査)の構成
認定調査票(概況調査)は、以下の項目から構成されている。
Ⅰ 調査実施者(記入者)
Ⅱ 調査対象者
Ⅲ 現在受けているサービスの状況(在宅利用・施設利用)
Ⅳ 置かれている環境等(調査対象者の家族状況、住宅環境等)
3 認定調査票(基本調査)の構成
認定調査票(基本調査)は、以下の7群から構成されている。
1) 身体機能・起居動作に関連する項目
「1―1麻痺等の有無」,「1―2拘縮の有無」,「1―3寝返り」,「1―4起き上がり」,「1―5座位保持」,「1―6両足での立位」,「1―7歩行」,「1―8立ち上がり」,「1―9片足での立位」,「1―10洗身」,「1―11つめ切り」,「1―12視力」,「1―13聴力」
2) 生活機能に関連する項目
「2―1移乗」,「2―2移動」,「2―3えん下」,「2―4食事摂取」,「2―5排尿」,「2―6排便」,「2―7口腔清潔」,「2―8洗顔」,「2―9整髪」,「2―10上衣の着脱」,「2―11ズボン等の着脱」,「2―12外出頻度」
3) 認知機能に関連する項目
「3―1意思の伝達」,「3―2毎日の日課を理解」,「3―3生年月日を言う」,「3―4短期記憶」,「3―5自分の名前を言う」,「3―6今の季節を理解」,「3―7場所の理解」,「3―8徘徊」,「3―9外出して戻れない」
4) 精神・行動障害に関連する項目
「4―1被害的」,「4―2作話」,「4―3感情が不安定」,「4―4昼夜逆転」,「4―5同じ話をする」,「4―6大声を出す」,「4―7介護に抵抗」,「4―8落ち着きなし」,「4―9一人で出たがる」,「4―10収集癖」,「4―11物や衣類を壊す」,「4―12ひどい物忘れ」,「4―13独り言・独り笑い」,「4―14自分勝手に行動する」,「4―15話がまとまらない」
5) 社会生活への適応に関連する項目
「5―1薬の内服」,「5―2金銭の管理」,「5―3日常の意思決定」,「5―4集団への不適応」,「5―5買い物」,「5―6簡単な調理」
6) 特別な医療に関連する項目
7) 日常生活自立度に関連する項目
4 認定調査票(特記事項)の構成
各々の項目についての特記事項は、上記の分類により1~7の各記載欄に記載する。この際、基本調査番号をあわせて( )内に記載する。
Ⅱ 調査方法全般についての留意点
1 認定調査員による認定調査について
1) 調査実施全般
原則として、一名の調査対象者につき、一名の認定調査員が一回で認定調査を終了することとしているが、一回目の認定調査の際に、調査対象者が急病等によってその状況が一時的に変化している場合等で、適切な認定調査が行えないと判断した時には、その場では認定調査は行わず、状況が安定した後に再度調査日を設定し認定調査を行う。
また、入院後間もない等、調査対象者の心身の状態が安定するまでに相当期間を要すると思われ、介護保険によるサービスの利用を見込めない場合は、必要に応じ、申請者に対して、一旦申請を取り下げ、状態が安定してから再度申請を行うよう説明する。
一回目の認定調査の際に、異なる認定調査員による再調査が不可欠と判断した時に限り、二回目の認定調査を行う。なお、認定調査を二回行った場合でも認定調査票は一式のみとし、主に調査を行った者を筆頭として調査実施者欄に記載する。
2) 調査日時の調整
認定調査員は、あらかじめ調査対象者や家族等、実際の介護者と調査実施日時を調整した上で認定調査を実施する。認定調査の依頼があった場合には出来るだけ早い時期に調査を行い、調査終了後は速やかに所定の書類を作成する。
要介護認定は申請から30日以内に行われる必要があり、認定調査の遅れにより、審査判定に支障が生じることがないように努める。
家族等の介護者がいる在宅の調査対象者については、介護者が不在の日は避けるようにする。(やむを得ず介護者不在で調査を行った場合は、特記事項に記載する。)
3) 調査場所の調整
認定調査員は、事前に調査対象者や介護者と調査実施場所を調整した上で認定調査を実施する。認定調査の実施場所については、原則として日頃の状況を把握できる場所とする。
申請書に記載された住所が、必ずしも本人の生活の場とは限らず、記載された住所に居住していない場合等があるため、事前の確認が必要となる。病院や施設等で認定調査を実施する場合は、調査対象者の病室や居室等、通常過ごしている場所を確認し、病院や施設等と調整した上でプライバシーに配慮して実施する。
4) 調査時の携行物品
認定調査員は、調査対象者を訪問する際には、介護支援専門員証等、調査員である身分を証する物を携行し、訪問時に提示する。また、調査項目の「1―12 視力」確認するための視力確認表を持参する。
5) 調査実施上の留意点
認定調査の実施にあたり、調査目的の説明を必ず行う。
基本的には、「目に見える」、「確認し得る」という事実によって、調査を行うことを原則とする。
できるだけ、調査対象者本人、介護者双方から聞き取りを行うように努める。必要に応じて、調査対象者、介護者双方から聞き取りを行うよう努める。必要に応じて、調査対象者、介護者から個別に聞き取る時間を設けるように工夫する。
独居者や施設入所者等についても、可能な限り家族や施設職員等、調査対象者の日頃の状況を把握している者に立ち会いを求め、できるだけ正確な調査を行うよう努める。
調査対象者の心身の状況については、個別性があることから、例えば、視力障害、聴覚障害等や疾病の特性(スモンなど)等に配慮しつつ、選択基準に基づき調査を行う。
6) 質問方法や順番等
声の聞こえやすさなどに配慮して、調査場所を工夫する。
調査対象者がリラックスして回答できるよう十分時間をかける。
優しく問いかけるなど、相手に緊張感を与えないよう留意する。
丁寧な言葉遣いや、聞き取りやすいように明瞭な発音に心がけ、専門用語や略語を使用しない。
調査項目の順番にこだわらず、調査対象者が答えやすい質問の導入や方法を工夫する。
会話だけでなく、手話や筆談、直接触れる等の方法も必要に応じて用いる。しかし、この際に調査対象者や介護者に不愉快な思いを抱かせないように留意する。
調査対象者や介護者が適切な回答ができるように、調査項目の内容をわかりやすく具体的に質問の仕方を工夫する。
調査対象者の状況を実際に確認できるよう面接方法を工夫するなどしても、認定調査に応じない場合は、市町村の担当者に相談をする。
調査対象者が正当な理由なしに、認定調査に応じない場合は、申請が却下となることがある。
7) 調査項目の確認方法
危険がないと考えられれば、調査対象者本人に実際に行為を行ってもらう等、調査者が調査時に確認を行う。対象者のそばに位置し、安全に実施してもらえるよう配慮する。危険が伴うと考えられる場合は、決して無理に試みない。
実際に行為を行ってもらえなかった場合や、日常の状況と異なると考えられる場合については、選択をした根拠と、より頻回に見られる状況や日頃の状況について、具体的な内容を「特記事項」に必ず記載する。調査項目に該当する介助についての状況が特記事項に記されていない場合には、再調査を依頼する場合があることに留意する。
8) 調査結果の確認
認定調査員は調査対象者や介護者に、認定調査の結果で不明な点や選択に迷う点があれば再度確認する。それにより、調査内容の信頼性を確保するとともに、意思疎通がうまくいかなかったための誤りを修正することができる。
認定調査員は「特記事項」を記入するときは、基本調査と特記事項の記載内容に矛盾がないか確認し、審査判定に必要な情報を簡潔明瞭に記載するよう留意する。
9) 主治医意見書との関係
認定調査の調査項目と主治医意見書の記載内容とでは選択基準が異なるものもあるため、類似の設問であっても、両者の結果が一致しないこともありえる。したがって、両者の単純な差異のみを理由に介護認定審査会で一次判定の修正が行われることはない。
認定調査の調査項目の選択は、あくまで、後述の「Ⅲ 認定調査票の記入方法」の「2 認定調査票(基本調査及び特記事項)の記入要綱」の各調査項目の定義等に基づいた選択を行うことが必要となる。
また、主治医意見書と認定調査の選択根拠が異なることにより、申請者の状況を多角的に見ることが可能になるという利点がある。
[Ⅲ 認定調査票の記入方法
1 認定調査票(概況調査)の記入要綱]
1) 記入方法
(1) 記入者
調査票右上部の保険者番号、被保険者番号については介護認定審査会事務局があらかじめ記入し、その他の内容は当該調査対象者に認定調査を行う認定調査員が記入する。
(2) 記入方法
認定調査票(概況調査)への記入は、原則としてインク又はボールペンを使用する。パーソナルコンピュータ、ゴム印等を使用することは差し支えない。
文字の修正、削除等の際には、修正液等を使用せず、必要な部分に線を引き、修正又は削除を行う。
2) 事務局による事前の記入事項
(1) 保険者番号
当該市町村の保険者番号を記入する。
(2) 被保険者番号
当該申請者の被保険者番号を記入する。
3) 認定調査員による記入事項
(1) 認定調査員(記入者)(Ⅰ)
実施日時、認定調査員氏名、所属機関等を記入する。認定調査の実施場所については、自宅内又は自宅外に○印をつけ、自宅外に○印をつけた場合は、場所名を記入する。
(2) 調査対象者(Ⅱ)
・過去の認定
該当するものに○印をつけ、二回目以降の認定申請である場合には、前回認定年月日を記入する。
・前回認定結果
二回目以降の認定申請である場合に、前回認定結果について該当するものに○印をつけ、要介護(支援)の場合には要介護(支援)状態区分についてあてはまる数字を( )内に記入する。
・調査対象者氏名
調査対象者の氏名を記入し、ふりがなをふる。
・性別
該当するものに○印をつける。
・生年月日
該当する元号に○印をつけ、生年月日及び年齢を記入する。
・現住所
居住地(自宅)の住所を記入する。なお、病院・施設等の入院・入所者は、病院・施設等の住所と電話番号を記入する。
・家族等連絡先
連絡先には、緊急時の連絡先となる家族等の氏名、調査対象者との関係、住所及び電話番号を記入する。
4) 現在受けているサービスの状況について(Ⅲ)
(1) 在宅利用の場合
在宅サービスを利用している場合は、該当する事項の□欄にレ印をつけ、サービス利用状況を記入する。「市町村特別給付」又は「介護保険給付以外の在宅サービス」を利用している場合についてはその名称を[ ]内に記入する。
サービス利用状況は、「住宅改修」については過去の実施の有無、「(介護予防)福祉用具貸与」については調査日時点における利用品目数を、「特定(介護予防)福祉用具販売」については過去六ヶ月に購入した品目数を、それ以外のサービスについては、当該月のサービス利用の回数を記入する。
なお、当該月の利用状況が通常の状況と異なる場合は、認定調査を行った日の直近の月のサービス利用状況を記入する。
(2) 施設利用の場合
施設・病院に入所(院)している場合は、該当する施設の□欄にレ印をつけ、施設(病院)名、住所及び電話番号を記入する。
5) 置かれている環境等(Ⅳ)
調査対象者の家族状況、調査対象者の居住環境、日常的に使用する機器・器械の有無等について特記すべき事項を記入する。置かれている状況等は、介護認定審査会資料にて情報提供されることがある。
ただし、置かれている環境等を根拠に二次判定での変更を行うことは認められておらず、あくまで参考の情報として扱う。
[Ⅲ 認定調査票の記入方法
2 認定調査票(基本調査及び特記事項)の記入要綱]
認定調査票記入方法
1) 基本調査の記入方法
調査項目には、①能力を確認して判定する(以下「能力」という)、②生活を営む上で他者からどのような介助が提供されているか(介助の方法)(以下「介助の方法」という)、あるいは、③障害や現象(行動)の有無(以下「有無」という)を確認して判定するというように、判定の基準が3軸ある。調査項目のうち、「寝返り」、「起き上がり」、「座位保持」、「両足での立位」、「歩行」、「立ち上がり」、「片足での立位」、「視力」、「聴力」、「えん下」、「意思の伝達」、「毎日の日課を理解」、「生年月日をいう」、「短期記憶」、「自分の名前をいう」、「今の季節を理解」、「場所の理解」、「日常の意思決定」の項目を「能力」に関する項目に、「洗身」、「つめ切り」、「移乗」、「移動」、「食事摂取」、「排尿」、「排便」、「口腔清潔」、「洗顔」、「整髪」、「上衣の着脱」、「ズボン等の着脱」、「薬の内服」、「金銭の管理」、「買い物」、「簡単な調理」の項目を「介助の方法」に関する項目に、それ以外の項目を「障害や現象(行動)の有無」の項目に分類した。このうち、「有無」の項目には「麻痺等・拘縮」を評価する項目と「BPSD関連」などを評価する項目がある。第4群の「精神・行動障害」のすべての項目及び、第3群の「3―8 徘徊」「3―9 外出すると戻れない」、第5群の「5―4 集団への不適応」を総称して「BPSD関連」として整理する。BPSDとは、Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略で、認知症に伴う行動・心理状態を意味する。
調査項目は、第4群のように、行動の有無という単一の判定の軸で評価できる群がある一方、「能力」、「介助の方法」、「有無」という3軸のすべての評価基準が混在している群もある。認定調査員には、調査項目によって異なる選択基準で混乱せずに選択する能力が求められている。
更に、これらの調査項目が高齢者の生活に、どのような影響を与えているかを体系的に理解できるように、①ADL(生活機能)・起居動作、②認知機能、③行動、④社会生活、⑤医療という分類を行い、この調査項目が何を意味しているかを把握することを容易にした。
認定調査票の「基本調査」の選択肢の選択について、「能力」に関する項目や「有無(麻痺等・拘縮)」は、危険がないと考えられれば調査対象者本人に実際に行為を行ってもらう等、認定調査員が調査時に確認を行うことを原則とする。しかし、体調不良等、何らかの理由により実際に行為を行ってもらえなかった場合や、調査時の環境が日頃の環境と異なったり、調査対象者の緊張等により日頃の状況と異なっていると考えられる場合、時間や状況によって、できたり、できなかったりする場合は、より頻回に見られる状況や日頃の状況について聞き取りを行い、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づいて選択する。また選択をした根拠について具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「介助の方法」の項目については、原則として実際に介助が行われているかどうかで選択するが、「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
「能力」や「介助の方法」については、日常的に自助具、補装具等の器具・器械を使用している場合で、使用していることにより機能が補完されていれば、その状態が本来の身体状況であると考え、その使用している状況において選択する。
「有無(BPSD関連)」の項目は、一定期間(調査日より概ね過去1か月間)の状況において、それらの行動がどの程度発生しているのかについて、頻度に基づき選択する。また、基本調査項目の中には該当する項目が存在しないものの、類似の行動またはその他の精神・行動障害などにより具体的な「介護の手間」が生じていることが聞き取りにより確認された場合は、類似または関連する項目の特記事項に、具体的な介護の手間の内容と頻度を記載し、介護認定審査会の二次判定(介護の手間にかかる審査判定)の判断を仰ぐことができる。
2) 特記事項の記入方法
「特記事項」は、基本調査項目(群)の分類に基づき構成されており、その基本調査項目(群)の分類ごとに基本調査項目番号を括弧に記載した上で、具体的な内容を記入する。
「特記事項」を記入する場合は、基本調査と特記事項の記載内容に矛盾がないか確認し、審査判定に必要な情報が提供できるよう、簡潔明瞭に記載するよう留意する。
介護認定審査会において、特記事項は、「基本調査(選択根拠)の確認」と介護の手間という二つの視点から活用されるが、それぞれの目的を果たすため、「選択根拠」、「手間」、「頻度」の三点に留意しつつ、特記事項を記載する。
また、記載する内容が選択肢の選択基準に含まれていないことであっても、介護の手間に関係する内容であれば、特記事項に記載することができる。その内容が介護認定審査会における二次判定(介護の手間にかかる審査判定)で評価されることになる。
(1) 基本調査の確認(一次判定の修正)
基本調査の選択においては、認定調査員が、誤って選択している場合や、より頻回な状況を選択する場合、特殊な状況などで複数通りの解釈があてはまる場合も例外的に存在する。「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって明らかに「不適切」であったとされる場合の選択においても、介護認定審査会において慎重な判断が必要となる。
一次判定の修正・確定において、特に、こうした場合を介護認定審査会が判断するうえで、申請者の状況を示す特記事項は、重要な役割を果たす。たとえば「見守り」と「一部介助」で迷った場合は、特記事項の内容から介護認定審査会が基本調査での選択の妥当性について検討する場合などが想定される。申請者の実態と、基本調査の定義に多少でも乖離がある場合は、具体的な状況と認定調査員の選択根拠を明示する。
(2) 介護の手間の判断
介護認定審査会では、介護において特別な手間が発生しているかどうかを議論する場合、例えば、「ひどい物忘れによって、認知症のさまざまな周辺症状がある」という行動があるという情報だけでは行わない。こういう情報に加えて、「認知症によって、排泄行為を適切に理解することができないため、家族が常に、排泄時に付き添い、あらゆる介助を行わなければならない」といった具体的な対応としての「手間」の記述があり、その多少が示されてはじめて、特別な手間かどうかを判断する根拠が与えられるということが理解される必要がある。
適正な審査判定には、介護の手間の増加や減少の根拠となる特記事項や主治医意見書の記述が介護認定審査会資料として記載され、残されていることが必要であり、また介護認定審査会委員は、二次判定に際して、介護の手間が根拠となったことを明示することが必須となる。
介護の手間の判断は、単に「一部介助」であるか、「全介助」であるかといった択一的な選択だけで行われるものではない。「一部介助」「全介助」といった内容は、一般的に一次判定ですでに加味されているものであることから、二次判定の介護の手間の多少に関する議論では、一次判定では加味されていない具体的な介護の手間が重視される。また、介護の手間は「量」として検討されるため、実際に行われている介助や対応などの介護の手間がどの程度発生しているのかという「頻度」に関する情報は、介護の手間と併せて参照することで、介護の全体量を理解することが可能となることから、介護認定審査会にとって重要な情報となる。「ときどき」「頻繁に」のように、人によって捉える量が一定でない言葉を用いることは、平準化の観点からは望ましくない。平均的な手間の出現頻度について週に2、3回というように数量を用いて具体的な頻度を記載する。
3) 能力で評価する調査項目
(1) 能力で評価する調査項目の選択基準
能力で評価する調査項目は、大きく分けて身体機能の能力を把握する調査項目(第1群に多く見られる)と認知能力を把握する調査項目(第3群)に分類される。
能力で評価する項目は、当該の行動等について「できる」か「できない」かを、各項目が指定する確認動作を可能な限り実際に試行して評価する項目である。ただし、実際に試行した結果と日頃の状況が異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択する。
なお、認定調査員が依頼しなくても、調査対象者が確認動作と同様の行為や回答を行っていることが調査実施中に確認できれば、必ずしも実際に行ってもらう必要はない(訪問時の玄関までの出迎えによって歩行動作が確認できた場合など)。
その行為ができないことによって介助が発生しているかどうか、あるいは日常生活上の支障があるかないかは選択基準に含まれない。
18項目 |
能力で評価する調査項目 |
(1) 能力で評価する調査項目(18項目) 「1―3 寝返り」 「1―4 起き上がり」 「1―5 座位保持」 「1―6 両足での立位保持」 「1―7 歩行」 「1―8 立ち上がり」 「1―9 片足での立位」 「1―12 視力」 「1―13 聴力」 「2―3 えん下」 「3―1 意思の伝達」 「3―2 毎日の日課を理解」 「3―3 生年月日や年齢を言う」 「3―4 短期記憶」 「3―5 自分の名前を言う」 「3―6 今の季節を理解する」 「3―7 場所の理解」 「5―3 日常の意思決定」 |
調査項目の選択肢の選択及び「特記事項」記載の流れ
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況との違いなど、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
(2) 特記事項の記載において特に留意すべき点
能力で評価する調査項目は、項目それ自体が直接に調査対象者の介護の手間を表すものではないが、実際の「介助の方法」(次の項目で解説)を理解するうえで有用である。
ただし、心身の機能の低下と、介護の量は必ずしも比例関係にあるわけではなく、心身の機能が低下するほど介護量が増大するとは限らない。完全な寝たきりの状態は、残存機能がある場合よりも介護量が減少することがあるのは一例である(このような場合に主観的な判断に依らず適切な介護の手間の総量の推計のために一次判定ソフトが導入されている)。介護認定審査会資料を読む介護認定審査会の委員にとっては、能力で評価する調査項目の状況と、介助の項目の状態の整合性が取れているかどうかは検討する際の着眼点となることから、能力と介助の方法の項目との関係が不自然に感じられるような特殊な事例については、両者の関係性を丁寧に特記事項にて記録する。
また、認定調査員が調査項目の選択において「どちらの選択も妥当」と感じた場合など、判断に迷った場合は、具体的な状況と認定調査員の判断根拠を特記事項に記載し、介護認定審査会の一次判定修正・確定の手順において判断を仰ぐこともできる。
なお、何らかの能力の低下によって、実際に介護の手間をもたらしているものの、「介助の方法」の項目に適切な項目が設定されていないために、具体的な介護の手間を記載することができない場合は、能力の項目の中でもっとも類似または関連する調査項目の特記事項に、具体的な介護の手間とその頻度を記載し、介護認定審査会おける二次判定(介護の手間にかかる審査判定)の判断を仰ぐこともできる。
4) 介助の方法で評価する調査項目
(1) 介助の方法で評価する調査項目の選択基準
介助の方法で評価する項目の多くは、生活機能に関する第2群と、社会生活の適応に関する第5群にみられる。これらの項目は、具体的に介助が「行われている―行われてない」の軸で選択を行うことを原則とするが、「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって不適切であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な介助の方法を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
不適切な状況にあると判断された場合は、単に「できる―できない」といった個々の行為の能力のみで評価せず、生活環境や本人の置かれている状態なども含めて、総合的に判断する。
特記事項の記載にあたっては、介護認定審査会が、「介護の手間」を評価できるよう、実際に行われている介助で選択した場合は、具体的な「介護の手間」と「頻度」を、特記事項に記載する。認定調査員が適切と考える介助の方法を選択した場合は、実際に行われている介助の方法と認定調査員の選択結果が異なった理由やその実態について、介護認定審査会の委員が理解できるよう、特記事項に記載しなければならない。
また、記載する内容が選択肢の選択基準に含まれていないことであっても、介護の手間に関係する内容であれば、特記事項に記載することができる。その内容が介護認定審査会における二次判定(介護の手間にかかる審査判定)で評価されることになる。
なお、「介助」の項目における「見守り等」や「一部介助」「全介助」といった選択肢は、介助の量を意味するものではなく、「介助の方法」を示すものであることから、「一部介助ほどは手間がかかってないから見守り等を選択する」といった考え方は誤りである。具体的な介助の量の多寡について特に記載すべき事項がある場合は特記事項に記載することにより、介護認定審査会の二次判定で介護の手間として判断される。
16項目 |
介助の方法で評価する調査項目 |
(2) 介助の方法で評価する調査項目(16項目) 「1―10 洗身」 「1―11 つめ切り」 「2―1 移乗」 「2―2 移動」 「2―4 食事摂取」 「2―5 排尿」 「2―6 排便」 「2―7 口腔清潔」 「2―8 洗顔」 「2―9 整髪」 「2―10 上衣の着脱」 「2―11 ズボン等の着脱」 「5―1 薬の内服」 「5―2 金銭の管理」 「5―5 買い物」 「5―6 簡単な調理」 |
調査項目の選択肢の選択及び「特記事項」記載の流れ
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合の選択基準」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
実際の聞き取りにおいては、該当する行為(例えば排尿、洗顔など)が一定期間(調査日より概ね過去1週間)にどの程度行われているのかを把握した上で、そのうち介助が行われている(または介助が行われていない)頻度がもっとも多いもので選択を行うことを原則とする。
例えば、普段は食事摂取が「1.介助されていない」であっても、週に1、2回「4.全介助」となる場合は、「2.見守り」、「3.一部介助」といった両方の中間の選択をすることは誤りとなる。また、最も重い状態で選択し「4.全介助」とすることも誤りとなる。この場合は、最も頻度の多い「1.介助されていない」を選択し、「4.全介助」となる場合の具体的な内容や頻度は特記事項に記載する。
また、発生頻度の少ない行為においては、週のうちの介助のある日数で評価するのではなく、発生している行為量に対して、どれだけ頻回に介助が行われているかを評価する。たとえば、洗身において、すべて介助されているが、週3回しか入浴機会がなく、7日のうち3日ということで、4日は入浴機会がない、すなわち「1.介助されていない」が頻回な状況であると考えるのは誤りである。この場合、週3回の行為の機会において、3回とも全介助であれば、「4.全介助」を選択する。
排尿のように、行為そのものの発生頻度が多いものは、週の中で介助の状況が大幅に異なることがないのであれば、通常の1日の介助における昼夜の違いなどを聞き取り、頻度で評価してもかまわない。
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合の選択基準」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
例えば、歩行ができない場合でも車椅子を自操している場合は、移動に関しては「1.介助されていない」と選択し、車椅子を使用している状況を特記事項に記載する。
「「実際の介助の方法」が適切な場合」
実際の介助の状況を聞き取った上で、その介助の方法が、当該対象者にとって適切であると認定調査員が考えた場合は、実際の介助の方法に基づき選択を行い、実際の「介護の手間」の具体的な内容と、「頻度」を特記事項に記載し、介護認定審査会の判断を仰ぐ。
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
(2) 特記事項の記載において特に留意すべき点
介護認定審査会では、具体的な介護の手間の多少を特記事項から評価することとなっているため、介助の方法で評価する調査項目の特記事項の記載内容は、評価上の重要なポイントとなる。介護認定審査会が適切に介助量を判断できるよう、具体的な介護の手間とその頻度を記載する。これらの特記事項の情報は、介護認定審査会の介護の手間にかかる審査判定において、通常の介助よりも手間が大きいか小さいかを判断する際に活用される。
また、「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、そのように判断する具体的な理由や事実を特記事項に記載した上で、適切な介助の方法を選択する。これらの特記事項の情報は、介護認定審査会の一次判定修正・確定の審査判定において、基本調査の選択の妥当性を審査する際に活用される。なお、適切な介助の方法を選択した場合であっても、事実や根拠が明示されていない場合は、介護認定審査会においては評価されない。
5) 有無で評価する調査項目
(1) 有無で評価する調査項目の選択基準
「有無」の項目には第1群の「麻痺等・拘縮」を評価する項目と、「BPSD関連」を評価する項目がある。第4群の「精神・行動障害」のすべての項目及び、第3群の「3―8 徘徊」「3―9 外出すると戻れない」、第5群の「5―4 集団への不適応」を総称して「BPSD関連」として整理する。BPSDとは、Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略で、認知症に伴う行動・心理状態を意味する。
なお、「2―12 外出頻度」については、「有無」の項目に該当するが、「麻痺等・拘縮」にも「BPSD関連」にも該当しないが、「有無」の項目であり、「2―12 外出頻度」で定める選択基準に基づいて選択を行う。
21項目 |
有無で評価する調査項目 |
(3) 有無で評価する調査項目(21項目) 「1―1 麻痺等の有無(左上肢、右上肢、左下肢、右下肢、その他(四肢の欠損))」 「1―2 拘縮の有無(肩関節、股関節、膝関節、その他(四肢の欠損))」 「2―12 外出頻度」 「3―8 徘徊」 「3―9 外出すると戻れない」 「4―1 物を盗られたなどと被害的になる」 「4―2 作話」 「4―3 泣いたり、笑ったりして感情が不安定になる」 「4―4 昼夜の逆転がある」 「4―5 しつこく同じ話をする」 「4―6 大声をだす」 「4―7 介護に抵抗する」 「4―8 「家に帰る」等と言い落ち着きがない」 「4―9 一人で外に出たがり目が離せない」 「4―10 いろいろなものを集めたり、無断でもってくる」 「4―11 物を壊したり、衣類を破いたりする」 「4―12 ひどい物忘れ」 「4―13 意味もなく独り言や独り笑いをする」 「4―14 自分勝手に行動する」 「4―15 話がまとまらず、会話にならない」 「5―4 集団への不適応」 |
(2) 麻痺等の有無・拘縮の有無
「調査対象者に対し確認動作で確認した場合」
調査対象者に対し、実際に確認動作で確認した状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に確認動作で確認した状況と、日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「調査対象者に対し確認動作による確認ができなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「特記事項の記載において特に留意すべき点」
認定調査員が調査項目の選択において「どちらの選択も妥当」と感じた場合など、判断に迷った場合は、具体的な状況と認定調査員の判断根拠を特記事項に記載し、介護認定審査会の一次判定 修正・確定の手順において判断を仰ぐこともできる。
また、麻痺等・拘縮によって、実際に介護の手間をもたらしているものの、「介助の方法」の項目に適切な項目が設定されていないために、具体的な介護の手間を記載することができない場合は、能力の項目に具体的な介護の手間とその頻度を記載し、介護認定審査会おける二次判定(介護の手間にかかる審査判定)の判断を仰ぐこともできる。
調査項目の選択肢の選択及び「特記事項」記載の流れ
(3) BPSD関連の有無
「行動が発生している場合」
調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況で選択する。調査時に実際に行動が見られた場合は、その状況について特記事項に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1か月間)の状況において、それらの行動がどの程度発生しているのかについて、頻度に基づき選択する。
「行動が発生していない場合」
一定期間(調査日より概ね過去1か月間)の状況において、行動が発生していない場合は「ない」を選択する。
また、基本調査項目の中には該当する項目が存在しないものの類似の行動またはその他の精神・行動障害などにより具体的な「介護の手間」が生じていることが聞き取りにより確認された場合は、類似または関連する項目の特記事項に、具体的な介護の手間の内容と頻度を記載し、介護認定審査会の二次判定の判断を仰ぐことができる。
「特記事項の記載において特に留意すべき点」
有無の項目(BPSD関連)は、その有無だけで介護の手間が発生しているかどうかは必ずしも判断できないため、二次判定で介護の手間を適切に評価するためには、特記事項に、それらの有無によって発生している介護の手間を、頻度もあわせて記載する必要がある。また介護者が特に対応をとっていない場合などについても特記事項に記載する。
調査項目の選択肢の選択及び「特記事項」記載の流れ
※「4―12 ひどい物忘れ」については、何らかの行動が発生していない場合でも「周囲の者が何らかの行動をとらなければならないような状況(火の不始末など)」が発生している場合は、「行動が発生している」として評価する。
※「2―12外出頻度」については、「麻痺等・拘縮」にも「BPSD関連」にも該当しないが、「有無」の項目であり、「2―12 外出頻度」で定める選択基準に基づいて選択を行う。
1―1 麻痺等の有無
1.ない 2.左上肢 3.右上肢 4.左下肢 5.右下肢 6.その他(四肢の欠損)
調査項目の定義
「麻痺等の有無」を評価する項目である。
ここでいう「麻痺等」とは、神経又は筋肉組織の損傷、疾病等により、筋肉の随意的な運動機能が低下又は消失した状況をいう。
脳梗塞後遺症等による四肢の動かしにくさ(筋力の低下や麻痺等の有無)を確認する項目である。
選択肢の選択基準
「1.ない」
・麻痺等がない場合は、「1.ない」とする。
「2.左上肢」、「3.右上肢」、「4.左下肢」、「5.右下肢」
・麻痺等や筋力低下がある場合は、「2.左上肢」「3.右上肢」「4.左上肢」「5.右下肢」の中で該当する部位を選択する。
・複数の部位に麻痺等がある場合(片麻痺、対麻痺、三肢麻痺、四肢麻痺等)は「2.左上肢」「3.右上肢」「4.左下肢」「5.右下肢」のうち、複数を選択する。
・各確認動作で、努力して動かそうとしても動かない、あるいは目的とする確認動作が行えない場合に該当する項目を選択する。
「6.その他(四肢の欠損)」
・いずれかの四肢の一部(手指・足趾を含む)に欠損がある場合は「6.その他」を選択する。
・上肢・下肢以外に麻痺等がある場合は、「6.その他」を選択する。
・「6.その他」を選択した場合は、必ず部位や状況等について具体的に「特記事項」に記載する。
調査上の留意点
冷感等の感覚障害は含まない。
えん下障害は、「2―3 えん下」において評価する。
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
麻痺等には、加齢による筋力の低下、その他の様々な原因による筋肉の随意的な運動機能の低下によって目的とする確認動作が行えない場合が含まれる。
意識障害等で、自分の意思で四肢を十分に動かせないために目的とする確認動作が行えない場合も含む。
パーキンソン病等による筋肉の不随意な動きによって随意的な運動機能が低下し、目的とする確認動作が行えない場合も含まれる。
関節に著しい可動域制限があり、関節の運動ができないために目的とする確認動作が行えない場合も含む。なお、軽度の可動域制限の場合は、関節の動く範囲で行う。
「主治医意見書」の麻痺に関する同様の項目とは、選択の基準が異なることに留意すること。
項目の定義する範囲以外で日常生活上での支障がある場合は、特記事項に記載する。
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
なお、実際に確認する場合は、「図1―1」から「図1―5」の「上肢の麻痺等の有無の確認方法」及び「下肢の麻痺等の有無の確認方法」に示す動作が行えるかどうかで選択する。
深部感覚の障害等により運動にぎこちなさがある場合であっても、確認動作が行えるかどうかで選択する(傷病名、疾病の程度は問わない)。
確認動作は、通常対象部位の関節を伸ばした状態で選択するが、拘縮で肘が曲がっている場合、可能な限り肘関節を伸ばした状態で行い、評価をし、状況については特記事項に記入する。また、強直(曲げることも伸ばすこともできない状態)の場合は、その状態で行い、状況については特記事項に記入する。
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「上肢の麻痺等の有無の確認方法」
【注意点】
確認時には、本人または家族の同意の上で、ゆっくり動かしてもらって確認を行う。調査対象者が痛みを訴える場合は、動作の確認を中止し、そこまでの状況で選択を行う。危険と判断される場合は、確認は行わない。
■ 測定(検査)肢位: 図1―1、1―2に示す座位または図1―3に示す仰臥位(仰向け)で行う
■ 測定(検査)内容:
座位の場合は、肘関節を伸ばしたままで腕を前方及び横に、自分で持ち上げ、静止した状態で保持できるかどうかを確認する(肘関節伸展位で肩関節の屈曲及び外転)。どちらかができなければ「あり」とする。仰臥位の場合は、腕を持ち上げられるかで確認する。
肩の高さくらいにまで腕を上げることができるかどうかで選択を行う。円背の場合には、あごの高さくらいまで腕(上肢)を上げることができなければ「あり」とする。
① 前方に腕(上肢)を肩の高さまで自分で挙上し、静止した状態で保持できるか確認する。(図1―1―1)
① 前方に腕(上肢)を肩の高さまで自分で挙上し、静止した状態で保持できるか確認する。(円背の場合)
② 横に腕(上肢)を肩の高さまで自分で挙上し静止した状態で保持できるか確認する。(図1―2)
認定調査員は対象者の前方に位置し、認定調査員の手を触れるように指示する。
認定調査員は相対して座り、動きを行って見せ、対象者に行ってもらう。
①′ (仰臥位(仰向け)で行う場合)前方頭上に腕を挙上する(図1―3)
上肢を体側に添っておき、その位置から肘関節を伸ばしたまま腕を自分で挙上し、静止した状態で保持できるか確認する。(肘関節伸展位での前方挙上)
「下肢の麻痺等の有無の確認方法」
【注意点】
確認時には、本人または家族の同意の上で、ゆっくり動かしてもらって確認を行う。調査対象者が痛みを訴える場合は、動作の確認を中止し、そこまでの状況で選択を行う。危険と判断される場合は、確認は行わない。
■ 測定肢位: 図1―4に示す座位または図1―5に示す仰臥位(仰向け)で行う。
■ 測定内容:
膝を伸ばす動作により下肢を水平位置まで挙上し、静止した状態で保持できるかを確認する(股・膝関節屈曲位での膝関節の伸展)。床に対して、水平に足を挙上できるかどうかについて確認する。具体的には、踵と膝関節(の屈側)を結ぶ線が床と並行になる高さまで挙上し静止した状態で保持できることを確認する。また、椅子で試行する場合は、大腿部が椅子から離れないことを条件とする。仰向けで試行する場合は、枕等から大腿部が離れないことを条件とする。
なお、膝関節に拘縮があるといった理由や下肢や膝関節等の生理学的な理由等で膝関節の完全な伸展そのものが困難であることによって水平に足を挙上できない(仰向けの場合には、足を完全に伸ばせない)場合には、他動的に最大限動かせる高さ(可動域制限のない範囲内)まで、挙上することができ、静止した状態で保持できれば「なし」とし、できなければ「あり」とする。
股関節および膝関節屈曲位から膝関節の伸展(下腿を挙上する)
① 座位で膝を床に対して、自分で水平に伸ばしたまま静止した状態で保持できるか確認する。(股関節屈曲位からの膝関節の伸展)(図1―4)
② 仰向けで膝の下に枕等を入れて自分で膝から下(下腿)を持ち上げ、伸ばしたまま静止した状態で保持できるか確認する。
(仰臥位での股・膝関節屈曲位からの膝関節の伸展)(図1―5)
1―2 拘縮の有無
1.ない 2.肩関節 3.股関節 4.膝関節 5.その他(四肢の欠損)
調査項目の定義
「拘縮の有無」を評価する項目である。
ここでいう「拘縮」とは、対象者が可能な限り力を抜いた状態で他動的に四肢の関節を動かした時に、関節の動く範囲が著しく狭くなっている状況をいう。
選択肢の選択基準
「1.ない」
・四肢の関節の動く範囲の制限がない場合は、「1.ない」とする。
「2.肩関節」、「3.股関節」、「4.膝関節」
複数の部位に関節の動く範囲の制限がある場合は「2.肩関節」「3.股関節」「4.膝関節」のうち、複数を選択する。他動的に動かしてみて制限がある場合が該当し、自力では動かせないという状態だけでは該当しない。
左右のいずれかに制限があれば「制限あり」とする。
「5.その他(四肢の欠損)」
・いずれかの四肢の一部(手指・足趾を含む)に欠損がある場合は「5.その他」を選択する。
・肩関節、股関節、膝関節以外について、他動的に動かした際に拘縮や可動域の制限がある場合は「5.その他」を選択する。
・「5.その他」を選択した場合は、必ず部位や状況等について具体的に「特記事項」に記載する。
調査上の留意点
疼痛のために関節の動く範囲に制限がある場合も含まれる。
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
筋力低下については、「1―1 麻痺等の有無」において評価する。
あくまでも、他動運動により目的とする確認動作ができるか否かにより選択するものであり、「主治医意見書」の同様の項目とは、選択基準が異なることもある。
項目の定義する範囲以外で日常生活上での支障がある場合は、特記事項に記載する。
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「拘縮の有無」については、傷病名、疾病の程度、関節の左右や関節の動く範囲の制限の程度、調査対象者の意欲等にかかわらず、他動運動により目的とする確認動作(図2―1から図2―8)ができるか否かにより確認する。
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「関節の動く範囲の制限の有無の確認方法」
【注意点】
確認時には、本人または家族の同意の上で、対象部位を軽く持ち、動作の開始から終了までの間に4~5秒程度の時間をかけてゆっくり動かして確認を行う。調査対象者が痛みを訴える場合は、それ以上は動かさず、そこまでの状況で選択を行う。
90度程度曲がれば「制限なし」となるため、調査対象者の状態に十分注意し、必要以上に動かさないようにしなくてはならない。
動かすことが危険と判断される場合は、確認は行わない。
■ 測定(検査)内容: 「2.肩関節」は、前方あるいは横のいずれかに可動域制限がある場合を「制限あり」とする。
肩の高さくらいまで腕(上肢)を上げることができれば「制限なし」とする。
円背の場合には、あごの高さくらいまで腕(上肢)を上げることができれば「制限なし」とする。
肩の高さくらいまで腕(上肢)を上げることができれば「制限なし」とする。
<仰臥位の場合>
仰向けで寝たまま(仰臥位)の場合、左右の肩を結んだ高さまで腕(上肢)を動かすことができない、もしくは、前方に腕を挙上することができなければ「制限あり」とする。
「3.股関節」は、屈曲または外転のどちらかに可動域制限がある場合を制限ありとする。
図2―3(屈曲)または図2―4もしくは図2―5(外転)のいずれかができなければ「制限あり」とする。
仰向けに寝た姿勢(仰臥位)で膝を曲げたままで、股関節が直角(90度)程度曲がれば「制限なし」とする。
仰向けに寝た姿勢(仰臥位)あるいは座位で、膝が閉じた状態から見て、膝の内側を25cm程度開く(はなす)ことができれば「制限なし」とする。O脚等の膝が閉じない場合であっても、最終的に開いた距離が25cm程度あるかどうかで選択を行う。本確認動作は、膝を外側に開くことができるかを確認するためのものであり、内側への運動に関しては問わない。
また、片足のみの外転によって25cmが確保された場合も「制限なし」とするが、もう一方の足の外転に制限がある場合、その旨を特記事項に記載する。
※ なお、25cm程度とは拳2個分あるいはA4ファイルの短い方の長さ
「4.膝関節」は、伸展もしくは屈曲方向のどちらかに可動域に制限がある場合を制限ありとする。
膝関節をほぼ真っ直ぐ伸ばした状態から90°程度他動的に曲げることができない場合に「制限あり」とする。座位、うつ伏せで寝た姿勢(腹臥位)、仰向けに寝た姿勢(仰臥位)、のうち、調査対象者に最も負担をかけないいずれか一つの方法で確認できればよい。
1―3 寝返り
1.つかまらないでできる 2.何かにつかまればできる 3.できない
調査項目の定義
「寝返り」の能力を評価する項目である。
ここでいう「寝返り」とは、きちんと横向きにならなくても、横たわったまま左右のどちらかに身体の向きを変え、そのまま安定した状態になることが自分でできるかどうか、あるいはベッド柵、サイドレールなど何かにつかまればできるかどうかの能力である。
調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択する。
身体の上にふとん等をかけない時の状況で選択する。
選択肢の選択基準
「1.つかまらないでできる」
・何にもつかまらないで、寝返り(片側だけでもよい)が自力でできる場合をいう。
・仰向けに寝ることが不可能な場合に、横向きに寝た状態(側臥位)から、うつ伏せ(腹臥位)に向きを変えることができれば、「1.つかまらないでできる」を選択する。
・認知症等で声かけをしない限りずっと同じ姿勢をとり寝返りをしないが、声をかければゆっくりでも寝返りを自力でする場合、声かけのみでできれば「1.つかまらないでできる」を選択する。
「2.何かにつかまればできる」
・ベッド柵、ひも、バー、サイドレール等、何かにつかまれば自力で寝返りができる場合をいう。
「3.できない」
・介助なしでは、自力で寝返りができない等、寝返りに介助が必要な場合をいう。
調査上の留意点
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
側臥位から腹臥位や、きちんと横向きにならなくても横たわったまま左右どちらか(片方だけでよい)に向きを変えられる場合は、「1.つかまらないでできる」を選択する。
一度起き上がってから体の方向を変える行為は、寝返りとは考えない。
自分の体の一部(膝の裏や寝巻きなど)を掴んで寝返りを行う場合(掴まないとできない場合)は「2.何かにつかまればできる」を選択する。
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
1―4 起き上がり
1.つかまらないでできる 2.何かにつかまればできる 3.できない
調査項目の定義
「起き上がり」の能力を評価する項目である。
ここでいう「起き上がり」とは、身体の上にふとんをかけないで寝た状態から上半身を起こすことができるかどうかの能力である。
身体の上にふとん等をかけない時の状況で選択する。
調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容から、選択する。
選択肢の選択基準
「1.つかまらないでできる」
・何にもつかまらないで自力で起き上がることができる場合をいう。習慣的に、体を支える目的ではなく、ベッド上に手や肘をつきながら起き上がる場合も含まれる。
「2.何かにつかまればできる」
・ベッド柵、ひも、バー、サイドレール等、何かにつかまれば自力で起き上がりができる場合をいう。
「3.できない」
・介助なしでは自力で起き上がることができない等、起き上がりに介助が必要な場合をいう。途中まで自分でできても最後の部分で介助が必要である場合も含まれる。
調査上の留意点
寝た状態から上半身を起こす行為を評価する項目であり、うつ伏せになってから起き上がる場合等、起き上がりの経路については限定しない。
自分の膝の裏をつかんで、反動を付けて起き上がれる場合等、自分の体の一部を支えにしてできる場合(支えにしないと起き上がれない場合)は、「2.何かにつかまればできる」を選択する。
体を支える目的で手や肘でふとんにしっかりと加重して起き上がる場合(加重しないと起き上がれない場合)は「2.何かにつかまればできる」を選択する。
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
常時、ギャッチアップの状態にある場合は、その状態から評価し、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
補装具を使用している場合は、使用している状況で選択する。ギャッチアップ機能がついている電動ベッド等の場合はこれらの機能を使わない状態で評価する。
1―5 座位保持
1.できる 2.自分の手で支えればできる 3.支えてもらえればできる 4.できない
調査項目の定義
「座位保持」の能力を評価する項目である。
ここでいう「座位保持」とは、背もたれがない状態での座位の状態を10分間程度保持できるかどうかの能力である。
調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択する。
選択肢の選択基準
「1.できる」
・背もたれや介護者の手による支えがなくても、座位の保持が自力でできる場合をいう。
・下肢の欠損等により床に足をつけることが不可能な場合であっても座位保持ができる場合には、「1.できる」を選択する。
・下肢が欠損しているが日頃から補装具を装着しており、できる場合は「1.できる」を選択する。
「2.自分の手で支えればできる」
・背もたれは必要ないが、手すり、柵、坐面、壁を自分の手で支える必要がある場合をいう。
「3.支えてもらえればできる」
・背もたれがないと座位が保持できない、あるいは、介護者の手で支えていないと座位が保持できない場合をいう。
「4.できない」
・背もたれを用いても座位が保持できない場合をいう。具体的には、以下の状態とする。
・長期間(おおむね1ヶ月)にわたり水平な体位しかとったことがない場合。
・医学的理由(低血圧等)により座位保持が認められていない場合。
・背骨や股関節の状態により体幹の屈曲ができない場合。
調査上の留意点
寝た状態から座位に至るまでの行為は含まない。
畳上の生活で、いすに座る機会がない場合は、畳上の座位や、洋式トイレ、ポータブルトイレ使用時の座位の状態で選択する。
長座位、端座位など、座り方は問わない。
大腿部(膝の上)に手で支えてしっかりと加重して座位保持をしている場合等、自分の体の一部を支えにしてできる場合(加重しないと座位保持できない場合)は「2.自分の手で支えればできる」を選択する。
大腿部の裏側に手を差し入れて太ももを掴むようにする等、上体が後傾しないように座位を保持している場合(手を差し入れるなどしないと座位保持できない場合)は、「3.支えてもらえればできる」を選択する。
ビーズクッション等で支えていないと座位が保持できない場合は、「3.支えてもらえればできる」を選択する。
電動ベッドや車いす等の背もたれを支えとして座位保持ができている場合は、「3.支えてもらえればできる」を選択する。
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
1―6 両足での立位保持
1.支えなしでできる 2.何か支えがあればできる 3.できない
調査項目の定義
「両足での立位保持」の能力を評価する項目である。
ここでいう「両足での立位保持」とは、立ち上がった後に、平らな床の上で立位を10秒間程度保持できるかどうかの能力である。
調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択する。
選択肢の選択基準
「1.支えなしでできる」
・何にもつかまらないで立っていることができる場合をいう。
「2.何か支えがあればできる」
・壁、手すり、いすの背、杖等、何かにつかまると立位保持が可能な場合をいう。
「3.できない」
・自分ではものにつかまっても立位を保持できないが、介護者の手で常に身体を支えれば立位保持できる、あるいは、どのような状況であってもまったく立位保持ができない場合をいう。
・寝たきりで明らかに立位をとれない場合も含まれる。
調査上の留意点
立ち上がるまでの行為は含まない。
片足が欠損しており、義足を使用していない人や拘縮で床に片足がつかない場合は、片足での立位保持の状況で選択する。
自分の体の一部を支えにして立位保持する場合や、体を支える目的でテーブルや椅子の肘掛等にしっかりと加重して立位保持する場合(加重しないと立位保持できない場合)は「2.何か支えがあればできる」を選択する。
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
1―7 歩行
1.つかまらないでできる 2.何かにつかまればできる 3.できない
調査項目の定義
「歩行」の能力を評価する項目である。
ここでいう「歩行」とは、立った状態から継続して歩くことができるかどうかの能力である。
立った状態から継続して(立ち止まらず、座り込まずに)5m程度歩ける能力があるかどうかで選択する。調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択する。
選択肢の選択基準
「1.つかまらないでできる」
・支えや日常的に使用する器具・器械なしに自分で歩ける場合をいう。
・視力障害者のつたい歩きも含まれる。
・視力障害があり、身体を支える目的ではなく方向を確認する目的で杖を用いている場合は、「1.つかまらないでできる」を選択する。
「2.何かにつかまればできる」
・杖や歩行器等を使用すれば歩ける、壁に手をかけながら歩ける場合等をいう。
・片方の腕を杖で、片方の腕を介護者が支えれば歩行できる場合は、「2.何かにつかまればできる」を選択する。
「3.できない」
・何かにつかまったり、支えられても歩行が不可能であるため、車いすを使用しなければならない、どのような状況であっても歩行ができない場合をいう。寝たきり等で歩行することがない場合、あるいは、歩行可能であるが医療上の必要により歩行制限が行われている場合も含まれる。
・「歩行」については、5m程度歩けるかどうかについて評価する項目であり、「2mから3m」しか歩けない場合は「歩行」とはとらえないため、「3.できない」を選択する。
調査上の留意点
歩幅や速度、方向感覚や目的等は問わない。
リハビリの歩行訓練時には、平行棒の間を5m程度歩行できていてもリハビリの訓練中は一般的には日頃の状況ではないと考える。
心肺機能の低下等のため、主治医より軽い労作も禁じられている等で、5m程度の歩行を試行することができない場合には、「3.できない」を選択する。
両足切断のため、屋内の移動は両手で行うことができても、立位をとることができない場合は、歩行は「できない」を選択する。
膝につかまるなど、自分の体につかまり歩行する場合(つかまらないと歩行できない場合)は、「2.何かにつかまればできる」を選択する。
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「補装具を使用している場合」
補装具を使用している場合は、使用している状況で選択する。
「福祉用具を使用している場合」
杖や歩行器等を使用する場合は、「2.何かにつかまればできる」を選択する。
1―8 立ち上がり