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○介護認定審査会の運営について

(平成21年9月30日)

(老発0930第6号)

(各都道府県知事あて厚生労働省老健局長通知)

介護認定審査会の具体的な運営については、これまで本職通知「介護認定審査会の運営について」(平成21年3月31日老発第0331006号厚生労働省老健局長通知。以下「局長通知」という。)により取扱われていたところであるが、今般「要介護認定の見直しに係る検証・検討会」での指摘を踏まえ、要介護認定等の方法を見直したことに伴い、介護認定審査会が審査判定を行う場合の取扱い方法等について、別添のとおり「介護認定審査会運営要綱」を定め、本年10月1日から適用することとしたので、通知する。

なお、本通知の施行に伴い、局長通知は平成21年9月30日限りで廃止する。

(別添)

介護認定審査会運営要綱

1 目的

介護保険法(平成9年法律第123号)第14条に規定する介護認定審査会(以下「認定審査会」という。)の適切な運営に資することを目的とする。

2 認定審査会の構成

1) 委員

委員は、保健、医療又は福祉に関する学識経験を有する者であり、各分野の均衡に配慮した構成とし、市町村長(特別区にあっては区長。以下同じ。)が任命する。その際、以下の点について留意する。

(1) 委員の任期について

委員の任期は、2年(委員の任期を2年を超え3年以下の期間で市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)が条例で定める場合にあっては、当該条例で定める期間)とし、再任することができる。

(2) 会長について

認定審査会に会長1人を置き、委員の互選によって選任する。

なお、会長が出席できない場合、あらかじめ指名された委員がその職務を代行する。

(3) 保険者との関係について

認定審査会における審査判定の公平性を確保するため、原則として保険者である市町村の職員を委員として委嘱することができない。ただし、委員確保が困難な場合、保健、医療又は福祉の学識経験者であり、認定調査等の介護保険事務に直接従事していない市町村の職員を委員に委嘱することができる。

(4) 認定調査員との兼務について

委員は、原則として、当該保険者の認定調査員として認定調査に従事することができない。ただし、他に適当な者がいない等の理由でやむを得ず委員を認定調査に従事せざるを得ない場合においては、この限りでない。その場合であっても、委員が認定調査を行った審査対象者の審査判定について、当該委員が所属する合議体では行うことができない。

(5) 守秘義務について

委員は、認定審査に関して知りえた個人の情報に関して守秘義務がある。

2) 合議体

(1) 合議体の設置

認定審査会は、委員のうちから会長が指名する者をもって構成する合議体で、審査及び判定の案件を取り扱う。

(2) 合議体の構成

合議体の委員の定数は、5人を標準として市町村が定める数とする。なお、以下の場合などにおいて、5人より少ない定数によっても認定審査会の審査判定の質が維持されるものと市町村が判断した場合、5人より少ない人数を定めることができる。ただし、この場合であっても、3人を下回ることはできない。

・要介護認定及び要支援認定の更新に係る申請を対象とする場合

・委員の確保が著しく困難な場合

一定期間中は同じ委員構成とするが、いずれの合議体にも所属しない無任所の委員を設置した場合であって、概ね3か月以上の間隔をおいて合議体に所属する委員を変更することは可能である。特定の分野の委員の確保が困難な場合にあっては、当該分野の委員を他の分野より多く合議体に所属させることとした上で、会議の開催にあたって定足数を満たすよう必要な人数が交代に出席する方式でも差し支えない。

また、公平公正な要介護認定を確保するために、合議体間の定期的な連絡会等を開催することが望ましい。

(3) 委員の所属

委員は、所属しない合議体における審査判定に加わることはできない。

なお、委員確保が特に困難な場合を除き、複数の合議体に同一の委員を所属させることができない。

(4) 合議体の長について

合議体に長を1人置き、当該合議体を構成する委員の互選によって選任する。

なお、合議体の長が出席できない場合、あらかじめ指名された委員がその職務を代行する。

3) 会議について

認定審査会は、会長が招集する(合議体の場合は、基本的に合議体の長が招集する。)。

認定審査会(合議体の場合は合議体を含む。以下同じ。)は、委員のうち保健、医療又は福祉のいずれかの分野の学識経験を有する委員を欠くときは会議を開催しないことが望ましい。

審査判定にあたっては、できるだけ委員間の意見の調整を行い、合意を得るよう努める。その上で、認定審査会の議事は、出席委員の過半数をもって決し、可否同数のときは会長の決するところによる。

3 審査及び判定

認定審査会は、審査対象者について、認定調査票のうち「基本調査」及び「特記事項」並びに「主治医意見書」に記載された主治医の意見に基づき、「要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令(平成11年厚生省令第58号)」による要支援認定基準及び要介護認定基準(以下「認定基準」という。)に照らして、

・要介護状態又は要支援状態に該当すること

・介護の必要の程度等に応じて認定基準で定める区分(以下「要介護状態等区分」という。)

について、審査及び判定を行う。

要介護状態等区分の決定に当たっては要介護認定等基準時間等に基づき、介護に係る時間の審査(以下「介護の手間に係る審査判定」という。)を行い、介護の手間に係る審査判定において、要介護認定等基準時間が三十二分以上五十分未満である状態(当該状態に相当すると認められないものを除く。)又はこれに相当すると認められる状態に該当すると判定された審査対象者については、認知症の程度や心身の状況の安定性等に基づき、心身の状態の維持又は改善可能性の審査(以下「状態の維持・改善可能性に係る審査判定」という。)を行い、要介護1又は要支援2のいずれの要介護状態等区分に該当するかの判定を行う。

さらに、特に必要がある場合については、

・認定の有効期間

・被保険者の要介護状態の軽減または悪化の防止のために必要な療養に関する事項

・居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービス、介護予防サービス又は地域密着型介護予防サービスの有効な利用等に関し被保険者が留意すべき事項について意見を付する。(4 3)参照)

なお、40歳以上65歳未満の審査対象者にあっては、「主治医意見書」により介護保険法施行令(平成10年政令第412号)に規定する特定疾病によって生じている障害(生活機能低下)を原因として要介護状態又は要支援状態となっていることを確認する。

4 認定審査会開催の手順

1) 事前の準備

委員は、別途通知する実施要綱に基づき都道府県又は指定都市が実施する認定審査会委員に対する研修(認定審査会委員研修)を受講し、審査及び判定の趣旨、考え方、手続き等を確認する。

市町村は、認定審査会開催に先立ち、当該開催日の認定審査会において審査及び判定を行う審査対象者をあらかじめ決めた上で、該当する審査対象者について以下の資料を作成する。

・基本調査の調査結果及び主治医意見書を用いて、市町村に設置されたコンピューターに導入するために国が別途配布する一次判定用ソフトウェア(以下「一次判定ソフト」という。)によって分析・判定(以下「一次判定」という。)された結果等を表出したもの(以下「認定審査会資料」という。)(一次判定ソフトによる分析・判定の内容については、別紙1及び別紙2を参照)

・特記事項の写し

・主治医意見書の写し

これらの資料については、氏名、住所など個人を特定する情報を削除した上で、あらかじめ認定審査会委員に配布することが望ましい。

また、効率的に認定審査会を運営するために、認定審査会開始前に合議体長又は認定審査会事務局に一次判定結果を修正する必要がある場合や意見がある場合は、個別に必要な審査時間を確保することもできる。

2) 審査及び判定の手順(別紙3による)

(1) 一次判定の修正・確定

基本調査の結果を、特記事項及び主治医意見書の内容と比較検討し、基本調査の結果との不整合がないか確認する。

これらの内容に不整合があった場合には再調査を実施するか、必要に応じて主治医及び認定調査員に照会した上で基本調査の結果の一部修正が必要と認められる場合には、調査結果の一部修正を行う。なお、調査結果の一部修正を行う場合には、別紙4の「要介護状態等区分の変更等の際に勘案しない事項について」のⅠによるものとする。

なお、再調査後の審査判定は、原則として前回と同一の認定審査会又はその合議体において審査判定を行うこととする。

また、第二号被保険者の審査判定にあたっては、主治医意見書の記載内容に基づき、要介護状態又は要支援状態の原因である生活機能低下が特定疾病によって生じていることを別途老人保健課長名で通知する「特定疾病にかかる診断基準」に照らして確認する。

なお、主治医意見書を記載した医師が当該診断基準を直接用いていない場合は、主治医意見書記載事項を診断基準に当てはめた上で、特定疾病に該当しているかどうかにつき確認する。

また、介護認定審査会事務局は、介護認定審査会の判断が必要と考える基本調査項目について、介護認定審査会に検討を要請することができる。

一次判定の修正・確定に当たっては、以下の点に留意すること。

① 基本調査の選択と特記事項の不整合がある場合

認定調査員の記入や選択の誤りなどにより、明らかに基本調査の選択と特記事項の記載内容に不整合が見られる場合は、各基本調査の定義に基づき、基本調査の選択肢を修正する。

② 日頃の状況と異なる場合

基本調査のうち、「寝返り」等の能力で評価する項目は、当該の行動等について可能な限り実際に試行して評価する項目であるが、実際に試行した結果と日頃の状況が異なる場合は、一定期間の状況において、より頻回な状況に基づき選択される。特記事項又は主治医意見書の記載により、日頃の状況での判断が適正であるかについての確認が必要となる。「麻痺等の有無」及び「拘縮の有無」の項目も同様に実際の試行による評価が原則であるが、実際に試行した結果と日頃の状況が異なる場合は、より頻回な状況に基づいて選択することとされているので、特記事項又は主治医意見書の記載により、日頃の状況での判断が適正であるかについて、確認する。

③ より頻回な状況で選択している場合

基本調査のうち、「洗身」等の介助の方法で評価する項目は、基本調査の定義上、一定期間(調査日より概ね過去1週間とする(「つめ切り」は概ね過去1ヶ月)。)の状況において、より頻回に見られる状況で選択される。より頻回に見られる状況で選択を行っている場合は、例えば「一部介助」の場合と「全介助」の場合が混在していることがあるので、頻度の評価に基づく選択が適正であるかについて、確認する。

④ 介助されていない状態や実際に行われている介助が、対象者にとって不適切であると認定調査員が判断する場合

介助の方法で評価する項目は、具体的に介助が「行われている」か「行われてない」の軸で選択を行うことを原則としているが、「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって不適切であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な介助の方法を選択し、認定審査会の判断を仰ぐことができることとなっている。認定調査員が考える適切な介助の方法を選択している場合は、特記事項または主治医意見書の記載をもとに認定調査項目の選択を確認し、介護認定審査会が認定調査員と異なる選択を行う場合は、必要に応じて修正する。修正する場合、その根拠を特記事項又は主治医意見書の記載の中から明らかにする。

なお、認定調査員が「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、

・独居や日中独居等による介助者不在のために適切な介助が提供されていない場合

・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合

・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合

・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合

など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。

⑤ 認定調査員が選択に迷った項目の確認

認定調査員が選択に迷った場合は、その理由と、申請者の状況が具体的に特記事項に記載される(介護認定審査会資料作成のため、暫定的にいずれかの認定調査項目が選択されている)。認定審査会では、認定調査員が判断に迷った内容を特記事項で確認し、認定調査員の選択の妥当性について確認・修正を行う。

⑥ 特別な医療の確認

特別な医療は、実施者、目的、実施された時期など複数の要件を満たすことが求められるため、特記事項及び主治医意見書の内容から、選択が妥当なものであるか確認を行い、具体的な理由がある場合は修正することができる。特別な医療は、調査項目を選択すると要介護認定等基準時間が加算される仕組みになっており、要件に合わない選択を行うと、必要以上に要介護認定等基準時間が延長(短縮)されることがあるなど、確認は重要である。

⑦ 障害高齢者の日常生活自立度及び認知症高齢者の日常生活自立度の確認

日常生活自立度に関連する項目は、「認知機能・状態の安定性の評価」、「運動能力の低下していない認知症高齢者に対する加算」の推計等に用いられることから、慎重な判断が求められる。特記事項及び主治医意見書の記載内容から、明らかに誤りがあると考えられる場合は、基本調査の日常生活自立度を修正することができる。その場合、具体的な根拠を特記事項又は主治医意見書の記載内容から明らかにする。

⑧ 一次判定修正の際の注意点

一次判定修正・確定は、基本調査の定義に基づき認定調査項目を選択することで、一次判定ソフトが判定を行うための情報を正確に入力するための手順である。そのためには、定義に基づいた正確な判断が必要である。なぜなら、一次判定ソフトへの入力情報が誤っている場合、議論の前提となる一次判定結果が、正しく導出されず、誤った入力が頻発すると判定にバラツキを生じさせる可能性があるからである。

一次判定の修正は、特記事項や主治医意見書の記載内容と基本調査項目の定義に不整合が確認できる場合にのみ認められ、通常の例と異なる介護の手間に関しては、二次判定の「介護の手間にかかる審査」で考慮すべきものである。

主治医意見書と認定調査項目の中には、類似の項目があるが、主治医意見書は、認定調査と異なる視点(定義)から作成されている。

(2) 介護の手間に係る審査判定

次に、一次判定の結果(基本調査の結果の一部を修正した場合には一次判定ソフトを用いて再度一次判定を行うなどにより得られた一次判定の結果)を原案として、特記事項及び主治医意見書の内容を加味した上で、介護の手間に係る審査判定を行う。

認定審査会での個別の審査判定において、特記事項及び主治医意見書の内容から、通常の例に比べてより長い(短い)時間を介護に要すると判断される場合には、一次判定の結果を変更する。

「通常の例」の定義は、基本調査の定義以外に設定されていないが、認定審査会の各委員の専門職としての経験から判断を行う。

ただし、より長い(短い)時間を介護に要するという結論に達した場合も、それが直ちに要介護状態等区分の変更につながるとは限らない。要介護認定等基準時間なども参考にしながら、区分の境界となっている時間を超えるほどの「介護の手間」があるかないかを議論する。

また、被保険者に対する保険者の説明責任を果たすという観点からも、変更を行う際には、その理由を明確にする必要がある。一次判定結果を変更する判定を行った場合、事務局に対して、特記事項又は主治医意見書の通常の例と異なる介護の手間が読み取れる具体的な箇所を明示し、これを記録することが重要である。

なお、審査判定に当たっては、以下の点に留意すること。

① 介護の手間が通常の例より多い(少ない)と考えられる場合

介助の方法で評価する調査項目では、ほとんどの項目がそれぞれの項目の定義に基づき「介助されていない」、「見守り等」、「一部介助」、「全介助」で評価されるが、同じ選択肢であっても、介助量としては大きな幅を持っているため、特記事項の記載に基づき必要に応じて、具体的な介助量を確認、検討する必要がある。

また、有無で評価する項目のうちBPSD関連(認知症に伴う行動・心理症状)の項目については、その頻度に基づいて「ある」、「ときどきある」、「ない」で評価されるが、行動が「ある」ことをもって介助が発生しているとは限らないため、特記事項の記載に基づき必要に応じて、コンピューターでは加味しきれない具体的な介助量を確認し、一次判定を変更するかどうか検討する必要がある。

「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、認定調査員が適切と判断する介助の方法を選択するが、主治医意見書や特記事項の記載をもとに、適切な介護が行われるよう配慮して行うことが重要である。また、この場合、適切な介護が受けられるように、介護認定審査会は必要な療養に関する意見を付し、それを市町村や介護支援専門員に伝えることができる。

② 頻度から内容を検討する場合

介助の方法を評価する調査項目では、より頻回な状態をもって調査を行うこととされている。したがって、たとえば基本調査の選択が「全介助」となっていても、常に「全介助」が行われているとは限らない。その場合、要介護認定等基準時間も参考にしつつ、一次判定を変更するかどうか検討する必要がある。また、有無で評価する項目のうちBPSD関連の項目については、その頻度に基づいて「ある」、「ときどきある」、「ない」で評価されるが、頻度には一定の幅があるため、必要に応じて、具体的な頻度を確認する必要がある。特記事項の内容から、頻度を確認し、基本調査で推計されたものより、より介護の手間がかかるか、かからないのかについて検討を行う。

③ 要介護認定等基準時間の参照

要介護認定等基準時間は、介護に要する時間を測るための「ものさし」であり、示された時間に応じて要介護状態区分が決まる。要介護認定等基準時間が隣の区分の境界の近くに位置するのか、遠くに位置するのかの相対的位置関係を把握することは介護の手間にかかる審査判定において合議体の中で議論が分かれた場合などに、共通の視点をもつことができるという意味で有用である。

④ 参考指標による妥当性検証

介護の手間にかかる審査判定にあたっては、「日常生活自立度の組み合わせによる要介護度別分布」や「要介護度変更の指標」など、過去の審査判定データを参考指標として参照することができる。

参考指標については、介護認定審査会の開催時に配布するなど常に参照できるようにしておくことが重要である。

新たな要介護認定方法の導入に当たり、認定審査会において、従来の認定方法と比較した検証を行うことも重要であることから、検証を行うに当たっては、一次判定を変更した場合に限らず、変更しない場合においても、必要に応じて活用されたい。

議論は、特記事項または主治医意見書に記載された介護の手間の記載に基づいて行う。それ以外の情報は、議論の参考にすることはできるが、一次判定変更の理由にはならない。したがって、特記事項または主治医意見書に具体的な介護の手間を読み取ることができない場合は、一次判定を変更することはできない。

日常生活自立度の組み合わせによる要介護度別分布は、申請者の障害高齢者の日常生活自立度及び認知症高齢者の日常生活自立度の組み合わせと、二次判定後の要介護度の分布を、過去の審査判定結果を統計的に処理した結果に基づき表示した指標である。審査対象者が日常生活自立度の観点から、どのような要介護度に決定されることが多いかについての比率を示していることから、当該ケースの変更の妥当性を確認・検証する際に参考にすることができる。「日常生活自立度の組み合わせによる要介護度別分布」については、平成20年のデータをもとに集計したものを示している。(別紙6を参照。)

要介護度変更の指標は、過去の審査判定において一次判定の変更が行われたケースにおける、特徴的な調査項目の選択状況を、統計的な処理に基づき示したものであり、重度変更または軽度変更された審査対象者の調査項目の選択肢の傾向を示している。過去のデータにおいては、●と○の数の差が3つ以上ある場合に、変更されている場合が多いことがわかっていることから、当該場合の変更の妥当性を確認・検証する際に参考にすることができる。「要介護度変更の指標」については、認定調査項目が変更になったことから、本通知発出後、平成21年度のデータをもとに新たに作成することとしており、当面の間、本通知において示すものを使用されたい。(別紙6を参照。)

介護の手間に係る審査判定において一次判定の結果を変更する場合には、別紙4の「要介護状態等区分の変更等の際に勘案しない事項について」のⅡによるものとする。

(3) 状態の維持・改善可能性にかかる審査判定

介護の手間に係る審査判定において要介護認定等基準時間が三十二分以上五十分未満である状態(当該状態に相当すると認められないものを除く。)又はこれに相当すると認められる状態と判定した場合には、認定審査会資料に示された「認知機能・状態の安定性の評価結果」を原案として、特記事項及び主治医意見書の内容を加味した上で、別紙5の「予防給付の適切な利用が見込まれない状態像について」を参照して、状態の維持・改善可能性に係る審査判定を行い、要介護1又は要支援2のいずれの要介護状態等区分に該当するかについて、判定を行う。

要介護認定等基準時間三十二分以上五十分未満の申請者は、「認知機能の低下の評価」及び「状態の安定性に関する評価」の結果に基づき、「要支援2」と「要介護1」のいずれかが一次判定として介護認定審査会資料に表示される。

表示された結果と、特記事項、主治医意見書の記載を比較検討し、整合性の確認を行い、必要に応じて変更を行うことができる。

認知機能の低下、状態の安定性に関する評価を変更する際は、具体的な理由を、特記事項及び主治医意見書から明らかにし、これを記録する。

一次判定ソフトでは、過去の全国の判定結果に基づき、認定調査項目から、「認知機能の低下」及び「状態の安定性」という二つの要件の蓋然性を推計し、その結果を介護認定審査会資料に掲載している(別紙2―1を参照。)。

ただし、ここで示される結果は、統計に基づく推計値であるため、すべての場合で、必ずしも実態と整合するとは限らない。必ず認定審査会での議論を通じて、特記事項及び主治医意見書の内容を吟味の上、「認知機能の低下」「状態の安定性」についての定義に基づき判定を行う。

また、二次判定での変更により、「要介護認定等基準時間が、三十二分以上五十分未満」に相当すると判断した場合も、介護認定審査会資料の推計値と特記事項、主治医意見書の記載を参照し、「認知機能の低下」「状態の安定性」の観点から判定を行う。その際、一時的に「歩行が不安定」または「精神的に不安定」といった要素があることのみを理由として認知機能・状態の安定性の評価結果の変更を行うことはできず、あくまでも、要介護度の再評価が短期間(概ね6か月程度)に必要かどうかという観点から変更を行う。

なお、認定調査員は、認知症に関する医学的知識を必ずしも持ち合わせているとは限らず、また、主治医も患者の自宅での生活について限定された情報しか把握していない場合があることから、認知症高齢者の日常生活自立度は慎重な吟味が必要である。その上で介護認定審査会資料に提示された「認知機能の評価結果」及び特記事項、主治医意見書の記載内容をもとに、予防給付の利用の理解が困難かどうか、総合的に判定する必要がある。平成21年度の認定調査から、申請者のより詳細な認知症に関する情報を調査員から伝えてもらえるように、認知症高齢者の日常生活自立度についても特記事項を記載する欄を設けることとした。こうした情報についても留意し、審査判定を行う。

状態の維持・改善可能性に係る審査判定に当たっては、別紙4の「要介護状態等区分の変更等の際に勘案しない事項について」のⅢによるものとする。

状態の維持・改善可能性に係る審査判定において要介護1と判定した場合には、別紙5の「予防給付の適切な利用が見込まれない状態像について」に示された、いずれの状態像に該当するか確定する。

3) 認定審査会が付する意見

認定審査会は、認定の有効期間及び被保険者の要介護状態又は要支援状態の軽減又は悪化を防止するために必要な療養について、意見を付すことができるが、認定審査会が必要に応じて付する意見について特に留意すべき点は以下の通りである。

(1) 認定の有効期間を定める場合の留意事項

認定審査会が認定の有効期間について意見を述べる場合は、「現在の状況がどの程度継続するか」との観点から以下の考え方を基本に認定の有効期間についての検討を行う。

[認定の有効期間を原則より短く定める場合]

・状態の維持・改善可能性に係る審査判定において要介護1と判定した者であって、別紙5に示した「予防給付の適切な利用が見込まれない状態像」のうち、「疾病や外傷等により、心身の状態が安定していない状態」に該当するとされた者等、身体上または精神上の生活機能低下の程度が短期間に変動しやすい状態にあると考えられる場合

・施設から在宅、在宅から施設に変わる等、置かれている環境が大きく変化する場合等、審査判定時の状況が変化しうる可能性があると考えられる場合

・その他、認定審査会が特に必要と認める場合

[認定の有効期間を原則より長く定める場合]

・身体上または精神上の生活機能低下の程度が安定していると考えられる場合

・同一の施設に長期間入所しており、かつ長期間にわたり要介護状態等区分に変化がない場合等、審査判定時の状況が、長期間にわたって変化しないと考えられる場合(重度の要介護状態にある場合を基本とするが、個々の事例ごとに原則より長期間要介護状態が継続すると見込まれる場合を判断する)

・その他、認定審査会が特に必要と認める場合

(2) 要介護状態の軽減又は悪化の防止のために必要な療養についての意見

介護認定審査会資料から読み取れる状況に基づき、要介護状態の軽減又は、悪化の防止のために特に必要な療養があると考えられる場合、及び指定居宅サービスまたは指定施設サービスの有効な利用に関して被保険者が留意すべきことがある場合には、介護認定審査会としての意見を付す。

「介助の方法」の項目で、「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって不適切であるとして、認定調査員が考える適切な介助の方法を選択した場合は、適切な介助の方法について意見を付することもできる。

ケアプランを作成する介護支援専門員は、必ずしも保健・医療・福祉のすべての分野に精通しているわけではない。これらの有識者の集合体である合議体の視点から見て、特に必要である療養に関して意見を述べることで、被保険者にとってよりよいサービスが提供されることが期待されている。特に、実際に行われている介助が不適切な場合、療養に関する意見を付す。

なお、介護認定審査会は意見を述べることができるが、サービスの種類を直接に指定することはできない。

「要介護状態の軽減又は悪化の防止のために必要な療養についての意見」が付された場合、その意見に基づき、市町村はサービスの種類を指定することができる。ただし、市町村がサービスの種別を指定すると、申請者は指定されたサービス以外は利用できなくなるため、申請者の状況について慎重に検討する必要がある。

種類の指定にあたっては「通所リハビリテーションを含む居宅サービス」等、複数のサービスを組み合わせての指定が可能である点に留意する。

特に、実際に行われている介助が不適切な場合や介護認定審査会から療養についての意見が付された場合に、市町村は介護支援専門員と連絡を取り、適切に介護が提供されるように努めることが重要である。

4) 審査及び判定に当たっての留意事項

(1) 概況調査等の取扱いについて

概況調査及び過去に用いた審査判定資料については、認定審査会が当該審査対象者の状態を把握するために参照することはさしつかえないが、審査判定の際の直接的な資料としては用いない。

なお、概況調査の結果等を参照した場合であっても、4―2)の規定に基づいて、一次判定により示された要介護状態等区分の結果及び認知機能・状態の安定性の評価結果を変更することとした場合には、別紙4の「要介護状態等区分の変更等の際に勘案しない事項について」によるものとする。

(2) 認知機能・状態の安定性の評価結果の取扱いについて

認定審査会資料のうち別紙2の「認知機能・状態の安定性の評価結果」は、介護の手間に係る審査判定において要介護認定等基準時間が三十二分以上五十分未満である状態(当該状態に相当すると認められないものを除く。)又はこれに相当すると認められる状態と判定された者に対する状態の維持・改善可能性に係る審査判定においてのみ用い、介護の手間に係る審査判定において「認知機能・状態の安定性の評価結果」を用いることはできない。

(3) 委員が審査判定に加われない場合について

市町村は、審査判定を行う合議体に審査対象者が入院若しくは入所し、又は介護サービスを受けている施設等に所属する委員が含まれないように、審査判定を行う合議体の調整に努める。

審査対象者が入所等をしている施設等に所属する者が、当該合議体に委員として出席している場合には、当該審査対象者の審査及び判定に限って、当該委員は判定に加わることができない。ただし、当該審査対象者の状況等について意見等を述べることは差し支えない。

(4) 認定審査会への委員及び事務局員以外の参加について

審査判定にあたって、必要に応じて、審査対象者及びその家族、主治医、認定調査員及びその他の専門家の意見を聞くことができる。

(5) 認定審査会の公開について

認定審査会は、第三者に対して原則非公開とする。

(6) 記録の保存について

審査判定に用いた記録の保存方法等については、必要に応じて各市町村ごとにその取扱いを定める。

(7) 国への報告について

別途設置する認定支援ネットワークシステムを用いて、審査判定があった日の翌月の10日までに別途定める事項を国に報告する。

(別紙1)

一次判定結果について

○ 原則として、「要介護認定等基準時間の推計の方法」(平成12年厚生省告示第91号)により算定された時間について、「要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令」(平成11年厚生省令第58号)に基づく要支援状態区分又は要介護状態区分(以下「要介護状態等区分」という。)を一次判定結果とする。

○ また、要件1及び要件2を満たす場合は、加算前の一次判定結果に表4に示す加算する分数を加算し、さらに要件3を満たす場合は、加算前の一次判定結果に表5に示す加算する分数を加算し、最終的な一次判定結果とする。この場合において、「要支援2」及び「要介護1」については、どちらとも「要介護認定等基準時間が三十二分以上五十分未満である状態(当該状態に相当すると認められないものを除く。)又はこれに相当すると認められる状態」であるから同じ加算する分数を用いるものとする。

○ なお、加算する分数とは、要介護状態等区分が必ず繰り上がるように、隣り合う要介護状態等区分の境目の分数の中間点の差を積み足す分数である。

要件1:

「認知症高齢者の日常生活自立度」がⅢ、Ⅳ又はMかつ、「障害高齢者の日常生活自立度」が自立、J又はAであり、要介護認定等基準時間が70分未満の者

要件2:

一次判定結果ごとに、表1、表2及び図を用いて、定数項を含めた各調査項目等のスコアを加算し、0.5を超えるとき

要件3:

一次判定結果ごとに、表3の左欄に掲げる項目が右欄に示す数に該当するとき

表1 スコア表(要介護1以下)

 

 

 

 

 

定数項

6.395

 

 

 

 

 

 

 

つめ切り

介助されていない

0.000

一部介助

0.397

全介助

0.662

 

 

 

洗身

介助されていない

0.000

一部介助

0.696

全介助

0.724

行っていない

0.724

 

 

排尿

介助されていない

0.000

見守り等

0.386

一部介助

0.926

全介助

1.261

 

 

洗顔

介助されていない

0.000

一部介助

0.800

全介助

0.800

 

 

 

上衣の着脱

介助されていない

0.000

見守り等

0.796

一部介助

1.414

全介助

1.414

 

 

金銭の管理

介助されていない

0.000

一部介助

1.000

全介助

1.411

 

 

 

買い物

介助されていない

0.000

見守り等

0.783

一部介助

1.205

全介助

1.205

 

 

身体機能・起居動作(中間評価得点)

-0.047

(中間評価得点を乗じる)

 

 

生活機能(中間評価得点)

-0.015

(中間評価得点を乗じる)

 

 

精神・行動障害(中間評価得点)

-0.054

(中間評価得点を乗じる)

 

 

 

 

表2 スコア表(要介護2)

 

 

 

 

 

定数項

12.785

 

 

 

 

 

 

 

つめ切り

介助されていない

0.000

一部介助

0.333

全介助

0.713

 

 

 

洗身

介助されていない

0.000

一部介助

0.528

全介助

0.985

行っていない

0.985

 

 

移乗

介助されていない

0.000

見守り等

1.113

一部介助

1.113

全介助

1.113

 

 

外出して戻れない

ない

0.000

ときどきある

0.723

ある

0.736

 

 

 

理解及び記憶

(主治医意見書)

0レベル

0.000

1レベル

0.083

2レベル

1.010

3レベル

1.010

 

 

4レベル

1.089

5レベル

1.089

6レベル

1.089

 

 

 

生活機能(中間評価得点)

-0.122

(中間評価得点を乗じる)

 

 

社会生活への適応(中間評価得点)

-0.018

(中間評価得点を乗じる)

 

 

精神・行動障害(中間評価得点)

-0.064

(中間評価得点を乗じる)

 

 

 

 

図 理解および記憶(主治医意見書)の算出方法

表3

大声を出す

自立(非該当)(要介護認定等基準時間が25分未満である状態)……1項目以上に該当

要支援1(要介護認定等基準時間が25分以上32分未満である状態)……2項目以上に該当

要支援2、要介護1(要介護認定等基準時間が32分以上50分未満である状態)……4項目以上に該当

要介護2(要介護認定等基準時間が50分以上70分未満である状態)……5項目以上に該当

介護に抵抗

徘徊

外出して戻れない

1人で外に出たがる