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○生活福祉資金の適正な貸付けの実施について
(平成22年8月6日)
(社援地発0806第1号)
(各都道府県民生主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局地域福祉課長通知)
生活福祉資金貸付制度については、「生活福祉資金の貸付けについて」(平成21年7月28日付厚生労働省発社援0728第9号厚生労働事務次官通知。以下「事務次官通知」という。)により実施しているところであるが、一部の地域において、複数の借入申込について暴力団員等が関与し、虚偽の内容による不正な申請を行う事例、借入相談時に社会福祉協議会の職員に対して脅迫的な言動、行為がなされる事例等が報告されているところである。
本貸付制度の運用に当たっては、事務次官通知の3に示す適正実施を旨とし、支援を必要としている者に対して迅速、適切なサービス提供をお願いしているところであるが、一方で、制度を不正に利用しようとする者に対しては、厳正に対応することが必要である。
特に、反社会的行為により国民生活の安全と平穏を脅かす若しくは実際に危害を加える暴力団員に対しては、生活福祉資金の貸付けを行うことが生活福祉資金貸付制度に対する国民の信頼を揺るがすばかりでなく、公的資金を原資とする貸付金が暴力団の資金源となり、暴力団の維持存続に利用される恐れも生じることから、社会正義の上でも極めて大きな問題である。このため、暴力団員が関係する貸付への対応について警察との連携を強化することとしたので、その趣旨について十分にご了知の上、社会福祉協議会等関係機関へ周知徹底を図るとともに、社会福祉協議会が警察等関係機関と円滑な連携が図れるよう必要な支援をお願いしたい。
なお、本通知の内容については、警察庁とも協議済みであることを申し添える。
記
1 暴力団員等が関係する貸付への対応について
(1) 暴力団員に対する貸付けの基本方針
暴力団員(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年5月15日法律第77号。以下「暴力団対策法」という。)第2条第6号に規定する「暴力団員」をいう。)については、集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことにより、違法・不当な収入を得ている蓋然性が極めて高いことから、そもそも貸付けの要件である生活に困窮している世帯であるかどうかの審査の対象と成り得ない。また、暴力団員であることは、貸付けの趣旨である自立が見込まれず、貸付金が反社会的な組織の活動資金に使用されるおそれもある。
このため、事務次官通知の別紙「生活福祉資金貸付制度要綱」(以下「要綱」という。)の第3に示すとおり、借入申込者及び借入申込者の世帯に属する者(以下「借入申込者等」という。)が暴力団員である場合には、貸付けを行うことができないことについて留意いただくとともに、貸付期間中に借入申込者等が暴力団員であると判明した場合は、警察とも十分に連携し、要綱第12の1の(11)に基づき、直ちに送金停止、貸付契約の解約を行うなど適切な対応をいただきたい。
(2) 暴力団員又は暴力団員であることが疑われる者への対応
① 生活福祉資金の借入申込者等が暴力団員と疑われる場合において、他の方法では当該借入申込者等について暴力団員に該当するか確認できないときは、警察から暴力団員該当性情報の提供を受ける必要がある。
警察による暴力団情報の提供は、「暴力団排除のための部外への情報提供について」(平成12年9月14日付警察庁丙暴暴一発第14号)に基づき行われているところであるが、警察に対し暴力団員該当性情報の提供を求めるに当たっては、都道府県警察本部又は警察署の暴力団排除担当課(以下「警察の暴力団排除担当課」という。)を窓口として、生活福祉資金貸付事業の適正な運用のために暴力団員該当性情報が不可欠であること(借入申込者等が暴力団員である蓋然性が高いこと)について具体的に説明した上で依頼されたい。
なお、警察に対し暴力団員該当性情報の提供を依頼し、警察からの回答を得るまでの間においては、原則として、当該借入申込者に係る貸付手続を中断せずに、暴力団員であることが判明した場合に、速やかに貸付手続の中止、貸付契約の解約等を行うことに留意されたい。
② 借入申込相談の時点で、借入申込者等から暴力行為や脅迫的な言動、行為がなされ、又はなされる可能性がある場合には、あらかじめ警察の暴力団排除担当課に連絡を取り、対応方法について助言を求めるほか、有事の際に警察と連携した迅速な対応が可能になるように事前に協力を求めるなど、必要な支援を得られるよう依頼されたい。
(3) 暴力団員等と関係を有する不動産媒介業者の排除について
公的資金を原資とする生活福祉資金貸付金が暴力団の資金源となることを防ぐためには、暴力団員と関係する不動産媒介業者等についても排除する必要がある。このため、「生活福祉資金(総合支援資金)貸付制度の運営について」(平成21年7月28日付社援発0728第12号厚生労働省社会・援護局長通知)の別紙「生活福祉資金(総合支援資金)運営要領」の第6の5に規定するとおり、総合支援資金の住宅入居費の交付において、貸付金の送金先である不動産媒介業者等が、暴力団関係業者であることが確認された場合は、以後、当該不動産媒介業者等が発行する「入居予定住宅に関する状況通知書」(以下、「当該通知書」という。)の写しを受理しない旨を書面により通知することにより、当該通知書の写しを受理しないものとしている。
よって、不動産媒介業者等についても暴力団員等である疑いがあるときは、借入申込者同様、警察に対し、暴力団員該当性情報の提供を依頼されたい。
なお、当該通知書については、住宅手当の支給手続審査においても必要な書類であるため、当該通知書の写しを受理しない場合においては、住宅手当の実施主体等関係機関と十分に連絡・調整を行っていただきたい。
(4) 暴力団員による不正借入事案への対応
暴力団員による不正借入事案については、公的資金が暴力団の資金源として用いられることとなり、社会正義の上でも極めて大きな問題であることから、警察等捜査機関に対する告発や捜査への協力を行い、厳正な対応を行っていただきたい。
(5) 借入申込者からの申立(表明)及び同意について
借入申込者に対して、貸付要件として暴力団員が属する世帯には貸付けを行うことができないことについて説明を行うだけでなく、あらかじめ借入申込者から借入申込者が暴力団員でないことについて申立(表明)してもらう必要がある。
これにより、当該借入申込者が暴力団員であることが判明した場合に、虚偽の申告に対して、警察において詐欺等の事件として円滑な捜査等が行われることになる。
また、個人情報の取扱いとして、借入申込者に対して、借入申込者の個人データについて不正防止の観点から警察等関係機関へ照会を行う場合があることの説明を行い、あらかじめ同意を得る必要があることについて留意されたい。
2 不正利用防止対策について
制度を不正に利用する手口として、複数の者が関与し広域的に行われるものが散見されるが、こうしたものについては、他の社会福祉協議会等に対しても同様に行われる可能性があるため、不正事例、不正防止に向けた様々な取組等について、他の社会福祉協議会等と情報共有に努め、必要な不正利用防止対策を講じられたい。
また、貸付けの審査に当たり、申請書類等の記載内容に不審点があり現地調査を行った結果、内容の虚偽が発覚した事例の報告もあることから、不正が疑われる借入申込に関しては申請書、添付書類等の内容について入念な確認を行われたい。