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○臓器提供意思表示カード等の記載不備事例等の取扱いについて

(平成22年6月25日)

(健臓発0625第4号)

(各都道府県・各指定都市・各中核市衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室長通知)

今般、臓器提供意思表示カード等の記載不備事例等の取扱いについて、添付文書のとおり、社団法人日本臓器移植ネットワーク理事長、各眼球あっせん機関の長及び財団法人日本アイバンク協会理事長宛てに通知しましたので、関係者への周知について御配慮をお願いします。

○臓器提供意思表示カード等の記載不備事例等の取扱いについて

(平成22年6月25日)

(健臓発0625第4号)

(社団法人日本臓器移植ネットワーク理事長・各眼球あっせん機関の長・財団法人日本アイバンク協会理事長あて厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室長通知)

臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律(平成21年法律第83号)については、既に施行された部分を除き、平成22年7月17日から施行されるところですが、これに伴い、臓器提供意思表示カード(以下「カード」という。)の様式が改められることとなり、併せて、運転免許証及び医療保険の被保険者証にも臓器提供に関する意思を表示することができる欄が設けられることとなりました。

これらの記載方法については、詳細を解説したリーフレットを配布することとされていますが、今後、記載不備事例が発生することが予想されます。

また、既に配布されている旧来のカードを引き続き所持していた場合には、その記載内容について、改正後の臓器の移植に関する法律(平成9年法律第104号。以下「法」という。)に即して判断する必要が生じます。

このため、記載不備事例等の取扱いについて、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会(以下「委員会」という。)における議論を踏まえ、下記のとおりとすることとしましたので、貴職におかれては、手続に遺漏のないよう、よろしくお取り計らい願います。

なお、記載不備事例が極力発生しないよう、カードとあわせて配布されるリーフレット等において、記載方法を分かりやすく説明する等の周知が重要ですので、取組に遺漏なきようお願いします。

1.カードの記載不備事例の取扱いに関する基本的考え方について

(1) 法における基本理念である「本人意思の尊重」の観点から、記載不備と思われる書面であっても、書面に残された記載内容からできるかぎり客観的に本人意思を判断する必要があること。

その際、記載内容に矛盾はないが本人意思を明確に確認する必要がある場合は、家族等の証言も踏まえ、本人意思を判断すること。また、記載内容が相矛盾するものであるなど、本人意思が判断できない場合は、当該書面に表示された内容は不明と取り扱うこと。

(2) 改正後の法の解釈上、拒否の意思表示は書面によらないものであっても有効であることを踏まえ、(1)において書面に表示された内容が不明と判断される場合であっても、一律に意思不明とはせず、さらに家族等の証言により拒否の意思について慎重に確認し、拒否の意思が認められる場合には、法に基づく脳死判定及び臓器摘出を行わないこと。

2.旧来のカードの解釈について(別紙参照)

(1) 番号1のみに○がついていた(番号2には○がない)場合は、脳死下での臓器提供を希望していることから、心停止後についても“臓器提供を拒否する意思がない”と解し、家族の承諾があった場合に臓器提供を行うことができること。

(2) 番号2のみに○がついていた(番号1には○がない)場合は、脳死後の臓器提供が選択可能な状況下で、心停止後の臓器提供のみに○をつけていることから、脳死判定を受けること、またその結果に従うことを“拒否していた”と解し、脳死下臓器提供は行わないこと。

3.その他

平成16年12月24日付け健臓発第1224001号当職通知の別添「臓器提供意思表示カードの記載不備事例の取扱いについて」(別添参照)中、3(1)及び(2)は旧来のカードの記載不備事例の取扱いとして、また、3(3)及び(4)は新旧双方のカードの記載不備事例の取扱いとして、引き続き有効であること。

(別紙)

(別添)

臓器提供意思表示カードの記載不備事例の取扱いについて

1 はじめに

平成9年10月16日の「臓器の移植に関する法律」(平成9年法律第104号。以下「臓器移植法」という。)施行以降平成16年6月末までに、(社)日本臓器移植ネットワークに臓器提供意思表示カード(以下「カード」という。)を所持していたと情報提供された820件のうち、記載内容に不備があった事例は105件(12.8%)となっている。

これまで、カードの記載内容に不備があった事例は、臓器を提供する意思又は脳死判定に従う意思表示が明確でない等の理由から、法律の要件を満たしていないものとして取り扱ってきている。そのため、確かにカードを携帯しており、本人が生前に臓器を提供したいという意思を持っていたと家族等が証言しているにもかかわらず、カードの記載事項の一部に不備があることにより、本人の書面による意思表示とは認められなかった事例も存在する。

こうしたことから、今般、臓器移植法の趣旨等を踏まえ、これまでの記載不備事例の取扱いを見直すこととした。

2 臓器移植法の解釈とその運用

・ 臓器移植法においては、基本的理念として、臓器提供に関する意思は尊重されなければならず、臓器の提供は任意にされたものでなければならないと規定しており(同法第2条第1項及び第2項)、臓器の摘出については、本人が生存中に臓器を提供する意思及び脳死判定に従う意思を書面により表示していることを要件としている(同法第6条第1項及び第3項)。

・ これらの意思を表示する書面については、本人が独自に作成することは可能であるが、実際にはそれを法の求めるところに適うものとして作成することは困難なことから、厚生労働省及び(社)日本臓器移植ネットワークにより、カード(又は臓器提供意思表示シール)が作成され、頒布されている。

・ この「書面」とは、法的には、本人の「臓器を提供する意思」の有無だけではなく、「脳死判定に従う意思」のそれも確認できるものでなければならず、また、本人の署名が存在しなければならない。さらに、実務上、提供したい臓器の種類及び署名年月日の記載も必要とされている。

(別紙1参照)

3 新しい取扱いについて

現行のカード様式に係るカードの記載不備事例のこれまでの取扱いを見直し、臓器移植法の趣旨等に基づき、カードの記載事項の一部に不備があっても、当該カードのその他の記載内容等から、本人の署名があり、かつ、本人の「臓器を提供する意思」及び「脳死判定に従う意思」が確認できるものについては、法の求めている書面による意思表示が存在するものとして取り扱うこととする。また、本人の意思を正確に確認するため、カードの記載とあわせて、家族の陳述など他の資料も考慮する。

具体的な取扱いについては、次のとおりである。

(1) カードの番号の記載に不備がある事例

① カードの番号1に○がなく、提供したい臓器が○で囲まれている場合については、提供したい臓器を○で囲んでいること等から、脳死判定に従い、脳死後に臓器を提供するという前提のもとで、提供したい臓器が明確に示されていると考えられることから、脳死判定に従う意思及び臓器提供を行う意思は表示されていると判断する。

(別紙2(1)①)

② カードの番号1に○がなく、提供したい臓器も○で囲まれていないが、番号1の「その他」の括弧内に「全部」又は「全臓器提供」と記載されている場合については、番号1に○はなく、提供したい臓器も○で囲まれていないが、番号1の「その他」の括弧内に「全部」又は「全臓器提供」と記載されていること等から、脳死判定に従う意思及び臓器提供を行う意思は表示されていると判断する。

(別紙2(1)②)

③ カードの番号1に○があり、提供したい臓器が○で囲まれている場合であって、カードの番号3に○と×の両方を記載していた場合については、番号1に○があり、提供したい臓器が明確に表示されていること等から、番号3に○と×の両方が記載されていることについては、「番号3に○を付けたものの間違いに気づき×を付けた」と考えることが社会通念に照らして適当であり、脳死判定に従う意思及び臓器を提供する意思が表示されていると判断する。

(別紙2(1)③)

(2) 提供したい臓器の記載に不備がある事例

① カードの番号1に○があり、提供したい臓器が○で囲まれていない場合については、脳死判定に従う意思及び臓器を提供する意思は明確に表示されており、提供したい臓器の種類は、番号1に○を付けていること等から、当該欄に記載されている臓器(心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸、眼球)と判断する。

(別紙2(2)①)

(3) 本人署名の記載に不備がある事例

① 本人署名がない場合については、臓器移植法で要求する書面とは認められないことから、従来通り、有効ではないものとする。

(別紙2(3)①)

② カードの本人署名と家族署名の記載欄を書き間違え、逆に記載した場合については、一律に書面の有効性が確認できないと判断せず、署名した家族を含め他者の証言により本人の意思表示であることが明らかな場合には、本人の署名があるものとし、書面の有効性が確認できるものとして取り扱う。

(別紙2(3)②)

(4) 署名年月日の記載に不備がある事例

① 署名年月日に不備がある場合及び署名年月日の記載がない場合については、カードの発行日以降にカードの記載が行われたことは自明であるので、一律に無効とするのではなく、カードの発行日以降に記載されたものとして取り扱う。また、本人が、法律施行日前の日付が記載されたカードを法律施行日以降も所持していることから、法律施行日以降も当該カードの記載内容の意思を有していたとして取り扱う。

(別紙2(4)①)

[別紙1]

○臓器の移植に関する法律(平成9年法律第109号)(抄)

(基本的理念)

第2条 死亡した者が生存中に有していた自己の臓器の移植術に使用されるための提供に関する意思は、尊重されなければならない。

2 移植術に使用されるための臓器の提供は、任意にされたものでなければならない。

(第3項及び第4項 略)

(臓器の摘出)

第6条 医師は、死亡した者が生存中に臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないときは、この法律に基づき、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。

(第2項 略)

3 臓器の摘出に係る前項の判定は、当該者が第1項に規定する意思の表示に併せて前項による判定に従う意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けたその者の家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないときに限り、行うことができる。

(第4~6項 略)

[別紙2]

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