アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○保育所における食を通じた子どもの健全育成(いわゆる「食育」)に関する取組の推進について

(平成16年3月29日)

(雇児保発第0329001号)

(各都道府県・各指定都市・各中核市児童福祉主管部(局)長あて厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課長通知)

近年、子どもの食をめぐっては、発育・発達の重要な時期にありながら、朝食の欠食等の食習慣の乱れや、思春期のやせにみられるような心と身体の健康問題が生じている現状にかんがみ、乳幼児期からの適切な食事のとり方や望ましい食習慣の定着、食を通じた豊かな人間性の育成など、心身の健全育成を図ることの重要性が増している。

このため、子ども一人ひとりの“食べる力”を豊かに育むための支援づくりを進める必要があることから、平成16年3月16日雇児発第0316007号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知「食を通じた子どもの健全育成(いわゆる「食育」)に関する取組の推進について」を発出し、地域の実情に応じた「食育」の取組の推進をお願いしたところである。

保育所は、乳幼児が1日の生活時間の大半を過ごすところであり、保育所における食事の意味は大きい。食事は空腹を満たすだけでなく、人間関係の信頼関係の基礎をつくる営みでもあり、豊かな食体験を通じて、食を営む力の基礎を培う「食育」を実践していくことが重要である。

保育所における「食育」については、保育所保育指針を基本として取り組まれているところであるが、平成15年度児童環境づくり等総合調査研究事業として『楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針~』報告書が取りまとめられたところであり、保育所における食育の計画作成の際の参考とされるよう管内市町村に周知を図られたい。

なお、報告書については、(財)こども未来財団の運営によるインターネットを活用した「i―子育てネット」に掲載するので、保育所等で広く活用されるよう併せて周知を図られたい。

楽しく食べる子どもに

~保育所における食育に関する指針~

平成16年3月

平成15年度 児童環境づくり等総合調査研究事業

保育所における食育のあり方に関する研究班

目次

第1章 総則

1 食育の原理

(1) 食育の目標

(2) 食育の方法

2 食育の内容構成の基本方針

(1) ねらい及び内容

(2) 食育の計画

第2章 子どもの発育・発達と食育

1 6か月未満

2 6か月から1歳3か月未満児

3 1歳3か月から2歳未満児

4 2歳児

5 3歳以上児

第3章 食育のねらい及び内容

1 6か月未満児の食育のねらい及び内容

(1) ねらい

(2) 内容

(3) 配慮事項

2 6か月から1歳3か月未満児の食育のねらい及び内容

(1) ねらい

(2) 内容

(3) 配慮事項

3 1歳3か月から2歳未満児の食育のねらい及び内容

(1) ねらい

(2) 内容

(3) 配慮事項

4 2歳児の食育のねらい及び内容

(1) ねらい

(2) 内容

(3) 配慮事項

5 3歳以上児の食育のねらい及び内容

「食と健康」

(1) ねらい

(2) 内容

(3) 配慮事項

「食と人間関係」

(1) ねらい

(2) 内容

(3) 配慮事項

「食と文化」

(1) ねらい

(2) 内容

(3) 配慮事項

「いのちの育ちと食」

(1) ねらい

(2) 内容

(3) 配慮事項

「料理と食」

(1) ねらい

(2) 内容

(3) 配慮事項

第4章 食育の計画作成上の留意事項

1 保育計画と指導計画への位置づけ

2 長期的指導計画と短期的指導計画における食育の計画の作成

3 3歳未満児の食育の指導計画

4 3歳以上児の食育の指導計画

5 計画の評価・改善と職員の協力体制

第5章 食育における給食の運営

1 食育における保育所の食事の位置づけ

2 保育所での栄養管理と、発達段階に応じた食事内容への配慮

3 食事提供のための実態把握

4 献立作成

5 調理

6 盛り付け・配膳

7 食事

8 衛生管理

9 家庭への喫食状況の報告

10 食事の評価・改善

第6章 多様な保育ニーズへの対応

1 体調不良の子どもへの対応

2 食物アレルギーのある子どもへの対応

3 障がいのある子どもへの対応

4 延長保育や夜間保育への対応

5 一時保育への対応

第7章 食育推進のための連携

1 保育所職員の研修及び連携

2 家庭との連携

3 地域と連携した食育活動事業

第8章 地域の子育て家庭への食に関する相談・支援

第1章 総則

朝食欠食等の食習慣の乱れや思春期やせに見られるような心と体の健康問題が生じている現状にかんがみ、乳幼児期から正しい食事のとり方や望ましい食習慣の定着及び食を通じた人間性の形成・家族関係づくりによる心身の健全育成を図るため、発達段階に応じた食に関する取組を進めることが必要である。

食べることは生きることの源であり、心と体の発達に密接に関係している。乳幼児期から、発達段階に応じて豊かな食の体験を積み重ねていくことにより、生涯にわたって健康で質の高い生活を送る基本となる「食を営む力」を培うことが重要である。

保育所は1日の生活時間の大半を過ごすところであり、保育所における食事の意味は大きい。食事は空腹を満たすだけでなく、人間的な信頼関係の基礎をつくる営みでもある。子どもは身近な大人からの援助を受けながら、他の子どもとのかかわりを通して、豊かな食の体験を積み重ねることができる。楽しく食べる体験を通して、子どもの食への関心を育み、「食を営む力」の基礎を培う「食育」を実践していくことが重要である。

保育所における「食育」は、保育所保育指針を基本とし、「食を営む力」の基礎を培うことを目標として実施される。「食育」の実施に当たっては、家庭や地域社会と連携を図り、保護者の協力のもと、保育士、調理員、栄養士、看護師などの全職員がその有する専門性を活かしながら、共に進めることが重要である。

また、保育所は地域子育て支援の役割をも担っていることから、在宅の子育て家庭からの乳幼児の食に関する相談に応じ、助言を行うよう努める。

1 食育の原理

(1) 食育の目標

現在を最もよく生き、かつ、生涯にわたって健康で質の高い生活を送る基本としての「食を営む力」の育成に向け、その基礎を培うことが保育所における食育の目標である。このため、保育所における食育は、楽しく食べる子どもに成長していくことを期待しつつ、次にかかげる子ども像の実現を目指して行う。

① お腹がすくリズムのもてる子ども

② 食べたいもの、好きなものが増える子ども

③ 一緒に食べたい人がいる子ども

④ 食事づくり、準備にかかわる子ども

⑤ 食べものを話題にする子ども

上にかかげた子ども像は、保育所保育指針で述べられている保育の目標を、食育の観点から、具体的な子どもの姿として表したものである。

保育所保育指針では以下の6つの保育の目標がある。

ア 十分に養護の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を適切に満たし、生命の保持及び情緒の安定を図ること。

イ 健康、安全など生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと。

ウ 人とのかかわりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと。

エ 自然や社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の基礎を培うこと。

オ 生活の中で、言葉への興味や関心を育て、喜んで話したり、聞いたりする態度や豊かな言葉を養うこと。

カ 様々な体験を通して、豊かな感性を育て、創造性の芽生えを培うこと。

これらの一つ一つがそれぞれに影響を及ぼしながら、統合されることで「その子どもが、現在を最もよく生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培う」目標が達成される。

食育における5つの子ども像はこれらの保育の目標からみた期待する子どもの姿である。

① 「お腹がすくリズムのもてる子ども」になるには、子ども自身が「お腹がすいた」という感覚が持てる生活を送れることが必要である。そのためには目標のアとイで述べられているように、子どもが十分に遊び、充実した生活が保障されているかどうかが重要である。保育所において、一日の生活リズムの基本的な流れを確立し、その流れを子ども自身が感じ、自らそれを押しすすめる実感を体験する中で、空腹感や食欲を感じ、それを満たす心地よさのリズムを子どもに獲得させたい。

② 「食べたいもの、好きなものが増える子ども」となるには、子どもが意欲的に新しい食べものに興味や関心をもち、食べてみようと試みることができる環境が重要である。目標のエやカに述べられているような様々な体験を通して、いろいろな食べものに親しみ、食べものへの興味や関心を育てることが必要である。子ども自身が、自分が成長しているという自覚と結びつけながら、必要な食べものを食べるという行為を引き出したい。

③ 「一緒に食べたい人がいる子ども」となるには、子どもが一人で食べるのではなく、一緒に食べたいと思う親しい人がいる子どもに育つような環境が必要である。目標のウで述べられているように、子どもは人とのかかわりの中で人に対する愛情や信頼感が育つことで、食べるときも「人と一緒に食べたい」と思う子どもに育っていく。食事の場面を皆で準備し、皆で一緒に食べ、食事を皆で楽しむという集いを形成させたい。

④ 「食事づくり、準備にかかわる子ども」となるには、子ども自身が食事をはじめ、食べる行為を本当に楽しく、待ち望むものであるような体験を積むことが必要である。子どもにとって、食に関する魅力的な活動をどのように環境として用意するのかが課題である。食べるという行為を実感するためには、自分自身が生き続けられるように、食事をつくることと食事の場を準備することと結びつけることで、食べることは、生きる喜びにつながっていることを自覚させたい。

⑤ 「食べものを話題にする子ども」となるためには、食べものを媒介として人と話すことができるような環境が多くあることが望ましい。食べるという行為は、食べものを人間の中に取り入れて、生きる喜びを感じるものである。また、食べる行為が食材の栽培などいのちを育む営みとつながっているという事実を子どもたちに体験させ、自分でつくったものを味わい、生きる喜びにつなげたい。

これらの食育における5つの子ども像は個々にあるのではなく、それぞれが互いに影響し合いながら、統合されて一人の子どもとして成長していくことを目標としている。

(2) 食育の方法

食育においては、大人の言動が子どもに大きな影響を与える。したがって、常に研修などを通して、自ら、人間性と専門性の向上に努める必要がある。また、倫理観に裏付けられた知性と技術を備え、豊かな感性と愛情を持って、一人一人の子どもにかかわらなければならない。具体的には保育所保育指針の保育の方法を踏襲するものである。

2 食育の内容構成の基本方針

(1) ねらい及び内容

食育の内容は、「ねらい」及び「内容」から構成される。

「ねらい」は食育の目標をより具体化したものである。これは「子どもが身につけることが望まれる心情、意欲、態度などを示した事項」である。

「内容」はねらいを達成するために援助する事項である。これらを、食と子どもの発達の観点から、心身の健康に関する項目「食と健康」、人とのかかわりに関する項目「食と人間関係」、食の文化に関する項目「食と文化」、いのちとのかかわりに関する項目「いのちの育ちと食」、料理とのかかわりに関する「料理と食」としてまとめ、示した。なお、この5項目は、3歳未満児については、その発達の特性からみて各項目を明確に区分することが困難な面が多いので、5項目に配慮しながら、一括して示してある。

また、食育は、保育と同様に、具体的な子どもの活動を通して展開されるものである。そのため、子どもの活動は一つの項目だけに限られるものではなく、項目の間で相互に関連を持ちながら総合的に展開していくものである。

(2) 食育の計画

食育は、食事の時間を中心としつつも、入所している子どもの生活全体を通して進めることにより、第1章の1に示した目標の達成を期待するものである。食育が一つの領域として扱われたり、食事の時間の援助と他の保育活動の援助が全く別々に行われたり、保育士と栄養士、調理員などの役割・連携が不明確であっては、食育の目標を効果的に達成することはできない。したがって食育は、全職員の共通理解のもとに計画的・総合的に展開されなければならない。

そのため、「食育の計画」は、「保育所保育指針」に示された保育所における全体的な計画である「保育計画」と、保育計画に基づいて保育を展開するために具体的な計画として立案される「指導計画」の中にしっかり位置づくかたちで作成される必要がある。作成に当たっては柔軟で発展的なものとなるように留意することが重要である。同時に、各年齢を通して一貫性のあるものとする必要がある。

さらに、現代社会特有の食環境の変化に対し、家庭や地域社会の実態を踏まえ、各保育所の特性を考慮した柔軟な食育の計画を作成し、適切に対応することが必要である。

また、食育の計画を踏まえて実践が適切に進められているかどうかを把握し、次の食育実践の資料とするため、その経過や結果を記録し、自己の食育実践を評価し、改善するように努めることが必要である。

第2章 子どもの発育・発達と食育

乳幼児期は、将来にわたって健康でいきいきとした生活を送る基本としての「食を営む力」の基礎を培う時期である。

乳幼児期は、発育・発達が旺盛な時期であり、個人差も大きい。そのため、家庭と密接に連携をとりながら、家庭の状況、子どもの食欲、食べられる量、食べものの嗜好など個人差に十分に配慮し、一人一人の発育・発達に応じた食育を進めていく必要がある。

1 6か月未満

生後6か月までの時期は、身長や体重の増加が大きく、著しい発育・発達を示す。子どもは最初、原始反射としての哺乳行動によってエネルギーや栄養素を確保する。消化器官は未熟であり、感染に対する抵抗力は十分でない。また、個人差が非常に大きいことも、この時期の特徴である。

授乳時における大人からのやさしい言葉かけとそれに応じた子どもの哺乳行動は、人と人とのやりとりの原初的な形態である。子どもは、大人からの言葉かけ、微笑みに対して答えを返すように哺乳する。満腹になると乳首をくわえたまま気持ちよさそうに眠ることもある。

4か月頃になると、哺乳量、哺乳時間も徐々に規則的になっていく。一人一人の子どもの状態、家庭の状態にあわせて、きめ細やかに乳(母乳・ミルク)を与えられる中で、子どもは、お腹がすいたというリズム、満足感を得る。そして徐々に、睡眠と覚醒の生活リズムが整ってくる。心地よい眠りのあと機嫌のよいときは、じっと見つめたり、周りを見まわしたりする。食事の場面でも、大人が食べているものを見つめ、食べることに興味を示し始める。手指の機能も徐々に発達してくるので、目の前にある食べものや食具に手を伸ばしてつかもうとする行動もみられるようになる。

2 6か月から1歳3か月未満児

6か月を過ぎると、乳歯が生え始め、吸うばかりでなく、舌や歯茎でつぶす行動がみられるようになる。また、大人が食べている様子を見つめながら、よだれをだすこともある。母乳・ミルクだけでは必要な栄養素が不足するため、栄養補給のためにも離乳食が必要になってくる。

離乳期にはいると、子どもはさまざまな食べものの味、形、色、口当たりを経験するようになる。大人からの暖かい援助のなかで、少しずつ摂取できる食品の量や種類を増やしていく。その経験が味覚や視覚、触覚を刺激し、これらの発達を促すと同時に、子どもの好奇心を育てていく。離乳食を喜んで食べ、心地よい生活を経験することが、食べものへの興味、食べようとする意欲を高めていく。

この時期には人見知りが激しくなる。これは、特定の親しい大人とそうでない大人を識別できるようになったことの証しでもある。親しい大人に積極的にかかわりを持とうとする子どもの気持ちを大切に受け入れ、応答することが情緒の安定にとって重要である。親しい大人との安定したかかわりのなかで、子どもは食の満足感と人への共感を体験する。

3 1歳3か月から2歳未満児

この時期になると、子どもは歩き始め、運動機能がめざましく発達し、生活空間が広がってくる。乳歯も徐々に揃い、咀嚼・嚥下機能、消化・吸収機能が発達する。手指の運動機能も発達し、自分で食具を使って食べられるようになる。なめる、かじる、つまむ、にぎる、転がす、スプーンを使う、コップを持つなど運動の種類が確実に豊かになっていく。また、身近な人の興味ある行動を模倣し、自分の活動に取り入れるようになる。新しい行動の獲得によって、自分にもできるという気持ちを持ち、自信を獲得し、自発性を高めていく。大人の言うことがわかるようになり、自分の気持ちも言葉で表現できるようになる。言葉で表現できないことは、指さし、身振りなどで示そうとする。

自分でやりたい、自分で食べたいという気持ちも強くなる。食べさせてもらうことを嫌がるようになり、食べものをつまんだり、つかんだり、手でこねたりしながら、自分で食べようとする行動が顕著になってくる。また、食欲や食事の好みに偏りが現れやすくなる。大人にとっては、いたずらが激しくなったと感じられることも多くなる。自分でやりたいという子どもの気持ちを尊重し、大人が適切な声かけをすることで、子どもは進んで食べようとする意欲を高めていく。

4 2歳児

2歳を過ぎると、歩行の機能は一段と進み、走る、跳ぶなどの基本的な運動機能が伸び、体を自分の思うように動かせるようになる。指先の動きも急速に進歩し、発声、構音機能も急速に発達して、発声はより明瞭になり、語彙の増加もめざましい。自分がやりたいこと、してほしいことを言葉で表出できるようになる。

自分でやろうとする意欲がさらに強くなり、大人の手を借りずに自分で食べようという行動がますます顕著になる。現実にはすべてが自分でできるわけではないので、自分でできないことにいらだったり、大人からの制止に対してかんしゃくを起こしたりする。これは、自我が順調に育っていることの証しでもある。

他の子どもに対する関心も高まってくる。他の子どもとの間で物を仲立ちとした触れ合いや物の取り合いも激しくなる。食事の場面でも、他の子どもとのかかわりを徐々に求めるようになる。他の子どもの近くに座り、食べものを仲立ちとしたやりとりがみられるようになる。こうした経験が、他の人々と一緒に食べることの喜びへとつながっていく。

5 3歳以上児

3歳頃には、運動能力やコミュニケーションの基礎的な部分は完成する。大人との関係を中心として行動していた子どもも、徐々にひとりの独立した存在として行動しようとし、自我がよりはっきりとしてくる。4歳頃には、身体の動きはますます巧みになり、自分と他者の区別がはっきりとしてくる。自分と他者が異なる視点をもつ存在であることに気づくようにもなり、自意識が芽生えてくる。さらに、5歳頃には、日常生活はほぼ自立して行えるようになり、自分で考えて判断する力も育ってくる。

遊びや食事などの諸活動がバランスよく組み立てられた生活を送る中で、徐々に、お腹がすくリズムが育っていく。また、周囲の大人や他の子どもとの暖かいかかわりを通して経験した「おいしい」という気持ちが、食べたいという気持ち、食べようとする意欲へとつながっていく。家庭での食習慣が確立してくるため、量だけでなく、食べ慣れている食べものの種類についても個人差が一層大きくなってくる。周囲の大人が暖かな励ましの目をもって関わることにより、子どもは慣れない食べものや嫌いな食べものにも挑戦しようとする意欲をもち、さまざまな食べものを進んで食べるようになる。親しい人と一緒に食べることの楽しさ、なごやかなコミュニケーション、同じものを分けあって食べる経験を通して、子どもは他の人々への愛情や信頼感をもつようになる。そして、それが、自分自身の安定感や効力感を育てていく。

子どもは徐々に、他の人々の役に立つことをうれしいと感じ、手伝いをすることを誇らしく思うようになる。運動機能の発達により、食事の片付けや準備などに、実際にかかわることができるようになる。手伝いの経験の中から、食材に興味を持ち、調理のやり方を身につけ、味や盛り付けを考え、主体的に食事に関わる態度が育っていく。また、手伝いの経験を通して、子どもは人と人が助け合うことの大切さ、いつも調理してくれる人々への感謝、そして自分が感謝されることの喜びを実感する。

季節の食材や行事食などを通じて、子どもは、旬の食材や地域の産物、そして食文化のもつさまざまな意味に気づくようになる。食材の栽培や動物の飼育にかかわることは、食べものの由来に触れ、生物一般にとってのいのちの大切さを知る機会となる。さらに、大人からの暖かな援助を得て、子どもは食具を正しく使い、気持ちよく挨拶し、きちんとした姿勢で、楽しい話をしながら食の場に参加できるようになる。そうした経験を積み重ねる中で、徐々に、他の人々とともに豊かな「食を営む力」がつくり出されていく。

第3章 食育のねらい及び内容

1 6か月未満児の食育のねらい及び内容

(1) ねらい

① お腹がすき、乳(母乳・ミルク)を飲みたい時、飲みたいだけゆったりと飲む。

② 安定した人間関係の中で、乳を吸い、心地よい生活を送る。

(2) 内容

① よく遊び、よく眠る。

② お腹がすいたら、泣く。

③ 保育士にゆったり抱かれて、乳(母乳・ミルク)を飲む。

④ 授乳してくれる人に関心を持つ。

(3) 配慮事項

① 一人一人の子どもの安定した生活のリズムを大切にしながら、心と体の発達を促すよう配慮すること。

② お腹がすき、泣くことが生きていくことの欲求の表出につながることを踏まえ、食欲を育むよう配慮すること。

③ 一人一人の子どもの発育・発達状態を適切に把握し、家庭と連携をとりながら、個人差に配慮すること。

④ 母乳育児を希望する保護者のために冷凍母乳による栄養法などの配慮を行う。冷凍母乳による授乳を行うときには、十分に清潔で衛生的に処置をすること。

⑤ 食欲と人間関係が密接な関係にあることを踏まえ、愛情豊かな特定の大人との継続的で応答的な授乳中のかかわりが、子どもの人間への信頼、愛情の基盤となるように配慮すること。

2 6か月から1歳3か月未満児の食育のねらい及び内容

(1) ねらい

① お腹がすき、乳を吸い、離乳食を喜んで食べ、心地よい生活を味わう。

② いろいろな食べものを見る、触る、味わう経験を通して自分で進んで食べようとする。

(2) 内容

① よく遊び、よく眠り、満足するまで乳を吸う。

② お腹がすいたら、泣く、または、喃語によって、乳や食べものを催促する。

③ いろいろな食べものに関心を持ち、自分で進んで食べものを持って食べようとする。

④ ゆったりとした雰囲気の中で、食べさせてくれる人に関心を持つ。

(3) 配慮事項

① 一人一人の子どもの安定した生活のリズムを大切にしながら、心と体の発達を促すよう配慮すること。

② お腹がすき、乳や食べものを催促することが生きていくことの欲求の表出につながることを踏まえ、いろいろな食べものに接して楽しむ機会を持ち、食欲を育むよう配慮すること。

③ 一人一人の子どもの発育・発達状態を適切に把握し、家庭と連携をとりながら、個人差に配慮すること。

④ 子どもの咀嚼や嚥下機能の発達に応じて、食品の種類、量、大きさ、固さなどの調理形態に配慮すること。

⑤ 食欲と人間関係が密接な関係にあることを踏まえ、愛情豊かな特定の大人との継続的で応答的な授乳及び食事でのかかわりが、子どもの人間への信頼、愛情の基盤となるように配慮すること。

3 1歳3か月から2歳未満児の食育のねらい及び内容

(1) ねらい

① お腹がすき、食事を喜んで食べ、心地よい生活を味わう。

② いろいろな食べものを見る、触る、噛んで味わう経験を通して自分で進んで食べようとする。

(2) 内容

① よく遊び、よく眠り、食事を楽しむ。

② いろいろな食べものに関心を持ち、手づかみ、または、スプーン、フォークなどを使って自分から意欲的に食べようとする。

③ 食事の前後や汚れたときは、顔や手を拭き、きれいになった快さを感じる。

④ 楽しい雰囲気の中で、一緒に食べる人に関心を持つ。

(3) 配慮事項

① 一人一人の子どもの安定した生活のリズムを大切にしながら、心と体の発達を促すよう配慮すること。

② 子どもが食べものに興味を持って自ら意欲的に食べようとする姿を受けとめ、自立心の芽生えを尊重すること。

③ 食事のときには、一緒に噛むまねをして見せたりして、噛むことの大切さが身につくように配慮すること。また、少しずついろいろな食べものに接することができるよう配慮すること。

④ 子どもの咀嚼や嚥下機能の発達に応じて、食品の種類、量、大きさ、固さなどの調理形態に配慮すること。

⑤ 清潔の習慣については、子どもの食べる意欲を損なわぬよう、一人一人の状態に応じてかかわること。

⑥ 子どもが一緒に食べたい人を見つけ、選ぼうとする姿を受けとめ、人への関心の広がりに配慮すること。

4 2歳児の食育のねらい及び内容

(1) ねらい

① いろいろな種類の食べものや料理を味わう。

② 食生活に必要な基本的な習慣や態度に関心を持つ。

③ 保育士を仲立ちとして、友達とともに食事を進め、一緒に食べる楽しさを味わう。

(2) 内容

① よく遊び、よく眠り、食事を楽しむ。

② 食べものに関心を持ち、自分で進んでスプーン、フォーク、箸などを使って食べようとする。

③ いろいろな食べものを進んで食べる。

④ 保育士の手助けによって、うがい、手洗いなど、身の回りを清潔にし、食生活に必要な活動を自分でする。

⑤ 身近な動植物をはじめ、自然事象をよく見たり、触れたりする。

⑥ 保育士を仲立ちとして、友達とともに食事を進めることの喜びを味わう。

⑦ 楽しい雰囲気の中で、一緒に食べる人、調理をする人に関心を持つ。

(3) 配慮事項

① 一人一人の子どもの安定した生活のリズムを大切にしながら、心と体の発達を促すよう配慮すること。

② 食べものに興味を持ち、自主的に食べようとする姿を尊重すること。また、いろいろな食べものに接することができるよう配慮すること。

③ 食事においては個人差に応じて、食品の種類、量、大きさ、固さなどの調理形態に配慮すること。

④ 清潔の習慣については、一人一人の状態に応じてかかわること。

⑤ 自然や身近な事物などへの触れ合いにおいては、安全や衛生面に留意する。また、保育士がまず親しみや愛情を持ってかかわるようにして、子どもが自らしてみようと思う気持ちを大切にすること。

⑥ 子どもが一緒に食べたい人を見つけ、選ぼうとする姿を受けとめ、人への関心の広がりに配慮すること。また、子ども同士のいざこざも多くなるので、保育士はお互いの気持ちを受容し、他の子どもとのかかわり方を知らせていく。

⑦ 友達や大人とテーブルを囲んで、食事をすすめる雰囲気づくりに配慮すること。また、楽しい食事のすすめ方を気づかせていく。

5 3歳以上児の食育のねらい及び内容

「食と健康」

食を通じて、健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う。

(1) ねらい

① できるだけ多くの種類の食べものや料理を味わう。

② 自分の体に必要な食品の種類や働きに気づき、栄養バランスを考慮した食事をとろうとする。

③ 健康、安全など食生活に必要な基本的な習慣や態度を身につける。

(2) 内容

① 好きな食べものをおいしく食べる。

② 様々な食べものを進んで食べる。

③ 慣れない食べものや嫌いな食べものにも挑戦する。

④ 自分の健康に関心を持ち、必要な食品を進んでとろうとする。

⑤ 健康と食べものの関係について関心を持つ。

⑥ 健康な生活リズムを身につける。

⑦ うがい、手洗いなど、身の回りを清潔にし、食生活に必要な活動を自分でする。

⑧ 保育所生活における食事の仕方を知り、自分たちで場を整える。

⑨ 食事の際には、安全に気をつけて行動する。

(3) 配慮事項

① 食事と心身の健康とが、相互に密接な関連があるものであることを踏まえ、子どもが保育士や他の子どもとの暖かな触れ合いの中で楽しい食事をすることが、しなやかな心と体の発達を促すよう配慮すること。

② 食欲が調理法の工夫だけでなく、生活全体の充実によって増進されることを踏まえ、食事はもちろんのこと、子どもが遊びや睡眠、排泄などの諸活動をバランスよく展開し、食欲を育むよう配慮すること。

③ 健康と食べものの関係について関心を促すに当たっては、子どもの興味・関心を踏まえ、全職員が連携のもと、子どもの発達に応じた内容に配慮すること。

④ 食習慣の形成に当たっては、子どもの自立心を育て、子どもが他の子どもとかかわりながら、主体的な活動を展開する中で、食生活に必要な習慣を身につけるように配慮すること。

「食と人間関係」

食を通じて、他の人々と親しみ支え合うために、自立心を育て、人とかかわる力を養う。

(1) ねらい

① 自分で食事ができること、身近な人と一緒に食べる楽しさを味わう。

② 様々な人々との会食を通して、愛情や信頼感を持つ。

③ 食事に必要な基本的な習慣や態度を身につける。

(2) 内容

① 身近な大人や友達とともに、食事をする喜びを味わう。

② 同じ料理を食べたり、分け合って食事することを喜ぶ。

③ 食生活に必要なことを、友達とともに協力して進める。

④ 食の場を共有する中で、友達とのかかわりを深め、思いやりを持つ。

⑤ 調理をしている人に関心を持ち、感謝の気持ちを持つ。

⑥ 地域のお年寄りや外国の人など様々な人々と食事を共にする中で、親しみを持つ。

⑦ 楽しく食事をするために、必要なきまりに気づき、守ろうとする。

(3) 配慮事項

① 大人との信頼関係に支えられて自分自身の生活を確立していくことが人とかかわる基盤となることを考慮し、子どもと共に食事をする機会を大切にする。また、子どもが他者と食事を共にする中で、多様な感情を体験し、試行錯誤しながら自分の力で行うことの充実感を味わうことができるよう、子どもの行動を見守りながら適切な援助を行うように配慮すること。

② 食に関する主体的な活動は、他の子どもとのかかわりの中で深まり、豊かになるものであることを踏まえ、食を通して、一人一人を生かした集団を形成しながら、人とかかわる力を育てていくように配慮する。また、子どもたちと話し合いながら、自分たちのきまりを考え、それを守ろうとすることが、楽しい食事につながっていくことを大切にすること。

③ 思いやりの気持ちを培うに当たっては、子どもが他の子どもとのかかわりの中で他者の存在に気付き、相手を尊重する気持ちを持って行動できるようにする。特に、葛藤やつまずきの体験を重視し、それらを乗り越えることにより、次第に芽生える姿を大切にすること。

④ 子どもの食生活と関係の深い人々と触れ合い、自分の感情や意志を表現しながら共に食を楽しみ、共感し合う体験を通して、高齢者をはじめ、地域、外国の人々などと親しみを持ち、人とかかわることの楽しさや人の役に立つ喜びを味わうことができるようにする。また、生活を通して親の愛情に気づき、親を大切にしようとする気持ちが育つようにすること。

「食と文化」

食を通じて、人々が築き、継承してきた様々な文化を理解し、つくり出す力を養う。

(1) ねらい

① いろいろな料理に出会い、発見を楽しんだり、考えたりし、様々な文化に気づく。

② 地域で培われた食文化を体験し、郷土への関心を持つ。

③ 食習慣、マナーを身につける。

(2) 内容

① 食材にも旬があることを知り、季節感を感じる。

② 地域の産物を生かした料理を味わい、郷土への親しみを持つ。

③ 様々な伝統的な日本特有の食事を体験する。

④ 外国の人々など、自分と異なる食文化に興味や関心を持つ。

⑤ 伝統的な食品加工に出会い、味わう。

⑥ 食事にあった食具(スプーンや箸など)の使い方を身につける。

⑦ 挨拶や姿勢など、気持ちよく食事をするためのマナーを身につける。

(3) 配慮事項

① 子どもが、生活の中で様々な食文化とかかわり、次第に周囲の世界に好奇心を抱き、その文化に関心を持ち、自分なりに受け止めることができるようになる過程を大切にすること。

② 地域・郷土の食文化などに関しては、日常と非日常いわゆる「ケとハレ」のバランスを踏まえ、子ども自身が季節の恵み、旬を実感することを通して、文化の伝え手となれるよう配慮すること。

③ 様々な文化があることを踏まえ、子どもの人権に十分配慮するとともに、その文化の違いを認め、互いに尊重する心を育てるよう配慮する。また、必要に応じて一人一人に応じた食事内容を工夫するようにすること。

④ 文化に見合った習慣やマナーの形成に当たっては、子どもの自立心を育て、子どもが積極的にその文化にかかわろうとする中で身につけるように配慮すること。

「いのちの育ちと食」

食を通じて、自らも含めたすべてのいのちを大切にする力を養う。

(1) ねらい

① 自然の恵みと働くことの大切さを知り、感謝の気持ちを持って食事を味わう。

② 栽培、飼育、食事などを通して、身近な存在に親しみを持ち、すべてのいのちを大切にする心を持つ。

③ 身近な自然にかかわり、世話をしたりする中で、料理との関係を考え、食材に対する感覚を豊かにする。

(2) 内容

① 身近な動植物に関心を持つ。

② 動植物に触れ合うことで、いのちの美しさ、不思議さなどに気づく。

③ 自分たちで野菜を育てる。

④ 収穫の時期に気づく。

⑤ 自分たちで育てた野菜を食べる。

⑥ 小動物を飼い、世話をする。

⑦ 卵や乳など、身近な動物からの恵みに、感謝の気持ちを持つ。

⑧ 食べものを皆で分け、食べる喜びを味わう。

(3) 配慮事項

① 幼児期において自然のもつ意味は大きく、その美しさ、不思議さ、恵みなどに直接触れる体験を通して、いのちの大切さに気づくことを踏まえ、子どもが自然とのかかわりを深めることができるよう工夫すること。

② 身近な動植物に対する感動を伝え合い、共感し合うことなどを通して自らかかわろうとする意欲を育てるとともに、様々なかかわり方を通してそれらに対する親しみ、いのちを育む自然の摂理の偉大さに畏敬の念を持ち、いのちを大切にする気持ちなどが養われるようにすること。

③ 飼育・栽培に関しては、日常生活の中で子ども自身が生活の一部として捉え、体験できるように環境を整えること。また、大人の仕事の意味が分かり、手伝いなどを通して、子どもが積極的に取り組めるように配慮すること。

④ 身近な動植物、また飼育・栽培物の中から保健・安全面に留意しつつ、食材につながるものを選び、積極的に食する体験を通して、自然と食事、いのちと食事のつながりに気づくように配慮すること。

⑤ 小動物の飼育に当たってはアレルギー症状などを悪化させないように十分な配慮をすること。

「料理と食」

食を通じて、素材に目を向け、素材にかかわり、素材を調理することに関心を持つ力を養う。

(1) ねらい

① 身近な食材を使って、調理を楽しむ。

② 食事の準備から後片付けまでの食事づくりに自らかかわり、味や盛りつけなどを考えたり、それを生活に取り入れようとする。

③ 食事にふさわしい環境を考えて、ゆとりある落ち着いた雰囲気で食事をする。

(2) 内容

① 身近な大人の調理を見る。

② 食事づくりの過程の中で、大人の援助を受けながら、自分でできることを増やす。

③ 食べたいものを考える。

④ 食材の色、形、香りなどに興味を持つ。

⑤ 調理器具の使い方を学び、安全で衛生的な使用法を身につける。

⑥ 身近な大人や友達と協力し合って、調理することを楽しむ。

⑦ おいしそうな盛り付けを考える。

⑧ 食事が楽しくなるような雰囲気を考え、おいしく食べる。

(3) 配慮事項

① 自ら調理し、食べる体験を通して、食欲や主体性が育まれることを踏まえ、子どもが食事づくりに取り組むことができるように工夫すること。

② 一人一人の子どもの興味や自発性を大切にし、調理しようとする意欲を育てると共に、様々な料理を通して素材に目を向け、素材への関心が養われるようにすること。

③ 安全・衛生面に配慮しながら、扱いやすい食材、調理器具などを日常的に用意し、子どもの興味・関心に応じて自分で調理することができるように配慮すること。そのため、保育所の全職員が連携し、栄養士や調理員が食事をつくる場面を見たり、手伝う機会を大切にすること。

第4章 食育の計画作成上の留意事項

保育所における食育実践は、子どもが食欲を中心とした自らの意欲をもって食事及び食環境にかかわる体験を通して、第1章に示した目標の達成を図るものである。

保育所においてはこのことを踏まえ、乳幼児期にふさわしい食生活が展開され、適切な援助が行われるよう、次の事項に留意した組織的・発展的な「食育の計画」を作成し、子どもの生活に沿った柔軟な援助が行われなければならない。

1 保育計画と指導計画への位置づけ

保育所では、「保育所保育指針」に示されているとおり、入所している子どもの生活全体を通じて、保育の目標が達成されるように、全体的な「保育計画」と具体的な「指導計画」とから成る「保育の計画」を作成する。

この「保育の計画」は、すべての子どもが、入所している間、常に適切な養護と教育を受け、安定した生活を送り、充実した活動ができるように柔軟で、発展的なものとし、また、一貫性のあるものとなるように配慮することが重要である。「食育の計画」もこの「保育の計画」にしっかり位置づくかたちで作成される必要がある。

その際、保育計画に位置づく食育の計画は、第3章に示すねらい及び内容を基に、食環境の変化、地域の実態、子どもの発達、家庭状況や保護者の意向、保育時間などを考慮して作成する。作成の内容は、乳幼児期に培うべき「食を営む力」の基礎について、一貫した系統性のあるものとして構成される必要がある。したがって、保育計画に盛り込まれた食育の計画は、各保育所独自の食育に関する基本方針として不変性の高いものとなることが望ましい。

また、指導計画に位置づく食育の計画は、この保育計画に基づき、子どもの食生活状況を考慮して、乳幼児期にふさわしい生活の中で、一人一人の子どもに必要な食体験が得られる実践が展開されるように具体的に作成する。したがって、指導計画に盛り込まれた食育の計画は、保育所の全職員が各組の子どもの実態に即して柔軟に修正されうるものとして可変性の高いものとなることが望ましい。

さらに、指導計画の一部には、給食を実施するための計画も含まれる。したがって食育実践上、指導計画の一部として位置づけられる献立作成は、保育所の全職員の連携のもと、おいしく、そして楽しい食事として示されることが望ましい。

2 長期的指導計画と短期的指導計画における食育の計画の作成

(1) 各保育所では、子どもの食生活や食に関する発達特性を見通した年、期、月など長期的な指導計画と、それと関連しながらより具体的な子どもの生活に即した、週、日などの短期的な指導計画を作成して、保育が適切に展開されるようにすること。

(2) 指導計画は、子どもの個人差、家庭状況の多様さに即して保育できるように作成すること。

(3) 食育の内容を指導計画に盛り込むに当たっては、長期的な見通しを持って、子どもの生活にふさわしい具体的なねらいと内容を明確に設定し、適切な環境を構成することなどにより、活動が展開できるようにすること。

ア 具体的なねらい及び内容は、保育所での食生活における乳幼児の食に関する発達の過程を見通し、生活の連続性、季節の変化などを考慮して、子どもの実態に応じて設定すること。

イ 食環境を構成するに当たっては、子どもの食にかかわる姿や食環境への興味・関心などを考慮して、具体的なねらいを達成するために適切に構成し、子どもが主体的に活動を展開していくことができるようにすること。

ウ 子どもの食事は、生活の流れと相互関係にあることに留意し、健康でいきいきとした生活に向けて、子どもが意欲的で充実した生活が展開できるように必要な援助をすること。

(4) 生活時間の大半を保育所で生活する子どもの食に関する行動は、保育の時間帯によって、多様な形態が展開されるが、いずれの場合も保育所全体の職員による協力体制のもとに、一人一人の子どもの食欲を引き出し、かつ十分満足させるように適切に援助すること。

(5) 食に関する子どもの主体的な活動を促すためには、保育所のそれぞれの職員が多様なかかわりを持つことが重要であることを踏まえ、発育に必要な栄養や子どもの情緒の安定、発達に必要な豊かな体験が得られるように援助を行うこと。

(6) 長期的な指導計画の作成に当たっては、年齢、保育年数の違いなど組の編成の特質に即して、一人一人の子どもが順調な発達を続けていけるようにするとともに、季節や地域の行事などを考慮し、子どもの生活に変化と潤いを持たせるように配慮すること。

なお、子どもの食と関連する各種の行事については、子どもが楽しく参加でき、食体験が豊かなものになるように、日常の保育との調和のとれた計画を作成して実施すること。

(7) 短期の指導計画の作成に当たっては、長期的な指導計画の具体化を図るとともに、その時期の子どもの実態や生活に即した実践が柔軟に展開されるようにすること。その際、日課との関連では、一日の生活の流れの中に昼食、及びおやつ、補食など子どもの食事と、食に関する活動が調和的に組み込まれるようにすること。

(8) 献立作成に当たっては、給食を実施するための様々な条件を検討し、子どもに対しておいしく、そして楽しい食事を提供するためのシステムを構築して食事内容を設定すること。

3 3歳未満児の食育の指導計画

3歳未満児については、その発達特性から見て、項目別に食育に関する活動を区分することが困難な面があることに配慮し、指導計画を作成することが重要である。また、子どもの個人差に即して実践できるよう、第3章に示された事項を基に一人一人の子どもの生育歴、心身の発達及び活動の実態などに即して、個別的な計画を立てるなど必要な配慮をすることも必要である。特に、食の充実が1日24時間の生活との連続性の中で保たれるように、全職員の協力体制の中で、家庭との連携を密にし、配慮されることが重要である。

4 3歳以上児の食育の指導計画

3歳以上児については、第3章に示す事項を基に、食育の具体的なねらいと内容を保育活動全体に組み込むかたちで指導計画を作成する必要がある。また、5項目についても、食育の観点を示してあることに留意し、食育及び各項目を一つの領域として扱うことがないように配慮すること。

さらに、3歳以上児の場合、食育も含めて計画は組など集団生活での作成が中心となるが、食に関する発達特性や食体験の個人差を考慮し、個別的な援助が必要な場合には、その点に留意した計画も作成する必要がある。その上で、一人一人の子どもが自己を発揮し、主体的な活動ができるように配慮すること。

なお、異年齢で編成される組やグループで保育を行う場合の指導計画作成にあたっては、各年齢の発達特性を配慮しつつ、異年齢児のかかわり合いを通した食の充実に向けた適切な環境構成や援助を十分に配慮すること。

5 計画の評価・改善と職員の協力体制

計画は、それに基づいて行われた実践の過程を、子どもの実態や子どもを取り巻く状況の変化などに即して反省、評価し、その改善に努めることが重要である。

特に、実践に身近で具体性の高い指導計画はその可変性を保つためにも、実践に当たった全職員による見直しが不可欠である。見直しに当たっては、全職員が協力・分担し、実践過程を記録しておくことが必要である。その記録を基に、実践を反省、評価し、次なる指導計画の修正、実践の充実を図ることが望ましい。そのため、日、週、月、期、年単位で計画の見直し、実践の改善に向けた定期的な会議の設置も望まれる。

また、不変性の高い保育計画に関しては、数年単位の実践の積み重ねと時代ごとの食環境の変化に対応し、保育所の全職員で見直すことが望ましい。そのため、日頃から全職員の協力体制を作り、適切な役割分担をして食育の実践に取り組むことが重要である。

さらに、評価・改善を充実させるためには、職員の日常の自己学習、研鑽も不可欠である。全職員がその力量の維持・向上に努め、保育活動での経験、及び研修を通じて深められた知識、技術並びに人間性を活かし、豊かな保育を実践していくことが大切である。

第5章 食育における給食の運営

保育所での食事は、第1章に示した「食育の目標」を達成するために、子どもが食欲を中心とした自らの意欲をもって食事及び食環境にかかわる体験の場を構成するものである。子どもが、保育所での食事を通して、「食を営む力」の基礎を培うことができるよう、一貫した系統性のあるものとして構成する必要がある。

保育所の給食は、このことを踏まえ、第3章のねらい及び内容を基に、子ども主体の食育を実践できるシステムを構築して組織的・発展的に計画し、その上で、一人一人の子どもの食生活に沿って柔軟な実践を行わなければならない。

1 食育における保育所の食事の位置づけ

保育所の食事は、第1章に掲げた子ども像の実現を目指して行う「食育」が達成できるよう環境を構成し、食育の計画に沿って運営することが重要である。

子どもは、毎日の保育所での食事を通して、食事をつくる人を身近に感じ、つくられた食事をおいしく、楽しく食べ、それが「生きる」ことにつながっていく。それを実感できる環境を構成することが望ましい。たとえ、保育所という集団の場であっても、家庭での食の営みとかけ離れないように、食事をつくる場と食べる場をつなげ、子どもに生産者や食事をつくる人の顔が見えるように工夫することが「食育の目標」を達成するために大切である。

2 保育所での栄養管理と、発達段階に応じた食事内容への配慮

保育所では食事を提供することによって子どもの栄養管理を行っているが、それは「食育の目標」を十分に考慮して展開することが重要である。すなわち、一人一人の子どもの発育・発達状況、栄養状態、喫食状況、家庭での生活状況などを把握し、これらに基づいて食事を提供し、品質管理を行うよう努めることが必要である。ここでいう品質管理とは、提供する食事の量と質について計画を立て、その計画どおりに調理及び提供が行われたか評価を行い、その評価に基づき、食事の品質を改善することである。その際、嘱託医などにも相談し、家庭との連携により、保育所の食事を一日の生活の中で捉えることを十分に配慮することが重要である。

乳幼児期は特に発達の著しい時期であるため、食事の内容は次の点を考慮するよう努めることが重要である。

乳汁については、一人一人の子どものお腹がすくリズムがもてるよう、個々の状態に応じた授乳の時刻、回数、量、温度に配慮することが必要である。また、冷凍母乳の受け入れ体制も整え、母乳育児の継続を支援できるように配慮する。

離乳食については、一人一人の子どもの発育状況、咀嚼や嚥下機能の発達状況に応じて、食品の種類や量を増やし、調理形態や食具に配慮することが大切である。

1~2歳児の食事については、咀嚼や摂食行動の発達を促していくことができるよう食品や料理の種類を広げる。また、食べることが楽しい、自分で食べたいという意欲を培うことができるような食事内容や、食具・食器の種類などに配慮することが必要である。

3歳以上児の食事については、様々な食べものを食べる楽しさが味わえるように、多様な食品や料理を組み合わせるよう配慮する。特に、食材の栽培や食事の準備、簡単な調理のような子どもの主体的な活動によって仲間と一緒に楽しく食事したり、食べものの話題をする機会を増やすことができるよう、食事の内容についても配慮することが重要である。

また、第6章に示したように、子どもの多様ニーズに対応できるよう食事の内容を配慮することが望ましい。

3 食事提供のための実態把握

一人一人の子どもに応じた食事を提供するためには、入所前、現在の発育・発達状況や毎日の健康状態、保育所での生活、喫食状況などを十分に把握することが重要である。特に、1日全体の栄養管理の観点からも、家庭と連携して、家庭での食事時刻、食事の内容、量などの喫食状況を十分に把握するよう努める。

4 献立作成

(1) 厚生労働省が示す栄養給与目標算出例を基に、個々の保育所での目標を設定する。

(2) その目標値を目安として、必要な栄養素量を確保するとともに、生活習慣病の予防も考慮し、献立を作成する。

(3) 献立作成に当たっては、季節感や地域性などを考慮し、品質が良く、幅広い種類の食材を取り入れるように努める。

(4) 「子どもが食べたいもの、好きなものが増える」ように、子どもの要望を取り入れる機会を設けることが望ましい。

(5) 子ども自身が栽培・収穫した食材を計画的・積極的に取り入れるように工夫する。

(6) 食と関連する各種の行事については、子どもが楽しく参加でき、食体験が豊かなものになるように、日常の保育との調和をとり、献立に取り入れる。

(7) 地域への理解を深めるためにも、食材に地域の産物を取り入れ、郷土料理などの食文化に触れる機会を増やすことができるよう配慮する。

5 調理

(1) 子どもが自分で食べる意欲を培うことができるように、子ども一人一人の咀嚼・嚥下機能や手指機能、食具使用の発達状況を十分に観察し、その発達を促すことができるように、大きさ、切り方、固さなどの調理形態に配慮する。

(2) 多様な味の体験ができるように、様々な食材を用い、その持ち味を生かした調味にも工夫する。

(3) 子どもが「お腹のすくリズムをもてる」ように、調理による音、匂いを身近に感じ、調理をする人と言葉を交わしたりできるよう心がける。

(4) 子ども自身が「食事づくりや準備にかかわる」ことができるよう配慮する。

6 盛り付け・配膳

(1) 子ども一人一人の個人差を考慮して盛りつけ量を加減できるように工夫する。また、その日の活動量などに応じて、おかわりもできるように配慮する。

(2) 子どもの目の前で、食事の出来上がりを見せるよう工夫をする。

(3) 温かい料理は温かく、冷たい料理は冷たい状態で整えることができるように配慮する。

(4) 子ども自ら配膳する機会を設ける場合には、子どもが食事の目安量を確認しつつ、自分の適量を把握し、盛りつけることができるように工夫する。なお、盛りつけるための器具については、子どもが使いやすいように大きさや形状に配慮する。

7 食事

(1) 子どもにその日その日の献立を知らせるよう配慮する。

(2) ゆとりある時間と、採光や安全性の高い食事の空間を確保し、暖かい雰囲気になるように配慮する。

(3) テーブルや、椅子、食器、食具の材質や形などは子どもの発達に応じて選択し、食べる場に暖かみを感じることができるよう配慮する。

(4) 時には戸外で食べるなど、様々な食事のスタイルを工夫する。

(5) 保育士は子どもが食べることを援助すると共に、一緒に食べる。

(6) 栄養士・調理員などの食事をつくることにかかわる人も子どもと一緒に食事をし、「食べものの話題をする」ことができるよう配慮する。この場面を通して、子どもの喫食状況を把握し、次なる食事の内容の充実に努める。

(7) 「一緒に食べたい人がいる」という気持ちを培うために、異年齢の子どもや、地域の様々な人と食事を共にする機会をつくるように配慮する。

8 衛生管理

安全性の高い食事を提供するために、食材・調理食品の衛生管理、保管時、調理後の温度管理の徹底、施設・設備の衛生面への留意と保守点検、検食、保存食を行い、衛生管理体制を確立させる。同時に、栄養士・調理員は健康管理に十分に気をつけることが重要である。また、食事が衛生的に配慮されたものであることを子どもにも認識できるよう配慮する。

9 家庭への喫食状況の報告

1日全体の栄養管理の観点から、家庭に日々の献立を示すと共に、子どもの喫食状況を保護者に知らせることが大切である。

乳汁や食事を与えた際、嘔吐、下痢、発疹などの体の状態の変化を常に観察し、異常がみられたときには、安易な食事制限などは行わず、保護者や嘱託医などと相談し、食事について必要な対応を行う。

10 食事の評価・改善

「食育」の視点を重視して食事をより良いものにするためには、実践の過程と、子どもの喫食状況の実態や子どもを取り巻く状況の変化などについて評価し、食事の品質の改善に努めることが重要である。

食事を見直すに当たっては、実践に当たった全職員が協力・分担し、実践過程を記録しておくことが必要である。その記録を基に、実践を評価し、食事の内容を修正し、実践の充実を図ることが望ましい。そのためも、日、月、期、年単位で見直し、「食育」の一環として給食の運営の改善に向けた定期的な会議の設置が望まれる。

第6章 多様な保育ニーズへの対応

1 体調不良の子どもへの対応

(1) 一人一人の子どもの体調を把握し、それに応じて、食材を選択し、調理形態を工夫した食事と、水分補給に配慮する。

(2) 家庭との連携を密にし、必要に応じて専門機関からの助言を受け、適切に対応する。

(3) 保育中に体調が悪くなった子どもについては、嘱託医などに相談して、水分や適切な食事が提供できるように配慮する。

2 食物アレルギーのある子どもへの対応

(1) 食物アレルギーが疑われるときには、嘱託医やその子どものかかりつけの医師に診断を受け、その指示に従う。また、家庭との連絡を密にし、その対応に相違がないように十分に心がける。

(2) 安易な食事制限やみだりに除去食を提供せず、嘱託医などの指示を受けるようにする。

(3) 医師の指示があり、食品の除去、代替食などを必要とする場合には、可能な限り対応する。ショック症状や喘息など、強い症状が出現する場合には厳格に除去する。食品の除去や代替の対応が困難な場合には、家庭からの協力を得る。

(4) 卵、牛乳・乳製品、大豆などのたんぱく質性食品や、小麦粉、米などの炭水化物を除去する場合には、身体発育に必要な栄養素が不足しないように、栄養バランスのとれた食事になるように調整する。

(5) 食品の除去、代替などを必要とする場合にも、皆と同じものを食べたい子どもの気持ちを大切にし、同じような献立になるように配慮する。

(6) 献立作成に当たっては、保護者に使用食材を説明し、食品の除去や代替の対応をする。

(7) 安易に長期間制限を続けるのではなく、家庭との連携のもと、定期的に主治医を受診し、指示を受けるなど、適切に対応する。

3 障がいのある子どもへの対応

(1) 子どもの障がいの状況を把握し、それに応じた食事を提供する。

(2) 咀嚼や嚥下機能に障がいがみられる場合、大きさ、固さ、温度、粘性、飲み込みやすさなどの調理形態を配慮する。

(3) 子どもの障がいの状況に応じて、テーブルや、椅子、食器・食具を工夫し、子どもの食べようとする意欲を大切にしながら、適切な援助を行う。

(4) 家庭との連携を密にし、必要に応じて専門機関からの助言を受け、適切に対応する。

4 延長保育や夜間保育への対応

(1) 一人一人の子どもの年齢、健康状態、生活習慣、生活リズムを把握し、それに応じて、子どもに必要な量や調理形態、食事の時間帯に配慮した食事を提供する。

(2) 延長保育に伴うおやつの給与については栄養所要量の10%程度、夕食の給与については栄養所要量の25~30%程度を目安とするが、保育時間や家庭での状況を勘案し、柔軟に対応する。

(3) 延長保育での食事は、昼食やおやつと同様、ゆとりある時間と空間を確保し、暖かい雰囲気になるように配慮する。

5 一時保育への対応

(1) 一人一人の子どもの年齢、健康状態、生活習慣、生活リズムを把握し、それに応じて、子どもに必要な量や調理形態、食事の時間帯に配慮した食事を提供する。

(2) 一時保育における子どもの集団構成は、定型的、継続的な通常保育の集団構成と異なることから、食事の雰囲気や食事の内容に慣れないことを十分に配慮して保護者との面談を十分に行い、その適切な対応に努める。

第7章 食育推進のための連携

食育は、家庭や地域社会と連携のもと、実践することが必要である。地域の自然、人材、行事や公共施設などを積極的に活用し、子どもが豊かな食の体験ができるように工夫することが重要である。特に、地域と連携した食に関する行事を行う場合は、実施の趣旨を全職員が理解し、日常の保育として子どもの生活に負担がないように、指導計画の中に盛り込んでいくことが必要である。

また、乳幼児期の食育が「食を営む力」の基礎を培うものであることを考慮すれば、小学校との連携も不可欠となる。食に関する子どもの連続的な発達について、小学校と連絡・協議する場を持ち、互いに理解を深めることが大切である。子どもが入学に向かって期待感を持ち、自信と積極性を持って生活できるように配慮することが重要である。

1 保育所職員の研修及び連携

今日、社会、地域から求められている保育所の機能や役割は、保育所の通常業務である保育に加え、延長保育、休日保育などの拡充、また、地域の子育て家庭に対する相談・支援など一層拡大しており、これらの取組に当たっては、保育所の全職員による連携が不可欠である。

食育の取組においても、保育士、調理員、栄養士、看護師などの全職員が食育に関して共通した認識のもと、研修等を通じ、専門性を高めつつ、相互連携を強化して進めていくことが重要である。

2 家庭との連携

子どもの「食を営む力」の育成を目指し、保育所と家庭は、連携・協力して食育を進めていく。家庭に対し、保育所での子どもの食事の様子や、保育所が食に関してどのように取り組んでいるのかを伝えることは、家庭での食育の関心を高めていくことにつながる。また、家庭からの食に関する相談に応じ、助言・支援を積極的に行う。

具体的取組としては、保育所から家庭への通信、日々の連絡帳、給食を含めた保育参観、給食やおやつの試食会、保護者の参加による調理実践、行事などが考えられる。

家庭において食育の関心が高まると、家庭での実践が保育所に伝えられるようにもなるので、懇談会などを通して、保護者同士の情報交流を図ることにより、家庭における食育の実践が広がるように努める。

3 地域と連携した食育活動事業

保育所で食育を進めるに当たっては、他の保育所などの保育関係施設、小学校などの教育機関、保健所や保健センターなどの医療・保健関係機関、食料生産・流通関係機関などと密接な連携をとりながら、食育の目標を共有し、地域における食育のニーズを把握し、それに基づいて食育の実践を展開することが重要である。そのためには、日頃から保育所の全職員が、地域の食育に関する情報の把握に努めることが必要である。

小学校については、子どもの連続的な発達などを考慮し、相互理解を深めるように努める。また、保護者に対して、子どもを対象とした地域の食育活動に積極的に参加することを勧めるなど、地域と連携した食育活動の推進に努める。

第8章 地域の子育て家庭への食に関する相談・支援

子育てにおいて、食に関する不安・心配は決して少なくない。保育所は、在宅の子育て家庭に対しても、保育を通じて蓄積された子育ての知識、経験、技術を活用し、相談・支援することができる機会を積極的につくっていくことが求められている。

保育所における地域活動事業は、保育所が地域に開かれた児童福祉施設として、保育所の有する専門的機能を地域住民のために活用し、子どもの健全育成及び子育て家庭の支援を図るものである。保育所が拠点となり、食育を通して、地域の子育て家庭の不安を軽減するような取組が求められる。このため、通常業務に支障を及ぼさないよう配慮を行いつつ、保育所が拠点となり、積極的に地域での食育活動に取り組み、子育て家庭の食に関する不安、負担軽減に努める。特に、保育所の調理室を活用して、食事を提供できる特徴を十分に活かした食育活動の展開が期待される。

具体的な相談内容としては、子どもの食事内容や食事量、調理方法、好き嫌いが多いなどの食べ方について、また、大人の食べさせ方など食をめぐる問題が考えられる。保育所で実際に提供している食事や、食べることへの援助活動などの参観を通して、専門性が高く、かつ、具体的でわかりやすい助言は効果的であろう。また、食事の工夫だけではなく、十分な運動と睡眠など生活リズムの改善指導など、子どもの生活全般を見通した食育の助言を行うことも重要である。

相談・助言の内容については、必ず記録に残し、必要に応じ保育所内の関係職員間で事例検討を行う。なお、助言等を行うに当たっては、保育所における相談や対応の限界についても考慮し、医療機関、保健所、保健センター、地域子育て支援センターなどの他機関との連携のもと、必要に応じて機関紹介・斡旋を行う。その場合には、原則として利用者の了解を得るなど、相談者の意向を尊重する。

保育所が橋渡し役となって、子育て家庭が地域とのかかわりを持つことを援助していくことは、子育ての不安を軽減するとともに、家庭や地域の子育て力の向上にもつながっていく。

保育所におけるさまざまな食育の実践が出発点となって、「子どもから家庭、そして地域へ」と、地域における食育活動が広がっていくことが望まれる。保育所が地域の子育て支援センターとしての役割を担っている現在、保育所が地域全体の子育て家庭への食育の発信拠点、食育推進の核(センター)のひとつとなることが期待される。

保育所からの発信

―考えよう!食を通じた乳幼児の健全育成を

支えよう!保育所、そして家庭、地域とともに―

引用:厚生労働省『楽しく食べる子どもに~食からはじまる健やかガイド~』

「食を通じた子どもの健全育成(「いわゆる「食育」」のあり方に関する検討会)報告書p.22,2004

保育所における具体的な実践例

引用:厚生労働省『楽しく食べる子どもに~食からはじまる健やかガイド~』

「食を通じた子どもの健全育成(「いわゆる「食育」」のあり方に関する検討会)報告書p.23,2004

「保育所における食育のあり方に関する研究班」名簿

大木師磋生 日本保育園保健協議会副会長

小川清実 東京学芸大学教育学部講師

倉田新 埼玉純真女子短期大学講師

○酒井治子 山梨県立女子短期大学助教授

外山紀子 津田塾大学学芸学部助教授

林薫 東京成徳短期大学講師

師岡章 白梅学園短期大学助教授

(○主任研究者)

平成15年度 児童環境づくり等総合調査研究事業

保育所における食育のあり方に関する研究

平成16年3月

酒井治子

〒194―0292 東京都町田市相原町2600

東京家政学院大学 公衆栄養学研究室

TEL/Fax(042)782―3404(直通)

E―mail:s-haruko@mtj.biglobe.ne.jp

(平成16年4月以降の連絡先)