添付一覧
専門性の高い医療機器が使用される領域であり、特殊な医薬品の使用と特別な使用方法が行われることが多い。使用者の機器への理解と使用訓練、臨床工学士による機器の整備・維持は極めて重要であり、生命維持管理装置に関連した医薬品の使用に関しては、手順の作成が必須である。 |
【手順書を定めるべき事項】
1.血液透析関連 2.人工心肺関連 3.呼吸器関連 〔解説〕 血液透析で使用される医薬品は長期間にわたり反復投与されるが、その投与量は個々の患者で異なる。そのため、多くの患者に同時に類似した医薬品の準備と調製を行うことが多く、薬剤の調製には細心の注意と標準化が必要である。 また、人工心肺では、準備段階で用いる医薬品と、人工心肺使用中に適宜用いる医薬品があり、これらの医薬品の取り違いと混入には十分注意する。血液製剤を大量に使用する場合は、より厳密な確認が必要である。 さらに、呼吸器関連では、気管支拡張、喀痰の除去、気道のクリーニング等を目的として、滅菌精製水や生理食塩液を含めた各種の医薬品が呼吸器(ネブライザー)を用いて使用される。各医薬品の特性を理解し、取り違いに注意して使用することが重要である。 |
【手順書の具体的項目例】
1.血液透析関連
○ 禁忌医薬品等の確認
・透析患者への使用が禁忌である医薬品の有無の確認等
・使用する医薬品の減量、投与間隔の延長等の確認
・他の医療機関を含めた患者の使用薬剤の確認
○ 透析関連の医薬品の準備・調製
・透析日、場所、時間帯に分けた患者ごとの使用予定医薬品リストに基づく医薬品の準備
・透析治療に必要な医薬品と洗浄消毒薬の混入を避けるため、調製場所の区分と調製時間の配慮
○ 医薬品の使用・記録
・同一時間による注射剤の血液回路内注入の指示と、それ以外の注射剤の同時指示の禁止
・投与した医薬品と用法・用量、投与時間等の記録
2.人工心肺関連
○ 医薬品の準備・調製
・人工心肺の準備段階で用いる医薬品と、人工心肺の使用中に用いる医薬品について、使用濃度、用法・用量等が容易に確認できる一覧表を作成する
・人工心肺の準備段階と使用中に用いる医薬品の同時の取り揃えの禁止
・原則として、注射用水を用いない心筋保護液の処方を選択
・医薬品の添加で濃度を補正する時には、医薬品、計量値、計算等を複数人で確認する
○ 医薬品の使用・記録
・緊急時の医薬品使用に関する手順の整備
・使用した注射剤の空容器を残す等、使用後の確認及び記録
3.呼吸器関連
○ 禁忌医薬品の確認
・人工呼吸器使用時の禁忌医薬品の有無の確認
○ 吸入剤の保管・使用上の注意
・吸入剤、注射剤、消毒薬の区別した保管
・吸入剤に用いるシリンジと注射用シリンジとの明確な区別(医薬品名及び吸入専用の旨の記載、注射用と区別できる形状や色のシリンジの使用等)
・同一時間における吸入と注射の指示の禁止
[第14章 臨床検査部門、画像診断部門]
【医療安全の確保へ向けた視点】
両部門における医薬品使用による医療事故は、アナフィラキシーショックなど、予測不能な場合も存在するが、医薬品使用に関する手順を作成することにより、多くの事故は予防が可能なものと考えられる。医薬品による事故の防止のためには、両部門における業務の標準化と、医師、薬剤師、技師、看護師、その他の職種による連携が重要となる。 |
【手順書を定めるべき事項】
1.患者情報の収集・管理・活用 2.診断薬の使用 3.内視鏡検査の前処置薬の使用 4.医薬品使用による患者容態急変時の応援体制の確立 〔解説〕 造影剤は適応がある場合にのみ使用し、投与前には、喘息、薬物過敏等のアレルギー歴、副作用歴、造影剤使用歴、既往歴、使用医薬品等を確認するため、被検者本人の十分な問診を行う。副作用、アレルギーの既往歴があれば投与しない。さらに、造影剤による重篤なショックを確実に予知する方法はないことを認識し、アナフィラキシーショックなどの緊急事態に迅速に対応できる体制を整備する。 また、内視鏡検査の前処置薬による重大な事故も発生しており、その取扱いに関しても手順を作成する必要がある。 |
【手順書の具体的項目例】
1.患者情報の収集・管理・活用
→「第8章 入院患者への医薬品使用」の1.の(1)を参照(20ページ)
○ 患者の副作用歴・アレルギー歴・合併症等の事前確認
・喘息の既往、ヨード造影剤の副作用の既往、重症の甲状腺機能亢進症などに該当する場合のヨード造影剤の血管内投与の禁止
○ 使用医薬品の事前確認
・抗血栓作用のある医薬品等
・循環器用医薬品、呼吸器用医薬品、血糖降下薬等
○ 継続使用医薬品の検査前中止と検査後再開に関する計画立案
2.診断薬の使用
○ 患者への説明と同意
・使用目的、副作用、運転禁止などの注意事項、作用時間など
(1) 造影剤
○ 注射造影剤の使用
・ヨードテストの禁止(テストによるショックの防止)
・ヨード造影剤の血管内投与禁忌(喘息の既往、ヨード造影剤の副作用の既往、重症の甲状腺機能亢進症などに該当する場合)
・MRI用造影剤にも重篤な副作用があるため、使用前の十分な確認の実施
・造影剤を注入したシリンジ内の確実な空気抜きの実施
・血管造影用自動注入器による、造影剤以外の医薬品の注入の禁止
・造影剤注入時の血管外漏出発生に対する迅速な注入中止対応
○ 内服造影剤の使用
・誤嚥防止(検査前の嚥下障害等の確認等)
・バリウム剤によるイレウスの予防対策の実施
○ 造影検査に伴う補助薬の使用
・鎮痙薬、局所麻酔薬、β遮断薬、発泡剤などの造影検査に用いる補助薬についての禁忌の確認
○ ショック発生等への対応
・使用後の十分な経過観察
・救急用医薬品の準備
・緊急連絡先の患者への周知
(2) 放射性医薬品
○ 放射性医薬品の使用
・ラベルの活用(薬品名を記載したラベルを放射性医薬品が入ったシリンジのピストン背部へ添付するなど)
・確実な確認(運搬用の鉛筒に記載された薬品名と注射器のラベルの薬品名の確認)
(3) 臨床検査薬
○ 危険な薬物等の管理
・爆発物、引火性物質、有機溶媒、毒物・劇物、重金属等の危険性の高い物質などの一覧表作成と、定位置保管、許容量保管、施錠・台帳管理の実施
・危険な薬物等の被爆時の対応手順の作成
・洗浄装置と設置場所の明示
3.内視鏡検査の前処置薬の使用
(1) 胃部内視鏡検査
○ アトロピン製剤、鎮痙薬の使用
・緑内障、前立腺肥大、麻痺性イレウスなどの禁忌疾病の確認
○ グルカゴン製剤の使用上の注意
・患者への低血糖症状の十分な説明と観察・対処
(2) 大腸内視鏡検査
○ 経口腸管洗浄剤の使用
・投与前の腸閉塞の確認
・腸管内圧上昇による腸管穿孔を疑わせる初期症状(排便、腹痛等)の観察と慎重な投与
・高齢者においては、時間をかけた投与と十分な観察
(3) 気管支内視鏡検査
○ 麻酔薬の使用
・表面麻酔のための噴霧用、経口用の麻酔薬の適正用量の遵守
・ショックや中毒症状の十分な観察
4.医薬品使用による患者容態急変時の応援体制の確立
→「第8章 入院患者への医薬品使用」の9.を参照(24ページ)
[第15章 歯科領域]
【医療安全の確保へ向けた視点】
歯科領域における治療の主体は外科的手技及び処置であるが、その補助的手段や予後管理においては、薬物療法も重要な手段となる。 周知のとおり、歯科領域の薬物療法においては、使用する医薬品や使用方法について、他の一般医科にはない特殊性がある。歯科領域における医薬品の安全を確保するには、こうした歯科特有の実状に鑑み、必要に応じた医薬品使用の手順を設けることが重要である。 |
【手順書を定めるべき事項】
1.医薬品等の管理 2.医薬品・薬物・歯科材料の使用に当たっての確認等 3.処方・調剤 4.調剤薬の交付・服薬指導 5.局所麻酔薬の使用 6.消毒薬の使用 7.歯垢染色剤、う蝕検知液、フッ化物の使用 8.血液製剤の使用 9.他施設との連携 10.在宅患者への医薬品使用 11.医薬品情報の収集・管理・提供 12.医薬品に関連する事故発生時の対応 13.教育・研修 〔解説〕 歯科領域で用いる医薬品には、一般医科でも使用する医療用医薬品と局所麻酔薬をはじめとする歯科領域専用のものがあり、さらに毒物・劇物(フッ化水素酸、亜硝酸ナトリウム、塩酸、過酸化水素水など)や歯科材料も存在する。したがって、その管理には十分注意を払う必要がある。 また、医薬品の使用においては、十分な問診を行い、患者の既往歴、アレルギー歴、使用医薬品、副作用歴等を把握し、必要に応じて他の医療機関・薬局等と連携を図り、安全性を確保することが重要である。さらに、麻酔薬や消毒薬等の使用や、医薬品や歯科材料を同一箇所に同時に用いる場合の併用への注意はもちろん、手技や処置に用いる医薬品の腐食性についても留意する必要がある。 |
【手順書の具体的項目例】
1.医薬品等の管理
(1) 医薬品棚の配置
○ 類似名称、外観類似の医薬品・薬物・歯科材料がある場合の取り間違い防止対策
・調製(希釈)した医薬品への医薬品名、濃度等の表示
○ 同一銘柄で複数規格等のある医薬品に対する取り間違い防止対策
・規格濃度、剤形違い、記号違い等
○ 薬品の転倒、落下の防止対策
(2) 規制医薬品(麻薬、覚せい剤原料、向精神薬(第1種、第2種)、毒薬・劇薬)
○ 麻薬及び向精神薬取締法、薬事法等の関係法規の遵守
○ 適切な在庫数・種類の設定
○ 定期的な在庫数の確認
○ 他の医薬品と区別した保管、施錠管理
○ 盗難・紛失防止の措置
(3) 特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)
○ 他の医薬品と区別した管理
・注意喚起のための表示、配置場所の区別、取り間違い防止の工夫等
(4) 品質管理
○ 有効期間・使用期限の管理
・定期的な有効期間・使用期限の確認
・有効期間・使用期限の短い医薬品から先に使用する工夫(先入れ先出し等)
○ 医薬品・薬物・歯科材料ごとの保管条件の確認・管理
・温度、湿度、遮光等に関する医薬品ごとの保管条件の確認(凍結防止など)
・保管場所ごとの温度管理、湿度管理
○ 必要に応じた品質確認試験の実施
(5) 処置薬(消毒薬等を含む)
○ 定期的な有効期間・使用期限の管理
・調製(希釈)した医薬品への調製日の表示
・開封後期限、調製後期限、開封日の記載
○ 開封後の保管方法
・変質、汚染等の防止対策、定期的な交換、つぎ足しの禁止等
○ 処置用医薬品等の小分け用薬瓶への充填・補充間違いの防止対策
・補充方法(複数人による確認、定期的な薬瓶の交換など)、色分け、ラベリング等の区別のための工夫
・小分け用薬瓶への医薬品名の正確な表示
2.医薬品・薬物・歯科材料の使用に当たっての確認等
○ 患者情報の収集・管理(十分な病歴聴取)
・患者の他科受診、病歴(高血圧性疾患、虚血性心疾患、不整脈、心不全、喘息、慢性気管支炎、糖尿病、甲状腺機能障害、副腎皮質機能不全、脳血管障害、てんかん、甲状腺機能亢進症、自律神経失調症等)の有無
・妊娠・授乳の有無
・嗜好(たばこ、アルコール等)
・診療録等への記録
○ 服用(使用)している医薬品等の確認
・抗凝固作用のある医薬品(例:ワーファリン、パナルジン等)の医薬品の使用の有無
・血糖降下作用のある医薬品(例:トルブタミド、インスリン製剤等)の服用(使用)の有無
・免疫抑制剤や抗がん剤などの医薬品の服用の有無
・口腔内に症状の現れる医薬品(例:抗てんかん薬等)の服用の有無
・医薬品に関連した副作用歴・アレルギー歴の有無など(特に局所麻酔薬、抗菌薬、歯科特有の使用材料(金属・合成樹脂等))
・他科で使用されている医薬品、使用中の一般用医薬品、健康食品との重複・相互作用
・必要に応じて他の医療機関への問い合わせを行う
○ 患者情報の活用
3.処方・調剤
(1) 処方
○ 必要事項の正確な記載
・患者氏名、性別、年齢、医薬品名、剤形、規格単位、分量、用法・用量等
・名称類似等に注意し判読しやすい文字で記載
・処方変更時に歯科医師がコンピュータ印字を手書きで修正する場合の取扱い
○ 単位等の記載方法の統一
・1日量と1回量
・mgとmL、mLと単位、gとバイアル等
・散剤、水剤、注射剤の処方時は濃度(%)まで記載
・散剤を主薬量(成分量)で記載する場合はその旨を明記
(2) 調剤
① 患者の安全に視点をおいた調剤業務の実施
○ 調剤用設備・機器の保守・点検
・使用時の確認(散剤秤量前の計量器のゼロ点調整、水平確認等)
・日常点検、定期点検の実施(分包器等)
○ 取り間違い防止対策
・外観類似、名称類似、複数規格のある医薬品への対策
○ 調剤業務に係る環境整備
・コンタミネーション(異物混入、他剤混入)の防止
・調製時の調剤者の被爆防止
② 内服薬・外用薬の調剤
○ 散剤や液剤の調剤間違いの防止対策
・秤量間違いの防止対策(小児用量換算表の活用等)
・散剤計算の再確認、総重量の確認(秤量計算メモの活用等)
○ 適切な調剤方法の検討
・錠剤やカプセル剤の粉砕の可否、配合変化、製剤の安定性等
○ 薬袋・薬剤情報提供文書の作成
・調剤年月日、患者氏名、用法・用量、保管上の注意、使用上の注意等を適切に記載
③ 特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)の調剤
○ 患者ごとの薬歴管理
○ 他薬との取り間違い防止対策
④ 調剤薬の鑑査
○ 調剤薬等の確認
・調剤者以外の者による確認(調剤者以外の者がいない場合には、時間をおいて確認するなどの工夫)
・処方せんと調剤薬の照合
・散剤の秤量、分包の間違い、誤差等の確認、異物混入の確認
・一包化した医薬品の確認
・処方せんの記載事項と薬袋・ラベルの記載事項の照合
4.調剤薬の交付・服薬指導
○ 患者、処方せん、医薬品、薬袋等の照合・確認
・患者氏名の確認方法の確立と周知徹底
○ 調剤薬の交付
・薬剤の実物と薬剤情報提供文書を患者に示しながらの説明
→ 院外処方せんを発行している場合は、本章の9.の(3)を参照(46ページ)
○ 医薬品情報の提供
・薬効、用法・用量及び飲み忘れた場合の対処方法等
・注意すべき副作用の初期症状及び発現時の対処法
・その他服用に当たっての留意点(注意すべき他の医薬品や食物との相互作用、保管方法等)
・薬剤情報提供文書、パンフレット等の活用
5.局所麻酔薬の使用
○ 類似名称医薬品、規格・濃度の確認
・同一名称医薬品(例:キシロカイン)の複数規格、記号違い等
○ 局所麻酔薬の使用
・十分な事前の問診(既往歴、当日の体調)、全身状態評価
・適切な薬剤の選択及び使用量
・局所の組織損傷、神経損傷等の局所的偶発症の予防及び患者への十分な説明
○ 麻酔偶発症及び全身状態悪化等への対応
・救急用医薬品の準備
・酸素(人工呼吸・酸素吸入用)の準備
・使用後の十分な経過観察と対応
・他の医療機関との連携
6.消毒薬の使用
○ 消毒薬の種類、濃度及び使用方法の確認
・希釈間違いの防止
・適用禁忌の確認
・適用外使用の防止
○ 手指用消毒薬及び器具用消毒薬(防錆剤入り)の誤用防止
○ 消毒薬を扱う場合の注意事項
・患者の口腔粘膜、目、顔面や衣服等への滴下の防止策
・患者の口腔粘膜、目、顔面や衣服等に誤って滴下させた場合の対応方法
7.歯垢染色剤、う蝕検知液、フッ化物の使用
○ 歯垢染色剤、う蝕検知液、フッ化物を扱う場合の注意事項
・皮膚や目、患者の衣服等への滴下の防止策
・皮膚や目、患者の衣服等に誤って滴下させた場合の対応方法
・誤飲した場合の対応方法
8.血液製剤の使用
厚生労働省の「輸血療法の実施に関する指針」を踏まえ、患者誤認、異型輸血の防止対策を徹底する。
→血液製剤を使用する場合には、「第12章 輸血・血液管理部門」を参照(34ページ)
9.他施設との連携
(1) 情報の提供
○ 医薬品情報の提供
・使用している医薬品の名称、剤形、規格、用法、用量、過去の医薬品使用歴など
・一包化など調剤上の工夫
○ 患者情報の提供
・アレルギー歴、副作用歴及び使用可能な代替薬
・禁忌医薬品等
・コンプライアンスの状況等
(2) 他施設からの問い合わせ等に関する体制整備
○ 他医療機関及び薬局への問い合わせ
・問い合わせ手順
・問い合わせ内容・回答の診療録等への記録・反映
○ 他医療機関及び薬局からの問い合わせ
・問い合わせへの対応手順
・問い合わせ内容等の診療録等への記録・反映
(3) 院外処方せんの発行
○ 院外処方せんの発行前の内容確認・点検
(4) 医薬品使用による患者容態急変時のための他の医療機関との連携
→ 本章12.を参照(47ページ)
10.在宅患者への医薬品使用
(1) 医薬品の適正使用のための剤形、用法、調剤方法の選択
○ 剤形の検討と選択
・患者の状態を考慮し、服用(使用)しやすい剤形
○ 用法の検討と選択
・患者の生活環境(食事、排泄、移動など)を踏まえた用法(使用法)
○ 調剤方法の検討と選択
・一包化、粉砕、簡易懸濁法の可否など患者特性を踏まえた調剤方法
・経管チューブによる投与が可能か否かの確認(例:腸溶製剤は不可)
(2) 患者居宅における医薬品の使用と管理
○ かかりつけ医との連携
○ 医薬品の管理者及び保管状況の確認
・患者の管理能力、管理者の必要性
・冷所保存、遮光保存等の適正な保管・管理
○ 副作用及び相互作用等の確認
・副作用の初期症状の観察
・他科受診、一般用医薬品を含む使用医薬品等
・コンプライアンス
○ 連携する医療職・介護職が閲覧できる記録の作成
・コンプライアンス、保管状況等
(3) 在宅患者または介護者への服薬指導
○ 患者の理解度に応じた指導
・表示、表現、記載等の工夫
・服薬カレンダー、点字シール等の活用
○ 服薬の介助を行っている介護者への指導
・服用上の注意事項、保管・管理上の留意事項、服用後の症状の変化に対する注意等
(4) 患者容態急変時に対応できる体制の整備
○ 夜間・休日の対応方法
・緊急連絡先の周知等
11.医薬品情報の収集・管理・提供
(1) 医薬品情報の収集・管理
○ 医薬品等安全性関連情報・添付文書・インタビューフォーム等の収集・管理
・緊急安全性情報
・禁忌、相互作用、副作用、薬物動態、使用上の注意等
○ 添付文書集等の定期的な更新
(2) 医薬品情報の提供
→ 薬剤師がいる病院等においては、「第9章 医薬品情報の収集・管理・提供」の2.を参照。(26ページ)
12.医薬品に関連する事故発生時の対応
→ 当該施設において、医薬品に関連する事故発生時の対応を含む「医療事故発生時の対応マニュアル」を作成している場合は、この項目は不要。
○ 具体的かつ正確な情報の収集
○ 責任者または管理者への報告
○ 患者・家族への説明
○ 医薬品使用による患者容態急変時のための他の医療機関との連携
・麻酔によるショック発生等、自施設のみでの対応が不可能と判断された場合、遅滞なく他の医療機関への応援を求めることができる体制と手順を確立する
13.教育・研修
(1) 職員に対する教育・研修の実施
○ 医療安全、医薬品・薬物・歯科材料に関する事故防止対策、特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)などに関する教育・研修の実施
・自施設での計画的・定期的な研修会、報告会、事例分析等の実施
・所属団体(歯科医師会等)主催など外部の講習会・研修会への参加及び伝達講習会の実施。外部の講習会・研修会に参加しやすい環境の整備
・有益な文献、書籍の抄読等による自己研修
[第16章 他施設との連携]
【医療安全の確保へ向けた視点】
患者に継続した薬物療法を安全に提供するには、医療機関や薬局の間で正確な情報を提供し、共有することが重要である。そのため、医療機関や薬局は、他施設への情報提供の手順や、他施設からの問い合わせに的確に答えるための手順を設け、連携のための体制整備に努めることが重要である。 |
【手順書を定めるべき事項】
1.情報の提供 2.他施設からの問い合わせ等に関する体制整備 3.院外処方せんの発行(医療機関の場合) 4.緊急連絡のための体制整備 〔解説〕 他施設との連携においては、入退院時等において正確な患者情報・医薬品情報が共有されていることが重要である。 また、他施設からの問い合わせに対して適切に対応できる体制と十分な連携を確保するための手順を整備することが望ましい。特に、医薬品に関する問い合わせに対しては薬剤師が関与することが重要である。 |
【手順書の具体的項目例】
1.情報の提供
(1) 情報の内容
○ 医薬品情報の提供
・入退院時処方(現に使用している医薬品の名称、剤形、規格、用法、用量)
・一包化など調剤上の工夫
・過去の医薬品使用歴
・服薬期間の管理が必要な医薬品の投与開始日等
○ 患者情報の提供
・アレルギー歴、副作用歴及び使用可能な代替薬
・禁忌医薬品等
・コンプライアンスの状況等
(2) 情報提供の手段
○ 医療機関
・お薬手帳、診療情報提供書、退院時服薬指導書等
○ 薬局
・お薬手帳、服薬情報提供書等
2.他施設からの問い合わせ等に関する体制整備
(1) 他施設及び薬局への問い合わせ
○ 問い合わせ手順
○ 問い合わせ内容・回答の診療録等への記録・反映
(2) 他施設及び薬局からの問い合わせ
○ 問い合わせへの対応手順
・夜間・休日等の対応
○ 問い合わせ内容等の診療録等への記録・反映
3.院外処方せんの発行(医療機関の場合)
○ 院外処方せんの発行前の薬剤師による点検など
4.緊急連絡のための体制整備
○ 地域の医療機関及び薬局との緊急時のための連絡体制
[第17章 事故発生時の対応]
【医療安全の確保へ向けた視点】
医薬品に関連する事故に限ったことではないが、医療事故が発生した場合、最初に行うべきことは、患者の健康被害の有無を確認し、健康被害が疑われるような場合には、責任を持って適切な処置を行うなど、必要に応じた対応を講じることが大切である。 同時に、事故の一報が連絡された段階から、全ての過程について客観的事実を詳細に記録することが重要である。 |
【手順書を定めるべき事項】
1.医薬品に関連する医療安全の体制整備 2.事故発生時の対応 3.事故後の対応 〔解説〕 医薬品に関連する医療事故が発生した場合、あるいは外来患者等から連絡を受けた場合には、救命措置を最優先するとともに、速やかに当該施設の責任者または管理者に報告を行う。同時に、事故の一報が連絡された段階から、全ての過程について客観的事実を詳細に記録する。 各施設においては報告に基づき事故事例を分析し、再発防止対策あるいは事故防止対策を策定する。さらに、策定された事故防止対策が職員に周知され、各部門で確実に実施され、事故防止、医療の質の改善につながることが重要である。 |
【手順書の具体的項目例】
1.医薬品に関連する医療安全の体制整備
○ 医療安全管理対策を総合的に企画、実施するための委員会の設置(病院の場合)
○ 責任者または管理者に速やかに報告される体制の整備
・責任者または管理者の不在の場合の対応
○ 緊急時に備えた体制の確保
・当該施設における体制整備(人・物・組織)
・周辺医療機関との協力・連携体制
○ 患者相談窓口の設置
○ 事故発生を想定した対応手順の作成と定期的な見直しと職員への周知
○ 自他施設のヒヤリ・ハット事例(インシデント事例)の収集・分析とそれに基づく事故防止対策の策定・実施
○ 医療安全に関する職員研修の実施
○ 医師会等、各職種が所属する職種団体との連携体制の確保
2.事故発生時の対応
○ 救命措置
○ 具体的かつ正確な情報の収集
○ 責任者または管理者への報告
○ 患者・家族への説明
3.事故後の対応
○ 事故事例の原因等の分析
○ 事実関係の記録、事故報告書の作成
○ 再発防止対策あるいは事故予防対策の検討・策定・評価、職員への周知
○ 患者・家族への説明
○ 関係機関への報告・届出
[第18章 教育・研修]
【医療安全の確保へ向けた視点】
医療安全や医薬品に関する研修を全職員に定期的に実施することで、職員個々の知識及び安全意識の向上を図るとともに、施設全体の医療安全を向上させることが重要である。 |
【手順書を定めるべき事項】
1.職員に対する教育・研修の実施 〔解説〕 医薬品に関与する全ての職員に対し、定期的に「特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)」などに関する教育・研修を実施する体制を整備することが望ましい。 さらに、医療安全に関する教育と研修を通じ、職員に対する安全文化の醸成を図り、単なる知識や技能の習得のみでなく、患者やその家族及び医療職相互の効果的なコミュニケーションが可能となることが大切である。 |
【手順書の具体的項目例】
1.職員に対する教育・研修の実施
○ 医療安全、医薬品に関する事故防止対策、特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)などに関する教育・研修の実施
・自施設での計画的・定期的な研修会、報告会、事例分析等の実施
・各職種が所属する職種団体(医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、助産師会)主催など外部の講習会・研修会への参加及び伝達講習会の実施。外部の講習会・研修会に参加しやすい環境の整備
・有益な文献、書籍の抄読等による自己研修
巻末資料:
[特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)例]
下記の医薬品は、事故発生により患者に及ぼす影響の大きさに十分配慮し、使用上及び管理上、特に安全な取り扱いに留意しなければならない。
内服薬を主とした記載となっており、「注射薬に関する特記事項」を別途記載した。剤形によらず、各項目に該当する医薬品の取り扱いには注意が必要である。
なお、規制医薬品(麻薬、覚せい剤原料、向精神薬(第1種、第2種)、毒薬・劇薬)については、関係法規を遵守されたい。
( )内は代表的な商品名
1.投与量等に注意が必要な医薬品 ○抗てんかん薬 フェノバルビタール(フェノバール)、フェニトイン(アレビアチン)、カルバマゼピン(テグレトール)、バルプロ酸ナトリウム(デパケン)等 ○向精神薬 ハロペリドール(セレネース)、レボメプロマジン(ヒルナミン)、エチゾラム(デパス)等 ○ジギタリス製剤 ジギトキシン、ジゴキシン(ジゴシン)等 ○糖尿病治療薬 経口血糖降下剤(グリメピリド(アマリール)、グリベンクラミド(オイグルコン、ダオニール)、グリクラジド(グリミクロン)等)等 ○テオフィリン製剤 テオフィリン(テオドール、テオロング)、アミノフィリン(ネオフィリン)等 ○抗がん剤 タキソテール(ドセタキセル)、タキソール(パクリタキセル)、シクロホスファミド(エンドキサン)、メルファラン(アルケラン)等 ○免疫抑制剤 シクロホスファミド(エンドキサンP)、シクロスポリン(ネオーラル、サンディミュン)、タクロリムス(プログラフ)等 2.休薬期間の設けられている医薬品や服薬期間の管理が必要な医薬品 メトトレキサート(リウマトレックス)、ティーエスワン、ゼローダ、ホリナート・テガフール・ウラシル療法薬(ユーゼル・ユーエフティ)等 3.併用禁忌や多くの薬剤との相互作用に注意を要する医薬品 イトラコナゾール(イトリゾール)、ワルファリンカリウム(ワーファリン)等 4.特定の疾病や妊婦等に禁忌である医薬品 ガチフロキサシン(ガチフロ)、リバビリン(レベトール)、エトレチナート(チガソン)等 5.重篤な副作用回避のために、定期的な検査が必要な医薬品 チクロピジン(パナルジン)、チアマゾール(メルカゾール)、ベンズブロマロン(ユリノーム)、ピオグリタゾン(アクトス)、アトルバスタチン(リピトール)等 |
<注射薬に関する特記事項> 1.心停止等に注意が必要な医薬品 ○ カリウム製剤 塩化カリウム(KCL)、アスパラギン酸カリウム(アスパラカリウム)、リン酸二カリウム等 ○ 抗不整脈薬 ジゴキシン(ジゴシン)、キシロカイン(リドカイン)等 2.呼吸抑制に注意が必要な注射薬 ○ 筋弛緩薬 塩化スキサメトニウム(サクシン、レラキシン)、臭化ベクロニウム(マスキュラックス)等 ○ 麻酔導入・鎮静薬、麻薬(モルヒネ製剤)、非麻薬性鎮痛薬、抗てんかん薬 等 3.投与量が単位(Unit)で設定されている注射薬 ○ インスリン(100単位/mL) ○ ヘパリン(1000単位/mL) 4.漏出により皮膚障害を起こす注射薬 ○ 抗悪性腫瘍薬(特に壊死性抗悪性腫瘍薬) マイトマイシンC(マイトマイシン)、ドキソルビシン(アドリアシン)、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ビンクリスチン(オンコビン)等 ○ 強アルカリ性製剤 フェニトイン(アレビアチン)、チオペンタール(ラボナール)、炭酸水素ナトリウム(メイロン)等 ○ 輸液補正用製剤 マグネシウム製剤(硫酸マグネシウム)、カルシウム製剤(塩化カルシウム)、高張ブドウ糖液等 ○ その他 メシル酸ガベキサート(エフオーワイ)、造影剤等 |
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