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在宅患者(施設入所者を含む)の薬物療法の安全性を確保するには、患者の食事、排泄、移動など生活環境を考慮した処方・調剤、投与が行われるとともに、コンプライアンスの確保、飲み間違い防止、副作用の早期発見及び重篤化防止、重複投与及び相互作用の防止等のために、的確な管理及び服薬指導を行うことが重要である。各医療職が連携し、在宅患者への管理・指導を行うことで、治療効果と安全性の両方の向上が期待できる。

【手順書を定めるべき事項】

1.医薬品の適正使用のための剤形、用法、調剤方法の選択

2.患者居宅における医薬品の使用と管理

3.在宅患者または介護者への服薬指導

4.患者容態急変時に対応できる体制の整備

〔解説〕

剤形の選択や調剤方法の工夫は、在宅患者の薬物療法の安全性を確保する上での重要な要素である。

患者居宅における医薬品の安全を確保するため、患者の状態を踏まえ、医薬品を使用する際の管理者や保管状況等の確認を行う。また必要に応じ、服薬の状況や保管の状況を記録し、連携する医療職が閲覧できるようにすることが望ましい。

【手順書の具体的項目例】

1.医薬品の適正使用のための剤形、用法、調剤方法の選択

○ 剤形の検討と選択

・患者の状態を考慮した服用(使用)しやすい剤形

○ 用法の検討と選択

・患者の生活環境(食事、排泄、移動など)を踏まえた用法(使用法)

○ 調剤方法の検討と選択

・一包化、粉砕、簡易懸濁法の可否など患者特性を踏まえた調剤方法

・経管チューブによる投与が可能か否かの確認(例:腸溶製剤は不可)

2.患者居宅における医薬品の使用と管理

○ 医薬品の管理者及び保管状況の確認

・患者の管理能力、管理者の必要性

・冷所保存、遮光保存等の適正な保管・管理

○ 副作用及び相互作用等の確認

・副作用の初期症状の観察

・他科受診、一般用医薬品を含む使用医薬品等

・コンプライアンス

○ 連携する医療職・介護職が閲覧できる記録の作成

・コンプライアンス、保管状況等

3.在宅患者または介護者への服薬指導

○ 患者の理解度に応じた指導

・表示、表現、記載等の工夫

・服薬カレンダー、点字シール等の活用

○ 服薬の介助を行っている介護者への指導

・服用上の注意事項、保管・管理上の留意事項、服用後の症状の変化に対する注意等

4.患者容態急変時に対応できる体制の整備

○ 夜間・休日の対応方法

・緊急連絡先の周知等

[第7章 病棟における医薬品の管理]

【医療安全の確保へ向けた視点】

病棟においても、調剤室と同様の保管管理、品質管理が必要である。さらに、病棟における医薬品の在庫は、事故防止や品質の確保を考慮し、必要最低限にとどめ、定数管理を行うことが重要である。

【手順書を定めるべき事項】

1.保管管理

2.品質管理

3.危険物の管理

〔解説〕

病棟においても、調剤室と同様の保管管理及び品質管理を行い、取り間違い防止のための工夫を行うことが重要である。さらに、病棟における医薬品の在庫は事故防止や品質確保を考慮し、定数管理を行うことが重要である。病棟に配置する医薬品の品目や数量は、ともすれば現場の利便性を優先して決定されがちであるが、必要最低限にとどめることが望ましい。

また、医療事故の多い消毒薬や、救急カート内の医薬品、輸血用血液製剤についても、適切な保管・管理を行うことが必要である。

【手順書の具体的項目例】

1.保管管理

(1) 医薬品棚の配置

→「第3章 調剤室における医薬品の管理」の1.の(1)を参照(5ページ)

(2) 医薬品の定数管理

○ 適正な配置品目・数量の設定

・規制医薬品及び特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)については必要最小量に設定

○ 参照可能な使用記録の作成

・使用日、使用した患者氏名、医薬品名、使用数量

○ 病棟で使用される医薬品の品目・数量の定期的な見直し

・使用実績、必要性からの定期的見直し

○ 在庫数の定期的な確認

・在庫数、使用期限の確認、確認頻度(月1回以上実施等)、記録等

(3) 規制医薬品(麻薬、覚せい剤原料、向精神薬(第1種、第2種)、毒薬・劇薬)

→「第3章 調剤室における医薬品の管理」の1.の(3)参照(5ページ)

○ 在庫数の定期的な確認・記録

・1日1回以上

○ 勤務者の引き継ぎ時の申し送り

(4) 特定生物由来製品

→「第3章 調剤室における医薬品の管理」の1.の(4)参照(6ページ)

(5) 特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)

→「第3章 調剤室における医薬品の管理」の1.の(5)参照(6ページ)

(6) 病棟における処置薬(消毒薬等)の管理

→「第3章 調剤室における医薬品の管理」の2.の(2)参照(6ページ)

○ 消毒液(原液)の誤飲防止対策

・患者の手の届く場所に保管しない

○ 注射薬、吸入薬との取り間違い防止対策

・消毒液と滅菌精製水の容器の類似を避ける

・消毒液を他容器に移し替えて保管しない

・希釈に注射筒を使用しない

(7) 救急カート

○ 救急薬の品目及び数量の設定

・院内の合議により定めることが望ましい

○ 保守・管理等

・設置場所の決定、遵守

・即時使用可能な状態であるよう、常に保守・点検

・使用後であるか、点検後であって定数補充され使用可能であるかが一見して判明するような表示方法または点検記録の整備

・目の届かない場所に置かれる場合には、施錠管理

○ 取り間違い防止のための配置上の工夫

・レイアウト、表示等

(8) 輸血用血液製剤の保管・管理

→「第12章 輸血・血液管理部門」参照(34ページ)

○ 輸血関連業務を行う部門との引き継ぎ方法及び管理責任の明確化

・発注、供給、受け渡し、保管、返却、廃棄等

・時間外・休日の責任体制

○ 保管・管理体制

・各製剤に適した保管・管理体制の整備(輸血用血液製剤の種類によって保管・管理方法が異なる)

・使用した血液の製造番号を患者ごとに記録・保存

2.品質管理

→「第3章 調剤室における医薬品の管理」の2.を参照(6ページ)

3.危険物の管理

○ 消毒薬の管理

○ 患者の持ち込み医薬品等への対応

[第8章 入院患者への医薬品使用]

【医療安全の確保へ向けた視点】

入院患者へ医薬品を安全に使用するためには、入院時に患者情報を十分に収集し、処方・調剤・投与時に活用することが重要であり、収集された患者情報を関係する職種間で共有する体制が必要である。

また、医師の処方・指示から調剤、投与に至る一連の業務において、取り間違いなどの防止対策が図られるとともに、適切な指示出し・指示受けが実施され、安全な医薬品の使用が確保されることが重要である。

【手順書を定めるべき事項】

1.患者情報の収集・管理、活用

2.医薬品の使用に関する適切な指示出し・指示受け

3.処方

4.処方医への問い合わせ

5.調剤

6.投与

7.服薬指導

8.投与後の経過観察

9.医薬品使用による患者容態急変時の応援体制の確立

10.医療用ガス

〔解説〕

入院患者の薬物治療において安全性を確保するには、患者情報を収集・管理し、活用することが重要であり、収集された患者情報を関係する職種間で共有する体制が必要である。

特に、患者が現に使用している医薬品を確認することは、患者の医薬品に関する安全を確保する上で必要不可欠であり、特に高齢者や乳幼児の場合は注意が必要である。

また、医師の処方・指示内容が、調剤、投与に至るまで正確に伝達されるよう、指示受け・指示出しの実施方法を定めることが重要である。

処方に関しては、処方せんの記載方法はもちろん、特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)を処方する場合や病棟で処方を変更する場合、処方医への問い合わせ方法などについて手順を設けておくことが望ましい。

また、調剤については、特に注射薬の調剤及び病棟への受け渡しについて手順を設けることが重要である。

入院患者への医薬品使用に関する安全対策では、薬剤投与のための機器の使用、血液製剤の使用などについても手順を設け、遵守する必要がある。

【手順書の具体的項目例】

1.患者情報の収集・管理、活用

(1) 患者情報の収集・管理、活用

○ 収集・管理する患者情報の内容

・患者の既往歴、妊娠・授乳、副作用歴・アレルギー歴

・他科受診、他剤併用(一般用医薬品、健康食品を含む)

・嗜好(たばこ、アルコール等)

○ 患者情報の収集方法

・患者及び家族(介護者)からの聴取

・診療情報提供書、看護要約、退院時服薬指導書、お薬手帳の確認

・患者持参薬の鑑別

○ 患者情報の活用

・診療録等への記録、入院時の治療計画への反映

・必要に応じた患者ごとの薬歴管理の実施

・患者情報を職種間で共有する仕組みの構築(患者の禁忌医薬品名等)

(2) 入院時の使用医薬品の確認

○ 持参薬を含めた患者の全ての使用医薬品の確認

・①インスリン等の注射薬、②テープ薬、吸入薬など外用薬、③一般用医薬品、④持参忘れ、⑤既に使用が中止された医薬品の持参等に注意

○ 持参薬の取扱方法の統一

2.医薬品の使用に関する適切な指示出し・指示受け

○ 指示出し・指示受け、実施方法の確立

・緊急の場合以外は、指示簿や処方せんによる管理を原則とする

・指示簿や処方せんは医師が記載し、医師以外の職種が転記、代筆をしない

・原則として、全病棟で同一の方法とする

→「第5章 外来患者への医薬品使用」の2.を参照(10ページ)

3.処方

(1) 正確な処方せんの記載

→「第5章 外来患者への医薬品使用」の3.の(1)を参照(10ページ)

(2) 特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)の処方

○ 安全確保のための手順書等の作成

(3) 病棟における処方変更時の対応

○ 処方変更内容の患者への説明

○ 処方変更内容の記録

・診療録、指示簿等への反映

○ 処方変更内容及び処方変更目的の各職種への連絡

4.処方医への問い合わせ

医薬品の使用に関して疑義がある場合は速やかに処方医への問い合わせを行い、必ず疑義が解消してから調剤、投与を行うことを徹底する。また、照会や確認が円滑に行われるよう、職種間の連携体制を築くことが重要である。

○ 疑義内容の確認

・患者の病態と薬剤、投与量、投与方法、投与間隔の照合

・重複投与、相互作用、禁忌医薬品、病名禁忌、アレルギー歴、副作用歴等

○ 疑義照会結果の記録

・診療録、指示簿等への反映

○ 疑義照会結果の連絡

・必要に応じた処方変更内容等の各職種への連絡

5.調剤

(1) 患者の安全に視点を置いた調剤業務の実施

→「第5章 外来患者への医薬品使用」の4.の(3)を参照(11ページ)

(2) 内服薬・外用薬の調剤

→「第5章 外来患者への医薬品使用」の4.の(3)を参照(11ページ)

(3) 注射薬の調剤

① ラベルの作成

○ 調剤薬への必要な情報の明記

・患者ID、患者氏名、診療科名

・医薬品名、単位、量

・投与方法、投与時間、投与経路、投与速度等

・調剤者名、調剤済みであるか、調剤日時

○ 特に注意すべき事項の注意喚起

・保存方法(冷所、遮光等)、使用期限等

② 計数調剤(取り揃え)

○ 処方せんとラベルとの照合

○ 取り揃え手順

・処方せん1使用単位ごとにトレイ等に分けて準備する

○ 遮光対策等

・遮光袋の添付等

③ 計量調剤(混合調製)

○ 混合調製の環境整備

・無菌室やクリーンベンチ、適切な着衣を使用して混合調製を行う

・適切なシリンジ、注射針、フィルター等を使用する

・中心静脈栄養、抗がん剤は適切な環境下で調製を行う

○ 取り揃え手順

・患者ごとにトレイ等に分けて準備する

・患者氏名、計量値等の明記

・安定性及び配合禁忌・配合変化の確認

・患者氏名、空容器数、残液量等

・調製薬の外観変化、異物混入、総液量

④ 鑑査

○ 医薬品の確認

・処方せん、ラベル、注射薬の照合

○ 調製薬への必要な情報の記載

・患者氏名、医薬品名、単位、量、投与方法、投与時間、投与経路、投与速度、調製者名、調製日時、保存方法、使用期限、その他注意事項等

(4) 調剤薬の病棟への受け渡し

○ 患者の状況に対応した取り揃え

・処方せんによりその都度薬剤部門より供給することを原則とする

・患者別の取り揃え

・注射薬は1回量をセット

○ 投与時の注意等に関する記載

・特殊な使用方法や管理方法、処方変更等

○ 調製に関する情報提供

・薬剤師が注射薬の混合調製を直接行っていない場合には、薬剤師から看護師へ、配合禁忌・注意、配合手順、管理手順等についての情報提供を積極的に行う

6.投与

(1) 内服薬・外用薬・注射薬の投与

→「第5章 外来患者への医薬品使用」の5.を参照(12ページ)

○ 薬剤投与ルートの確認

・チューブやカテーテルを用いて投与する場合には、チューブ類の自己抜去や閉塞、誤接続、フリーフローにより薬剤の投与が中断されることがないよう、薬剤投与ルートが確保されていることを投与時だけでなく投与中も確認し、記録として残す

(2) 特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)の投与

○ 抗がん剤の投与

・レジメン(投与薬剤・投与量・投与日時などの指示がまとめられた計画書)に基づく調剤、投与

○ 特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)を投与している患者の薬歴管理

・休薬期間が設けられている医薬品、服薬期間の管理が必要な医薬品、定期的な検査が必要な医薬品は必ず薬歴管理を行う

○ 特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)に関する職種間の情報共有

・患者氏名、医薬品名、投与日、投与時の注意点、過量投与時のリスク等

(3) 薬剤投与のための機器使用

定量ポンプ(シリンジポンプ、輸液ポンプ)は、投与速度に変動が起こると危険な医薬品を一定の速度で投与するために用いられる。したがって、定量ポンプは操作を誤ると、患者への薬剤の大量投与や閉塞など重大な事故につながる可能性が高い。定量ポンプの使用に当たっては、作業者はその危険性を認識し、操作方法を熟知する必要がある。定量ポンプのセット時、使用中のチェック項目をリスト化し、ポンプに備え付けておく等の工夫も望まれる。

また、吸入器(ネブライザー)を用いて使用する医薬品についても、医薬品の特性、使用方法、使用禁忌等を理解した上で使用しなければならない。

① 定量ポンプ

○ 定量ポンプの使用

・投与速度を正確に管理する必要のある医薬品については、輸液ポンプやシリンジポンプなどを活用する。アラーム機能付き機器など、場合に応じて適切な機器を選択する

○ 設置時の確認

・コンセントの差し込み、スタンドの転倒に注意

・シリンジポンプは過量送液防止のため患者の高さに合わせる

○ 流量設定表示の確認

・小数点や桁数、流量と積算量の表示切替

○ 正確な送液の確認

・輸液ポンプ注入開始後の目視による滴下速度の確認

・設定輸液量と実施輸液量の比較

・ラインの閉塞確認と解除時の過剰送液に注意

・取り外し時は必ずクランプをしてから行い、多量送液を回避

○ 日常点検、定期点検

・ラインやシリンジの劣化に注意

・定期的な動作確認

・バッテリー充電

② 吸入器(ネブライザー)

○ 吸入器の使用

・医薬品の特性、副作用、使用方法、使用禁忌、使用上の注意点等を理解した上で使用する

○ 希釈液の取り違い対策

・取り違いを防止するため、注射薬や点滴の調製業務と同時に行わない

・使用するトレイやラベル、注射器等も、注射薬や点滴と異なる色や形状を用いる

(4) 輸血の実施(血液製剤の使用)

厚生労働省の「輸血療法の実施に関する指針」を踏まえ、患者誤認、異型輸血の防止対策を徹底する。

○ 実施手順の策定

・血液用バッグと患者の照合の徹底

・実施担当者の明確化

→「第12章 輸血・血液管理部門」を参照(34ページ)

7.服薬指導

患者に処方目的、処方内容、副作用の初期症状等の説明を行う。また、処方変更時は、変更内容を患者に説明する。

→「第5章 外来患者への医薬品使用」の5.を参照(12ページ)

8.投与後の経過観察

→「第5章 外来患者への医薬品使用」の6.を参照(13ページ)

○ 確実・安全に投与されたかの確認

○ 副作用の早期発見及び重篤化回避のための体制整備

・患者の訴えや臨床検査値、病態変化から副作用の可能性を検討

・特に新薬の投与時や処方変更時

○ 薬物血中濃度モニタリングの実施

・必要に応じて、薬物血中濃度モニタリング(TDM)による投与設計・管理を行う。治療域が狭い医薬品は、TDMを行うなど、投与に細心の注意を要する。(アミノ配糖体抗生物質やグリコペプチド系抗生物質(バンコマイシン、テイコプラニン)、不整脈用剤(リドカインなど)、ジギタリス製剤、免疫抑制剤など)

○ 定期的な検査の実施

9.医薬品使用による患者容態急変時の応援体制の確立

○ 応援の速やかな連絡方法

○ 必要な情報、資材、人材の応援体制

・自施設のみでの対応が不可能と判断された場合に、遅滞なく他の医療機関への応援を求めることができる体制

10.医療用ガス

○ 医療用ガスの定期的な管理、保守点検・記録

・昭和63年7月15日健政発第410号通知「診療の用に供するガス設備の保安管理について」に従う

[第9章 医薬品情報の収集・管理・提供]

【医療安全の確保へ向けた視点】

医療事故防止の観点からも、常に最新の医薬品情報を収集し、適切に管理し、各職種に迅速に提供できる体制を整備することが重要である。

【手順書を定めるべき事項】

1.医薬品情報の収集・管理

2.医薬品情報の提供

3.各部門、各職種等からの問い合わせに対する体制整備

〔解説〕

医薬品情報の収集・管理に関しては、医薬品情報の管理部門及び担当者を決定することが重要である。厚生労働省の医薬品等安全性関連情報など、医薬品の安全使用に関する情報の収集・管理や、医薬品集、添付文書集等の作成・定期的な更新を行うとともに、院内各部門へ適切な医薬品使用のための情報を周知することが望ましい。あわせて、院内各部門、各職種等からの、医薬品に関する問い合わせに対応するための体制整備も必要となる。

【手順書の具体的項目例】

1.医薬品情報の収集・管理

○ 医薬品情報の管理部門及び担当者の決定

○ 医薬品等安全性関連情報・添付文書・インタビューフォーム等の収集・管理

・緊急安全性情報

・禁忌、相互作用、副作用、薬物動態、使用上の注意等

○ 医薬品集、添付文書集等の作成・定期的な更新

2.医薬品情報の提供

○ 緊急安全性情報等の提供

・各部門、各職種への迅速な提供

○ 新規採用医薬品に関する情報提供

・名称、成分名、適応症、用法・用量、相互作用、副作用、禁忌、配合禁忌、使用上の注意、保管・管理上の注意、安全上の対策の必要性等の速やかな各部門、各職種への提供

・院外処方の場合は、地域保険薬局等への周知

○ 製薬企業等からの情報

・製薬企業の自主回収及び行政からの回収命令、販売中止、包装変更等

・必要に応じた各部門、各職種への提供

○ その他の医薬品情報

・院内情報誌、印刷物等

3.各部門、各職種等からの問い合わせに対する体制整備

○ 各部門、各職種からの医薬品に関する問い合わせに常時対応する体制の整備

○ 各部門、各職種からの問い合わせ及び回答内容の記録

○ 他施設からの問い合わせ

→「第16章 他施設との連携」の2.を参照(49ページ)

[各部門における医薬品の使用・管理]

○第10章から15章までは、医療機関の各部門・各領域における「医薬品の安全使用・管理体制」について示したものです。

○本マニュアルでは、「手術・麻酔部門」と「救急部門・集中治療室」を分けてそれぞれ第10章、第11章としていますが、業務手順書の作成に当たっては、自施設の状況に合わせて下さい。

○他の章と重複する内容については再掲を行わず、各部門・各領域に特徴的な事項のみを記載しています。他の章と重複する内容については、以下を参照して下さい。

・規制医薬品(麻薬、覚せい剤原料、向精神薬(第1種、第2種)、毒薬・劇薬)の管理と使用

→「第3章 調剤室における医薬品の管理」の1.の(3)を参照(5ページ)

→「第7章 病棟における医薬品の管理」の1.の(3)を参照(16ページ)

・特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)の管理と使用

→「第3章 調剤室における医薬品の管理」の1.の(5)を参照(6ページ)

→「第7章 病棟における医薬品の管理」の1.の(5)を参照(17ページ)

→「第8章 入院患者への医薬品使用」の6.の(2)を参照(22ページ)

・血液製剤の管理と使用

→「第7章 病棟における医薬品の管理」の1.の(8)を参照(17ページ)

→「第8章 入院患者への医薬品使用」の6.の(4)を参照(24ページ)

・定数配置薬の管理と使用

→「第7章 病棟における医薬品の管理」の1.の(2)を参照(16ページ)

・救急カートの管理と使用

→「第7章 病棟における医薬品の管理」の1.の(7)を参照(17ページ)

・定量ポンプ(シリンジポンプ、輸液ポンプ)の管理と使用

→「第8章 入院患者への医薬品使用」の6.の(3)を参照(23ページ)

・医薬品使用に関する適切な指示出し、指示受け

→「第8章 入院患者への医薬品使用」の2.を参照(20ページ)

・医薬品使用による患者容態急変時の応援体制の確立

→「第8章 入院患者への医薬品使用」の9.を参照(24ページ)

・医療用ガスの定期的な管理、保守点検・記録

→「第8章 入院患者への医薬品使用」の10.を参照(24ページ)

[第10章 手術・麻酔部門]

(注) 本章の内容は、主として予定を立てて行う手術を想定している。

【医療安全の確保へ向けた視点】

手術・麻酔に当たっては、患者の副作用歴・アレルギー歴等の事前確認を行うとともに、使用医薬品の取り間違い防止、患者の誤認防止対策などを行う必要がある。

【手順書を定めるべき事項】

1.患者情報の収集・管理・活用

2.医薬品の準備

3.医薬品の使用

4.麻酔薬の使用

5.医薬品使用による患者容態急変時の応援体制の確立

6.使用した医薬品の確認と管理

〔解説〕

手術・麻酔部門においては、手術に携わる者が、特に安全管理が必要な注射薬等について使用方法等を熟知している必要がある。

また、入院患者への医薬品使用と同様に、患者の副作用歴・アレルギー歴・合併症、使用医薬品等の事前確認を行うとともに、取り間違い防止対策を図ることが重要である。さらに、医薬品の使用に当たっては、投与指示(投与薬剤、投与量、投与経路、投与時間、投与間隔など)の方法を統一し、投与内容は記録に残すことが必要である。麻酔薬の使用に当たっては、麻酔科医の関与が重要となる。

さらに、医薬品使用による患者容態急変時に備えて、応援体制を整備しておくことが望ましい。

【手順書の具体的項目例】

1.患者情報の収集・管理・活用

→「第8章 入院患者への医薬品使用」の1.の(1)を参照(20ページ)

○ 患者の副作用歴・アレルギー歴・合併症等の事前確認

○ 使用医薬品の事前確認

・抗血栓作用のある医薬品(例:ワーファリン、パナルジン)等

・循環器用医薬品、呼吸器用医薬品、血糖降下薬等

○ 継続使用医薬品の術前中止と術後再開に関する計画立案

2.医薬品の準備

○ 使用予定医薬品の準備

・使用予定の医薬品リストの作成

○ 手術に携わる者の理解の統一

・特に安全管理が必要な注射薬の使用等について、手術スタッフへの使用方法の周知徹底

○ 取り間違いの防止対策

・プレフィルドシリンジ等製剤の採用

○ 希釈間違いの防止対策

・キット製品の採用

・希釈して使用する医薬品(例:電解質溶液や心血管作動薬、インスリン等)についての希釈倍率の統一

○ 緊急用医薬品の準備、入手体制の確立

・筋弛緩薬の拮抗薬や昇圧薬等の準備

・輸血用血液製剤の保管状況の確認

・特別な量が必要となる可能性のある医薬品の入手体制の確立

3.医薬品の使用

○ 患者(または家族)への使用予定医薬品の説明と同意

○ 患者の誤認防止対策

・リストバンドの使用や患者本人に氏名を名乗ってもらうなど、患者確認のルールの構築

・担当医による手術直前の声出し確認(患者氏名・病名・予定術式)

○ 指示出し・指示受け、実施方法の確立

→「第8章 入院患者への医薬品使用」の2.を参照(20ページ)

・口答指示を行う場合の、投与指示(投与薬剤、投与量、投与経路、投与時間、投与間隔など)の方法の統一

○ 薬剤投与ルートの確認

→「第8章 入院患者への医薬品使用」の6.の(1)を参照(22ページ)

○ 薬物血中濃度モニタリングの実施

→「第8章 入院患者への医薬品使用」の8.を参照(24ページ)

4.麻酔薬の使用(上記1~3以外の事項)

○ 機器・機材の準備と点検

・麻酔に使用する機器・機材の確認、動作状況の確認、準備(日本麻酔科学会提唱の「麻酔器の仕業点検」に基づいて行う)

○ 術前訪問、術前診察

・患者の確認、状態の評価

・症例、疾患、術式、患者状態、麻酔方法についての再確認

○ 麻酔科医による麻酔計画の立案

・麻酔関連薬の使用法、使用量

・脊椎麻酔時の昇圧薬の使用

・局所麻酔に併用する鎮静薬、鎮痛薬の使用

・術後疼痛のコントロールのための医薬品使用

○ 麻酔管理中の患者監視

・術前、術中、術後を通じての患者観察

・麻酔導入時から手術室退室時までの全身状態のモニタリング(日本麻酔科学会提唱の「安全な麻酔のためのモニター指針」に基づいて行う)

5.医薬品使用による患者容態急変時の応援体制の確立

→「第8章 入院患者への医薬品使用」の9.を参照(24ページ)

6.使用した医薬品の確認と管理

○ 使用医薬品の確認と記録

・手術中の使用医薬品の記録(使用日、使用対象患者、医薬品名、数量、投与量、投与時間)

○ 使用医薬品の管理

・未使用医薬品の返品と使用した定数配置薬への速やかな補充

[第11章 救急部門・集中治療室]

(注) 本章の内容は、主として緊急の手術と集中治療室を想定している。救急部門のうち、手術を伴わない一般診療に類似する医薬品管理・使用については、「第3章 調剤室における医薬品の管理」、「第7章 病棟における医薬品の管理」及び「第5章 外来患者への医薬品使用」を参照のこと。

【医療安全の確保へ向けた視点】

救急部門や集中治療室では、重症患者に対して、生命維持装置等が装着され、多種類の医薬品や輸液等が使用される。多くの経路からの投与、投与量の変動が短時間に頻繁に行われるため、救急集中治療室での医薬品使用には細心の注意が必要である。

また、集中治療室においては、診療科の異なる複数の医師や各医療職が数多く関与し、かつ24時間適切に医療を提供するため交代で患者の治療に当たる。このため、確実な情報伝達方法を構築し、情報共有のための情報の標準化を図ることが重要である。

【手順書を定めるべき事項】

1.患者情報の収集・管理・活用

2.医薬品の保管管理

3.医薬品の準備

4.医薬品の使用

5.医薬品使用による患者容態急変時の応援体制の確立

6.使用した医薬品の確認と管理

〔解説〕

救急部門・集中治療室では、患者の容体変化に応じて緊急に医薬品が必要となることが多く、保管する医薬品の種類も多い。その中には、筋弛緩薬、麻酔薬、鎮静薬、不整脈用薬など取扱いに注意が必要な医薬品も含まれ、麻薬、向精神薬、毒薬・劇薬に分類されるものも多い。したがって、救急部門・集中治療室で保管する医薬品は適切に在庫数の管理を行う必要がある。

また、集中治療室においては、診療科の異なる複数の医師や各種医療職が数多く関与し、かつ24時間適切に医療を提供するため交代で患者の治療に当たる。このため、医薬品の使用に関しても情報を正確に引き継ぐこと(情報共有)が必要である。情報共有のための情報の標準化や作業の標準化を図ることが望ましい。

【手順書の具体的項目例】

1.患者情報の収集・管理・活用

→「第10章 手術・麻酔部門」の1.を参照(29ページ)

2.医薬品の保管管理

→「第7章 病棟における医薬品の管理」の1.を参照(16ページ)

○ 医薬品管理の責任者の設置

・集中治療室における医薬品管理の責任者の設置(薬剤師)(兼任可)

3.医薬品の準備

→「第10章 手術・麻酔部門」の2.を参照(29ページ)

○ 中心静脈栄養の感染防止に配慮した薬剤調製

→「第8章 入院患者への医薬品使用」の5.の(3)の③を参照(21ページ)

4.医薬品の使用

→「第10章 手術・麻酔部門」の3.を参照(30ページ)

○ 副作用の確認

・集中治療室では、速効性を期待した多様の医薬品が使用されるため、常に使用状況を把握し、副作用発現に留意して患者の状態を確認する

・携わる医師、薬剤師、看護師等における副作用情報等の共有

5.医薬品使用による患者容態急変時の応援体制の確立

→「第8章 入院患者への医薬品使用」の9.を参照(24ページ)

6.使用した医薬品の確認と管理

→「第10章 手術・麻酔部門」の6.を参照(31ページ)

○ 情報共有と標準化

・患者の医薬品使用に関わる情報が漏れなく正しく伝わるよう、確実な情報伝達方法を明確に決定する。その際には、統一された様式の記録を用いることが有効である

[第12章 輸血・血液管理部門]

【医療安全の確保へ向けた視点】

輸血による医療事故のなかでは異型輸血が特に多い。異型輸血など、血液製剤に関する事故を防止するには院内に血液製剤の使用に関する専門の担当部門と責任者を設置するとともに、血液製剤使用の手順を作成のうえ院内各部門へ周知するなど、事故防止へ向けた組織的対応が必要である。

【手順書を定めるべき事項】

1.担当部門と責任者の設置等

2.適切な管理・保管

3.時間外・休日等の供給・管理体制の確立

4.事故防止のための輸血業務の環境整備

5.輸血後の患者急変時の対応手順の策定

〔解説〕

血液製剤(輸血用血液製剤及び血漿分画製剤)については、専門の担当部門と責任者を設け、発注、保管、供給、返却、廃棄、記録等を適切に行う。さらに時間外・休日の供給・管理体制の確立と、事故防止のための輸血業務の環境整備を行う必要がある。

【手順書の具体的項目例】

1.担当部門と責任者の設置等

○ 担当部門と責任者の設置

○ 関連する院内部門(検査部、薬剤部)との連携体制の整備

・輸血管理委員会等

2.適切な管理・保管

→「第7章 病棟における医薬品の管理」1.の(8)参照(17ページ)

○ 輸血・血液管理部門の払い出しから使用に至るまでの保管手順の確立

・一般病棟での保管の原則禁止

・部門間の搬送の際の保冷器の使用

○ 保冷庫、冷凍庫の適切な管理

・輸血用血液製剤の、自記温度記録計付きの専用保冷庫や冷凍庫での保管

・保冷庫、冷凍庫とアラームの定期的点検の実施と記録保管

3.時間外・休日等の供給・管理体制の確立

○ 赤十字血液センターとの連携体制

4.事故防止のための輸血業務の環境整備

○ 血液型判定に関する誤りの防止

・時間外・夜間に輸血を行う場合は適宜検査技師を活用できる体制を構築する

5.輸血後の患者急変時の対応手順の策定

○ 輸血後の患者急変時の対応手順の策定

・点滴ルートの閉錠、ルートの交換等

[第13章 生命維持管理装置領域]

【医療安全の確保へ向けた視点】