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○医療機関における自家細胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施について

(平成22年3月30日)

(医政発0330第2号)

(各都道府県知事・各政令市長・各特別区長あて厚生労働省医政局長通知)

再生・細胞医療は、臓器機能の再生等を通じて、国民の健康の維持並びに疾病の予防、診断及び治療に重要な役割を果たすことが期待されている。

今般、先端的な医療である再生・細胞医療が有効性及び安全性の高い形で患者に提供され、普及していくよう、医療機関における自家細胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施に当たり、関係者が留意すべき要件を別添のとおり定めたので、貴管下関係者へ周知方御配慮願いたい。

なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定による技術的な助言であることを申し添える。

(別添)

医療機関における自家細胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施について

再生・細胞医療(ヒトの細胞・組織を採取し、加工した上で、移植又は投与を行う医療をいう。以下同じ。)は、臓器機能の再生等を通じて、国民の健康の維持並びに疾病の予防、診断及び治療に重要な役割を果たすことが期待されている。

今般、先端的な医療である再生・細胞医療が有効性及び安全性の高い形で患者に提供され、普及していくよう、医療機関(医療法(昭和23年法律第205号)第1条の5に定める「病院」又は「診療所」をいう。)における自家細胞・組織(患者本人の細胞・組織をいう。)を用いた再生・細胞医療の実施に当たり、関係者が尊重すべき要件を定めることとする。

0.初めに

① 実施する再生・細胞医療技術の内容に応じて、有すべき施設、設備等は異なることから、各技術に共通的な事項として、医療機関が確保すべき最低限の要件について定める。

② 医師法(昭和23年法律第201号)、歯科医師法(昭和23年法律第202号)、医療法等の法令やガイドライン等医療一般に適用される事項を遵守することは当然のことであることから、再生・細胞医療に固有に求められる事項を中心に定める。特に、再生・細胞医療を研究として実施する場合には、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」(平成18年厚生労働省告示第425号)、「臨床研究に関する倫理指針」(平成20年厚生労働省告示第415号)等に基づき実施する必要がある。

③ 現段階での再生・細胞医療の実態等を踏まえ、主として、薬事法(昭和35年法律第145号)に基づく承認取得や保険適用をした上で幅広く実施される以前の段階において必要とされる要件を定める。

④ 再生・細胞医療における科学的進歩や経験の蓄積は日進月歩であることから、本要件を一律に適用したり、本要件の内容が必要事項すべてを包含しているとみなすことが必ずしも適切でない場合もある。したがって、個々の再生・細胞医療の実施や評価に際しては、本要件の目的を踏まえ、科学的原則やその時点の学問の進歩を反映した合理的根拠に留意しつつ、ケース・バイ・ケースで柔軟に対応することが必要である。

⑤ 本要件は、科学技術の進歩、関連制度の見直し状況等を勘案して、必要に応じ見直しを行うこととする。

第1章 基本的な考え方

① 再生・細胞医療の一般化や普及を図ることが目的であり、そのためには、再生・細胞医療は先端的な医療ではあるが、いかに有効性及び安全性の高い形で提供されるかという患者の視点から考えることが重要である。

② 複数の医療機関において共同で実施する場合においても、加工の段階が分断されるのではなく、細胞・組織の採取から、加工、搬送、移植又は投与までに至る各過程が一貫して複数の医療機関により実質的に管理されていることが必要である。共同での医療の実施は、複数の医療機関の関係者が1つのチームとなり、当該関係者がすべての患者の症例を把握しているなど十分な連携体制(顔の見える関係)の中で実施されることが必要である。

* 「細胞・組織の加工」とは、疾患の治療や組織の修復又は再建を目的として、細胞・組織の人為的な増殖、細胞・組織の活性化等を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変、非細胞・組織成分との組み合わせ又は遺伝子工学的改変等を施すことをいう。(「ヒト(自己)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について」(平成20年2月8日付け薬食発第0208003号厚生労働省医薬食品局長通知))

③ インフォームド・コンセントについても、細胞・組織の採取から、加工、搬送、移植又は投与までに至る一貫したものが必要であるとともに、医療機関は患者がインフォームド・コンセント時の説明を理解できるよう支援するよう努めることが重要である。

④ 一般に医療については、臨床研究の段階から企業が加わり利用が拡大していく段階まで、対象患者が拡大するにつれて、上乗せの要件が求められる。

第2章 総則

再生・細胞医療を1つの医療機関で一貫して実施する場合には以下の要件によるものとする。

1.再生・細胞医療提供の体制等の在り方

① 医療機関の細胞加工施設(以下、「CPC」という。)において加工された細胞・組織等は、薬事法に基づき有効性及び安全性が評価されたものではないことから、医療機関は、ヒト幹細胞由来であるか否かにかかわらず、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」において求められている体制を有するなど、医療機関として管理・責任体制を明確にするとともに、同指針において求められている安全対策等を講じた上で再生・細胞医療を実施することが求められる。

② 再生・細胞医療の実施については、医療機関としての管理・責任体制を明らかにするために、倫理審査委員会の承認を求めることが必要である。

* 倫理審査委員会に求められる役割:製造・品質管理等に関する手順書や搬送方法の承認、それらが適切に守られているかの確認、依頼医療機関において実施された患者についての有効性や安全性に関する情報の集約、当該技術を継続する妥当性の検証、問題事例への対応の検討 等

③ 再生・細胞医療は、医療機関内の複数の医療関係者の連携のもと実施されるものであることから、医療関係者が連携し、患者の診療情報を共有した上で、患者の治療や治療後のモニタリングを実施することが必要である。例えば、主治医を中心としてカンファレンスを実施した上で治療方針や重大な事態が生じた場合の対応の決定等を行う必要がある。

2.再生・細胞医療の実施の判断及び細胞・組織の採取

① 患者に再生・細胞医療を実施するか否かの判断に当たっては、病状、年齢、同意能力等を考慮し、慎重に検討する必要がある。

② 採取段階における安全対策等については、「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び安全確保について」(平成12年12月26日付け医薬発第1314号厚生省医薬安全局長通知)及び「ヒト(自己)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について」の規定するところによるものとする。

3.加工・品質管理体制

① 細胞・組織の加工を行う医療機関は、病院や特定機能病院に限定すべきではなく、有効性、安全性及び品質確保のために下記の要件を満たしている医療機関であればよい。

② 細胞・組織の加工は、必ずしも医師又は歯科医師が行う必要はないが、医療の一環として、当該医療機関の医師又は歯科医師の実質的な監督の下で実施することが必要である。

③ CPCの施設の要件

○ 加工した細胞・組織の品質の確保のために、細胞加工室、品質検査室、細胞管理室を有するなど必要な構造設備を備える必要があるとともに、脱衣室と着衣室を別に設けるなど、交差汚染を防止するために必要な対策を講じておく必要がある。

○ 電気冷蔵庫、電気冷凍庫、培養器、顕微鏡、安全キャビネット、モニタリング用機器など、細胞・組織の加工及び保存に必要な設備を有する必要がある。

○ 製品管理、品質管理、バリデーション等について、製造管理の手順に関する文書、品質管理の手順に関する文書、衛生管理の手順に関する文書、教育訓練の手順に関する文書等を定めるとともに、これらに基づき適切に製造管理及び品質管理を行う必要がある。

④ CPCの人員の要件

○ 製造管理責任者、品質管理責任者、細胞培養責任者及び細胞検査責任者の配置が必要である。

○ 少なくとも製造管理責任者と品質管理責任者は分けることが必要である。

○ 細胞・組織の加工を監督する医師又は歯科医師、品質管理、製造管理等の責任者及び実施者には十分な知識・経験が必要である。

⑤ 加工・品質管理の在り方については、「治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)」(平成20年7月9日付け薬食発第0709002号厚生労働省医薬食品局長通知)、「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び安全性確保について」及び「ヒト(自己)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について」に規定するところによるものとする。

4.移植又は投与

○ 移植又は投与の段階においては、十分な安全対策等を行う必要がある。

5.情報管理及び記録の保存

○ 再生・細胞医療に関する記録を良好な状態の下で、少なくとも10年間保存しなければならない。

6.有効性、安全性など治療効果の評価

① 評価療養(健康保険法(大正11年法律第70号)第63条第2項第3号に規定する「評価療養」をいう。以下同じ。)の対象でない再生・細胞医療や薬事法に基づく承認取得や保険適用がされていない再生・細胞医療は、まずは研究として実施することが必要である。

実施後は、実施した再生・細胞医療に関する成績について、医療機関は査読のある学術雑誌へ寄稿し評価を受けるなど、第三者の評価を受けた上でホームページで公表することが必要である。

なお、情報公開を行う上では、効果が認められた症例の紹介だけではなく、他の治療を受けた集団と再生・細胞医療を受けた集団の生存期間の延長効果を比較した情報を公開するなど、客観的な有効性及び安全性に関する情報を公開することが必要である。

② 治療を目的とする再生・細胞医療であって、研究段階で一定の評価を得たものについては、先進医療(「厚生労働大臣の定める評価療養及び選定療養」(平成18年厚生労働省告示第495号)第1条第1号に規定する「先進医療」をいい、高度医療評価制度を含む。以下同じ。)や治験といった評価療養の枠組みの中で、行政の一定の関与の下、有効性及び安全性について更なる評価をすることが必要である。

③ 先進医療として実施し、一定の評価が得られた再生・細胞医療については、速やかに治験や薬事承認、保険適用につなげていくことが必要である。

④ さらに、保険の対象とならない予防や美容を目的とする再生・細胞医療は、先進医療の対象とならないため、実施医療機関において、より一層有効性及び安全性の確保に万全を期すとともに、特に有効性及び安全性の評価についてインフォームド・コンセントを徹底した上で実施することが必要である。

第3章 複数の医療機関において共同で再生・細胞医療を実施する場合の要件

再生・細胞医療の実施初期には、1つの医療機関において、患者への移植等や細胞の培養・加工が一貫して行われるが、一定の有効性及び安全性の評価が行われた後には、複数の医療機関において共同で同じ再生・細胞医療を実施することが考えられる。複数の医療機関において共同で再生・細胞医療を実施する場合には、第2章の要件に加えて、以下の要件を満たすことが必要である。

1.再生・細胞医療提供の体制等

① 第2章1②に規定する倫理審査委員会は、各々の医療機関が固有のものを設置し、有効性や安全性、品質に関する情報を共有するためにも、互いの医療機関で開催される際には、少なくとも互いの倫理審査委員会で行われた議論の内容がわかるような書面を提示し、相手の医療機関における実施体制等について理解することが必要である。その上で、相手側の倫理審査委員会の要請がある場合には、医療機関の関係者が出席し、各医療機関における実施体制等について説明を行うことが必要である。

② 第2章1③に規定する医療関係者の連携については、複数の医療機関において共同で一体となって再生・細胞医療を実施する場合には、特に重要であり、患者の診療情報を両医療機関の関係者が共有した上で、患者の治療や治療後のモニタリングを共同で実施し、各々の医療機関で記録を保存することが必要である。例えば、主治医を中心として両医療機関の医師又は歯科医師の参加によるカンファレンスを実施した上で治療方針や重大な事態が生じた場合の対応の決定等を行うことが必要である。

③ 両医療機関の関係者は、長期間にわたって、共同で有効性や安全性に関して患者をフォローすることが必要である。

④ 両医療機関の医師又は歯科医師は、実施する再生・細胞医療に関する知識・技能(細胞・組織の加工に関する事項を含む。)を有することが必要である。

⑤ 第2章3③に規定する製造管理、品質管理、バリデーション等に関することについても、あらかじめ両医療機関で共有することが必要である。

⑥ 医療機関が加工を実施した細胞・組織を他の医療機関に提供する場合には、一定の有効性及び安全性が確認されたものが提供されるべきである。したがって、加工を実施する医療機関についても、少なくとも十分な有効性及び安全性が確立されていない段階(臨床研究や評価療養)においては、細胞・組織の加工のみに特化することなく、自ら実際にこれを用いた医療を実施し、十分な評価を行っていることが求められる。

⑦ 第2章6①に規定する実施した再生・細胞医療に関する成績の評価やホームページでの公表については、複数医療機関で連携して実施する必要がある。

2.搬送

① 搬送には、採取した細胞・組織の搬送と加工したものの搬送があるが、いずれも温度、気圧、無菌性のバリデーション、搬送時間の管理などが重要である。

② 両医療機関においては、これらの条件を含め、品質が確保されるよう適切に検証し、搬送体制についても明確に定めておくことが必要である。

③ 専用の搬送容器の開発や搬送の担当者の教育が前提となる。