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○障害児施設の入所に係る契約及び措置の運用について
(平成21年11月17日)
(障障発1117第1号)
(各都道府県・各指定都市・各児童相談所設置市民生主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長通知)
障害児施設の入所に係る契約及び措置の判断については、「障害児施設給付費等の支給について」(平成19年3月22日障発第0322005号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)により示してきたところであるが、その判断については、各都道府県、指定都市及び児童相談所設置市により差が生じているとの指摘があることから、全国的に適切な判断が行われるよう別紙のとおりその運用の考え方を示すので、現在障害児施設に入所している児童も含めて、適切な運用に努められたい。
なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項に規定する技術的な助言に当たるものである。
(別紙)
障害児施設の入所に係る契約及び措置の運用について
1.趣旨
障害児施設への入所に関しては、平成17年の児童福祉法(昭和22年法律第164号)の改正により、保護者と事業者との契約による「契約制度」が導入されたところである。
これにより、障害児施設への入所に関し、契約により行うか、措置により行うかに関する判断については、各都道府県、指定都市及び児童相談所設置市(以下「都道府県等」という。)が、個別に行うこととなった。
このため、障害児施設に係る契約及び措置に関する判断について適切に行うことができるよう、「障害児施設給付費等の支給決定について」(平成19年3月22日付障発第0322005号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)において、契約及び措置に関する判断基準を地方公共団体に対して示したところである。
しかし、障害児施設の入所に係る契約及び措置に関する判断については、都道府県等により、ばらつきが生じているとの指摘があり、「社会保障審議会障害者部会報告(平成20年12月16日)」等においても、「その判断について都道府県(指定都市、児童相談所設置市を含む)によって差が生じている状況があり、このため、措置か契約かの判断をより適切に行うとの観点から、判断基準を明確化する作業を進め、ガイドラインを作成することとすべきである」等の指摘がされたところである。
本通知は、例えば、虐待のおそれのある場合も虐待等として柔軟に対応するなど、各自治体において、障害児に対する虐待等についてより適切に対応できるようにすることなどを目的として、契約及び措置に関する判断につき、不適切に運用されていると思われる事例などを踏まえつつ、その判断のあり方について再度整理するとともに、都道府県等において適切に行われるよう、必要な技術的助言を行うものである。
<参照> 「障害児施設給付費等の支給決定について」(抄) (平成19年3月22日付障発第0322005号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知) 第三 障害児に係る支給決定の方法 1 障害児に係る支給決定に係る留意事項 (前略) なお、次のいずれかに該当する場合であって、児童福祉法第27条第1項第3号に係る措置が適当であると児童相談所が判断した場合にあっては、「措置制度」に基づく施設利用となり、この通知の適用外の扱いとなる。 ① 保護者が不在であることが認められ、利用契約の締結が困難な場合 ② 保護者が精神疾患等の理由により、制限行為能力者又はこれに準ずる状態にある場合 ③ 保護者の虐待等により、入所が必要であるにもかかわらず利用契約の締結が困難と認められる場合 (なお、「等」の解釈として、 ・親が養育を拒否(親に対する指導を児童相談所が行っても、改善されない場合を想定)している場合 ・親が障害を受容できず、健常児と同じ育児に固執し、児童に悪影響を与える場合 ・家庭環境の問題によって、児童を家庭から引き離さなければ、児童の成長に重大な影響を与えると判断された場合 等が想定されるが、個々の事例に関しては、十分に家庭環境や障害児の発育を考慮し決定すべきである。) |
2 障害児施設の入所に係る契約及び措置の具体的な運用について
障害児施設の入所に係る契約及び措置に関する判断については、下記を参考の上、個々の児童の状況を勘案して行うこと。
(1) 「保護者の虐待等により、入所が必要であるにもかかわらず利用契約の締結が困難と認められる場合」について判断する際には、以下の点に留意すること。
① 児童虐待の早期発見・早期対応の観点から、明らかに虐待が確認される場合のほか、虐待が疑われる場合や、放置すると虐待につながるおそれがある場合など「虐待のおそれがある場合」も虐待等に含めて、柔軟に対応すること。
② 虐待等が見受けられる場合において、保護者に利用契約の意思があり、契約することが可能であっても、子どもの健全な育ちを確保するため、措置とすること。
③ 虐待等により児童を措置した場合において、当該児童のきょうだいにつき、当該児童が措置により入所していることのみを理由に措置とするのではなく、個々の児童ごとに、虐待等の状況などを把握した上で、措置にするかどうかの判断を行うこと。
(2) 保護者が利用料を滞納または未納している場合には、以下の点に留意すること。
① 保護者が利用料の滞納等をしていることだけをもって措置とするのではなく、児童の虐待等の状況などを勘案して判断すること。
ただし、利用料の滞納等を受け、催告など必要な手続きを行った上で契約の解除がなされた場合において、引き続き対象児童を入所させることが必要なときは、措置とすること。
② 措置による入所でなければ受け入れないなどの事業者の意向ではなく、障害児の状態等から措置にするかどうかを個別に判断すること。
なお、事業者が正当な理由がなく、契約を拒む場合は、児童福祉法に基づく指定知的障害児施設等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第178号)第10条等に抵触するため、必要に応じて、当該事業者の指定権限者である都道府県等と相談して必要な対応をとること。
(3) その他、以下の点に留意すること。
① 18歳以上の者については、一律に契約とするのではなく、個々の状況を判断し、措置の必要があれば措置とすること。
② 里親及び小規模住居型児童養育事業を行う者(ファミリーホーム)に委託されている障害児が障害児通園施設(児童デイサービス事業を含む)を利用する場合には、「「里親に委託されている児童が保育所へ入所する場合等の取扱いについて」の一部改正について」(平成21年3月31日付障障発第0331004号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長通知)に示したように、措置とすること。
③ 契約または措置で入所した場合でも、その後の児童や家庭等の状況の変化に応じて、契約から措置へ、また措置から契約へと柔軟に対応すること。
④ 民法上、対象児童の保護者以外の者(保護者でない祖父母など)と契約することはできないため、保護者が契約できない場合であって、障害児施設の利用が必要な場合には、措置とすること。
3 障害児施設に障害児が入所した後の児童相談所等の関わり
障害児が契約や措置により障害児施設に入所した後も、子どもが健やかに育つことができるような環境を確保する観点から、児童相談所及び都道府県等は、「児童相談所運営指針」(平成2年3月5日付児発第178号厚生省児童家庭局長通知)等を踏まえつつ、障害児、障害児の保護者及び施設等から継続的に情報を収集した上で適切な支援を行うこと。