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○生活に困窮する国民健康保険の被保険者に対する対応について
(平成21年7月1日)
(/医政指発0701第1号/社援保発0701第2号/保国発0701第1号/)
(都道府県衛生主管部(局)長・都道府県・指定都市・中核市民生主管部(局)長あて厚生労働省医政局指導課長・厚生労働省社会・援護局保護課長・厚生労働省保険局国民健康保険課長通知)
平成20年7月に取りまとめられた「医療機関の未収金問題に関する検討会報告書」(以下「報告書」という。)において、医療機関の未収金は「生活困窮」と「悪質滞納」が主要な発生原因であると指摘されているところである。このうち「生活困窮」が原因である未収金に関しては、国民健康保険における一部負担金減免制度の適切な運用や医療機関・国保・生活保護の連携によるきめ細かな対応により一定程度の未然防止が可能であると考えられる。
今般、同報告書の指摘も踏まえ、生活に困窮する国民健康保険の被保険者に対する対応について下記のとおり取りまとめたので、その旨御了知の上、貴管内市町村並びに医療機関及び関係団体等に周知を図り、その運用について遺憾なきを期されたい。
なお、生活困窮のみならず悪質滞納によるものも含む医療機関の未収金全般への対応については、別途、保険局国民健康保険課よりモデル事業の実施について依頼する予定であるので、積極的に協力いただくとともに、今後、来年度を目途に、当該モデル事業の結果を踏まえた医療機関・保険者・行政機関の連携方策について、改めて通知する予定であるので、そのことも念頭に対応いただきたい。
記
第1 医療機関等との連携による一部負担金減免等の適切な運用
国民健康保険法(昭和33年法律第192号)第44条第1項では、保険者は特別の理由がある被保険者で保険医療機関等に一部負担金を支払うことが困難であると認められるものに対し、一部負担金の減免又は徴収猶予の措置を採ることができることとされている。
実際の運用では適用の基準を設けている市町村が多くあるところであり、こうした基準や運営方針について、医療機関及び生活保護担当部局とも情報を共有し、対象者に対して適切に制度が適用されるよう努めること。
なお、一部負担金減免等の運用に係るモデル事業については別途連絡する。
第2 国民健康保険担当部局と生活保護担当部局との連携
(1) 生活保護等の相談
国民健康保険の被保険者であって保険料や一部負担金の減免措置が適用されるもの等については、その適用期間が数ヶ月にわたる場合や世帯主に傷病が発生した場合など、併せて適切な福祉施策を講じる必要が生じる可能性が相対的に高いと考えられる。
したがって、国民健康保険担当部局においては、日頃より、保険料や一部負担金の減免措置が適用されている世帯の状況変化に留意しつつ、必要に応じ、生活保護等の相談が可能となるよう、国民健康保険担当部局と生活保護担当部局の連携強化を図ること。
(2) 生活保護が停廃止となる者についての連絡
生活保護受給者が保護の停廃止となった場合、被用者保険に加入していなければ、国民健康保険への加入手続きが必要となることから、生活保護担当部局においては、対象者に対しあらかじめ国民健康保険への加入手続きについて周知するとともに、国民健康保険担当部局にも必要な連絡を行うこと。
また、医療扶助を受給中の者が月途中で保護が停廃止となった場合には、医療機関における診療報酬請求上の手続きが異なることから、生活保護担当部局においては、速やかに当該医療機関にその旨を連絡すること。
第3 その他の医療機関、国民健康保険担当部局、生活保護担当部局等の連携
医療機関、市町村の国保部局、福祉事務所等に、国民健康保険の保険料や一部負担金を支払うことが困難である被保険者が相談に訪れた場合には、いずれの窓口においても、必要に応じて、一部負担金減免制度、生活保護制度、無料低額診療事業などについて、十分な情報提供ときめ細かな相談対応ができるよう、例えば、関係者による協議会(国民健康保険運営協議会の活用も可能)を設けることなどにより、各制度の概要資料を共有するなど十分な連携強化を図ること。
なお、医療機関においては、市町村の国保部局、福祉事務所等と連携を図るとともに、報告書において組織的な未収金の管理体制の確立、患者に対する相談体制の整備等の必要性が指摘されていることも踏まえ、未収金発生の未然防止策に積極的に取り組むよう努めること。
(参考)
医療機関の未収金問題に関する検討会報告書(抄)
(略)
5 対策
(2) 未然防止策として考えられる方策
① 生活困窮者に対する取組み
イ 医療機関・国保・生活保護の連携強化
○ 厚生労働省の一部負担金減免の実施状況調査においても、実施件数が少ない理由として、一部負担金の減免基準が生活保護の基準に近いので相談に来る被保険者の多くが生活保護に該当する状況にあるとの記述があったように、国保保険料や一部負担金の減免の適用を受けようとする者については、結果として生活保護の適用を受けることとなる場合も多いと考えられる。このため、国保加入者で保険料や一部負担金を支払うことができない状況にある者については、生活保護の窓口にスムーズにつながるよう、国保部門と福祉部門の連携強化を図るべきである。
○ 生活保護を受給していた者が生活保護を廃止される場合、国保加入が必要となるが、国保加入の手続が適切に行われるよう、福祉事務所から国保部門の連携強化、また、月途中の廃止の場合には、速やかに福祉事務所から医療機関へ連絡すること等の徹底を図るべきである。
○ また、医療機関の担当部門、市町村の国保部門、福祉事務所が十分な連携を図り、保険料や一部負担金を支払うことができない者が相談に訪れた場合には、上記のすべての機関の窓口で、一部負担金減免、生保の申請手続等について、十分な情報提供ときめ細かな相談対応ができるようにすべきである。
② 病院側の取組み
○ 医療保険制度においては、医療機関が一部負担金を受領するものとされており、保険者の協力の前提として医療機関において相当の回収努力が求められること、また、厚生労働省の調査により、未収金には一部負担金以外のものも多く含まれていることが確認されたこと等から、まず病院側において積極的に未然防止策を行う必要があると考えられる。具体的には、下記のような取組みを促すべきである。
・ 所属長の強いリーダーシップの下、未収金問題に取り組む動機付けを行い、病院全体で取り組む等組織的な未収金の管理体制を確立する。
・ 未収金発生前から、患者と積極的に関わり、情報を多く取るようにする。その過程で、高額療養費制度などの公的保障制度を周知し、制度の活用を図る。
・ 未収金発生の主原因の一つである「生活困窮」への対応として、病院においても、一部負担金減免制度の周知、生活保護申請の支援、無料低額診療事業の紹介など行えるよう、MSW(医療ソーシャルワーカー)を配置するなど患者に対する相談体制を整備する。
・ 入院に関連して発生する未収金の影響が大きいことから、入院時のオリエンテーションを実施し、医療費の支払い方法、高額療養費制度などの各種制度について説明、確認を行い、退院時にはカード支払いの案内、退院当日に支払いができない場合には一部入金、カード支払いをすすめるなど、未収金の発生防止に努める。
・ 入院外来を問わず、期日に支払いがなされない場合は、念書等をとりつつ、患者や家族の連絡先等の情報を確実に得る。等
(3) 事後対策
② 医療機関・国保・生活保護の連携による再発防止
○ 一旦未収金が発生してしまった場合でも、それ以後の未収金が再び発生しないようにするため、一部負担金減免制度や、生活保護制度、無料低額診療事業等の周知や各制度の窓口にスムーズにつながるよう、医療機関と市町村、福祉事務所との連携体制の整備を図るべきである。
(略)