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○チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針について

(平成21年7月10日)

(基発0710第2号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

(公印省略)

チェーンソー以外の振動工具の適切な取扱い等による振動障害の予防については、昭和50年10月20日付け基発第608号「チエンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害の予防について」の別添「チエンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針」等により推進してきたが、振動の周波数、振動の強さ、振動ばく露時間により、手腕への影響を評価し、振動障害予防対策を講ずることが有効であること等を踏まえて、今般、国際標準化機構(ISO)等が取り入れている「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」及び「振動ばく露時間」で規定される1日8時間の等価振動加速度実効値(日振動ばく露量A(8))の考え方等に基づく対策を推進するため、別紙のとおり、「チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針」を定めることとしたところである。

貴局においても、本指針に基づく取組について、関係事業者に対する指導等に遺憾なきを期されたい。

なお、本通達をもって、昭和50年10月20日付け基発第608号「チエンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害の予防について」は廃止する。

別紙

チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針

1 対象業務の範囲

この指針は、次の業務を対象とするものであること。

(1) ピストンによる打撃機構を有する工具を取り扱う業務

(2) エンジンカッター等の内燃機関を内蔵する工具で、可搬式のもの(チェーンソーを除く。)を取り扱う業務

(3) 携帯用の皮はぎ機等の回転工具を取り扱う業務((5)の業務を除く。)

(4) 携帯用のタイタンパー等の振動体内蔵工具を取り扱う業務

(5) 携帯用研削盤、スイング研削盤その他手で保持し、又は支えて操作する型式の研削盤(使用する研削といしの直径(製造時におけるものをいう。以下同じ。)が150mmを超えるものに限る。)を取り扱う業務(金属、石材等を研削し、又は切断する業務に限る。)

(6) 卓上用研削盤又は床上用研削盤(使用するといしの直径が150mmを超えるものに限る。)を取り扱う業務(鋳物のばりとり又は溶接部のはつりをする業務に限る。)

(7) 締付工具を取り扱う業務

(8) 往復動工具を取り扱う業務

なお、(1)から(8)までに掲げる業務で使用されるチェーンソー以外の具体的な振動工具(以下「振動工具」という。)は別紙1のとおりであること。

2 振動工具の選定基準

(1) 1の(1)から(8)まで((6)を除く。)に掲げる業務に用いられる工具を使用する際は、次の要件に適合しているものを選定すること。

ア 振動

(ア) 振動ができるだけ小さいものであること。

(イ) 使用に伴って作用点から発生する振動が、発生部分以外の部分へ伝達しにくいものであること。

(ウ) 次の要件に適合するハンドル又はレバー(以下「ハンドル等」という。)が取り付けられているものであること。

a そのハンドル等のみを保持して作業を行うことができるものであること。

b 適正な角度に取り付けられており、通常の使用状態で手指及び手首に無理な力をかける必要がないものであること。

c 工具の重心に対し、適正な位置に取り付けられているものであること。

d 防振ゴム等の防振材料を介して工具に取り付けられているものであることが望ましいこと。

e にぎり部は、作業者の手の大きさ等に応じたものであること。

f にぎり部は、厚手で軟質のゴム等の防振材料で覆われているものであることが望ましいこと。

イ 重量等

(ア) エンジンカッター、携帯用研削盤その他手で保持し、かつ、その重量を身体で支えながら使用する振動工具については、軽量のものであること。

(イ) 作業に必要とする大部分の推力が機械力又はその自重で得られるものであること。

(ウ) エアーホース又はコードは、適正な位置及び角度に取り付けられているものであること。

なお、エアーホースの取付部は、自在型のものであることが望ましいこと。

ウ 騒音

圧縮空気を動力源とし、又は内燃機関を内蔵する振動工具については、吸排気に伴って発生する騒音を軽減するためのマフラーが装着されているものであること。

エ 排気の方向

圧縮空気を動力源とし、又は内燃機関を内蔵する振動工具は、作業者が直接マフラーからの排気にさらされないものであること。

(2) 1の(6)に規定する振動工具を使用しようとするときは、振動加速度ができるだけ小さいものとするとともに、加工の方法、被加工物の大きさ等に適合している支持台(ワークレスト)が取り付けられているものを選定すること。

3 振動作業の作業時間の管理

(1) 振動業務とこれ以外の業務を組み合わせて、振動業務に従事しない日を設けるように努めること。

(2) 使用する振動工具の「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」を、振動工具への表示、取扱説明書、製造者等のホームページ等により把握し、当該値及び1日当たりの振動ばく露時間から、次式、別紙2の表等により日振動ばく露量A(8)を求め、次の措置を講ずること。

日振動ばく露量 A(8)=a×√(T/8)[m/s2

(a[m/s2]は周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値、T[時間]は1日の振動ばく露時間)

ア 日振動ばく露量A(8)が、日振動ばく露限界値(5.0m/s2)を超えることがないよう振動ばく露時間の抑制、低振動の振動工具の選定等を行うこと。

イ 日振動ばく露量A(8)が、日振動ばく露限界値(5.0m/s2)を超えない場合であっても日振動ばく露対策値(2.5m/s2)を超える場合には振動ばく露時間の抑制、低振動の振動工具の選定等の対策に努めること。

ウ 日振動ばく露限界値(5.0m/s2)に対応した1日の振動ばく露時間(以下「振動ばく露限界時間」TLという。)を次式、別紙2の表等により算出し、これが2時間を超える場合には、当面、1日の振動ばく露時間を2時間以下とすること。

振動ばく露限界時間 TL=200/a2[時間]

(a[m/s2]は周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値)

ただし、振動工具の点検・整備を、製造者又は輸入者が取扱説明書等で示した時期及び方法により実施するとともに、使用する個々の振動工具の「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」aを、点検・整備の前後を含めて測定・算出している場合において、振動ばく露限界時間が当該測定・算出値の最大値に対応したものとなるときは、この限りでないこと。

なお、この場合であっても1日のばく露時間を4時間以下とすることが望ましいこと。

エ 使用する振動工具の「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」が把握できないものは、類似の振動工具の「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」aを参考に振動ばく露限界時間を算出し、これが2時間を超える場合には、1日の振動ばく露時間を2時間以下のできる限り短時間とすること。

(3) 作業の性格上、同一の作業者が同一現場で連続して作業を行うことが不可欠である場合でかつ日振動ばく露量が5.0m/s2を超える場合には、1週間の作業の計画を作成した上で、振動ばく露を1日8時間5日(週40時間)として算出し、日振動ばく露量A(8)を5.0m/s2以下とする1日のばく露許容時間としてもやむを得ないこと。

(4) 事業者は、作業開始前に、(2)ウ及びエに基づき使用する振動工具の1日当たりの振動ばく露限界時間から、1日当たりの振動ばく露時間を定め、これに基づき、具体的な振動工具を用いた作業の計画を作成し、書面等により労働者に示すこと。

なお、事業者は、同一労働者が1日に複数の振動工具(チェーンソーを含む。)を使用する場合には、個々の振動工具(チェーンソーを含む。)ごとの「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」等から、次式により当該労働者の日振動ばく露量A(8)を求めること。

日振動ばく露量 A(8)=ahv(rms)√(Tv/8)[m/s2

(ahv(rms)iはi番目の作業の3軸合成値、Tiはi番目の作業のばく露時間、nは作業の合計数、Tvはn個の作業の合計ばく露時間)

(5) 1の(1)に掲げる業務のうち、金属又は岩石のはつり、かしめ、切断、鋲打及び削孔の業務については、一連続の振動ばく露時間の最大は、おおむね10分以内とし、一連続作業の後5分以上の休止時間を設けること。また、作業の性質上、ハンドル等を強く握る場合又は工具を強く押さえる場合には、一連続の振動ばく露時間を短縮し、かつ、休止時間の延長を図ること。

(6) 1の(2)から(8)までの業務について、一連続の振動ばく露時間の最大は、おおむね30分以内とし、一連続作業の後5分以上の休止時間を設けること。

4 工具の操作時の措置

(1) 工具の操作方法

ア ハンドル等以外の部分は、持たないこと。

イ ハンドル等は、過度に強く握らず、かつ、強く押さないこと。

ウ さく岩機等により削孔、掘さく、はつり等を行うとき(特に、削孔の開始時)は、たがねを手で保持しないこと。

なお、作業の性質上、たがねを固定する必要がある場合は、適切な補助具を用いること。

また、下向きの削孔、掘さく等を行うときは、軽くひじを曲げできるだけ力を抜いて工具を保持するようにすること。

(2) 作業方法

ア ハンドル等を過度に強く握る作業方法、手首に強く力を入れる作業方法、腕を強く曲げて工具の重量を支える作業方法等の筋の緊張を持続させるような作業方法は避けること。

イ 肩、腹、腰等手以外の部分で工具を押す等工具の振動が直接身体に伝わる作業方法は、避けること。

ウ 振動工具を使用する労働者が、当該振動工具の排気を直接吸い込むおそれのある作業方法は、避けること。

(3) 振動工具の支持

振動工具の重量を手で支えて使用する工具は、できる限りアーム、支持台、スプリングバランサー、カウンターウエイト等により支持すること。

(4) 被加工物の支持について

1の(6)に掲げる業務を行うときは、できる限り被加工物をワークレストで支えて研削すること。

5 たがね等の選定及び管理

たがね、カッター等は、加工の目的、被加工物の性状等に適合したものを選定し、かつ、適切に整備されたものを使用すること。

なお、適切な整備のためには、集中的な管理が望ましいこと。

6 圧縮空気の空気系統に係る措置

(1) 送気圧を示す圧力計をホースの分岐部付近に取り付け、定められた空気圧の範囲内で振動工具を使用すること。

(2) 配管に、適切なドレン抜きを取り付け、必要に応じて圧縮空気のドレンを排出すること。

7 点検・整備

(1) 振動工具を製造者又は輸入者が取扱説明書等で示した時期及び方法により定期的に点検・整備し、常に最良の状態に保つようにすること。

(2) 振動工具を有する事業場については「振動工具管理責任者」を選任し、振動工具の点検・整備状況を定期的に確認するとともに、その状況を記録すること。

8 作業標準の設定

振動工具の取扱い及び整備の方法並びに作業の方法について、適正な作業標準を具体的に定めること。

9 施設の整備

(1) 休憩設備等

ア 屋内作業の場合には、適切な暖房設備を有する休憩室を設けること。

イ 屋外作業の場合には、有効に利用することができる休憩の設備を設け、かつ、暖房の措置を講ずること。

ウ 手洗等のため温水を供給する措置を講ずることが望ましいこと。

(2) 衣服等の乾燥設備

湧水のある坑内等において衣服が濡れる作業を行う場合には、衣服を乾燥するための設備の設置等の措置を講ずること。

10 保護具の支給及び使用

(1) 防振保護具

軟質の厚い防振手袋等を支給し、作業者に使用させること。

(2) 防音保護具

90dB(A)以上の騒音を伴う作業の場合には、作業者に耳栓又は耳覆いを支給し、使用させること。

11 体操の実施

作業開始時及び作業終了後に手、腕、肩、腰等の運動を主体とした体操を行うこと。なお、体操は、作業中も随時行うことが望ましいこと。

12 健康診断の実施及びその結果に基づく措置

昭和49年1月28日付け基発第45号「振動工具(チエンソー等を除く。)の取扱い等の業務に係る特殊健康診断について」、昭和50年10月20日付け基発第609号「振動工具の取扱い業務に係る特殊健康診断の実施手技について」及び昭和50年10月20日付け基発第610号「チエンソー取扱い業務に係る健康管理の推進について」の別添「チエンソー取扱い業務に係る健康管理指針」に基づき健康診断の実施及び適切な健康管理を行うこと。

13 安全衛生教育の実施

作業者を新たに振動業務に就かせ、又は作業者の取り扱う振動工具の種類を変更したときは、当該作業者に対し、振動が人体に与える影響、日振動ばく露量A(8)に基づく振動ばく露限界時間等の工具の適正な取扱い及び管理方法についての教育を行うこと。

(別紙1)

チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針対象工具

(1) ピストンによる打撃機構を有する工具(①さく岩機、②チッピングハンマー、③リベッティングハンマー、④コーキングハンマー、⑤ハンドハンマー、⑥ベビーハンマー、⑦コンクリートブレーカー、⑧スケーリングハンマー、⑨サンドランマー、⑩ピックハンマー、⑪多針タガネ、⑫オートケレン、⑬電動ハンマー)

(2) 内燃機関を内蔵する工具(可搬式のもの)(①エンジンカッター、②ブッシュクリーナー)

(3) 携帯用皮はぎ機等の回転工具((5)を除く。)(①携帯用皮はぎ機、②サンダー、③バイブレーションドリル)

(4) 携帯用タイタンパー等の振動体内蔵工具(①携帯用タイタンパー、②コンクリートバイブレーター)

(5) 携帯用研削盤、スイング研削盤その他手で保持し、又は支えて操作する型式の研削盤(使用する研削といしの直径が150mmを超えるものに限る。)

(6) 卓上用研削盤又は床上用研削盤(使用するといしの直径が150mmを超えるものに限る。)

(7) 締付工具(①インパクトレンチ)

(8) 往復動工具(①バイブレーションシャー、②ジグソー)

(別紙2)