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○治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)に関するQ&Aについて

(平成21年7月2日)

(事務連絡)

(各都道府県衛生主管部(局)薬務主管課あて厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課通知)

治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)については、平成20年7月9日付け薬食発第0709002号厚生労働省医薬食品局長通知により実施されているところですが、今般、これらの基準に係るQ&Aについて、別紙のとおりとりまとめたので、業務の参考としてください。

なお、本事務連絡の発出に伴い、「「治験薬の製造管理及び品質管理基準」及び「治験薬の製造施設の構造設備基準」(治験薬GMP)に関する質疑応答について」(平成10年3月5日付け厚生省医薬安全局監視指導課事務連絡)は廃止します。

(別紙)

治験薬GMPに関するQ&A

第1 総則

1.目的

(質問1)「治験薬の品質を保証することで、不良な治験薬から被験者を保護すること」とあるが、具体的にはどのようなことが考えられるか。

被験者が被る可能性がある製造上の過誤(滅菌などの重要工程におけるミス、汚染又は交叉汚染、混同、誤表示等)に起因する危害や、不十分な品質の原料、成分に起因する品質劣化製品による危害を未然に防止すること等である。

(質問2)「一貫性」とあるが、具体的にはどのような意味なのか。

ここでいう「一貫性(consistency)」とは、治験薬と市販後製品の共通点並びに相違点及びその因果関係が明確にされていることである。

(質問3)「同等性」とあるが、具体的にはどのような意味なのか。

ここでいう「同等性(equivalency)」とは、治験薬と市販後製品が、品質、安全性及び有効性について科学的に有意差が認められず、同等と判断しうることである。

(質問4)「一貫性」と「同等性」の保証の内容に違いがあるとされる事例とは具体的にはどのようなものか。

例えば、第Ⅰ相試験でカプセル入り原薬などが使用され、第Ⅱ相試験以降の治験製剤と比較して、用量、剤形等が異なっている場合等が考えられる。このような場合、第Ⅰ相試験のカプセル入り原薬と第Ⅱ相試験以降の治験製剤とは一貫性は求められるものの同等である必要は必ずしもない。なお、一般に後期第Ⅱ相試験以降の治験製剤は市販製剤との同等性が求められる。

なお、バイオ医薬品の同等性の考え方については、「生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の製造工程の変更にともなう同等性/同質性評価について」(平成17年4月26日付け薬食審査発第0426001号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)を参照のこと。

2.適用範囲

(質問5)治験依頼者とはどのような者をいうのか。

医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号。以下「GCP省令」という。)第2条第16項に規定する「治験の依頼をした者」をいう。この場合において、治験依頼者とは、治験薬を開発する企業の社長や治験計画届書に記載される代表者等の特定の者に限定するものではない。

なお、2.4に示すように自ら治験を実施する場合については、治験薬GMP中「治験依頼者」を「自ら治験を実施する者」に読み替えて適用する。

(質問6)2.2における「治験薬製造施設」とは、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第179号。以下「医薬品GMP」という。)でいう「製造所」と違うのか。

医薬品GMPでいう「製造所」は、薬事法(昭和35年法律第145号。以下「法」という。)に基づく製造業の許可等の規制の対象である一方、「治験薬製造施設」は、GCP省令第17条第1項及び治験薬GMP等の規制対象であり、両者を区別するために「治験薬製造施設」という用語を用いているところ。

(質問7)医薬品製造業の許可施設で治験薬を製造してもよいか。

治験薬製造施設にかかる規制を遵守していれば、差し支えない。

なお、治験薬は、開発段階によって、その毒性、薬理作用、感作性等について十分な知見が得られていない場合があるため、他の医薬品等への交叉汚染防止等9.2に定める治験薬特有の必要事項に係る措置を講じること。

(質問8)治験原薬についての取扱い如何。

医薬品GMPにおける原薬の取扱いと同様に、治験原薬については、治験薬GMPに従って、出発物質より段階的に管理し、治験薬の品質に重大な影響を与える工程以降から重点的に管理されるべきものである。なお、治験原薬の具体的な取扱いに当たっては「原薬GMPのガイドラインについて」(平成13年11月2日付け医薬発第1200号厚生労働省医薬局長通知)の別添19を参照のこと。

(質問9)治験原薬について、二以上の製造施設にわたって製造することは認められるか。

差し支えない。ただし、それぞれの製造施設が治験薬GMPの適用対象となる。

(質問10)対照薬(プラセボを含む。)を、他社から購入する場合には、それらの製造施設も治験薬GMPの適用対象となるか。

適用対象となる。

GCP省令第2条において、「「治験薬」とは、被験薬及び対照薬(治験に係るものに限る。)をいう。」とされており、また「「対照薬」とは、治験又は製造販売後臨床試験において被験薬と比較する目的で用いられる医薬品又は薬物その他の物質をいう。」とされている。

なお、市販されている製品を対照薬として使用する場合、治験薬の品質確保に支障を生じることがない限りにおいて、治験薬の製造工程(包装・表示など治験薬特有の品質確保が必要な製造工程を除く。)に医薬品GMPを適用しても差し支えない。

(質問11)海外で治験を行う予定であるが、使用する治験薬(製剤)については国内で製造し、輸出することを考えている。この場合、治験薬GMPに基づきGMP証明が発行されるのか。

治験薬GMPによるGMP証明については、「治験薬GMP証明書の発給について」(平成21年3月30日付け厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課事務連絡)に基づき証明書を発行することは可能である。

3.基本的考え方

(質問12)治験薬GMPを無視したような場合、あるいは治験薬GMPから大きく外れる状況である場合においては、何か罰則があるのか。

治験薬GMPは、臨床試験に用いられる治験薬の製造管理及び品質管理の方法や構造設備について、標準的な手法等を規定しているものであり、これと同等又はそれ以上であれば、この手法以外のものを採用することを否定するものではない。

ただし、適切な製造管理及び品質管理の方法や、必要な構造設備が担保されないと判断された場合については、GCP省令第17条(自ら治験を実施する場合は同令第26条の3)の規定に違反するものとして取り扱われる。その場合、法第80条の2において、厚生労働大臣が治験の中止又はその変更その他必要な指示を行うこと等が規定されており、また、治験依頼者に対しては、法第87条の規定に基づく罰則が適用される。さらに、当該臨床試験の試験成績を用いて承認申請を行った場合には、法第14条第3項違反となる。

(質問13)3.1において「本基準が医薬品開発の重要な期間に対して適用されることから、製品ライフサイクルを見据えた品質マネジメントの一環として活用することが望ましい」とあるが、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)Q9(品質リスクマネジメント)やICH Q10(医薬品品質システム)に準拠する必要があるのか。

ICH Q9は、医薬品の品質の様々な側面に適用できる品質リスクマネジメントの原則及び手法の具体例を示したものであり、治験薬GMPにおいては、必ずしもICH Q9への準拠を義務付けするものではない。なお、ICH Q9に示される概念は重要であり、治験依頼者として必要に応じてICH Q9を活用することは、将来の市販製品の品質の保証の上で有意義なものであると考えられる。

また、ICH Q10についても、上記とほぼ同様の考え方が適用されるものと考えられる。

(質問14)3.3において「治験薬の設計品質及び製品品質の確立の根拠」とあり、ICH Q8(製剤開発)を意図したと思われる記述があるが、ICH Q8に準拠する必要があるのか。

ICH Q8は、ICH M4(コモン・テクニカル・ドキュメント)モジュール3の適用範囲において定義されている製剤に対して、「製剤開発の経緯」の項における記載内容に関する指針を示すことを目的としており、治験薬GMPにおいては、必ずしもICH Q8への準拠が必要とされているものではない。なお、新薬開発における技術情報の集積という観点から、その原則を考慮することは重要である。3.3の規定の趣旨は、治験薬の段階での技術情報について、変更管理を行うプロセスにおいてどのように将来の市販製品の段階まで繋いで行くか、そして当該情報に係る管理手法のあり方の重要性について述べたものである。

4.定義

(質問15)クオリフィケーションとしては、どのようなものが考えられるのか。また、開発段階においてはどの程度実施すべきか。

クオリフィケーションは、その状況により、DQ(Design Qualification:設計時適格性評価)、IQ(Installation Qualification:設備据付時適格性評価)、OQ(Operational Qualification:運転時適格性評価)、PQ(Performance Qualification:性能適格性評価)の4段階に分けられるが、治験薬の製造管理及び品質管理において、何をどの程度まで実施する必要があるかについては、当該治験薬の開発状況等から求められる品質及びデータの信頼性の程度に基づいて、治験薬を開発する者が、主体的にかつ適切に判断すべきものである。

(質問16)4.8において「限定された状況」とあるが、具体的にはどのようなものか。例えば、あるロットを製造したときの、製造条件と理解してよいか。

治験薬は、その製造条件等についても未確立な状態であり、必ずしも全ての段階を通じて恒常性が求められるものではない。ある一定の期間に必要な治験薬が、一定の状態であることが確認でき、結果として当該期間における治験薬の品質が保証できればよいことから、「限定された」という表現とした。例えば、1回限りの製造を行い治験に使用する場合や、繰り返し使用の可能性がほとんどない共用設備の洗浄時の残留性の確認などを想定している。

第2 治験薬の製造管理及び品質管理

5.治験薬製造部門及び治験薬品質部門

(質問17)治験薬製造施設ごとに、治験薬製造部門と治験薬品質部門をおかなければならないこととされているが、それぞれ一名ずつでもよいか。

各部門の人数については、治験薬製造施設の規模、製造品目数等により異なると考えられることから、業務に支障がなく、各部門がそれぞれ機能している場合にあっては、一名ずつでも差し支えない。ただし、その場合であっても、品質部門の担当者は製造部門が行う業務について、客観的に評価できることが必要である。

(質問18)同一法人であるが、治験薬製造部門と治験薬品質部門が別製造施設に分散している。この場合においては、当該製造施設ごとにGMP体制を組む必要があるか。また、治験薬製造部門の要員が、同一法人の異なる研究施設で被験物質を合成するような場合、組織を二つの施設ごとに置くのではなく、同一の治験薬GMP体制での運用は可能となるか。

原則として、治験薬GMP体制は製造施設ごとに構築すること。ただし、同一法人で、各部門がそれぞれ支障なく機能し、連携が十分に図れる場合であって、複数の製造施設に組織を分けて運用することに合理的根拠がある場合においては、その限りではない。

(質問19)同一法人で、一品目の製造を複数の製造施設の製造部門で行っている場合においては、一つの治験薬製造施設として管理しても差し支えないか。

原則として、治験薬GMP体制は製造施設ごとに構築すること。設問の場合においては、前工程の治験薬製造施設は、後工程の治験薬製造施設から社内委託を受けて製造していると解釈し、全体として一つの治験薬製造体制と見なすことも可能であるが、それぞれの工程における責任を果たせるように治験薬GMP体制を組む必要がある。

(質問20)治験薬品質部門を設置する旨が規定されているが、医薬品GMPにおける「品質部門」(品質保証部門+試験検査部門)と同義であるのか、あるいは従前の「品質管理部門」を言い換えたものであるのか、どちらを意図しているのか。

医薬品GMPにおける「品質部門」(品質保証部門+試験検査部門)と同義であり、従前の「品質管理部門」のような試験検査部門だけをいうものではない。

(質問21)マイクロドーズ臨床試験のように、研究施設で治験薬を製造する場合も治験薬製造部門及び治験薬品質部門の二部門の設置は必須なのか。

両部門を設置する必要がある。なお、マイクロドーズ臨床試験としてポジトロン放出核種のような極めて短半減期の放射性物質を用いる場合等は、その特殊性を考慮して、両部門の形態は柔軟に運用して差し支えない。

(質問22)治験薬品質部門は、「原薬GMPのガイドラインについて」同様、品質保証部門及び品質管理部門に分離した形態をとることでもよいか。

治験薬製造部門から機能的に独立していれば、治験薬品質部門が、品質保証部門及び品質管理部門に分離した形態をとることは差し支えない。

(質問23)治験薬の全面委託製造を行っているため、治験依頼者たる企業としては製造行為を行っていないが、この場合においても、治験薬製造部門を設置しなければならないか。

治験薬製造部門を設置する必要はない。ただし、設問の場合においても、当該治験薬が治験薬受託製造者により適切に製造管理及び品質管理がなされたかどうかを治験依頼者において確認する必要がある。そのため、当該治験薬の出荷判定に係わる治験薬品質部門を設置して適切な管理運営を行うこと。

6.治験薬の出荷の管理

(質問24)出荷の可否を決定する者について、資格要件は必要か。

特別な資格要件は求めていないが、治験薬の製造全般について精通している必要があることから、治験並びに治験薬の製造管理及び品質管理について、十分な教育訓練を受け、知識経験を有する者であること。例えば、薬剤師又は旧制大学、旧専門学校、大学若しくは高等専門学校において薬学、医学、歯学、獣医学、農学、理学若しくは工学に関する専門の課程を修了した者等が考えられる。

(質問25)「あらかじめ指定した者」は治験薬ごとに複数おいてもよいか。また、自社で規定した上で「治験薬品質管理者」という名称を用いてよいか。

差し支えないが、それぞれの者の業務の責任、権限等の体制をあらかじめ規定しておくこと。なお、この場合、自社で規定した「治験薬品質管理者」は「治験薬の製造管理及び品質管理基準及び治験薬の製造施設の構造設備基準(治験薬GMP)について」(平成9年3月31日付け薬発第480号厚生省薬務局長通知)で規定した治験薬品質管理者とは定義が異なることに留意すること。

(質問26)海外の治験薬受託製造施設において包装まで済ませ、製造作業が完了している治験薬を国内GCP部門が直接輸入することは可能か。また、その際に割付も終了した状態で輸入し、そのまま治験に供する場合、治験依頼者はあらかじめ指定した者に国内における出荷の可否の決定をさせなくともよいか。

海外の治験薬受託製造施設で包装を済ませた治験薬のうち、当該施設において治験薬GMPに規定する出荷の可否の決定が完了している場合にあっては、割付の有無にかかわらず、当該治験薬を国内GCP部門が直接輸入することは差し支えなく、また、重ねて出荷の可否を決定しなくともよい。ただし、GCP省令の規定にのっとり、当該治験薬製造に当たっての受託製造者の製造管理及び品質管理に問題のないことを治験依頼者の責任により確認しておく必要がある。

7.治験薬に関する文書

(質問27)従来「治験薬製品標準書」と称していた文書をそのまま使用することはできるか。また、「治験薬製品標準書」という名称で今後も引き続き設定してよいか。

開発段階は、治験薬に関する各種事項を標準化することを目的としている段階であることから、その時点で収集された当該治験薬の品質情報について取りまとめた文書の名称を「治験薬製品標準書」でなく「治験薬に関する文書」としたところである。よって、その内容は従来の治験薬製品標準書に相当するものであり、治験を実施するに当たって必要な文書が作成される限りにおいては、治験依頼者たる企業の内部において従来の治験薬製品標準書の名称をそのまま用いることについては差し支えない。

(質問28)治験依頼者が、治験薬に関する文書において記載すべき製造工程・製造手順の記載範囲はどのように考えるべきか。

原則として、原薬から製剤、包装までの一連の製造工程とその手順を記載することが望ましいが、例えば、原薬等の提供業者から必要な情報を得られない場合は、元情報の所在と入手困難な理由を付けた上で、入手可能な情報に限定して記載を行っても差し支えない。また、原薬等登録原簿に登録されている場合においては、その登録番号の記載をもって製造手順の記載とすることで差し支えない。

ただし、自らが行う製造工程又は自らの責任により製造工程の全部若しくは一部を委託製造する場合は、当該製造工程の手順を記載すること。なお、まだ開発候補として絞り込まれていない早期探索的段階における治験薬に関する文書については、実施される臨床試験の目的に見合った記載内容とすることで差し支えない。

(質問29)対照薬を除く治験薬を製造しており、自らが治験依頼者とならない場合、治験薬製造者として、治験薬に関する文書に記載すべき製造工程・製造手順の記載範囲についてどのように考えればよいか。

治験依頼者からの委託の有無に関わらず、治験薬製造者が自ら行う製造工程に係る事項のみを記載することで差し支えない。なお、受託製造の場合は、20.3において、「治験薬受託製造者が自ら行う製造工程に係る事項のみを記載することをもって足りるものとする。」としている。

(質問30)対照薬については、治験薬に関する文書に何を記載すべきか。

包装・表示工程に係る製造手順に加えて、成分、分量、規格及び試験方法、製造手順、その他必要な事項について、可能な範囲で入手した情報を記載すること。

(質問31)対照薬について、他社又は市場から入手した場合、成分、分量、規格及び試験方法等の記載は困難であるが、何を行うべきか。

対照薬を他社又は市場等から入手する場合であっても、受入れ試験のための規格及び試験方法等に関する事項について記載することが必要である。また、入手元から可能な範囲で入手した情報を記載すること。

(質問32)治験薬に関する文書には、記載すべき事項が数多くあるが、検索できるようになっていれば分冊管理してもよいか。

例えば、治験薬に関する文書にその索引や整理番号などが記入されており、容易に目的とする事項が検索できるようになっている場合においては、別冊にまとめて管理してもよい。

(質問33)治験薬に関する文書に「治験の概要」を記載する必要があるか。

必ずしも記載する必要はないが、当該治験薬がどのような臨床試験に使用されるかの確認を行う場合などに活用可能であることから、可能であれば記載することが望ましい。当該事項の記載に当たっては、臨床試験の段階、治験のデザイン、対象疾患、用法・用量等、当該治験薬の使用目的を簡潔に記載することで差し支えない。なお、GCP省令第7条の治験実施計画書及び第8条の治験薬概要書を準用することも可能である。

(質問34)治験薬に関する文書に記載する製造手順や規格及び試験方法について、治験の進行に伴い若干の変更がある場合は、その都度改訂せず、製品のロットごとの製造手順や規格及び試験方法についてそれぞれ変更点がわかるように記録し、その記録を保管しておくことでよいか。

製造手順や規格及び試験方法について変更する際には、事前に改訂が必要である。ただし、治験薬に関する文書に、当該治験薬の製造規模の変更等に伴い選択されうる複数の製造方法を事前に記載しておくことは差し支えない。この場合には、製造の記録に、実際に行った製造方法を記載しておくこと。

(質問35)一つの治験で含量が異なる治験薬を用いる場合、治験薬に関する文書等は一冊の文書として管理してよいか。

各々について必要な事項が適切に記載されており、また、改訂等の作業に支障を生じない限りにおいては差し支えない。

8.手順書等

(質問36)海外で行う工程又は試験の手順に関する文書等は分冊とし、海外の製造施設に保管することでよいか。

分冊管理を行うことで差し支えない。ただし、必要な場合には、速やかに閲覧・確認できる体制をとること。

(質問37)治験薬製造を短期に1回のみ外部機関へ委託する場合等において、治験薬の製造が終了した時点で手順書等を製造施設より回収又は廃棄してもよいか。

手順書等は、当該治験薬製造施設における品質管理及び製造管理で必要とされる期間、8.5の規定に基づき治験薬製造施設に備え付ける必要がある。また、文書及び記録の保管に係る業務については、20.1.7の規定に基づき治験依頼者と治験薬受託製造者との間で取り決めることとなる。設問のような場合についても、上記の点を踏まえつつ、手順書等の製造施設からの回収及びその保管について治験依頼者と治験薬受託製造者との間で適切に取決めを行うこと。なお、治験依頼者は手順書等を回収した場合であっても、19.の文書及び記録の管理の規定に基づき、回収した文書及び記録を適切に保管し、廃棄はしないこと。

9.治験薬の製造管理

(質問38)9.1.6において「構造設備の清浄を確認し」とあるが、その基準の設定に当たってはどのような点に注意すべきか。

基準を設定するに当たっては、製造施設において治験薬や他の医薬品等の品質に悪影響を与えないことを確認するため、当該製造施設の構造設備等を十分把握した上で、必ず洗浄等に係るベリフィケーションを実施するとともに、必要な場合にはバリデーションを実施する必要がある。特に新有効成分である原薬を取扱う場合においては、安全性の担保がなされていないこと、また、高活性を有する可能性があることについても十分留意する必要がある。

10.治験薬の品質管理

(質問39)10.1.1において、原料及び治験薬についてはロットごとに、資材については管理単位ごとに試験検査を行うこととされているが、局方等の公定書に定められた原料及び資材の受入れ試験については、「外観検査及び製造業者の検査成績書の確認」のみでよいか。

公定書収載品に限らず、原料及び資材の試験検査については、治験薬に関する文書等に定めた全項目を実施する必要がある。ただし、「GMP/QMS事例集(2006年版)について」(平成18年10月13日付け厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課事務連絡)の別添中〔問〕GMP11―7においては、原料及び資材の試験検査について、一部の試験検査項目の試験検査を省略又は簡略化しても当該医薬品の品質確保に影響を及ぼさないことを示す合理的な根拠があり、その旨が製品標準書等に明記されている場合には、当該項目の試験検査を省略又は簡略化して差し支えないこととされており、治験薬GMPにおいても同様の取扱いをすることは差し支えない。

(質問40)10.1.2について、委託製造の場合には、受託製造者の製造した中間品の受入れ検査は受託製造者の実施した試験検査の成績書の確認でよいか。

中間製品の試験検査については、委託者は治験薬に関する文書等に定めた全項目を実施する必要がある。ただし、受託製造者が実施した試験検査成績を利用しても、自らが製造しようとする治験薬の品質確保に影響を及ぼさないことを示す合理的な根拠があり、その旨が治験薬に関する文書等に明記されている場合には、委託者は受託製造者が実施した試験検査成績を、自らの製造における品質管理に係る試験検査の一部として自らの責任において利用して差し支えない。

(質問41)10.1.2について、市販製剤(対照薬)は、有効期限内であれば品質が保証されているのは当然であるため、受入試験としては有効期限の確認のみでよいか。

市販製剤(対照薬)であっても、市販の包装のまま使用することは想定しがたく、包装等を変更すれば、その安定性が変化する可能性があると考えられる。包装変更を行った場合の有効期限の根拠は必要であり、それに伴う規格及び試験方法を設定する必要がある。個々の事例に応じて、適切な規格及び試験方法を設定すること。

(質問42)10.1.5に示された製造工程の全部又は一部を他の者に委託する場合には、「当該治験薬受託製造者の治験薬製造施設の製造管理及び品質管理が適切に行われていることを確認すること。」とされているが、この確認は立入により行わなければならないのか。

確認の方法としては立入のみではなく、受託者の治験薬品質部門から必要な記録類等を入手するなど、必要な事項が適切に確認できる方法でも行うことができる。ただし、どのような方法をとった場合であっても、確認の結果についての責任は委託者が負うこと。

(質問43)海外の治験薬製造施設が我が国の治験薬GMPに準拠していることをどのように確認すればよいか。

治験依頼者の責任において、実地又は記録若しくは文書等の書面により確認すること。

(質問44)10.1.7において「安定性が極めて悪い治験薬」とあるが、具体的にはどのようなものがあるのか。

例えば、ポジトロン放出核種放射性標識体のような放射性半減期が極めて短いものが考えられる。このようなマイクロドーズ臨床試験等に用いられる放射性治験薬等安定性が極めて悪い治験薬の品質保証については、その特性に合わせて科学的根拠に基づき実施すること。

(質問45)10.1.7における「品質を保証する」には、治験薬として出荷可否判定後に治験実施施設に出荷された後(例えば、治験実施施設での保管等)も対象として含まれるのか。

含まれる。なお、治験依頼者は、GCP省令第16条に基づき管理に関する手順書や取扱方法を説明した文書を作成し、あらかじめ治験実施施設に交付するなどの対応をとる必要がある。

(質問46)10.1.8に規定する参考品の保存について、保存条件等はどのようにすればよいか。

原則として出荷時の形態で、通常の治験薬における保存条件等と同じ条件で保存することでよい。

(質問47)10.1.8に規定する参考品の保存について、「治験薬の性質上その保存が著しく困難であるもの」とは、分解や変質等の経時的な変化により試験検査に供することができなくなるものをいうと考えてよいか。

差し支えない。

(質問48)海外の製造施設で治験薬を製造する場合、参考品は、海外の製造施設で保管してもよいか。

差し支えない。ただし、海外の製造施設で参考品が適正に保管され、必要な場合には速やかに試験検査等に使用できるようにしておくこと。

(質問49)10.1.11において「他の試験検査設備又は試験検査機関(以下「外部試験検査機関等」という。)を利用して実施する」とは、自社の職員に、外部試験検査機関等を利用させ試験検査を行わせることを指すのか。

自社の職員に行わせる場合に加え、外部試験検査機関等の職員に行わせる場合も含む。なお、いずれの場合にあっても、記録の作成及び保管に加えて、試験検査が11.の規定に従い適切に行われることを確保すること。

12.バリデーション及びベリフィケーション

(質問50)治験薬の製造において、バリデーションが必要とされた場合、実薬を用いた3ロットの確認が必要か。

開発段階であることから、製造ロット数が少ない場合や製造方法が確立していない場合等においては、通常、当該ロットのみを科学的に確認するベリフィケーションの実施が適切であると考えられる。また、バリデーションの実施が必要な場合においても、製造実態等を踏まえ、その目的が達せられる限りにおいて、必ずしも実薬を含み又は3ロットの確認を繰り返す必要はない。

(質問51)治験薬のバリデーションの対象項目及びベリフィケーションの対象項目として、どのようなものがあるか。

バリデーションの対象項目としては、例えば、分析法、コンピュータシステム、無菌性保証等が、ベリフィケーションの対象項目としては、例えば、交叉汚染防止のための洗浄、使用する原材料の感染性因子を否定すること等が考えられる。

13.変更の管理

(質問52)治験薬の変更管理に際して、品質のほか、安全性や有効性についての評価が必要な場合はあるか。

例えば、製造手順の変更により未知の不純物が発生したような場合、溶媒を変更したことにより残留溶媒や結晶形に懸念が持たれるような場合等には、その品質について変更前後の同等性を評価するだけでなく、必要に応じて安全性や有効性への影響がないことを確認する必要がある。

14.逸脱の管理

(質問53)治験薬の逸脱管理は、承認後の医薬品における逸脱管理と違うのか。また、どの程度行えばよいか。

基本的に相違はないが、治験薬は、あくまで開発段階であることから、信頼できる規格や逸脱と判断するための基準が確立されているわけではなく、逸脱が品質に及ぼす影響の評価が困難である場合があると考えられる。したがって、原則として全ての逸脱に対して、その原因究明を行うと共に、それまでに集積した品質情報を基に、逸脱が品質に影響を及ぼす可能性を考慮した上で、可能な限り逸脱に係るロットの品質を評価する必要がある。

なお、こうした逸脱に関する一連の事実については全て文書により記録した上で、関連する安全性試験や臨床試験との関係を明確にすることが重要であり、また、逸脱管理を通じて行われた改善・改良については、適切に設計品質及び製品品質の確立に結び付けることが重要である。

(質問54)14.1.1における「製造手順等からの逸脱」について、規格内異常値(out of trend)や期待値からの外れ(out of expectation)は逸脱の管理に含まれるのか。

規格内異常値は含まれない。期待値からの外れについては、当該期待値を管理値として設定しているのであれば含まれる。

(質問55)14.1.2における重大な逸脱とはなにか。

一義的には、品質に大きな影響を及ぼす事項と考えられるが、単に品質に対する影響のみならず、規制遵守の観点からの逸脱もあり得ることから、事前に治験依頼者として重大な逸脱に関する基準を作成し、それに鑑みて対応する必要がある。

15.品質等に関する情報及び品質不良等の処理

(質問56)15.1において、「治験薬に係る品質等に関する情報」とあるが、治験薬の品質不良以外にどのような品質に関する情報が想定されるか。

基本的には医薬品GMPにおける考え方と同じである。例えば、臨床試験実施施設、原料供給業者、製造委託先、外部試験検査機関などから入手した品質に係る情報、場合によっては品質に影響を及ぼすことが懸念される有効性や安全性に係る情報も含まれる。

16.回収処理

(質問57)16.1.2において、「回収した治験薬を区分して一定期間保管した後、適切に処理すること」とあるが、ここでいう「一定期間保管」とは、回収の記録と同様に、承認を受ける日までの保管を意味しているのか。

回収した治験薬が治験の成績に影響を及ぼさないことが明らかな場合を除き、回収処理記録と同一の期間、保管することである。

17.自己点検

(質問58)17.1.1において、「適切な自己点検を行うこと」とあるが、ここで言う「適切な」とはどういった内容を意味するのか。

治験薬の製造は、安全性試験や臨床試験に連動して行われるものである。このため、自己点検については開発の進捗等に連動した計画をあらかじめ策定し、実施すると共に、開発状況の変更に応じ、必要が生じた場合には適切に実施すること。

(質問59)治験薬の自己点検としては、どのようなことを行えばよいか。

例えば、製造ロット毎の原料から最終品までの製造及び試験検査に関する計画書/報告書・記録等の照査、設備・機器・環境等の計画書/報告書・記録等の照査などが挙げられる。なお、形式的な点検にならないよう、実効性のある自己点検を行うことが重要である。

18.教育訓練

(質問60)18.1.1において「計画的に実施すること」とあるが、ここで言う「計画的に」とは“定期的に”という意味か。

治験薬の製造は、医薬品の製造と異なり必ずしも定型的作業ではないことから、定期的な教育訓練だけで十分とは言い難い。ここで言う「計画的に」とは、例えば、あらかじめ体系的に構築された教育訓練を、作業開始前や製造工程の変更時等に適時適切に行うことと理解されたい。なお、治験薬GMPに関する一般的な教育等については、認識の徹底や共有化の意味合いもあることから、一定程度定期的に実施することが望ましい。

19.文書及び記録の管理

(質問61)8.において、治験薬製造施設ごとに手順書等を作成し、これを保管しなければならないこととされているが、複数の製造施設(例えば治験用原薬と治験薬(製剤)の製造施設)を自社で有し、基本的な部分の手順の内容が社内で共通化されている場合(例えば、バリデーションの考え方、回収処理の手順等)、当該手順を各々の製造施設で作成するのは合理的でないと思われる。そのような手順については、いずれかの製造施設で手順書等を作成、保管し、他方の製造施設には手順書等の写しを配布して保管することで差し支えないか。

写しを使用することは差し支えないが、必ず治験薬製造施設ごとに手順書等を承認し、その記録を保管することが必要である。

(質問62)生物由来製品であることが見込まれる治験薬に関する製造及び品質に関する記録は、医薬品GMPにおける生物由来医薬品等の規定に合わせて、相応の保存期間を設定してもよいか。

19.1.3は最低保管すべき期間を示したものである。生物由来製品であることが見込まれる治験薬については、生物由来製品に係る薬事法の規定を踏まえ、適切な期間保管されたい。

20.委託製造

(質問63)治験原薬製造業者は、自らが治験依頼者とならない場合には、受託製造者に該当すると考えてよいか。

貴見のとおり。なお、治験原薬製造業者が、自らが製造する治験原薬について他社に製剤化させたうえで治験の依頼をする場合には、当該原薬製造業者は治験依頼者となり、製剤化工程が本項でいう委託製造に当たる。

(質問64)海外で製造された治験薬を用いて日本国内で治験を実施する場合、海外の治験薬製造施設は治験薬受託製造者となるか。

海外の治験薬製造施設も対象に含まれるため、設問のような場合は、海外の治験薬製造施設も治験薬受託製造者に含まれる。なお、海外の治験薬製造施設が我が国の治験薬GMPに準拠しているかどうかは、自らの責任において、実地又は記録や文書等の書面により確認する必要がある。

(質問65)ポジトロン放出核種放射性標識体を治験実施機関に委託して製造する場合においても、治験薬GMP2.~19.が適用されるのか。特に、5.で規定している治験薬製造部門及び治験薬品質部門の二部門の設置は必須なのか。

半減期の極めて短いポジトロン放出核種放射性標識体を治験実施機関に委託して製造する場合も、可能な限り、治験薬GMP2.~19.を適用することとなる。なお、本Q&Aの質問21及びその回答にも示したように、自社内製造か外部委託製造かに関わらず、部門の形態については、その特殊性を考慮して柔軟に運用して差し支えない。

21.治験薬の製造施設の構造設備

(質問66)医薬品製造業の許可施設で治験薬を製造しても差し支えないとのことだが、この場合、医薬品の製造設備を用いて治験薬を製造してもよいか。

差し支えない。なお、治験薬は、開発段階によっては、その毒性、薬理作用、感作性等について十分な知見が得られていない場合が想定されるため、他の医薬品への交叉汚染防止等9.2に定める治験薬特有の必要事項に係る措置を講じること。

(質問67)治験薬を、他社の製造施設を借りて自ら製造することは認められるか。

差し支えない。ただし、製造期間中の製造施設の管理を含め、治験薬GMPの各項目への遵守については、治験依頼者の責任の下適切に実施できる体制をとるとともに、他の医薬品等への交叉汚染防止等9.2に定める治験薬特有の必要事項に係る措置を講じること。