添付一覧
4.手法の適合性試験
次に述べる変更点以外は,「5.製品の無菌試験」の項に示した方法と,厳密に同じ方法で試験を行う.
メンブランフィルター法
試験に供された容器の内容物をろ過した後,最終回の洗浄液に試験用菌株を100CFU以下加えたものをろ過する.
直接法
試験に供された容器の内容物を培地に加えた後,試験用菌株100CFU以下をその培地に接種する.
どちらの接種方法においても,「好気性菌,嫌気性菌及び真菌に対する培地性能試験」の項で示した菌株を用いる.陽性対照として培地性能試験を行う.培地を含むすべての容器は規定の温度で最長5日間培養する.
培養後,陽性対照に匹敵する肉眼的に明瞭な増殖が得られれば,被検製品は本試験条件下で抗菌活性を持たないか,又は抗菌活性が十分に除去されたものとみなす.当該手法は適切であり,試験条件を変更する必要はない.
被験製品の存在下で陽性対照に匹敵する肉眼的に明瞭な増殖が得られなければ,被験製品は当該試験条件下では十分除去できない抗菌活性を有している.この場合,抗菌活性を除去するために条件を変えて手法の適合性試験を繰り返す.
手法の適合性試験を行うのは,新しい製品に無菌試験を行う場合及び試験の実施条件に変更があった場合である.
手法の適合性試験は被検製品の無菌試験と同時に行うこともできる.
5.製品の無菌試験
5.1.一般要件
試験はメンブランフィルター法又は直接法によって行われる.試験には適切な陰性対照を置くこと.メンブランフィルター法は,ろ過可能な製品に適用する.例えば,ろ過可能な水性,アルコール性又は油性の製品及び本試験条件下で抗菌力を有しない水性又は油性の溶剤に混和若しくは溶解する製品に対して用いる.
5.2.メンブランフィルター法
メンブランフィルターは,微生物の捕集効率が確立されている公称孔径が0.45μm以下のものを用いる.例えば,水溶性,油性又は低濃度のアルコール性溶液にはセルロースナイトレートフィルターを用い,高濃度のアルコール性溶液にはセルロースアセテートフィルターを用いる.抗生物質のような医薬品には,別途適切なフィルターが必要な場合もある.
次に示す手法は,直径約50mmのメンブランフィルターの使用を想定している.もし異なる直径のフィルターを用いる場合には,希釈及び洗浄液の容量はそれに応じて調製すべきである.ろ過器やメンブランフィルターは適切な方法で滅菌する.ろ過装置は,無菌条件下で被検溶液を導入・ろ過でき,メンブランフィルターの無菌的取りはずしと培地への移植ができるか,又はろ過器そのものに培地を加えて培養するのに適するように設計されていなければならない.
水性液剤
1g/Lの肉製又はカゼイン製ペプトン溶液(pH7.1±0.2)のような無菌希釈液の少量をろ過器中のメンブランフィルター上に注ぎろ過する.希釈液には,例えば抗生物質が試験対象の場合には,適切な中和剤や不活化剤を加えることができる.
試験すべき容器の内容物を必要なら手法の適合性試験で選んだ無菌希釈液の量で希釈後,表4.06―2に示した量より少なくならないように,1枚又は複数のメンブランフィルター上に移し,直ちにろ過する.当該製品が抗菌活性を有している場合には,手法の適合性試験で用いた無菌希釈液の量でメンブランフィルターを3回以上洗浄する.手法の適合性試験において抗菌活性を十分に除去できないことが立証されていても,メンブランフィルター当たり100mLの洗浄液で5回を超えては洗浄しないこと.メンブランフィルターをろ過器から外し,半分に切断するか,あらかじめ試料溶液を二等分し,それぞれにつき同一のろ過操作を行うことによって得られた2枚のメンブランフィルターをそれぞれの培地に入れる.各培地の量は,手法の適合性試験で確立した量を用いる.又はメンブランフィルターを装着したろ過器内に試料溶液を二等分にろ過後,それぞれの培地を加える.培地を14日間以上培養する.
水溶性固形剤
各培地に対し,表4.06―2に規定する量以上を用いる.添付の溶剤,注射用水,生理食塩液又は1g/L肉製若しくはカゼイン製ペプトン中性溶液のような適切な溶剤に溶解し,選んだ溶剤に適したメンブランフィルターを用いて「水性液剤」の項に示したように試験を行う.
油及び油性液剤
各培地に対し,表4.06―2に規定する量以上を用いる.粘度の低い油及び油性液剤は,希釈せずに乾いたメンブランフィルターでろ過する.粘稠性の油は,当該試験条件下で抗菌性がないことが立証されたミリスチン酸イソプロピルのような適切な無菌溶剤で希釈できる.油が自重によりメンブランフィルターに浸透した後,徐々に加圧又は吸引することによってろ過する.手法の適合性試験で適切であることが証明されている濃度の適切な乳化剤(例えば10g/Lポリソルベート80)を含む1g/L肉製又はカゼイン製ペプトン中性溶液のような適切な無菌溶液を用い,メンブランフィルター当たり約100mLずつで少なくとも3回洗浄する.「水性液剤」の項に示したようにメンブランフィルターを培地に移す,又はろ過器に培地を加え,同じ温度で同じ期間培養する.
軟膏剤及びクリーム
各培地に対し,表4.06―2に規定する量以上を用いる.脂肪基剤の軟膏剤や油中水型の乳剤は上述のようにミリスチン酸イソプロピルで1%に希釈する.必要ならば40℃以下で加温する.例外的な場合で44℃以下までの加温が必要なこともある.できるだけ迅速にろ過した後,「油及び油性液剤」の項に示したように操作を進める.
表4.06―2 各培地当たりの最少試料採取量
容器の内容量 |
他に規定されていない限りそれぞれの培地に接種する最少量 |
液剤 |
|
1mL未満 |
全量 |
1mL以上40mL以下 |
半量,ただし1mL以上 |
40mL超100mL以下 |
20mL |
100mL超 |
10%,ただし20mL以上 |
抗生物質の液剤 |
1mL |
懸濁又は乳化して用いる非水溶性医薬品,クリーム又は軟膏剤 |
200mg以上 |
固形剤 |
|
50mg未満 |
全量 |
50mg以上300mg未満 |
半量,ただし50mg以上 |
300mg以上5g以下 |
150mg |
5g超 |
500mg |
5.3.直接法
別に規定するほか,表4.06―2に示す量の製品を,その容量が培地容量の10%を超えないように培地に直接接種する.被検製品が抗菌活性を有する場合は,適切な中和剤で中和した後に,又は十分な量の培地で希釈することによって試験を行う.大容量の製品を使用する必要があるとき,接種による希釈影響を考慮に入れて高濃度の培地を用いる方が好ましい場合もある.適切な場合は,高濃度培地を容器内の製品に直接加えることも可能である.
油性液剤
手法の適合性試験において適切であることが証明された適切な乳化剤を適切な濃度に加えた(例えば10g/Lポリソルベート80)培地を用いる.
軟膏剤及びクリーム
1g/L肉製又はカゼイン製ペプトン中性溶液のような適切な無菌希釈液中で,選択された乳化剤で乳化することにより約1:10に希釈する.この希釈物を乳化剤を含まない培地に移植する.
接種した培地は14日間以上培養する.培養を培養期間中に数回観察する.油性製品を含む培養は毎日穏やかに振る.ただし,嫌気性菌の検出のために液状チオグリコール酸培地を用いている場合は,嫌気条件を維持するために振とうや混合は最小限に保つ.
6.観察と結果の判定
培養期間中及び最終日に,培地に肉眼的な微生物の増殖があるかどうかを調べる.被検材料が培地を混濁させ,微生物増殖の有無を肉眼的に容易に判定できない場合には,培養開始から14日後に当該培地の一部(1mL以上)を同じ培地の新たな容器に移し,元の培地と移植した培地の両方を4日間以上培養する.
微生物の増殖が観察されない場合は,被検製品は無菌試験に適合する.微生物の増殖が観察された場合は,当該被検製品に無関係な原因により試験が無効であったことを明確に証明できなければ,被検製品は無菌試験に適合しない.以下の条件のうち一つ以上を満たした場合のみ当該試験は無効と考えられる.
a) 無菌試験施設の微生物学的モニタリングデータに問題が認められた場合
b) 無菌試験中に用いた試験方法を調査した結果,問題が認められた場合
c) 陰性対照中に微生物の増殖が認められた場合
d) 当該無菌試験から分離された微生物の同定後,この菌種の増殖が無菌試験実施中に用いた材料及び手技又はそのいずれかに問題があると明らかに判断される場合
試験が無効であることが判明したら,初回試験と同じ数の容器を用いて再試験を行う.再試験において微生物の増殖が観察されない場合は,被検製品は無菌試験に適合する.再試験において微生物の増殖が観察された場合には,被検製品は無菌試験に適合しない.
7.無菌試験への適合が要求される注射剤及び眼軟膏剤,点眼剤等の非注射剤への試験の適用
メンブランフィルター法を用いる場合は,可能ならいつでも容器内の全量を用いる.ただし,表4.06―2に示す量以上を用いる.必要ならば1g/L肉製又はカゼイン製ペプトン中性溶液のような適切な無菌溶液で約100mLになるよう希釈する.
直接法を用いる場合は,他に規定されていなければ表4.06―2に示す量を用いる.被検製品の同じ試料について細菌及び真菌に対する無菌試験を行う.1容器中の内容量が両試験を行うのに不十分な場合は,異なる培地に接種するのに2容器以上の内容物を用いる.
8.最少供試個数
最少供試個数は,ロット当たりの製造個数に応じて,表4.06―3に示す個数を用いる.
表4.06―3最少供試個数
ロット当たりの製造個数* |
他に規定されていない限り,それぞれの培地当たりの最少試験個数** |
注射剤 |
|
100容器以下 |
10%又は4容器のうち多い方 |
101容器以上500容器以下 |
10容器 |
501容器以上 |
2%又は20容器(大容量製剤の場合は,10容器)のうち少ない方 |
眼軟膏剤,点眼剤等の非注射剤 |
|
200容器以下 |
5%又は2容器のうち多い方 |
201容器以上 |
10容器 |
単回使用製品の場合は,上欄の注射剤についての規定を適用する |
|
固形バルク製品 |
|
4容器以下 |
各容器 |
5容器以上50容器以下 |
20%又は4容器のうち多い方 |
51容器以上 |
2%又は10容器のうち多い方 |
* ロット当たりの製造個数が不明の場合には,本欄に示した最大数を用いること.
** 1容器の内容量が二つの培地に接種するのに十分な場合は,本欄は両培地合わせて必要な供試容器数を示す.
6.09 崩壊試験法
装置の項の補助板を次のように改める.
装置
―略―
補助盤 補助盤は,各条にその使用が規定されている場合にのみ,各ガラス管に入れて使用できる.補助盤は,高さ9.5±0.15mm,直径20.7±0.15mmの円柱状で,比重1.18~1.20の透明なプラスチックからなる.補助盤には,盤の上下を垂直に貫く直径2±0.1mmの孔が五つ平行に開いており,一つは補助盤の中心に,他の四つは中心から6±0.2mmの距離にそれぞれ等間隔に開いている.補助盤の側面には,盤面とほぼ直角に,同一の台形状の切り込みが4つ等間隔にある.台形は対称形で,上下の平行線は,中心軸から6mmにある隣接した2つの孔を結ぶ線と平行に位置している.台形の平行線の下線部は長さ1.6±0.1mmで円周部から深さ1.5~1.8mmの位置にあり,上線部は長さ9.4±0.2mmで深さ2.6±0.1mmの位置にある.補助盤は図6.09―1の規格に適合するもので,表面はすべて滑らかである.補助盤の使用が規定されている場合は,それぞれのガラス管に1個の補助盤を入れ,操作法に従い試験する.なお,崩壊を自動的に検出する目的で,加工した特殊な補助盤を用いる場合,その補助盤の比重,サイズは規格に適合するものでなければならない.また,それが使用できるのは各条で規定されている場合に限られる.
図6.09―1
6.10 溶出試験法
操作の項の即放性製剤の試験液を次のように改める.
操作
回転バスケット法及びパドル法
即放性製剤
操作:規定された容器に規定された容量(±1%)の試験液を入れ,装置にセットする.試験液を37±0.5℃に保ち,温度計を取り除く.試料の表面に気泡が付かないように注意しながら各容器に試料を入れ,直ちに規定された回転速度で装置を作動させる.規定された間隔で又は規定された時間に,試験液の上面と回転バスケット又はパドルの攪拌翼の上面との中間で容器壁から10mm以上離れた位置から,試験液を採取する.(注:複数回の試験液の採取が規定されている試験では,採取された量と等しい容量の37℃の試験液を補充するか又は試験液の補充が必要ない場合には計算するときに容量変化を補正する.試験中,容器にはふたをし,適度な間隔で容器内の試験液の温度を確認する.)指示された分析法を用いて溶出した有効成分量を測定する3.他の試料についても同様の操作を行う.
試験液の採取が自動化された装置を用いるか若しくは装置に手を加えて変更する場合には,それらの装置が一般試験法に示されている標準的な装置を用いて得た結果と同等の結果が得られることを確認しなければならない.
試験液:適切な試験液を用いる.規定された液量は,20~25℃での計量値に相当する.試験液が緩衝液の場合,pHを規定値の±0.05以内となるように調整する.(注:試験液に溶存している気体は気泡の原因となることがあり,試験結果に影響を与えることがある.溶存している気体が溶出試験結果に影響を及ぼす場合には,試験の前に脱気する4.)
試験時間:1時点での測定が規定されているときは,規定された溶出率に達した場合には,その時間より早く試験を終了することができる.それ以外では,規定された時間の±2%以内で試験液を採取する.