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Ⅱ.非無菌製品の微生物学的試験:特定微生物試験

本試験法は,三薬局方での調和合意に基づき規定した試験法である.

1.序文

本試験は,規定の条件下で検出可能な特定微生物が存在しないか,又はその存在が限られているかを判定する方法である.

本試験は,原料や製剤が既定の微生物学的品質規格に適合するか否かを判定することを主目的にしたものである.採取試料数も含めて指示通りに試験を実施し,結果を判定する.

局方試験法との同等性が示されている場合は,自動化法を含む別の微生物学的方法を用いてもよい.

2.基本手順

試料の調製は,「生菌数試験」に記載されているとおりに行う.

被験製品が抗菌活性を有する場合は,「生菌数試験」に記載されているように可能な限りこの抗菌活性を除去又は中和する.

試料の調製に界面活性剤を使用する場合は,「生菌数試験」に記載されているように,微生物に対する毒性がないこと,及び用いる不活化剤との間に相互作用がないことを確認する.

3.培地性能,試験の適合性及び陰性対照

被験製品存在下においても微生物を検出する能力があることを確認する.また,試験結果に影響を及ぼすような試験法の変更や製品の処方変更があった場合には,再度,適合性を確認する.

3.1.試験菌の調製

試験菌は標準化された安定な懸濁液を使用するか,又は次に示す手順で調製する.

なお,試験に用いる微生物は,最初のマスターシードロットからの継代数5回を超えないように,シードロット培養管理手法(シードロットシステム)を用いて管理する.

3.1.1.好気性微生物

各細菌試験用菌株を,ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地中,又はソイビーン・カゼイン・ダイジェストカンテン培地上で,それぞれ30~35℃で18~24時間培養する.カンジダ・アルビカンス用の試験菌株は,サブロー・ブドウ糖カンテン培地上,又はサブロー・ブドウ糖液体培地中で,それぞれ20~25℃で2~3日間培養する.

Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌):例えば,ATCC6538,NCIMB9518,CIP4.83又はNBRC13276,

Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌):例えば,ATCC9027,NCIMB8626,CIP82.118又はNBRC13275,

Escherichia coli(大腸菌):例えば,ATCC8739,NCIMB8545,CIP53.126又はNBRC3972,

Salmonella enterica subsp.enterica serovar Typhimurium(サルモネラ):例えば,ATCC14028

又は代替として

Salmonella enterica subsp.enterica serovar Abony(サルモネラ):例えば,NBRC100797,NCTC6017又はCIP80.39,

Candida albicans(カンジダ・アルビカンス):例えば,ATCC10231,NCPF3179,IP48.72又はNBRC1594

試験菌懸濁液の調製には,pH7.0のペプトン・食塩緩衝液又はpH7.2のリン酸緩衝液を用いる.懸濁液は2時間以内,又は2~8℃に保存する場合は24時間以内に用いる.

3.1.2.クロストリジア

Clostridium sporogenes:例えばATCC11437(NBRC14293,NCIMB12343,CIP100651)又はATCC19404(NCTC532又はCIP79.3)を用いる.クロストリジアの試験菌株を強化クロストリジア培地中に接種し,30~35℃で24~48時間嫌気的条件下で培養する.Cl.sporogenesの栄養型細胞の新鮮懸濁液を調製して希釈する代わりに,芽胞懸濁液を接種菌液として使用できる.芽胞懸濁液は,保証された期間内は2~8℃で保存できる.

3.2.陰性対照

試験状態を確認するために,試料液の代わりに使用した希釈液を用いて陰性対照試験を実施する.微生物の発育があってはならない.微生物の発育が認められた場合には,原因調査が必要である.また,陰性対照試験は4.に記載の製品の試験においても実施する.

3.3.培地の性能試験

市販生培地についてはバッチごとに試験する.また,乾燥培地又は成分から調製した培地については,調製バッチごとに試験する.

表4.05―Ⅱ―1に記載したように,関連培地について適切な特性を確認する.

発育促進特性試験,液体培地:適切な培地の一部に適切な少数の微生物(100CFU以下)を接種する.規定された温度で培養し,培養時間は,試験法で規定されている培養期間の最短時間以内とする.有効性が確認された培地バッチで,以前に得られた発育と同等の発育が認められる.

発育促進特性試験,固体培地:各平板培地に適切な少数の微生物(100CFU以下)を接種し,カンテン平板表面塗抹法で行う.規定された温度で培養し,培養時間は,試験法で規定されている培養期間の最短時間以内とする.有効性が確認された培地バッチで,以前に得られた発育と同等の発育が認められる.

選択特性試験,液体又は固体培地:適切な培地に適切な微生物を少なくとも100CFU接種する.規定された温度で培養し,培養時間は試験法で規定されている培養期間の最長時間以上とする.試験菌の発育を認めない.

鑑別特性試験:各平板培地に適切な少数の微生物(100CFU以下)を接種し,カンテン平板表面塗抹法で行う.規定された温度で培養し,培養時間は試験法で規定されている培養期間の範囲内とする.集落の形状と鑑別反応は,有効性が確認された培地バッチで以前に得られたものと同等である.

3.4.試験法の適合性

被験製品ごとに,4.の関連段落に記載されたとおりに試料調製する.規定の増菌培地に混合する時に各試験菌を添加する.試験菌は個別に接種する.また,接種した試験液中の菌数が100CFU以下相当となるような数の微生物を使用する.

4.の関連段落に記載されたとおりに試験する.ただし,規定された最短培養期間で試験する.

特定微生物は,4.に記載された鑑別反応と共に検出されなければならない.

製品に抗菌活性が認められる場合には,試験方法の変更が必要になる(「生菌数試験」の4.5.3.を参照).

ある特定の製品において,規定された方法ではその微生物に対する抗菌活性を中和することができない場合には,抑制された微生物はその製品中には存在しないと見なしてよい.

4.製品の試験

4.1.胆汁酸抵抗性グラム陰性菌

4.1.1.試料調製及び前培養

被験製品を1g以上採り,その10倍希釈液を「生菌数試験」に記載したように調製するが,希釈液としてはソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地を用い,混合後,菌を蘇生させるために20~25℃で培養する.ただし,増菌を促すほどの時間であってはならない(通例2時間であり,5時間を超えないこと).

4.1.2.否定試験

他に規定されない限り,4.1.1.で調製した製品1gに相当する量をモーゼル腸内細菌増菌ブイヨン培地に接種する.30~35℃で24~48時間培養後,バイオレット・レッド・胆汁酸・ブドウ糖カンテン培地に移植し,30~35℃で18~24時間培養する.

集落の発育がみられない場合は,その製品は本試験に適合する.

4.1.3.定量試験

4.1.3.1.選択培養

4.1.1.に記載されている調製液及び/又はその希釈液であって,それぞれ被験製品の0.1g,0.01g,0.001g(又は0.1mL,0.01mL,0.001mL)相当量を,適量のモーゼル腸内細菌増菌ブイヨン培地に接種する.30~35℃で24~48時間培養後,バイオレット・レッド・胆汁酸・ブドウ糖カンテン培地に各培養液を移植し,30~35℃で18~24時間培養する.

4.1.3.2.判定

集落の発育が認められた場合は,陽性と判定する.陽性結果を与える製品の最小量と陰性結果を与える最大量に注目し,表4.05―Ⅱ―2から細菌の推定数を求める.

4.2.大腸菌

4.2.1.試料調製及び前培養

被験製品を1g以上採り,「生菌数試験」に記載したように調製した10倍希釈液の10mL,あるいは1g又は1mL相当量を(3.4.で決定した)適切な量のソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地に接種し,混合後,30~35℃で18~24時間培養する.

4.2.2.選択培養

容器を振り,ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地の1mLをマッコンキー液体培地100mLに接種する.42~44℃で24~48時間培養後,マッコンキーカンテン培地に移植し,30~35℃で18~72時間培養する.

4.2.3.判定

集落の発育が認められた場合は陽性を疑い,同定試験により確認する.

集落が存在しないか,又は同定試験において陰性と判定された場合には,その製品は本試験に適合する.

4.3.サルモネラ

4.3.1.試料調製及び前培養

被験製品を10g又は10mL採り,(3.4.で決定した)適量のソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地に接種し,混合後,30~35℃で18~24時間培養する.

4.3.2.選択培養

ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地0.1mLをラパポート・バシリアジス・サルモネラ増菌液体培地10mLに接種する.30~35℃で18~24時間培養後,XLDカンテン培地に移植し,30~35℃で18~48時間培養する.

4.3.3.判定

十分に発育した赤色集落が認められた場合は,中心部の黒点の有無に関わらず陽性を疑い,同定試験により確認する.

記載されている種類の集落が存在しないか,又は同定試験において陰性と判定された場合には,その製品は本試験に適合する.

4.4.緑膿菌

4.4.1.試料調製及び前培養

被験製品を1g以上採り,「生菌数試験」に記載したように調製した10倍希釈液の10mL,あるいは1g又は1mL相当量を(3.4.で決定した)適量のソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地に接種して混合し,30~35℃で18~24時間培養する.経皮吸収パッチを試験するときは,「生菌数試験(4.5.1.)」に記載したように調製し,1パッチ相当量を滅菌メンブランフィルターでろ過し,そのメンブランフィルターを100mLのソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地中に投入する.

4.4.2.選択培養

セトリミドカンテン培地に移植し,30~35℃で18~72時間培養する.

4.4.3.判定

集落の発育が認められた場合は陽性を疑い,同定試験により確認する.

集落が存在しないか,又は同定試験において陰性と判定された場合には,その製品は本試験に適合する.

4.5.黄色ブドウ球菌

4.5.1.試料調製及び前培養

被験製品を1g以上採り,「生菌数試験」に記載したように調製した10倍希釈液の10mL,あるいは1g又は1mL相当量を(3.4.で決定した)適量のソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地に接種して混合し,30~35℃で18~24時間培養する.経皮吸収パッチを試験するときは,「生菌数試験(4.5.1.)」に記載したように調製した1パッチ相当量を滅菌メンブランフィルターでろ過し,そのメンブランフィルターを100mLのソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地中に投入する.

4.5.2.選択培養

マンニット・食塩カンテン培地に移植し,30~35℃で18~72時間培養する.

4.5.3.判定

黄色の帯に囲まれた黄色又は白色集落の発育が認められた場合は陽性を疑い,同定試験により確認する.

記載されている種類の集落が存在しないか,又は同定試験において陰性と判定された場合には,その製品は本試験に適合する.

4.6.クロストリジア

4.6.1.試料調製及び加熱処理

被験製品を2g又は2mL以上採り,「生菌数試験」に記載したように10倍希釈試料液(最低20mL以上)を調製する.調製した試料液を少なくとも10mLずつ2本の容器に分注し,1本は80℃で10分間加熱後,速やかに冷却し,他の1本は加熱しない.

4.6.2.選択培養

それぞれから10mLあるいは被験製品1g又は1mL相当量を(3.4.で決定した)適量の強化クロストリジア培地に接種し,嫌気的条件下で30~35℃で48時間培養する.培養後,コロンビアカンテン培地に各容器から移植し,嫌気的条件下で30~35℃で48~72時間培養する.

4.6.3.判定

カタラーゼ反応陰性の桿菌(芽胞を有するか又は有さない)の嫌気的発育が認められた場合は,陽性が示唆される.この場合は同定試験を行い確認する.

コロンビアカンテン培地に定型集落の発育がみられないか,又は同定試験において陰性と判定された場合には,その製品は本試験に適合する.

4.7.カンジダ・アルビカンス

4.7.1.試料調製及び前培養

被験製品を「生菌数試験」に記載したように調製する.その10mL,あるいは1g又は1mL以上に相当する量を100mLのサブロー・ブドウ糖液体培地に接種して混合し,30~35℃で3~5日間培養する.

4.7.2.選択培養

サブロー・ブドウ糖カンテン培地に移植し,30~35℃で24~48時間培養する.

4.7.3.判定

白色集落の発育が認められた場合は陽性を疑い,同定試験により確認する.

そのような集落が存在しないか,又は同定試験において陰性と判定された場合には,その製品は本試験に適合する.

なお,以下のセクションは情報提供を目的に記載する.

5.推奨される溶液及び培地

以下の溶液及び培地は,薬局方の微生物試験で規定されている目的にかなったものである.適合性が確認されれば他の培地を用いてもよい.

保存緩衝液

リン酸二水素カリウム34gを500mLの水で溶解し,水酸化ナトリウム試液でpH7.0~7.4に調整後,水を加えて1000mLとし,混合する.容器に分注して滅菌する.2~8℃で保存する.

リン酸緩衝液 pH7.2

水と保存緩衝液を混合(800:1)して調製し,滅菌する.

ペプトン食塩緩衝液 pH7.0

リン酸二水素カリウム 3.6g

リン酸水素二ナトリウム二水和物 7.2g(リン酸塩0.067molに相当する)

塩化ナトリウム 4.3g

ペプトン(肉製又はカゼイン製) 1.0g

水 1000mL

確認されたサイクルで高圧蒸気滅菌する.

ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地

カゼイン製ペプトン 17.0g

ダイズ製ペプトン 3.0g

塩化ナトリウム 5.0g

リン酸水素二カリウム 2.5g

ブドウ糖一水和物 2.5g

水 1000mL

滅菌後のpHが25℃で7.1~7.5になるようにpHを調整する.確認されたサイクルで高圧蒸気滅菌する.

ソイビーン・カゼイン・ダイジェストカンテン培地

カゼイン製ペプトン 15.0g

ダイズ製ペプトン 5.0g

塩化ナトリウム 5.0g

カンテン 15.0g

水 1000mL

滅菌後のpHが25℃で7.1~7.5になるようにpHを調整する.確認されたサイクルで高圧蒸気滅菌する.

サブロー・ブドウ糖カンテン培地

ブドウ糖 40.0g

ペプトン(肉製及びカゼイン製1:1) 10.0g

カンテン 15.0g

水 1000mL

滅菌後のpHが25℃で5.4~5.8になるようにpHを調整する.確認されたサイクルで高圧蒸気滅菌する.

ポテト・デキストロースカンテン培地

ジャガイモ浸出液 200g

ブドウ糖 20.0g

カンテン 15.0g

水 1000mL

滅菌後のpHが25℃で5.4~5.8になるようにpHを調整する.確認されたサイクルで高圧蒸気滅菌する.

サブロー・ブドウ糖液体培地

ブドウ糖 20.0g

ペプトン(肉製及びカゼイン製1:1) 10.0g

水 1000mL

滅菌後のpHが25℃で5.4~5.8になるようにpHを調整する.確認されたサイクルで高圧蒸気滅菌する.

モーゼル腸内細菌増菌ブイヨン培地

ゼラチン製ペプトン 10.0g

ブドウ糖一水和物 5.0g

乾燥ウシ胆汁 20.0g

リン酸二水素カリウム 2.0g

リン酸水素二ナトリウム二水和物 8.0g

ブリリアントグリン 15mg

水 1000mL

加熱後のpHが25℃で7.0~7.4になるようにpHを調整する.100℃で30分間加熱し,直ちに冷却する.

バイオレット・レッド・胆汁酸・ブドウ糖カンテン培地

酵母エキス 3.0g

ゼラチン製ペプトン 7.0g

胆汁酸塩 1.5g

塩化ナトリウム 5.0g

ブドウ糖一水和物 10.0g

カンテン 15.0g

ニュートラルレッド 30mg

クリスタルバイオレット 2mg

水 1000mL

加熱後のpHが25℃で7.2~7.6になるようにpHを調整する.煮沸するまで加熱する.オートクレーブで加熱してはならない.

マッコンキー液体培地

ゼラチン製ペプトン 20.0g

乳糖一水和物 10.0g

乾燥ウシ胆汁 5.0g

ブロモクレゾールパープル 10mg

水 1000mL

滅菌後のpHが25℃で7.1~7.5になるようにpHを調整する.確認されたサイクルで高圧蒸気滅菌する.

マッコンキーカンテン培地

ゼラチン製ペプトン 17.0g

ペプトン(肉製及びカゼイン製) 3.0g

乳糖一水和物 10.0g

塩化ナトリウム 5.0g

胆汁酸塩 1.5g

カンテン 13.5g

ニュートラルレッド 30mg

クリスタルバイオレット 1mg

水 1000mL

滅菌後のpHが25℃で6.9~7.3になるようにpHを調整する.絶えず振り混ぜながら1分間煮沸させてから,確認されたサイクルで高圧蒸気滅菌する.

ラパポート・バシリアジス・サルモネラ増菌液体培地

ダイズ製ペプトン 4.5g

塩化マグネシウム六水和物 29.0g

塩化ナトリウム 8.0g

リン酸水素二カリウム 0.4g

リン酸二水素カリウム 0.6g

マラカイトグリーン 36mg

水 1000mL

若干加温しながら溶かし,115℃を超えない温度で,確認されたサイクルで高圧蒸気滅菌する.加熱及び高圧蒸気滅菌後のpHが25℃で5.0~5.4になるようにする.

XLD(キシロース・リジン・デソキシコール酸)カンテン培地

キシロース 3.5g

L―リジン 5.0g

乳糖一水和物 7.5g

白糖 7.5g

塩化ナトリウム 5.0g

酵母エキス 3.0g

フェノールレッド 80mg

カンテン 13.5g

デソキシコール酸ナトリウム 2.5g

チオ硫酸ナトリウム 6.8g

クエン酸アンモニウム鉄(Ⅲ) 0.8g

水 1000mL

加熱後のpHが25℃で7.2~7.6になるようにpHを調整する.煮沸するまで加熱し,50℃まで冷却してからペトリ皿に注ぎ込む.オートクレーブで加熱してはならない.

セトリミドカンテン培地

ゼラチン製ペプトン 20.0g

塩化マグネシウム 1.4g

硫酸カリウム 10.0g

セトリミド 0.3g

カンテン 13.6g

水 1000mL

グリセリン 10.0mL

振り混ぜながら加熱して1分間煮沸する.滅菌後のpHが25℃で7.0~7.4になるようにpHを調整する.確認されたサイクルで高圧蒸気滅菌する.

マンニット・食塩カンテン培地

カゼイン製ペプトン 5.0g

肉製ペプトン 5.0g

牛肉エキス 1.0g

D―マンニトール 10.0g

塩化ナトリウム 75.0g

カンテン 15.0g

フェノールレッド 25mg

水 1000mL

振り混ぜながら加熱して1分間煮沸する.滅菌後のpHが25℃で7.2~7.6になるようにpHを調整する.確認されたサイクルで高圧蒸気滅菌する.

強化クロストリジア培地

牛肉エキス 10.0g

ペプトン 10.0g

酵母エキス 3.0g

溶性デンプン 1.0g

ブドウ糖一水和物 5.0g

システイン塩酸塩 0.5g

塩化ナトリウム 5.0g

酢酸ナトリウム 3.0g

カンテン 0.5g

水 1000mL

カンテンを水和させ,絶えずかき混ぜながら煮沸するまで加熱して溶かす.必要ならば,滅菌後のpHが25℃でおよそ6.6~7.0になるようにpHを調整する.確認されたサイクルで高圧蒸気滅菌する.

コロンビアカンテン培地

カゼイン製ペプトン 10.0g

肉浸出物のペプシン消化物 5.0g

心筋浸出物のパンクレアチン消化物 3.0g

酵母エキス 5.0g

トウモロコシデンプン 1.0g

塩化ナトリウム 5.0g

カンテン(ゲル強度に従って) 10.0~15.0g

水 1000mL

カンテンを水和させ,絶えずかき混ぜながら煮沸するまで加熱して溶かす.必要ならば,滅菌後のpHが25℃で7.1~7.5になるようにpHを調整する.確認されたサイクルで高圧蒸気滅菌する.45~50℃まで冷却後,必要に応じ,ゲンタマイシン塩基20mgに相当する量のゲンタマイシン硫酸塩(硫酸ゲンタマイシン)を加えてペトリ皿に注ぎ込む.

表4.05―Ⅱ―1 培地の発育促進,選択及び鑑別特性

培地

特性

試験菌株

胆汁酸抵抗性グラム陰性菌試験

モーゼル腸内細菌増菌ブイヨン培地

発育促進

E.coli

P.aeruginosa

 

選択

S.aureus

バイオレット・レッド・胆汁酸・ブドウ糖カンテン培地

発育促進及び鑑別

E.coli及びP.aeruginosa

大腸菌試験

マッコンキー液体培地

発育促進

E.coli

 

選択

S.aureus

マッコンキーカンテン培地

発育促進及び鑑別

E.coli

サルモネラ試験

ラパポート・バシリアジス・サルモネラ増菌液体培地

発育促進

Salmonella enterica subsp.enterica serovar Typhimurium 又は

Salmonella enterica subsp.enterica serovar Abony

 

選択

S.aureus

XLD(キシロース・リジン・デソキシコール酸)カンテン培地

発育促進及び鑑別

Salmonella enterica subsp.enterica serovar Typhimurium 又は

Salmonella enterica subsp.enterica serovar Abony

緑膿菌試験

セトリミドカンテン培地

発育促進

P.aeruginosa

 

選択

E.coli

黄色ブドウ球菌試験

マンニット・食塩カンテン培地

発育促進及び鑑別

S.aureus

 

選択

E.coli

クロストリジア試験

強化クロストリジア培地

発育促進

Cl.sporogenes

コロンビアカンテン培地

発育促進

Cl.sporogenes

カンジダ・アルビカンス試験

サブロー・ブドウ糖液体培地

発育促進

C.albicans

サブロー・ブドウ糖カンテン培地

発育促進及び鑑別

C.albicans

表4.05―Ⅱ―2 結果の判定

製品の各量に対する結果

製品1g又は1mL当たりの細菌の推定数

0.1g又は0.1mL

0.01g又は0.01mL

0.001g又は0.001mL

103より大きい

103より小さく,102より大きい

102より小さく,10より大きい

10より小さい

4.06 無菌試験法

本試験法は,三薬局方での調和合意に基づき規定した試験法である.

無菌試験法は,無菌であることが求められている原薬又は製剤に適用される.本試験に適合する結果が得られても,それは単に本試験条件下で調べた検体中に汚染微生物が検出されなかったことを示しているだけである.

1.微生物汚染に対する予防措置

無菌試験は無菌条件下で行われる.このため,試験環境は無菌試験の実施に適したものでなければならない.汚染を避けるためにとられる予防措置は,本試験で検出されるべきいかなる微生物にも影響を与えてはならない.作業区域の適切な環境モニタリング及び適切な汚染防止措置の実施によって,本試験の実施状態が適切であることを定期的に監視する.

2.培地及び培養温度

2.1.一般要件

培地は,次のように調製するか,又は培地性能試験に適合する場合は同等の市販培地も使用できる.無菌試験用として適している培地は次のとおりである.液状チオグリコール酸培地は,嫌気性細菌の培養を主目的としているが,好気性細菌も検出できる.ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地は,真菌及び好気性細菌の培養に適している.

2.2.液状チオグリコール酸培地

液状チオグリコール酸培地

L―シスチン 0.5g

カンテン 0.75g

塩化ナトリウム 2.5g

ブドウ糖(一水和物/無水) 5.5/5.0g

酵母エキス(水溶性) 5.0g

カゼイン製ペプトン 15.0g

チオグリコール酸ナトリウム 0.5g

又はチオグリコール酸 0.3mL

レザズリン溶液(1→1000),用時調製 1.0mL

水 1000mL

(滅菌後のpH7.1±0.2)

L―シスチン,カンテン,塩化ナトリウム,ブドウ糖,酵母エキス(水溶性)及びカゼイン製ペプトンを水と混合し,加熱して溶かした後,チオグリコール酸ナトリウム又はチオグリコール酸を加えて溶かし,必要ならば水酸化ナトリウム試液を加え,滅菌後のpHが7.1±0.2になるように調整する.必要ならば,溶液を煮沸しないように加熱し,温かいうちに湿らせたろ紙を用いてろ過する.レザズリン溶液(1→1000)を加え,よく混和した後,培養終了時に培地の淡赤色部分が上部1/2以下にとどまるような表面積と深さの比をもつ容器に所定量ずつ分注し,バリデートされた条件下で滅菌する.培地を保存する必要がある場合にはあらかじめ気密容器に入れて滅菌し,2~25℃で保存する.培地がその上部1/3を超えて淡赤色となった場合は,その淡赤色が消失するまで培地容器を水浴中又は流通蒸気中で加熱し,容器中への汚染空気の侵入を防ぎながら急速に冷却することで1回だけ使用できる.バリデートされた期間を超えて,保存した培地を使用してはならない.

液状チオグリコール酸培地は,30~35℃で培養する.メンブランフィルター法を適用できない水銀系の防腐剤を含む製品に対しては,培地性能試験に適合するなら,ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地の代わりに液状チオグリコール酸培地を用い,20~25℃で培養することができる.

別に規定する場合は,次のように調製した変法チオグリコール酸培地を用いることができる.カンテンとレザズリン溶液(1→1000)を除き,液状チオグリコール酸培地と同じ成分で調製し,バリデートされた条件下で滅菌する.滅菌後のpHが7.1±0.2になるように調整し,使用直前に水浴中で加熱する.変法チオグリコール酸培地は嫌気条件下で30~35℃で培養する.

2.3.ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地

ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地

カゼイン製ペプトン 17.0g

ダイズ製ペプトン 3.0g

塩化ナトリウム 5.0g

リン酸水素二カリウム 2.5g

ブドウ糖(一水和物/無水)2.5/2.3g

水 1000mL

(滅菌後のpH7.3±0.2)

全成分を水に溶かし,若干加温して溶液にする.溶液を室温に冷却し,必要ならば水酸化ナトリウム試液を加え,滅菌後のpHが7.3±0.2になるように調整する.必要ならばろ過をし,適当な容器に所定量ずつ分注し,バリデートされた条件下で滅菌する.直ちに使用しない場合は,あらかじめ気密容器に入れて滅菌し,2~25℃で保存する.バリデートされた期間を超えて保存した培地を使用してはならない.

ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地は,20~25℃で培養する.

3.培地の適合性

培地は,次の試験に適合すること.この試験は,製品の無菌試験実施前に,又は並行して行うことができる.

無菌性

培地の一部を14日間培養するとき,微生物の増殖を認めない.

好気性菌,嫌気性菌及び真菌に対する培地性能試験

市販液体培地及び粉末培地又は各成分から調製した培地の各バッチについて試験を行うこと.適切な微生物株を表4.06―1に示す.

液状チオグリコール酸培地には,次に示す少数(100CFU以下)の微生物を接種する.それぞれの微生物に対しては別々の培地容器を用いる.

Clostridium sporogenes

Pseudomonas aeruginosa

Staphylococcus aureus

ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地には,次に示す少数(100CFU以下)の微生物を接種する.それぞれの微生物に対しては別々の培地容器を用いる.

Aspergillus niger

Bacillus subtilis

Candida albicans

細菌の場合は3日間,真菌の場合は5日間をそれぞれ超えないで培養する.

接種菌の継代数は,シードロット培養管理手法(シードロットシステム)を採用することにより,マスターシードロットから5代を超えないようにする.

微生物の増殖が肉眼で明らかに観察された場合には,当該培地は基準に適合している.

表4.06―1 培地性能試験及び手法の適合性試験に適している試験用菌株

好気性細菌

 

Staphylococcus aureus

ATCC6538,NBRC13276,CIP4.83,NCTC10788,NCIMB9518

Bacillus subtilis

ATCC6633,NBRC3134,CIP52.62,NCIMB8054

Pseudomonas aeruginosa

ATCC9027,NBRC13275,NCIMB8626,CIP82.118

嫌気性細菌

 

Clostridium sporogenes

ATCC19404,NBRC14293,CIP79.3,NCTC532,ATCC11437

真菌

 

Candida albicans

ATCC10231,NBRC1594,IP48.72,NCPF3179

Aspergillus niger

ATCC16404,NBRC9455,IP1431.83,IMI149007