○クロザピン製剤の使用にあたっての留意事項について
(平成21年4月22日)
(薬食審査発第0422001号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)
クロザピン製剤(販売名:クロザリル錠25mg、同錠100mg)については、本日、「治療抵抗性統合失調症」を効能・効果として、承認したところであるが、本剤については、無顆粒球症等の重篤な有害事象が発現するリスクがあること等から、その使用にあたっては、特に下記の点について留意されるよう、貴管下の医療機関、薬局等に対して周知をお願いする。
なお、卸売一般販売業者等の販売業者に対しても適切に対応するよう指導されたい。
記
1.クロザピン製剤の適正使用について
(1) 本剤の効能・効果は、「治療抵抗性統合失調症」であること。治療抵抗性統合失調症の詳細については、別添の添付文書の「効能又は効果に関連する使用上の注意」を参照すること。
(2) 本剤については、承認に際し製造販売業者による流通管理の実施等をその条件として付すとともに、白血球数、好中球数、血糖値等の定期的な検査の実施等を使用上の注意の警告として規定したこと。
【承認条件】
1.本剤による無顆粒球症等の重篤な有害事象に対して、他の医療機関との連携も含めて十分に対応できる体制が確認できた医療機関・薬局において、統合失調症の診断、治療に精通し、本剤の適正使用について十分に理解している医師によって、白血球数、好中球数、血糖値等の定期的な検査が実施されるとともに、その結果を評価した上で本剤の処方が行われ、これら検査が適正に行われたことを確認した上で調剤が行われるよう、製造販売にあたって本剤に関する管理者の設置も含め必要な措置を講じること。
2.本剤の投与が適切と判断される患者を対象に、あらかじめ患者又は代諾者に安全性及び有効性が文書によって説明され、文書による同意を得た後のみに本剤の投与が開始されるよう、厳格かつ適正な措置を講じること。
3.国内での治験症例が限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象とした使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の患者背景を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
(3) 本剤の流通管理の基本は以下のとおりであること。なお、製造販売業者であるノバルティス ファーマ株式会社によって、「クロザリル患者モニタリングサービス(CPMS)運用手順」として流通管理及び安全管理の手順が定められており、CPMSについては同社のホームページ(http://www.novartis.co.jp/product/top.html)に掲載予定である。
① 有識者(医師、薬剤師、倫理又は法律の専門家等)からなる第三者委員会を設置。
② 製造販売業者内で、本剤の適正使用に係る情報管理・連絡等を行う管理者を設置。
③ 医療機関及び薬局並びに医師、薬剤師、その他の医療従事者(調剤の可否の確認及びその連絡を行う者に限る。)ごとに、適正使用の実施、無顆粒球症等の重篤な有害事象への対応等について、同委員会で検討し、管理者はリストを作成。
④ 販売は、リストに掲載された医療機関・薬局に限定。
(4) 本剤の使用上の警告は以下のとおりであり、上記手順であるCPMSとともに特段の留意をお願いしたいこと。その他の使用上の注意については、添付文書を参照願いたい。
【警告】
1.本剤の投与は、統合失調症の診断、治療に精通し、無顆粒球症、心筋炎、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重篤な副作用に十分に対応でき、かつクロザリル患者モニタリングサービス(Clozaril Patient Monitoring Service:CPMS)注)に登録された医師・薬剤師のいる登録医療機関・薬局において、登録患者に対して、血液検査等のCPMSに定められた基準がすべて満たされた場合にのみ行うこと。また、基準を満たしていない場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を講じること。(【禁忌】、「1.慎重投与」、「2.重要な基本的注意」、「4.副作用(1)重大な副作用」の項参照)
2.本剤の投与に際しては、治療上の有益性が危険性を上回っていることを常に検討し、投与の継続が適切であるかどうか定期的に判断すること。
3.糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の死亡に至ることのある重大な副作用が発現するおそれがあるので、本剤投与中はCPMSに準拠して定期的に血糖値等の測定を行うこと。また、臨床症状の観察を十分に行い、高血糖の徴候・症状に注意するとともに、糖尿病治療に関する十分な知識と経験を有する医師と連携して適切な対応を行うこと。特に、糖尿病又はその既往歴もしくはその危険因子を有する患者には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。なお、糖尿病性ケトアシドーシス又は糖尿病性昏睡の徴候が認められた場合には投与を中止し、インスリン製剤を投与するなど適切な処置を行うこと。(【原則禁忌】、「1.慎重投与」、「2.重要な基本的注意」、「4.副作用(1)重大な副作用」の項参照)
4.本剤の投与にあたっては、患者又は代諾者に本剤の有効性及び危険性を文書によって説明し、文書で同意を得てから投与を開始すること。また、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の耐糖能異常に関しては、口渇、多飲、多尿、頻尿等の症状の発現に注意し、異常が認められた場合には、直ちに医師の診察を受けるよう指導すること。(【原則禁忌】、「1.慎重投与」、「2.重要な基本的注意」、「4.副作用(1)重大な副作用」の項参照)
5.無顆粒球症等の血液障害は投与初期に発現する例が多いので、原則として投与開始後18週間は入院管理下で投与を行い、無顆粒球症等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うこと。(「2.重要な基本的注意」の項参照)
注) 定期的な血液モニタリング等を実施し、無顆粒球症等の早期発見を目的として規定された手順
2.医療機関における適正使用に関する周知事項について
(1) 本剤については、上記1(3)のとおり流通管理がなされること。
なお、上記1(3)③のリストへの掲載を希望する医療機関及び医師、薬剤師等については、CPMS運用手順にそって、第三者委員会における検討等に必要な手続をお願いしたいこと。
(2) 本剤の使用にあたっては、その効能・効果、用法・用量、添付文書の使用上の注意等を踏まえ、治療抵抗性統合失調症の適切な診断等を行った上で、定期的に血液検査を実施し、その結果を評価した上で適正に処方等を行うこと。特に、上記警告のとおり無顆粒球症、心筋炎、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重篤な副作用の発現等に十分な注意を払うこと。
(3) 製造販売業者が実施する全例調査を含む製造販売後調査について、協力をお願いしたいこと。
(4) 治療中止等に伴う残薬等について、回収する等適切な措置を講じること。
3.薬局における調剤に関する周知事項について
(1) 本剤については、上記1(3)の流通管理がなされること。
なお、上記1(3)③のリストへの掲載を希望する薬局及び薬剤師については、CPMS運用手順にそって、第三者委員会における検討等に必要な手続をお願いしたいこと。
(2) 上記1(3)③のリストに掲載された薬局及び薬剤師によって、調剤前に、CPMS運用手順にそって検査が適正に行われたことを確認すること。また、その確認ができない場合には、調剤することを拒むこと。
(3) 上記1(3)③のリストに掲載された薬剤師でないこと又は上記(2)に基づく理由により調剤を拒むことについては、薬剤師法(昭和35年法律第146号)第21条(調剤の求めに応じる義務)の「正当な理由」に当たるものと解されること。
なお、上記1(3)③のリストに掲載されていない薬局については、流通が制限されているため調剤できず、結果的に調剤を拒むこととなるが、これについても同様と解されること。
(4) 本剤を薬局間で譲渡・譲受しないようにすること。また、治療中止等に伴う残薬等について、回収する等適切な措置を講じること。
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