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○若年性認知症対策の推進に当たっての留意事項について

(平成21年3月19日)

(/職高障発第0319001号/障企発第0319001号/老推発第0319001号/)

(各都道府県衛生主管部・各都道府県民生主管部(局)長あて厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課長、社会・援護局障害保健福祉部企画課長、老健局計画課認知症・虐待防止対策推進室長通知)

若年性認知症対策の推進については「若年性認知症対策の推進について」(平成21年3月19日付け職高発第0319001号、障発第0319006号及び老発第0319001号厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長、社会・援護局障害保健福祉部長及び老健局長連名通知(以下「局長通知」という。))により通知しているところであるが、併せて、下記の事項について、担当部局や関係団体等の間で理解の共有を図った上で、若年性認知症者に対する支援の適正かつ円滑な実施を図られたい。

また、本通知の内容については管内の市町村、関係機関・関係団体等へ周知を図られたい。

なお、本件については、別途、各都道府県労働局職業安定部長あてに通知していることを申し添える。

1 若年性認知症支援体制の現状と課題

若年性認知症者が活用可能な支援は、認知症の確定診断、治療等の医療に関する支援、精神障害者保健福祉手帳の取得に係る支援、障害基礎年金の受給支援等経済的な問題に対する支援、障害福祉サービスの活用等日中活動支援、就労中の者に対する雇用継続支援及び認知症対応型デイサービス、認知症対応型グループホーム等の介護保険サービスによる支援等多種多様であり、担当部局が緊密に連携し、各サービスを有機的に組み合わせ、若年性認知症者が一人ひとりのその時の状態に応じたサービスを利用できるようなサービス提供体制の構築が急務となっている。

2 現行の施策を活用した若年性認知症者に対する積極的な取組の推進

若年性認知症者が活用可能な主な支援施策として次のようなものがあるので、各都道府県においては、管内の認知症疾患医療センター、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害福祉サービス事業所、介護保険サービス事業所等との連携を密にした支援の展開を図られるようお願いする。

また、ここに記載する事業のみならず、各自治体等で若年性認知症者の支援に活用可能な事業があれば、その積極的な活用についても特段の配慮をお願いする。

(1) 医療に関する支援

ア 認知症疾患医療センター

認知症疾患に関する確定診断(鑑別診断)、周辺症状と身体合併症に対する急性期医療、専門医療相談を実施する。

イ 自立支援医療(精神通院医療費)

若年性認知症の患者が通院等による精神医療を継続的に必要とする場合、病院又は診療所に入院しないで行われる医療に対しては、病状の程度により障害者自立支援法(平成17年法律第123号)に基づく、自立支援医療の対象となり健康保険の自己負担が軽減される。

(2) 精神障害者保健福祉手帳の取得による支援

認知症の確定診断を受けた場合、日常生活や社会生活の障害の状態に応じて精神障害者保健福祉手帳の取得が可能である。また、手帳取得により所得税、住民税に係る税制上の優遇措置、NHKの受信料の免除の他、自治体によっては公共交通機関の交通費助成、公営住宅使用料の減免などを受けられる場合がある。

(3) 障害年金

傷病等により一定の障害状態になった場合、加入している年金の種別に応じ、障害基礎年金、障害厚生(共済)年金等が支給される場合がある。

(4) 障害福祉施策を活用した支援

若年性認知症者は、障害福祉サービスを利用することが可能である。障害福祉サービスは、障害者自立支援法に基づき全国統一的に実施される障害福祉サービスと、自治体の判断により実施される地域生活支援事業があり、若年性認知症者のその時の障害の状況に応じた利用が可能である。

各都道府県及び市町村においては、企業やハローワークと連携したサービスの展開を図られたい。

なお、介護保険法(平成9年法律第123号)における第2号被保険者(40歳以上の者)の場合は、介護保険サービスを優先して受けることとなるが、利用可能な介護保険サービスが身近にないなど介護保険サービスを利用することが困難と市町村が認める場合、就労継続支援等の障害福祉サービスに固有のサービスを利用する場合、また、40歳未満の者である場合等は、障害福祉サービスの利用が可能である。

ア 主な障害福祉サービス等

(ア) 相談支援事業

障害者等の福祉に関する各般の問題につき、障害者等からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言その他の障害福祉サービスの利用支援等、必要な支援を行う。

(イ) 就労支援を含む日中活動系サービス

① 就労移行支援事業

就労を希望する65歳未満の障害者で、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者に対し、就労に必要な知識、訓練及び就職後における職場定着などに必要な支援を行う。

② 就労継続支援事業(A(原則雇用有)型、B(雇用無)型)

通常の事業所に雇用されることが困難な障害者に対し、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う。

③ 生活介護

常時介護を要する障害者に対し、入浴、排せつ又は食事の介護、創作的活動又は生産活動の機会を提供する。

④ 自立訓練(生活訓練)

知的障害者又は精神障害者につき、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、生活能力の向上のために必要な訓練を行う。

(ウ) 訪問系サービス

① 居宅介護

障害者等に対し、居宅において入浴、排せつ又は食事等の介護等を行う。

② 行動援護

知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有する障害者等であって常時介護を要する者に対し、当該障害者等が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護、外出時における移動中の介護等を行う。

③ 重度障害者等包括支援

常時介護を要する障害者等であって、その介護の程度が著しく高い者に対し、居宅介護その他の障害福祉サービスを包括的に提供する。

(エ) 居住系サービス

① 共同生活介護(ケアホーム)

障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において入浴、排せつ又は食事の介護を行う。

② 共同生活援助(グループホーム)

地域において共同生活を営むのに支障のない障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において相談その他の日常生活上の援助を行う。

イ 地域生活支援事業

(ア) 地域活動支援センター

創作的活動又は生産活動の機会の提供、社会との交流の促進などの機会を提供する。

(イ) 移動支援事業

障害者等が円滑に外出することができるよう、障害者等の移動を支援する。

(5) 障害者雇用施策を活用した雇用継続等の支援

若年性認知症者で雇用継続が見込まれる場合、障害者雇用施策を活用した支援が有効である。

各都道府県においては、障害者雇用支援策の活用により、状況に応じて、確定診断後の若年性認知症者の雇用継続を始めとする支援が提供できるよう、指導・助言をお願いする。

ア 事業主に対する支援制度

(ア) 確定診断後、精神障害者保健福祉手帳を取得することにより、障害者雇用率に算定することができること。(問合せ:ハローワーク)

(イ) 障害者雇用納付金制度に基づく助成金が利用できること。(問合せ:ハローワーク、各都道府県障害者雇用開発協会等)

イ 障害者本人に対する支援

(ア) ハローワーク

障害者の態様に応じた職業紹介、職業指導、求人開拓 等

(イ) 地域障害者職業センター

専門的な職業リハビリテーションサービスの実施(職業評価、職業準備支援、ジョブコーチ支援等)

(参考) ジョブコーチ支援とは、障害者の円滑な就職及び職場適応を図るため、事業所にジョブコーチを派遣し、障害者及び事業主に対して、雇用の前後を通じて障害特性を踏まえた直接的、専門的な援助を実施するもの。

(ウ) 障害者就業・生活支援センター

障害者の身近な地域において、雇用、保健福祉等の関係機関と連携し、就業面及び生活面における一体的な支援を実施する。

(6) 介護保険サービス

介護保険サービスは、40歳以上の若年性認知症者において基本的に全てのサービスが利用可能であるが、以下に主なサービスを例示する。

ア 訪問介護

要介護者であって、居宅において介護を受けるものについて、その者の居宅において行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話を行う。

イ 訪問看護

居宅の要介護者について、その者の居宅において看護師等により行われる療養上の世話又は必要な診療を行う。

ウ 通所介護・認知症対応型通所介護

居宅の要介護者又は居宅の要介護者で認知症である者を老人デイサービスセンターに通わせ、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話を行う。

エ 通所リハビリテーション

居宅の要介護者について、介護老人保健施設、病院、診療所等に通所し、心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を高めるために行われる理学療法、作業療法等のリハビリテーションを行う。

オ 短期入所生活介護、短期入所療養介護(ショートステイ)

居宅の要介護者について、特別養護老人ホーム、老人短期入所施設、介護老人保健施設及び介護療養型医療施設等に短期間入所させ、入浴、排せつ、食事等の介護や看護、機能訓練その他日常生活上の世話等を行う。

カ 小規模多機能型居宅介護

居宅の要介護者について、心身の状況、環境等に応じて訪問居宅や通所、短期間の宿泊を組み合わせ、入浴、排せつ、食事等の介護や日常生活上の世話を行う。

キ 認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)

要介護者であって認知症である者について、共同生活を営む住居において、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話を行う。

ク 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

要介護者に対し、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行う。

ケ 介護老人保健施設

要介護者に対し、看護、医学的管理下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行う。

コ 介護療養型医療施設

療養病床を有する病院又は診療所であって、入院する要介護者に対し、療養上の管理、看護、医学的管理下における介護その他の世話及び機能訓練その他必要な医療を行う。

なお、平成21年度介護報酬改定において、若年性認知症者を受け入れた施設や事業所に対し、報酬上評価する「若年性認知症利用者受入加算(※)」を創設したところであるので、若年性認知症利用者本人や家族の要望を踏まえた積極的な受入れをお願いする。

(※)若年性認知症利用者受入加算

若年性認知症利用者に対して個別の担当者を定め、介護保険サービスを行った場合に加算する。

・ 加算単位 入所の場合1日120単位 通所の場合1日60単位

(介護予防通所介護、介護予防通所リハは240単位/月)

・ 対象施設、事業所

介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、認知症対応型共同生活介護、短期入所生活介護、短期入所療養介護、短期利用共同生活介護、地域密着型介護福祉施設、介護予防短期入所生活介護、介護予防短期入所療養介護、介護予防認知症対応型生活介護、介護予防短期利用共同生活介護、通所介護、通所リハビリテーション、認知症対応型通所介護、介護予防認知症対応型通所介護、介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーション

3 今後の若年性認知症対策

厚生労働省においては、平成21年4月から次の国庫補助事業を創設し、相談から具体的な支援に至るまでの施策の充実を図ることとしているので、積極的に実施されたい。

特に、認知症対策連携強化事業においては、2に例示したようなサービスを若年性認知症者一人ひとりの状態に応じて適切に組み合わせて提供するための認知症連携担当者を認知症疾患医療センターが所在する市町村の地域包括支援センターに配置することとしたので、特段の配慮をお願いする。

(1) 認知症対策連携強化事業(若年性認知症支援に関する抜粋)

地域包括支援センターに配置された認知症連携担当者が、認知症疾患医療センター等から提供された情報に基づき、若年性認知症の確定診断を受けた者及びその家族に対し、在宅介護の方法や地域の保健医療サービス及び介護サービス等に関する情報を提供するとともに、必要なサービスの利用に関する相談に応じ、必要な支援を行う。

また、就労継続に関する支援や障害福祉サービスの利用等介護サービス以外の支援が必要な場合は、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、障害福祉サービスの相談支援事業者、就労継続支援B型事業者等若年性認知症者の状態や本人・家族の要望等を踏まえ、適切な支援機関と連携し、具体的なサービスにつなげる。

(2) 若年性認知症コールセンター運営事業(平成21年10月実施予定)

若年性認知症に関して、誰もが気軽に相談でき、早期に認知症疾患医療センター、地域包括支援センターの認知症連携担当者、雇用・就労、障害福祉、介護等の各種サービスへ適切に結びつけられるよう、若年性認知症コールセンターを全国に1か所開設することとしたところである(認知症介護研究・研修大府センターに開設予定)。

(3) 若年性認知症自立支援ネットワーク構築事業

本事業においては、若年性認知症者の発症初期から高齢期に至るまでの各期において適切な支援を行う各事業者へつなぐことができるよう、地域包括支援センターに新たに配置する認知症連携担当者が中心となり、都道府県の区域内を担当する若年性認知症自立支援ネットワークを構築することとしたところである。

本ネットワークは、都道府県や障害保健福祉圏域毎に設置されている障害者就労支援ネットワークの活用を想定しており、今後、各都道府県の関連部局、各都道府県労働局及び認知症連携担当者は緊密な連携を図ることが求められるところである。

なお、若年性認知症ネットワーク研修事業によって、ネットワーク構成員に対する若年性認知症に関する研修の実施についても受講者の募集、研修場所の提供等、円滑な実施が図られるよう併せて協力をお願いする。

(4) 広報・啓発

若年性認知症に関する理解を促進するため、各都道府県においては、「若年性認知症自立ネットワーク」を活用し、若年性認知症の症状や活用可能な施策及び認知症連携担当者の役割等に関するパンフレットを作成し、ネットワーク参加団体に対し周知するなど、積極的に実施されたい。

(5) 若年性認知症ケア・モデル事業

本事業は若年性認知症者の身体機能やニーズに合ったケアの研究・開発、普及を目的としていることから、本事業を実施又は実施を予定している都道府県においては、若年性認知症ケア・モデル事業所の選定に当たり、従来の介護保険サービスや障害福祉サービスにとらわれない若年性認知症対応型のサービスを展開している事業所に対し、本事業の活用を促すなどにより、積極的に実施されたい。