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○電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の趣旨、定義、第二条の解釈、第三条の解釈、三カ年の期限附立法とされた趣旨

(昭和28年8月12日)

(労働省発労第27号)

(各都道府県知事あて労働次官通知)

【電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の趣旨】

電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律(昭和二十八年法律一七一号)が八月七日に公布され、即日施行となつた。この法律は、昨冬行われた電産炭労両争議が国民経済及び国民の日常生活に与えた甚大な損害と脅威との苦い経験に鑑み且つは、電気、石炭両産業の特殊性及び重要性並びに労使関係の現状に照らし、争議権と公益との調和を図り以って公共の福祉を擁護するために、電気、石炭両産業における争議行為の方法のうち社会通念上正当でないものの範囲を明確にしたものである。もとより労使関係の事項については、法を以て規律するよりは、労使双方の責任の自覚と良識とによる健全な慣行の成熟に俟つことが望ましいことは云う迄もない所であるが、この法律は右に述べた如く、当面、専ら公共の福祉擁護の必要に対処せんとするものであるから、当該労使関係はもとより、広く一般国民が、本法の真意を充分に理解し、公正なる世論の下健全にして良識ある労使関係が確立されることを期待する次第である。

【定義】

(一) 削除

(二) 本法にいう「石炭鉱業」とは、鉱業法により石炭の試掘、採掘及びこれに附属する選炭その他を行う事業をいうのであつて、亜炭鉱業は含まれない。

【第二条の解釈】 削除

【第三条の解釈】

(一) 本条にいう「事業主」とは、鉱山保安法第二条にいう鉱業権者(租鉱権者を含む。)をいう。

(二) 本条にいう「保安の業務の正常な運営」とは、鉱山保安法に規定する保安業務即ち鉱山における人に対する危害の防止、鉱物資源の保護、鉱山の施設の保全及び鉱害の防止のための業務が同法及び石炭鉱山保安規則の規定に基いてなされることを意味する。

(三) 然し乍ら前記保安の業務の正常な運営を停廃する行為がすべて本条違反となるのではなく、そのうち、人に対する危害、鉱物資源の滅失若しくは重大な損壊、鉱山の重要な施設の荒廃又は鉱害を生ぜしめるもののみが該当する。但し、本条は、第二条の場合と同様、本条所定の結果が現実に生じなくてもかかる結果を生ずる客観的な具体的可能性のあるものである限り禁止するものである。

(四) 「人に対する危害」の防止については結果的には鉱山労働者に関する限り労働関係調整法第三十六条と殆ど重複するが、念のために本条において重ねて規定したものである。

(五) 本条にいう「鉱物資源の滅失若しくは重大な損壊」とは、例えば自然発火して石炭資源が焼失したり、炭坑が溢水或は陥没により復旧不可能又は復旧困難となつてしまうような場合をいい、その程度如何により「滅失」になり「重大な損壊」になるものである。

(六) 本条にいう「重要な施設」とは、当該炭坑としての価値効用を維持する上に不可欠な施設をいい、例えば、通気、排水の施設等はこれにあたる場合が多い。「荒廃」とは、右の施設の効用が相当期間又は永久に廃せられる程度の損傷を来すことをいう。何が「重要な施設の荒廃」であるかは当該炭坑の客観的諸条件によつて定まる。

(七) 本法は、第二条違反の場合と同様本条違反の行為に対しても罰則規定を設けていないが、かかる違反行為は、刑事上の免責を失うから鉱山保安法第五十六条第五号の罰則(同法第五条及び第三十条参照)の適用を受け、更に場合によつては刑法の溢水罪その他の刑罰が適用されることになる。その他、民事上の責任及び不当労働行為についても又指令に関しても第二条関係において述べたと同様である。

(八) 石炭鉱山における保安業務の内容は、各鉱山の炭層、地質、温度、地圧又は採掘方法等の自然的技術的な諸条件によつて、鉱山毎に夫々異るものであるから、本条に該当する保安業務の具体的範囲も、一律に定めることは出来ないのであつて、各鉱山の夫々の状況によつて客観的に定まるものであるが、坑内排水ポンプ、扇風機の運転の業務、ガス等の測定業務、通信見張等の警戒連絡の業務、坑道の維持補強の業務、落盤、出水、自然発火等に対する応急の処置の業務等がこれに当る場合が多い。

(九) 争議中における保安要員の範囲については、各鉱山の諸条件により客観的に定まるべきものであり、従来とも労使間に殆ど争のなかつたところであるが、本条の趣旨に基き保安の確保を円滑適正に行う為に、必要な事項を予め協定しておくことが望ましい。

(十) 事業主も本条に違反してロツク・アウトその他の争議行為を行い得ないこと及び本条が石炭鉱山における正当でない争議行為のすべてを規定しているものでないことは、第二条関係において述べたところと同様である。

【三カ年の期限附立法とされた趣旨】

この法律は、三カ年の期限附立法とされているのは、この間に、本法に定める如き違法行為が将来に惹起されないような労使関係の健全な慣行の確立を期待している趣旨である。