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○郵便による投票
(昭和30年10月14日)
(宮城県労働部長あて労働省労政局労働法規課長通知)
(一) 質問二について
労組法上、「直接無記名投票」という言葉が用いられているのは、第五条第二項第五号、第八号及び第九号の三箇所であるが、これら各号にいう直接投票とは、投票者の意思が、介在者自身の意思を経て表明されるのではなく、直接最終的なものとして表明される投票をいう。
また無記名投票とは、形式的には投票用紙に投票者の氏名を記載しない投票を云うが、法の趣旨は、誰がいかなる意思を表示したかを秘密にすることによつて、投票者が自由にその意思を表示できるようにすることにあるから、実質的には秘密投票を意味するものと解すべきである。従つて郵便による投票が労組法にいう無記名投票に該当するといい得るためには、単に投票用紙に投票者の氏名が記載されていないのみならず、投票管理上も投票の秘密が保障されていなければならない。
(二) 質問一について
規約に基く投票の有効、無効は、一にその規約の定めるところによるのであるが、役員選挙又は同盟罷業の開始の決定について、規約上、単に、組合員の直接無記名投票によるとのみ規定されている場合は、その直接無記名投票とは一般に、労組法上の直接無記名投票と同義と解される。従つて、照会にかかる郵便による投票が、前記(一)の意味における直接投票であり、かつ、無記名投票である限りは、その投票は、規約の当該条項に反するものではなく、従つて、所定の投票用紙を用いていること、被選挙資格ある者に対する投票であること等投票に関する他の有効用件を充す限り、有効と解すべきである。
これに対し、規約において役員選挙又は同盟罷業の開始の決定は大会において出席組合員の直接無記名投票によることとされている場合には照会にかかるような郵便による投票は、一般に、無効であると解する。
(三) 質問三について
「組合員資格の一時停止」の意味が明らかでないので、回答し難いが、一般には客観的にみて已むを得ない事由が存し、その事由と権衡を失しない程度のものである限り、組合員の権利義務の一部を差別して取扱っても、労組法第五条第二項第三号にてい触するものではないと解される。
(参考)
一 長期療養休暇中の組合員が役員選出或いはスト突入のための直接無記名投票に投票紙を封入した封筒を以て郵送し、投票権を行使せざるを得ない状態にある場合、此れを無効とするか、有効とするか。
二 直接無記名投票の解釈は如何(労組法上に於ける)(特に郵送投票の場合)
三 長期休養中の組合員を療養休暇期間中、組合員たる資格を一時停止させる旨の条文を規約中に定める事が違法か。
(昭和30年9月14日 石巻労政事務所内長沼豊発)