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○医薬品の販売名の類似性等による医療事故防止対策の強化・徹底について(注意喚起)〔薬事法〕

(平成20年12月4日)

(/医政発第1204001号/薬食発第1204001号/)

(各都道府県知事・各保健所を設置する市の市長・各特別区区長あて厚生労働省医政局長・厚生労働省医薬食品局長通知)

医療機関における医療事故防止対策については、これまで、平成15年11月27日付け医政発第1127004号・薬食発第1127001号厚生労働省医政局長・医薬食品局長通知「医療機関における医療事故防止対策の強化について」、平成16年6月2日付け医政発第0602012号・薬食発第0602007号厚生労働省医政局長・医薬食品局長通知「医療機関における医療事故防止対策の強化・徹底について」により、その取組強化が図られるよう、貴管下医療機関に対し周知徹底方お願いしてきたところである。

しかしながら、医療事故情報収集等事業においても、依然として医薬品の使用に関連する取り違え事例等が報告されているところである。さらに、今般、ヒドロコルチゾン製剤「サクシゾン」と筋弛緩剤「サクシン注射液」を誤って処方し投与したことによる死亡事故が発生したことから、各製造販売業者に対し各医療機関への注意喚起を行うよう指示したところである。

ついては、貴管下医療機関及び薬局において、患者の生命に直接かかわる可能性のある医薬品による取り違え事故等を防止するため、医薬品の販売名がお互いに類似している等の医薬品を処方、調剤、投与する際には、医療関係者が相互に確認・照会等を行う等協力して、医療事故防止対策の取組強化が図られるよう、改めて周知徹底方お願いする。

あわせて、貴管下医療機関及び薬局においては、処方、調剤、投与等における誤りは、患者に重篤な健康被害を及ぼす可能性があることから、販売名の類似性に注意を要する医薬品の安全な使用及び特に安全管理が必要とされた医薬品の適切な管理によって、医療事故を防止するため、下記の1~5までの事項についての確認及び検討を行うよう指導方お願いしたい。

次に掲げる事項について、医療機関の管理者又は薬局の開設者の指示の下に、医薬品の安全使用のための責任者(以下「医薬品安全管理責任者」という。)は、各医療機関及び薬局における使用状況下で、各事項が相互に関連し効果的に機能するよう実施体制の確保を図られたい。なお、病院及び患者を入院させるための施設を有する診療所においては、安全管理委員会との連携の下に行うこと。

1 各医療機関における採用医薬品の再確認

医薬品の販売名の類似性に起因した取り違えを防ぐため、各医療機関においては、次に掲げる薬剤(別添1)の採用状況を確認し、事故防止のため、採用規格や名称類似性等に関する確認を行い、その薬剤を採用する必要性について改めて検討すること。

・ 平成15年11月27日付け医政発第1127004号・薬食発第1127001号厚生労働省医政局長・医薬食品局長通知「医療機関における医療事故防止対策の強化について」の別添に記載されている薬剤

・ 医療事故情報収集等事業において、薬剤の名称が類似していることによる取り違え等の報告があった医薬品

なお、財団法人日本医薬情報センター(JAPIC)が運用する「医薬品類似名称検索システムホームページ」(URL:http://www.ruijimeisho.jp/)において、他の既採用薬同士や新規採用薬との名称類似性を調べることができるので、併せて参考とされたい。

・ 平成20年3月25日付け厚生労働省医政局総務課・医薬食品局安全対策課事務連絡「医療用医薬品類似名称検索システムの公開について(情報提供)」

http://www.info.pmda.go.jp/iryoujiko/file/20080325-1.pdf

2 医薬品の安全使用のための方策についての確認・検討

1) 医薬品の安全使用のための手順書の見直し

各医療機関及び薬局で定める医薬品の安全使用のための業務に関する手順書(以下「医薬品業務手順書」という。)に基づき、特に安全管理が必要とされた医薬品(別添2を参考に各医療機関及び薬局が定めるもの。以下「要安全管理医薬品」という。)について、その妥当性及び取扱い上の注意を検討するとともに、医薬品業務手順書に基づく業務の実施状況及びその方策が有効に機能しているかどうかについて確認し、同手順書の内容を改めて検討すること。

なお、各医療機関及び薬局において医薬品業務手順書を見直す際には、「医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアル」(平成19年3月30日付け医政総発第0330001号、医薬総発第0330001号通知別添)を参考とされたい。

・ 「「医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアルについて」(通知)

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/070330-8.pdf

・ 「手順書作成マニュアル」

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/070330-1a.pdf、

・ 「手順書作成マニュアル」巻末資料(別添2)

・ 「手順書作成マニュアル巻末参考」

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/070330-1b.pdf

2) 従業者に対する医薬品の安全使用のための方策の周知徹底

採用医薬品の再確認や医薬品業務手順書の見直し等を踏まえ、販売名の類似性に注意を要する医薬品及び要安全管理医薬品について、その使用目的及び取り違え・誤使用等を防止する方策や適正に使用する方法等について、従業者に対し、改めて周知徹底すること。

3 処方せん等の記載及び疑義内容の確認の徹底

販売名の類似性に注意を要する医薬品及び要安全管理医薬品を処方する場合並びに当該薬剤を投与する患者を他の医療機関又は他の診療科に紹介する場合にあっては、当該薬剤名を確認し、服用方法及び用量等を処方せん又は紹介状等に分かりやすく記載すること。

また、注射薬など、医薬品業務手順書における要安全管理医薬品が処方又は指示された場合、処方医、診療科を確認し、処方せん等における医薬品名、服用方法及び用量等に疑義がある場合には、処方医に対して疑義照会を徹底して行うこと。処方内容に関する照会や確認が円滑に行われるよう、職種間の連携体制を築くこと。

特に、今般の医療事故に鑑み、ヒドロコルチゾン製剤「サクシゾン」と筋弛緩剤「サクシン注射液」の使用に対しては十分注意されたい。

(参考)

http://med2.astellas.jp/med/jp/message/20081121SC.pdf

http://www.kowa-souyaku.co.jp/medical/product/inform/market/szv_0807.pdf

4 オーダリングシステム等の病院情報システムにおける工夫

オーダリングシステム等の病院情報システムを導入して処方が行われている医療機関においては、同システムの薬剤選択機能や警告画面表示について、例えば、その医薬品の性質等を示す用語等が販売名に付加される表示方法や、薬剤選択画面表示及び警告画面表示等において、リスクに応じた確認方法とする等、誤処方を防止する対策を検討されたい。

5 医薬品の安全使用のために必要となる情報の収集等について

医療法及び薬事法の規定により、医薬品安全管理責任者は、医薬品の安全使用のために必要となる情報の収集その他の医薬品の安全使用を目的とした改善のための方策を実施し、情報収集・管理を行い、必要な情報について当該情報に係る医薬品を取り扱う従業者に迅速かつ確実に周知徹底を図る必要がある。

また、迅速な安全性情報の収集を可能にし、その業務を円滑に実施するため、医薬品・医療機器の安全性に関する特に重要な情報が発出された際に、電子メールによる情報配信を行う「医薬品医療機器情報配信サービス」があり、以下のURLから無料で登録できるので、積極的に活用されたい。

・ 「独立行政法人医薬品医療機器総合機構医薬品医療機器情報配信サービス」

http://www.info.pmda.go.jp/info/idx-push.html

なお、別添3のとおり、社団法人日本病院薬剤師会から平成20年11月21日付けで「疑義照会の徹底及び医薬品安全管理手順書の緊急点検について」が通知されているので、上記の事項を実施する際の参考とされたい。

・ 「疑義照会の徹底及び医薬品安全管理手順書の緊急点検について」

http://www.jshp.or.jp/cont/081121-2.pdf

(留意事項) 本通知の内容については、貴管下医療機関の医療に係る安全管理のための委員会の関係者、安全管理者、医薬品及び医療機器の安全使用のための責任者並びに薬局の医薬品の安全使用のための責任者等に対し、周知・徹底されるよう御配慮願います。

[別添1]

薬剤の名称の類似性等に注意を要する医薬品について

「医療機関における医療事故防止対策の強化について」(平成15年11月27日付け医政発第1127004号・薬食発第1127001号厚生労働省医政局長・医薬食品局長通知)の別添及び医療事故情報収集等事業において、薬剤の名称の類似性等が指摘されている取り違え等の報告があった医薬品は以下のとおり。

(1) 平成15年11月27日付け医政発第1127004号・薬食発第1127001号厚生労働省医政局長・医薬食品局長通知「医療機関における医療事故防止対策の強化について」の別添

URL:http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/031127-1.pdf

1 誤処方による事故、ヒヤリハット報告があった医薬品名の組み合わせ

・アマリール、アルマール

・サクシン、サクシゾン

・タキソール、タキソテール

・ノルバスク、ノルバデックス

・オーダーリングシステム等を採用している医療機関において先頭3文字が同一の医薬品

2 名称類似によると思われる調剤エラーや誤投与のヒヤリハット報告が複数あったもの

・アロテック、アレロック

・ウテメリン、メテナリン

・テオドール、テグレトール

・プレドニン、プルゼニド

(2) 医療事故情報収集等事業

URL:http://jcqhc.or.jp/html/accident.htm#med-safe

1 平成16年10月~平成18年12月までに、医療事故情報等事業に報告された薬剤の名称が類似していることに関連した事例

(医療安全情報NO.4「薬剤の取り違え」(2007年3月)URL:http://www2.jcqhc.or.jp/html/documents/pdf/med-safe/med-safe_4.)

・タキソール注射液、タキソテール注(再掲)

・セフメタゾン静注用、注用セフマゾン

・ファンガード点滴用、ファンギゾン

・アレロック錠、アレリックス錠

・アルマール錠、アマリール錠(再掲)

・ラクテックD注、ラクテック注

2 平成19年1月~平成19年12月までに、医療事故情報等事業に報告された薬剤の名称が類似していることに関連した事例

(平成19年年報 「Ⅳ 医療安全情報の提供 1医療安全情報の提供事業の概要」(216頁))

・ニューロタン錠、ニューレプチル(内服)

・スロービッド(内服)、スローケー錠

・ヒルトニン(注)、ヒルナミン(注)

・フェノバール散、フェニトイン散

[別添2]

巻末資料:

平成19年3月30日付け「医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアル

[特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)例]

下記の医薬品は、事故発生により患者に及ぼす影響の大きさに十分配慮し、使用上及び管理上、特に安全な取り扱いに留意しなければならない。

内服薬を主とした記載となっており、「注射薬に関する特記事項」を別途記載した。剤形によらず、各項目に該当する医薬品の取り扱いには注意が必要である。

なお、規制医薬品(麻薬、覚せい剤原料、向精神薬(第1種、第2種)、毒薬・劇薬)については、関係法規を遵守されたい。

( )内は代表的な商品名

1.投与量等に注意が必要な医薬品

○ 抗てんかん薬

フェノバルビタール(フェノバール)、フェニトイン(アレビアチン)、カルバマゼピン(テグレトール)、バルプロ酸ナトリウム(デパケン)等

○ 向精神薬

ハロペリドール(セレネース)、レボメプロマジン(ヒルナミン)、エチゾラム(デパス)等

○ ジギタリス製剤

ジギトキシン、ジゴキシン(ジゴシン)等

○ 糖尿病治療薬

経口血糖降下剤(グリメピリド(アマリール)、グリベンクラミド(オイグルコン、ダオニール)、グリクラジド(グリミクロン)等)等

○ テオフィリン製剤

テオフィリン(テオドール、テオロング)、アミノフィリン(ネオフィリン)等

○ 抗がん剤

タキソテール(ドセタキセル)、タキソール(パクリタキセル)、シクロホスファミド(エンドキサン)、メルファラン(アルケラン)等

○ 免疫抑制剤

シクロホスファミド(エンドキサンP)、シクロスポリン(ネオーラル、サンディミュン)、タクロリムス(プログラフ)等

2.休薬期間の設けられている医薬品や服薬期間の管理が必要な医薬品

メトトレキサート(リウマトレックス)、ティーエスワン、ゼローダ、ホリナート・テガフール・ウラシル療法薬(ユーゼル・ユーエフティ)等

3.併用禁忌や多くの薬剤との相互作用に注意を要する医薬品

イトラコナゾール(イトリゾール)、ワルファリンカリウム(ワーファリン)等

4.特定の疾病や妊婦等に禁忌である医薬品

ガチフロキサシン(ガチフロ)、リバビリン(レベトール)、エトレチナート(チガソン)等

5.重篤な副作用回避のために、定期的な検査が必要な医薬品

チクロピジン(パナルジン)、チアマゾール(メルカゾール)、ベンズブロマロン(ユリノーム)、ピオグリタゾン(アクトス)、アトルバスタチン(リピトール)等

<注射薬に関する特記事項>

1.心停止等に注意が必要な医薬品

○ カリウム製剤

塩化カリウム(KCL)、アスパラギン酸カリウム(アスパラカリウム)、リン酸二カリウム等

○ 抗不整脈薬

ジゴキシン(ジゴシン)、キシロカイン(リドカイン)等

2.呼吸抑制に注意が必要な注射薬

○ 筋弛緩薬

塩化スキサメトニウム(サクシン、レラキシン)、臭化ベクロニウム(マスキュラックス)等

○ 麻酔導入・鎮静薬、麻薬(モルヒネ製剤)、非麻薬性鎮痛薬、抗てんかん薬 等

3.投与量が単位(Unit)で設定されている注射薬

○ インスリン(100単位/mL)

○ ヘパリン(1000単位/mL)

4.漏出により皮膚障害を起こす注射薬

○ 抗悪性腫瘍薬(特に壊死性抗悪性腫瘍薬)

マイトマイシンC(マイトマイシン)、ドキソルビシン(アドリアシン)、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ビンクリスチン(オンコビン)等

○ 強アルカリ性製剤

フェニトイン(アレビアチン)、チオペンタール(ラボナール)、炭酸水素ナトリウム(メイロン)等

○ 輸液補正用製剤

マグネシウム製剤(硫酸マグネシウム)、カルシウム製剤(塩化カルシウム)、高張ブドウ糖液等

○ その他

メシル酸ガベキサート(エフオーワイ)、造影剤等

[別添3]

○疑義照会の徹底及び医薬品安全管理手順書等の緊急点検について

(平成20年11月21日)

(医薬品安全管理責任者・薬剤部長あて(社)日本病院薬剤師会会長・医療安全対策委員会委員長通知)

今般徳島県で発生したサクシンとサクシゾンの処方違いによる医療事故に鑑み、各医療機関では下記の点につき、疑義照会の徹底と「医薬品の安全使用のための業務に関する手順書」に関して再検討を行うとともに、その実施状況について緊急点検を実施して下さい。

1 筋弛緩薬に関する疑義照会を徹底して下さい

筋弛緩薬が、通常注射オーダされることがない、あるいは注射オーダ頻度が少ない診療科の医師から処方された場合には、他の薬剤とのオーダーエラーが発生している可能性を考慮し、処方医に対して疑義照会を徹底して行って下さい。なおその際には、処方意図を確認する等、具体的な疑義内容を示して照会を行うことが重要です。

2 オーダリング等における薬剤名称表示を工夫して下さい

オーダリングや電子カルテ等、病院情報システムを利用して処方が行われている施設においては、名称の前に下記の例のように筋弛緩薬等の文字を付加して、当該薬剤が筋弛緩薬であることを明示する、あるいは索引名の頭にハイリスク薬である記号等を付加して他の薬剤と同時に検索されないことにする等の工夫を行ってください。

例.★筋弛緩薬★サクシン注○○mg(筋弛緩薬であること、規格を明記すること)

3 名称類似医薬品の取扱等について

名称類似等医薬品関連の医療事故を防止するための対策については、これまでも当委員会から注意喚起をしてきましたが(参考文献参照)、名称類似の薬剤選択のエラーを防止する為に、一方を採用中止にする方法は、医療機関が単独で行える方法ではありますが、オーダリングシステムの薬剤選択や警告画面で注意喚起されないで、確定画面に展開する等の事例が見受けられます。また、医師が異動した為に、採用薬剤名や規格を十分に把握されていない可能性もありますので、この対策方法は抜本的なものではないことを再確認して下さい。

また、薬剤選択については、できれば五十音方式ではなく、薬効別選択方式、あるいは医師別に使用薬剤を登録する方式など、各医療機関で使用しているシステムの薬剤選択機能を再確認して、その活用についてあらためて検討を行って下さい。

なお、当委員会では、今後病院情報システムを担当する保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)と安全な薬剤選択方法について話し合いを行う予定です。

4 医薬品安全管理手順書等の緊急点検をして下さい

今般の事故事例を参考に、医薬品安全管理責任者は、各医療機関で定める「医薬品の安全使用のための業務に関する手順書」のハイリスク薬に関する定義品目および手順等の妥当性について改めて検討を行うとともに、その実施状況について緊急点検を行って下さい。また、当該医療機関におけるハイリスク薬及びその取扱に関して院内で各職種に周知徹底を図って下さい。

【参考文献】

日本病院薬剤師会リスクマネジメント対策特別委員会からの通知

平成15年10月27日:「医薬品関連医療事故防止への病院薬剤師の緊急自己点検について」(http://www.jshp.or.jp/cont/031027.pdf)

平成15年11月12日:「処方点検や調剤時、病棟への供給時に注意を要する医薬品について」(http://www.jshp.or.jp/cont//031112.pdf)

平成16年5月10日:「医薬品管理と患者安全に資する調剤方法の更なる徹底について」(http://www.jshp.or.jp/cont/040511.pdf)