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○貸付事業向けの総合的な監督指針の一部改正について

(平成20年3月27日)

(社援発第0327001号)

(各都道府県知事あて厚生労働省社会・援護局長通知)

標記について、別添のとおり改正したので通知する。

今般の改正は、消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律(平成平成19年法律第47号)の施行及び消費生活協同組合法施行規則の一部を改正する等の省令(平成20年厚生労働省令第38号)の施行に伴い、その一部を改正するものである。

なお、この通知は、地方自治法第245条の4第1項の規定による技術的な助言である。

[貸付事業向けの総合的な監督指針]

平成20年4月

厚生労働省社会・援護局

目次

Ⅰ 基本的考え方

Ⅰ―1 貸付事業の監督に関する基本的考え方

Ⅰ―1―1 貸付事業の監督の目的

Ⅰ―1―2 貸付事業監督の基本的枠組み

Ⅰ―1―3 貸付事業監督担当の基本的役割

Ⅰ―1―4 貸付事業の監督に当たっての基本的考え方

Ⅰ―2 監督指針策定の趣旨

Ⅱ 貸付事業の監督に当たっての評価項目

Ⅱ―1 経営管理等

Ⅱ―2 業務の適切性

Ⅱ―2―1 法令等遵守(コンプライアンス)態勢等

Ⅱ―2―2 苦情対応態勢

Ⅱ―2―3 不祥事件に対する監督上の対応

Ⅱ―2―4 認可された事業所等以外での事業禁止等

Ⅱ―2―5 資金需要者等の情報の管理

Ⅱ―2―6 外部委託

Ⅱ―2―7 証明書の携帯等

Ⅱ―2―8 禁止行為等

Ⅱ―2―9 生命保険契約の締結に係る制限

Ⅱ―2―10 利息、賠償額の予定

Ⅱ―2―11 債務履行担保措置業者との契約締結の禁止及び保証業者と保証契約を締結することの禁止

Ⅱ―2―12 勧誘及び契約締結時の説明態勢

Ⅱ―2―13 過剰貸付けの禁止

Ⅱ―2―14 広告規制

Ⅱ―2―15 多重債務者等に対する生活再建計画の策定

Ⅱ―2―16 書面の交付義務

Ⅱ―2―17 帳簿の備付け等

Ⅱ―2―18 帳簿の閲覧、謄写

Ⅱ―2―19 取立行為規制

Ⅱ―2―20 債権譲渡

Ⅱ―2―21 債務者等以外の者からの債務の弁済の禁止

Ⅱ―2―22 貸付事業取扱責任者

Ⅱ―3 業務の透明牲の確保

Ⅲ 貸付事業の監督に係る事務処理上の留意点

Ⅲ―1 一般的な事務処理等

Ⅲ―1―1 一般的な監督事務

Ⅲ―1―2 検査担当との連携

Ⅲ―2 貸付事業規約の設定及び行政庁の認可

Ⅲ―3 行政処分を行う際の留意点

Ⅲ―4 その他の留意事項

Ⅰ.基本的考え方

Ⅰ―1 貸付事業の監督に関する基本的考え方

Ⅰ―1―1 貸付事業の監督の目的

消費生活協同組合法(昭和23年法律第200号。以下「法」という。)では、組合が預金、貯金又は定期積金の受入れ等を行うことを禁止しているところであるが、組合員に対し生活に必要な資金を貸付ける事業については、組合員の多様な資金需要に応え、生活の安定と生活文化の向上に寄与するものとして実施されているところである。

しかしながら、組合が貸付事業を行う場合には、貸金業法(昭和58年法律第32号)の規定による貸金業には当たらず、同法に基づく業務規制の対象外となっている。

貸金業法に基づく民間の貸金業の利用については、その対価として高い金利が求められ、返済可能性を十分に考慮しない安易な借入れが多重債務化につながりやすいとの指摘がある。また、貸金業者のビジネスモデルについても、適切な規制や監督を欠く場合には、このようなリスクを利用者に理解させ債務者の破綻を未然に防止する取組みが不十分なまま、過度な貸付けや債権回収が行われるおそれがあると指摘されており、平成18年12月20日に公布された貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律(平成18年法律第115号)は、このような指摘を踏まえ、多重債務問題の解決と貸金業の健全化に資する措置が包括的に規定された。

従前の法においては、貸付事業に関する規制が法律上設けられていなかったことから、貸金業法改正の経緯等も踏まえ、平成19年5月に公布された消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律(平成19年法律第47号)において、貸付事業を組合員に対し生活に必要な資金を貸付ける事業として法律上明確に位置づけるとともに、貸付事業の適正な運営の確保及び資金の貸付けを受ける組合員の利益の保護を図るために必要な措置を講じること、組合が保有する最低純資産額規制の導入、貸付事業規約の設定及び行政庁の認可制の導入等を規定したところであり、平成19年12月19日に施行することとした。

この法に基づき、組合員の相互扶助組織という協同組合の特質を前提とし、かつ、組合の貸付事業の適正な運営の確保と資金の貸付けを受ける組合員の利益の保護を図ることを監督の目的とする。

Ⅰ―1―2 貸付事業監督の基本的枠組み

組合は、貸付事業を行おうとするときは、貸付事業規約で、実施方法及び貸付けの契約に関して厚生労働省令で定める事項を定めるとともに、貸付事業の適正な運営の確保及び資金の貸付けを受ける組合員の利益の保護を図るために必要な措置であって厚生労働省令で定めるものを講じなければならないこととし、その内容を内部規則等に定める必要がある。

また、組合が行う貸付事業は、法第13条に規定する組合員に対し生活に必要な資金を貸付ける事業のみを対象としており、組合員が行う事業に対する貸付け並びに金銭の貸付け以外の金銭の貸借の媒介、手形の割引及び売渡担保等の行為を組合として実施することはできないこととなっている。

なお、組合が行う貸付事業の実施方法として、いわゆるリボルビング契約等の極度方式基本契約に基づく貸付けや根保証契約を行うことは適切ではない。

貸付事業の監督に当たっては、組合の法令等遵守態勢や経営管理態勢等を的確に把握し、貸付事業規約、内部規則等に基づいて業務が運営されているかどうか、それらの変更等の監督上の措置を十分に活用して、業務の健全性の確保に努める必要がある。

Ⅰ―1―3 貸付事業監督担当の基本的役割

貸付事業の監督に当たっては、検査担当の「オンサイト」と監督担当の「オフサイト」の双方のモニタリング手法を適切に組み合わせることが重要であり、実効性の高い監督を実現するためには、両担当が適切な連携の下、それぞれの機能を的確に発揮することが求められる。

このような枠組みの中で、監督担当の役割は、検査と検査の間の期間においても、継続的に情報の把握・分析を行い、貸付事業の健全性や適切性に係る問題を早期に発見するとともに、必要に応じて行政処分等の監督上の措置を行い、問題が深刻化する以前に改善のための働きかけを行っていくことである。

具体的には、貸付事業を行う組合に対して資金需要者等の保護策を始めとする各種法令等遵守の徹底を求めていくとともに、組合との意見交換等や利用者からの苦情等の受付を通じて貸付事業を行う組合の事業の状況を適切に把握し、事業の適正な運営の確保等に向けた自主的な取組みを早期に促していくことが、監督担当の重要な役割といえる。

特に、監督担当は、個別組合の状況のみならず、所管する組合全体の状況についても幅広く知る立場にあることから、他の組合との比較分析を通じて、当該組合が全体の中でどのような状況に置かれているかを的確に把握し、当該組合への還元及びヒアリングなどを通じて、適切に問題改善を促していくことが重要である。

Ⅰ―1―4 貸付事業の監督に当たっての基本的考え方

上記を踏まえると、貸付事業の監督に当たっての基本的考え方は次のとおりである。

(1) 検査担当との適切な連携の確保

監督担当と検査担当が、適切な連携を図り、オンサイトとオフサイトの双方のモニタリング手法を適切に組み合わせることで、実効性の高い貸付事業の監督を実現することが重要である。このため、監督担当においては、検査担当との連携について、以下の点に十分留意することとする。

① 検査を通じて把握された問題点について、監督担当は、問題点の改善状況をフォローアップし、その是正につなげていくよう努めること。また、必要に応じて、行政処分等厳正な監督上の措置を講じること。

② 監督担当がオフサイト・モニタリングを通じて把握した問題点については、次回検査において活用されるよう、検査担当に還元すること。

(2) 組合との十分な意思疎通の確保

貸付事業の監督に当たっては、組合の経営に関する情報を的確に把握・分析し、必要に応じて、適時・適切に監督上の対応につなげていくことが重要である。このため、監督担当においては、組合からの報告に加え、組合との健全かつ建設的な関係の下で、日頃から十分な意思疎通を図り、積極的に情報収集する必要がある。具体的には、組合との定期的な面談や意見交換等を通じて、組合との日常的なコミュニケーションを確保し、財務情報のみならず、経営に関する様々な情報についても把握するよう努める必要がある。

(3) 組合の自主的な努力の尊重

監督担当は、組合員の協同組織である組合の自己責任原則に則った経営判断について、法令等に基づき検証し、問題が認められた場合は改善を促していく立場にある。また、組合は、組合員の相互扶助を目的とした組織であるという特色を有しており、貸付事業の監督に当たっては、組合固有の特性等を十分に踏まえ、事業運営に関する自主的な努力を尊重するよう配慮しなければならない。

(4) 効率的・効果的な監督事務の確保

監督担当及び組合の限られた資源を有効に利用する観点から、監督事務は効率的・効果的に行われる必要がある。したがって、組合に報告や資料提出等を求める場合には、監督事務上、真に必要なものに限定するよう配意するとともに、現在行っている監督事務の必要性や方法等について常に点検を行い、必要に応じて改善を図るなど、効率性の向上を図るよう努めなければならない。

Ⅰ―2 監督指針策定の趣旨

法は、国民の自発的な生活協同組織の発達を図り、もって国民生活の安定と生活文化の向上を期することを目的としている。特に、貸付事業は、多様な資金需要に応える利便性向上を追求するのみならず、利用者の安心と信頼を確保する取り組みを強化することが不可欠である。

このような状況の中で、本監督指針は、各種規制の基本的考え方、監督上の着眼点と留意すべき事項、具体的な監督手法について体系的に整備するとともに、特に、組合の経営状況や法令等遵守態勢を把握することが、事後チェック型行政を適切に行うための前提となるため、これらについて記載することとした。

なお、本監督指針に記載されている監督上の評価項目については、組合の業態等の多様性にかんがみれば、必ずしも、その全てが各々の組合に適用しえない可能性もあり、機械的・画一的な運用に陥らないように配慮する必要がある。一方、評価項目に係る機能が形式的に具備されていたとしても、組合の業務の適切性等の確保の観点からは必ずしも十分とは言えない場合もあることに留意する必要がある。

本省及び各地方厚生局は本監督指針に基づき管轄組合の監督行政を実施するものとする。また、都道府県における監督行政に当たっても、本監督指針が参考とされることが期待される。

Ⅱ.貸付事業の監督に当たっての評価項目

Ⅱ―1 経営管理等

組合の経営の健全性の維持及びその一層の向上を図るためには、経営に対する規律付けが有効に機能し、適切な経営管理(ガバナンス)が行われることが重要であり、組合が健全な発展を実現していくためには、組合の役員が率先して法令等遵守態勢の整備等に努めるなど、資金需要者等の利益の保護に問題が生じることのないよう経営を行うことが重要である。

貸付事業の監督に当たっては、役員が健全な業務運営の実現に配慮し、指揮・監督機能を適切に発揮して、与えられた責務を全うしているか、法令遵守を重視する責任を果たしているかといった観点等に留意するものとする。

なお、組合の自主性を尊重するとともに、購買事業を兼業する等の事業業態や、その規模等が多岐にわたっていることに留意し、当該組合の業務運営の実態を踏まえて対応する必要がある。

(1) 主な着眼点

① 役員は、業務推進や利益拡大といった業績面のみならず、法令等遵守や適正な業務運営を確保するため、内部管理部門及び内部監査部門の機能強化など、内部管理態勢の確立・整備に関する事項を経営上の最重要課題の一つとして位置付け、その実践のための具体的な方針の策定及び徹底について、誠実かつ率先して取り組んでいるか。

(注) 本監督指針でいう「内部管理部門」とは、法令及び内部規則等を遵守した業務運営を確保するための内部事務管理部署、法務部署等をいう。また、「内部監査部門」とは、事業部門から独立した検査部署、監査部署等をいい、内部管理の一環として被監査部門等が実施する検査等を含まない。

② 役員は、利益相反が生じる可能性のある業務に係る内部牽制や事務所長の権限に応じた監視などについて、内部管理部門が資金需要者等対応を行う部署に対し、適切な業務運営を確保するためのモニタリング・検証及び改善策の策定等を行う態勢を整備しているか。

③ 役員は、貸付事業に関する内部監査の重要性を認識し、内部監査の目的を適切に設定するとともに、内部監査部門の機能が十分に発揮できる態勢を構築しているか。また、内部監査の結果について、改善策を策定・実施し、さらに改善に結びつけていくなど適切な措置を講じているか。

④ 内部管理部門において、業務運営全般に関し、法令、貸付事業規約及び内部規則等に則った適正な業務を遂行するための適切なモニタリング・検証が行われているか。また、重大な問題等を確認した場合、役員に対し適切に報告が行われているか。

⑤ 内部監査部門は、被監査部門に対して十分な牽制機能が働くよう、被監査部門から独立した実効性のある内部監査が実施できる態勢となっているか。

⑥ 組合が内部監査に加え外部監査を利用する場合は、外部監査人に対して、監査目的を明確に指示し、監査結果を業務改善に活用するための態勢を整備しているか。

(2) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、不祥事件届出等の日常の監督事務を通じて把握された組合の経営管理等の課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2 業務の適切性

Ⅱ―2―1 法令等遵守(コンプライアンス)態勢等

組合が協同組織としての自らの役割を十分に認識して、法令、定款、貸付事業規約及び内部規則等を厳格に遵守し、健全かつ適切な業務運営に努めることは、組合に対する資金需要者等からの信頼を確立することとなり、ひいては事業の健全性を確保する上で極めて重要である。

また、組合は、適正な業務運営を確保する観点から、業務に関して適切な内部規則等を定め、不断の見直しを行うとともに、役員及び貸付事業に従事する使用人その他の従業者(以下「役職員」という。)に対して教育を行うほか、その遵守状況を検証する必要がある。

なお、内部規則等については、組合のそれぞれの規模・特性に応じて、創意・工夫を生かし、法令及び法の趣旨を踏まえ自主的に策定する必要がある。

また、本監督指針の各着眼点に記述されている字義どおりの対応が組合においてなされていない場合であっても、当該組合の規模や特性などからみて、資金需要者等の利益の保護の観点から特段の問題がないと認められれば、不適切とするものではない。

貸付事業の監督に当たっては、例えば、以下の点に留意するものとする。

(1) 主な着眼点

① コンプライアンスに係る基本的な方針、具体的な実践計画(コンプライアンス・プログラム)や行動規範(倫理規程、コンプライアンス・マニュアル)等が策定され、定期的又は必要に応じ、見直しが行われているか。特に、業績評価や人事考課等において収益目標(ノルマ)に偏重することなく、コンプライアンスを重視しているか。また、これらの方針等は役職員に対して周知徹底が図られ、十分に理解されるとともに、日常の業務運営において実践されているか。

② 内部規則等は、法令に則った内容となっているか。

③ 法令、定款、貸付事業規約及び内部規則等に則った適切な業務運営が行われているか、不適切な取扱いについて速やかに改善しているか。

④ 貸付事業取扱責任者の機能が十分に発揮される態勢となっているか。また、貸付事業取扱責任者の機能の発揮状況について、その評価及びフォローアップが行われているか(Ⅱ―2―22 貸付事業取扱責任者を参照)。

(2) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、不祥事件届出等の日常の監督事務を通じて把握された組合の法令等遵守態勢の課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―2 苦情対応態勢

組合が資金需要者等からの苦情又は問い合わせ等(以下「苦情等」という。)に迅速かつ適切に対応し、資金需要者等の理解を得ようとすることは、資金需要者等に対する説明責任を事後的に補完するための重要な活動の一つである。

貸付事業の監督に当たっては、例えば、以下の点に留意するものとする。

(1) 主な着眼点

① 役員は、資金需要者等からの苦情又は問い合わせ等が組合の業務運営に係る問題提起であり、業務改善や組合のサービス向上のために有益な情報であることを認識するとともに、苦情等の取扱いに関する内部規則等を定め、役職員が当該内部規則等に基づき適切な対応を行うよう、研修等により周知徹底を図るなど、苦情等対応について適切な措置を講じているか。

② 内部規則等において、苦情等申し出に対し迅速かつ適切な処理・対応ができるよう、苦情等に係る担当部署や処理手続が定められているか。また、苦情等の内容が資金需要者等の利益の保護上、重大な影響を与えうる事案と認められた場合、速やかに内部監査部門や役員に報告し、その他の事案についても定期的に処理内容等を内部監査部門や役員に報告するなど、情報共有が図られる態勢となっているか。

③ 申し出のあった苦情等に関し、資金需要者等に対して十分に説明が行われているか。また、苦情等の対応状況について、内部管理部門等が適切にフォローアップを行っているか。

④ 苦情等の内容について、適切かつ正確に記録や保存がなされるとともに、記録の蓄積と分析を行うことによって、資金需要者等への対応態勢や事務処理態勢の改善、再発防止策の策定等に十分活用されているか。

(2) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された組合の苦情等対応態勢の課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―3 不祥事件に対する監督上の対応

役職員が「貸付事業の業務に関し法令に違反する行為」又は「貸付事業の業務の適正な運営に支障を来す行為」(以下「不祥事件」という。)が発生した場合の監督上の対応については、以下のとおり取扱うこととする。

なお、不祥事件とは、貸付事業の業務に関し法令に違反する行為又は貸付事業の業務の適正な運営に支障を来す行為等、次に掲げる行為が例として挙げられる。

・ 貸付事業の業務に関し、資金需要者等の利益を損なうおそれのある詐欺、横領、背任等

・ 貸付事業の業務に関し、資金需要者等から告訴、告発され又は検挙された行為

・ その他組合の業務の適正な運営に支障を来す行為又はそのおそれのある行為であって、上記に掲げる行為に準ずるもの

(1) 主な着眼点

① 組合において不祥事件が発覚し、当該組合から第一報があった場合は、以下の点を確認することとする。

イ.コンプライアンス規程等に則った内部管理部門への迅速な報告及び役員への報告

ロ.刑罰法令に抵触しているおそれのある事実については、警察等関係機関等への通報

ハ.独立した部署(内部監査部門等)での不祥事件の調査・解明の実施

② 不祥事件と組合の業務の適正性の関係については、以下の着眼点に基づき検証を行うこととする。

イ.不祥事件の発覚後の対応は適切か

ロ.不祥事件への役員の関与はないか、組織的な関与はないか

ハ.不祥事件の内容が資金需要者等及びその他の組合員に与える影響はどうか

ニ.内部牽制機能が適切に発揮されているか

ホ.再発防止のための改善策の策定や自浄機能は十分か、関係者の責任の追及は明確に行われているか

ヘ.資金需要者等及びその他の組合員に対する説明や問い合わせへの対応等は適切か

(2) 監督手法・対応

不祥事件届出書の提出があった場合には、事実関係、発生原因分析、改善・対応策等について深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合の自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―4 認可された事業所等以外での事業禁止等

消費生活協同組合法施行規則(昭和23年大蔵省令・法務庁令・厚生省令・農林省令第1号。以下「施行規則」という。)第51条第1項第1号の規定において、貸付事業規約で定められた事業所等以外の事業所等を設置して貸付けに関する業務を行ってはならないとしている。

貸付事業の監督に当たっては、以下の点に留意する必要がある。

(1) 主な着眼点

① 事業所等の設置について定めた内部規則等を整備し、役職員が内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

② 内部管理部門において、認可された事業所等以外で事業が実施されていないか検証する態勢が整備されているか。

③ 認可された事業所等においては、組合員の見やすい場所に、施行規則第51条第1項第23号に規定する貸付けの利率等の貸付条件について明示されているか。また、施行規則第51条第1項第54号に規定する標識を明示しているか。

(2) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―5 資金需要者等の情報の管理

資金需要者等に関する情報の適切な取扱いについては、施行規則第51条第1項第2号、第3号及び第4号の規定に加え、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)の規定及び消費生活協同組合における個人情報の保護の適正な取扱いについて(平成16年12月17日社援地発第1217001号厚生労働省社会・援護局地域福祉課長通知)に基づく措置が確保される必要がある。

貸付事業の監督に当たっては、例えば、以下の点に留意するものとする。

(1) 主な着眼点

① 資金需要者等に関する情報の取扱いについて、具体的な取扱いに関する内部規則等を定め、役職員が当該内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。特に、当該組合以外の者への情報の伝達については、上記の法令の規定に従い手続きが行われるよう十分な検討を行った上で取扱基準を定めているか。

② 資金需要者等の情報へのアクセス管理の徹底、内部関係者による資金需要者等情報の持ち出しの防止に係る対策、外部からの不正アクセスからの防御等情報管理システムの堅牢化などの対策を含め、資金需要者等に関する情報の管理状況を適時・適切に検証できる態勢となっているか。

③ 資金需要者等に関する情報については、施行規則第51条第1項第2号に基づき、その安全管理及び役職員の監督について、当該情報の漏えい、滅失又はき損の防止を図るために必要かつ適切な措置が講じられているか。

④ 資金需要者等の人種、信条、門地、本籍地、保健医療又は犯罪経歴についての情報その他の特別の非公開情報(注)を、適切な業務の運営の確保その他必要と認められる目的以外の目的のために利用しないことを確保するための措置が講じられているか。

(注) その他特別の非公開情報とは、例えば、以下の情報をいう。

イ.労働組合への加盟に関する情報

ロ.民族に関する情報

ハ.性生活に関する情報

⑤ 信用情報機関を活用する場合、提供を受けた個人信用情報について、返済能力の調査以外の目的で利用しないこと(注)を確保するための措置が講じられているか。

(注) 途上与信を行うために取得した個人信用情報を勧誘に二次利用した場合や、個人信用情報を内部データベースに取込み当該内部データベースを勧誘に利用した場合であっても、返済能力の調査以外の目的での利用に該当することに留意する必要がある。

⑥ 資金需要者等の情報の漏えい等が発生した場合に、二次被害等の発生防止の観点から、対象となった資金需要者等への連絡、行政庁への報告及び公表が迅速かつ適切に行われる態勢が整備されているか。

(2) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、不祥事件届出等の日常の監督事務を通じて把握された組合の資金需要者等の情報の管理の課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―6 外部委託

組合の行う貸付事業については、協同組合という特質をかんがみれば第三者に対して業務を委託することは好ましくない。しかしながら、全ての業務委託を禁止することとなれば結果的に非効率的な事業運営をもたらす可能性もあり、組合の存続に関わる問題となることも懸念されるため、施行規則第51条第1項第5号の規定に基づき、貸金業者以外の第三者に委託を認めるものとした。

なお、組合が貸付事業の業務を貸金業者以外の第三者に委託(以下「外部委託」という。)する場合には、施行規則第51条第1項第6号の規定に基づく措置を構築し、外部委託に伴う様々なリスクを的確に管理し、業務の適切な運営を確保する必要がある。

貸付事業の監督に当たっては、例えば、以下の点に留意するものとする。

(1) 主な着眼点

① 委託先の選定基準や外部委託リスクが顕在化したときの対応などを記載した内部規則等を定め、役職員が当該内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、研修等により周知徹底を図っているか。

② 委託元である組合が委託先における法令等遵守態勢の整備について必要な指示を行うなど、適切な措置が確保されているか。

③ 委託契約によっても組合と資金需要者等との間の権利義務関係に変更がなく、資金需要者等に対しては、当該組合自身が業務を行ったものと同様の権利が確保されていることが明らかとなっているか。

(注) 外部委託には、形式上、外部委託契約が結ばれていなくともその実態において外部委託と同視しうる場合も含む。

④ 委託業務に関して契約どおりサービスの提供が受けられない場合、組合は資金需要者等の利便性に支障が生じることを未然に防止するための態勢を整備しているか。

⑤ 資金需要者等に関する情報の取扱いを委託する場合には、当該委託先の監督について、当該情報の漏えい、滅失又はき損の防止を図るために必要かつ適切な措置が講じられているか。

⑥ 委託業務に関する苦情等について、資金需要者等から委託元である組合への直接の連絡体制を設けるなど適切な苦情相談態勢が整備されているか。

(2) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等により、組合の業務委託に係る内部管理態勢、組合の外部委託先の業務運営態勢若しくは業務運営の適切性に問題があると認められる場合には、組合に対する深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告を求めることとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

(注) ヒアリングは、委託元である組合を通じて事実関係等を把握することを基本とするが、事案の緊急性や重大性等を踏まえ、必要に応じ、同意を得た上で外部委託先からのヒアリングを並行して行うことを検討する。

(注) 外部委託先に対してヒアリングを実施するに際しては、必要に応じ、委託元である組合の同席を求めるものとする。

Ⅱ―2―7 証明書の携帯等

施行規則第51条第1項第7号の規定において、組合は、貸付事業の業務に従事する者に対し、従業者であることを証する証明書を携帯させ、相手方の請求があったときは、提示させなければならない。また、同項第8号の規定において、事業所ごとに従業者名簿を備えなければならないとしている。証明書の携帯等に関する貸付事業の監督に当たっては、以下の点に留意する必要がある。

(1) 主な着眼点

① 証明書の携帯等について定めた内部規則等を整備し、役職員が内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

② 内部管理部門において、内部規則等に基づき、証明書の携帯等が適正に行われているか検証する態勢が整備されているか。

(2) 留意事項

従業者名簿については、施行規則第51条第1項第8号の規定において、組合は事業所ごとに備え置かなければならないとしており、その作成に当たっては以下の点に留意することとする。

① 従業者名簿については、電磁的記録での作成及び保存することを可能とする。

② 従業者名簿の記載事項は、施行規則第51条第1項第8号に規定されているが、貸付事業取扱責任者であるか否かの別についても記載すること。(別紙様式1)

③ 従業者名簿は、最終の記載をした日から10年間保存しなければならないこととする。

(3) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された証明書の携帯等に関する課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―8 禁止行為等

施行規則第51条第1項第10号(禁止行為)に係る監督に当たっては、例えば、以下の点に留意する必要がある。

(1) 主な着眼点

① 資金需要者等に虚偽を告げることや不確実な事項について断定的判断を提供することを禁止するなど、施行規則第51条第1項第10号の禁止行為に関し規定した内部規則等を定め、役職員が内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

② 内部管理部門において、内部規則等に基づき、適正な業務が行われているか検証する態勢が整備されているか。

(2) 留意事項

① 施行規則第51条第1項第10号に規定する「貸付けの契約の内容のうち重要な事項を告げない」行為に該当するかどうかは、個々の事実関係に則して判断する必要があるが、例えば、次のような行為を行う場合には、当該規定に該当するおそれが大きいことに留意する必要がある。なお、同号イからハに規定する「告げる」又は「告げない」行為とは必ずしも口頭によるものに限らない。

イ.資金需要者等から契約の内容について問い合わせがあったにもかかわらず、当該内容について回答せず、資金需要者等に不利益を与えること

ロ.資金需要者等が契約の内容について誤解していること又はその蓋然性が高いことを認識しつつ、正確な内容を告げず資金需要者等の適正な判断を妨げること

② 施行規則第51条第1項第10号ニの規定は、組合が業務を運営するにあたり不適切な行為を禁止するものであり、「偽りその他不正又は著しく不当な行為」に該当するかどうかは、個別の事実関係に則して、資金需要者等の利益を害する程度や業務の不適切性の程度を総合的に勘案して判断することとなるが、例えば、組合が次のような行為を行う場合は、当該規定に該当するおそれが大きいことに留意する必要がある。なお、「不正な」行為とは違法な行為、「不当な」行為とは客観的に見て、実質的に妥当性を欠く又は適当でない行為で、不正(違法)な程度にまで達していない行為をいう。

イ.契約の締結又は変更に際して、次に掲げる行為を行うこと

a.白紙委任状及びこれに類する書面を徴求すること

b.白地手形及び白地小切手を徴求すること

c.印鑑、預貯金通帳・証書、キャッシュカード、運転免許証、健康保険証、年金受給証等の債務者の社会生活上必要な証明書等を徴求すること

d.貸付け金額に比し、合理的理由がないのに、過大な担保又は保証人を徴求すること

e.クレジットカードを担保として徴求すること

f.資金需要者等に対し借入申込書等に年収等の重要な事項について虚偽の内容を記入するなど虚偽申告を勧めること

ロ.人の金融機関等の口座に無断で金銭を振り込み、当該金銭の返済に加えて、当該金銭に係る利息その他の一切の金銭の支払を要求すること。なお、一切の金銭の支払とは、礼金、割引料、手数料、調査料その他何らの名義をもってするを問わない。

ハ.組合が、架空名義若しくは借名で金融機関等に口座を開設し又は金融機関等の口座を譲り受け、債務の弁済に際して当該口座に振込みを行うよう要求すること。

ニ.資金需要者等が身体的・精神的な障害等により契約の内容が理解困難なことを認識しながら、契約を締結すること。

(3) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、不祥事件届出等の日常の監督事務を通じて把握された組合の業務に係る課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―9 生命保険契約の締結に係る制限

施行規則第51条第1項第11号の規定において、貸付契約の相手方の自殺による死亡を保険事故とする保険契約(注)を締結してはならないとしている。

貸付事業の監督に当たっては、以下の点に留意するものとする。

(注) 共済契約についても同様とする。

(1) 主な着眼点

① 生命保険契約の締結に係る制限について定めた内部規則等を整備し、役職員が内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

② 内部管理部門において、内部規則等に基づき、生命保険契約の締結に係る制限が適正に行われているか検証する態勢が整備されているか。

③ 施行規則第51条第1項第33号の規定に基づき、自殺を保険事故としない旨を保険契約の内容を説明する書面に記載し、当該書面を契約の相手方に交付しているか。

(2) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された生命保険契約の締結に係る制限に関する課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―10 利息、賠償額の予定

利息、賠償額の予定に関する貸付事業の監督に当たっては、以下の点に留意するものとする。

(1) 主な着眼点

① 契約書及び保証契約書に貸付けの利率を記載するときは、少なくとも小数点以下第1位まで表示することとしているか。

② 貸付けの利息について及び賠償額の予定の上限を厳守するための措置について定めた貸付事業規約及び内部規則等を整備し、役職員が貸付事業規約及び内部規則等に基づき適正な貸付利率、賠償額の予定で契約の締結を行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

③ 内部管理部門において、貸付事業規約及び内部規則等に基づき、利息、賠償額の予定の掲示が適正に行われているか検証する態勢が整備されているか。

(2) 留意事項

利息(みなし利息を含む。)については、施行規則第51条第1項第12号及び第13号の規定により、組合員の相互扶助組織という協同組合の性格から年12%以内となっている。

また、貸付けに係る債務の不履行による賠償額の予定(違約金も含む)については、同項第17号の規定により、その賠償額の元本に対して年14.6%以内となっている。

(3) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された利息、賠償額の予定に関する課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―11 債務履行担保措置業者との契約締結の禁止及び保証業者と保証契約を締結することの禁止

貸金業法では、債務履行担保措置(債務の履行を担保するための保証又は保険等若しくは土地又は建物等を担保に供すること)の対価として支払われる金銭の額を保証料とみなした際に、利息制限法の制限利息を超過する契約を債務履行担保措置を業として営む者と締結することを、貸付契約の条件としてはならないこととされている。一方、生協においては、債務履行担保措置を業として行う者との契約を締結することは協同組合の理念に合致しないことから、施行規則第51条第1項第14号の規定により、債務履行担保措置を業として行う者の活用は一律に禁止となっている。

また、貸金業法では、貸付契約の締結時に保証料が確定していない契約については、保証業者との間で保証料に係る契約を締結することを貸付契約の締結の条件としてはならないこととされている。一方、生協においては、業として保証を行う者との契約を締結することは協同組合の理念に合致しないことから、施行規則第51条第1項第15号及び第16号の規定により、業として保証を行う者の活用は一律に禁止となっている。

貸付事業の監督に当たっては、以下の点に留意するものとする。

(1) 主な着眼点

① 債務履行担保措置業者との契約締結の禁止及び保証業者と保証契約を締結することの禁止について定めた内部規則等を整備し、役職員が内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

② 内部管理部門において、内部規則等に基づき、適正に行われているか検証する態勢が整備されているか。

(2) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された債務履行担保措置業者との契約締結の禁止及び保証業者と保証契約を締結することの禁止に関する課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―12 勧誘及び契約締結時の説明態勢

勧誘及び契約締結時の説明態勢に関する組合の監督に当たっては、例えば、以下の点に留意するものとする。

(1) 主な着眼点

① 貸付契約の締結の勧誘に係る内容・方法や貸付契約の締結に係る説明責任等に関し、具体的かつ客観的な基準を定めた内部規則等を整備し、役職員が内部規則等に基づき適正な勧誘及び契約の締結を行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

また、勧誘及び契約締結時の状況に係る記録の方法を定めるなど、事後検証が可能となる措置が講じられているか。

なお、当該組合員以外の者からの申し出に基づき勧誘を行う場合には、協同組合の理念やその運営原則並びに組合活動の特色もあわせて説明し、協同組合として節度をわきまえた勧誘となっているか。

(注) 「勧誘」とは、電話や戸別訪問に限らず、電子メール、ダイレクトメールによるものを含む。

② 内部管理部門においては、勧誘又は契約時の状況に関する記録等の確認や担当者からのヒアリングの実施等に加え、必要に応じ、例えば、資金需要者等と直接面談等を行うことにより、資金需要者等の知識、経験及び財産の状況等に即した勧誘など、適正な勧誘が履行されるための態勢が整備されているか。

なお、検証に当たっては、特に以下の点に留意することとする。

イ.貸付けの契約を締結するに際して、契約内容を口頭で十分に説明することになっているか。また、口頭で十分な説明ができない場合は、例えば、ホームページヘの掲載や資金需要者等からの電話による問い合わせ窓口の設置など契約内容の説明について代替的な措置が講じられているか。

ロ.資金需要者等に対する勧誘状況及び過去の取引状況等について、例えば、資金需要者等カード(勧誘者リスト等、勧誘を行う基となった資料を含む。)を整備し、特に、被勧誘者から貸付けの契約を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)の表示の有無について、明確に記録されているか。

ハ.保証人となろうとする者に当該保証契約の内容を十分に理解しうるよう説明を尽くす(例えば、保証契約の形式的な内容にとどまらず、保証人の法的効果とリスクについて、最良のシナリオだけでなく、最悪のシナリオ即ち実際に保証債務を履行せざるを得ない事態を想定した説明(注)を行う。)とともに、保証人となろうとする者が、十分な時間的余裕を持ってあらかじめ保証契約の内容及びこれに伴う危険性について十分理解した上で契約を締結することが可能な態勢となっているか。

(注) 個別の契約内容に即し、相手方の理解力に応じた説明を行う必要があるが、例えば、以下の点について十分な説明を行う必要がある。

・ 保証人は、主たる債務者が債務を履行できない場合には、債務不履行額に遅延損害金を付した額(特約により主たる債務者が一部の債務不履行により残債務の一括返済を行わなければならなくなる場合は当該金額)のうちその保証の範囲内の額を支払わなければならなくなるおそれがあること

・ 保証人は、保証債務を履行できない場合には、強制執行により、財産を差押えられるおそれがあること

・ 連帯保証人には、民法第452条に規定する催告の抗弁及び同法第453条に規定する検索の抗弁が主張できないこと

ニ.物的担保を徴求する場合、物的担保を提供する者が当該担保契約の内容を十分に理解しうるよう説明を尽くす(例えば、物的担保権が行使されうる場合等、物上保証の法的効果とリスクについて説明を行い、特に物的担保契約の形式的な内容にとどまらず、最良のシナリオだけでなく、最悪のシナリオ即ち実際に物的担保権が行使されうる事態を想定した説明を行う。)など、物的担保契約の内容を十分理解した上で契約を締結することとなっているか。

③ 資金需要者等に勧誘を行った際、再勧誘を希望しない旨の意思表示があった場合は、再勧誘を希望しない期間、商品の範囲について資金需要者等に確認し、適切に記録することとしているか。

なお、資金需要者等から、再勧誘を希望しない期間、商品の範囲について確認ができない場合には、勧誘を行った資金需要者等の属性や貸付商品の特性等に応じて再勧誘を希望しない期間等を個別に判断する必要があるが、一般的には、組合が行う一切の勧誘について、少なくとも概ね3ケ月間、再勧誘を希望しないと推定されるものと考えられる。

④ 当該組合で貸付契約を締結することが困難であって、資金需要者等の利益の保護のために必要と認められる場合には、資金需要者等に対して、借入れ又は返済に関する相談又は助言その他の支援を適正かつ確実に実施することができると認められる団体を紹介することとしているか。

なお、施行規則第51条第1項第18号に規定する「資金需要者等の利益の保護のために必要と認められる場合」とは、例えば、以下の場合である。

イ.貸金業者等からの既存債務を自発的かつ計画的に返済することが困難であると認められた場合

ロ.貸付けの申込みをした資金需要者等が総量規制(施行規則第51条第22号)に該当し、貸付けができなかった場合

ハ.総量規制には該当しないが、借入理由がいわゆる自転車操業状態での返済資金である場合

(注)

・ 勧誘及び契約締結時以外であっても、資金需要者等の利益の保護のために必要と認められる場合には、資金需要者等に対して、借入れ又は返済に関する相談又は助言その他の支援を適正かつ確実に実施することができると認められる団体を紹介することが義務付けられていることにも留意すること。

・ また、組合が多重債務者等と貸付契約を締結しようとする場合については、「Ⅱ―2―15 多重債務者等に対する生活再建計画の作成」にも留意すること。

(2) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された組合の勧誘・説明態勢等の課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―13 過剰貸付けの禁止

組合は、過剰貸付けを防止するため、貸付けの契約を締結するに当たっては、資金需要者等の収入、保有資産、家族構成、生活実態などの属性を十分に調査し、調査の結果、返済能力を超えると認められる貸付けの契約を締結してはならない。

また、貸付事業の監督に当たっては、以下の点に留意する必要がある。

(1) 主な着眼点

① 貸付審査について、資金需要者等が日常生活に支障なく返済することが可能となる範囲内で貸付けが行われるとともに、以下の態勢が整備されているか。

イ.資金需要者等の年収額や既住借入額等に基づき、例えば月々の返済額が他社借入返済額と合わせて月収の1/3以下とする等、債務者の返済負担が過剰とならない客観的かつ具体的な貸付基準を整備し、役職員に周知徹底しているか。

ロ.保証人や物的担保を徴求する貸付け(既に売却を予定していることが客観的に明らかな不動産担保貸付けを除く。)について、主債務者の事業計画、返済計画及び金利等の貸付契約の条件等からみて、保証の履行や担保権実行の蓋然性が高い貸付契約を締結しないための貸付審査基準や保証人及び物的担保提供者の適格性審査について、明確な審査基準を整備し、役職員に周知徹底しているか。

ハ.上記貸付基準等の妥当性について、定期的に検証し、必要に応じ、見直しを行うこととしているか。

② 返済能力調査について、以下の措置が講じられているか。

イ.借入申込者の収入、保有資産、家族構成、生活実態などの属性を十分に調査

・把握したうえで、調査結果を踏まえた適切な貸付審査が行われているか。また、返済能力の調査結果を記録することとしているか。

ロ.借入申込書に借入希望額、既住借入額、年収額等の項目を借入申込者自身に記入させること等により、資金需要者等の借入の意思を確認しているか。

ハ.自組合貸付合計額(施行規則第51条第20号イ)が50万円を超える場合又は組合員合算額(施行規則第51条第20号ロ)が100万円を超えることを確認した場合には、年収額を証明する書類を徴求するなど資金需要者等の収入額を検証する態勢が整備されているか。

ニ.物的担保を徴求する場合には、主債務者の属性、事業計画、当該貸付けの返済計画の条件等にかんがみて、当該担保物件を換価しなくても返済しうるか否かを調査し、その結果を記録しているか。

また、担保権が実行され、当該担保物件を失うこととなった場合の物的担保提供者の具体的な認識を確認し、その内容も合わせて記録することとしているか。

ホ.保証付の貸付けの契約を締結する場合には、主債務者の属性、事業計画、当該貸付けの返済計画の条件等にかんがみて、保証人からの代位弁済がなくとも返済しうるか否かを調査し、その結果を記録しているか。

また、保証人になろうとする者について、収入、保有資産、家族構成、生活実態、他からの借入状況及び既住借入額の返済状況等の調査を行い、実際に保証債務を履行せざるを得なくなった場合の履行能力及び保証人の具体的な認識を確認し、その内容も合わせて記録することとしているか。

ヘ.内部管理部門において、返済能力調査等が適正に行われたこと、返済能力調査の結果について改ざん等が行われていないこと、借入申込者に対し返済能力の虚偽申告の示唆が行われていないか。

(2) 留意事項

① 過剰貸付けの禁止の対象となる契約から除かれる契約のうち、住宅資金貸付契約、不動産の建設若しくは購入に必要な資金の貸付契約、前記の契約に係る貸付けが行われるまでのつなぎとして行う貸付けの契約については、不動産の売買契約書又は建設工事の請負契約書その他の書面又はその写しを当該契約に定められた最終の返済期日まで保存しなければならない。

② 施行規則第51条第1項第22号に規定する「年間の給与に類する定期的な収入の金額」とは、「年間の年金の金額」、「年間の恩給の金額」又は「年間の定期的に受領する不動産の賃貸収入(事業として行う場合を除く。)の金額」である。

③ 施行規則第51条第1項第22号に規定する「年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額」は、次に掲げる方法のいずれかにより算出するものとする。

イ.施行規則第51条第5項に規定する書面等(同項第3号に掲げる書面に係るものを除く。)を用いて算出する方法

ロ.施行規則第51条第5項に規定する書面等(同項第3号に掲げる書面に係るものに限る。)に記載されている直近の2月以上の給与(賞与を除く。)の金額の1月当たりの平均金額に12を乗じて算出する方法

ハ.施行規則第51条第5項に規定する書面等に記載されている地方税を基に合理的に算出する方法

④ ③により年間の給与を算出する場合において、施行規則第51条第5項第3号に規定する書面又はその写しによって、過去1年間の賞与の額を確認したときは、当該賞与の額を年間の給与の金額に含めることができることとする。

⑤ 施行規則第51条第7項各号に掲げる契約を締結した場合は、次に掲げる貸付けに係る契約の区分に応じ、次に掲げる書面又はその写しを当該貸付けに係る契約に定められた最終の返済期日までの間保存しなければならない。

イ.施行規則第51条第7項第1号に掲げる貸付けに係る契約

担保とする有価証券の種類、銘柄、数及び価額を記載した書面

ロ.施行規則第51条第7項第2号に掲げる貸付けに係る契約

次に掲げる書面

a.担保とする不動産の価格の算出の根拠を記載した書面

b.担保とする不動産の登記事項証明書

c.担保権が実行された場合には、当該担保とする不動産が売却される可能性があることについての資金需要者等の同意書

ハ.施行規則第51条第7項第3号に掲げる貸付けに係る契約

次に掲げる書面

a.売却を予定している不動産の価格の算出の根拠を記載した書面

b.売却を予定している不動産の売買契約書又は売買の媒介契約の契約書

ニ.施行規則第51条第7項第4号に掲げる貸付けに係る契約

次に掲げる書面

a.自動車の売買契約書

b.自動車の自動車検査証

ホ.施行規則第51条第7項第5号に掲げる貸付けに係る契約

次に掲げる事項を記載した書面

a.貸付けに係る契約に係る将来支払う返済金額の合計額

b.弁済する債務に係る貸付けに係る契約の貸付けの残高、各回の返済金額及び将来支払う返済金額の合計額

c.貸付けに係る契約に基づく債権について物的担保を供させるときは、弁済する債務に係る貸付けに係る契約に基づく債権に供されている物的担保の内容

d.貸付けに係る契約について保証契約を締結するときは、弁済する貸付けに係る契約について締結している保証契約の内容

ヘ.施行規則第51条第7項第6号に掲げる貸付けに係る契約

医療機関からの療養費の請求書又は見積書

(3) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された過剰貸付けに関する課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―14 広告規制

広告規制に関する貸付事業の監督に当たっては、以下の点に留意する必要がある。

(1) 主な着眼点

不適切な広告の防止など、広告の取扱いに関する規定を記載した内部規則等を定め、役職員が内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

(2) 留意事項

① 組合が、テレビ、新聞、インターネット等の媒体を利用して不特定多数の者に広告・宣伝を行う場合には、一定の地域又は職域における人と人との結合による相互扶助組織であるという協同組合の理念やその運営原則並びに組合活動の特色を中心とすること。また、単に商品内容のみの広告・宣伝とならないものとすること。

② 施行規則第51条第1項第24号の「貸付けの条件について広告をする」とは、施行規則第51条第1項第24号ロ、ハ、ニ、ホに掲げる事項又は貸付限度額、その他の貸付けの条件の具体的内容を1つでも表示した広告をすることをいう。

③ 施行規則第51条第1項第26号ハに規定する「借入れが容易であることを過度に強調することにより、資金需要者等の借入意欲をそそるような表示又は説明」に該当するかどうかは、個別具体的な事実関係に即して判断する必要があるが、例えば、次のような表示がある場合には、これに該当するおそれが大きいことに留意する必要がある。

イ.貸付審査を全く行わずに貸付けが実行されるかのような表現

ロ.債務整理を行った者や破産免責を受けた者にも容易に貸付けを行う旨の表現

ハ.他の組合や貸金業者等からの借入件数、借入金額について考慮しない貸付けを行う旨の表現

(3) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された広告等に関する課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―15 多重債務者等に対する生活再建計画の策定

施行規則第51条第1項第30号において、貸付契約の締結時に契約の相手方が多重債務者等である場合には、当該多重債務者の経済生活の再生が行われるようアセスメントを行い、その結果に基づき生活再建計画を策定することとしている。多重債務者等に対する生活再建計画の策定に関する貸付事業の監督に当たっては、以下の点に留意する必要がある。

(1) 主な着眼点

① 多重債務者等に対する生活再建計画の策定に関して記載した内部規則等を定め、役職員が内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

② 内部管理部門において、内部規則等に基づき、適正な相談及び生活再建計画の策定が行われているか検証する態勢が整備されているか。

③ 多重債務者等に対する及び生活再建計画の策定に際しては、内容に応じて弁護士等の外部の専門家の活用が図られているか。

④ 返済が滞ったことのみをもって取立を行うのではなく、資金需要者等からその原因を聴取し、必要に応じて、所要の措置を講じるなどの内部規則等が整備されているか。

⑤ 返済が滞った場合には、その原因の分析が行われているか。

(2) 留意事項

① 多重債務者等の定義

「貸金業者その他の金融機関等からの金銭の借入等による債務を負つている者であつて、支払不能に陥るおそれのある者又は現に支払不能に陥つている者」及び「過去に前号で定める者であつたため、又はその他の理由により、貸金業者その他の金融機関等からの金銭の借入が難しい者」とは、具体的には、次に掲げる者が該当する。

イ.複数の貸金業者その他の金融機関等からの金銭の借入等による債務を負っており、支払能力を超えている者

ロ.過去に次に掲げる者であったため又はその理由により、貸金業者その他の金融機関等から金銭の借入が難しい者

a.特定債務等の調整の促進のため特定調整に関する法律(平成11年法律第158号)に基づく特定債務者

b.民事再生法(平成11年法律第225号)第2条第1号に規定する再生債務者

c.破産法(平成16年法律第75号)に基づく破産者

② 相談業務等の流れについては、例えば、以下のように行うものである。

イ.事前相談

事前相談については、相談者の生活状況、借入先を確認し、多重債務者に陥った事情を丁寧に聴取した上で、考えられる解決方法の選択肢(任意整理、特定調停、個人再生、自己破産等)を検討・助言し、必要に応じ、他の専門機関(弁護士等)の紹介を検討する。

組合において貸付けが必要と判断した場合は、できる限り家族等の親族に対しても、同席の上、貸付けの目的、貸付け条件等の説明を行うこと。

また、いわゆる「おまとめローン」を目的とする契約を締結する場合は、資金需要者等に対し、貸金業法第43条第1項のみなし弁済の適用に関する説明を行うとともに、必要に応じ、消費生活センター等適切な相談窓口を紹介すること。

ロ.アセスメント、生活再建計画の策定

アセスメントに際しては、客観的な生活状況を確認し、家計簿診断を行うなど返済計画のシミュレーションを行うこと。

生活再建計画の作成に当たっては、現在の生活状況についての課題を明確にし、今後の生活再建に向けた改善策を具体的に記載することとする。なお、必要に応じ、弁護士等外部の専門家の助言を受けること。

ハ.契約締結前の書面交付

組合において貸付けが必要と判断した場合のその他の手続き等については、多重債務者以外の者への貸付けの手続きと同様であるが、資金需要者等へのアセスメント及び生活再建計画の策定時にあわせて契約締結前の書面交付を行い、対面の上で契約の相手方が十分に貸付け条件等を理解できるように、書面に記載された事項を明瞭かつ正確に説明すること。(重要な事項を変更したときも同様である。)

ニ.貸付け後のフォローアップ

貸付けを行った後においても生活再建計画の見直し等の定期的なモニタリングを行うことが望ましい。返済が滞ったことのみをもって過度の取立を行うのではなく、その原因を分析の上、対応することとする。

(3) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された多重債務者等に対する生活再建計画の策定に関する課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―16 書面の交付義務

書面交付義務に関する貸付事業の監督に当たっては、以下の点に留意する必要がある。

(1) 主な着眼点

① 資金需要者等に対する書面交付に関して記載した内部規則等を定め、役職員が内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

② 内部管理部門において、内部規則等に基づき、適正な書面の交付が行われているか検証する態勢が整備されているか。

③ 書面の記載内容は、資金需要者等にとって明確でわかりやすい内容となっているか。また、記載内容について、必要に応じ見直す態勢が整備されているか。

④ 一定期間における貸付け及び弁済その他の取引の状況を記載した書面の交付に際しては、当該書面が交付される旨及び個別書面の記載事項が簡素化される旨を示したうえで、あらかじめ書面又は電磁的方法により承諾を得ているか。なお、債務者等から電磁的方法により承諾を受けた場合には、当該承諾を行った債務者等に対し、承諾を受けた旨を書面又はその他適切な方法により通知しているか。

また、債務者等から、当該書面での交付の承諾を撤回したい旨の意思表示があった場合、当該書面以外の方法による書面交付の適用開始の時期等について、適切な説明が行われているか。

⑤ 書面の交付に代えて電磁的方法により提供することも可能とするが、その場合又は一定期間における貸付け及び弁済その他の取引の状況を記載した書面を交付することについて承諾又は撤回の意思表示を受ける場合には、債務者等の承諾等があったことを記録しているか。

(2) 留意事項

① 施行規則第51条第1項第32号の規定により、保証契約の内容を説明する書面を保証人となろうとする者に交付するときは、以下の「保証契約の概要を記載した書面」及び「保証契約の詳細を記載した書面」ごとに次に掲げる事項を記載し、これらの書面を同時に交付しなければならない。

イ.保証契約の概要を記載した書面

施行規則第51条第1項第32号イからニ(3)までに掲げる事項

ロ.保証契約の詳細を記載した書面(保証の対象となる貸付けに係る契約が2以上ある場合には、当該契約ごとに記載しなければならない。)

施行規則第51条第1項第32号イからハまで、ホ、ニ((1)及び(2)を除く。)に掲げる事項

なお、施行規則第51条第1項第31号及び第32号の規定により交付すべき書面を作成する場合は、利率を記載する際には少なくても小数点以下第1位まで表示しなければならない。

また、施行規則第51条第1項第38号前段の規定により第34号イからネについて当該貸付けに係る契約の内容を明らかにする書面を保証人に交付する場合において、保証の対象となる貸付けに係る契約が2以上あるときは、当該契約ごとに第34号イからネに掲げる事項を記載し契約を締結するごとに、遅滞なく、当該書面を交付しなければならない。

② 保証人に対する事前交付書面は、保証契約締結日の前日までに交付しなければならないものとする。

(3) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された書面交付に関する課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―17 帳簿の備付け等

帳簿の備付け等に関する組合の監督に当たっては、以下の点に留意する必要がある。

(1) 主な着眼点

① 帳簿の作成及び備付け等について規定した内部規則等を定め、役職員が内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

② 保証人から返済金を受領した場合、当交渉経過の記録等に正確に記載され、担当者以外の第三者がその内容を容易に把握できる態勢が整備されているか。

③ 内部管理部門においては、交渉経過の記録等の確認や担当者からのヒアリングの実施等に加え、必要に応じ、例えば、資金需要者等と直接面談等を行うことにより、正確な帳簿の作成及び保存が履行されるための態勢が整備されているか。

(注) 施行規則第51条第1項第41号へに規定する「交渉の経過の記録」とは、債権の回収に関する記録、貸付けの契約(保証契約を含む。)の条件の変更(当該条件の変更に至らなかったものを除く。)に関する記録等、貸付けの契約の締結以降における貸付けの契約に基づく債権に関する交渉の経過の記録であり、当該記録事項は以下の事項とする。

イ.交渉の相手方(債務者、保証人等の別)

ロ.交渉日時、場所及び手法(電話、訪問、電子メール及び書面発送等の別)

ハ.交渉担当者(同席者等を含む。)

ニ.交渉内容(催告書等の書面の内容を含む。)

(2) 留意事項

① 帳簿については、電磁的記録での作成及び保存を可能とする。

② 帳簿については、貸付けの契約ごとに、当該契約に定められた契約期間の最終日(当該契約に基づく債権が弁済その他の事由により消滅したときにあっては、当該債権の消滅した日)から少なくとも10年間保存しなければならないこととする。

(3) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された帳簿の備付等に関する課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―18 帳簿の閲覧、謄写

帳簿の閲覧又は謄写に関する貸付事業の監督に当たっては、以下の点に留意する必要がある。

(1) 主な着眼点

① 債務者等又は債務者であった者等(以下「帳簿の閲覧等の請求者」という。)から帳簿の閲覧又は謄写を求められた際の対応について、帳簿の閲覧等の請求者が本人又は正当な委任を受けた代理人等であるか確認したうえで、過度の負担を課すことなく迅速に帳簿の閲覧又は謄写に応じるよう内部規則等を定めているか。

なお、本人確認及び閲覧又は謄写の方法に関し、正当な理由なく過度な負担を課す場合は、帳簿の閲覧又は謄写の拒否に該当するおそれがあることに留意する必要がある。

② 帳簿の閲覧又は謄写に必要な物的設備を確保し、閲覧又は謄写の方法等が帳簿の閲覧等の請求者にわかるようになっているか。また、帳簿の閲覧等の請求者から帳簿の閲覧又は謄写に関する問い合わせ等があった場合、迅速かつ適切に対応できる態勢となっているか。

③ 対面以外の方法で契約の締結等を行う組合については、帳簿の閲覧等の請求者が遠隔地に居住するなど来店が困難である場合に際して、帳簿の複写請求や複写物の郵送請求に配慮しているか。

帳簿の複写や複写物の郵送に係る実費を徴収する場合、当該金額は適正かつ適切な金額となっているか。また、帳簿の閲覧又は謄写の請求者から当該実費の内容について説明を求められた場合、その内容を説明する態勢が整備されているか。

④ 内部管理部門において、内部規則等に基づき、帳簿の閲覧等の請求者に対し適切な帳簿の閲覧又は謄写が行われているか検証する態勢が整備されているか。

(2) 留意事項

なお、帳簿の閲覧等の請求者から帳簿の閲覧又は謄写の請求があった場合、請求者が権利の行使に関する調査を目的とするものでないことが明らかである場合を除き、営業時間内に閲覧及び謄写をさせなければならないこととする。

(3) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された帳簿の閲覧、謄写に関する課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把捉することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―19 取立行為規制

取立行為に関する貸付事業の監督に当たっては、以下の点に留意する必要がある。

(1) 主な着眼点

① 債務者等に対する取立て・督促については、客観的な基準及び手順等を記載した内部規則等を定め、役職員が内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

② 施行規則第51条第1項第9号で禁止している貸付業務に従事する者に暴力団員等を使用していないか。

③ 内部管理部門においては、交渉経過の記録等の確認や担当者からのヒアリングの実施等に加え、必要に応じ、例えば、資金需要者等と直接面談等を行うことにより、取立て・督促の実態を把握し、検証を行うことができる態勢が整備されているか。

(2) 留意事項

① 施行規則第51条第1項第47号イ~ヌの規定は、「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」の例示であり、個々の取立て行為が同項に該当するかどうかは、個別の事実関係に即して判断する必要がある。当該規定に定める事例のほか、例えば、次のような事例は、「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」に該当するおそれが大きい。

イ.反復継続して、電話をかけ、電報を送達し、電子メール若しくはファクシミリ装置を用いて送信し又は債務者若しくは保証人等の居宅を訪問すること

ロ.保険金又は共済金による債務の弁済を強要又は示唆すること

② 施行規則第51条第1項第47号イ、ハ及びリに規定する「正当な理由」とは、個別の事実関係に即して判断すべきものであるが、例えば、以下のようなものが該当する可能性が高い。

イ.施行規則第51条第1項第47号イ

a.債務者等の自発的な承諾がある場合

b.債務者等と連絡をとるための合理的方法が他にない場合

ロ.施行規則第51条第1項第47号ハ

a.債務者等の自発的な承諾がある場合

b.債務者等と連絡をとるための合理的方法が他にない場合

c.債務者等の連絡先が不明な場合に、債務者等の連絡先を確認することを目的として債務者等以外の者に電話連絡をする場合。なお、この場合においても、債務者等以外の者から電話連絡をしないよう求められたにも関わらず、更に電話連絡をすることは「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」に該当するおそれが大きい。

ハ.施行規則第51条第1項第47号リ

a.弁護士若しくは弁護士法人又は司法書士若しくは司法書士法人(以下「弁護士等」という。)からの承諾がある場合

b.弁護士等又は債務者等から弁護士等に対する委任が終了した旨の通知があった場合

③ 施行規則第51条第1項第47号ロに規定する「その申し出が社会通念に照らし相当と認められないことその他正当な理由」とは、個別の事実関係に即して判断すべきものであるが、例えば、以下のようなものが該当する可能性が高い。

イ.債務者等からの弁済や連絡についての具体的な期日の申し出がない場合

ロ.直近において債務者等から弁済や連絡に関する申し出が履行されていない場合

ハ.通常の返済約定を著しく逸脱した申し出がなされた場合

ニ.申し出に係る返済猶予期間中に債務者等が申出内容に反して他組合等への弁済行為等を行った場合

ホ.申し出に係る返済猶予期間中に債務者等に支払停止、所在不明等により、債務者等から弁済を受けることが困難であることが確実となった場合

④ 施行規則第51条第1項第47号ホは、債務者等に心理的圧迫を加えることにより弁済を強要することを禁止する趣旨であり、債務者等から家族に知られないように要請を受けている場合以外においては、債務者等の自宅に電話をかけ家族がこれを受けた場合に生協であることを名乗り、郵送物の送付にあたり差出人として組合であることを示したとしても、直ちに該当するものではないことに留意することとする。

⑤ 施行規則第51条第1項第47号ヘに規定する「その他これに類する方法」とは、クレジットカードの使用により弁済することを要求すること等が該当すると考えられる。

⑥ 施行規則第51条第1項第47号リに規定する「司法書士若しくは司法書士法人」に委託した場合とは、司法書士法第3条第1項第6号及び第7号に規定する業務(簡裁訴訟代理関係業務)に関する権限を同法第3条第2項に規定する司法書士に委任した場合をいう。

⑦ 施行規則第51条第1項第48号に規定する「支払を催告するための書面又はこれに代わる電磁的記録」については、次によるものとする。

イ.施行規則第51条第1項第48号イに規定する「住所」及び「電話番号」については、それぞれ、当該債権を管理する部門又は事務所等に係るものを記載すること。

ロ.施行規則第51条第1項第48号ロに規定する「当該書面又は電磁的記録を送付する者の氏名」については、当該債権を管理する部門又は事務所等において、当該債権を管理する者の氏名を記載すること。

(3) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された取立て行為に関する課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―20 債権譲渡

債権譲渡については、施行規則第51条第51号の規定により、貸付けの契約に基づく債権を他者に譲渡することは、組合についての破産手続開始の決定がなされた場合及び組合の業務又は財産の状況に照らして貸付事業の継続が困難となる蓋然性がある場合を除き、禁止されているところである。

貸付事業の継続が困難となる蓋然性があり、債権譲渡を行う際には、法令等を遵守するほか、民法等の規定に留意し、適切に対応する必要があり、債権譲渡先の選定に当たっては、資金需要者等の利益の保護に関して、特段の注意を払う必要がある。なお、組合についての破産手続開始の決定がなされた場合は、破産法の規定に基づき、財産等の清算に関する手続が行われることから、この限りではない。

貸付事業の監督に当たっては、例えば、以下の点に留意するものとする。

(1) 主な着眼点

① 債権譲渡を行うことができる場合について、具体的かつ客観的な基準を内部規則等で整備しているか。

② 債権譲渡を行うに当たって、債権譲渡先の選定基準及び選定方法、譲渡対象債権の選定基準、債権譲渡に関する手続き並びに債権譲渡の際の資金需要者等情報の取扱いについて規定した内部規則等を定め、役職員が内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

③ 債権譲渡先及び譲渡対象債権の選定に当たって、弁護士法(昭和24年法律第205号)や施行規則第51条第1項第52号(暴力団員等への譲渡の禁止)の規定に抵触しないか確認を行っているか。

④ 債権譲受人との債権譲渡契約において、債務者等からの問い合わせや取引履歴の開示請求など、債権譲渡に係る債務者等への対応について債権譲受人との責任分担が明確となっているか。また、債権譲受人が債務者等に対し債権譲渡通知を遅滞なく送付することや法令を遵守した債権管理及び回収を行うこと等、債務者等の保護の確保に努めるための規定が内部規則等において措置されているか。

(2) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された債権譲渡等に関する課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―21 債務者等以外の者からの債務の弁済の禁止

債務者等以外の者からの債務の弁済の禁止に関する貸付事業の監督に当たっては、以下の点に留意する必要がある。

(1) 主な着眼点

① 債務者等以外の者からの債務の弁済の禁止について定めた内部規則等を整備し、役職員が内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

② 内部管理部門において、内部規則等に基づき、適正に行われているか検証する態勢が整備されているか。

(2) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された債権者等以外の者からの債務の弁済に関する課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、貸付事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要があると認められるときには、組合に対して、法第95条第1項の規定に基づき必要な措置を採るべき旨を命ずることとする。また、重大・悪質な法令違反行為等が認められるときには業務停止命令の発出を検討することとする。(行政処分を行う際に留意する事項はⅢ―3による)。

Ⅱ―2―22 貸付事業取扱責任者

Ⅱ―1からⅡ―2―21に記載した各評価項目について、組合における自主的な取組みを行うため、貸付事業を行う際の法令に関する理解、貸付事業の業務に関する実務上の知識等、適正な運営の確保のために必要な知識を有する者(以下「貸付事業取扱責任者」という。)を配置し、貸付事業の業務に従事する使用人その他の従業者に対し、これらの者が貸付事業に関する法令、定款、貸付事業規約の規定を遵守してその業務を適正に実施するために必要な助言や指導を行うことが必要である。

よって、法に基づく貸付事業の規制と貸金業法による規制がほぼ同様の規制であることも考慮し、貸金業法の規定に基づく貸金業務取扱主任者資格試験に合格した者を活用し、貸付事業取扱責任者として事業所等ごとに、1名配置することとする。

貸付事業取扱責任者に関する貸付事業の監督に当たっては、例えば、以下の点に留意する必要がある。

(1) 主な着眼点

貸付事業取扱責任者に関し、果たすべき役割、その権限などを記載した内部規則等が整備されているか。

例えば、資金需要者等から苦情の申し出があった場合、申出内容を確認の上、当該苦情に関係する使用人その他の従業者を指導するなど、責任者が適切に助言・指導を行うことができる態勢が整備されているか。

(2) 監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等の日常の監督事務を通じて把握された貸付事業取扱責任者に関する課題等については、上記の着眼点に基づき、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第条93条に基づき報告書を徴収することにより、組合における自主的な業務改善状況を把握することとする。

Ⅱ―3 業務の透明性の確保

組合の業務方法の変更や不祥事件の発生等については、資金需要者等に対し重大な影響を与える可能性がある。組合は、資金需要者等の視点に立った正確かつ公正な情報を資金需要者等に迅速に伝達する必要があり、組合が業務の透明性を確保し、説明責任を果たすことによって、組合の信頼性が高まることとなる。

このような観点から、貸付事業の監督に当たっては、以下の点に留意する必要がある。

(1) 主な着眼点

① 業務方法の変更(事業所等の閉鎖の決定や債務者等からの返済資金の受入方法の変更等)や不祥事件の発生等に際して、資金需要者等の利益の保護に影響をもたらすと判断した場合の情報開示の方法等を規定した内部規則等を定め、役職員が当該内部規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、内部研修等により周知徹底を図っているか。

② 資金需要者等の利益の保護に影響をもたらす情報が迅速かつ適切に公表されているか。また、公表する情報は、資金需要者等に必要な情報がわかりやすく表示され、また、資金需要者等からの問合せに対し十分な説明がなされるなど、適切に対応するための態勢が整備されているか。

(2) 監督手法・対応

情報開示については、法令等で規定されているほかは、組合が自己責任原則に則り、経営判断に基づき行うものであり、上記着眼点の対応がなされていない場合においても、直ちに監督上の措置を講ずることはない。

しかしながら、資金需要者等の利益の保護の観点から、資金需要者等に不利益をもたらす可能性がある情報について、故意に情報開示を行っていない場合等については、業務の適切性の観点から検証することとする。

Ⅲ.貸付事業の監督に係る事務処理上の留意点

Ⅲ―1 一般的な事務処理等

Ⅲ―1―1 一般的な監督事務

(1) 組合に対するヒアリング

行政庁は、検査の指摘事項に対する改善報告などの各種報告や組合に対する苦情等の状況等から、資金需要者等の利益の保護や組合の業務の健全かつ適切な運営の確保のため必要と認められる場合は、組合に対して、法令等遵守状況等に関する深度あるヒアリングを行うものとする。また、必要に応じ、幹部による役員に対するトップヒアリングを実施するものとする。

なお、ヒアリング及び問題の検証に当たっては、当該問題がどのような背景や土壌から発生し、どのようなリスクを含んでいるかなど、問題の本質を探究するとともに、組合の自覚と自主的な改善につながるよう有意義な監督事務の履行に十分配意するものとする。

(2) オフサイト・モニタリング

監督担当は、必要に応じ、以下の事項等について、提出された資料等の検証などにより、実態の把握に努めるものとする。

① 経営管理(ガバナンス)の基本方針等

② 内部管理の状況

③ 法令等遵守の状況

④ 業務運営の状況

⑤ 内部監査の状況

(3) 苦情等対応等

貸付事業に関する苦情等(違法又は不適切な行為に係る「苦情」、債務整理等に係る「相談」、貸付事業規約の認可の有無に係る「照会」、制度改正意見などの「要望」を含む。以下Ⅲにおいて同じ。)の対応については、資金需要者等の利益の保護の観点に立って対応するとともに、監督担当として、苦情等が組合の法令等遵守状況、業務運営の適切性、内部管理態勢の有効性等を判断する重要な情報であるとの視点をもって対応する必要がある。

苦情等の申出人への対応においては、法に基づく権限の範囲内において申出人に必要な助言を行い、当局は個別取引に関して仲裁等を行う立場にないこと及び法令等に基づき組合の経営の健全性等を確保することが行政庁の職務であることを明確に説明するとともに、必要に応じ、組合相談窓口を紹介するものとする。

なお、必要があると認めるときは、申出人の了承を得たうえで、当該組合に対し、その内容を連絡するものとする。

Ⅲ―1―2 検査担当との連携

監督担当及び検査担当が、適切な連携を図り、オンサイト及びオフサイト双方のモニタリング手法を適切に組み合わせ、実効性の高い監督を実現する観点から、以下に留意するものとする。

(1) オフサイト・モニタリング等を通じて把握した問題点の検査担当への還元

監督担当がオフサイトモニタリング等を通じて把握した組合の問題点については、次回検査においてその活用が図られるよう、検査担当に還元するものとする。

具体的には、監督担当は検査担当に対し、以下の点について説明を行うものとする。

① 前回検査以降の組合の主な動き

(内部規則等の変更、業務方法の変更、他組合との提携、役員の交代、報道等)