添付一覧
○消費生活協同組合法施行規則の一部改正に伴う組合の財務処理等に関する取扱いについて
(平成20年3月28日)
(社援地発第0328003号)
(各都道府県消費生活協同組合主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局地域福祉課長通知)
「消費生活協同組合法施行規則の一部を改正する省令」(平成20年厚生労働省令第38号。以下「改正省令」という。)の施行については、平成20年3月28日付け社援発第0328044号厚生労働省社会・援護局長通知により、その改正の趣旨及び概要について通知したところであるが、下記のとおり決算関係書類の作成等の財務処理等に関する取扱いを定めたので、御了知の上、貴管内の消費生活協同組合及び消費生活協同組合連合会に対し、周知を図るとともに、事務処理上の参考にされたい。
なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言である。
記
1 会計慣行について
組合(消費生活協同組合及び消費生活協同組合連合会をいう。以下同じ。)の会計については、消費生活協同組合法施行規則(昭和23年大蔵省、法務庁、厚生省、農林省令第1号。以下「規則」という。)第66条の規定において、「一般に公正妥当と認められる会計の慣行をしん酌しなければならない。」こととしている。
営利組織である株式会社と同様に、非営利目的の組織体である組合の会計であっても、その主たる会計目的は、情報を提供された者が適切な判断と意思決定ができるように経済主体の経済活動を記録・測定して伝達することにあり、意思決定の有用性という観点からは両者間に本質的な差はないことから、組合についても、基本的には企業会計の基準に準拠した会計処理を行っていくことは当然である。
ただし、生協固有の性格や事業の特質あるいは会計事実から生じる事象について、企業会計と同様の会計基準を採用すると組合員や利害関係者が明らかに意思決定を誤ったり、かえって組合員の利益を損なうおそれがある項目については、これに適合的な会計処理を行うための規定を設けている(例えば、合併における会計処理(規則第150条)等)。
(注1) 中小規模の組合にあっては、会計慣行のしん酌に当たり実務的に対応しやすいように「中小企業会計指針」(日本公認会計士協会・日本税理士会連合会・日本商工会議所・企業会計基準委員会が作成する「中小企業の会計に関する指針」をいう。以下同じ。)を参照するものである。
(注2) 消費生活協同組合法(昭和23年法律第200号。以下「法」という。)第31条の8第1項の規定により会計監査人による監査を受けなければならない組合(以下「会計監査人監査組合」という。)及び任意で会計監査人による監査を実施する組合については、中小企業会計指針において「会計監査人を設置する会社(大会社以外で任意で会計監査人を設置する株式会社を含む。)及びその子会社」がその適用から除外されていることを踏まえ、これと同様の取扱いが求められるものである。
2 帳簿価額について
(1) 経過措置(規則第147条、改正省令附則第3条及び第4条関係)
金融庁企業会計審議会及び企業会計基準委員会により公表された企業会計の基準(以下「企業会計基準」という。)のうち以下の会計基準については、規則の施行後、平成22年3月31日までの間に開始する事業年度までの間は適用しないことができることとしている。ただし、この間においても情報開示の観点から金融商品の適切な評価額などを注記することが望まれる。
① 退職給付に係る会計基準
② 固定資産の減損に係る会計基準
③ 金融商品に関する会計基準
④ 税効果会計に係る会計基準
(注1) 会計監査人監査組合については、上記の経過措置にかかわらず法に定める外部監査が導入される事業年度までには、上記の会計基準を適用することが求められるものである。
(注2) 法第10条第1項第6号に規定する医療に関する事業を行う組合については、②の固定資産の減損に係る会計基準の適用に当たり当面の間、その事業に供する固定資産について、中小企業会計指針による簡便な方法により減損することができるものとする。
(注3) 上記の会計基準を経過措置の期間中に導入する場合において、④の税効果会計に係る会計基準を先行して適用すると、導入初年度の当期未処分剰余金が増加することとなり組合員や組合の利害関係者に思わぬ誤解を与えてしまうおそれがあるため、税効果会計に係る会計基準のみを先行して導入してはならないことに留意するものとする。
(2) 合併における会計処理(規則第150条関係)
組合の合併は、普通出資の特性から、基本的には、企業結合に関する会計基準(企業会計基準第21号)における「取得」や「支配」の概念とは相容れず、合併組合の総代が合併後も継続して議決権を集約して行使する場合など、合併の経済的実態について「持分の結合」ではなく「取得」と解すべき例外的な場合を除き、基本的に、吸収合併対象財産又は新設合併対象財産について、吸収合併又は新設合併の直前の帳簿価額を付す方法(いわゆる持分プーリング法)により会計処理を行う取扱いとされている。
なお、持分プーリング法を適用した場合は、規則第121条に規定する「その他の注記」として以下を付すものとする(以下の記述は吸収合併に関するものであるが、新設合併についても同様とする)。
① 貸借対照表における注記
(ア) 当該吸収合併直前における当該吸収合併に係る吸収合併消滅組合(法第66条に規定する吸収合併消滅組合をいう。以下同じ。)の名称、吸収合併の目的、吸収合併日及び吸収合併である旨並びに当該吸収合併後の吸収合併存続組合(法第66条に規定する吸収合併存続組合をいう。以下同じ。)の名称
(イ) 合併比率及びその算定方法並びに出資1口当たりの金額
(ウ) 吸収合併消滅組合から引き継いだ資産、負債及び純資産の額並びに主な内訳並びにこれらについて帳簿価額で評価している旨
(エ) 会計処理方法を統一している旨。なお、複数の会計処理方法を同一の事業年度に統一できない場合には、その旨及びその理由
② 損益計算書における注記
(ア) 決算関係書類に含まれる吸収合併消滅組合の業績の期間
(イ) 当該吸収合併に要した支出額及びその科目名
また、当事業年度において、合併の経済的実態が例外的に「持分の結合」ではなく「取得」と解すべきと判断され、吸収合併対象財産の全部に、対価として交付する現金等の時価を付す方法(パーチェス法)により吸収合併が行われた場合には、規則第121条に規定する「その他の注記」として以下を付すものとする。
① 貸借対照表における注記
(ア) 当該吸収合併直前における当該吸収合併に係る吸収合併消滅組合の名称、吸収合併の目的、吸収合併日及び吸収合併である旨並びに当該吸収合併後の吸収合併存続組合の名称並びに吸収合併存続組合を決定するに至った主な根拠
(イ) 合併比率及びその算定方法並びに出資1口当たりの金額
(ウ) 発生したのれんの金額、発生原因、償却の方法及び償却期間
(エ) 吸収合併日に受け入れた資産及び引き受けた負債の額並びにその主な内訳並びにこれらについて時価で評価している旨及び当該吸収合併について吸収合併対象財産の全部を対価として交付する現金等の時価を付す吸収合併と判定した理由
(オ) 吸収合併契約において、当該吸収合併契約締結後の将来の事象又は取引の結果により当該吸収合併の対価として、現金等を追加的に交付し又は引き渡す旨を規定している場合には、その旨及び内容並びに当該事業年度以降の会計処理の方針
(カ) 取得原価の配分が完了していない場合には、その旨及びその理由並びに吸収合併が行われた事業年度の翌事業年度以降において取得原価の当初配分額に重要な修正がなされた場合には、その修正の内容及び金額
② 損益計算書における注記
(ア) 決算関係書類に含まれる吸収合併消滅組合の業績の期間
(イ) 吸収合併消滅組合の取得原価及びその内訳
(ウ) 負ののれん発生益の金額及び発生原因
(3) 税効果会計に係る会計基準の導入に伴う任意積立金の積立て
共済事業を行う組合が、税効果会計に係る会計基準を導入する場合、導入初年度において一時的に当期未処分剰余金が増加することとなるが、当該増加額は配当財源とせず、組合の事業基盤の安定に資するべく任意積立金として積立てることが望まれる。
3 決算関係書類等の作成等について
法第31条の7の規定に基づく決算関係書類等の作成については、規則の定めるところによるほか次の事項についても留意するものとする。
なお、決算関係書類等の様式例については、別添の「決算関係書類等の様式例」(以下「別添様式例」という。)のとおりであるので参考にされたい。
(1) 貸借対照表等(規則第4章第3節第3款から第5款関係)
① 平成20年4月1日以降に開始する事業年度に係る決算関係書類(貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分案又は損失処理案)については、原則として規則に定める区分や表示等に則して作成することとなる。
ただし、組合の行う事業は多岐にわたっていることから財産及び損益の状況を適切に示すため、必要な勘定科目を設定し又は設定しないことができるものである。
② 金額の表示単位については、一円単位又は千円単位で表示することとするが、資産総額が500億円以上の組合にあっては、百万円単位で表示することもできるとしている。
ただし、この場合においても剰余金処分案又は損失処理案については、一円単位で表示するものとしていることに留意する。
(2) 任意積立金の積立て及び取崩し(規則第101条及び第105条関係)
任意積立金の積立てについては、剰余金処分案において当該積立金の名称を付して積立てなければならないこととしており、一定の目的のために設定した任意積立金を当該目的に沿って取崩す場合に限り、損益計算書において取崩すことができるものとしている。
したがって、損益計算書において取崩すことができる任意積立金は、剰余金処分案において目的及び目標額を設定した積立金に限られることに留意するとともに、所管行政庁による指導に当たっては、この適正な取扱いについて確認するものとする。
(3) 注記(規則第4章第3節第7款関係)
組合が作成する決算関係書類には、規則の定めるところにより必要な注記を付さなければならないが、企業会計基準の適用に当たっても各会計基準及びその適用指針の定めるところにより必要な注記を付さなければならないことに留意するものとする。
(4) 決算関係書類の附属明細書(規則第128条関係)
① 組合が作成しなければならない決算関係書類の附属明細書の内容については、規則第128条第1項の定めるところによるものであり、この様式例は別添様式例の4のとおりである。
このうち、同条同項第7号の「事業の種類ごとの損益の明細」の作成に当たっては、人件費等の共通経費、資産運用収益・運用費用等について、事業ごとの職員数や資金量、事業の性格等を勘案して、あらかじめ組合ごとに定めた合理的な配賦基準によりそれぞれの事業区分に配賦するものとする。
② 同条第2項において、組合の主要な事業に係る資産及び負債の内容その他の決算関係書類の内容を補足する重要な事項についても表示しなければならないとされている。この様式例は別添様式例の4(8)のとおりであるが、このうち資産及び負債の内容に係るものについては、各組合の実施する事業に応じその重要性を勘案し、この様式例に示されている勘定科目等以外で必要なものについては適宜、作成するものとする。
なお、主として共済事業以外の事業を行う組合においては、決算関係書類の内容を補足する重要な事項として「キャッシュ・フロー計算書」を附属明細書の一つとして位置付けることが望まれる。
(注) 主して共済事業を行う組合が、キャッシュ・フロー計算書を作成することを妨げるものではない。
(5) 事業報告書等(規則第4章第4節関係)
事業報告書については、規則の定めるところにより適宜作成されたい。
なお、平成20年4月1日から施行される法第51条の4第5項の規定により、「教育事業繰越金」については、「教育事業等繰越金」として充当使途が拡大され、組合員の相互の協力の下に地域において行う福祉の向上に資する活動を助成する事業にも充てることができることとされた。
これに鑑み、事業報告書においては、当該事業年度における教育事業や当該助成事業の状況及びこれら事業に充てるための前年度からの繰越額や支出額について記載することが望まれる。
また、教育事業等繰越金については、繰越金であることを明らかにした上で、繰越された事業年度の教育事業等の費用に充てるものとする。
事業報告書の附属明細書の様式例については、別添様式例の5のとおりである。
(6) 行政庁への提出(規則第248条関係)
組合は、法第92条の2第1項の規定により、毎事業年度、事業年度の終了後3月以内に決算関係書類及び事業報告書並びにこれらの附属明細書を行政庁に提出しなければならないこととしているので留意するものとする。
4 連結決算関係書類の作成について
法第31条の8第2項において準用する会社法(平成17年法律第86号)第444条第1項の規定により会計監査人監査組合が作成すべき連結決算関係書類(連結貸借対照表、連結損益計算書及び連結純資産変動計算書)の作成に当たっては、規則の定めるところによるほか次の事項についても留意するものとする。
なお、連結決算関係書類の様式例については、別添様式例の6から8のとおりである。
また、組合が任意により連結決算関係書類を作成する場合の様式例についても、別添様式例の9及び10のとおりであるので参考にされたい。
(1) 連結の範囲・持分法の適用(規則第72条及び第78条関係)
連結の対象範囲については、原則としてすべての子法人等であるが、重要性の原則(資産、売上高等からみて連結の範囲から除いても、組合集団の財産及び損益の状況に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性が乏しいものは連結の範囲から除くことができる。)が適用されるものとしている。また、非連結子法人等及び関連法人等については、重要な影響を与えないものを除き、持分法を適用することとしている。
(2) 子法人等の時価評価(規則第77条及び改正省令附則第5条関係)
会計監査人監査組合は、改正法の規定により新たに連結決算関係書類を作成しなければならないこととなるが、これに伴い会計帳簿上、連結子法人等の時価評価を行うことが必要となる。
このため、当該組合が施行日時点(平成20年4月1日)で既に子法人等を所有している場合には、当該子法人等について過去の株式取得時に遡及して時価評価しなければならないこととなる。
しかしながら、当該子法人等の資産及び負債のうち当該組合の持分に相当する部分について、株式取得当時のデータ入手困難などにより評価差額及びのれんを適切に見積もることができないなどの一定の場合には、会計帳簿上、当該子法人等を時価ではなく帳簿価額により評価できることとしている。
5 共済事業に係る経理から他の経理への資金運用について
組合は、法第50条の4の規定により共済事業に係る経理からそれ以外の事業に係る経理へ資金を運用してはならないこととされているが、厚生労働大臣の承認を受けた場合にあってはこの限りではないとされている。
この承認の基準については、次のとおりであるので留意するものとする。
① 他事業へ運用できる資金の額の限度は、原則として、払込済出資金、法定準備金及び任意積立金の合計額(繰越欠損金がある場合はその額を控除した額)の2分の1以下の額とすること。
② 他事業の経理内容が確実であること。
③ 当該事業年度内に償還可能であること。
6 決算関係書類等の開示及び信頼性の確保について
組合の行う事業は、近年、拡大・複雑化して来ており、組合の経済事業主体としての責任が増大していることを鑑み、組合には経済実態を反映した情報開示や経営の透明性を一層確保することが求められる。
このことから、組合員や利害関係者にディスクローズされる決算関係書類等については、より信頼性が求められることとなるため、組合はその事業規模に応じ、財務に関する開示情報の信頼性がより担保されるよう、公認会計士又は監査法人による監査を受けるよう努めるものとする。
(別添)
決算関係書類等の様式例
1 貸借対照表 (1) 主として共済事業を行う組合 (2) 主として共済事業以外の事業を行う組合 2 損益計算書 (1) 主として共済事業を行う組合 (2) 主として共済事業以外の事業を行う組合 3 剰余金処分案・損失処理案 4 決算関係書類の附属明細書 (1) 組合員資本の明細 (2) 借入金の明細 (3) 有形固定資産及び無形固定資産の明細 (4) 関係団体等出資金の明細 (5) 引当金の明細 (6) 事業経費の明細 (7) 事業の種類ごとの損益の明細 ① 事業別損益計算書 ② 事業別事業経費明細表 ③ 共済事業部門別損益計算書 (8) その他の決算関係書類の内容を補足する重要な事項 ① 主要な事業に係る資産の内容 ② 主要な事業に係る負債の内容 ③ キャッシュ・フロー計算書 5 事業報告書の附属明細書 (1) 役員報酬等の状況 (2) 役員の兼職の明細 (3) 組合と役員との間の利益が相反する取引の明細 6 連結貸借対照表 7 連結損益計算書 8 連結純資産変動計算書 《参考》 9 主として共済事業以外の事業を行う組合が作成する連結貸借対照表 10 主として共済事業以外の事業を行う組合が作成する連結損益計算書 |
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