添付一覧
なお、教育事業等繰越金は、支出目的を限定されているもので、他の積立金のように欠損のてん補に充てることは許されない。
<第○○条(医療福祉等事業の積立金)関係>
組合の行う医療事業・福祉事業は、主に保険料や税といった公的財源により賄われているものがあり、これらの公的財源が有効に活用され、良質で効果的な医療・福祉サービスが安定的・継続的に提供されることが望ましい。このため、医療福祉等事業として整理した事業により生ずる剰余が医療・福祉サービスの再生産のために用いられるよう、法第51条の2の規定により、医療福祉等事業の費用に充てる場合を除いては取り崩してはならないものであり、当然、剰余金として割り戻すことができない。
<第68条(剰余金の割戻し)関係>
1 組合は、組合員の生活の文化的経済的改善向上を図ることのみを目的として事業を行っているものであって、営利を目的として事業を行ってはならない(法第2条第1項第2号及び第9条)ものであり、一般の会社のように利益を得てこれを社員に分配することを目的とするものではない。
したがって、剰余金の割戻しにあたっても、その方法は営利団体と異なった方法を採るべきであって、組合員がどの程度組合に出資したかという面からではなく、組合事業の発展のため組合事業をどの程度利用したかにより、すなわち組合事業の利用分量に応じて主たる割戻しがなされるべきは当然である。しかし、組合の事業発展のために組合自身の資産内容を充実させるという点から見れば、組合員からの出資額が多くなることも不可欠な要素であり、このためには出資について何らかの刺激が必要であるということができるので、法においても出資額に対して年1割以内という制限のもとに出資額に応ずる割戻しを認めているものである(法第2条第1項第6号、第52条第4項)。
なお、組合が剰余金について損失のてん補、法定準備金の積立て及び教育事業等繰越金の繰越しを全て定められたとおり完済しないで割戻しを行った場合、利用分量又は払い込んだ出資額に応ずる以外の割戻しを行った場合、出資額に応ずる割戻しを年1割の率を超えて行った場合には、理事は、20万円以下の過料に処せられる(法第100条第1項第31号)。
2 出資の払込みを終わらない組合員については、その組合員に割り戻すべき剰余金をその払込みを終わるまでは組合が一方的にその払込みに充当させることができるものとされている(法第53条)。このように、組合は、割戻金をもって組合員の出資払込みと対抗することができるが、組合員は出資の払込みについて相殺をもって組合に対抗することはできない(法第16条第4項)。
<第69条(利用分量に応ずる割戻し)関係>
1 「事業の種類別」とは、供給事業、利用事業という別ばかりでなく、例えば供給事業については、食料品、衣料品というような別、あるいは月賦供給品、現金供給品というような別、利用事業については、経理を別にしているそれぞれの施設別というような別まで含まれるものである。実際問題としては、組合の経理の実態に応じ、事務処理があまり煩雑とならないよう、また組合員の間に割戻しの不公平が生じないよう考慮して、割戻しの事業種類別を定めるべきである。
2 利用分量割戻しを行うことについての「総(代)会の議決」は、剰余金処分の一環として行われるものである(法第40条第1項第7号)。
3 「組合員に公告する」については、第78条に規定する方法により行うものである。
4 「6箇月を経過する日までに」の期間の計算については、第13条(解説)2を参照のこと。
5 第9項は、組合員の利用状況についてコンピュータ管理を行う等の方法により正確に把握している組合については、組合員からの請求があったものとみなして、組合員の銀行口座へ振込を行う等により迅速に利用分量割戻しを行い、組合員利益の向上を図ることができることとしたものである。
6 第10項は、第8項又は第9項による支払を行おうとしたが、組合員の住所、連絡先、口座等が変更され、当該組合員に連絡をとる方法がなく、かつ、第8項に定める期間内に請求がなかった場合は、「組合の責めに帰すべき事由以外の事由」とし、利用分量割戻しを受ける権利を放棄したものとみなして、第11項の処理を行い、組合会計処理の合理化を図ることとしたものである。
<第70条(出資額に応ずる割戻し)関係>
1 「任意積立金取崩額」は、「損益計算書において計上する任意積立金取崩額」及び「剰余金処分案において計上する任意積立金取崩額」の両方を含むものである。
なお、割戻しとその対象となる剰余金の関係は、次のようになる。
A 利用分量割戻し
毎事業年度の剰余金が利用分量割戻しの対象となり、これは損益計算書の当期剰余金である。
B 出資配当
損益計算書の当期未処分剰余金(当期未処理損失金)に剰余金処分案の任意積立金取崩額を加算した額が出資配当の対象となる。
ただし、A、Bいずれにおいても、貸借対照表上、純資産の部の「その他有価証券評価差額金」において、マイナスの金額を計上している場合(差額金の処理について、全部純資産直入法により処理している組合に限る。)には、これは未実現損であるため、それぞれの割戻しの対象となる金額からこのマイナスの金額を控除しなければならないことに留意するものとする。
また、当期未処理欠損金がある場合に、出資配当を行う場合は、欠損金をてん補しなければ出資配当することができない(法第52条第1項)こととされており、欠損金が生じた場合に出資配当を行う場合は、特に組合の財務の健全性に留意して行う必要がある。
2 払い込んだ出資額に応ずる割戻しの率を年1割以内とすることは、法第52条第4項に定められている制限で、これを超えた場合には、理事は、20万円以下の過料に処せられる(法第100条第1項第31号)。
3 「総(代)会の議決」については、前条(解説)2を参照のこと。
4 「組合員に公告する」については、前条(解説)3を参照のこと。
5 「6箇月を経過する日までに」については、第13条(解説)2を参照のこと。
6 第7項は、出資配当を組合員の口座に振込む、あるいは現金書留で送付する等支払方法に関する取決めを明確に定めている場合には、組合員からの請求があったものとみなして、当該取決めによる支払方法によって迅速な出資配当の支払を行い、組合員利益の向上を図ることができることとしたものである。
7 第8項は、第6項又は第7項による支払を行おうとしたが、組合員の住所、連絡先、口座等が変更され、当該組合員に連絡をとる方法がなく、かつ、当該組合員から第4項に定める総(代)会の終了の日より2年を経過する日までの間に請求がなかった場合は、「組合の責めに帰すべき事由以外の事由」とし、出資配当を受ける権利を放棄したものとみなし、組合会計処理の合理化を図ることとしたものである。
8 「第4項に定める総(代)会の終了の日より2年を経過する日までの間に」については、法第23条に規定する脱退組合員の出資金の払戻請求権の時効が2年であることと同一の扱いとしたものである。
<第71条(端数処理)関係>
1 「計算する場合」とは、組合員全体に対する割戻金を組合員個々にいくら分配するかという計算をする場合のことをいうのであって、剰余金のうち組合員全体に対して割り戻される割戻金の総額を計算する場合のことをいうのではない。したがって、組合員全体に対する割戻金の総額を例えば千円単位にしたり万円単位にするためにその端数を切り捨ててしまうことは認められない。
2 切り捨てた残余のものは、次条の規定により、剰余金として任意に積み立て、又は翌事業年度へ繰り越すことになるものである。
<第72条(その他の剰余金処分)関係>
この任意積立金又は繰越金は、全く任意なものである。しかしながら、組合に剰余が生じた場合には、本来組合員に還元すべきであり、これを野放図に任意積立金等により積み立てることは適当でない。したがって、任意積立金を積み立てる場合には、次年度の事業の拡大に備えて資産の充実を図る等その目的、必要とする額等を各組合毎に判断しながら積み立てることが必要である。いずれにしても、必要な処理を行った後の剰余金は、それぞれ組合の経済的実情に応じ、組合員全体の意思を尊重して決めるべきものである。
<第73条(欠損金のてん補)関係>
「順に取り崩して」というのは、先順位のものを全部充ててもなお欠損金が残るような場合に、はじめて次順位のものを取り崩すことができるということである。すなわち、法定準備金を欠損金のてん補に充てる場合は、欠損金については、繰越剰余金及び任意積立金の全部をてん補に充ててもなお残余があるときに限られるものである。
なお、医療福祉等事業のみを行う組合については、法第51条の2の規定により、残余がある場合については、医療福祉等積立金として積み立てることとされているため、「繰越剰余金」は存在せず、「前条の規定により積み立てた積立金」とは、当該医療福祉等積立金を指すものである。
<第74条(投機取引等の禁止)関係>
組合の役員は、いかなる名義をもってするを問わず投機取引きのために組合の財産を処分してはならないものであるが、この処分をした役員は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金(共済事業を行う組合の役員にあっては、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金)に処せられ、情状によっては懲役及び罰金が併科されることもある(刑法に正条がある場合には適用されない。法第98条。)。
<第75条(組合員に対する情報開示)関係>
組合員に対する情報開示については、第36条(解説)3を参照のこと。
また、法第53条の2第1項及び第2項において業務及び財産の状況に関する説明書類の縦覧について規定されており、また、同条第6項において共済事業を行う組合及び子会社等の業務及び財産の状況を知るために参考となる情報開示の努力義務が課せられている。
第7章 解散
<第76条(解散)関係>
1 組合の解散の事由は、法第26条第1項第18号の規定により、定款の法定記載事項である。
2 組合が解散(合併及び破産による解散を除く。)したときは、清算人の申請により(行政庁の解散命令による解散の場合は行政庁の嘱託により)、主たる事務所の所在地においては2週間以内に、従たる事務所の所在地においては3週間以内に、解散の事由を証する書面を添付して解散の登記をしなければならない(法第78条)。なお、登記に関しては、第2条(解説)2を参照のこと。
3 組合の解散及び合併の議決は、組合員の半数以上の出席を成立要件とし、3分の2以上の多数決を議決要件とする特別議決事項とされている(法第42条)。さらに、総会の議決による解散及び目的たる事業の成功の不能による解散並びに合併は、行政庁の認可を受けなければ、その効力が生じないものである(法第62条第2項及び第69条第1項)。
4 定款に存立時期を定めた組合にあっては、本条に掲げる事由のほか、その時期の到来によっても解散することは当然である。なお、この場合は、組合員の3分の2以上の同意があれば、その時期到来後も組合を継続することができる(法第63条第1項)。
5 「組合の合併」には、吸収合併と新設合併とがある。吸収合併の場合は、他の組合を吸収する1組合が合併後も存続し、他の組合は皆解散するが、新設合併の場合は、合併しようとする組合が、すべて解散して新たな組合が設立されるものである。
なお、組合が合併する場合には、従前の組合が解散されたとしても、その清算手続は必要としない。
6 「組合の破産」とは、債権者に対する組合の支払不能、すなわち債務超過の場合において裁判所が組合に対し、破産宣告をしたときのことをいうものである。破産は、裁判所が申立により、決定をもって破産の宣告をし、その公告があれば、組合は事業を停止して、破産たる清算手続に入るので当然に解散することとなる。
7 行政庁は、法第95条第3項の規定により、組合の業務若しくは会計が法令若しくは法令に基づいてする行政庁の処分に違反し、又は組合の業務又は会計の状況について検査を行った結果、正当な理由がなく1年以上休止若しくは成立後1年以内に事業を開始していない場合において、法第95条第1項に規定する組合が採るべき必要な措置の命令に従わなかったときは、解散を命ずることができるものとされている。この行政庁の命令があった場合は、組合は総会の議決をまたず解散することは当然である。
8 「第6条第2項の規定による組合員」とは、組合の区域内に勤務地を有する者(地域組合の場合)、組合の区域の付近に住所を有する者又は当該区域内に勤務していた者(職域組合の場合)で、組合の承認を受けて組合員となったものをいう。
9 組合の設立には20人以上の発起人が必要であり、また特別の理由のない限りは、300人以上の賛成者が存することが要件となっている(法第54条、第55条)が、組合員が300人以下となった場合にただちに組合の存続要件を欠くとすることは、実情に即さない面も多いので、設立した組合の存続要件は発起人の数と同じ数とされているものである(法第64条第1項)。この存続要件の員数の算定にあたっては、第6条第2項の規定による組合員は、特に組合事業を利用することが適当であるということで加入を承認したものであるから、これに算入すべきではない。
10 組合員の減少により解散したときは、解散登記をしなければならないことは勿論であるが、遅滞なくその旨を行政庁に届け出なければならず(法第64条第2項)、この義務を怠った場合は、理事は、20万円以下の過料に処せられる(法第100条第1項第24号)。
11 「通知し、かつ、公告」については、第78条及び第79条を参照のこと。
<第77条(残余財産の処分)関係>
法においては、原則として持分計算による払戻しを廃止し、脱退組合員についても払込済出資額以上の持分を払い戻すことは認めていない(第13条(解説)3を参照)のであるが、解散の場合においては、合併及び破産の場合を除いては、残余財産の組合員への配分が認められている(法第73条において準用する会社法第502条)。
この財産処分の方法の決定については、法令上特に手続きが定められていないが、財産処分の方法の原則を定款上にあらかじめ定め、とくに支障のない限りこの原則に従って財産処分をすることが望ましいと考えられる。
なお、この財産の組合員への配分は、存否又は額について争いのある債権に係る債務についてその弁済に必要と認められる財産を留保して残余の財産を分配する場合を除き、組合の債務を弁済した後でなければ行ってはならないものであり(法第73条において準用する会社法第502条)、これに違反したときは、清算人は、20万円以下の過料に処せられる(法第100条第1項第42号)。
第8章 雑則
<第78条(公告の方法)関係>
1 「公告の方法」は、法第26条第1項第16号の規定により、消費生活協同組合法又は他の法律の規定により官報に掲載する方法により公告しなければならないものとされている場合(例えば組合が出資1口の金額の減少を議決した際の債権者に対する公告)を除き、定款の法定記載事項である。
2 「公告の方法」は、設立登記事項及び変更登記事項とされている(法第74条第2項第6号、第77条第1項)が、これについては、第2条(解説)2を参照のこと。
3 「組合の公告」とは、組合が組合員と利害関係を有する事項について、組合員全般に知らせることをいい、本模範定款例上組合が公告しなければならない事項は、第51条第4項の規定による規約の変更のうち総(代)会の議決を要しない事項の変更の周知(通知等他の周知方法を行った場合は除く。)、第69条第5項及び第70条第4項の規定による剰余金の割戻しの請求方法、第76条第3項の規定による解散に関する事項等である。
<第79条(組合の組合員に対する通知及び催告)関係>
1 「組合員に対してする通知」とは、組合が、ある一定の事実、処分又は意思を組合員に知らせることをいい、本模範定款例上は第8条第2項の規定による組合加入の承認、第12条第2項の規定による除名、第48条第4項の規定による総(代)会招集、第51条第4項の規定による規約の変更のうち総(代)会の議決を要しない事項の変更(公告等他の周知方法を行った場合は除く。)並びに第76条第3項の規定による解散に関する事項の通知がこれに該当する。
2 「組合員に対してする催告」とは、組合が組合員に対して一定の行為をなすべきことを催告することをいう。本模範定款例上において、催告に関しては第12条第1項に組合が、「出資の払込み(過怠金の納付、供給物資の代金又は利用料の支払)を怠り、催告を受けてもその義務を履行しないとき」は除名できると規定している。
3 「組合員名簿」とは、法第25条の2に規定しているように、各組合員の氏名又は名称、住所、加入年月日、出資口数並びに払込済出資額及びその払込年月日を記載してあるものである。
4 組合の組合員に対する通知又は催告については、法第39条第2項の規定により、事務の煩雑と混乱をさけるために、発行主義がとられ、実際の到達及び接受の時期の如何にかかわらず通常の状態で到達すべきであったときに到達したものとみなすこととされている。
<第80条(実施規則)関係>
「規則」については、第33条(解説)3を参照のこと。
附則
<2(成立当初の役員の任期)関係>
「成立当初における役員の任期」は、1年を超えない範囲において創立総会において定める期間としなければならないものとされている(法第30条第3項)。
設立当初の役員は、法第56条第1項の規定により、創立総会で選挙又は選任(法第28条第9項)されるものであるが、この創立総会は、20人以上の発起人及び組合経営に必要な数(300人以上)の賛成者で構成されているもので、その後組合員が増加し、事業を正常に開始した状態からみれば、創立総会で議決された内容は、あくまで成立当初の過渡的なものであるから、組合運営の正常化のためにはできるだけ早く通常総(代)会を開き、改めて正規の役員を選挙することが必要であろう。このため、創立総会において選挙又は選任された役員の任期は、特に短くされているもので、役員を総(代)会で選挙又は選任していることとしている組合にあっては、組合成立後第1回の通常総(代)会を必ず1年以内に招集しなければ、法律違反の状態が生ずるので注意を要する。
<○(成立後第1期の総代)関係>
総代の定数、選挙区、選挙の方法その他選挙に関し必要な事項は、選挙規約で定めるものであり、この選挙規約は、通常の場合、組合設立後第1回の通常総(代)会で議決されるものであるが、総代をおいている組合にあっては、通常総代会の招集に際してはまず総代を選挙しておかなければ総代会そのものの招集ができない。このため、組合成立後第1期の総代の選挙に関しては、創立総会で選挙された理事の間で定めざるをえず、このため本条をおく必要がある。なお、創立総会においてすでに選挙規約を定めた組合にあたっては、本条は必要としない。