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○バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針

(平成21年3月4日)

(薬食審査発第0304007号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)

バイオテクノロジー応用医薬品については、化学合成医薬品と異なり既存薬との有効成分の同一性を実証することが困難である。

一方、バイオテクノロジー応用医薬品に関する製法及び解析技術等の進歩にともない、諸外国においても、バイオテクノロジー応用医薬品と同等/同質の医薬品としてバイオ後続品の開発が進められている。

このような技術の進歩等を踏まえ、厚生労働科学研究費補助金厚生労働科学研究事業「バイオジェネリックの品質・有効性・安全性評価法に関する研究」(主任研究者 川西徹 国立医薬品食品衛生研究所薬品部長)において検討を行ってきたところである。

今般、研究結果を踏まえ、別添のとおり「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」(以下「本指針」という。)をとりまとめたので、下記の事項にご留意の上、貴管下関係業者等に対して周知徹底方ご配慮願いたい。

1.指針の適用対象

平成21年3月4日付け薬食発第0304004号医薬食品局長通知の記の第1の2の(7)に規定する医薬品(以下「バイオ後続品」という。)の承認申請にあたっては、本指針を踏まえ、添付資料の作成等を実施すること。

2.指針の適用時期

本通知による申請は、本日から適用する。

ただし、既に承認申請が行われている医薬品のうち、バイオ後続品と評価されるものについては、個別に適用する。

3.その他

(1) 申請手数料については、薬事法関係手数料令(平成17年政令第91号)第7条第1項第1号イ(1)及び同令第17条第1項第1号イ(1)とする。

(2) 薬事・食品衛生審議会との関係では、部会報告品目とする。

(別添)

「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」

1.始めに

バイオ後続品とは、国内で既に新有効成分含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品(以下「先行バイオ医薬品」という。)と同等/同質の品質、安全性、有効性を有する医薬品として、異なる製造販売業者により開発される医薬品である。一般にバイオ後続品は品質、安全性及び有効性について、先行バイオ医薬品との比較から得られた同等性/同質性を示すデータ等に基づき開発できる。

本文書では、「同等性/同質性」とは、先行バイオ医薬品に対して、バイオ後続品の品質特性がまったく同一であるということを意味するのではなく、品質特性において類似性が高く、かつ、品質特性に何らかの差異があったとしても、最終製品の安全性や有効性に有害な影響を及ぼさないと科学的に判断できることを意味する。

バイオ後続品の開発では、複数の機能部位から構成されるといった複雑な構造、生物活性、不安定性、免疫原性等の品質特性から、化学合成医薬品と異なり先行バイオ医薬品との有効成分の同一性を実証することが困難な場合が少なくなく、基本的には化学合成医薬品の後発品(以下「後発品」という。)と同様のアプローチは適用できないと考えられる。そこで、バイオ後続品では後発品とは異なる新たな評価の指針が必要である。また、後発品とは異なる新たな製造販売承認申請区分(1―(7)バイオ後続品)(*脚注)で申請することとする。

本指針は、新たな申請区分に分類されるバイオ後続品の開発を行う際に配慮すべき要件を示すとともに、承認申請に必要なデータについて明らかにしたものである。

バイオ後続品の申請は、先行バイオ医薬品の再審査期間の満了等をもって可能となると考えられる。したがって、バイオ後続品は、先行バイオ医薬品の開発・承認以降、一定期間の製造販売実績及び臨床使用期間を経てから開発することになると考えられる。その間に、目的とするバイオテクノロジー応用医薬品に関連する製法、解析技術、あるいは評価技術は急速に進歩すると考えられることから、開発に当たってはその間の情報の蓄積や最新の科学技術を十分取り入れることが求められる。また、安全性に関する最新の情報についても十分に考慮した開発が必要となる。

* 昭和59年3月30日薬審第243号通知における「既承認の組換え医薬品と製造に用いる宿主・ベクター系が異なる組換え医薬品」及び昭和63年6月6日薬審1第10号通知における「既承認の細胞培養医薬品と種細胞株の異なる細胞培養医薬品」には該当せず、また後発品とは異なる申請区分となる。

2.適用範囲(対象)

本指針では、微生物や培養細胞を用いて生産され、高度に精製され、一連の適切な分析方法により特性解析ができる遺伝子組換えタンパク質(単純タンパク質及び糖タンパク質を含む)、ポリペプチド及びそれらの誘導体並びにそれらを構成成分とする医薬品(例えば、抱合体)を対象とする。

本指針で示す基本的な考え方は、細胞培養技術を用いて生産される非組換えタンパク質医薬品、あるいは組織及び体液から分離されるタンパク質やポリペプチドのような上記の範疇以外の医薬品であっても、高度に精製され、品質特性解析可能な医薬品には適用できる場合がある。なお、適用できるかどうかについては、個々の製品ごとに規制当局に相談することが望まれる。

本文書は、抗生物質、合成ペプチド及び合成ポリペプチド、多糖類、ビタミン、細胞の代謝産物、核酸を有効成分とする医薬品、アレルゲン抽出物、病原微生物を弱毒化・不活化したものや抽出物等を抗原とした従来型のワクチン、細胞又は全血若しくは細胞性血液成分(血球成分)には適用されない。

3.バイオ後続品開発における一般原則

バイオ後続品の開発においては、独自に製法を確立するとともに、新規遺伝子組換えタンパク質医薬品と同様に、その品質特性を詳細に明らかにすることが必要である。これに加えて、実証データ等を用いて品質特性について先行バイオ医薬品と類似性が高いことを示す必要がある。さらに、原則として非臨床試験及び臨床試験のデータも含め、同等/同質であることを示す必要がある。また、先行バイオ医薬品は、国内で承認されている医薬品であり、バイオ後続品の開発期間(品質、非臨床、臨床の全開発期間)を通じて同一の製品である必要がある。

バイオ後続品の同等性/同質性評価においてはICH Q5Eガイドライン:「生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の製造工程の変更にともなう同等性/同質性評価」に記載されているコンセプトに基づいた適切な試験の実施が必要と考えられる。すなわち適宜先行バイオ医薬品を比較対照とし、物理的化学的試験、生物活性試験、さらに非臨床・臨床試験データを組み合わせることにより、同等性/同質性を評価する。

バイオ後続品に関する同等性/同質性評価の目標は、先行バイオ医薬品と品質特性において類似性が高く、かつ、品質特性に何らかの差異があったとしても、最終製品の安全性及び有効性に有害な影響を及ぼさないことを示すことである。品質特性に関する同等性/同質性評価試験において、先行バイオ医薬品の原薬が入手可能な場合は、原薬を用いた試験の実施が求められる。しかし、一般的に先行バイオ医薬品の原薬を入手することは困難な場合が多く、そのような場合には製剤を用いた検討を行なわざるを得ないであろう。

したがって、現在の科学技術の限界や、製剤を用いて得られるデータでは品質特性に関する同等性/同質性を評価することに限界があるものの、科学的に妥当性の示された手法を用いて可能な範囲で解析を行い、得られたデータを提出する必要がある。なお、製品によっては、文献等の情報を品質特性に関する一部の同等性/同質性評価の参考とすることも可能である。

科学的に妥当かつ合理的な範囲で品質特性に関する同等性/同質性評価を行った結果、先行バイオ医薬品との同等性/同質性がどの程度立証できたかによって、求められる非臨床試験や臨床試験のデータの必要度及びその範囲は異なる。

非臨床試験は、バイオ後続品の特性解析を十分行なった上で実施すべきであり、バイオ後続品そのものの品質特性解析の結果や先行バイオ医薬品との品質特性の比較に基づいた同等性/同質性の評価結果を考慮して、どのような試験を実施するか適切に判断することが求められる。

臨床試験の実施に際しては、開発しようとしているバイオ後続品の品質特性、並びに先行バイオ医薬品とバイオ後続品との品質特性及び非臨床試験結果の比較に基づく同等性/同質性評価結果を考慮するべきである。また先行バイオ医薬品に関する文献等を含む種々の知見も考慮して、必要かつ合理的な試験をデザインし、先行バイオ医薬品と有効性及び安全性が同等/同質であるかを評価しなければならない。

4.バイオ後続品の製法・品質特性解析

バイオ後続品の開発にあたっては、恒常性・頑健性の高い製造方法を独自に確立することが必要である。さらに、得られた製品について、新規組換えタンパク質性医薬品と同様に十分な特性解析を実施し、データを提出することが求められる。開発しようとするバイオ後続品の有効成分の特徴や適宜先行バイオ医薬品との品質特性に係る同等性/同質性評価結果に基づき、製法を最適化するとともに、適切な規格及び試験方法のほか、工程管理法を設定する必要がある。

また、バイオ後続品であっても開発途上で製法変更があった場合には必要に応じてICH Q5Eガイドラインにしたがって同等性/同質性を評価する。

4.1.製法開発

バイオ後続品の開発にあたっては、先行バイオ医薬品について、製剤処方を始めさまざまな角度から分析を行うことが想定される。しかし、他社が開発した先行バイオ医薬品の製法に関する情報や原薬そのものを入手することは通常困難であろう。

さらに、先行バイオ医薬品の製剤を用いた解析だけでは製法に関しては限定的な情報しか得られないことが多いと考えられる。例えば、添付文書等より、セルバンク作製時や培養工程で血清や生体由来成分が用いられているか、あるいは精製工程で目的とする有効成分に対する抗体カラム等が用いられているか等についての情報を得られる可能性があるが、これらの情報も非常に限定的であると考えられる。したがって、バイオ後続品の開発では独自に恒常性と頑健性が担保された製法を開発・確立する必要がある。また、このような製法上の違いがあることを十分に考慮した上で、先行バイオ医薬品とバイオ後続品との同等性/同質性を明らかにしていくことが求められる。

バイオ後続品の開発は先行バイオ医薬品の承認からかなりの期間を経た後に行われることから、バイオ後続品の製法開発にあたっては、その時点における最新の知見に基づいた安全対策等が適用可能な場合には、それを積極的に採用することが推奨される。すなわち、バイオ後続品の開発にあたっても、有効性に影響しない範囲において、最新の安全対策等を積極的に採用することが求められる。したがって、無血清培養を採用する等、より安全性の高い製造方法を模索することがむしろ妥当と考えられる場合もある。

宿主・ベクター系

バイオ後続品を製造するためのセルバンクシステムの構築において、先行バイオ医薬品の宿主細胞が明らかにされている場合は同一宿主細胞を用いた開発を進めることが望ましい。あえて異なる種類の宿主細胞を用いた開発を行う場合には、宿主細胞由来不純物を含む製造工程由来不純物のプロファイルの違いに着目した品質や安全性に関する検討を同一宿主細胞の場合よりも十分に行い、データを提出することが求められる。

糖タンパク質医薬品では糖鎖の不均一性が大きく、構造解析によるデータからはその同等性/同質性を示すことが困難な場合が多い。さらに糖鎖の不均一性は、宿主細胞が同一であっても遺伝子発現構成体の挿入部位や培養条件等、さまざまな要因によって大きく変動することが知られている。糖鎖の不均一性の高い製品を開発する場合、現実的には先行バイオ医薬品とバイオ後続品の糖鎖構造において高い類似性を有するように製造条件を設定することは極めて困難であることから、糖鎖の違いが安全性・有効性に及ぼす影響を評価できるような非臨床試験・臨床試験を通して最適な戦略を模索することが必要となるであろう。

宿主細胞は、新有効成分を含有する医薬品の場合と同様に、細胞の由来や履歴を明確にするため、これらの情報は可能な限り樹立した研究機関から得ることが望ましい。これらの情報が入手できない場合には、文献等の情報でもやむを得ない。培養履歴ばかりでなく、セルバンクシステムの構築、細胞基材の特性解析等についても新有効成分含有医薬品と同様の要件が求められる。

先行バイオ医薬品について、利用可能な情報が不足していることから、同一のベクター系を用いた開発は困難と考えられる。特に、プロモータやエンハンサー、シグナル配列等については独自の戦略をもって開発することになるであろう。ICH Q5Bガイドライン「組換えDNAを応用したタンパク質生産に用いる細胞中の遺伝子発現構成体の分析」に従い、生産細胞中の遺伝子発現構成体の分析を実施するとともに、製造工程を通じた遺伝子発現構成体の安定性についての試験を実施することが必要である。

セルバンクシステム

セルバンクシステムの構築、すなわちマスターセルバンクやワーキングセルバンク調製時の細胞培養方法、血清や添加剤の有無、さらには目的遺伝子の増幅方法等については先行バイオ医薬品の情報が得られないと考えられるので、独自に確立する必要がある。セルバンクシステムの構築やその特性解析、管理方法に関しては、ICH Q5Aガイドライン「ヒト又は動物細胞株を用いて製造されるバイオテクノロジー応用医薬品のウイルス安全性評価」、ICH Q5Bガイドライン及びQ5Dガイドライン「生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)製造用細胞基剤の由来、調製及び特性解析」に従う。

培養・精製工程

培養・精製工程を含めた製造工程についても、先行バイオ医薬品と同一の方法を採用することは困難であることから、製造工程を独自に確立する必要がある。したがって、血清等の培養・精製工程で用いられる原材料も先行バイオ医薬品とは異なると考えられることから、培養工程由来不純物や精製工程由来不純物等が先行バイオ医薬品と異なることが想定される。

目的物質由来不純物や製造工程由来不純物によっては安全性に大きく影響するものがあることも想定される。また、測定法上の限界等により不純物プロファイルについて先行バイオ医薬品とバイオ後続品との類似性を明らかにすることが必ずしも容易でない場合が多い。こうした場合には、単に不純物の異同を評価するだけではなく、独自に確立した製法や製品の特性解析の結果に基づいて製品の安全性への影響を評価することの方が合理的であろう。このことは、不純物についてすべての安全性試験を実施することを求めるものではなく、製品の特性解析の一環として不純物の評価を行い、不純物の除去状況、不純物に関するこれまでの経験や情報を考慮して、必要かつ合理的な工程管理や規格及び試験方法の設定により安全性を担保することを求めるものである。

4.2 特性解析(構造解析、物理的化学的性質、生物活性等)

特性解析では、確立された製造方法により製造された製品について、新規組換えタンパク質医薬品と同様のデータが求められることになる。

特性解析では、最新の科学技術を用いて、①構造・組成、②物理的化学的性質、③生物活性、④免疫化学的性質、⑤不純物等について十分に解明する必要がある。

不純物に関しては、目的物質由来不純物、及び製造工程由来不純物について解析を行うとともに、精製工程での除去状況も踏まえた評価を行っておくことが求められる。不純物プロファイルが先行バイオ医薬品と同等/同質であることを証明することは困難である。しかし、免疫原性等の問題が生じる懸念があることから、必要に応じて非臨床・臨床開発の段階で適切な試験を実施することを考慮するべきである。

4.3 製剤設計

バイオ後続品は、原則的に先行バイオ医薬品と剤形や投与経路が同一である必要がある。製剤設計に関して有効性や安全性に影響を与えない限り、製剤処方が先行バイオ医薬品と同一であることは必須ではない。異なる添加剤を選択することが妥当な場合もある。また、必要に応じて体内動態等に関する非臨床試験あるいは臨床試験の実施も考慮するべきである。

4.4 安定性試験

バイオ後続品の開発においても、実保存期間・実保存条件での長期保存試験が必要となる。有効期間は長期保存試験データに基づき設定する。ただし、承認申請時には6ヶ月以上の試験データを提出することで差し支えない。また、保存条件及び有効期間が先行バイオ医薬品と同一であることは必須条件でないことから、先行バイオ医薬品との比較は必ずしも必要ではない。また、バイオ後続品の原薬・製剤の特性を評価する上で有用な情報が得られることから、原則として苛酷試験・加速試験の実施が望まれる。これらの安定性試験については、ICH Q5Cガイドライン「生物薬品(バイオテクノロジー応用製品/生物起源由来製品)の安定性試験」にしたがって実施することが求められる。

5.品質特性に関する同等性/同質性の評価試験

恒常性・頑健性のある製造方法により製造されたバイオ後続品の品質特性を十分に解析するとともに、先行バイオ医薬品とバイオ後続品との品質特性に関して必要かつ可能な項目について同等性/同質性評価を実施する。異なる製法により製造されるバイオ後続品と先行バイオ医薬品との間には、糖タンパク質における糖鎖の違いのような有効成分そのものはもとより、目的物質関連物質や不純物プロファイルを含めてその品質特性に違いが存在する可能性が高い。したがって、可能であれば複数ロットを用いた品質特性に関する同等性/同質性の評価によって認められた差異が有効性や安全性に対してどのような影響があるか考察し、その結果に基づいて非臨床・臨床で実施すべき試験を選択することが求められる。

許容される品質特性の差異の範囲については、製品の特徴や医療の現場における使用目的、使用方法等によって大きく異なる。また、先行バイオ医薬品について得られている知見や文献上の情報も考慮する。

先行バイオ医薬品との同等性/同質性評価において、先行バイオ医薬品原薬の入手は困難であると想定されることから、先行バイオ医薬品製剤そのまま、または製剤から抽出・精製した目的物質に相当する検体を用いて試験を実施することも想定される。同等性/同質性評価のために、市場から入手可能な製剤から抽出・精製し原薬に相当する検体を調製する場合には、妥当性が評価された抽出・精製法を用いるとともに、抽出・精製法が先行バイオ医薬品の品質特性を十分に反映できる方法であることを確認しておくことが求められる。なお、先行バイオ医薬品によっては、公的な標準品が入手可能な場合があるが、標準品は構造解析、物理的化学的性質に関する比較試験の対照とはなりえない。

品質特性に関する同等性/同質性評価にあたっては、①構造解析、物理的化学的性質に関する比較試験及び②生物活性に関する比較試験を必要に応じて実施すると共に、③免疫原性等に関する比較試験等も検討する。

① 構造解析、物理的化学的性質に関する比較試験

先行バイオ医薬品との構造・物理的化学的性質等の差異について、比較試験を行う。目的物質について先行バイオ医薬品と一次構造上の違いがある場合には、バイオ後続品とは判断されない。N末端やC末端アミノ酸のプロセシング等による不均一性について、先行バイオ医薬品と差異が認められる場合には、その差異が有効性・安全性に有害な影響を与えないことを担保する必要がある。

バイオ医薬品では構造・物理的化学的性質等に関する比較試験のみをもって、品質特性の類似性を論じることは困難な場合が多く、高次構造や翻訳後修飾による不均一性の差異に基づく影響については、生物活性、体内動態、免疫学的特性等についての解析結果とあわせて評価を行う必要がある。

② 生物活性に関する比較試験

一次構造だけではなく、高次構造に関しても先行バイオ医薬品との同等性/同質性を評価することが重要であるが、試料の入手可能性や測定用検体の調製の困難さから必ずしも高次構造に関する試験法が適用できない場合がある。一方、高次構造は生物活性に反映されると考えられ、高次構造の同等性/同質性を評価する上からも生物活性の測定は重要である。したがって、生物活性は、立体構造や翻訳後修飾の不均一性の同等性/同質性評価の観点からも重要なデータと位置づけられる。使用する試験法としては先行バイオ医薬品との差異を有効性・安全性の観点から評価し得る精度を有する方法を用いる。生物活性の比較試験では、標準品が入手可能ならば、これに対して校正した値を求めておくことが望ましい。

可能な限り複数の方法を用いて、先行バイオ医薬品とバイオ後続品との生物活性を比較する。例えば、細胞の増殖や分化、受容体結合活性、酵素活性等の臨床効果と密接に関連するin vitroでの生物活性について比較試験を行うことが有用である。

一方、糖鎖構造等が体内動態に大きく影響するために、in vitroの活性が臨床効果と相関しない場合もあり、その場合にはin vivoでの生物活性試験の実施が必要と考えられる。

先行バイオ医薬品の臨床用量が重量単位で設定されている場合には特に比活性について比較し、その同等性/同質性を確認する。比活性に差異がある場合、その差が認容可能かどうかを評価し、先行バイオ医薬品と同様の投与量を用いることの妥当性を説明することが求められる。

③ 免疫原性等に関する比較試験

免疫原性に影響を与える因子には、製造工程由来不純物のみならず、翻訳後修飾や目的物質由来不純物等が含まれる。また、不純物によっては免疫原性を増加させる(アジュバント効果)ばかりでなく、むしろ抑制する場合も知られている。動物を用いて免疫反応性を評価することにより不純物を含めた品質特性を評価する上で有用な情報を得られることもある。

6.規格及び試験方法

バイオ後続品の開発においても、製品の恒常性を担保するために、特性解析結果やロット分析結果等に基づいて、独自に規格及び試験方法を設定する必要がある。バイオ医薬品においては、原薬及び製剤の規格試験に加えて、製造工程管理試験によって品質管理を行うことが合理的な場合も多く、製造工程管理試験を含めた規格設定の科学的妥当性を説明することが求められる。また、必要に応じて先行バイオ医薬品との同等性/同質性評価の結果も適切に反映させる。規格及び試験方法の設定に当たっては、ICH Q6Bガイドライン「生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の規格及び試験方法の設定」に従う。

また、先行バイオ医薬品が日本薬局方等の公定書に収載されている場合には、原則的には公定書に収載された規格及び試験方法に準じて規格設定することが望ましい。しかし、バイオ医薬品の場合、公定書では必要なすべての規格が設定されているとは限らないことから、目的とするバイオ後続品の特性解析の結果や臨床試験結果等を考慮して、不純物プロファイルや生物活性等を含めて追加の規格及び試験方法を設定することが必要な場合もある。

7.非臨床試験

バイオ後続品の開発においても、臨床試験を開始する前までに、少なくともヒトに投与するための安全性が確認されている必要がある。すなわち、安全性に関するデータの取得を含め、臨床試験を実施するために必要とされる非臨床試験が終了している必要がある。これら非臨床試験には、先行バイオ医薬品と不純物プロファイルが異なるバイオ後続品の安全性確認のための試験のように、バイオ後続品のみを対象として試験を実施する方が合理的な場合と、薬理作用の同等性確認試験のように先行バイオ医薬品と比較するための試験が適切な場合が含まれる。なお、不純物プロファイルが異なっている場合においても、安全性確認のために先行バイオ医薬品との比較試験が妥当な場合もある。これらの非臨床試験については、必要に応じてICH S6ガイドライン「バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床における安全性評価」を参考にして実施することが適当である。

糖タンパク質医薬品では糖鎖の不均一性が体内動態に大きく影響する場合もあり、バイオ後続品の同等性/同質性評価の一環として非臨床での薬物動態を比較することが有用な場合もある。

なお、非臨床試験の実施に当たっては、十分な品質特性解析が行われていることが前提になる。また、先行バイオ医薬品とバイオ後続品との品質特性における同等性/同質性の評価結果のみならず、同じ目的物質を有効成分とする他の製剤の使用実績や文献情報が安全性評価において重要な役割を果たすことがある。

7.1.毒性試験

バイオ後続品の単回投与毒性及び反復投与毒性を確認するためには、適切な動物種における反復投与毒性試験が有益であり、タンパク質医薬品であることを考慮してトキシコキネティクスについても検討することが有用である。また、単回投与毒性のみならず局所刺激性に関しても反復投与毒性試験において評価することが可能である。

培養工程や精製工程等製造工程の違いにより不純物プロファイルが異なる場合においても、先行バイオ医薬品とバイオ後続品との毒性プロファイルを直接比較することは必ずしも必要ではない。一方、不純物プロファイルの違いが存在することを考慮した上で、先行バイオ医薬品とバイオ後続品との毒性プロファイルを直接比較する方法もある。

特に、不純物プロファイルが大きく異なっている場合や、精製に用いるアフィニティクロマトグラフィーを独自に導入した場合のように先行バイオ医薬品に含まれていない新たな不純物(アフィニティクロマトグラフィー用担体に用いられる抗体等)が存在する場合には、不純物に着目した毒性試験の実施を考慮する。また、目的物質由来不純物のプロファイルが先行バイオ医薬品とは大きく異なる場合には、非臨床・臨床開発を通じて、その違いに着目した試験の実施が必要となる場合がある。

毒性プロファイルを直接比較するために動物で抗体産生を評価する場合、産生された抗体が中和抗体かどうか、あるいは薬物動態に影響を及ぼすかどうかを明らかにしておくことは、臨床における有用な情報となろう。

反復投与毒性試験の結果や先行バイオ医薬品において得られた有効成分の特性に関する情報から、特に必要と判断されない限り、バイオ後続品の非臨床試験として、安全性薬理試験、生殖発生毒性試験、遺伝毒性試験、がん原性試験等、その他の通常の非臨床安全性試験の必要性は低いと考えられる。

7.2.薬理試験

薬理試験として、先行バイオ医薬品とバイオ後続品との薬理作用が同等/同質であることを直接比較する。なお、品質の特性解析試験として臨床効果と密接に関連するin vitroでの生物活性試験(細胞を用いた試験や受容体結合活性等)を実施し、先行バイオ医薬品とバイオ後続品の比較がなされている場合には、これを薬理試験として準用できる場合もある。しかし、ある種の糖タンパク質のようにin vitroの活性が臨床効果と相関しない場合には、in vivo薬理試験によって薬効や薬力学における先行バイオ医薬品との同等性/同質性を確認することが必要となる。

In vitro生物活性等の同等性/同質性試験で十分な評価が可能な場合には、必ずしもin vivoでの薬力学的効果に関する比較試験が求められるわけではないが、in vivo薬理試験を実施することにより臨床試験の前段階として有用な情報が得られることが多い。したがって、バイオ後続品と先行バイオ医薬品との同等性/同質性を確認するために、必要に応じてin vivoでの薬効試験や薬力学試験の実施を考慮する。

8.臨床試験

バイオ後続品では、一般に、品質特性及び非臨床試験結果のみによって、先行バイオ医薬品との同等性/同質性を検証することは困難であり、基本的には、臨床試験により同等性/同質性を評価する必要がある。

なお、臨床試験で用いる製剤は、確立された製法で製造されたものを用いることが基本的に求められるが、開発途上で製法変更があった場合には必要に応じてICH Q5Eガイドラインにしたがって同等性/同質性を評価する。

後述する臨床薬物動態(PK)試験、薬力学(PD)試験又はPK/PD試験により目的とする臨床エンドポイントにおける同等性/同質性を保証できる十分なデータが得られた場合には、有効性に関する臨床試験を省略できる場合がある。

臨床試験による同等性/同質性評価は、得られたデータに基づき次の試験をデザインし、ステップ・バイ・ステップで実施すべきものであり、必要とされる臨床試験の種類と内容は先行バイオ医薬品に関する情報やその特性によっても大きく異なる。各々の製品について必要とされる臨床試験の範囲については、開発ステージで得られているデータに基づいてケース・バイ・ケースの対応が必要であるので、規制当局と相談することが望ましい。

8.1.臨床薬物動態(PK)試験、薬力学(PD)試験及びPK/PD試験

原則的に、バイオ後続品と先行バイオ医薬品の薬物動態の同等性/同質性を適切にデザインされたクロスオーバー試験により確認する必要があるが、消失半減期が長い薬剤(抗体、PEG結合タンパク質等)やヒトで抗体産生が起こる医薬品については必ずしもクロスオーバー試験が適切でないこともあるので、特性を考慮した試験デザインを検討する。その際、先行バイオ医薬品や対象疾患によって、健常人を対象とすることが適切な場合と患者を対象とする方が適切な場合がある。また、先行バイオ医薬品の目的とする効能における投与経路と同様の投与経路で検討を行う必要があり、複数の投与経路を有する場合には原則的にはそれぞれについて検討する必要がある。原則的には、先行バイオ医薬品の推奨用量で検討するべきであるが、先行バイオ医薬品の用量の範囲内で科学的に妥当な用量を選択することも可能である。主要な薬物動態パラメータとしては血中濃度曲線下面積(AUC)、最高血中濃度(Cmax)等が考えられるが、事前に同等性/同質性の許容域(同等性/同質性のマージン)を規定しておく必要がある。その際、設定した許容域の妥当性について十分な説明が必要である。

また、可能であれば製品の臨床効果を反映するPDマーカーを選択し、PDを指標にした比較を行うことが必要である。特に、技術的な問題で薬物動態試験が困難な場合においてはPDマーカーによる比較が有用である。さらに、PK/PD関係の解析により同等性/同質性の検討を行うことが望ましい。

8.2.臨床的有効性の比較

品質特性の同等性/同質性評価試験等によって品質面での高い類似性が示されたものの、PK、PD若しくはPK/PD試験の結果をあわせても、臨床有効性の同等性/同質性の結論が下せない場合は、承認を得ようとする効能について、バイオ後続品と先行バイオ医薬品の有効性が同等/同質であることを確認するための臨床試験を実施することが必須となる。

臨床試験の実施に際しては、バイオ後続品と先行バイオ医薬品の有効性に関する同等性/同質性を確認するために、適切な比較試験をデザインし、その妥当性を説明する必要がある。具体的には、必要かつ妥当な症例数を設定するとともに、臨床的に確立されたエンドポイントを用い、事前に同等性/同質性の許容域(同等/同質性のマージン)を規定しておく必要がある。適切な代替エンドポイントがある場合には、必ずしも真のエンドポイントを用いる必要はないが、その妥当性を裏付けるデータや文献等により十分な説明が必要とされる。

先行バイオ医薬品が複数の効能・効果を有する場合、ある効能・効果において先行バイオ医薬品と有効性が同等/同質であり、他の効能・効果においても薬理学的に同様の作用が期待できることが説明できるのであれば、対照薬として用いた先行バイオ医薬品が承認を取得している他の効能・効果をバイオ後続品に外挿することが可能となる場合もある。効能・効果の外挿が可能となるのは、対照薬として用いた先行バイオ医薬品の効能に限られ、先行バイオ医薬品以外の同種・同効の他の既承認組換えタンパク質医薬品の効能・効果は含まれない。

一方、それぞれの効能・効果で作用機序が異なっている場合、又はその作用機序が明確になっていない場合には、効能・効果ごとに先行バイオ医薬品と有効性が同等/同質であることを示すべきである。

8.3.臨床的安全性の確認

バイオ後続品は、有効性の同等性/同質性が示された場合であっても、安全性プロファイルが先行バイオ医薬品と異なる可能性がある。PK、PD又はPK/PD試験によって同等性/同質性が示され、有効性を評価するための臨床試験を実施しない場合であっても、必要に応じて免疫原性の検討を含む安全性に関する臨床試験の実施を検討する必要がある。また、有効性を比較するための臨床試験を実施する際に、安全性(有害事象の種類、その頻度)を同時に検討するような試験計画としても差し支えない。

不純物プロファイルの解析結果から安全性について特に懸念がある場合には、十分な検討ができるよう症例数を設定する必要がある。

長期投与される医薬品においては、繰り返し投与試験の実施を考慮する。

なお、臨床開発の適切なステージで、抗体の出現の有無及びその他の免疫原性について、科学的に妥当な判断が可能な試験を行う。抗体の出現が認められた場合には出現した抗体について解析し、中和抗体であるかどうか確認し、抗体のクラス、親和性及び特異性についても解析することが望ましい。さらに、抗体の出現による有効性の低下や安全性への影響を確認することも考慮すべきである。また、不純物に対する抗体産生や特定の糖鎖抗原に対する反応性についても十分考慮すべきである。

9.製造販売後調査

臨床試験の情報は一般に限られており、バイオ後続品にあっては、特に、免疫原性の問題等、後発品と異なる要素があることから、製造販売後に安全性プロファイル等について引き続き調査する必要がある。その際、開発段階の同等性/同質性評価では十分に評価できなかったリスクを予め想定し、それを踏まえ適切にデザインされた製造販売後調査計画を立案する必要がある。製造販売後調査とリスク管理計画の具体的な方法や計画については、規制当局と相談し、承認申請に際して提出することが求められる。なお、製造販売後調査の結果については、バイオ後続品の承認後の適切な時期までに規制当局に報告する必要がある。

当該調査期間においては、有害事象のトレーサビリティーを確保することが重要であり、先行バイオ医薬品や同種・同効医薬品とバイオ後続品とを、一連の治療期間内に代替又は混用することは基本的に避ける必要がある。

適宜参考とすべきICHガイドライン

1.ICH Q2Aガイドライン 「分析バリデーションに関するテキスト(実施項目)」

2.ICH Q2Bガイドライン 「分析法バリデーションに関するテキスト(実施方法)」

3.ICH Q5Aガイドライン 「ヒト又は動物細胞株を用いて製造されるバイオテクノロジー応用医薬品のウイルス安全性評価」

4.ICH Q5Bガイドライン 「組換えDNA技術を応用したタンパク質生産に用いる細胞中の遺伝子発現構成体の分析」

5.ICH Q5Cガイドライン 「生物薬品(バイオテクノロジー応用製品/生物起源由来製品)の安定性試験」

6.ICH Q5Dガイドライン 「生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)製造用細胞基剤の由来、調製及び特性解析」

7.ICH Q5Eガイドライン 「生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の製造工程の変更にともなう同等性/同質性評価」

8.ICH Q6Bガイドライン 「生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の規格及び試験方法の設定」

9.ICH S6ガイドライン 「バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床における安全性評価」

用語集・定義

1.品質特性

製品の品質を現すのに相応しいものとして選択された分子特性又は製品特性であり、当該製品の同一性、純度、力価、安定性及び外来性感染性物質の安全性などを併せて規定されるものである。規格及び試験方法で評価されるのは、品質特性から部分的に選択された一連の項目である。品質特性には、目的とする有効成分の力価や生物活性、物理的化学的性質等のみならず、目的物質関連物質、目的物質由来不純物、製造工程由来不純物の種類や存在量も含まれる。

2.目的物質関連物質

製造中や保存中に生成する目的物質の分子変化体で、生物活性があり、製品の安全性及び有効性に悪影響を及ぼさないもの。これらの分子変化体は目的物質に匹敵する特性を備えており、不純物とは考えない。

3.不純物

原薬又は製剤中に存在する目的物質、目的物質関連物質及び添加剤以外の成分。製造工程由来のものもあれば目的物質由来のものもある。

4.目的物質由来不純物

目的物質の分子変化体(例えば、前駆体、製造中や保存中に生成する分解物・変化物)で、目的物質関連物質以外のもの。

5.製造工程由来不純物

製造工程に由来する不純物。これらには、細胞基材に由来するもの、細胞培養液に由来するもの、あるいは培養以降の工程である目的物質の抽出、分離、加工、精製工程に由来するもの(例えば、細胞培養以降の工程に用いられる試薬・試液類、クロマトグラフィー用担体等からの漏出物)がある。

6.(公的)標準品

国際標準品及び国内標準品を指す。例えばNational Institute for Biological Standards and Control(NIBSC)から配布されている国際標準品、あるいは日本公定書協会から配布されている日本薬局方標準品が該当する。これらの標準品は、力価測定用、あるいは理化学試験用等であり、目的とされている試験以外の適用は不適切である。

7.許容域(同等性/同質性のマージン)

バイオ後続品と先行バイオ医薬品の同等性/同質性を示すことを目的とした比較試験において、主要なエンドポイントについて二つの製品を比較するための信頼区間を求めたときに、同等・同質であるか否かを判断するために用いる予め設定された範囲。