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○抗リウマチ剤メトトレキサート製剤の誤投与(過剰投与)防止のための取扱いについて(注意喚起)

(平成20年10月20日)

(/医政総発第1020001号/薬食総発第1020001号/薬食安発第1020001号/)

(各都道府県・各保健所を設置する市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局総務課長・厚生労働省医薬食品局総務課長・厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知)

抗リウマチ剤として使用されるメトトレキサート製剤は、その投与に際して、投与量、服薬日、休薬期間等に十分な注意を要する製剤ですが、休薬期間中に当該製剤を誤って投与(過剰投与)したことにより、骨髄抑制等の副作用を来した事例等が、医療事故情報収集等事業等において複数報告されています。このため、同種の事例等の発生を防止するため、「医薬品・医療機器等対策部会」において検討を行った結果、医療機関等に対して、注意喚起を行うことが適当であるとされたところです。

また、当該製剤の承認事項一部変更承認に伴い、平成20年9月24日付けで「効能又は効果」に「関節症状を伴う若年性特発性関節炎」が追加されています。

今般、これらを踏まえ、当該製剤の誤投与の防止のための取扱いを下記のとおり、また、現在の服用方法等に関する添付文書記載例等を別添のとおり示しますので、御了知の上、貴管下医療機関及び薬局に周知を図るとともに、適切な指導を行い、その実施に遺漏なきよう御配慮願います。

なお、当該製剤の包装・表示等の改良を行うこと等も、同種の事例等の再発防止に資すると考えられることから、当該製剤の製造販売業者に対し、別紙のとおり、速やかに対策を実施するよう指示したところですが、特に当該製剤の包装・表示等の改良が実施されるまでの間、誤って投与することのないよう、注意することにつき、貴管下医療機関及び薬局に御周知願います。

1.患者が服用している薬剤の確認について

医療関係者は、患者が入院等の際に、他の医療機関等で当該薬剤を処方されていないか、患者のお薬手帳等により確認すること。患者が当該薬剤を服用又は所持している場合には、当該薬剤の服用方法等について確認すること。

2.包装シートへの服薬日時等の情報を記入することについて

当該薬剤の交付時には、包装シート上の服薬日時等の記入欄に、服薬日時等の記入を行うこと。

3.包装シートの取り扱いについて

1錠(カプセル)毎に分離が可能な新包装のシートが供給され、新包装シートの製品を採用するまでの間は、当該薬剤の交付時には、包装シートを切断しないようにするとともに、処方形態に応じた包装シート(2錠、3錠又は4錠用包装シート等)を備蓄するよう努めること。

また、包装シートからPTPシートが分離可能な当該薬剤については、PTPシートのみ交付することのないよう配慮するとともに、患者又はその看護に当たっている者に対して、包装シートの切断又はPTPシートの分離をしないよう伝えること。

4.処方せん等の記載について

当該薬剤を処方する場合又は当該薬剤を服用する患者を他の医療機関若しくは他の診療科に紹介する場合にあっては、当該薬剤の服用方法及び用量等を分かりやすく処方せん又は紹介状に記載すること。

5.薬局等における処方せんの確認及び情報提供の徹底について

薬局等においては、処方せん中の服用方法及び用量等に疑義がある場合には、その処方せんを交付した医師に照会し、服用方法及び用量等を正確に確認すること。

また、調剤した当該薬剤を交付する際には、患者又はその看護に当たっている者に対して分かりやすく書面等により情報提供すること。

(留意事項) 本通知の内容については、貴管下医療機関(歯科診療所を除く。)の医療安全に係る安全管理のための委員会の関係者、医療安全管理者、医薬品の安全使用のための責任者等及び貴管下薬局の管理者、医薬品の安全使用のための責任者等に対しても、周知されるよう御配慮願います。

<問い合わせ先>

厚生労働省医薬食品局安全対策課安全使用推進室

電話:03―5253―1111(内)2751

ファックス:03―3508―4364

厚生労働省医政局総務課医療安全推進室

電話:03―5253―1111(内)2579

ファックス:03―3501―2048

厚生労働省医薬食品局総務課

電話:03―5253―1111(内)2712

ファックス:03―3591―9044

別添

[関節リウマチの場合]

● 服用方法等に関する添付文書記載例

【効能・効果及び用法・用量】

効能・効果

用法・用量

関節リウマチ

(過去の治療において、非ステロイド性抗炎症剤及び他の抗リウマチ剤により十分な効果の得られない場合に限る。)

通常、1週間単位の投与量をメトトレキサートとして6mgとし、本剤1錠(カプセル)(メトトレキサートとして2mg)を初日から2日目にかけて12時間間隔で3回経口投与し、残りの5日間は休薬する。これを1週間ごとに繰り返す。

なお、患者の年齢、症状、忍容性及び本剤に対する反応等に応じて適宜増減する。ただし、増量する場合はメトトレキサートとして1週間単位で8mgまでとし、12時間間隔で3回経口投与する。

〈用法・用量に関連する使用上の注意〉

関節リウマチの場合

1.通常、効果は1~2ヵ月後に得られるので、8週間以上投与しても効果が得られない場合にメトトレキサートとして8mgまで増量し、12時間間隔で3回経口投与する。

2.8mgまで増量する場合は、12時間間隔で、2、1、1錠(カプセル)の投与順とする。なお、睡眠中はメトトレキサートの排泄能が低下するので就寝前は2錠(カプセル)を服用しないことが安全性の面より望ましい。

また、3回目に2錠(カプセル)を服用するとメトトレキサートの排泄が遅延することがあるので2錠(カプセル)を服用しないことが望ましい。

3.投与量を8mgまで増量すると副作用、及び白血球減少、血小板減少等の臨床検査値異常の発現の可能性が増加するので、患者の状態を十分観察すること。

● 投与計画例

[関節症状を伴う若年性特発性関節炎の場合]

● 服用方法等に関する添付文書記載例

【効能・効果及び用法・用量】

効能・効果

用法・用量

関節症状を伴う若年性特発性関節炎

通常、1週間単位の投与量をメトトレキサートとして4~10mg/m2とし、1週間単位の投与量を1回又は2~3回に分割して経口投与する。分割して投与する場合、初日から2日目にかけて12時間間隔で投与する。1回又は2回分割投与の場合は残りの6日間、3回分割投与の場合は残りの5日間は休薬する。これを1週間ごとに繰り返す。

なお、患者の年齢、症状、忍容性及び本剤に対する反応等に応じて適宜増減する。

〈用法・用量に関連する使用上の注意〉

関節症状を伴う若年性特発性関節炎の場合

1.本剤の投与にあたっては、特に副作用の発現に注意し、患者の忍容性及び治療上の効果を基に、個々の患者の状況に応じて、投与量を適切に設定すること。

2.本剤については、成人の方が小児に比べ忍容性が低いとの報告があるので、若年性特発性関節炎の10歳代半ば以上の年齢の患者等の投与量については特に注意すること。

● 投与計画例

① 一週間単位の投与量を3回に分割して経口投与する場合

② 一週間単位の投与量を2回に分割して経口投与する場合

③ 一週間単位の投与量を1回で経口投与する場合

[(参考)抗リウマチ剤メトトレキサート製剤一覧]

 

販売名

製造販売業者名

1

リウマトレックスカプセル2mg

ワイス株式会社

2

メトトレキサートカプセル2mg「サワイ」

沢井製薬株式会社

3

メトレート錠2mg

参天製薬株式会社

4

トレキサメットカプセル2mg

シオノケミカル株式会社

5

メトトレキサート錠2mg「タナベ」

田辺三菱製薬株式会社

6

メトトレキサートカプセル2mg「トーワ」

東和薬品株式会社

7

メトトレキサートカプセル2mg「マイラン」

マイラン製薬株式会社

※本表は、平成20年10月20日現在製造販売承認を受けている当該医薬品一覧である。

別紙

○抗リウマチ剤メトトレキサート製剤の誤投与(過剰投与)に関する医療事故防止対策について

(平成20年8月29日)

(薬食安発第0829001号)

((別記)あて厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知)

抗リウマチ剤メトトレキサート製剤の誤投与(過剰投与)により骨髄抑制等を来した事例などが、ヒヤリ・ハット事例収集事業等において複数報告されている。

今般、このような医療事故を防止するため、「医薬品・医療機器等対策部会」において検討を行った結果、下記のような対策が必要とされたので、速やかに当該対策を講じられたい。なお、当該対策に係る当該製剤の包装シートのデザイン案は、別添のとおりなので、参考とされたい。

また、これらの包装・表示等の改良を行った製品を製造販売するまでの間、貴社の製品を使用している医療機関に対して、誤投与(過剰投与)防止の注意喚起文書の配布や、適切な説明を通じて注意喚起を徹底する等、上記のような事例が起こらないよう必要な対策を継続的に講じるようお願いする。

なお、下記1~7の対策の実施状況については、速やかに独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全部医療機器安全課医療安全情報室に報告すること。

1.当該製剤の包装シートとPTPシートが分離できる構造は、原則として認められないこと。

2.当該製剤の包装シートには、①1週間のうち決められた日のみ服用すべき製剤であること及び②1週間のうち休薬を必要とする日がある製剤であることを包装シートの表裏両面に必ず記載すること。なお、この注意表示は「赤字」とし、字の大きさについては、患者等への視認性を配慮した目立つものとすること。

〈記載例〉

① 「このお薬は、1週間のうち決められた日にだけ服用してください。」

② 「このお薬は、1週間のうちお薬を飲まない期間(又は、休薬期間、休薬を必要とする日)がありますので、服用時には注意してください。」

3.当該製剤の包装シートの表面には、服薬日時等の記入欄を設けること。

4.現行製剤の包装シートが切られて使用されている実態にかんがみ、包装シートを1錠(カプセル)単位毎に分離できるよう工夫すること。また、1錠(カプセル)単位の包装シート毎に、上記2に示す注意表示を行うとともに、上記3に示す服薬日時等の記入欄を設けること。

5.線等のデザインや記載事項を抜き文字等とする工夫及び現行製剤の包装にある副作用症状等についての記載は任意とするが、本通知の主旨が損なわれないように配慮すること。

6.上記1~5の他、原則として平成12年9月19日付け医薬発第935号厚生省医薬安全局長通知「医療事故を防止するための医薬品の表示事項及び販売名の取扱いについて」の別添4「PTPシート(内袋)の記載事項の取扱い」に従うこと。

7.上記1~6の包装シートの改良を行った製品を製造販売した後も、当該改良後の製剤の誤投与(過剰投与)に関する医療事故を防止するため、貴社の製品を使用している医療機関に対して、注意喚起を徹底する等の対策を積極的に講じること。

以上

(別記)

沢井製薬株式会社

代表取締役社長 澤井 光郎

参天製薬株式会社

代表取締役社長 黒川 明

シオノケミカル株式会社

代表取締役社長 塩野谷 貫一

田辺三菱製薬株式会社

代表取締役社長 葉山 夏樹

東和薬品株式会社

代表取締役社長 吉田 逸郎

マイラン製薬株式会社

代表取締役社長 佐藤 公明

ワイス株式会社

代表取締役社長 倉田 進

別添