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○「工賃倍増5か年計画」を推進するための基本的な指針

(平成19年7月6日)

(障発第0706004号)

(各都道府県知事あて厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)

障害者がその有する能力及び適性に応じ、地域で、できる限り、自立した生活を送ることを目指した障害者自立支援法が昨年4月及び10月に施行されたところである。就労継続支援B型事業所及び授産施設において生産活動をしている障害者が地域で自立した生活を送るためには、障害年金を始めとする社会保障給付等による収入と合わせて工賃水準を引き上げることが重要である。

このような中で、本年2月15日には、我が国における成長戦略の一環として、「成長力底上げ戦略」がとりまとめられたものである。

このうち、就労支援戦略については、「福祉から雇用へ」の基本的考え方を踏まえ、母子家庭世帯、生活保護世帯、障害者など公的扶助(福祉)を受けている者等について、セーフティネットを確保しつつ、可能な限り就労による自立・生活の向上を図ることとしている。

障害福祉サービス事業所等いわゆる福祉の場で働く障害者については、工賃水準を引き上げるとともに、一般雇用への移行の準備を進めるため、「福祉から雇用へ」の取組の一環として、「工賃倍増5か年計画」等の作成により産業界等の協力を得ながら、官民一体となった取組を推進することとしている。

今般、下記のとおり「工賃倍増5か年計画」等の作成に当たっての基本的な指針をお示しすることとしたので、ご了知の上、障害福祉サービス事業所等関係者に対する周知方宜しくお願いする。

1.「工賃倍増5か年計画」による取組の必要性

昨年施行された障害者自立支援法は、障害者が地域で安心して暮らせる社会を目指し、就労移行支援事業、就労継続支援事業等を創設するとともに、福祉と雇用の関係機関がネットワークを構築し連携強化を図るなど、地域移行と就労支援の強化を図ることとしている。「工賃倍増5か年計画」は、就労継続支援B型事業所及び授産施設において働く障害者の工賃水準を引き上げることを通じ、障害年金を始めとする社会保障給付等による収入と合わせて、地域において障害者が自立した生活を実現するとともに、一般雇用及びA型事業への移行も一層促進するという観点から、「成長力底上げ戦略」に基づく『「福祉から雇用へ」推進5か年計画』の一環として、産業界等の協力を得ながら、官民一体となった取組として推進するものである。

このため、平成19年中に全ての都道府県において「工賃倍増5か年計画」を作成し、関係行政機関や地域の商工団体等の関係者を挙げた協力の下、5年間で平均工賃の倍増を目指すこととしている。

また、併せて、この取組を実効あるものとするためには、3.(2)アに定める本計画の対象となる障害福祉サービス事業所(以下「事業所」という。)において、工賃水準を引き上げることの意義を再確認し、全職員一丸となって取組を進めていただくことが重要であり、3.に示すとおり、各事業所において目標工賃の設定を含めた具体的な取組(「工賃倍増計画」の推進)を進めていただく必要があるものと考えている。

各都道府県におかれては、2.において定める「工賃倍増5か年計画」に具体的な支援策を盛り込み、各事業所における取組が効果的に実施されるよう支援いただき、協働してその実現に向けて取り組まれたい。

2.都道府県が作成する「工賃倍増5か年計画」に関する事項

(1) 都道府県は、障害福祉サービス事業所の「工賃引上げ計画」の作成・推進について積極的に支援するとともに、「工賃倍増5か年計画」を作成し、平成23年度までに取り組む具体的方策に従って都道府県内の事業所の支援を計画的に行うものとする。

(2) 基本的事項

ア 計画の作成時期

都道府県は、平成19年中に「工賃倍増5か年計画」を策定する。

イ 計画の対象期間

平成19年度から平成23年度までの5か年とする。

ウ 計画の対象事業所

(ア) 就労継続支援B型事業所

(イ) 障害者自立支援法移行前の身体障害者授産施設、知的障害者授産施設及び精神障害者授産施設(いずれも小規模通所授産施設を含む。)

(3) 「工賃倍増5か年計画」の作成

ア 「工賃倍増5か年計画」に盛り込む事項

(ア) 平成23年度の目標工賃

(イ) 平成23年度までの各年度において取り組む具体的方策

(ウ) その他の事項

イ 「工賃倍増5か年計画」の作成に当たっての留意事項

(ア) 目標達成のための課題の分析

事業所に対するヒアリング等を通じ、事業所の現状を把握し、工賃引上げに当たっての課題を整理するとともに、これらの現状や問題点について、都道府県及び事業所双方の共通認識とすること。

(イ) 目標設定

平成23年度の目標工賃は、当該都道府県における生活水準や最低賃金、障害者の経済状況などを踏まえ、適正な水準を設定することとし、原則として平成18年度の工賃実績の平均額の倍以上の水準を目指すこと。(各事業所は、平成19年度から平成23年度までの間に工賃引上げに向けた取組を行うこととすることとしていることから、各事業所の計画は、平成19年度中には出そろわないため、各事業所の目標額の積み上げでなく都道府県で推計すること。)

(ウ) 具体的な方策

(ア)で明らかとなった課題を踏まえ、計画に盛り込む具体的な方策を検討する。その際、工賃引上げを効果的に進める上で、民間企業の有するノウハウや技術を活用することが有効であると考えられることから、こうした企業的な経営手法を導入するための方策を積極的に盛り込むこと。

(エ) 都道府県・事業所の役割分担

工賃倍増は、事業所の就労支援に向けた強い意識や主体的な取組みなしに実現することはできない。このため、(ウ)の具体的な方策の設定に当たっては、都道府県と事業所の役割分担を明確化するとともに、(2)のウの計画の対象事業所における工賃倍増計画の作成を促すなど、事業所の主体性が引き出されるものとなるよう工夫すること。

(4) 「工賃倍増5か年計画」に基づく取組みの推進

ア 事業所が作成する「工賃引上げ計画」への助言及び目標工賃の達成状況の把握・公表

(ア) 事業所が作成する「工賃引上げ計画」について、ヒアリング等を通じ計画の考え方等を把握し、必要に応じ助言指導を行うこと。

(イ) 毎年の工賃の実態調査等を通じ、目標工賃や目標工賃の達成状況を把握するとともに、都道府県のホームページや広報誌等を通じ事業所情報として公表すること。また、事業所の利用者等の求めに応じ、情報提供すること。ただし、この公表はあくまでも障害者に対する情報提供や各事業所の取組を広く広報することを目的としたものであることから公表の方法等について工夫願いたい。

イ 事業所に対する助言等

(ア) 企業的な経営手法への意識改革を行うこと。

(イ) 各事業所における工賃引上げに向けた取組み状況を把握し、必要に応じて助言等を行うこと。

(ウ) 説明会等の機会を通じ、他の事業所における先進事例の紹介を行うこと。

ウ 企業的な経営手法の活用

(ア) 事業所に対する経営指導等に当たっては、コンサルタントの派遣や企業OBの紹介・あっせん等を積極的に活用し、商品開発や市場開拓、作業効率の向上につながる職場環境の改善等を効果的に推進すること。

(イ) 民間企業における研修等を活用し、事業所の経営者、職員の意識改革や技術・ノウハウの習得を図るようにすること。

エ 企業等からの発注の推進

障害者雇用促進法に基づき実施されている在宅就業障害者に対する発注促進の仕組み(在宅就業障害者支援制度)について、工賃水準の確保と一般雇用への移行に取り組む(2)のウの事業所や、4の(1)のイの地域活動支援センターや小規模作業所等の利用者も対象となっているので、一般企業や事業者に対する制度の周知等を行い、利用を促すこと。

また、事業所が在宅就業支援団体の登録を受けることにより、当該事業所が仕事の発注を受け、利用者に対し、仕事の提供や対価の支払いを行うことが可能となるため、事業所に対しても本制度の活用を促すこと。なお、周知に当たっては、別添リーフレットを活用されたい。

(詳細については。『「在宅就業支援団体関係業務取扱要領」の一部改正について』(平成19年5月21日障障発第0521001号)を参照されたい。)

オ 官公需の発注等の配慮について

工賃引上げに当たっては、地方公共団体又は地方公営企業が発注する官公需の活用も効果的であることから、授産施設等における取扱品目を十分に把握した上で事業所への優先発注など積極的に取り組むこと。

カ 「工賃倍増5か年計画」作成のネットワーク

(ア) 工賃の引上げに当たっては、産業界等の協力を得ながら、官民一体となった取組みを推進することとしている。このため、計画の作成に当たっては、対象となる事業所との連携を図ることはもちろん、事業者団体、ハローワーク等の労働関係者、地域の産業界の代表者、障害者雇用に積極的に取り組んでいる民間企業、庁内の労政、商工等の担当部署等からの意見の集約を図ること。

(イ) また、「成長力底上げ戦略推進円卓会議」における決定内容を地方の関係者に周知するとともに、地域において官民一体となった効果的な推進体制を構築し、地域の政労使の合意形成を通じて本戦略が地域の実情に応じて適切な効果を上げることを目的として各都道府県において開催される「地方版円卓会議」の場を活用し、地域の産業界に対し、障害者の福祉的就労の底上げにつながる企業からの仕事の発注協力を要請するなど官民一体となった取組をお願いしたい。

キ その他「工賃倍増5か年計画」の達成に資する支援策

ク 就労継続支援A型事業所、障害者自立支援法移行前の身体障害者福祉工場、知的障害者福祉工場及び精神障害者福祉工場等のうち「工賃引上げ計画」を作成し、積極的な取組を行っている事業所や地域活動支援センター及び小規模作業所のうち就労継続支援B型事業所等の事業への移行が具体的に計画されており、工賃の引上げに意欲的に取り組む事業所については、イ、ウ、エ、オ、カ、キに掲げる支援策の対象として差し支えない。(エについては、就労継続支援A型事業所及び各福祉工場の利用者を除く。)

(5) 「工賃倍増5か年計画」を着実に推進するため、社会福祉施設整備費や独立行政法人福祉医療機構の融資等を積極的に活用するよう助言すること。

(6) 「工賃倍増5か年計画」の達成状況及び評価

ア 「工賃倍増5か年計画」については、各年度においてその達成状況を点検・評価し、その結果に基づいて、所要の対策を実施することが必要であること。

イ 「工賃倍増5か年計画」の毎年の実績の把握に当たっては、以下に掲げる事業所を対象に実績を把握すること。

(ア) (2)のウの対象事業所

(イ) 平成18年度に(ア)の対象であった事業所のうち就労継続支援事業(A型)、一般企業等への転換を行った事業所(小規模作業所、地域活動センター等地域生活支援事業への転換を行った事業所は除く。)

(ウ) 新規参入した(2)のウの対象事業所

(7) 「工賃倍増5か年計画」の報告

都道府県が作成した「工賃倍増5か年計画」については、平成20年2月末日までに厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長あて提出願いたい。

また、各事業所がこの事業に取り組むに当たり、具体的な事例を参考とし実施することが効果的であることから、厚生労働省としても優良な事例を周知していくこととしている。このため、他の事業所にも周知した方が適切であると思われる事例について随時ご報告願いたい。

(8) 工賃倍増計画支援事業費の活用

平成19年度予算において、「工賃倍増5か年計画」を支援するため工賃倍増計画支援事業費を創設したところである。各都道府県におかれては本補助金を活用して「工賃倍増5か年計画」の着実な推進に取り組まれたい。

(参考)

工賃倍増計画支援事業費(500,000千円)

○実施主体 都道府県

○補助率 1/2

○1県あたり事業費10,000千円~30,000千円

3.各事業所における取組

(1) 授産施設等の工賃引上げについては、これまでも各事業所において懸命に取り組まれてきたところであるが、障害者が地域において自立した生活を実現できるようにするため、工賃の更なる引き上げに取り組むことは重要な課題であり、事業所は利用者のこうした希望をかなえる取組を進めることが求められる。このため、すべての事業所の全職員が工賃引上げのために主体的に取り組むことが何よりも重要である。したがって、各事業所においては、工賃水準引上げに取り組んでいただくとともに、以下に定めるところにより、その実現に向けた「工賃引上げ計画」を作成することが望ましい。

(2) 基本的事項

ア 「工賃引上げ計画」を作成する対象事業所の範囲

(ア) 就労継続支援B型事業所

(イ) 障害者自立支援法移行前の身体障害者授産施設、知的障害者授産施設及び精神障害者授産施設(いずれも小規模通所授産施設を含む。)

イ 「工賃引上げ計画」の対象期間

事業所の作成する「工賃引上げ計画」は、都道府県の定める「工賃倍増5か年計画」と合わせ平成19年度から平成23年度までの間に取り組むことが適当である。

具体的には、事業所の現状分析、平成23年度における目標工賃の設定、目標工賃達成のための年次計画の作成及び具体的取組の実施、目標工賃の達成状況の点検及び評価を行い、その結果に基づき、所要の見直し(工賃引上げP.D.C.A.[plan,do,check,action]サイクルの確立)をしていくこととする。

ウ 「工賃引上げ計画」の作成は、あくまでも事業所の自主的な取組であり強制されるものではないが、今回の成長力底上げ戦略の趣旨をご理解いただき、積極的な取組をお願いしたい。

(3) 「工賃引上げ計画」作成に当たっての留意事項

ア 事業所の現状分析

理事長又は管理者等の一部の職員による取組では、「工賃引上げ計画」を達成することは困難であり、事業所の全職員が一丸となって取り組むことが重要である。このため、理事長又は管理者(施設長)は、過去5年間の決算状況を全職員に説明し、経営状況を全職員が理解できるようにすることとする。その上で、目標工賃を達成するための年次予算計画を職員全体で検討する。その際、障害者就労支援基盤整備事業や工賃倍増計画支援事業の利用等を通じた経営コンサルタントや企業OBの活用等により、販売管理、商品管理、生産性の分析や作業員の職能評価等を通じたコスト意識等について助言をしてもらい解決すべき課題を整理すること。

また、利用者の就労意欲の向上と就労を通じた自立を一層促進するための課題の整理を行うこと。

イ 目標工賃の設定において勘案する事項

平成23年度における目標工賃については、以下の項目を勘案して設定することが望ましい。また、取組状況の点検、評価に資するよう、可能な限り、各年度における目標工賃も設定することが望ましい。

(ア) 各事業所の平成18年度の平均工賃実績

(イ) 地域の実情を踏まえ、障害年金と合算して、障害者が地域で自立した生活を実現できるため必要な収入

(ウ) 地域の最低賃金や一般雇用されている障害者の賃金

(エ) 各都道府県の目標工賃

ウ 各年度における具体的方策の作成

工賃水準向上のため、各年度に取り組む具体的方策を作成する。

(ア) 目標工賃は、各事業所が取り組むことによって初めて達成されるものであり、管理者、職員、利用者が工賃水準引上げに取り組む意義を十分理解し、価値観を共有できるよう、管理者の責任において、機会を捉えて事業所内の意識改革に取り組むこと。

(イ) 工賃引上げを効果的に進める上で、民間企業の有するノウハウや技術を活用することが有効であると考えられることから、コンサルタントや企業OBを積極的に受け入れ、上記(3)年次計画の作成、職員等の意識改革、商品開発や市場開拓、作業効率の向上につながる職場環境の改善、民間企業の経営感覚を身につける等を着実に進めること。

(ウ) 同じ地域の事業所が共同して共同受注の仕組みを構築すること等、地域の事業者のネットワークによる事業も実施することも可能であること。

(エ) 工賃の引き上げに当たっては、産業界等の協力を得ながら進めることが重要であるため、地域の企業や商工会議所、商店街、労働関係者等との連携を検討すること。

(オ) 都道府県等が実施する研修会への参加及び職員の派遣。

エ 目標工賃の達成状況を毎年点検し、その状況を評価し、その結果に基づき、所要の見直しを行うこと。

4.その他

(1) 就労継続支援A型事業所、小規模作業所等の取組について

ア 雇用契約に基づき最低賃金法の適用を受けている就労継続支援A型事業所、障害者自立支援法移行前の身体障害者福祉工場、知的障害者福祉工場及び精神障害者福祉工場についても、上記に掲げた取組を通じて、賃金の引上げに取り組んでいただくことが望ましいこと。

イ 地域活動支援センター及び小規模作業所等であって、就労を通じて障害者の自立に取り組む事業所については、対象事業所と同様の観点から、上記に掲げた取組を通じて、工賃の引上げに意欲的に取り組んでいただきたいこと。

(2) 「工賃引上げ計画」の作成に当たっては、平成18年度障害者保健福祉推進事業において社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国社会就労センター協議会が研究した「「工賃水準ステップアップ」成功のためのキーワード」において、実際の授産施設において工賃水準の引き上げに取り組んだ事例報告書がとりまとめられているので参考にされたい。

(閲覧・ダウンロードhttp://www.selp.or.jp/)