添付一覧
○食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について
(平成20年10月21日)
(食安発第1021001号)
(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)
食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(平成20年厚生労働省告示第498号)が本日公布され、これにより食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号。以下「告示」という。)の一部が改正されることとなるので、下記の事項に留意の上、その運用に遺憾のなきよう取り計らわれたい。
記
第1 改正の概要
食品衛生法(昭和22年法律第233号)第11条第1項の規定に基づき、寒天のホウ酸の試験法について、近年の分析技術の進歩を踏まえ機器分析法(以下「ICP法」という。)が開発されたところであり、当該試験法を新たに導入するに当たり、日々進歩する分析技術に迅速に対応し、適宜試験法の修正を行うことを可能とするため、従来告示に規定されていた試験法(以下「滴定法」という。)を告示から削除し、別紙のとおりICP法とともに通知で示すこととしたこと。
第2 適用期日
公布日から適用すること。
第3 試験法
寒天のホウ酸の試験については、別紙の1から3に示すいずれかの方法により行われたいこと。
第4 運用上の注意
1 試験に当たっては、次の(1)から(3)について留意されたいこと。
(1) 滴定法については、特段の不備は見当たらないことから、従来通り実施して差し支えないこと。
(2) 今回、ICP法の導入に当たり、当該試験法と同等以上の性能を有する試験法(以下「同等な試験法」という。)による試験が可能となったこと。
(3) 同等な試験法での試験の実施に当たっては、当該試験法が平成20年9月26日付け食安発第0926001号「食品中の金属に関する試験法の妥当性評価ガイドラインについて」の別添に示す各基準に適応している必要があること。
2 寒天の成分規格については、従来から変更はないこと。
(別紙)
寒天のホウ酸の試験法
1 滴定法
試料を100°で3時間乾燥して粉末とし,その25~100gをはかり,10%水酸化ナトリウム溶液でしめらせた後石英ザラまたは白金ザラで蒸発乾固し,有機物が全く炭化するまで電気炉(約500°)で加熱し,冷後これを別の石英ザラまたは白金ザラにいれ,熱湯約20mlを加えてかき混ぜ,明らかに酸性となるまで10%塩酸を滴加する。これをろ過し,ろ紙を少量の熱湯で洗い洗液をろ液に合わせる。この際,液の量は50~60mlをこえないようにする。残留物をろ紙とともに石英ザラまたは白金ザラに移し,石灰乳でアルカリ性とし,水溶上で蒸発乾固した後,熱灼して灰化する。これに10%塩酸5~6mlを加えて溶かし,さきのろ液と洗液の混合液に合わせる。さらにこの液に,少量の水で石英ザラまたは白金ザラを洗つた液を合わせる。これに塩化カルシウム0.5gおよびフェノールフタレイン試液2~3滴を加え,さらに液が淡紅色を持続するまで,10%水酸化ナトリウム溶液を滴加する。つぎに石灰乳を加えて全量を100mlとし,これをよく混和した後,乾燥ろ紙でろ過する。ろ液50mlに液の紅色が消えるまで0.5mol/l硫酸を加えた後,メチルオレシジ試液2~3滴を加え,さらに液の黄色が紅色に変わるまで0.5mol/l硫酸を滴加する。約1分間煮沸して炭酸ガスを除き,放冷した後,液が黄色に変わるまで0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液を滴加する。この液に中性マンニットまたは中性グリセリン1~2gおよびフェノールフタレイン試液2~3滴を加え,液が持続する紅色を呈するまで,0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液で滴定する。さらに中性マンニットまたは中性グリセリン少量を加え,もし液の紅色が消えたときは滴定を続ける。別に同様の方法で空試験を行なう。ただし,ろ液と洗液の混合液の代りに同量の水を用い,残留物とろ紙の代りにろ紙のみを用いるものとする。
0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液1ml=0.0062gH3BO3
2 ICP法
1.試験溶液の調製
a 乾式分解法
試料25~100gを100°で3時間乾燥して粉末とし、粉砕等で均一化した後、その1~2gを分解容器注1)に精密に量り入れ、1%炭酸ナトリウム溶液5mLを加える。次いでホットプレート上に移し、順次温度を上げて加熱し、ときどき石英棒を用いて灰を粉砕しつつ、煙が出なくなるまで加熱する。予備灰化終了後、電気炉に入れ500°で1晩灰化を行う。冷後、水約10mLを加えて加温しながら灰をできるだけ懸濁・溶解し、1mol/L硝酸注2)5mLを加えてよく混合し、水で全量を50mLとし、試験溶液とする。別に、試料を用いずに試料の場合と同様に操作して得られた溶液を空試験溶液とする。
b 湿式分解法
試料25~100gを100°で3時間乾燥して粉末とし、粉砕等で均一化した後、その1~2gを100~300mL容の分解容器注1)に精密に量り入れ、水10mLと硝酸注2)10mLを加え、テフロン製時計皿で覆ってホットプレート又はヒーティングブロック上で約180°で3時間加熱する。冷後、水で全量を50mLとし、試験溶液とする。別に、試料を用いずに試料の場合と同様に操作して得られた溶液を空試験溶液とする。
2.試験法
a ICP―AES法
①装置
ICP発光分光分析装置
②試薬・試液
次に示すもの以外は、第2 添加物の部C 試薬・試液等の項に示すものを用いる。
ホウ素(1mg/mL)溶液
ホウ酸(H3BO3)5.715gを1Lのメスフラスコに採り、水で溶かして全量を1Lにする。
検量線用ホウ素標準液
ホウ素(1mg/mL)溶液を順次0.1mol/L硝酸で希釈して調製する。
イットリウム(1mg/mL)溶液
硝酸イットリウム(Y(NO3)3)0.773gをビーカーに採り、硝酸5mLを加えて加熱溶解し、冷後、250mLのメスフラスコに移す。ビーカーを水で洗い、洗液をメスフラスコに合わせ、水を加えて250mLとする。本溶液は、冷暗所に保存する注3)。
イットリウム(100μg/mL)溶液
イットリウム(1mg/mL)溶液10mLを採り、0.1mol/L硝酸を加えて100mLとする。
③試験操作注4)
試験溶液10mLに、内標準としてイットリウム(100μg/mL)溶液500μLを加えた後、0.1mol/L硝酸で全量を50mLとし、ICP―AES用試験溶液とする。ホウ素及びイットリウムにつき、それぞれ分析波長249.6、371.0nmの発光強度を測定し、内標準イットリウムに対するホウ素の相対発光強度比を求め、ICP―AES用試験溶液と同濃度の内標準を含みホウ素を0、0.1、0.25、0.5、0.75、1.0μg/mL含む検量線用ホウ素標準液から作成した検量線から濃度Aを求める。別に空試験溶液1mLについて同様に操作して得られた濃度Abの値で補正し、A―Abから試料中のホウ素濃度を求め、5.720を乗じてホウ酸濃度に換算する。
b ICP―MS法
①装置
ICP質量分析装置
②試薬・試液
ホウ素(1mg/mL)溶液
ホウ酸(H3BO3)5.715gを1Lのメスフラスコに採り、水で溶かして全量を1Lにする。
検量線用ホウ素標準液
ホウ素(1mg/mL)溶液を順次0.1mol/L硝酸で希釈して調製する。
イットリウム(1mg/mL)溶液
硝酸イットリウム(Y(NO3)3)0.773gをビーカーに採り、硝酸5mLを加えて加熱溶解し、冷後、250mLのメスフラスコに移す。ビーカーを水で洗い、洗液をメスフラスコに合わせ、水を加えて250mLとする。本溶液は、冷暗所に保存する注3)。
イットリウム(1μg/mL)溶液
イットリウム(1mg/mL)溶液1mLを採り、0.1mol/L硝酸で1000mLとする。
スカンジウム(1mg/mL)溶液
硝酸スカンジウム(Sc(NO3)3)1.283gをビーカーに採り、少量の硝酸(1+1)で溶かし、250mLのメスフラスコに移す。ビーカーを水で洗い、洗液をメスフラスコに合わせ、水を加えて全量を250mLとする。本溶液は、冷暗所に保存する。
スカンジウム(1μg/mL)溶液
スカンジウム(1mg/mL)溶液1mLを採り、0.1mol/L硝酸で1000mLとする。
③試験操作注4)
試験溶液を0.1mol/L硝酸を用いて5倍に希釈し、この液1mLに内標準としてイットリウム(1μg/mL)溶液500μL又はスカンジウム(1μg/mL)溶液500μLを加えた後、0.1mol/L硝酸で全量を50mLとし、ICP―MS用試験溶液とする。ホウ素及びイットリウム又はスカンジウムにつき、それぞれ質量数11、89、45でイオン強度を測定し、内標準イットリウム又はスカンジウムに対するホウ素の相対イオン強度比を求め、ICP―MS用試験溶液と同濃度の内標準を含みホウ素を0、5、10、20、30、40ng/mL含む検量線用ホウ素標準液から作成した検量線から濃度Aを求める。別に空試験溶液1mLについて同様に操作して得られた濃度Abの値で補正し、A―Abから試料中のホウ素濃度を求め、5.720を乗じてホウ酸濃度に換算する。
注1:分解容器として、乾式分解の場合は石英製、白金皿等、湿式分解の場合は石英製、テフロン製、白金皿等、ホウ素のコンタミのほとんどない器具を使用し、パイレックスなどガラス製の器具は使用しないこと。
注2:用いる硝酸は、プラスチック製のボトルに入った市販品を使用することが望ましい(ガラス製のボトルのものは使用しないことが望ましい)。
注3:保存に褐色瓶を用いる場合は、金属の溶出がないことを確認する。
注4:測定の際は、共存元素による妨害がないことを確認しておくこと。妨害となる信号が認められる場合は、ホウ素(B)の信号の1/10未満であることを確認する。また、試験溶液の測定は、水を測定したときのホウ素(B)の値がICP―AESの場合10ppb以下、ICP―MSの場合0.5ppb以下(検量線の最小濃度の1/10以下)、検量線作成時には最小濃度の測定強度の値の1/10以下となったことを確認してから行うこと。試験溶液の測定ごとに、水や希硝酸などを洗浄液として用いること。
3 2に掲げる試験法と同等以上の性能を有すると認められる試験法