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○障害等級認定基準について〔労働基準法〕

(昭和50年9月30日)

(基発第565号)

(各都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通知)

労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令(昭和50年労働省令第23号)が本年9月1日から施行され、その施行に当っての留意事項について、昭和50年8月28日付基発第509号をもって指示したところであるが、今後、この改正省令施行を機に、新設又は改正された省令部分に係る障害等級の認定基準及び従来まで通達等により示してきたところの障害等級の認定基準を各科別に専門医師の意見を参酌して集大成し、別冊のとおり「障害等級認定基準」(以下「認定基準」という。)として定めたので、昭和50年9月1日以降に支給事由の生じた障害補償、障害補償給付及び障害給付に係る障害等級の認定等に関する取扱いについては、下記事項に留意のうえ、この「認定基準」により遺漏のないよう行うこととされたい。

なお、「障害等級認定基準(要旨)の新旧比較表」を添付するので参考とされたい。

1 「認定基準」の概要

(1) 障害等級の新設に伴い、認定基準を新設し又は改正したもの

イ 聴力障害関係

(イ) 両耳の聴力障害について、第6級の3の2、第7級の2の2、第9級の6の2、第9級の6の3、第10級の3の2及び第11級の3の3を、また、1耳の聴力障害について、第14級の2の2を新設したことに伴い、それぞれについての認定基準を定めたものであること。

また、等級の新設に伴い、聴力障害に係る従来までの認定基準を改めたものであること。

(ロ) 従来は、聴力障害の障害程度の評価は、原則として純音聴力検査結果のみにより行うこととしていたが、今後は、語音聴力検査結果をも加味したものに改めたものであること。

また、認定の時期及び聴力検査についても改正を行い、聴力検査方法については、日本オージオロジー学会制定の「標準聴力検査法」によることを明らかにしたものであること。

ロ 神経系統の機能又は精神の障害関係

(イ) 神経系統の機能又は精神の障害については、中枢神経系(脳)の障害、せき髄の障害、根性・末梢神経麻痺及びその他の特徴的な障害に大別し、またその他の特徴的な障害を、外傷性てんかん、頭痛、失調・めまい及び平衡機能障害、疼痛等感覚及び外傷性神経症に細分し、それぞれについて認定基準を定めたものであること。

(ロ) 第5級の1の2の新設に伴い、これに係る認定基準を定めたものであること。

また、このため、従来の第7級に係る認定基準を一部定めたものであること。

ハ 胸腹部臓器の障害関係

(イ) 第5級の1の3及び第9級の7の3の新設に伴い、それぞれについての認定基準を定めたものであること。

また、このため、従来の認定基準を一部改めたものであること。

(ロ) 新たに、じん肺による障害を障害補償の対象としたことに伴い、じん肺による障害に係る認定基準を定めたものであること。

なお、じん肺による障害の認定は、基本的には胸腹部臓器の障害について定めた方法によることとなるが、じん肺の特異性、複雑性に鑑み、特にじん肺による障害についての認定基準を定めたものであること。

(2) 従来の認定基準を改正整備したもの(障害等級の新設に伴って改正したものを除く。)

イ 同一眼球に2以上の障害を残す場合の取扱いについて

同一眼球に系列を異にする2以上の障害が存する場合の取扱いを改めたものであること。

ロ 外傷性散瞳について

外傷性散瞳については、従来の認定基準をより具体的にするとともに、当該障害が両眼に存する場合及び当該障害と視力障害とが併存する場合の取扱いを明らかにしたものであること。

ハ 視野の測定方法について

視野の測定方法を明らかにしたものであること。

ニ 鼓膜の外傷性せん孔に伴う耳漏等について

鼓膜の外傷性せん孔に伴う耳漏については、従来の認定基準を改めるとともに、外傷による外耳道の高度の狭さくで耳漏を伴わないものについても認定の基準を定めたものであること。

ホ 耳鳴について

耳鳴の取扱いを明らかにしたものであること。

ヘ 内耳損傷による平衡機能障害について

内耳損傷による平衡機能障害については、労働能力そう失の程度が近似している胸腹部臓器障害の等級に準じて取り扱っていたが、神経系統の機能の障害として取り扱うことと改めたものであること。

ト 頭蓋骨欠損に係る醜状障害の取扱いについて

頭蓋骨欠損に係る醜状障害の取扱いを定めたものであること。

チ せき柱の変形及び運動障害について

せき柱の変形及び運動障害の取扱いの一部を改めたものであること。

リ 指骨の一部欠損について

「指骨の一部を失ったもの」の取扱いの一部を改めたものであること。

ヌ 手指の用廃について

「手指の用を廃したもの」の取扱いの一部を改めたものであること。

ル 手指の末関節の屈伸不能について

「手指の末関節を屈伸することができないもの」の取扱いの一部を改めたものであること。

ヲ 母指の造指術後の障害について

母指の造指術後の障害の取扱いを明らかにしたものであること。

ワ 人工骨頭及び人工関節について

人工骨頭及び人工関節をそう入置換した場合の取扱いを明らかにしたものであること。

カ 関節運動可動域の測定方法について

関節運動可動域の測定は、日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会において決定された「関節可動域表示並びに測定法」によることに改めたものであること。

2 「認定基準」運用上の留意事項

(1) この「認定基準」の施行に伴い、障害等級の認定基準に関する従来の通達(障害等級の認定基準以外の事項を併せ通達しているものについては、その認定基準に関する部分に限る。)は、昭和50年8月23日付基発第502号を除いて廃止するものであること。

(2) 「認定基準」の中の「注」書の部分は、それぞれの認定基準の理解を容意にするために解説したものであるので、それぞれの認定基準と一体として運用すべきものであること。

(3) 「認定基準」の「第2 障害等級認定の具体的要領」は、主として労働者災害補償保険法における取扱いの基準を示しているものであるが、労働基準法における取扱いについても、年金たる障害補償給付又は障害給付に係る取扱いを除いてこれによること。

(4) 労災病院、労災保険指定病院等関係医療機関の医師に対し、「認定基準」の周知徹底を図ること。

[昭和50年9月30日付]

[基発第565号]

[別冊]

障害等級認定基準

労働省労働基準局

目次

第1 障害等級認定にあたっての基本的事項

1 障害補償の意義

2 障害補償に係る規定の概要

(1) 障害等級

(2) 障害補償の額

(3) 障害等級の変更(年金たる障害補償の場合)

3 障害等級表の仕組みとその意義

(1) 部位

(2) 障害の系列

(3) 障害の序列

4 障害等級認定にあたっての原則と準則

5 障害等級認定の具体的方法(例示解説)

(1) 併合

(2) 準用

(3) 加重

第2 障害等級認定の具体的要領

1 削除

2 耳(内耳等及び耳介)

(1) 耳の障害と障害等級

(2) 障害等級認定の基準

イ 聴力障害

ロ 耳介の欠損障害

(3) 併合、準用、加重

イ 併合

ロ 準用

ハ 加重

3 鼻

(1) 鼻の障害と障害等級

(2) 障害等級認定の基準

鼻の欠損及び機能障害

(3) 準用

4 口

(1) 口の障害と障害等級

(2) 障害等級認定の基準

イ そしゃく及び言語機能障害

ロ 歯牙障害

(3) 併合、準用、加重

イ 併合

ロ 準用

ハ 加重

5 削除

6 削除

7 削除

8 削除

9 削除

10 削除

別紙1 「標準聴力検査法」

別紙2 削除

第1 障害等級認定にあたっての基本的事項

1 障害補償の意義

労働基準法における障害補償並びに労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)における障害補償給付及び障害給付(以下「障害補償」という。)は、労働者が業務上(又は通勤により)負傷し、又は疾病にかかり、なおったとき身体に障害が存する場合に、その障害の程度に応じて行うこととされており(労働基準法第77条、労災保険法第12条の8及び第22条の3)、障害補償の対象となる障害の程度は、労働基準法施行規則(以下「労基則」という。)別表第2身体障害等級表及び労働者災害補償保険法施行規則(以下「労災則」という。)別表障害等級表(以下これらを「障害等級表」という。)に定められている。

ところで、障害補償は、障害による労働能力のそう失に対する損失てん補を目的とするものである。したがって、負傷又は疾病(以下「傷病」という。)がなおったときに残存する、当該傷病と相当因果関係を有し、かつ、将来においても回復が困難と見込まれる精神的又は身体的なき損状態(以下「廃疾」という。)であって、その存在が医学的に認められ、労働能力のそう失を伴うものを障害補償の対象としているものである。

なお、ここにいう「なおったとき」とは、傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法(以下「療養」という。)をもってしても、その効果が期待し得ない状態(療養の終了)で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状の固定)に達したときをいう。したがって、障害程度の評価は、原則として療養効果が期待し得ない状態となり、症状が固定したときにこれを行うこととなる。ただし、療養効果が期待し得ない状態であっても、症状の固定に至るまでにかなりの期間を要すると見込まれるものもあるので、この場合は、医学上妥当と認められる期間を待って、障害程度を評価することとし、症状の固定の見込みが6カ月以内の期間において認められないものにあっては、療養の終了時において、将来固定すると認められる症状によって等級を認定することとする。

また、「労働能力」とは、一般的な平均的労働能力をいうものであって、被災労働者の年令、職種、利き腕、知識、経験等の職業能力的諸条件については、障害の程度を決定する要素とはなっていない。

2 障害補償に係る規定の概要

(1) 障害等級

障害補償は、前記のとおり、障害の程度に応じて行うこととされており、またその対象とすべき身体障害の等級は、障害等級表に定めるところによることとされている(労基則第40条第1項、労災則第14条第1項)。したがって、障害等級表は、障害程度の評価にあたって適正に取り扱われるべきものである。

障害等級表においては、労働能力のそう失の程度の若干異なる身体障害が同一等級として格付けされ、また、同種の身体障害についてみると、労働能力のそう失の程度が一定の範囲内にあるものをくくって同一の等級に格付けしているものがある。

これらは、障害等級表が労働能力そう失の程度に応じ、障害の等級を第1級から第14級までの14段階に区分していること、及び137種の類型的な身体障害を掲げるにとどまることからくる制約によるものである。

したがって、同一等級に格付けされている身体障害相互間においても、労働能力そう失の程度に若干の相異があるものがあり、また、各等級に掲げられている身体障害についても、一定の幅のあるものがあるが、前記の制約によりやむを得ない結果であり、障害程度の評価にあたっては、労働能力のそう失の程度が同一であるとして取り扱われているものである。

なお、障害等級表に掲げる身体障害が2以上ある場合の取扱い及び障害等級表に掲げるもの以外の身体障害の取扱いについては、次のとおり定められている。

イ 障害等級表に掲げる身体障害が2以上ある場合は、重い方の身体障害の該当する等級によることとし(労基則第40条第2項、労災則第14条第2項)、次に掲げる場合にあっては、それぞれの方法により等級を繰上げ、当該身体障害の等級とする(労基則第40条第3項、労災則第14条第3項)(以下これを「併合」という。)。

(イ) 第13級以上に該当する身体障害が2以上ある場合は、重い方の身体障害の該当する等級を1級繰上げる。

(ロ) 第8級以上に該当する身体障害が2以上ある場合は、重い方の身体障害の該当する等級を2級繰上げる。

(ハ) 第5級以上に該当する身体障害が2以上ある場合は重い方の身体障害の該当する等級を3級繰上げる。

ロ 障害等級表に掲げるもの以外の身体障害については、その障害の程度に応じ、障害等級表に掲げる身体障害に準じてその等級を定めることとされている(労基則第40条第4項、労災則第14条第4項)(以下これを「準用」といい、これにより定められた等級を「準用等級」という。)。

(2) 障害補償の額

イ 上記(1)のイの(イ)、(ロ)又は(ハ)により併合し、等級の繰上げを行った場合の障害補償の額は、労災保険法における障害補償給付又は障害給付であって、等級を繰上げた結果が障害補償年金又は障害年金に該当する場合(第7級以上に該当する場合)を除き、各々の身体障害の該当する等級による障害補償の額の合算額を超えないこととされている(労基則第40条第3項ただし書、労災則第14条第3項ただし書)。

ロ 既に身体障害のあった者が、同一の部立について障害の程度を加重した場合の当該事由に係る障害補償の額は、現在の身体障害の該当する等級に応ずる額から、既にあった身体障害の該当する等級に応ずる障害補償の額を差し引いた額とされている(労基則第40条第5項、労災則第14条第5項)。

なお、労災保険法における障害補償給付又は障害給付の場合で、現在の身体障害の該当する等級に応ずる障害補償給付又は障害給付が障害補償年金又は障害年金であって、既にあった身体障害の該当する等級に応ずる障害補償給付又は障害給付が障害補償一時金又は障害一時金である場合には、現在の身体障害の該当する等級に応ずる障害補償年金又は障害年金の額から、既にあった身体障害の該当する障害補償一時金又は障害一時金の額を25で除して得た額を差し引いた額とされている(労災則第14条第5項)。

(3) 障害等級の変更(年金たる障害補償の場合)

障害補償年金又は障害年金を受ける労働者の当該障害の程度に変更があったために、新たに他の等級に該当するに至った場合には、新たに該当するに至った等級に応ずる障害補償年金又は障害年金若しくは障害補償一時金又は障害一時金を支給することとし、従前の等級に応ずる障害補償年金又は障害年金は、等級に変更のあった月の翌月から支給しないこととされている(労災保険法第9条第1項、第15条の2及び第22条の3)。

3 障害等級表の仕組みとその意義

障害補償の対象とすべき身体障害の程度を定めている障害等級表は、次のごとき考え方に基づいて定められている。

即ち、障害等級表は、身体をまず解剖学的観点から部位に分け、次にそれぞれの部位における身体障害を機能の面に重点を置いた生理学的観点から、たとえば、眼における視力障害、運動障害、調節機能障害及び視野障害のように一種又は数種の障害群に分け(これを便宜上「障害の系列」と呼ぶ。)、さらに、各障害は、その労働能力のそう失の程度に応じて一定の順序のもとに配列されている(これを便宜上「障害の序列」と呼ぶ。)。

障害等級の認定の適正を期するためには、障害の系列及び障害の序列についての認識を深めることにより、障害等級表の仕組みを理解することが、重要である。

(1) 部位

身体障害は、まず解剖学的な観点から次の部位ごとに区分されている。

イ 眼

(イ) 眼球

(ロ) まぶた(右又は左)

ロ 耳

(イ) 内耳等

(ロ) 耳介(右又は左)

ハ 鼻

ニ 口

ホ 神経系統の機能又は精神

ヘ 頭部、顔面、頸部

ト 胸腹部臓器(外生殖器を含む。)

チ 体幹

(イ) せき柱

(ロ) その他の体幹骨

リ 上肢(右又は左)

(イ) 上肢

(ロ) 手指

ヌ 下肢(右又は左)

(イ) 下肢

(ロ) 足指

なお、以上の区分にあたって、眼球及び内耳等については、左右両器官をもって1の機能を営むいわゆる相対性器官としての特質から、両眼球、両内耳等を同一部位とし、また、上肢及び下肢は、左右一対をなす器官ではあるが、左右それぞれを別個の部位とされている。

(2) 障害の系列

上記のとおり部位ごとに区分された身体障害は、さらに生理学的な観点から、次表のとおり35種の系列に細分され、同一欄内の身体障害については、これを同一の系列にあるものとして取り扱うこととする。

なお、下記のごとく、同一部位に系列を異にする身体障害を生じた場合は、同一もしくは相関連するものとして取り扱うことが、認定実務上合理的であるので、具体的な運用にあたっては同一系列とみなして(以下「みなし系列」という。)取り扱う。

イ 両眼球の視力障害、運動障害、調節機能障害、視野障害の各相互間

ロ 同一上肢の機能障害と手指の欠損又は機能障害

ハ 同一下肢の機能障害と足指の欠損又は機能障害

障害系列表

部位

器質的障害

機能的障害

系列区分

眼球

(両眼)

 

視力障害

1

調節機能障害

2

運動障害

3

視野障害

4

まぶた

欠損障害

運動障害

5

欠損障害

運動障害

6

内耳等(両耳)

 

聴力障害

7

耳かく

(耳介)

欠損障害

 

8

欠損障害

 

9

欠損及び機能障害

10

 

そしゃく及び言語機能障害

11

歯牙障害

 

12

神経系統の機能又は精神

神経系統の機能又は精神の障害

13

頭部、顔面、頸部

醜状障害

 

14

胸腹部臓器

(外生殖器を含む)

胸腹部臓器の障害

15

体幹

せき柱

変形障害

運動障害

16

その他の体幹骨

変形障害

(鎖骨、胸骨、ろく肩、肩こう骨又は骨盤骨)

 

17

上肢

上肢

欠損障害

機能障害

18

変形障害

(上腕骨又は前腕骨)

 

19

醜状障害

 

20

欠損障害

機能障害

21

変形障害

(上腕骨又は前腕骨)

 

22

醜状障害

 

23

手指

欠損障害

機能障害

24

欠損障害

機能障害

25

下肢

下肢

欠損障害

機能障害

26

変形障害

(大腿骨又は下腿骨)

 

27

短縮障害

 

28

醜状障害

 

29

欠損障害

機能障害

30

変形障害

(大腿骨又は下腿骨)

 

31

短縮障害

 

32

醜状障害

 

33

足指

欠損障害

機能障害

34

欠損障害

機能障害

35

備考 「耳かく」については、以下「耳介」という。

(3) 障害の序列

イ 障害等級表は、上記のとおり労働能力のそう失の程度に応じて身体障害を第1級から第14級までの14段階に区分しており、この場合の同一系列の障害相互間における等級の上位、下位の関係を障害の序列(以下「序列」という。)という。

障害等級表上定めのない身体障害及び同一系列に2以上の身体障害が存する場合の等級の認定にあたっては、障害の序列を十分に考慮すべきものである。(後記「5 障害等級認定の具体的方法(例示解説)」を参照のこと。)

なお、同一系列における序列については、次の類型に大別されるので、それぞれの等級の認定にあたっては留意する必要がある。

(イ) 障害の程度を一定の幅で評価することから、上位等級の身体障害と下位等級の身体障害との間に中間の等級を定めていないもの

1 1眼の視力障害については、視力0.1以下を第10級に視力0.6以下を第13級に格付けているので、第13級には、視力0.1をこえて0.6までの視力障害が含まれることとなり、その中間にあたる視力0.4の視力障害は、第13級となり、視力が0.1以下にならない限り、上位の等級には格付けされない。

2 両眼の視力障害については、両眼の視力0.1以下を第6級に、両眼の視力0.6以下を第9級に格付けているので、第9級には両眼の視力が0.1をこえて0.6までの視力障害が含まれることとなり、1眼の視力0.6、他眼の視力0.1の視力障害は、第9級となる。

(ロ) 上位等級の身体障害と下位等級の身体障害との区別を、労働能力に及ぼす影響の総合的な判定により行っているもの

例 胸腹部臓器の障害については、「常に介護を要するもの」(第1級)、「終身労務に服することができないもの」(第3級)、「特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」(第5級)、「軽易な労務以外の労務に服することができないもの」(第7級)、「服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」(第9級)、「障害を残すもの」(第11級)の6段階に区分されており、その労働能力に及ぼす影響を総合的に判定して等級を認定することとしている。

(ハ) 障害等級表上、最も典型的な身体障害を掲げるにとどまり上位等級の身体障害と下位等級の身体障害との間に中間の身体障害が予想されるにかかわらず定めていないもの

1 1上肢の機能障害については、「1上肢の用を廃したもの」(第5級)、「1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの」(第6級)、「1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」(第8級)、「1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」(第10級)、「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」(第12級)の5段階に区分されており、1上肢の3大関節中の2関節の機能に障害を残すものは、第10級と第12級の中間の程度の身体障害であるにもかかわらず、障害等級表上には格付けられていない。

このように障害等級表における身体障害の定め方が最も典型的な身体障害を掲げるにとどまる場合に、上位等級の身体障害と下位等級の身体障害との等級差が2以上である場合は、障害の序列にしたがって、中間の等級を定めることができる。

2 しかしながら、たとえば「1上肢の用を全廃したもの」(第5級)と「1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの」(第6級)のごとく、等級差が1である場合には、障害等級表上、これらの中間の等級はないので、上位等級に達しない限り、下位等級に該当するものとして取り扱うこととなる。)

ロ 欠損障害は、労働能力の完全なそう失であり、障害等級表上、同一部位に係る機能障害よりも上位に格付けられているので、同一部位に欠損障害以外のいかなる身体障害が残存したとしても、その程度は欠損障害の程度に達することはない。

ただし、その例外として、機能の全部そう失については欠損障害と同等に評価されている場合がある(第1級の6と第1級の7又は第1級の8と第1級の9)。

ハ 上記イ、ロによるほか、系列を異にする2以上の身体障害が残存した場合で、障害等級表上組合せにより等級が定められているものについても、その等級間に、いわゆる序列に類する上位下位の関係が明らかにされている。したがって系列を異にする2以上の身体障害のうちこれら組合せのあるもの以外のものの等級の認定については、原則として併合の方法により、行うこととなるが、上位、下位の関係に留意のうえ等級を認定することが必要である。なお、この場合、両上肢及び両下肢の欠損障害については、障害等級表に組合せによる等級が掲げられているので、その等級以外の格付けはあり得ない。したがって、上位等級(第1級の6又は第1級の8)に達しないものは、すべて下位等級(第2級の3又は第2級の4)に該当するものとして取り扱うこととなる。

4 障害等級認定にあたっての原則と準則

障害等級の認定にあたっては、前記2(障害補償に係る規定の概要)のとおり、法令の定めるところによることを原則とするが、なお、これが運用にあたっては、次のごとき準則により取り扱うものとする。

(1) 併合(労基則第40条第2項、3項及び労災則第14条第2項、3項)の場合

イ 「併合」とは、系列を異にする身体障害が2以上ある場合に、重い方の身体障害の等級によるか、又はその重い方の等級を1級ないし3級を繰り上げて当該複数の障害の等級とすることをいう。

ロ 併合して等級が繰り上げられた結果、障害の序列を乱すこととなる場合は、障害の序列にしたがって等級を定めることとなる。

ハ 併合して等級が繰り上げられた結果、障害等級が第1級をこえる場合であっても、障害等級表上、第1級以上の障害等級は存在しないので、第1級にとどめることとなる。

ニ 系列を異にする身体障害が2以上存する場合には、併合して等級を認定することとなるが、次の場合にあっては、併合の方法を用いることなく等級を定めることとなる。

(イ) 両上肢の欠損障害及び両下肢の欠損障害については、本来、系列を異にする複数の身体障害として取り扱うべきものであるが、障害等級表上では組み合わせ等級として定められているので(第1級の6、第1級の8、第2級の3、第2級の4)、それぞれの等級を併合の方法を用いることなく、障害等級表に定められた当該等級により認定する。

(ロ) 1の身体障害が観察の方法によっては、障害等級表上の2以上の等級に該当すると考えられる場合であるが、これは、その1の身体障害を複数の観点(複数の系列)で評価しているにすぎないものであるから、この場合には、いずれか上位の等級をもって、当該身体障害の等級とする。

(ハ) 1の身体障害に他の身体障害が通常派生する関係にある場合には、いずれか上位の等級をもって、当該身体障害の等級とする。

(2) 準用(労基則第40条第4項及び労災則第14条第4項)の場合

イ 障害等級表に掲げるもの以外の身体障害については、その障害の程度に応じ障害等級表に掲げる身体障害に準じて、その等級を定めることとなるが、この「障害等級表に掲げるもの以外の身体障害」とは、次の2つの場合をいう。

(イ) ある身体障害が、障害等級表上のいかなる障害の系列にも属さない場合

(ロ) 障害等級表上に、その属する障害の系列はあるが、該当する身体障害がない場合

ロ この場合においては、次により、その準用等級を定めるものとする。

(イ) いかなる障害の系列にも属さない場合

その障害によって生ずる労働能力のそう失の程度を医学的検査結果等に基づいて判断し、その障害が最も近似している系列の障害における労働能力のそう失の程度に相当する等級を準用等級として定める。

(ロ) 障害の系列は存在するが、該当する障害がない場合

a この準用等級を定めることができるのは、同一系列に属する障害群についてであるので、この場合は、同一系列に属する2以上の障害が該当するそれぞれの等級を定め、併合の方法を用いて準用等級を定める。ただし、併合の方法を用いた結果、序列を乱すときは、その等級の直近上位又は直近下位の等級を当該身体障害の該当する等級として認定する。

b 本来は異なる系列のものを、同一系列の障害として取り扱っているもの(「3 障害等級表の仕組みとその意議」の(2)のイ~ハ)については、それぞれの障害について各々別個に等級を定め、さらにこれを併合して得られる等級を準用等級とする。ただし、併合の結果、序列を乱すときは、その等級の直近下位の等級を当該身体障害の該当する等級として認定する。

(3) 加重(労基則第40条第5項、労災則第14条第5項)の場合

イ 既に身体障害のあった者が業務災害(又は通勤災害)によって同一の部位について障害の程度を加重した場合は、加重した限度で障害補償を行う。

(イ) 「既に身体障害のあった者」とは、新たな業務災害(又は通勤災害)の発生前において、既に身体障害のあった者をいい、その身体障害が、当該事業場に雇用される前の災害によるものであると、当該事業場に雇用された後の災害によるものであるとを問うところでないし、また先天性のものであると、後天性のものであると、業務上の事由によるものであると、業務外の事由によるものであると、現実に給付を受けたものであると否とにかかわらず、既に障害等級表に定められている程度の身体障害が存していた者をいう。

(ロ) 「加重」とは、業務災害(又は通勤災害)によって新たに障害が加わった結果、障害等級表上、現存する障害が既存の障害より重くなった場合をいう。したがって、自然的経過又は既存の障害の原因となった疾病の再発など、新たな業務災害(又は通勤災害)以外の事由により障害の程度を重くしたとしても、ここにいう「加重」には該当しない。また、同一部位に新たな障害が加わったとしても、その結果、障害等級表上、既存の障害よりも現存する障害が重くならなければ、「加重」には該当しない。

なお、既存の障害が、業務災害(又は通勤災害)によるものである場合は、その後の障害の程度の変更いかんにかかわらず、既に障害補償のなされた等級(労災保険法第15条の2の規定により新たに該当するに至った等級の障害補償を行ったときは当該等級)を既存の障害の等級とする。

(ハ) ここにいう「同一の部位」とは、前記3の(2)の「同一系列」の範囲内をいう。ただし、異なる系列であったとしても、「欠損」又は「機能の全部そう失」は、その部位における最上位の等級であるので、障害が存する部位に「欠損」又は「機能の全部そう失」という障害が後に加わった場合(たとえば、右下肢の下腿骨に変形の既存障害が存する場合に、その後新たに右下肢をひざ関節以上で失ったとき)は、それが系列を異にする障害であったとしても、「同一部位」の加重として取り扱うこととする。

ロ 加重の場合の障害補償の額は、加重された身体障害の該当する障害等級の障害補償の額(日数)から、既に存していた身体障害の該当する障害等級の障害補償の額(日数)を控除して得た額(日数)とする。

ただし、既存の身体障害が第8級以下に該当するものであって、新たに加重の結果、第7級(年金)以上になった場合には、現在の身体障害の該当する障害等級の障害補償の年額(日数)から既存の身体障害の障害補償の額(日数)の1/25を控除して得た額とする。

ハ 同一の部位に身体障害の程度を加重するとともに、他の部位にも新たな身体障害が残った場合は、まず、同一部位の加重された後の身体障害についてその障害等級を定め、次に、他の部位の身体障害について障害等級を定め、両者を併合して現在の身体障害の該当する障害等級を認定する。

ニ 系列を異にする身体障害で障害等級表上、特にその組合せを規定しているために、同一系列とされている次の場合に、既存障害としてその一方に身体障害を有していた者が、新たに他方に身体障害を加え、その結果組合せ等級に該当するに至ったときは、新たな身体障害のみの該当する等級によることなく、加重として取り扱うものとする。

(イ) 両上肢の欠損又は機能障害

(第1級の6、第1級の7、第2級の3)

(ロ) 両手指の欠損又は機能障害

(第3級の5、第4級の6)

(ハ) 両下肢の欠損又は機能障害

(第1級の8、第1級の9、第2級の4、第4級の7)

(ニ) 両足指の欠損又は機能障害

(第5級の6、第7級の11)

(ホ) 両まぶたの欠損又は運動障害

(第9級の4、第11級の2、第13級の3)

ホ 手指及び足指並びに相対性器官(眼球及び内耳等)で身体障害の程度を加重した場合であっても、次の場合には、以下の準則により取り扱うこととする。

(イ) 手(足)指に既に身体障害を有する者が、同一手(足)の他指に新たに身体障害を加えた場合及び相対性器官の一側に既に身体障害を有する者が、他側に新たに身体障害を残した場合において、前記ロの方法により算定した障害補償の額(日数)が、新たな身体障害のみが生じたこととした場合の障害補償の額(日数)より少ないときは、その新たな身体障害のみが生じたものとみなして障害等級の認定を行う。

(ロ) 一手(足)の2以上の手(足)指に既に身体障害を有する者が、その身体障害を有している手(足)指の一部について身体障害の程度を重くした場合において、前記ロの方法により算定した障害補償の額(日数)が、その一部の手(足)指のみに身体障害が存したものとみなして新たに身体障害の程度を加重したこととした場合の障害補償の額(日数)より少ないときは、その一部の手(足)指にのみ新たに身体障害の程度を加重したものとみなし、取り扱うこととする。

(ハ) 相対性器官の両側に既に身体障害を有する者が、その1側について既存の障害の程度を重くした場合に、前記ロの方法により算出した障害補償の額(日数)が、その1側のみに身体障害が存したものとみなして新たに身体障害の程度を加重したこととした場合の障害補償の額(日数)より少ないときは、その1側にのみ新たに身体障害の程度を加重したものとみなして障害等級の認定を行うこととする。

(ニ) 障害の程度を加重するとともに、他の部位にも新たな身体障害を残した場合には、前記ロの方法により算定した障害補償の額(日数)が、他の部位の新たな身体障害のみが生じたこととした場合における障害補償の額(日数)より少ないときは、その新たな身体障害のみが生じたものとみなして取り扱うこととする。

(ホ) 上記(イ)、(ロ)、(ハ)及び(ニ)の場合において、前記ロの方法による加重後の身体障害の等級が第7級以上(年金)に該当し、新たに加わった身体障害が単独で生じたこととした場合の等級が第8級以下に該当するとき(既存の身体障害の等級と加重後の身体障害の等級が同等級である場合を除く。)は、加重後の等級により認定し、障害補償の額の算定にあたっては、その加重後の等級の障害補償の年額(日数)から既存の身体障害の障害補償の額(日数)の1/25を控除して得た額とする。

5 障害等級認定の具体的方法(例示解説)

(1) 併合

イ 併合の原則的取扱い

(イ) 重い方の身体障害の等級により等級を認定するもの

例 ひじ関節の機能に障害を残し(第12級の6)、かつ、4歯に対し歯科補てつを加えた(第14級の2)場合には、併合して重い方の障害の該当する等級により、併合第12級とする。

(ロ) 併合繰上げにより等級を認定するもの

例 せき柱に運動障害を残し(第8級の2)、かつ、1下肢を4センチメートル短縮した(第10級の7)場合には、併合して重い方の等級を1級繰上げ、併合第7級とする。

ロ 併合して等級が繰り上げられた結果、障害の序列を乱すこととなる場合で、障害の序列にしたがって等級を定めたもの

例 1上肢を手関節以上で失い(第5級の2)、かつ、他の上肢をひじ関節以上で失った(第4級の4)場合は、併合して等級を繰り上げると第1級となるが、当該障害は、「両上肢をひじ関節以上で失ったもの」(第1級の6)の障害の程度に達しないので併合第2級とする。

ハ 併合して等級が繰り上げられた結果、障害等級が第1級をこえる場合で、第1級にとどめたもの

例 両眼の視力が0.02以下になり(第2級の2)、かつ、両手の手指の全部を失った(第3級の5)場合は、併合して等級を繰り上げると第1級をこえることとなるが、第1級以上の障害等級はあり得ないので併合第1級とする。

ニ 併合の方法を用いることなく等級を定めたもの

(イ) 両上肢の欠損障害及び両下肢の欠損障害について、障害等級表に定められた当該等級により認定するもの

例 1下肢をひざ関節以上で失い(第4級の5)、かつ、他の下肢をひざ関節で失った(第4級の5)場合は、併合の方法を用いることなく「両下肢をひざ関節以上で失ったもの」(第1級の8)の等級に該当する。

(ロ) 1の身体障害が観察の方法によっては、障害等級表上の2以上の等級に該当すると考えられる場合に、いずれか上位の等級をもって当該障害の等級とするもの

例 大腿骨に変形を残した(第12級の8)結果、同一下肢を1センチメートル短縮した(第13級の8)場合は、上位の等級である第12級の8をもって当該障害の等級とする。

(ハ) 1の身体障害に他の身体障害が通常派生する関係にある場合に、いずれか上位の等級をもって当該障害の等級とするもの

例 1上肢に偽関節を残す(第8級の8)とともに、当該箇所にがん固な神経症状を残した(第12級の12)場合は、上位等級である第8級の8をもって当該障害の等級とする。

ホ 併合の結果が第8級以下である場合における障害補償の額の算定方法(労基則第40条第3項ただし書及び労災則第14条第3項ただし書)

例 右手の母指の亡失(第9級、給付基礎日額の391日分)及び左手の母指の指骨の一部欠損(第13級、給付基礎日額の101日分)が存する場合には等級を繰上げて第8級(給付基礎日額の503日分)となるが、第9級と第13級の障害補償の合算額(給付基礎日額の492日分)がこれに満たないので、この場合の障害補償の額は当該合算額(492日分)となる。

(2) 準用

イ いかなる障害の系列にも属さない場合

「嗅覚脱失」および「味覚脱失」については、ともに準用第12級の障害として取り扱う。嗅覚脱失等の鼻機能障害、味覚脱失等の口腔障害は、神経障害ではないが、全体としては神経障害に近い障害とみなされているところから、一般の神経障害の等級として定められている第12級の12「局部にがん固な神経症状を残すもの」を準用して等級を認定する。また、「嗅覚減退」については第14級の9「局部に神経症状を残すもの」を準用して等級を認定する。

ロ 障害の系列は存在するが、該当する障害がない場合

(イ) 併合繰上げの方法を用いて、準用等級を定めたもの

例 「1上肢の3大関節中の1関節の用を廃し」(第8級の6)、かつ、「他の1関節の機能に著しい障害を残す」(第10級の9)場合には、併合繰上げの方法を用いて準用第7級に認定する。

(ロ) 併合繰上げの方法を用いて準用等級を定めるが、序列を乱すため、直近上位又は直近下位の等級に認定したもの

a 直近上位の等級に認定したもの

例 1手の「中指の用を廃し」(第12級の9)、かつ、「小指を失った」(第12級の8の2)場合は、併合の方法を用いると第11級となるが、この場合、当該障害の程度は、「1手の母指以外の2の手指の用を廃したもの」(第10級の6)よりも重く、「1手の母指以外の2の手指を失ったもの」(第9級の8)よりは軽いので、準用第10級に認定する。

b 直近下位の等級に認定したもの

1 「上肢の3大関節中の2関節の用を廃し」(第6級の5)、かつ、「他の1関節の機能に著しい障害を残す」(第10級の9)場合には、併合の方法を用いると第5級となるが、「1上肢の用を廃した」(第5級の4)障害の程度より軽いので、その直近下位の準用第6級に認定する。

2 ―本来、異系列のものを同一系列のものとして取り扱う場合の例―

「1手の5の手指を失い」(第6級の7)、かつ、「1上肢の3大関節中の1関節(手関節)の用を廃した」(第8級の6)場合には、併合の方法を用いると第4級となるが、「1上肢を手関節以上で失ったもの」(第5級の2)には達しないので、その直近下位の準用第6級に認定する。)

(3) 加重

イ 既に身体障害を有していた者が新たな災害により、同一部位に身体障害の程度を加重したもの

例 既に、3歯に対し、歯科補てつを加えていた(第14級の2)者が、新たに3歯に対し歯科補てつを加えた場合には、現存する障害に係る等級は第13級の3の2となる。

ロ 身体障害を加重した場合の障害補償の額の算定

1 既に右示指の用を廃していた(第12級の9)者が、新たに同一示指を亡失した場合には、現存する身体障害に係る等級は第11級の6となるが、この場合の障害補償の額は、現存する障害の障害補償の額(第11級の6、給付基礎日額の223日分)から既存の障害の障害補償の額(第12級の9、給付基礎日額の156日分)を差し引いて給付基礎日額の67日分となる。

2 既に、1上肢の手関節の用を廃していた(第8級の6)者が、新たに同一上肢の手関節を亡失した場合には、現存する障害は、第5級の2(年金)となるが、この場合の障害補償の額は、現存する障害の障害補償の額(第5級の2、当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の184日分)から既存の障害の障害補償の額(第8級の6、給付基礎日額の503日分)の1/25を差し引いて、当該障害の存する期間1年について給付基礎日額の163.88日分となる。)

ハ 同一の部位に身体障害の程度を加重するとともに他の部位にも新たな身体障害を残したもの

例 既に、1下肢を1センチメートル短縮していた(第13級の8)者が、新たに同一下肢を3センチメートル短縮(第10級の7)し、かつ、1手の小指を失った(第12級の8の2)場合の障害補償の額は、同一部位の加重後の障害(第10級の7)と他の部位の障害(第12級の8の2)を併合して繰上げた障害補償の額(第9級、給付基礎日額の391日分)から既存の障害の障害補償の額(第13級の8、給付基礎日額の101日分)を差し引いて、給付基礎日額の290日分となる。

ニ 組合せ等級が定められているため、既にその一方に身体障害を有していた者が、新たに他方に身体障害を生じ、組合せ等級に該当するに至ったもの。

例 既に、1上肢を手関節以上で失っていた(第5級の2)者が、新たに他方の上肢を手関節以上で失った場合は、その新たな障害(第5級の2)のみにより等級の認定を行うことなく、両上肢を手関節以上で失ったもの(第2級の3)として認定する。

なお、この場合の障害補償の額は、現存する障害の障害補償の額(第2級の3、給付基礎日額の277日分)から、既存の障害の障害補償の額(第5級の2、給付基礎日額の184日分)を差し引いて給付基礎日額の93日分となる。

ホ 手指及び足指並びに相対性器官の場合

(イ) 手(足)指に既に身体障害を有する者が、同一手(足)の他指に新たに身体障害を加えた者

例 「1手の示指を亡失」(第11級の6)していた者が、新たに「同一手の環指を亡失」(第11級の6)した場合、現存する障害は第9級の8となるが、この場合、現存する障害の障害補償の額(第9級の8、給付基礎日額の391日分)から既存の障害の障害補償の額(第11級の6、給付基礎日額223日分)を差し引くと、障害補償の額は給付基礎日額の168日分となり、新たな障害(第11級の6、給付基礎日額の223日分)のみが生じたこととした場合の障害補償の額より少ないので、この場合は、第11級の6の障害のみが生じたものとみなして、給付基礎日額の223日分を支給する。

(ロ) 1手(足)の2以上の手(足)指に、既に身体障害を有する者が新たにその一部の手(足)指について身体障害の程度を重くしたもの

例 「1手の中指、環指及び小指の用を廃していた」(第9級の9)者が、新たに「同一手の小指を亡失」(第12級の8の2)した場合であっても、現存する障害は第8級には及ばないので第9級となり、加重の取扱いによれば、障害補償の額は0となるが、新たに障害が生じた小指についてのみ加重の取扱いをして「小指の亡失」の障害補償の額(第12級の8の2、給付基礎日額の156日分)から、既存の「小指の用廃」の障害補償の額(第13級の4、給付基礎日額の101日分)を差し引くと障害補償の額は給付基礎日額の55日分となるので、この場合の障害補償の額は、新たに小指のみに障害が加重されたものとみなして給付基礎日額の55日分を支給する。

(ハ) 相対性器官の両側に、既に身体障害を有していた者が、その1側について既存の障害の程度を重くしたもの

例 「両眼の視力が0.6以下に減じていた」(第9級の1)者が、新たに「1眼の視力が0.06以下に減じた」(第9級の2)場合の現存する障害は第9級の1となり、前記ロの方法によれば障害補償の額は0となるが、新たに障害が生じた1眼についてのみ加重の取扱いをして「1眼の視力が0.06以下に減じたもの」の障害補償の額(第9級の2、給付基礎日額の391日分)から、既存の「1眼の視力が0.6以下に減じたもの」の障害補償の額(第13級の1、給付基礎日額の101日分)を差し引くと、障害補償の額は給付基礎日額の290日分となるので、この場合の障害補償の額は、新たに1眼のみに障害が加重されたものとみなして給付基礎日額の290日分を支給する。

(ニ) 障害の程度を加重するとともに、他の部位にも新たな障害を残したもの

例 「言語の機能に障害を残し」(第10級の2)ていた者が、新たに「そしゃくの機能に障害を残し」(第10級の2)、かつ、「両眼の視力が0.6以下に減じた」(第9級の1)の場合は、同一部位の加重後の障害である「そしゃく及び言語の機能に障害を残したもの」(第9級の6)と他部位の「両眼の視力が0.6以下に減じたもの」(第9級の1)を併合し、現存する障害は第8級となるが、加重の取扱いによれば、現存する障害の障害補償の額(第8級、給付基礎日額の503日分)から既存の障害の障害補償の額(第10級の2、給付基礎日額の302日分)を差し引くと障害補償の額は給付基礎日額の201日分となり、他部位の新たな障害(第9級の1、給付基礎日額の391日分)のみが生じたこととした場合の障害補償の額より少ないので、この場合は、両眼の視力が0.6以下に減じた障害のみが生じたものとみなして、給付基礎日額の391日分を支給する。

第2 障害等級認定の具体的要領

1 削除

2 耳(内耳等及び耳介)

(1) 耳の障害と障害等級

イ 耳の障害については、障害等級表において、次のごとく聴力障害と耳介の欠損障害について等級を定めている。

(イ) 聴力障害

a 両耳の障害

両耳の聴力を全く失ったもの 第4級の3

両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 第6級の3

1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 第6級の3の2

両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの 第7級の2

1耳の聴力を全く失い他耳の聴力が1メートル以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの 第7級の2の2

両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 第9級の6の2

1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 第9級の6の3

両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 第10級の3の2

両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 第11級の3の3

b 1耳の障害

1耳の聴力を全く失ったもの 第9級の7

1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 第10級の4

1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 第11級の4

1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 第14級の2の2

(ロ) 耳介の欠損障害

1耳の耳かく(耳介)の大部分を欠損したもの 第12級の4

ロ 障害等級表に掲げていない耳の障害については、労災則第14条第4項により、その障害の程度に応じて、障害等級表に掲げている他の障害に準じて等級を認定すること。

(2) 障害等級認定の基準

イ 聴力障害

(イ) 聴力障害に係る等級は、純音による聴力レベル(以下「純音聴力レベル」という。)の測定結果及び語音による聴力検査結果(以下「明瞭度」という。)を基礎として、次により認定すること。

a 両耳の障害

(a) 「両耳の聴力を全く失ったもの」とは、両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの又は両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のものをいう。

(b) 「両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの」とは、両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上のもの又は両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のものをいう。

(c) 「1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」とは、1耳の平均純音聴力損失値が90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のものをいう。

(d) 「両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」とは、両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの又は両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のものをいう。

(e) 「1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」とは、1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のものをいう。

(f) 「両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」とは、両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの又は両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のものをいう。

(g) 「1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの」とは、1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のものをいう。

(h) 「両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの」とは、両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの又は両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のものをいう。

(i) 「両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」とは、両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上のものをいう。

b 1耳の障害

(a) 「1耳の聴力を全く失ったもの」とは、1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のものをいう。

(b) 「1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの」とは、1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上のものをいう。

(c) 「1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの」とは、1耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの又は1耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のものをいう。

(d) 「1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」とは、1耳の平均純音聴力レベルが40dB以上のものをいう。

(ロ) 両耳の聴力障害については、障害等級表に掲げている両耳の聴力障害の該当する等級により認定することとし、1耳ごとの等級により併合の方法を用いて準用等級を定める取扱いは行わないこと。

(ハ) 騒音性難聴については、強烈な騒音を発する場所における業務に従事している限り、その症状は漸次進行する傾向が認められるので、等級の認定は、当該労働者が強烈な騒音を発する場所における業務を離れたときに行うこと。

(ニ) 難聴の聴力検査は、次により行うこと。

a 聴力検査の実施時期

(a) 騒音性難聴

騒音性難聴の聴力検査は、85dB以上の騒音にさらされた日以後7日間は行わないこと。

(b) 騒音性難聴以外の難聴

騒音性難聴以外の難聴については、療養効果が期待できることから、治ゆした後すなわち療養が終了し症状が固定した後に検査を行うこと。

b 聴力検査の方法

(a) 聴覚検査法

障害等級認定のための聴力検査は、別紙1「聴覚検査法(1990)」(日本聴覚医学会制定)により行うこと(語音聴力検査については、日本聴覚医学会制定「聴覚検査法(1990)」における語音聴力検査法が新たに制定されるまでの間は、日本オージオロジー学会制定「標準聴力検査法Ⅱ語音による聴力検査」により行うこととし、検査用語音は、57式、67式、57S式又は67S式のいずれを用いても差し支えないものとする。)。

(b) 聴力検査回数

聴力検査は日を変えて3回行うこと。

但し、聴力検査のうち語音による聴力検査の回数は、検査結果が適正と判断できる場合には1回で差し支えないこと。

(c) 聴力検査の間隔

検査と検査の間隔は7日程度あければ足りること。

c 障害等級の認定

障害等級の認定は、2回目と3回目の測定値の平均純音聴力レベルの平均により行うこと。

2回目と3回目の測定値の平均純音聴力レベルに10dB以上の差がある場合には、更に聴力検査を行い、2回目以降の検査の中で、その差が最も小さい2つの平均純音聴力レベル(差は10dB未満とする。)の平均により、障害認定を行うこと。

(ホ) 平均純音聴力レベルは、周波数が500ヘルツ、1000ヘルツ、2000ヘルツ及び4000ヘルツの音に対する聴力レベルを測定し、次式により求めること。

(A+2B+2C+D)/6

A:周波数500ヘルツの音に対する純音聴力レベル

B:周波数1000ヘルツの音に対する純音聴力レベル

C:周波数2000ヘルツの音に対する純音聴力レベル

D:周波数4000ヘルツの音に対する純音聴力レベル

ロ 耳介の欠損障害

(イ) 「耳介の大部分の欠損」とは、耳介の軟骨部の1/2以上を欠損したものをいう。

(ロ) 耳介の大部分を欠損したものについては、耳介の欠損障害としてとらえた場合の等級と外貌の醜状障害としてとらえた場合の等級のうち、いずれか上位の等級に認定すること。

例 「耳介の大部分の欠損」は第12級の4に該当するが、一方、醜状障害としては第7級の12に該当するので、この場合は、外貌の醜状障害として第7級の12に認定する。

(ハ) 耳介軟骨部の1/2以上には達しない欠損であっても、これが、「外貌の単なる醜状」の程度に達する場合は、第12級の14とすること。