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備考

1 「耳かく」については、以下「耳介」という。

2 「奇形」障害については、以下「変形」障害という。

(3) 障害の序列

イ 障害等級表は、上記のとおり労働能力のそう失の程度に応じて身体障害を第1級から第14級までの14段階に区分しており、この場合の同一系列の障害相互間における等級の上位、下位の関係を障害の序列(以下「序列」という。)という。

障害等級表上定めのない身体障害及び同一系列に2以上の身体障害が存する場合の等級の認定にあたっては、障害の序列を十分に考慮すべきものである。(後記「5 障害等級認定の具体的方法(例示解説)」を参照のこと。)

なお、同一系列における序列については、次の類型に大別されるので、それぞれの等級の認定にあたっては留意する必要がある。

(イ) 障害の程度を一定の幅で評価することから、上位等級の身体障害と下位等級の身体障害との間に中間の等級を定めていないもの

(例

1 1眼の視力障害については、視力0.1以下を第10級に視力0.6以下を第13級に格付けているので、第13級には、視力0.1をこえて0.6までの視力障害が含まれることとなり、その中間にあたる視力0.4の視力障害は、第13級となり、視力が0.1以下にならない限り、上位の等級には格付けされない。

2 両眼の視力障害については、両眼の視力0.1以下を第6級に、両眼の視力0.6以下を第9級に格付けているので、第9級には両眼の視力が0.1をこえて0.6までの視力障害が含まれることとなり、1眼の視力0.6、他眼の視力0.1の視力障害は、第9級となる。)

(ロ) 上位等級の身体障害と下位等級の身体障害との区別を、労働能力に及ぼす影響の総合的な判定により行っているもの

(例 胸腹部臓器の障害については、「常に介護を要するもの」(第1級)、「終身労務に服することができないもの」(第3級)、「特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」(第5級)、「軽易な労務以外の労務に服することができないもの」(第7級)、「服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」(第9級)、「障害を残すもの」(第11級)の6段階に区分されており、その労働能力に及ぼす影響を総合的に判定して等級を認定することとしている。)

(ハ) 障害等級表上、最も典型的な身体障害を掲げるにとどまり上位等級の身体障害と下位等級の身体障害との間に中間の身体障害が予想されるにかかわらず定めていないもの

(例

1 1上肢の機能障害については、「1上肢の用を廃したもの」(第5級)、「1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの」(第6級)、「1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」(第8級)、「1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」(第10級)、「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」(第12級)の5段階に区分されており、1上肢の3大関節中の2関節の機能に障害を残すものは、第10級と第12級の中間の程度の身体障害であるにもかかわらず、障害等級表上には格付けられていない。

このように障害等級表における身体障害の定め方が最も典型的な身体障害を掲げるにとどまる場合に、上位等級の身体障害と下位等級の身体障害との等級差が2以上である場合は、障害の序列にしたがって、中間の等級を定めることができる。

2 しかしながら、たとえば「1上肢の用を全廃したもの」(第5級)と「1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの」(第6級)のごとく、等級差が1である場合には、障害等級表上、これらの中間の等級はないので、上位等級に達しない限り、下位等級に該当するものとして取り扱うこととなる。)

ロ 欠損障害は、労働能力の完全なそう失であり、障害等級表上、同一部位に係る機能障害よりも上位に格付けられているので、同一部位に欠損障害以外のいかなる身体障害が残存したとしても、その程度は欠損障害の程度に達することはない。

ただし、その例外として、機能の全部そう失については欠損障害と同等に評価されている場合がある(第1級の6と第1級の7又は第1級の8と第1級の9)。

ハ 上記イ、ロによるほか、系列を異にする2以上の身体障害が残存した場合で、障害等級表上組合せにより等級が定められているものについても、その等級間に、いわゆる序列に類する上位下位の関係が明らかにされている。したがって系列を異にする2以上の身体障害のうちこれら組合せのあるもの以外のものの等級の認定については、原則として併合の方法により、行うこととなるが、上位、下位の関係に留意のうえ等級を認定することが必要である。なお、この場合、両上肢及び両下肢の欠損障害については、障害等級表に組合せによる等級が掲げられているので、その等級以外の格付けはあり得ない。したがって、上位等級(第1級の6又は第1級の8)に達しないものは、すべて下位等級(第2級の3又は第2級の4)に該当するものとして取り扱うこととなる。

4 障害等級認定にあたつての原則と準則

障害等級の認定にあたっては、前記2(障害補償に係る規定の概要)のとおり、法令の定めるところによることを原則とするが、なお、これが運用にあたっては、次のごとき準則により取り扱うものとする。

(1) 併合(労基則第40条第2項、3項及び労災則第14条第2項、3項)の場合

イ 「併合」とは、系列を異にする身体障害が2以上ある場合に、重い方の身体障害の等級によるか、又はその重い方の等級を1級ないし3級を繰り上げて当該複数の障害の等級とすることをいう。

ロ 併合して等級が繰り上げられた結果、障害の序列を乱すこととなる場合は、障害の序列にしたがって等級を定めることとなる。

ハ 併合して等級が繰り上げられた結果、障害等級が第1級をこえる場合であっても、障害等級表上、第1級以上の障害等級は存在しないので、第1級にとどめることとなる。

ニ 系列を異にする身体障害が2以上存する場合には、併合して等級を認定することとなるが、次の場合にあっては、併合の方法を用いることなく等級を定めることとなる。

(イ) 両上肢の欠損障害及び両下肢の欠損障害については、本来、系列を異にする複数の身体障害として取り扱うべきものであるが、障害等級表上では組み合わせ等級として定められているので(第1級の6、第1級の8、第2級の3、第2級の4)、それぞれの等級を併合の方法を用いることなく、障害等級表に定められた当該等級により認定する。

(ロ) 1の身体障害が観察の方法によっては、障害等級表上の2以上の等級に該当すると考えられる場合であるが、これは、その1の身体障害を複数の観点(複数の系列)で評価しているにすぎないものであるから、この場合には、いずれか上位の等級をもって、当該身体障害の等級とする。

(ハ) 1の身体障害に他の身体障害が通常派生する関係にある場合には、いずれか上位の等級をもって、当該身体障害の等級とする。

(2) 準用(労基則第40条第4項及び労災則第14条第4項)の場合

イ 障害等級表に掲げるもの以外の身体障害については、その障害の程度に応じ障害等級表に掲げる身体障害に準じて、その等級を定めることとなるが、この「障害等級表に掲げるもの以外の身体障害」とは、次の2つの場合をいう。

(イ) ある身体障害が、障害等級表上のいかなる障害の系列にも属さない場合

(ロ) 障害等級表上に、その属する障害の系列はあるが、該当する身体障害がない場合

ロ この場合においては、次により、その準用等級を定めるものとする。

(イ) いかなる障害の系列にも属さない場合

その障害によって生ずる労働能力のそう失の程度を医学的検査結果等に基づいて判断し、その障害が最も近似している系列の障害における労働能力のそう失の程度に相当する等級を準用等級として定める。

(ロ) 障害の系列は存在するが、該当する障害がない場合

a この準用等級を定めることができるのは、同一系列に属する障害群についてであるので、この場合は、同一系列に属する2以上の障害が該当するそれぞれの等級を定め、併合の方法を用いて準用等級を定める。ただし、併合の方法を用いた結果、序列を乱すときは、その等級の直近上位又は直近下位の等級を当該身体障害の該当する等級として認定する。

b 本来は異なる系列のものを、同一系列の障害として取り扱っているもの(「3 障害等級表の仕組みとその意議」の(2)のイ~ハ)については、それぞれの障害について各々別個に等級を定め、さらにこれを併合して得られる等級を準用等級とする。ただし、併合の結果、序列を乱すときは、その等級の直近下位の等級を当該身体障害の該当する等級として認定する。

(3) 加重(労基則第40条第5項、労災則第14条第5項)の場合

イ 既に身体障害のあった者が業務災害(又は通勤災害)によって同一の部位について障害の程度を加重した場合は、加重した限度で障害補償を行う。

(イ) 「既に身体障害のあった者」とは、新たな業務災害(又は通勤災害)の発生前において、既に身体障害のあった者をいい、その身体障害が、当該事業場に雇用される前の災害によるものであると、当該事業場に雇用された後の災害によるものであるとを問うところでないし、また先天性のものであると、後天性のものであると、業務上の事由によるものであると、業務外の事由によるものであると、現実に給付を受けたものであると否とにかかわらず、既に障害等級表に定められている程度の身体障害が存していた者をいう。

(ロ) 「加重」とは、業務災害(又は通勤災害)によって新たに障害が加わった結果、障害等級表上、現存する障害が既存の障害より重くなった場合をいう。したがって、自然的経過又は既存の障害の原因となった疾病の再発など、新たな業務災害(又は通勤災害)以外の事由により障害の程度を重くしたとしても、ここにいう「加重」には該当しない。また、同一部位に新たな障害が加わったとしても、その結果、障害等級表上、既存の障害よりも現存する障害が重くならなければ、「加重」には該当しない。

なお、既存の障害が、業務災害(又は通勤災害)によるものである場合は、その後の障害の程度の変更いかんにかかわらず、既に障害補償のなされた等級(労災保険法第15条の2の規定により新たに該当するに至った等級の障害補償を行ったときは当該等級)を既存の障害の等級とする。

(ハ) ここにいう「同一の部位」とは、前記3の(2)の「同一系列」の範囲内をいう。ただし、異なる系列であったとしても、「欠損」又は「機能の全部そう失」は、その部位における最上位の等級であるので、障害が存する部位に「欠損」又は「機能の全部そう失」という障害が後に加わった場合(たとえば、右下肢の下腿骨に変形の既存障害が存する場合に、その後新たに右下肢を膝関節以上で失ったとき)は、それが系列を異にする障害であったとしても、「同一部位」の加重として取り扱うこととする。

ロ 加重の場合の障害補償の額は、加重された身体障害の該当する障害等級の障害補償の額(日数)から、既に存していた身体障害の該当する障害等級の障害補償の額(日数)を控除して得た額(日数)とする。

ただし、既存の身体障害が第8級以下に該当するものであって、新たに加重の結果、第7級(年金)以上になった場合には、現在の身体障害の該当する障害等級の障害補償の年額(日数)から既存の身体障害の障害補償の額(日数)の1/25を控除して得た額とする。

ハ 同一の部位に身体障害の程度を加重するとともに、他の部位にも新たな身体障害が残った場合は、まず、同一部位の加重された後の身体障害についてその障害等級を定め、次に、他の部位の身体障害について障害等級を定め、両者を併合して現在の身体障害の該当する障害等級を認定する。

ニ 系列を異にする身体障害で障害等級表上、特にその組合せを規定しているために、同一系列とされている次の場合に、既存障害としてその一方に身体障害を有していた者が、新たに他方に身体障害を加え、その結果組合せ等級に該当するに至ったときは、新たな身体障害のみの該当する等級によることなく、加重として取り扱うものとする。

(イ) 両上肢の欠損又は機能障害

(第1級の6、第1級の7、第2級の3)

(ロ) 両手指の欠損又は機能障害

(第3級の5、第4級の6)

(ハ) 両下肢の欠損又は機能障害

(第1級の8、第1級の9、第2級の4、第4級の7)

(ニ) 両足指の欠損又は機能障害

(第5級の6、第7級の11)

(ホ) 両眼瞼の欠損又は運動障害

(第9級の4、第11級の2、第13級の3)

ホ 手指及び足指並びに相対性器官(眼球及び内耳等)で身体障害の程度を加重した場合であっても、次の場合には、以下の準則により取り扱うこととする。

(イ) 手(足)指に既に身体障害を有する者が、同一手(足)の他指に新たに身体障害を加えた場合及び相対性器官の一側に既に身体障害を有する者が、他側に新たに身体障害を残した場合において、前記ロの方法により算定した障害補償の額(日数)が、新たな身体障害のみが生じたこととした場合の障害補償の額(日数)より少ないときは、その新たな身体障害のみが生じたものとみなして障害等級の認定を行う。

(ロ) 一手(足)の2以上の手(足)指に既に身体障害を有する者が、その身体障害を有している手(足)指の一部について身体障害の程度を重くした場合において、前記ロの方法により算定した障害補償の額(日数)が、その一部の手(足)指のみに身体障害が存したものとみなして新たに身体障害の程度を加重したこととした場合の障害補償の額(日数)より少ないときは、その一部の手(足)指にのみ新たに身体障害の程度を加重したものとみなし、取り扱うこととする。

(ハ) 相対性器官の両側に既に身体障害を有する者が、その1側について既存の障害の程度を重くした場合に、前記ロの方法により算出した障害補償の額(日数)が、その1側のみに身体障害が存したものとみなして新たに身体障害の程度を加重したこととした場合の障害補償の額(日数)より少ないときは、その1側にのみ新たに身体障害の程度を加重したものとみなして障害等級の認定を行うこととする。

(ニ) 障害の程度を加重するとともに、他の部位にも新たな身体障害を残した場合には、前記ロの方法により算定した障害補償の額(日数)が、他の部位の新たな身体障害のみが生じたこととした場合における障害補償の額(日数)より少ないときは、その新たな身体障害のみが生じたものとみなして取り扱うこととする。

(ホ) 上記(イ)、(ロ)、(ハ)及び(ニ)の場合において、前記ロの方法による加重後の身体障害の等級が第7級以上(年金)に該当し、新たに加わった身体障害が単独で生じたこととした場合の等級が第8級以下に該当するとき(既存の身体障害の等級と加重後の身体障害の等級が同等級である場合を除く。)は、加重後の等級により認定し、障害補償の額の算定にあたっては、その加重後の等級の障害補償の年額(日数)から既存の身体障害の障害補償の額(日数)の1/25を控除して得た額とする。

5 障害等級認定の具体的方法(例示解説)

(1) 併合

イ 併合の原則的取扱い

(イ) 重い方の身体障害の等級により等級を認定するもの

(例 肘関節の機能に障害を残し(第12級の6)、かつ、4歯に対し歯科補てつを加えた(第14級の2)場合には、併合して重い方の障害の該当する等級により、第12級とする。)

(ロ) 併合繰上げにより等級を認定するもの

(例 せき柱に運動障害を残し(第8級の2)、かつ、1下肢を4センチメートル短縮した(第10級の7)場合には、併合して重い方の等級を1級繰上げ、第7級とする。)

ロ 併合して等級が繰り上げられた結果、障害の序列を乱すこととなる場合で、障害の序列にしたがって等級を定めたもの

(例 1上肢を腕関節以上で失い(第5級の2)、かつ、他の上肢をひじ関節以上で失った(第4級の4)場合は、併合して等級を繰り上げると第1級となるが、当該障害は、「両上肢をひじ関節以上で失ったもの」(第1級の6)の障害の程度に達しないので第2級とする。)

ハ 併合して等級が繰り上げられた結果、障害等級が第1級をこえる場合で、第1級にとどめたもの

(例 両眼の視力が0.02以下になり(第2級の2)、かつ、両手の手指の全部を失った(第3級の5)場合は、併合して等級を繰り上げると第1級をこえることとなるが、第1級以上の障害等級はあり得ないので第1級とする。)

ニ 併合の方法を用いることなく等級を定めたもの

(イ) 両上肢の欠損障害及び両下肢の欠損障害について、障害等級表に定められた当該等級により認定するもの

(例 1下肢をひざ関節以上で失い(第4級の5)、かつ、他の下肢をひざ関節で失った(第4級の5)場合は、併合の方法を用いることなく「両下肢をひざ関節以上で失ったもの」(第1級の8)の等級に該当する。)

(ロ) 1の身体障害が観察の方法によっては、障害等級表上の2以上の等級に該当すると考えられる場合に、いずれか上位の等級をもって当該障害の等級とするもの

(例 大腿骨に変形を残した(第12級の8)結果、同一下肢を1センチメートル短縮した(第13級の8)場合は、上位の等級である第12級の8をもって当該障害の等級とする。)

(ハ) 1の身体障害に他の身体障害が通常派生する関係にある場合に、いずれか上位の等級をもって当該障害の等級とするもの

(例 上腕骨に仮関節を残す(第7級の9)とともに、当該箇所にがん固な神経症状を残した(第12級の12)場合は、上位等級である第7級の9をもって当該障害の等級とする。)

ホ 併合の結果が第8級以下である場合における障害補償の額の算定方法(労基則第40条第3項ただし書及び労災則第14条第3項ただし書)

(例 右手の母指の亡失(第9級、給付基礎日額の391日分)及び左手の小指の亡失(第13級、給付基礎日額の101日分)が存する場合には等級を繰上げて第8級(給付基礎日額の503日分)となるが、第9級と第13級の障害補償の合算額(給付基礎日額の492日分)がこれに満たないので、この場合の障害補償の額は当該合算額(492日分)となる。)

(2) 準用

イ いかなる障害の系列にも属さない場合

「嗅覚脱失」および「味覚脱失」については、ともに第12級の障害として取り扱う。嗅覚脱失等の鼻機能障害、味覚脱失等の口腔障害は、神経障害ではないが、全体としては神経障害に近い障害とみなされているところから、一般の神経障害の等級として定められている第12級の12「局部にがん固な神経症状を残すもの」を準用して等級を認定する。また、「嗅覚減退」については第14級の9「局部に神経症状を残すもの」を準用して等級を認定する。

ロ 障害の系列は存在するが、該当する障害がない場合

(イ) 併合繰上げの方法を用いて、準用等級を定めたもの

(例 「1上肢の3大関節中の1関節の用を廃し」(第8級の6)、かつ、「他の1関節の機能に著しい障害を残す」(第10級の9)場合には、併合繰上げの方法を用いて第7級に認定する。)

(ロ) 併合繰上げの方法を用いて準用等級を定めるが、序列を乱すため、直近上位又は直近下位の等級に認定したもの

a 直近上位の等級に認定したもの

(例 1手において、「母指の用を廃し」(第10級の6)、かつ、「示指を失った」(第10級の5)場合は、併合の方法を用いると第9級となるが、この場合、当該障害の程度は、「1手の母指及び示指の用を廃したもの」(第8級の4)よりも重く、「1手の母指及び示指を失ったもの」(第7級の6)よりは軽いので第8級に認定する。)

b 直近下位の等級に認定したもの

(例

1 「上肢の3大関節中の2関節の用を廃し」(第6級の5)、かつ、「他の1関節の機能に著しい障害を残す」(第10級の9)場合には、併合の方法を用いると第5級となるが、「1上肢の用を廃した」(第5級の4)障害の程度より軽いので、その直近下位の第6級に認定する。

2 ―本来、異系列のものを同一系列のものとして取り扱う場合の例―

「1手の5の手指を失い」(第6級の7)、かつ、「1上肢の3大関節中の1関節(腕関節)の用を廃した」(第8級の6)場合には、併合の方法を用いると第4級となるが、「1上肢を腕関節以上で失ったもの」(第5級の2)には達しないので、その直近下位の第6級に認定する。)

(3) 加重

イ 既に身体障害を有していた者が新たな災害により、同一部位に身体障害の程度を加重したもの

(例 既に、3歯に対し、歯科補てつを加えていた(第14級の2)者が、新たに3歯に対し歯科補てつを加えた場合には、現存する障害に係る等級は第13級の3の2となる。)

ロ 身体障害を加重した場合の障害補償の額の算定

(例

1 既に右示指の用を廃していた(第11級の7)者が、新たに同一示指を亡失した場合には、現存する身体障害に係る等級は第10級の5となるが、この場合の障害補償の額は、現存する障害の障害補償の額(第10級の5、給付基礎日額の302日分)から既存の障害の障害補償の額(第11級の7、給付基礎日額の223日分)を差し引いて給付基礎日額の79日分となる。

2 既に、1上肢の腕関節の用を廃していた(第8級の6)者が、新たに同一上肢の腕関節を亡失した場合には、現存する障害は、第5級の2(年金)となるが、この場合の障害補償の額は、現存する障害の障害補償の額(第5級の2、当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の184日分)から既存の障害の障害補償の額(第8級の6、給付基礎日額の503日分)の1/25を差し引いて、当該障害の存する期間1年について給付基礎日額の163.88日分となる。)

ハ 同一の部位に身体障害の程度を加重するとともに他の部位にも新たな身体障害を残したもの

(例 既に、1下肢を1センチメートル短縮していた(第13級の8)者が、新たに同一下肢を3センチメートル短縮(第10級の7)し、かつ、1手の小指を失った(第13級の4)場合の障害補償の額は、同一部位の加重後の障害(第10級の7)と他の部位の障害(第13級の4)を併合して繰上げた障害補償の額(第9級、給付基礎日額の391日分)から既存の障害の障害補償の額(第13級の8、給付基礎日額の101日分)を差し引いて、給付基礎日額の290日分となる。)

ニ 組合せ等級が定められているため、既にその一方に身体障害を有していた者が、新たに他方に身体障害を生じ、組合せ等級に該当するに至ったもの。

(例 既に、1上肢を腕関節以上で失っていた(第5級の2)者が、新たに他方の上肢を腕関節以上で失った場合は、その新たな障害(第5級の2)のみにより等級の認定を行うことなく、両上肢を腕関節以上で失ったもの(第2級の3)として認定する。

なお、この場合の障害補償の額は、現存する障害の障害補償の額(第2級の3、給付基礎日額の277日分)から、既存の障害の障害補償の額(第5級の2、給付基礎日額の184日分)を差し引いて給付基礎日額の93日分となる。)

ホ 手指及び足指並びに相対性器官の場合

(イ) 手(足)指に既に身体障害を有する者が、同一手(足)の他指に新たに身体障害を加えた者

(例 「1手の示指を亡失」(第10級の5)していた者が、新たに「同一手の薬指を亡失」(第11級の6)した場合、現存する障害は第9級の8となるが、この場合現存する障害の障害補償の額(第9級の8、給付基礎日額の391日分)から既存の障害の障害補償の額(第10級の5、給付基礎日額の302日分)を差引くと、障害補償の額は給付基礎日額の79日分となり、新たな障害(第11級の6、給付基礎日額の223日分)のみが生じたこととした場合の障害補償の額より少ないので、この場合は、第11級の6の障害のみが生じたものとみなして、給付基礎日額の223日分を支給する。)

(ロ) 一手(足)の2以上の手(足)指に、既に身体障害を有する者が新たにその一部の手(足)指について身体障害の程度を重くしたもの

(例 「1手の中指、薬指及び小指の用を廃していた」(第10級の6)者が、新たに「同一手の小指を亡失」(第13級の4)した場合であっても、現存する障害は第9級には及ばないので第10級となり、加重の取扱いによれば、障害補償の額は0となるが、新たに障害が生じた小指についてのみ加重の取扱いをして「小指の亡失」の障害補償の額(第13級の4、給付基礎日額の101日分)から、既存の「小指の用廃」の障害補償の額(第14級の5、給付基礎日額の56日分)を差し引くと障害補償の額は給付基礎日額の45日分となるので、この場合の障害補償の額は、新たに小指のみに障害が加重されたものとみなして給付基礎日額の45日分を支給する。)

(ハ) 相対性器官の両側に、既に身体障害を有していた者が、その1側について既存の障害の程度を重くしたもの

(例 「両眼の視力が0.6以下に減じていた」(第9級の1)者が、新たに「1眼の視力が0.06以下に減じた」(第9級の2)場合の現存する障害は第9級の1となり、前記ロの方法によれば障害補償の額は0となるが、新たに障害が生じた1眼についてのみ加重の取扱いをして「1眼の視力が0.06以下に減じたもの」の障害補償の額(第9級の2、給付基礎日額の391日分)から、既存の「1眼の視力が0.6以下に減じたもの」の障害補償の額(第13級の1、給付基礎日額の101日分)を差し引くと、障害補償の額は給付基礎日額の290日分となるので、この場合の障害補償の額は、新たに1眼のみに障害が加重されたものとみなして給付基礎日額の290日分を支給する。)

(ニ) 障害の程度を加重するとともに、他の部位にも新たな障害を残したもの

(例 「言語の機能に障害を残し」(第10級の2)ていた者が、新たに「そしゃくの機能に障害を残し」(第10級の2)、かつ、「両眼の視力が0.6以下に減じた」(第9級の1)の場合は、同一部位の加重後の障害である「そしゃく及び言語の機能に障害を残したもの」(第9級の6)と他部位の「両眼の視力が0.6以下に減じたもの」(第9級の1)を併合し、現存する障害は第8級となるが、加重の取扱いによれば、現存する障害の障害補償の額(第8級、給付基礎日額の503日分)から既存の障害の障害補償の額(第10級の2、給付基礎日額の302日分)を差し引くと障害補償の額は給付基礎日額の201日分となり、他部位の新たな障害(第9級の1、給付基礎日額の391日分)のみが生じたこととした場合の障害補償の額より少ないので、この場合は、両眼の視力が0.6以下に減じた障害のみが生じたものとみなして、給付基礎日額の391日分を支給する。)

第2 障害等級認定の具体的要領

1 眼(眼球及び眼瞼)

(1) 眼の障害と障害等級

イ 眼の障害については、障害等級表上、次のごとく、眼球の障害として視力障害、調節機能障害、運動障害及び視野障害について、また、眼瞼の障害として欠損障害及び運動障害について等級を定めている。

(イ) 眼球の障害

a 視力障害

両眼が失明したもの 第1級の1

1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの 第2級の1

両眼の視力が0.02以下になったもの 第2級の2

1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの 第3級の1

両眼の視力が0.06以下になったもの 第4級の1

1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの 第5級の1

両眼の視力が0.1以下になったもの 第6級の1

1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの 第7級の1

1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの 第8級の1

両眼の視力が0.6以下になったもの 第9級の1

1眼の視力が0.06以下になったもの 第9級の2

1眼の視力が0.1以下になったもの 第10級の1

1眼の視力が0.6以下になったもの 第13級の1

b 調節機能障害

両眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの 第11級の1

1眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの 第12級の1

c 運動障害

両眼の眼球に著しい運動障害を残すもの 第11級の1

1眼の眼球に著しい運動障害を残すもの 第12級の1

d 視野障害

両眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの 第9級の3

1眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの 第13級の2

(ロ) 眼瞼の障害

a 欠損障害

両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 第9級の4

1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 第11級の3

両眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの 第13級の3

1眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの 第14級の1

b 運動障害

両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 第11級の2

1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 第12級の2

ロ 障害等級表に掲げていない眼の障害については、労災則第14条第4項により、その障害の程度に応じて、障害等級表に掲げている他の障害に準じて等級を認定すること。

(2) 障害等級認定の基準

イ 眼球の障害

(イ) 視力障害

a 視力の測定は、原則として、万国式視力表によることとする(労災則別表障害等級表備考第1号)が、実際上これと同程度と認められる文字、図形等の視標を用いた試視力表又は視力測定法を用いてもよいこと。

b 障害等級表にいう視力とは、きよう正視力をいう(労災則別表障害等級表備考第1号)。したがって、眼鏡によりきよう正した視力について測定すること。(コンタクトレンズによりきよう正した視力を除く。)

ただし、視力のきよう正によって不等像症を生じ、両眼視が困難となることが医学的に認められる場合には、裸眼視力によること。

(注 不等像症とは、左右両眼の屈折状態等が異なるため、左眼と右眼の網膜に映ずる像の大きさ、形が異なるものをいう。)

c 「失明」とは、眼球を亡失(摘出)したもの、明暗を弁じ得ないもの及びようやく明暗を弁ずることができる程度のものをいう。

d 両眼の視力障害については、障害等級表に掲げている両眼の視力障害の該当する等級をもって認定することとし、1眼ごとの等級を定め併合繰上の方法を用いて準用等級を定める取扱いは行わないこと。

ただし、両眼の該当する等級よりも、いずれか1眼の該当する等級が上位である場合は、その1眼のみに障害が存するものとみなして、等級を認定すること。

(例 1眼の視力が0.5、他眼の視力が0.02である場合は、両眼の視力障害としては第9級の1に該当するが、1眼の視力障害としては第8級の1に該当し、両眼の場合の等級よりも上位であるので、第8級の1とする。)

(ロ) 調節機能障害

「眼球に著しい調節機能障害を残すもの」とは、調節領(調節力)が通常の場合の1/2以下に減じたものをいう。

ただし、50才以上の者については、通常の調節力が1ジオプトリー以下であり、1/2以下に減じた場合は、0.5ジオプトリー以下となり、調節力の減少をほとんど無視し得るので、障害補償の対象としないこと。

(注 調節力とは、明視できる遠点から近点までの空間(これを調節領という。)をレンズ(水晶体)の度をもって表わしたものであり、単位はジオプトリー(D)である。

調節力は、年令と密接な関係があり、次のとおりとなっている。

10才―12〔D〕 20才―8〔D〕 30才―7〔D〕

40才―4〔D〕 50才―1〔D〕 60才―0.5〔D〕)

(ハ) 運動障害

「眼球に著しい運動障害を残すもの」とは、眼球の注視野の広さが1/2以下に減じたものをいう。

(注

1 眼球の運動は、各眼3対、すなわち6つの外眼筋の作用によって行われる。この6つの筋は、一定の緊張を保っていて、眼球を正常の位置に保たせるものであるから、もし、眼筋の1個あるいは数個が麻痺した場合は、眼球はその筋の働く反対の方向に偏位し(麻痺性斜視)、麻痺した筋の働くべき方向において、眼球の運動が制限されることとなる。

2 両眼視のある人の眼筋の1個又は数個が麻痺すれば、複視を生ずる。

複視とは、単一の物体から2個の像を認識することであり、患眼によって見える物体を偽像という。

3 注視野とは、頭部を固定し、眼球を運動させて直視することのできる範囲をいう。

注視野の広さは、相当個人差があるが、多数人の平均では単眼視では各方面約50度、両眼視では各方面約45度である。)

(ニ) 視野障害

a 視野の測定は、フエステル視野計によること。

b 「半盲症」、「視野狭さく」及び「視野変状」とは、8方向の視野の角度の合計が、正常視野の角度の合計の60%以下になった場合をいう。

なお、暗点は絶対暗点を採用し、比較暗点は採用しないこと。

(注

1 視野とは、眼前の1点をみつめていて、同時に見得る外界の広さをいう。

なお、日本人の視野の平均値は、次のとおりである。

 

指標

方向

 

 

60(55―65)

上外

75(70―80)

95(90―100)

外下

80(75―85)

70(65―75)

下内

60(50―70)

60(50―70)

内上

60(50―70)

2 半盲症とは、視神経線維が、視神経交叉又はそれより後方において侵されるときに生ずるものであって、注視点を境界として、両眼の視野の右半部又は左半部が欠損するものをいう。両眼同側の欠損するものは同側半盲、両眼の反対側の欠損するものは交叉半盲という。

3 視野狭さくとは、視野周辺の狭さくであって、これには、同心性狭さくと不規則狭さくとがあり、前者は視神経萎縮、後者は脈絡網膜炎等にみられる。

高度の同心性狭さくは、たとえ視力は良好であっても、著しく視機能を阻げ、周囲の状況をうかがい知ることができないため、歩行その他諸動作が困難となる。また、不規則狭さくには、上方に起こるものや内方に起こるもの等がある。

4 視野変状には、半盲症、視野の欠損、視野狭さく及び暗点が含まれるが、半盲症及び視野狭さくについては、障害等級表に明示されているので、ここにいう視野変状は、暗点と視野欠損をいう。

なお、暗点とは、生理的視野欠損(盲点)以外の病的欠損を生じたものをいい、中心性網膜炎、網膜の出血、脈絡網膜炎等にみられる。比較暗点とは、白指標をみることができるけれども、その見え方が、周囲の健常部に比して黒ずんでみえる部分をいう。

また、網膜に感受不受部があれば、それに相当して、視野上に欠損を生じるが、生理的に存する視野欠損の主なものはマリオネット盲斑(盲点)であり、病的な視野欠損は、網膜の出血、動脈板の塞栓等にみられる。)

ロ 眼瞼の障害

(イ) 欠損障害

a 「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは、閉瞼時(普通に眼瞼を閉じた場合)に、角膜を完全におおい得ない程度のものをいう。

b 「まぶたの一部に欠損を残すもの」とは、閉瞼時に角膜を完全におおうことができるが、球結膜(しろめ)が露出している程度のものをいう。

c 「まつげはげを残すもの」とは、まつげ縁(まつげのはえている周縁)の1/2以上にわたってまつげのはげを残すものをいう。

(ロ) 運動障害

「まぶたに著しい運動障害を残すもの」とは、開瞼時(普通に開瞼した場合)に瞳孔領を完全におおうもの又は閉瞼時に角膜を完全におおい得ないものをいう。

(3) 併合、準用、加重

イ 併合

眼瞼の障害において、系列を異にする2以上の障害が存する場合は、労災則第14条第2項及び第3項により併合して等級を認定すること。

(例 1眼のまぶたの著しい欠損障害(第11級の3)と、他眼のまぶたの著しい運動障害(第12級の2)が存する場合は、第10級とする。)

ロ 準用

(イ) 同一眼球に、系列を異にする2以上の障害が存する場合(たとえば、調節機能障害と視力障害が存する場合、眼球の運動障害と視力障害が存する場合又は視野障害と視力障害が存する場合等)は、併合の方法を用いて準用等級を定めること。

(ロ) 「眼球に著しい運動障害を残すもの」に該当しない程度のものであっても、正面視で複視を生じるものについては、両眼視することによって高度の頭痛、めまい等を生じ労働に著しく支障をきたすので、第12級を準用すること。

なお、左右上下視等で複視を生じ、正面視では複視を生じないものについては、労働に著しい支障をきたすものとは認められないが、軽度の頭痛、眼精疲労を訴えるので、第14級を準用すること。

(ハ) 外傷性散瞳については、次により取り扱うこと。

a 1眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著明な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすものについては、第12級を準用すること。

b 1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすものについては、第14級を準用すること。

c 両眼について、前記aの場合には第11級を、またbの場合には第12級をそれぞれ準用すること。

d 外傷性散瞳と視力障害又は調節機能障害が存する場合は、併合の方法を用いて準用等級を定めること。

(注 散瞳(病的)とは、瞳孔の直径が開大して対光反応が消失又は減弱するものをいい、羞明とは、俗にいう「まぶしい」ことをいう。)

ハ 加重

(イ) 眼については、両眼球を同一部位とするので、次の場合は、加重として取り扱うこと。

a 1眼を失明し、又は1眼の視力を減じていた者が、新たに他眼を失明し、又は他眼の視力を減じた場合。

b 両眼の視力を減じていた者が、さらに1眼又は両眼の視力を減じ、又は失明した場合。

c 1眼の視力を減じていた者が、さらにその視力を減じ、又は失明した場合。

(ロ) 加重の場合の障害補償の額は、労災則第14条第5項により算定することとするが、1眼に障害を存する者が、新たに他眼に障害を生じた場合において、労災則第14条第5項により算定した障害補償の額(日数)が、他眼のみに新たな障害が生じたこととした場合の障害補償の額(日数)より少ないときは、その新たな障害のみが生じたものとみなして障害補償の額を算定すること。

(例 既に右眼の視力が0.1(第10級の1、給付基礎日額の302日分)に減じていた者が、新たな業務災害により左眼の視力を0.6(第13級の1、給付基礎日額の101日分)に減じた場合の現存障害は第9級の1(給付基礎日額の391日分)に該当するが、この場合の障害補償の額は第13級の1の障害のみが生じたものとみなして101日分とする。)

また、両眼に障害を存する者が、その1眼について障害の程度を加重した場合において、労災則第14条第5項により算定した障害補償の額(日数)が、その1眼に新たな障害のみが生じたこととした場合の障害補償の額(日数)より少ないときは、その新たな障害のみが生じたものとみなして障害補償の額を算定すること。

2 耳(内耳等及び耳介)

(1) 耳の障害と障害等級

イ 耳の障害については、障害等級表において、次のごとく聴力障害と耳介の欠損障害について等級を定めている。

(イ) 聴力障害

a 両耳の障害

両耳の聴力を全く失ったもの 第4級の3

両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 第6級の3

1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 第6級の3の2

両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの 第7級の2

1耳の聴力を全く失い他耳の聴力が1メートル以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの 第7級の2の2

両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 第9級の6の2

1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 第9級の6の3

両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 第10級の3の2

両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 第11級の3の3

b 1耳の障害

1耳の聴力を全く失ったもの 第9級の7

1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 第10級の4

1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 第11級の4

1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 第14級の2の2

(ロ) 耳介の欠損障害

1耳の耳かく(耳介)の大部分を欠損したもの 第12級の4

ロ 障害等級表に掲げていない耳の障害については、労災則第14第第4項により、その障害の程度に応じて、障害等級表に掲げている他の障害に準じて等級を認定すること。

(2) 障害等級認定の基準

イ 聴力障害

(イ) 聴力障害に係る等級は、純音による聴力損失値(以下「純音聴力損失値」という。)の測定結果及び語音による聴力検査結果(以下「明瞭度」という。)を基礎として、次により認定すること。

a 両耳の障害

(a) 「両耳の聴力を全く失ったもの」とは、両耳の平均純音聴力損失値が80dB以上のもの又は両耳の平均純音聴力損失値が70dB以上であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のものをいう。

(b) 「両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの」とは、両耳の平均純音聴力損失値が70dB以上のもの又は両耳の平均純音聴力損失値が40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のものをいう。

(c) 「1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」とは、1耳の平均純音聴力損失値が80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力損失値が60dB以上のものをいう。

(d) 「両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」とは、両耳の平均純音聴力損失値が60dB以上のもの又は両耳の平均純音聴力損失値が40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のものをいう。

(e) 「1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」とは、1耳の平均純音聴力損失値が80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力損失値が50dB以上のものをいう。

(f) 「両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」とは、両耳の平均純音聴力損失値が50dB以上のもの又は両耳の平均純音聴力損失値が40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のものをいう。

(g) 「1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの」とは、1耳の平均純音聴力損失値が70dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力損失値が40dB以上のものをいう。

(h) 「両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの」とは、両耳の平均純音聴力損失値が40dB以上のもの又は両耳の平均純音聴力損失値が30dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のものをいう。

(i) 「両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」とは、両耳の平均純音聴力損失値が30dB以上のものをいう。

b 1耳の障害

(a) 「1耳の聴力を全く失ったもの」とは、1耳の平均純音聴力損失値が80dB以上のものをいう。

(b) 「1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの」とは、1耳の平均純音聴力損失値が70dB以上のものをいう。

(c) 「1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの」とは、1耳の平均純音聴力損失値が60dB以上のもの又は1耳の平均純音聴力損失値が40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のものをいう。

(d) 「1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」とは、1耳の平均純音聴力損失値が30dB以上のものをいう。

(ロ) 両耳の聴力障害については、障害等級表に掲げている両耳の聴力障害の該当する等級により認定することとし、1耳ごとの等級により併合の方法を用いて準用等級を定める取扱いは行わないこと。

(ハ) 職業性難聴については、強烈な騒音を発する場所における業務に従事している限り、その症状は漸次進行する傾向が認められるので、等級の認定は、当該労働者が強烈な騒音を発する場所における業務を離れたときに行うこと。

(ニ) 職業性難聴の場合の聴力検査は、90ホン以上の騒音にさらされた日後7日間は行わないこと。

また、聴力検査前90日の間に90ホン以上の騒音にさらされたことのないものについては、当該聴力検査値を基礎として等級を認定すること。

なお、聴力検査前8日ないし90日の間に90ホン以上の騒音にさらされたことのあるものについては、検査日後さらに7日間ごとの間隔をおいて聴力検査を重ね、その聴力検査に有意差のないことを確認のうえ、当該確認時の聴力検査値を基礎として等級を認定すること。

(ホ) 急性的に生ずる災害性難聴については、急性音響性聴器障害として職業性難聴と区別して取り扱うこと。

なお、一般の音響性難聴(災害性難聴)については、療養効果が十分期待できることから、等級認定のための聴力検査は、療養終了後30日ごとの間隔をおいて検査を重ね、その聴力検査に有意差のないことを確認のうえ、当該確認時の聴力検査値を基礎として等級を認定すること。

(ヘ) 障害等級認定のための聴力検査は、別紙1「標準聴力検査法」(日本オージオロジー学会制定)により行い(語音聴力検査については57式による)日を変えて3回測定し、2回目及び3回目の測定値の平均値をとること。

(ト) 平均純音聴力損失値は、周波数が500ヘルツ、1000ヘルツ、2000ヘルツ及び4000ヘルツの音に対する聴力損失を測定し、次式により求めること。

A+2B+2C+D/6

(注

A:周波数500ヘルツの音に対する純音聴力損失値

B:周波数1000ヘルツの音に対する純音聴力損失値

C:周波数2000ヘルツの音に対する純音聴力損失値

D:周波数4000ヘルツの音に対する純音聴力損失値)

ロ 耳介の欠損障害

(イ) 「耳介の大部分の欠損」とは、耳介の軟骨部の1/2以上を欠損したものをいう。

(ロ) 耳介の大部分を欠損したものについては、耳介の欠損障害としてとらえた場合の等級と外ぼうの醜状障害としてとらえた場合の等級のうち、いずれか上位の等級に認定すること。

(例 女子について、「耳介の大部分の欠損」は第12級の4に該当するが、一方、醜状障害としては第7級の12に該当するので、この場合は、外ぼうの醜状障害として第7級の12に認定する。)

(ハ) 耳介軟骨部の1/2以上には達しない欠損であっても、これが、「外ぼうの単なる醜状」の程度に達する場合は、男子については第14級の10、女子については第12級の14とすること。

(3) 併合、準用、加重

イ 併合

(イ) 障害等級表では、耳介の欠損障害について、1耳のみの等級を定めているので、両耳の耳介を欠損した場合には、1耳ごとに等級を定め、これを併合して認定すること。

なお、耳介の欠損を醜状障害としてとらえる場合は、上記の取扱いは行わないこと。

(ロ) 耳介の欠損障害と聴力障害が存する場合は、それぞれの該当する等級の併合して認定すること。

ロ 準用

(イ) 鼓膜の外傷性穿孔及びそれによる耳漏は、手術的処置により治ゆを図り、そののちに聴力障害が残れば、その障害の程度に応じて等級を認定することとなるが、この場合、聴力障害が障害等級に該当しない程度のものであっても、常時耳漏があるものは第12級を、その他のものについては、第14級を準用すること。また、外傷による外耳道の高度の狭さくで耳漏を伴わないものについては、第14級を準用すること。

(ロ) 難聴を伴い著しい耳鳴が常時あることが他覚的検査により立証可能であるものについては第12級を、また、難聴を伴い常時耳鳴があるものについては第14級を準用すること。

(ハ) 内耳の損傷による平衡機能障害については、神経系統の機能の障害の一部として評価できるので、神経系統の機能の障害について定められている認定基準に準じて等級を認定すること。

(ニ) 内耳の機能障害のため、平衡機能障害のみでなく、聴力障害も現存する場合には、併合の方法を用いて準用等級を定めること。

ハ 加重

(イ) 耳については、両耳を同一部位としているので、1耳に聴力障害が存する者が、新たに他耳に聴力障害を存した場合には、加重として取り扱うこと。

(例 1耳の聴力を全く失っていた者が、新たに他耳の聴力を全く失った場合の障害補償の額は、両耳の聴力障害に該当する障害補償の額(第4級の3、給付基礎日額の213日分の年金)から既存の1耳の聴力障害に該当する障害補償の額(第9級の7、給付基礎日額の391日分)の1/25の額を差し引いた額となる。)

(ロ) ただし、既に両耳の聴力を減じていた者が、1耳について障害の程度を加重した場合に、労災則第14条第5項により算定した障害補償の額(日数)が、その1耳に新たな障害のみが生じたこととした場合の障害補償の額(日数)より少ないときは、その1耳に新たな障害のみが生じたものとみなして障害補償の額を算定すること。

(例 既に両耳の聴力損失が40dB(第10級の3の2)である者の1耳の聴力損失が60dBとなった場合の障害補償の額は、第11級の4(1耳の聴力損失が60dB以上)の障害補償の額から第14級の2の2(1耳の聴力損失が30dB以上)の障害補償の額を差し引いた額となる。)

3 鼻

(1) 鼻の障害と障害等級

イ 鼻の障害については、障害等級表上

鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの 第9級の5のみを定めている。

ロ 鼻の欠損を伴わない機能障害については、労災則第14条第4項により、その障害の程度に応じて、障害等級表に掲げている他の障害に準じて等級を認定すること。

(2) 障害等級認定の基準

イ 「鼻の欠損」とは、鼻軟骨部の全部又は大部分の欠損をいう。

また、「機能に著しい障害を残すもの」とは、鼻呼吸困難又は嗅覚脱失をいう。

ロ 鼻の欠損が、鼻軟骨部の全部又は大部分に達しないものであっても、これが単なる「外ぼうの醜状」の程度に達するものである場合は、男子にあっては第14級の10、女子にあっては第12級の14とすること。

ハ 鼻の欠損は、一方では「外ぼうの醜状」としてもとらえうるが、耳介の欠損の場合と同様、それぞれの等級を併合することなく、いずれか上位の等級によること。

(例 女子が鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残す場合は、鼻の障害としては第9級の5に該当するが、一方、外ぼうの醜状障害として第7級の12に該当するので、この場合は、第7級の12とする。)

ニ 鼻の欠損を外ぼうの醜状障害としてとらえる場合であって、鼻以外の顔面にも瘢痕等を存する場合にあっては、鼻の欠損と顔面の瘢痕等を併せて、その程度により、単なる「醜状」か「著しい醜状」かを判断すること。

(3) 準用

イ 鼻の機能障害のみを残すものについては、障害等級表上特に定めていないので、その機能障害の程度に応じて、次により準用等級を定めること。

(イ) 嗅覚脱失又は鼻呼吸困難については、第12級の12を準用すること。

(ロ) 嗅覚の減退については、第14級の9を準用すること。

4 口

(1) 口の障害と障害等級

イ 口の障害については、障害等級表上、次のごとく、そしゃく及び言語機能障害並びに歯牙障害について等級を定めている。

(イ) そしゃく及び言語機能障害

そしゃく及び言語の機能を廃したもの 第1級の2

そしゃく又は言語の機能を廃したもの 第3級の2

そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの 第4級の2

そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの 第6級の2

そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの 第9級の6

そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの 第10級の2

(ロ) 歯牙障害

14歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 第10級の3

10歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 第11級の3の2

7歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 第12級の3

5歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 第13級の3の2

3歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 第14級の2

ロ 嚥下障害、味覚脱失等障害等級表に掲げていない口の障害については、労災則第14条第4項により、その障害の程度に応じて、障害等級表に掲げている他の障害に準じて等級を認定すること。

(2) 障害等級認定の基準

イ そしゃく及び言語機能障害

(イ) そしゃく機能の障害は、上下咬合及び排列状態並びに下顎の開閉運動等により、総合的に判断すること。

(ロ) 「そしゃく機能を廃したもの」とは、流動食以外は摂取できないものをいう。

(ハ) 「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」とは、粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないものをいう。

(ニ) 「そしゃく機能に障害を残すもの」とは、ある程度固形食は摂取できるが、これに制限があって、そしゃくが十分でないものをいう。

(ホ) 「言語の機能を廃したもの」とは、4種の語音(口唇音、歯舌音、口蓋音、喉頭音)のうち、3種以上の発音不能のものをいう。

(ヘ) 「言語の機能に著しい障害を残すもの」とは、4種の語音のうち2種の発音不能のもの又は綴音機能に障害があるため、言語のみを用いては意思を疎通することができないものをいう。

(ト) 「言語の機能に障害を残すもの」とは、4種の語音のうち、1種の発音不能のものをいう。

(注 語音は、口腔等附属管の形の変化によって形成されるが、この語音を形成するために、口腔等附属管の形を変えることを構音という。

また、語音が一定の順序に連絡され、それに特殊の意味が付けられて言語ができあがるのであるが、これを綴音という。言語は普通に声を伴うが(有声言語)、声を伴わずに呼息音のみを用いてものをいうこともできる(無声言語)。

語音は、母音と子音とに区別される。この区別は、母音は声の音であって、単独に持続して発せられるもの、子音は、母音とあわせて初めて発せられるものであるという点にある。しかし、子音のうちには半母音のごとく母音と区別できないものがある。

子音を構音部位に分類すると、次の4種類となる。

1 口唇音(ま行音、ば行音、ぱ行音、わ行音、ふ)

2 歯舌音(な行音、た行音、だ行音、ら行音、さ行音、しゅ、し、ざ行音、じゅ)

3 口蓋音(か行音、が行音、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん)

4 喉頭音(は行音))

ロ 歯牙障害

「歯科補てつを加えたもの」とは、現実にそう失又は著しく欠損した歯牙に対する補てつをいう。したがって、有床義歯又は架橋義歯等を補てつした場合における支台冠又は鈎の装着歯やポスト・インレーを行うに留まった歯牙は、補てつ歯数に算入せず、また、そう失した歯牙が大きいか又は歯間に隙間があったため、そう失した歯数と義歯の歯数が異なる場合は、そう失した歯数により等級を認定すること。

(例 3歯のそう失に対して、4本の義歯を補てつした場合は、3歯の補てつとして取り扱う。)

(3) 併合、準用、加重

イ 併合

そしゃく又は言語機能障害と歯牙障害が存する場合であって、そしゃく又は言語機能障害が歯牙障害以外の原因(たとえば、顎骨骨折や下顎関節の開閉運動制限等による不正咬合)にもとづく場合は、労災則第14条第2項及び第3項により併合して等級を認定すること。

ただし、歯科補てつを行った後に、なお、歯牙損傷にもとづくそしゃく又は言語機能障害が残った場合は、各障害に係る等級のうち、上位の等級をもって認定すること。

ロ 準用

(イ) 食道の狭さく、舌の異常、咽喉支配神経の麻痺等によって生ずる嚥下障害については、その障害の程度に応じて、そしゃく機能障害に係る等級を準用すること。

(ロ) 味覚脱失については、次により取り扱うこと。

a 頭部外傷その他顎周囲組織の損傷及び舌の損傷によって生じた味覚脱失については、第12級を準用すること。

b 味覚障害は、テスト・ペーパー及び諸種薬物による検査結果がすべて無反応であるもののみを味覚脱失として取り扱い、その程度に達しないものは、障害補償の対象としないこと。

c 味覚障害については、その症状が時日の経過により漸次回復する場合が多いので、原則として療養を終了してから6カ月を経過したのちに等級を認定すること。

(ハ) 障害等級表上組合せのないそしゃく及び言語機能障害については、各障害の該当する等級により併合の方法を用いて準用等級を定めること。

(例

1 そしゃく機能の著しい障害(第6級の2)と言語機能の障害(第10級の2)が存する場合は、第5級とする。

2 そしゃく機能の用を廃し(第3級の2)、言語機能の著しい障害(第6級の2)が存する場合は、併合すると第1級となるが、序列を乱すこととなるので、第2級とする。)

(ニ) 声帯麻痺による著しいかすれ声については、第12級を準用すること。

ハ 加重

何歯かについて歯科補てつを加えていた者が、さらに歯科補てつを加えた結果、上位等級に該当するに至ったときは、加重として取り扱うこと。

5 神経系統の機能又は精神

(1) 神経系統の機能又は精神の障害と障害等級

イ 神経系統の機能又は精神の障害については、障害等級表上、次のごとく、神経系統の機能又は精神の障害並びに局部の神経系統の障害について等級を定めている。

(イ) 神経系統又は精神の障害

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 第1級の3

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 第3級の3

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 第5級の1の2

神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 第7級の3

神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 第9級の7の2

(ロ) 局部の神経系統の障害

局部にがん固な神経症状を残すもの 第12級の12

局部に神経症状を残すもの 第14級の9

ロ 神経系統の機能又は精神の障害については、原則として、脳、せき髄、末梢神経系にわけてそれぞれの等級により併合の方法を用いて準用等級を定めること。

ただし、脳、せき髄及び末梢神経系にわけることが困難な場合にあっては、総合的に認定すること。

ハ 器質的又は機能的障害を残し、かつ、局部に第12級又は第14級程度の疼痛などの神経症状を伴う場合は、これを個々の障害としてとらえることなく、器質的又は機能的障害と神経症状のうち、上位の等級により認定すること。

(2) 障害等級認定の基準

神経系統の機能又は精神の障害については、その障害により、第1級は「自用を弁ずることができないもの」、第3級は「多少自用を弁ずることができる程度のもの」、第5級は「自用を弁ずることができるが、労働能力に著しい支障が生じ、終身極めて軽易な労務にしか服することができないもの」、第7級は「一応労働することはできるが、労働能力に支障が生じ、軽易な労務にしか服することができないもの」、第9級は「通常の労働を行うことはできるが、就労可能な職種が相当程度に制約されるもの」、第12級は「他覚的に神経系統の障害が証明されるもの」及び第14級は第12級よりも軽度のものが該当するものであること。

イ 中枢神経系(脳)の障害

(イ) 「重度の神経系統の機能又は精神の障害のために、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」は、第1級の3に該当する。

脳損傷にもとづく高度の片麻痺と失語症との合併、脳幹損傷にもとづく用廃に準ずる程度の四肢麻痺と構音障害との合併など日常全く自用を弁ずることができないもの、又は高度の痴ほうや情意の荒廃のような精神症状のため常時監視を必要とするものが、これに該当する。

(ロ) 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高度の神経系統の機能又は精神の障害のために終身にわたりおよそ労務につくことができないもの」は、第3級の3に該当する。

四肢の麻痺、感覚異常、錐体外路症状及び失語等のいわゆる大脳巣症状、人格変化(感情鈍麻及び意欲減退等)又は記憶障害などの高度なものが、これに該当する。

(例 麻痺の症状が軽度で、身体的には、能力が維持されていても精神の障害のために他人が常時付き添って指示を与えなければ、全く労務の遂行ができないような人格変化が認められる場合は、第3級の3とする。)

(ハ) 「神経系統の機能又は精神の著しい障害のため、終身にわたりきわめて軽易な労務のほか服することができないもの」は、第5級の1の2に該当する。

神経系統の機能の障害による身体的能力の低下又は精神機能の低下などのため、独力では一般平均人の1/4程度の労働能力しか残されていない場合が、これに該当する。

(例 他人のひんぱんな指示がなくては労務の遂行ができない場合、又は、労務遂行の功緻性や持続力において平均人より著しく劣る場合等はこれに含まれる。)

(ニ) 「中等度の神経系統の機能又は精神の障害のために、精神身体的な労働能力が一般平均人以下に明らかに低下しているもの」は、第7級の3に該当する。

なお、「労働能力が一般平均人以下に明らかに低下しているもの」とは、独力では一般平均人の1/2程度に労働能力が低下していると認められる場合をいい、労働能力の判定にあたっては、医学的他覚所見を基礎とし、さらに労務遂行の持続力についても十分に配慮して総合的に判断すること。

(ホ) 「一般的労働能力は残存しているが、神経系統の機能又は精神の障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2に該当する。

身体的能力は正常であっても、脳損傷にもとづく精神的欠損症状が推定される場合、てんかん発作やめまい発作発現の可能性が、医学的他覚所見により証明できる場合あるいは軽度の四肢の単麻痺が認められる場合など(たとえば、高所作業や自動車運転が危険であると認められる場合)が、これに該当する。

(ヘ) 「労働には通常差し支えないが、医学的に証明しうる神経系統の機能又は精神の障害を残すもの」は、第12級の12に該当する。

中枢神経系の障害であって、たとえば、感覚障害、錐体路症状及び錐体外路症状を伴わない軽度の麻痺、気脳撮影により証明される軽度の脳萎縮、脳波の軽度の異常所見等を残しているものが、これに該当する。

なお、自覚症状が軽い場合にあっても、これらの異常所見が認められるものは、これに該当する。

(ト) 「労働には通常差し支えないが、医学的に可能な神経系統又は精神の障害に係る所見があると認められるもの」は、第14級の9に該当する。

医学的に証明しうる精神神経学的症状は明らかでないが、頭痛、めまい、疲労感などの自覚症状が単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるものが、これに該当する。

(注

1 中枢神経系(脳)の負傷又は疾病による障害については、その多岐にわたる臨床症状のうえから、精神障害と神経系統の障害を区別して考えることは医学上からも不自然であり、実際にも細目を定めることが困難であるので、原則として、それらの諸症状を総合し、全体病像から判断して障害等級を認定すべきである。したがって、たとえば精神障害が第5級に相当し、片麻痺が第7級に相当するから、併合の方法を用いて準用等級を第3級と定めるのではなく、その場合の全体病像として、第1級に該当するか第3級に該当するかを認定しなければならない。

なお、その認定にあたっては、精神神経科、脳神経外科、神経内科、眼科、耳鼻咽喉科等の専門医の診断が必要であり、これらの総合知見を要する場合が多い。

2 第1級にいう「常に他人の介護を要するもの」とは、家族を含め、いわゆる第三者の介護、監視を要する場合をいい、医師又は看護婦の介護、監視の意味ではない。医師や看護婦の医療介護を中止すれば、生命の維持が危ぶまれるごとき重症者に対しては、「治ゆ」の状態に至ったとは判断すべきではない。(以下、第1級について同様である。))

ロ せき髄の障害

外傷、減圧症又はその他の疾病などによるせき髄の障害は、複雑な諸症状を呈する場合が多いので、原則として、中枢神経系(脳)の場合と同様に、これらの諸症状を総合評価して、その労働能力に及ぼす影響の程度により、次の6段階に区分して等級を認定すること。

(イ) 「生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」は、第1級の3に該当する。

(ロ) 「生命維持に必要な身のまわりの処理の動作は可能であるが、終身にわたりおよそ労働に服することはできないもの」は、第3級の3に該当する。

(ハ) 「麻痺その他の著しいせき髄症状のため、独力では一般平均人の1/4程度の労働能力しか残されていないもの」は、第5級の1の2に該当する。

(ニ) 明らかなせき髄症状のため、独力では一般平均人の1/2程度の労働能力しか残されていないもの」は、第7級の3に該当する。

(ホ) 「一般的労働能力はあるが、明らかなせき髄症状が残存し、就労の可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2に該当する。

(ヘ) 「労働には通常差し支えないが、医学的に証明しうるせき髄症状を残すもの」は、第12級の12に該当する。

(注 強い外力がせき柱に作用した場合(胸・腰椎移行部の損傷が一番多く、頸部がこれに次ぎ、上部胸椎部、下部腰椎部の損傷が少い。)、せき柱管内に包蔵されたせき髄が損傷を受けることがあり、これを外傷性せき髄損傷という。この場合には、せき椎の圧迫骨折や脱臼骨折を伴うことが多いが、骨に明らかな損傷がない場合にもせき髄の損傷はおこりうる。また、まれにはせき椎の骨折や脱臼があってもせき髄が全く損傷をうけないこともある。

せき髄損傷の程度により、四肢等の運動障害、感覚障害、腸管機能障害、尿路機能障害又は生殖器機能障害等が発現するが、それらは必ずしもすべてが非可逆的ではなく、せき髄に作用した外力の程度によっては、自然経過として、又は治療によって程度の差はあるが、ある程度の回復は期待できることがある。しかし、重篤な場合は、せき髄が解剖学的に完全に切断される場合もある。

せき髄が損傷されると、その臨床症状は、損傷の生じた部位によって異なり、四肢麻痺あるいは対麻痺(下半身麻痺)となるが、たとえば、胸椎下部から下の損傷には、しばしば下肢が完全に麻痺したり、あるいは多少運動ができても感覚が鈍麻することは、一般によく知られている。前者を完全麻痺又は横断麻痺、後者を不完全麻痺という。また、四肢の麻痺の型には、弛緩性麻痺と痙性麻痺とがある。前者は俗にいう麻痺肢のブラブラになった状態のものをさし、せき髄前角細胞以下の末梢神経(第2ニューロン以下)の損傷によって生じ、後者は四肢筋肉の緊張が異常に亢進し、かつ錐体路障害を示す病的反射を証明するものである。せき髄は、どの高さの部分で損傷を受けたかによって、発現する運動、感覚麻痺の範囲が定まるので、逆にその症状によって損傷の部位を診断することができる。

さらに、せき髄損傷は、せき髄の全断面にわたって生じた場合と、いずれか半側又は一部に生じた場合とによって、その症状が異なる。前者の場合は、障害部位から下方の感覚脱失又は感覚鈍麻が、運動麻痺とほぼ同じ範囲に生ずる。せき髄損傷による感覚過敏は、いわゆる完全横断損傷の場合にも生じ、時に後根刺激状態としての感覚過敏帯を証明することもある。馬尾神経がある部位の損傷(腰仙椎)では、筋の反射消失を伴う弛緩性麻痺が生じ、筋肉の萎縮、腰髄・仙髄に当る後根の感覚脱失をみる。

また、せき髄が完全又はこれに近い程度に損傷された場合には、上述の障害のほかに、腸管機能障害(腸の蠕動が障害されるために内容物が停帯し、便泌を呈し、その甚だしいものは腸閉塞様となる。)

尿路機能障害(尿失禁の状態となり、これは重い化膿性炎症の原因を作り、上行性に尿路炎、腎盂炎をひきおこす場合もある。)を生じ、さらに、生殖器機能障害をも伴う。

減圧症にあっては、その神経系統の障害は脳とせき髄にわたり多発性病巣を生ずるものであるので、症状は甚だ多彩であり、障害等級認定にあたっては、その症状の分析を基礎とした総合的判断が特に必要とされる。)

ハ 根性及び末梢神経麻痺

根性及び末梢神経麻痺に係る等級の認定は、原則として、損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級を準用すること。

ニ その他特徴的な障害

(イ) 外傷性てんかん

a てんかんの治ゆの時期は、療養効果が期待できないと認められるとき又は療養により症状が安定したときとすること。

b 外傷性てんかんに係る等級の認定は発作型のいかんにかかわらず、発作回数、発作の労働能力に及ぼす影響の程度、非発作時の精神症状等を総合的に判断し、中枢神経系(脳)の障害の認定の基準に従い、次によること。

(a) 「十分な治療にかかわらず、頻回の発作又は高度な精神の障害のため、終身労務に服することができないもの」は、第3級の3に該当する。

(b) 「十分な治療にかかわらず、発作の頻度又は発作型の特徴などのため一般平均人の1/4程度の労働能力しか残されていないもの」は、第5級の1の2に該当する。

なお、てんかんの特殊性からみて、就労可能な職種が極度に制限されるものは、これに該当する。

(c) 「十分な治療にかかわらず、1カ月に1回以上の意識障害を伴う発作があるか、又は発作型の特徴などのため一般平均人の1/2程度の労働能力しか残されていないもの」は、第7級の3に該当する。

なお、てんかんの特殊性からみて、就労可能な職種が著しく制限されるものは、これに該当する。

(d) 「服薬を継続する限りにおいては、数カ月に1回程度又は完全に発作を抑制しうる場合、もしくは発作の発現はないが、脳波上明らかにてんかん性棘波を認めるもの」は、第9級の7の2に該当する。

通常の労働は可能であるが、その就労する職種が相当な程度に制限を受ける場合は、これに該当する。

(注 てんかんは、反復するてんかん発作を主症状とする慢性の脳障害であり、そのてんかん発作とは、大脳のある部位の神経細胞が発作性に異常に過剰な活動を起こし、これがある程度広範な領域の神経細胞をまきこんで、一斉に興奮状態に入った場合に生ずる運動感覚、自律神経系又は精神などの機能の一過性の異常状態のことである。したがって、てんかんの原因は、神経細胞の生来の性質のほか、脳の器質性疾病や外傷など多岐にわたり、また発作発現の誘因としては、さらに多くの身体的条件が関与するものである。

ここに「外傷性てんかん」の項を設けたが、これは、業務に起因するてんかんのうちの代表例として挙げたものであって、脳を侵かす各種中毒症によってもてんかんが発症することがある。

頭部外傷とてんかんの因果関係の認定については、困難な場合が多いが、明らかな頭部外傷後2ないし3カ月以後にてんかん発作が初発し、遺伝的素因や乳幼児期の痙攣発作の既往が否定される場合には、たとえ純粋の外傷性てんかんでなくとも、頭部外傷が、てんかん症状の発現に相当の因果関係をもったものと認めざるを得ないことがある。

てんかんの分類は、現在なお国際的にも定まっていないが、ここで通常みられる発作型を挙げると、大発作、焦点発作(焦点性運動発作、ジヤクソン型発作及び焦点性感覚発作が含まれる。)及び精神運動発作などがある。

同一人が、2つ以上の発作をもつことは、しばしばあり、また、経過中に変化していくものもある。これらの発作の反復によって、脳がさらに2次的に障害を生ずることもある。

発作型、適正な治療方法又は2次的な脳損傷の程度などについての正しい判定には、てんかん発作、脳波、神経学的及び精神医学的所見などの総合による専門の医師の診断が必要である。

前記のようなてんかん発作は、あくまでも一過性の精神神経系統の異常状態であるから、非発作時には正常な精神神経系統の機能を維持している場合が少なくない。したがって、てんかんの労働に対する直接の影響は、てんかん発作によってそれがどのような形で中断されるかという点にあり、その際の危険度に応じ、また、発作の頻度に応じて全般的な労働への制限が考えられ、障害等級の認定にあたってはその点に留意して非発作時のみならず、発作に対応する職種の制限をみて行わねばならない。

さらに、発作とともに重視すべきものとしては、てんかん発作の反復によって、性格の変化その他の精神障害が進行する場合があることで、その高度のものは痴ほうあるいは人格崩壊にいたり、てんかん性精神病というべき状態となることである。

てんかんの治療は、薬物療法が基本となるものであって、手術的療法(発作焦点となっている脳の部分切除等)を行った場合でも薬物療法は引き続き長期間にわたり行わなくてはならないことが多い。そして、薬物の継続服用によって、てんかん発作を完全に抑制することが治療の目標である。発作が完全に抑制された場合はもちろんであるが、ある程度の発作があっても症状が安定してきた場合には、なるべく早く社会復帰を指導することが望ましい。

なお、この項に、第1級の障害を入れていないのは、てんかんのため常時介護を要する程度の症状であれば、当然療養の対象となるものであることによる。また、十分な治療にもかかわらず、頻回の発作のため、終身労務に服することができないと認められるもののうちには療養を必要とするものも少くないので留意する必要がある。)

(ロ) 頭痛

a 「一般的な労働能力は残存しているが激しい頭痛により、時には労働に従事することができなくなる場合があるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2に該当する。

b 「労働には通常差し支えないが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛がおこるもの」は、第12級の12に該当する。

c 「労働には差し支えないが、頭痛が頻回に発現しやすくなったもの」は、第14級の9に該当する。

(注 頭痛あるいは頭重感の発現機序は多様であり、それら頭痛型の診断については困難な場合も少くないが、頭部外傷後又は各種中毒症等の後に障害として残存する主な型としては、次のようなものがある。

1 頭部の挫傷、創傷の加わった部位より生ずる疼痛

2 血管性頭痛(動脈の発作性拡張によって生ずるもので片頭痛というのはこの型の1つである。)

3 筋攣縮性頭痛(頸部、頭部の筋より疼痛が発生するもの)

4 頸性頭痛(後頸部交感神経症候群)

5 大後頭神経痛など上位頸神経の神経痛または三叉神経痛(後頭部から顔面や眼にかけての疼痛)

6 心因性頭重

(ハ) 失調、めまい及び平衡機能障害

a 「生命の維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高度の失調又は平衡機能障害のために終身にわたりおよそ労務に就くことができないもの」は、第3級の3に該当する。

b 「著しい失調又は平衡機能障害のために、労働能力がきわめて低下し一般平均人の1/4程度しか残されていないもの」は、第5級の1の2に該当する。

c 「中等度の失調又は平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の1/2以下程度に明らかに低下しているもの」は、第7級の3に該当する。

d 「一般的な労働能力は残存しているが、めまいの自覚症状が強く、かつ、他覚的に眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められるもの」は、第9級の7の2に該当する。

e 「労働には通常差し支えないが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの」は、第12級の12に該当する。

f 「めまいの自覚症状はあるが、他覚的には眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないもので単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるもの」は、第14級の9に該当する。

(注 頭部外傷後又は中枢神経系(脳及びせき髄)の疾病に起因する失調、めまい及び平衡機能障害は、内耳障害によるのみならず、小脳、脳幹部、前頭葉又はせき髄など中枢神経系の障害によって発現する場合が多いものである。また、頸性頭痛症候群のなかに含めてよい頸部自律神経障害によるめまいも少くない。

これらの症状は、その原因となる障害部位によって分けることが困難であるので、総合的に認定基準に従って障害等級を認定すべきである。)

(ニ) 疼痛等感覚異常

a 脳神経及びせき髄神経の外傷その他の原因による神経痛については、疼痛発作の頻度、疼痛の強度と持続時間及び疼痛の原因となる他覚的所見などにより、疼痛の労働能力に及ぼす影響を判断して次のごとく等級の認定を行うこと。

(a) 「軽易な労働以外の労働に常に差し支える程度の疼痛があるもの」は、第7級の3に該当する。

(b) 「一般的な労働能力は残存しているが、疼痛により時には労働に従事することができなくなるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2に該当する。

(c) 「労働には通常差し支えないが、時には労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの」は、第12級の12に該当する。

b カウザルギーについては、aと同様の基準により、それぞれ第7級の3、第9級の7の2、第12級の12に認定すること。

c 受傷部位の疼痛については、次により等級を認定すること。

(a) 「労働には通常差し支えないが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支える場合があるもの」は、第12級の12に該当する。

(b) 「労働には差し支えないが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの」は、第14級の9に該当する。

なお、神経損傷により、疼痛のほかに異常感覚(蟻走感、感覚脱失等)が発現した場合は、その範囲が広いものに限り、第14級の9に認定すること。

(注 外傷が治ゆするまでの経過中に、疼痛の性質、強さなどについて病的な状態を呈することがある。この外傷後疼痛のうち特殊な型としては、四肢又はその他の神経の不完全損傷によって生ずる灼熱痛(カウザルギー)があり、これは、血管運動性症状、発汗の異常、軟部組織の栄養状態の異常、骨の変化(ズデック萎縮)などを伴う強度の疼痛である。

また、これに類似して、神経幹の損傷がなくても、外傷部位に、同様の、しかし軽度な疼痛がおこることがある(小さなカウザルギーともいわれる。)。

このような疼痛は、医学的に異常な疼痛の原因が説明されうるものであるから、消退することなく残存した場合は障害補償の対象となる。

なお、障害等級認定時において、外傷後生じた疼痛が自然的経過によって消退すると認められるものは、障害補償の対象とはならない。)

(ホ) 外傷性神経症(災害神経症)

外傷又は精神的外傷ともいうべき災害に起因するいわゆる心因反応であって、精神医学的治療をもってしても治ゆしなかったものについては、第14級の9に認定すること。

(注 外傷性神経症(外傷を契機として発生した器質的変化を証明することができない心因反応をいう。)は、頭部外傷に限らずあらゆる外傷に伴って起こることがある。しかし、外傷のうちでも、頭部外傷とせき椎外傷は、古くから神経症としばしば結びつけられてきた。それは頭部外傷やせき椎外傷が、とくに神経症と密接な関係にあるのではなく、頭痛、腰痛等を主体とした難治の後遺症状が残りやすく、それが客観的所見に乏しく、しかも治療効果をあげにくいことから、外傷性神経症として取り扱われていたものである。

しかし、近年、頭部外傷による脳の器質性症状が厳密に検査され、頭部外傷後遺症などの病因や病像がかなり明確に理解されるようになってきた。いわゆる外傷性神経症における種々の症状は、外傷に起因して条件的に発展した症状であるから、脳その他の器質性障害の有無には直接の関連性はない。また、当然素因の役割も考えられる。したがって、その症状を神経症として診断するためには、それが脳損傷その他の障害による症状としては、医学的に解釈できないということと、一方では、積極的に心因反応の症状とみなすことができるという両者の根拠がなければならない。いずれもその判別は困難であり、精神神経科などの専門の医師の診断を必要とする場合が多い。

外傷性神経症の一般的な鑑別点としては、かなり典型的な頭部外傷後遺症などの自覚症状群と異なり、ある一つの症状が極端に強く誇張して訴えられ、他の症状がこれに伴っていないこと、感覚、運動障害などが、神経学的検査で説明不可能なこと、また、症状の変化や消失の状態も合理性をもたないことなどが挙げられる。)

(3) 併合、準用

イ 併合

せき柱の骨折のため、せき柱の変形又は運動障害を残すとともにせき髄損傷により、たとえば、1下肢の完全麻痺のように他の部位に機能的障害を残した場合は、これらを併合して等級を認定すること。

ロ 準用

(イ) 中枢神経系の脱落症状として、四肢、感覚器等に機能障害を生じた場合であって、当該障害について、障害等級表上、該当する等級がある場合には、その等級を中枢神経系の障害の準用等級として定めること。

(例 1側の後頭葉視覚中枢の損傷によって、両眼の反対側の視野欠損を生ずるが、この場合は、視野障害の等級として定められている第9級の3を準用する。)

ただし、言語中枢の損傷にもとづく失語症については、通常は他の神経系統の機能又は精神の障害を伴うので、単なる言語機能の障害のみでなく、それらを総合的に判断して等級を認定すること。

(ロ) せき髄損傷により、身体各部に機能的障害を生じた場合であって、当該障害について、障害等級表上、該当する等級がある場合は、その等級をせき髄の障害の準用等級として定めること。

(例 せき髄損傷のため1下肢の完全麻痺(第5級の5)と軽度の尿路障害(第11級の9)が生じた場合は、併合の方法を用いて第4級とする。)

(ハ) 神経麻痺が、他覚的に証明される場合であって、障害等級表上、当該部位の機能的障害に係る等級がない場合は、第12級を準用すること。

6 頭部、顔面、頸部(上肢及び下肢の醜状を含む。)

(1) 醜状障害と障害等級

イ 醜状障害については、障害等級表上、次のごとく、外ぼうの醜状障害及び露出面の醜状障害について等級を定めている。

(イ) 外ぼうの醜状障害

女子の外ぼうに著しい醜状を残すもの 第7級の12

男子の外ぼうに著しい醜状を残すもの 第12級の13

女子の外ぼうに醜状を残すもの 第12級の14

男子の外ぼうに醜状を残すもの 第14級の10

(ロ) 露出面の醜状障害

上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの 第14級の3

下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの 第14級の4

ロ 外ぼう及び露出面以外の部分の醜状障害(以下「露出面以外の醜状障害」という。)については、障害等級表上定めがないので、労災則第14条第4項により、準用等級を定めること。

(2) 障害等級認定の基準

イ 外ぼうの醜状障害