添付一覧
○国民年金法等の一部を改正する法律等の施行に伴う離婚時の厚生年金の分割制度に関する実施事務の取扱いについて(通知)
(平成19年3月29日)
(庁保険発第0329008号)
(地方社会保険事務局長あて社会保険庁運営部年金保険課長通知)
(公印省略)
国民年金法等の一部を改正する法律(平成16年法律第104号)等による改正後の厚生年金保険法(昭和29年法律第115号。以下「法」という。)による離婚時の厚生年金の分割制度の情報提供に関する事務の取扱いについては、「国民年金法等の一部を改正する法律等による改正後の厚生年金保険法等の施行に伴う事務の取扱いについて(離婚時の厚生年金の分割制度関係)」(平成18年9月26日庁保険発第0926001号社会保険庁運営部年金保険課長通知)により実施されているところであるが、平成19年4月1日からの事務の取扱いについては、下記により行うこととしたので、遺漏のないよう取り扱われたい。
また、社会保険事務所(地方社会保険事務局事務所を含む。以下「社会保険事務所等」という。)における業務取扱要領等については、別途社会保険業務センターの関係部(室)長から通知することを申し添える。
なお、平成18年9月26日庁保険発第0926001号社会保険庁運営部年金保険課長通知については、平成19年3月31日をもって廃止する。
記
第1 情報提供
1 情報提供請求書の提出
(1) 情報提供請求書の提出
① 法第78条の6第1項及び第2項に規定する標準報酬の改定又は決定(以下「標準報酬の改定等」という。)の請求(以下「標準報酬改定請求」という。)を行うために必要な情報提供(以下「情報提供」という。)の請求については、「年金分割のための情報提供請求書」(別添1。以下「情報提供請求書」という。)を社会保険事務所等に提出することにより行うものであること。
② 情報提供請求の処理については、情報提供請求を行う当事者(以下「情報提供請求当事者」という。)の住所地を管轄する社会保険事務所等(以下「管轄社会保険事務所等」という。)が行うこと。当事者の双方による情報提供請求の場合で、当事者それぞれの管轄社会保険事務所等が異なるときは、当事者双方が希望する社会保険事務所等が行うものとすること。
情報提供請求書が提出された社会保険事務所等において情報提供請求当事者の住所地を管轄していない場合は、管轄社会保険事務所等へ回送すること。
(2) 情報提供請求書に添付する書類
情報提供請求を行う場合は、次の書類を添付するものであること。
① 情報提供請求当事者の年金手帳、国民年金手帳その他の基礎年金番号を明らかにすることができる書類
② 当事者間の身分関係を明らかにすることができる戸籍の謄本、当事者それぞれの戸籍の抄本、戸籍の全部事項証明書又は当事者それぞれの戸籍の個人事項証明書
③ 情報提供請求があった日において婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情(以下「事実婚関係」という。)にある情報提供請求当事者であって、事実婚関係にある間に事実婚関係にあった当事者の一方が当該当事者の他方の被扶養配偶者である第三号被保険者であった期間(事実婚関係が解消しない間に当該第三号被保険者であった期間が複数ある場合にあっては、これらの期間を通算した期間。以下「事実婚第三号被保険者期間」という。)を有するものであるときは、事実婚第三号被保険者期間の初日から情報提供請求があった日までの間引き続き事実婚関係にあることを明らかにすることができる書類
具体的には、(3)に掲げる書類を添付するものであること。
④ 事実婚関係にあった情報提供請求当事者であって、事実婚関係にあった間に事実婚第三号被保険者期間を有していたものであるときは、事実婚関係が解消した日(以下「事実婚解消日」という。)の翌日から2年が経過していないこと及び事実婚第三号被保険者期間の初日から事実婚解消日までの間引き続き事実婚関係にあったことを明らかにすることができる書類
具体的には、(3)及び(4)に掲げる書類を添付するものであること。
(3) 事実婚関係にあることを明らかにすることができる書類
(2)③又は④の事実婚関係にあること又はあったことを明らかにすることができる書類としては、次の書類を求めること。
① 住民票上同一世帯に属しているとき
a 世帯全員の住民票の写し
② 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
a 当事者双方の世帯全員の住民票の写し
b 別世帯となっていることについての理由書
③ 住民票上住所を異にしているとき
ア 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき。
a 当事者双方の世帯全員の住民票の写し
b 同居に関する申立書
c 事実婚関係についての民生委員等第三者の証明書又は別表第1に掲げる書類
d 別世帯となっていることについての理由書
イ 単身赴任、病気療養等のやむを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき。
(ア) 生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること。
(イ) 定期的に音信、訪問が行われていること。
a 当事者双方の世帯全員の住民票の写し
b 事実婚関係についての民生委員等第三者の証明書又は別表第1に掲げる書類
c 別世帯となっていることについての理由書
(4) 事実婚解消日の翌日から2年が経過していないこと等を明らかにすることができる書類
(2)④の事実婚解消日の翌日から2年を経過していないことを明らかにすることができる書類としては、事実婚解消日を明らかにする次の書類又は請求日から2年より前以降に事実婚関係にあったことを明らかにする(3)の書類を求めること。
① 住民票上同一世帯に属していることによって、事実婚関係の認定を行った場合
ア 当事者の一方が住民票上住所を異にしたとき
当事者双方の世帯全員の住民票の写し
イ 当事者の一方が住民票上世帯を異にしたとき
(ア) 当事者双方の世帯全員の住民票の写し
(イ) 事実婚関係を解消したことの申立書
② 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であること等によって、事実婚関係の認定を行った場合
ア 当事者の一方が住民票上住所を異にしたとき
当事者双方の世帯全員の住民票の写し
イ 当事者の一方が事実婚関係を否定したとき
事実婚関係を解消したことの申立書
③ 住民票上住所を異にしているが、現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められることによって、事実婚関係の認定を行った場合
ア 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められなくなったとき
別表第2に掲げる書類
イ 当事者の一方が事実婚関係を否定したとき
事実婚関係を解消したことの申立書
④ (3)③イに係る事実婚関係の認定を行った場合
ア (3)③イ(ア)(イ)の事実が解消し、又は(3)③イのやむを得ない事情が消滅したことにより、消費生活上の家計を一つにすると認められなくなったとき
別表第2に掲げる書類
イ 当事者一方が事実婚関係を否定をしたとき
事実婚関係を解消したことの申立書
2 情報提供請求書の審査
(1) 情報提供請求の期限等
情報提供請求は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、請求することができないこと。この場合、情報提供請求は却下すること。
① 標準報酬改定請求後に行われた場合
② 次に掲げる標準報酬改定請求の期限が経過している場合
ア 離婚をした日、婚姻が取り消された日又は事実婚関係が解消したと認められる日(以下「離婚等をした日」という。)の翌日から起算して2年(ただし、対象期間の末日以後に提供を受けた情報について補正を要したと認められる場合における請求期間の計算については、当該補正を要した日数は、算入しない。)
イ 離婚等をした日の翌日から起算して2年を経過した日以後に、又は離婚等をした日の翌日から起算して2年を経過した日前1月以内に、次のいずれかに該当した場合((ア)又は(イ)に掲げる場合に該当した場合にあっては、離婚等をした日の翌日から起算して2年を経過した日前に請求すべき按分割合に関する審判又は調停の申立てがあったときに限る。)において、次のいずれかに該当することとなった日の翌日から1月を経過した場合
(ア) 請求すべき按分割合を定めた審判が確定したとき
(イ) 請求すべき按分割合を定めた調停が成立したとき
(ウ) 人事訴訟法(平成15年法律第109号)第32条第1項の規定による請求すべき按分割合を定めた判決が確定したとき
(エ) 人事訴訟法第32条第1項の規定による処分の申立てに係る請求すべき按分割合を定めた和解が成立したとき
ウ 情報提供請求を却下する処分を取り消す決定が行われた場合において、情報提供があった日の翌日から、(ア)に掲げる期間から(イ)に掲げる期間を除いた期間を経過した場合(この場合において、イの規定の適用については、イの「離婚等をした日」とあるのは「情報提供があった日」と、「2年」とあるのは「ウ(ア)に掲げる期間からウ(イ)に掲げる期間を除いた期間」とする。)
(ア) 2年
(イ) 離婚等をした日から情報提供請求を却下する処分がされた日までの期間
③ 情報提供を受けた日の翌日から起算して3月を経過していない場合(次に掲げる場合を除く。)
ア 当事者について国民年金法(昭和34年法律第141号)に規定する被保険者の種別の変更があった場合
イ 3歳未満の子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例に係る申出が行われた場合
ウ 第三号被保険者となったことに関する届出又は第三号被保険者に関する種別の確認の届出が行われた場合
エ 請求すべき按分割合に関する審判若しくは調停又は人事訴訟法第32条第1項の規定による請求すべき按分割合に関する処分の申立てをするのに必要な場合
④ 離婚等をした日が平成19年4月1日前である場合
⑤ 当事者の一方からの請求の場合において、配偶者の被保険者記録が特定できない場合
⑥ 当事者双方について、対象期間(情報提供の請求があった日において対象期間の末日が到来していないときに、情報提供の請求があった日を対象期間の末日とみなす場合を含む。)に係る厚生年金保険の被保険者期間がない場合
(2) 当事者の一方からの請求における配偶者の被保険者記録の特定
当事者の一方からの請求において、配偶者の基礎年金番号の記載がない場合は、次のいずれかに該当したときに当該記録を配偶者の被保険者記録と特定すること。
① 情報提供請求書に記載された配偶者の氏名、生年月日及び住所が、基礎年金番号管理ファイルに収録されている被保険者記録の氏名、生年月日及び住所と一致したとき(住所については、肩書を除いた部分が一致したときに限る。)
② 情報提供請求書に記載された配偶者の氏名、生年月日及び住所歴(複数記載されている場合はいずれか1つ)が、基礎年金番号管理ファイルに収録されている被保険者記録の氏名、生年月日及び住所歴と一致したとき(住所歴については、肩書を除いた部分が一致し、かつ、当該住所に係る居住期間が、請求書に記載された居住期間と重複しているときに限る。)
③ 当事者の一方が当事者の他方の被扶養配偶者である第三号被保険者であった期間を有する場合で、情報提供請求書に記載された配偶者の氏名及び生年月日が、基礎年金番号管理ファイル又は国民年金被保険者ファイルに情報提供請求当事者の配偶者として収録されている被保険者記録の氏名及び生年月日と一致したとき
④ 情報提供請求時において、当事者の一方が当事者の他方の政府管掌健康保険の被扶養者である場合で、情報提供請求書に記載された配偶者の氏名及び生年月日が、健保厚年現存被保険者ファイルに情報提供請求当事者の配偶者として収録されている被保険者記録の氏名及び生年月日と一致したとき
⑤ 情報提供請求書に記載された配偶者の氏名、生年月日並びに厚生年金保険の資格記録(複数記載されている場合はいずれか1つ)の事業所名称、取得及び喪失年月が、健保厚年現存被保険者ファイル又は厚年喪失被保険者ファイルに収録されている被保険者記録の氏名、生年月日並びに厚生年金保険の資格記録の事業所名称、取得及び喪失年月と一致したとき
(3) 事実婚関係の認定等について
① 事実婚関係の解消の基準の一つの事由を満たす場合であっても、事実婚関係の認定基準の別の事由を満たす場合には、事実婚関係は継続していると認定すること。
② 事実婚関係にあったことを添付書類により確認した際に、事実婚第三号被保険者期間の初日から事実婚解消日まで事実婚関係が継続していないと考えられる特段の事情がない限り、事実婚関係が継続していたものと認定すること。
なお、事実婚関係が継続していない可能性がある場合には、請求者に必要な申立書等を求めること。
③ 1(4)の事実婚解消日を明らかにする書類が提出された場合であっても、いわゆる内縁関係解消調停において当該調停成立日における内縁関係の解消に合意した旨が調停調書に記載されている場合又は事実婚関係の解消に合意した旨が公正証書若しくは公証人の認証を受けた私署証書に記載されている場合は、特段の事情がない限り当該調停成立日又は公正証書若しくは私署証書に事実婚解消日として記載されている日をもって事実婚解消日とすること。
(4) 情報提供請求書におけるその他の事項の審査
① 婚姻期間等
戸籍の謄本、当事者それぞれの戸籍の抄本、戸籍の全部事項証明書若しくは当事者それぞれの戸籍の個人事項証明書、事実婚関係にあることを明らかにすることができる書類又は基礎年金番号管理ファイル若しくは国民年金被保険者ファイルの第三号被保険者記録等により、婚姻期間又は事実婚第三号被保険者期間(以下「婚姻期間等」という。)を確認すること。
② 対象期間に含めない期間
対象期間に含めない期間について、当事者以外の第三者との重婚的内縁関係による当事者又は当該第三者の第三号被保険者期間の有無を基礎年金番号管理ファイル又は国民年金被保険者ファイル等により確認すること。
③ 再請求理由
年金分割情報提供管理ファイルにより情報提供を受けた日の翌日から起算して3月を経過していないことが判明した場合には、再請求理由の記載があるか、(1)③アからエまでの理由に該当するかを確認すること。
④ 請求者及び通知方法
当事者の双方からの請求であるか、一方からの請求であるかを確認するとともに、請求者が希望する交付方法の記入があるかを確認すること。
また、窓口での交付を希望する場合は、住所地を管轄する社会保険事務所等での交付となること、郵送による交付を希望する場合は、請求者の現住所以外の送付先を指定することができること。
⑤ 対象期間
①及び②により確認した対象期間を記入すること。
⑥ 請求者及び配偶者の婚姻期間等に係る資格記録
健保厚年現存被保険者ファイル、厚年喪失被保険者ファイル又は国民年金被保険者ファイルにより、当事者それぞれの被保険者記録を確認し、記載内容と相違がないか確認すること。また、必要に応じて、請求者に対し期間の照会を行うこと。
⑦ 年金見込額の提供
当事者が50歳以上又は障害厚生年金の受給権者である場合には、標準報酬改定をした場合の年金見込額の提供が可能であることから、希望の有無、希望する年金の種類及び希望する按分割合の記載があるかを確認すること。
3 情報通知書等の作成及び交付
(1) 基礎年金番号の付番等
情報提供請求時において、情報提供請求当事者に基礎年金番号が付番されていない場合は、新たに基礎年金番号を付番すること。
(2) 情報通知書等の作成
① 情報通知書に記載する事項のうち、次に掲げる事項については、窓口装置から情報提供請求の入力処理後に出力される情報通知書に、手書きにより記入すること。
ア 婚姻期間等の末日の区分
イ 対象期間
ウ 対象期間の末日以後に提供を受けた情報について補正に要した期間
エ 厚生年金保険法施行規則(昭和29年厚生省令第37号。以下「厚年規則」という。)第78条の3第3項第2号に規定する期間
オ 厚年規則第78条の3第3項に定める請求期間
カ 当事者の一方からの情報提供請求であって、当事者の他方へ情報通知書を交付する場合は、情報提供請求当事者の氏名
② 情報通知書の記入については、次の点に留意すること。
ア 対象期間の記入については、不要な元号については二本線で抹消し、記入を要しない欄については斜線により抹消すること。
イ その他記入を要しない欄については斜線により抹消すること。
③ 情報通知書の作成に併せて、情報提供請求当事者本人の「被保険者記録照会回答票」(別添3)を作成すること。
④ 当事者の一方からの情報提供請求があった場合で、請求時において当事者が離婚等をしているときは、当事者の他方に対する情報通知書及び当該他方の被保険者記録照会回答票を作成すること。
(3) 見込額通知等の作成
年金見込額の提供については、情報提供請求時までの基礎年金番号で管理している被保険者記録等に基づき行うこととし、情報提供請求時における老齢厚生年金の受給資格要件の有無等により、次のとおりとすること。
① 老齢厚生年金の受給資格要件を満たしている場合は、窓口装置に按分割合等を入力することにより、標準報酬改定請求を行った場合の年金見込額を出力し、「年金分割を行った場合の年金見込額のお知らせ」(別添4。以下「見込額通知」という。)を作成すること。このとき、転記誤りのないよう十分注意するとともに、記入を要しない欄については斜線により抹消すること。
② 老齢厚生年金の受給資格要件を満たしていない場合は、年金見込額照会は行わないこととし、「年金見込額のお知らせについて」(別添5)を作成すること。
③ 振替加算が加算された老齢基礎年金を受給している者については、標準報酬改定により振替加算が加算されなくなる場合は、見込額通知に振替加算額を記入しないこととし、振替加算が引き続き加算される場合は、振替加算額を記入すること。
④ 障害厚生年金の受給権者については、窓口装置に按分割合等を入力することにより、標準報酬改定請求を行った場合の年金見込額を出力し、「年金分割を行った場合の年金見込額のお知らせ(障害厚生年金)」(別添6)を作成すること。このとき、転記誤りのないよう十分注意するとともに、記入を要しない欄については斜線により抹消すること。
なお、障害厚生年金の支給が停止されている場合は、年金見込額の提供は行わないこと。
(4) 情報通知書等の交付
① 作成した情報通知書並びに情報提供請求当事者本人の被保険者記録照会回答票及び見込額通知等の情報提供請求当事者への交付は、情報提供請求当事者の希望するところにより、社会保険事務所等の窓口での交付又は郵送による交付とすること。
② 当事者の一方からの情報提供請求があった場合で、請求時において当事者が離婚等をしているときは、当事者の他方に対しても、「年金分割による情報提供について」(別添7)を添付の上、情報通知書及び当該他方の被保険者記録照会回答票を基礎年金番号管理ファイルに収録されている住所に送付すること。
③ 情報通知書については再交付ができるものであること。
情報通知書の再交付申請については、「年金分割のための情報通知書再交付申請書」(別添8。以下「再交付申請書」という。)を社会保険事務所等に提出することにより行うこと。情報通知書の再交付は、当該情報提供を行った社会保険事務所等において行うものとすること。
なお、再交付申請書が提出された社会保険事務所等において情報提供を行っていない場合は、当該処理を行った社会保険事務所等へ回送すること。
(5) 却下通知書の送付
情報提供請求を却下するときは、「年金分割のための情報提供請求の却下通知書」(別添9)により理由を付して、情報提供請求当事者に通知すること。
なお、当事者の一方からの情報提供請求を却下する場合、当事者の他方への却下通知書の送付は不要であること。
第2 裁判所等への資料の提供
社会保険事務所等は、法第78条の5の規定により、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官(以下「裁判所等」という。)に対し、その求めに応じて、標準報酬の按分割合に関する処分を行うために必要な資料を提供しなければならない。この求めは、裁判手続上は、調査の嘱託(家事審判規則(昭和22年最高裁判所規則第15号)第7条から第9条まで、人事訴訟規則(平成15年最高裁判所規則第24号)第21条、民事訴訟法(平成8年法律第109号)第186条、民事訴訟規則(平成8年最高裁判所規則第5号)第31条第2項)の方法、文書送付の嘱託(民事訴訟法第226条、民事訴訟規則第31条第2項)の方法等により行われるが、裁判所等から資料の提供の求めがあった場合の取扱いは、次のとおりであること。
1 裁判所等から社会保険事務所等への資料の提供の求めについて
調査の嘱託の方法や文書送付の嘱託の方法による社会保険事務所等に対する裁判所等からの資料の提供の求めは、裁判所書記官作成の嘱託書により行われること。別添10は、その書式例であり、一般に、次の内容となっていること。
(1) 嘱託書の記載事項
① 当事者双方の氏名
② 資料の送付先の裁判所等の名称又は氏名
(2) 嘱託書に添付する書類
当事者から裁判所等に提出された情報通知書の写し
2 社会保険事務所等における事務処理
(1) 資料を作成する社会保険事務所等
裁判所等へ提供する資料の作成は、1(2)①の情報通知書を作成した社会保険事務所等において行うこと。
当該情報通知書が他の社会保険事務所等において作成されている場合は、当該情報通知書を作成した社会保険事務所等へ回送すること。
(2) 提供する資料の内容
裁判所等に対し提供する資料は、嘱託書に情報通知書が添付されている場合において、改めて情報通知書の提供を求められた場合には、嘱託書に添付されている情報通知書を更新したものとすること。
裁判所等から情報通知書以外の資料の提供の求めがあった場合は、社会保険庁運営部年金保険課と協議の上、資料の提供等適切な対応を行うこと。
(3) 提供する資料の作成
第1に準じて速やかに情報通知書等を作成し、別添11により提供する資料を裁判所等へ送付すること。
裁判所等からの資料の提供の請求時に、当事者が離婚、婚姻の取消し又は事実婚関係の解消をしていない場合は、社会保険事務所等において当該資料を作成した日を情報通知書を作成する際の婚姻期間等の末日として資料を作成すること。
第3 標準報酬改定請求
1 標準報酬改定請求書の提出
(1) 標準報酬改定請求書の提出
① 標準報酬改定請求については、「標準報酬改定請求書(離婚時の年金分割の請求書)」(別添12。以下「標準報酬改定請求書」という。)を社会保険事務所等に提出することにより行うものであること。
② 標準報酬改定請求の処理については、標準報酬改定請求をする者(以下「標準報酬改定請求者」という。)の管轄社会保険事務所等が行うものとすること。当事者の双方による標準報酬改定請求の場合で、当事者それぞれの管轄社会保険事務所等が異なるときは、当事者双方が希望する社会保険事務所等が行うものとすること。
標準報酬改定請求書が提出された社会保険事務所等において標準報酬改定請求者の住所地を管轄していない場合は、管轄社会保険事務所等へ回送すること。
(2) 標準報酬改定請求書に添付する書類
標準報酬改定請求を行う場合は、次の書類を添付するものであること。
① 当事者が標準報酬改定請求をすること及び請求すべき按分割合について合意しているときは、その旨が記載された公正証書の謄本若しくは抄録謄本又は公証人の認証を受けた私署証書
② 家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めたときは、次に掲げるいずれかの書類
ア 按分割合についての審判(判決)が確定している場合は、按分割合に関する事項について記載された審判(判決)書の謄本又は抄本及び確定についての証明書
イ 按分割合について調停(和解)が成立している場合は、按分割合に関する事項について記載された調停(和解)調書の謄本又は抄本
③ 離婚等をした日の翌日から起算して2年を経過した日以後に、又は離婚等をした日の翌日から起算して2年を経過した日前1月以内に、次のいずれかに該当した場合(ア又はイに掲げる場合に該当した場合にあっては、離婚等をした日の翌日から起算して2年を経過した日前に請求すべき按分割合に関する審判又は調停の申立てがあったときに限る。)について、次のいずれかに該当することとなった日の翌日から1月以内に標準報酬改定請求があった場合は、②に掲げる審判書又は調停(和解)調書のほかに、請求すべき按分割合に関する審判又は調停の申立てをした日を証する書類
ア 請求すべき按分割合を定めた審判が確定したとき
イ 請求すべき按分割合を定めた調停が成立したとき
ウ 人事訴訟法第32条第1項の規定による請求すべき按分割合を定めた判決が確定したとき
エ 人事訴訟法第32条第1項の規定による処分の申立てに係る請求すべき按分割合を定めた和解が成立したとき
④ 標準報酬改定請求者の年金手帳、国民年金手帳その他の基礎年金番号を明らかにすることができる書類
⑤ 次のア又はイに掲げる書類
ア 離婚をし又は婚姻が取り消された場合は、当事者間の身分関係を明らかにすることができる戸籍の謄本、当事者それぞれの戸籍の抄本、戸籍の全部事項証明書又は当事者それぞれの戸籍の個人事項証明書
イ 事実婚関係の解消をした場合は、事実婚第三号被保険者期間の初日から事実婚関係が解消したと認められるとき(当事者が婚姻の届出をしたことにより事実婚関係が解消したときを除く。)までの間における事実婚関係にあったことを明らかにすることができる書類
具体的には、第1の1(3)及び(4)に掲げる書類を添付するものであること。
なお、当事者から情報提供請求があったときに、事実婚関係の解消の認定をしている場合は、当該情報提供請求時に認定された対象期間を標準報酬改定請求における対象期間とし、当該書類の提出は不要であること。
⑥ 当事者が婚姻の届出をしたことにより事実婚関係が解消した場合にあっては、事実婚第三号被保険者期間の初日から当事者が婚姻の届出をしたことにより事実婚関係が解消したときまでの間における事実婚関係にあったことを明らかにすることができる書類
具体的には、第1の1(3)に掲げる書類を添付するものであること。
なお、当事者から情報提供請求があったときに、事実婚関係の認定が行われており、当該認定に係る期間より後の期間に事実婚第三号被保険者期間以外の事実婚関係の期間がない場合は、当該書類の提出は不要であること。
⑦ 標準報酬改定請求のあった日前1月以内に作成された当事者双方の生存を証明することができる戸籍の謄本若しくは抄本、戸籍の全部事項証明書若しくは個人事項証明書又は住民票の写し
ただし、当事者の一方が死亡した場合にあっては、死亡者の死亡の事実及び死亡年月日を証明することができる戸籍の謄本若しくは抄本、戸籍の全部事項証明書若しくは個人事項証明書又は住民票の写し
2 標準報酬改定請求書の審査等
(1) 標準報酬改定請求の期限
第1の2(1)②のとおり、標準報酬改定請求の期限が経過している場合は、標準報酬改定請求ができないものであること。この場合、標準報酬改定請求は却下すること。
なお、第1の2(1)②のとおり、離婚等をしたときから2年を経過した場合であっても標準報酬改定請求できる場合があることに留意すること。
(2) 標準報酬改定請求書の審査
① 第一号改定者及び第二号改定者の基礎年金番号等
添付書類及び基礎年金番号管理ファイルにより当事者の基礎年金番号、氏名、生年月日及び住所を確認すること。
② 婚姻期間等
戸籍の謄本、当事者それぞれの戸籍の抄本、戸籍の全部事項証明書若しくは当事者それぞれの戸籍の個人事項証明書、事実婚関係にあったことを明らかにすることができる書類又は基礎年金番号管理ファイル若しくは国民年金被保険者ファイルの第三号被保険者記録等により、婚姻期間等を確認する、こと。
なお、事実婚関係の認定に当たっては、第1の2(3)に留意すること。
③ 対象期間に含めない期間
対象期間に含めない期間について、当事者以外の第三者との重婚的内縁関係による当事者又は当該第三者の第三号被保険者期間の有無を基礎年金番号管理ファイル又は国民年金被保険者ファイル等により確認すること。
④ 按分割合
標準報酬改定請求書に記載された按分割合と公正証書等に記載された按分割合が一致しているか確認すること。
なお、別紙の「請求すべき按分割合に関する事件等主文例及び調停条項集」は、最高裁判所事務総局家庭局と協議済みであり、請求すべき按分割合を定める審判若しくは判決主文又は調停条項の記載例については、これを参考とすること。
おって、家庭裁判所等には同局からその旨連絡される。
⑤ 対象期間
②及び③により確認した対象期間を記入すること。
⑥ 第一号改定者及び第二号改定者の婚姻期間等に係る資格記録
健保厚年現存被保険者ファイル、厚年喪失被保険者ファイル又は国民年金被保険者ファイルにより、当事者それぞれの被保険者記録を確認し、記載内容と相違がないかを確認すること。また、必要に応じて、請求者に対し期間の照会を行うこと。
3 標準報酬改定通知書の作成及び交付等
(1) 基礎年金番号の付番等
標準報酬改定請求時において、当事者に基礎年金番号が付番されていない場合は、新たに基礎年金番号を付番すること。また、作成した年金手帳は当事者に送付すること。
(2) 標準報酬改定通知書の作成及び交付
① 当事者それぞれについて「標準報酬改定通知書(離婚時の年金分割のお知らせ)」(別添13。以下「標準報酬改定通知書」という。)の作成を行うこと。
② 当事者の一方からの請求の場合は、当事者の他方の標準報酬改定通知書に標準報酬改定請求者の氏名を手書きにより記入すること。
標準報酬改定通知書は、標準報酬改定請求書に記載された住所に送付すること。当事者の一方からの請求の場合は、当事者の他方の標準報酬改定通知書は基礎年金番号管理ファイルに収録されている住所に送付すること。
当事者の他方が死亡している場合は、死亡者については標準報酬改定通知書の作成及び交付は不要であること。
(3) 標準報酬改定通知書の再交付
標準報酬改定通知書については再交付ができるものであること。
標準報酬改定通知書の再交付申請については、当事者が「標準報酬改定通知書再交付申請書」(別添14)を社会保険事務所等に提出することにより行うこと。標準報酬改定通知書の再交付は、管轄社会保険事務所等において行うものとすること。
再交付申請書が提出された社会保険事務所等において当該申請書を提出した者の住所地を管轄していない場合は、当該管轄社会保険事務所等へ回送すること。
(4) 却下通知書の送付
標準報酬改定請求を却下するときは、「標準報酬改定請求の却下通知書(離婚時の年金分割請求の却下のお知らせ)」(別添15)により、理由を付して、標準報酬改定請求当事者に通知すること。
当事者の一方からの標準報酬改定請求を却下する場合、当事者の他方への却下通知書の送付は不要であること。
(5) 標準報酬の改定等の再処理
標準報酬の改定等が行われた後に、対象期間に係る当事者の厚生年金保険の被保険者記録が補正されたときは、次のとおり処理を行うこと。
① 被保険者記録が補正されたことによって改定割合が変更となる場合は、標準報酬改定請求の取消処理を行った上、再度、標準報酬改定通知書の作成及び交付を行うこと。この場合、被保険者記録が補正された当事者の他方に対しても再度標準報酬改定通知書を交付すること。
また、被保険者記録が補正されたことにより、請求すべき按分割合が法第78条の3第1項に規定する按分割合の範囲外となったときであっても、厚年規則第78条の13の規定に該当する場合は、対象期間の末日における当事者それぞれの対象期間標準報酬総額の合計額に対する第二号改定者の対象期間標準報酬総額の割合を基礎として法第78条の6第1項第1号の規定により算定した改定割合のうち最も低い割合により、同様の処理を行うこと。
② 被保険者記録が補正されたことにより、請求すべき按分割合が法第78条の3第1項に規定する按分割合の範囲外となったときで、厚年規則第78条の13の規定に該当しない場合又は第一号改定者の対象期間標準報酬総額が第二号改定者の対象期間標準報酬総額を上回ることとなった場合は、当該標準報酬改定請求の取消処理を行った上、当該標準報酬改定請求を却下すること。
なお、却下通知書に当該標準報酬改定請求の取消しを行った旨についても付記すること。
4 標準報酬の改定等に伴う年金給付の取扱い
(1) 標準報酬の改定等が行われたことにより当事者が受給している年金の年金額が改定される場合は、社会保険業務センターにおいて年金額の改定処理が行われるものであること。
(2) 第2号改定者であって、標準報酬の改定等が行われたことにより、新たに老齢厚生年金又は厚生年金保険の通算老齢年金の受給権が発生する場合は、当該受給権者からの裁定請求が必要であること。
第4 その他
個別の事案の事実婚関係の認定について疑義が生じた場合は、運営部年金保険課に協議すること。
写送付先(/地方社会保険事務局事務所長/社会保険事務所長/)
(別表第1)第三者の証明書に代わる書類
|
事項 |
添付書類 |
1 |
健康保険等の被扶養者になっている場合 |
健康保険被保険者証等の写し |
2 |
給与計算上、扶養手当等の対象になっている場合 |
給与簿又は賃金台帳等の写し |
3 |
定期的に送金がある場合 |
現金書留封筒、預金通帳等の写し |
4 |
その他1~3に準ずる場合 |
その事実を証する書類 |
(別表第2)
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事項 |
添付書類 |
1 |
健康保険等の被扶養者でなくなった場合 |
健康保険被扶養者(異動)届等の写し |
2 |
給与計算上、扶養手当等の対象でなくなった場合 |
給与簿又は賃金台帳等の写し |
3 |
定期的な送金がなくなった場合 |
預金通帳等の写し |
4 |
その他1~3に準ずる場合 |
その事実を証する書類 |
(別紙)
請求すべき按分割合に関する事件等主文例及び調停条項集
以下は,請求すべき按分割合に関する審判又は標準報酬等の按分割合に関する判決において請求すべき按分割合を定める場合の主文及び調停条項の例を掲げたものである。
1 「年金分割のための情報通知書」を別紙として審判書,調停調書又は判決書に添付し,これを引用する形式(統一型の主文・調停条項)(注1)
申立人[原告]と相手方[被告]との間の別紙(注2)[1,2](注3)記載の情報に係る(注4)(注5)年金分割についての請求すべき按分割合を,[いずれも]0.×(注6)と定める。
2 各年金制度及び各裁判手続に応じて必要な事項を書き下す形式(書き下し型の主文・調停条項)(注7)
(1) 請求すべき按分割合に関する審判事件主文例
申立人(第二号改定者)(注8)と相手方(第一号改定者)との間の対象期間(昭和○年○月○日から平成○年○月○日まで(注9)[及び平成○年○月○日から平成○年○月○日まで](注10)及び[並びに]国民年金法附則第7条の3第1項に規定する届出が行われたことにより事実婚第三号被保険者期間として通算されるその余の期間(注11))に係る被保険者期間の標準報酬の改定又は決定の請求についての厚生年金保険法第78条の2第2項の(注12)請求すべき按分割合を,0.×と定める。
(2) 標準報酬等の按分割合に関する処分(人事訴訟における附帯処分)に係る判決主文例
原告(第二号改定者)と被告(第一号改定者)との間の対象期間(平成○年○月○日から本判決[第○項](注13)確定の日まで及び国民年金法附則第7条の3第1項に規定する届出が行われたことにより事実婚第三号被保険者期間として通算されるその余の期間)に係る被保険者期間の標準報酬の改定又は決定の請求についての厚生年金保険法第78条の2第2項の請求すべき按分割合を,0.×と定める。
(3) 請求すべき按分割合に関する調停条項例
ア いわゆる乙類調停において定める場合
前記(1)と同様。
イ 調停離婚成立時の付随事項として請求すべき按分割合を定める場合(注14)
申立人(第二号改定者)と相手方(第一号改定者)との間の対象期間(平成○年○月○日から本日まで及び国民年金法附則第7条の3第1項に規定する届出が行われたことにより事実婚第三号被保険者期間として通算されるその余の期間)に係る被保険者期間の標準報酬の改定又は決定の請求についての厚生年金保険法第78条の2第2項の請求すべき按分割合を,0.×と定める。
――――――――――
(注1) 後記本文2の審判,調停及び人事訴訟の各手続における請求すべき按分割合を定める主文及び調停条項について,このような簡易かつ共通した表現を用いることが可能である(社会保険庁等の関係機関との間で協議済み)。すなわち,特定の「年金分割のための情報通知書」に表されている情報に係る請求すべき按分割合を定める対象(年金制度の種類,当事者及び法律に定める対象期間で特定される。)は一つに限られることから,「年金分割のための情報通知書」を別紙として引用することにより主文の対象を特定することが可能となる。
(注2) 特定の「年金分割のための情報通知書」の写しのことであり,審判書,判決書又は調停調書の別紙として当該審判書等と一体となるものである。
(注3) 当該当事者間で定めるべき請求すべき按分割合が二つの場合(同一当事者間で年金分割が問題となる年金制度が二つある場合や,同じ年金制度において法律で定める対象期間が複数ある場合が考えられる。)。三つ以上の場合も同様。
(注4) 通常の別紙引用の形式である「『別紙○○(書面の名前)△△欄記載の□□』につき『同◎◎欄記載の××』を」などといったものに比べ引用事項の具体的内容を明示していないが,主文は各年金制度ごとに交付される「年金分割のための情報通知書」に記載されている当事者及び対象期間ごとに定めるものであることから,主文の特定としては十分である(ただし注5参照)と考えられる。
(注5) 対象期間末日前の情報提供請求に基づく「年金分割のための情報通知書」の場合には,対象期間末日の記載が情報提供請求日となる(厚生年金保険法第78条の4第2項等)ことから,後記2の書き下し型の主文等との対比において対象期間末日の特定がされていないのではないかということが問題となる。しかし,この点については,「情報に係る」と抽象的な引用の仕方になっているため,婚姻期間等の欄の情報提供請求日の記載も引用され,実際の対象期間とは異なるものの,末日が到来したとみなされた対象期間と同一性のある実際の対象期間に係る年金分割についてのものであるという趣旨が現れていると考えられ,請求すべき按分割合を定める対象の特定としては十分であると考えられる。このような理解に基づき,対象期間末日前に提供された情報通知書を別紙として引用した場合であっても,統一型の主文であれば実際の対象期間に係る年金分割についてのものとして扱われることについて,社会保険庁等の関係機関と協議済みとなっているものである。
(注6) 請求すべき按分割合は,小数点以下5位までが改定割合に反映されることとなる(小数点以下5位未満は四捨五入される。厚生年金保険法施行規則第78条の4第2項。なお,他の年金制度においても同様の手当てがされる予定である。)。その意味では,主文等にも「0.×0000」と表示するのが正確であるが,「0.×」と表示しても疑義を生じるおそれはないことから,裁判実務上は,特に必要のない限り,小数点以下5位まで表示する必要はないと考えられる。
(注7) 各手続の主文等においていかなる事項を定めているかということを整理するため,書き下し型の主文等を掲げているが,主文等の簡潔さ,年金分割の請求先(社会保険庁長官(社会保険事務所)等)における事務処理の便宜,過誤防止等の見地から,実務上は前記本文1の統一型を用いることが相当である。
(注8) 請求すべき按分割合は,第一号改定者と第二号改定者とが特定された上で初めて明らかにされるものであるため,主文上もこのように特定する必要があると考えられる(統一型であれば,別紙により特定されている。)。
(注9) 対象期間については,日単位とされている(厚生年金保険法施行規則第78条の2第1項ほか)。
(注10) 当事者AB間で①事実婚(Bが第三号被保険者)→②事実婚(A,B共に第二号被保険者)→③法律婚と推移したケースにおける②の期間や,ABの法律婚期間の一部に他者Cの第三号被保険者期間(Aを扶養者とする。)がそれぞれ存することにより当該期間がAB間の対象期間から外れた場合等について,このように表現することが考えられる。
(注11) 社会保険庁長官による標準報酬の改定又は決定すなわち分割改定処分が行われた後,離婚時年金分割制度の当事者一方から第三号被保険者の届出が行われた場合には,政令により,当該届出が行われた日に標準報酬改定請求があったものとみなされる(ただし厚生年金保険法第78条の2第1項ただし書に規定する請求期限内に当該届出が行われた場合に限る。厚生年金保険法施行令第3条の12の6)。すなわち,事実婚関係にあった当事者間において,いったん分割改定処分が行われた後に当事者の一方から当該事実婚関係にあった期間について第三号被保険者の届出がされた場合には,分割改定処分の基礎となる事実婚第三号被保険者期間すなわち対象期間の範囲がその分伸長され,伸長された対象期間に基づいて,改めて従前定められた請求すべき按分割合によって分割改定処分がされることとなる。このように,年金分割制度においては,事後の第三号被保険者期間の届出により分割改定処分の基礎となる対象期間が伸長されること及び対象期間が伸長されても当該分割改定処分に係る対象期間としての同一性は失われず,当該(伸長された)対象期間について従前定めた請求すべき按分割合によって分割改定処分がされることが政令上予定されているわけであるが(厚生年金保険制度以外の年金制度においても同様の手当てがされる予定である。),審判主文等においても,対象期間としての同一性が失われない範囲を予め明らかにしておくことにより,主文に掲げる対象期間と実際の対象期間との同一性に疑義を生じないようにするものである。なお,統一型の主文において,このような政令上予定された対象期間の伸長が生じたとしても,同一性の問題を生ずることなく分割改定処分がされることにつき,社会保険庁等の関係機関と協議済みである。
これに対し,家庭裁判所等において請求すべき按分割合を定めた後に第三号被保険者の届出やいわゆる養育特例の申出(小幡篤志ほか「離婚時年金分割制度について」最高裁判所事務総局『離婚時年金分割制度関係執務資料(家庭裁判資料第184号)』36頁(注72)参照)がされたことにより按分割合の範囲が変動し,いったん定めた請求すべき按分割合が新たな按分割合の範囲(下限)を下回ることとなった場合には,当該請求すべき按分割合は無効となることから,新たな按分割合の範囲に基づいて請求すべき按分割合を定め直すことが必要となる(第三号被保険者の届出につき厚生年金保険法第78条の20第2項参照)。この場合において,当初の請求すべき按分割合を定めた審判は,現行法上認め得ない割合を形成したものとして無効になると解される。なお,無効な審判については,取り消される必要はなく,何人もこれを無視することができるが,審判の形式をもって存在することからこれを排除する実益があるとして,非訟事件手続法第19条第1項の取消し・変更による(同条第3項の適用はないと解される。)ほか,即時抗告によって取り消すこともできると解されている(斎藤秀夫=菊池信男編『注解家事審判法〔改訂〕』(平成4年)635頁〔飯島悟〕参照)。前記のように按分割合の範囲の変動があったことにより当該審判が無効となった場合には,審判の取消し・変更をして審判を排除するまでの必要はなく,当事者は,その無効を主張して更に請求すべき按分割合を定める審判を求めることができると解される。
(注12) 国家公務員共済組合制度については「…に係る組合員期間の標準報酬の月額及び標準期末手当等の額の改定又は決定請求についての国家公務員共済組合法第93条の5第2項の」,地方公務員共済組合制度については「…に係る組合員期間の掛金の標準となった給料の額及び期末手当等の額に係る特例の適用の請求についての地方公務員等共済組合法第105条第2項の」,私立学校教職員共済制度については「…に係る加入者期間の標準給与の月額及び標準賞与の額の改定又は決定の請求についての私立学校教職員共済法第25条において準用する国家公務員共済組合法第93条の5第2項の」となる。
(注13) 人事訴訟法第17条に基づく関連請求の併合がされた場合に当該関連請求に係る判決部分のみについて控訴がされるときのように,(形式的には)一つの判決の一部について確定遮断効が生じることが想定されるときには,離婚主文の項番号まで示す必要があると考えられる。
(注14) いわゆる内縁関係解消調停において,内縁関係の解消(当該調停成立日における内縁関係の解消の合意)と共に請求すべき按分割合を定めることも可能であると解され(ただし,当事者から情報提供請求がされたときに事実婚関係の解消の認定がされていない場合に限られる。なお,国民年金法等の一部を改正する法律(平成16年法律第104号)等の施行に伴う離婚時の厚生年金の分割制度に関する社会保険庁運営部年金保険課長通知において,いわゆる内縁関係解消調停において当該調停成立日における内縁関係の解消の合意と共に請求すべき按分割合を定めた旨が調停調書に記載されている場合は、当該調停成立日をもって事実婚解消日と認定することとされる予定である。),その場合における調停条項も同様と解される(ただし,対象期間の末日について,各年金制度ごとに婚姻関係が終了した日と被扶養認定が解除される日との関係(同日となるか否か)が異なるため,書き下し型の調停条項の場合にはそれを踏まえた具体的な末日を記載することが必要となるが,統一型の調停条項の場合にはそのような問題は生じることなく,前記本文1の記載例を用いることができる。)。
(別添1)
(別添2)
(別添3)
(別添4)
(別添5)
(別添6)
(別添7)
(別添8)
(別添9)
(別添10)
(別添11)
(別添12)
(別添13)
(別添14)
(別添15)