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○国民年金保険料の強制徴収に係る連帯納付義務者からの徴収について(通知)

(平成19年9月21日)

(庁保険発第0921001号)

(地方社会保険事務局長あて社会保険庁運営部年金保険課長通知)

(公印省略)

国民年金保険料に係る強制徴収の取扱いについては、「国民年金保険料に係る強制徴収の取扱いについて」(平成16年9月10日庁保険発第0910001号)(以下「強制徴収通知」という。)により取り扱われているところであり、同通知の2に定める強制徴収対象者に督促状を送付するときは、原則として連帯納付義務者に対しても督促状を発行することとし、世帯分離された場合、連帯納付義務者に該当することの判定は、原則として督促状を発行するときの現況によることとしている。

今般、別添「強制徴収に係る連帯納付義務者からの徴収手続事務取扱要領」を定めたことから、今後、連帯納付義務者に対する保険料徴収はこれにより取り扱うこととされたい。

なお、本件については、必要に応じて随時見直しを図るものである。

別添

強制徴収に係る連帯納付義務者からの徴収手続事務取扱要領

平成19年9月21日制定

1 国民年金法上の連帯納付義務の意義

被保険者は、保険料を納付する義務を負い、その世帯主及び配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)も連帯して保険料を納付する義務を負っている(国民年金法88条)。

この立法趣旨は、「国民年金の被保険者は、生産年齢層に属する者のみに限定されているとはいえ、その中には無業者、家族従業員、主婦等も包含されている。これらの者は本人には拠出能力はまったくない者が多い。そこでこのような者についても保険料の徴収が確保できるように、被保険者の属する世帯の世帯主、配偶者についても連帯して保険料を納付する義務を負わせている」(小山進次郎:国民年金法の解説―134)というにある。

このように、国民年金法(以下「法」という。)における法定連帯納付義務は、第一義的に、年金権の確保を図るとともに保険料確保を図ったものということができる。

2 被保険者の保険料の納付義務と連帯納付義務

被保険者の保険料納付義務は、月の経過とともに(翌月の初日に)成立し、それは特別の手続を要せず、当然に成立するものである(法88条1項)。

それとともに、連帯納付義務についても被保険者の納付義務成立時に自動的に成立し、納付義務者となるものである(前条2項、3項)。

1における立法趣旨に鑑みると、国民年金の連帯納付義務は、相続税における連帯納付義務の成立と同類型のものと解され、国民年金保険料の連帯納付義務は、法が保険料徴収の確保を図るため、被保険者の属する世帯の世帯主及び被保険者の配偶者に課した特別の責任であって、その義務履行の前提条件をなす連帯納付義務の確定は、被保険者固有の保険料納付義務の確定という事実に照応して、法律上当然に生ずるものであるから、連帯納付義務につき格別の確定手続を要するものではないと解される(最判昭55.7.1民集34―4―535)〈参考1・2〉。

前記のとおり、連帯納付義務は、被保険者の納付義務成立時に自動的に成立することから、強制徴収にかかわらず、通常の納付督励時から連帯納付義務者より徴収し又は納付督励することは何ら制限されず、連帯納付義務者に接触するときは積極的に教示することが必要である。

3 連帯納付義務の成立

2のとおり、被保険者の納付義務が月の経過とともに成立し、それと同時に特別の手続を必要とせずに、法の定めに基づいて確定するものと考えられることから、連帯納付義務についても、その月の末日が経過した時に成立し、それと同時に確定して具体的に発生するものと解されることから、当該月分の保険料について、ある者が連帯納付義務者たる要件(被保険者の属する世帯の世帯主又は被保険者の配偶者であること)を満たすか否かは、その月の末日が経過する時点の各月において判断すべきことになる。

4 連帯納付義務の性質

保険料の連帯納付義務は、法が保険料徴収の確保を図るため、被保険者の属する世帯の世帯主及び被保険者の配偶者に課した特別の責任と解することができ、また、相続税の連帯納付義務に関する各種判例を参考とすることができ、これらから、次のとおり整理することができる〈参考3〉〈参考4〉。

(1) 民法の準用

会計法31条2項から、法に別段の規定がある場合を除き、民法の各規定が準用されることになる。

(2) 連帯保証債務に類似する関係

連帯納付義務は,本来の納付義務者以外の者に納付義務を負わせるものである点において,納付保証債務(国税通則法50条6号)や第二次納付義務(国税徴収法32条)に類似するものであるが,補充性を有しない点においてこれとも性質を異にするものである。これらの性質に鑑みれば,本来の納付義務者が負う納付義務と連帯納付義務との関係は,主たる債務と連帯保証債務との関係に類似すると解される(大阪地判平13.5.25)。

(3) 保険料徴収権の時効中断

相続税の連帯納付義務と同様、民法440条の時効中断の相対効の規定は適用されず、保険料の連帯納付義務については、会計法31条2項により、時効の中断事由の効力について定めた民法457条1項が準用され、本来の納付義務者に生じた時効中断事由の効果は連帯納付義務に及ぶことになる。したがって、被保険者に対する保険料徴収権が時効中断すれば、その効果は連帯納付義務者に及び、逆に、連帯納付義務者に対する差押えなどの時効中断事由が生じても、被保険者に対しては影響を与えないことになる。

ただし、連帯納付義務者に対する督促は、民法458条で準用する同法434条の「履行の請求」に該当すると解されることから、その督促によって被保険者に対する保険料徴収権の消滅時効が中断すると解される。

(4) 附従性

連帯保証債務においては、主たる債務者について生じた事由は、保証債務の附従性により、すべてその効力を連帯保証人に及ぼし、連帯保証債務に類似する性質を有する連帯納付義務においても同様に解することができるから、主たる納付義務が時効消滅した場合は、その附従性により、連帯納付義務も消滅することになる。換言すると、被保険者に対する保険料徴収権が存続する限り、連帯納付義務者に対して徴収手続を行うことができるが、被保険者に対する保険料徴収権が消滅すると、たとえ連帯納付義務者の財産を差押えしたとしていても、徴収手続を続行することはできないことになる。

(5) 補充性

連帯納付義務には、保証債務(通則法50条6項)や第二次納付義務(徴収法32条)のような補充性はないことから、社会保険事務所の徴収手段は、被保険者と連帯納付義務者と併存的に行使できるものであること。

5 連帯納付義務者からの徴収における留意事項

被保険者と世帯主又は配偶者の関係については、4のとおり、主たる債務と連帯保証債務との関係に類似するものであるところ、被保険者の保険料徴収権が消滅すると、連帯納付義務者からも徴収できなくなることから、被保険者に対する保険料徴収権に係る管理を十分行うこと。

6 連帯納付義務者からの徴収

(1) 連帯納付義務に対する督促状の発付

保険料は、被保険者に対する徴収権が存続する限り、いつの時点においても連帯納付義務者に請求しうるものであり、職員及び国民年金推進員等による納付督励(強制徴収手続に限られない。)においては、被保険者及び連帯納付義務者に対して連帯納付義務の説明を行い、強制徴収の手続に入る前の段階において一定程度の周知を図ることとする。強制徴収では、徴収効率化の観点から、最終催告状に連帯納付義務について記載しつつ、連帯納付義務者に接触できたときは、改めて連帯納付義務について説明し、強制徴収の手続を進めること。

最終催告及びその後の納付督励においても納付がない場合は、連帯納付義務者に督促状を発付すること。「同時に順次に」請求できることから、督促状を順次に連帯納付義務者に対し発付することは法律上問題はないが、早期に徴収の成果を挙げるためにも、被保険者に対する時と同時に発付することが原則であること。

(2) 督促後の世帯分離又は別居の場合

督促状発付後に被保険者と世帯主である連帯納付義務者が世帯分離又は別居となった場合でも、3で成立した連帯納付義務が消滅するものではないことから、(4)に該当する世帯分離又は別居の場合を除き、徴収手続を進めること。

(3) 督促後における離婚(離縁)の判明

夫婦であったが督促状発付後に離婚(離縁)した場合、ある者が配偶者として連帯納付義務者たる要件(被保険者の配偶者であること)を満たすか否かは、その夫婦であったときの月の末日が経過する時点の各月において判断すべきことから、連帯納付義務は離婚(離縁)後においても存続しており、その連帯納付義務に係る徴収手続を進めること。

具体的には、別紙1の例1から例5のとおりとなる。

(4) 配偶者からの暴力を受けた者

「配偶者からの暴力を受けた者に係る国民年金、厚生年金保険、船員保険における秘密の保持の配慮について」(平成19年2月21日庁保険発第0221001号)の趣旨に基づき、同通知による国民年金原簿等に記録されている住所等を知られないような秘密の保持に配慮してほしい旨の申し出があった場合の配偶者又は世帯主については、その趣旨にかんがみて、配偶者又は世帯主に督促を行わないこととし、又、既にこれらの者に督促を行っている場合は、連帯納付義務を追求しないこととする。

なお、連帯納付義務を追求しないとしても、既に行った督促の取消しまでは行わないこと。

7 連帯納付義務者からの徴収手続

連帯納付義務者の認定及びこれに係る強制徴収による徴収手続は次のとおりとする。

(1) 住民票の写し等の交付請求

社会保険事務所は、被保険者について、督促するまでの間に同人に係る住民基本台帳法(昭和42年7月25日法律第81号)による世帯全員の住民票の写し(続柄、本籍等記載のもの)を交付請求し、取得した住民票から、婚姻又は離縁等の事由により、連帯納付義務者となった日又はなくなった日の正確な確認ができず、それらの事実日を確認する必要がある場合は、戸籍法(昭和22年12月22日法律第224号)による戸籍謄本等を交付請求すること(別紙2及び別紙3)。

なお、交付を求める戸籍情報が、その確認を要すべき者の戸籍抄本で足りる場合は、可能な限り戸籍抄本の交付請求とすること。

被保険者又は配偶者が外国人であるときは、外国人登録法(昭和27年4月28日法律第125号)〈参考5〉第4条の3第4項の規定によって外国人登録原票の写し又は登録原票記載事項証明書(全登録記載事項証明書)〈参考6〉の交付を申請し、必要に応じて、当該外国人の邦人配偶者の住民票又は戸籍謄本等を公用請求すること(別紙4―1、同4―2参照)。

(2) 連帯納付義務者の確認及び認定

(1)に基づき、世帯主又は配偶者の有無や氏名を確認し、連帯納付義務者たる世帯主又は配偶者として認定すること。

既に被保険者宛督促状を発付している被保険者については、次のときを除いて、前記に準じた確認及び認定を行うこと。

① 被保険者から現に分割納付がされていること、又は近い将来完納となる納付誓約(履行期限が明確なものに限る。)がされているとき。

② 被保険者の財産を差押えしたことによって、督促保険料の徴収ができる見込があることなど、保険料徴収が一定程度図られているとき。

③ 財産調査や納付督励の事蹟において連帯納付義務者の財産が僅少であることが判明しており、連帯納付義務者から徴収することができないと判断されるとき。

④ 6(4)による、住所等を知られないような秘密の保持に配慮してほしい旨の申し出があったとき。

⑤ その他、連帯納付義務者に対して督促することが相当でないと認められるとき。

(3) 連帯納付義務者に対する督促状の発付

① 被保険者に督促状を送達するときは、原則として、(2)により認定した連帯納付義務者にも督促状を発付するとともに、「連帯納付義務者に係る督促状について」(別紙5)を同封の上、送達すること。

② 既に被保険者宛督促状を発付しており、その者に連帯納付義務者が存在するときは、(2)の①から⑤に該当するときを除いて、督促状を連帯納付義務者に発付するものとし、被保険者が督促状の指定期限日までに完納していないときは、延滞金が課される状態にあることから、督促状にある「指定期限日までに完納しないときは、納期限の翌日から法律に定める金額の延滞金を徴収します。」の不動文字をボールペンによって抹消することとし(別紙6「連帯納付義務者督促状作成例」参照)、この場合は①の別紙5に代えて、既に延滞金が課される旨を記載した書面とともに督促状を送達すること(別紙7)。

③ 督促状を順次に連帯納付義務者に発付するときは、督促対象期間は、既に被保険者に発付した督促状の督促期間(保険料及び延滞金がともに完納されている期間を除く。)について発付すること。そして、督促期間のある月分の保険料が既に納付され、延滞金のみが未納となっているときは、督促対象期間にはその月分を含め、督促金額はその月分の確定した延滞金額と他の月分の保険料未納額を合計した金額を記載すること(別紙8参照)。

なお、連帯納付義務の成立は、3のとおりであることから、被保険者に対する督促期間内に、世帯主でなかった又は配偶者でなかった期間があるときは、当該期間を除くこと。

④ 督促状を発付するときは、督促状発行伺により決裁を受けることとされており、様式第1号によること。この場合、発付した督促状の写し又は発行一覧表を添付しておくこととし、督促状の発行伺綴に発付年月日順に保管しておくこと。

なお、被保険者に対してのみ督促状を発付する場合でも、本様式によって決裁を受けること。

⑤ 被保険者の時効中断の効果は、その連帯納付義務者にも及ぶことから(民法457条1項)、連帯納付義務者に対する消滅時効中断の効力が生じることになる。このことからすると、督促状は被保険者に送達すれば足りるようにも思われるが、督促は、差押えの前提要件としての効力を有していることから、この効力を考えるときには、被保険者及び連帯納付義務者の各人に個別に送達する必要があり、被保険者と連帯納付義務者が同じ世帯に居住している場合であっても、被保険者及び連帯納付義務者宛それぞれに送達すること。

(4) 差押予告通知書の送付

督促状を送達した者のうち、その指定期限日までに納付のない者については、速やかに強制通知に定める「差押予告通知書」(強制徴収通知様式第2号)を被保険者及び各連帯納付義務者宛送付するとともに、財産調査に着手すること(別紙9「連帯納付義務者宛差押予告例」参照)。

8 連帯納付義務者でないことの申し出の場合

連帯納付義務者の認定は、原則として7(2)によるが、被保険者の世帯主又は連帯納付義務者に該当しないことの申し出があったときは、次により、真に連帯納付義務者でないことが明らかとなった場合に限り、当該連帯納付義務者から徴収しないものであること。

(1) 世帯主でないことの申し出

世帯主と同居していないことの証明として、被保険者(住民票上の世帯主と居住していない者)の居住場所の土地又は建物登記簿謄本(全部事項証明書)、賃貸借契約書の写し、電気など公共料金の供給契約がわかる書面、勤務先の源泉徴収票又は給与明細書、事業を経営している場合はその証明書類の写し(例えば宅地建物取引業者では「宅地建物取引業者免許証」がある。)又はこれらに準ずる書面のいずれか二点を提出させ、被保険者又は世帯主からの申立を総合的に勘案して認定すること。

(2) 配偶者でないことの申し出の場合

戸籍上では配偶者であるものの、当事者が離婚の合意に基づいて夫婦としての共同生活を廃止していると認められるとき、又は一方の悪意の遺棄によって夫婦としての共同生活が行われていない場合であって、その状態が長期間継続し、当事者双方の生活関係がそのまま継続していることの詳細な申立書の外、配偶者の居住場所の土地又は建物登記簿謄本(全部事項証明書)、賃貸借契約書の写し、電気など公共料金の供給契約がわかる書面、勤務先の源泉徴収票又は給与明細書、事業を経営している場合はその証明書類の写し(例えば宅地建物取引業者では「宅地建物取引業者免許証」がある。)、離婚の調停の申立書又はこれらに準ずる書面のいずれか一点を提出させ、総合的に勘案して認定すること。

(3) 認定にあたっての留意事項

(1)(2)の認定にあたっては、〈参考7〉を参考とすること。

9 連帯納付義務者に対する滞納処分

(1) 財産の差押え

保険料は、4(5)及び6(1)のとおり、「同時に順次に」連帯納付義務者から徴収できるものであり、被保険者に先行して連帯納付義務者の財産を差押えすることはできるが、被保険者の財産が判明しており、かつ、その財産によって督促保険料の全額が徴収できる見込であるときは、被保険者の財産を差押えするものとする。財産調査において、被保険者の財産が発見できず、先に連帯納付義務者の財産が判明しその財産を差押えし、その後において被保険者の財産が判明した場合、違法ないし不当となるものではないこと。

実務では、被保険者及び連帯納付義務者の財産調査を平行して進め、被保険者の債権を中心に差押えを行い、債権の差押えができない場合、連帯納付義務者の債権を中心に差押えを行い、債権の差押えができないときは、前記に留意しつつ順次、次の①から⑤に留意して被保険者及び連帯納付義務者の債権以外の財産を差押えすることになる。

差押えする財産の選択は、徴収職員の自由裁量によることから、被保険者、連帯納付義務者ごとに、次に掲げる事項に十分留意して選択を行うものとする。この場合において、差し押さえるべき財産について被保険者又は連帯納付義務者の申出があるときは、諸般の事情を十分考慮の上、滞納処分の執行に支障がない限り、その申出に係る財産を差し押さえるものとする(国税徴収法基本通達47―17参照)。

① 第三者の権利を害することが少ない財産であること(国税徴収法基本通達第49条関係参照)。

② 滞納者の生活の維持又は事業の継続に与える支障が少ない財産であること。

③ 換価に便利な財産であること。

④ 保管又は引揚げに便利な財産であること。

⑤ 価額の変動が少ない財産であること。

(2) 差押調書の作成

差押調書の「滞納者(債権者)」欄又は「滞納者」欄には、甲野太郎を被保険者とし甲野花子を連帯納付義務者とする事例(以下同じ。)では、「甲野太郎の連帯納付義務者甲野花子」と記載することを原則とすること。

(3) 取立・配当

連帯納付義務者の財産を差押えしたことによって、取立て(換価)を行った場合は、配当計算書、充当決議書、充当明細書の滞納者欄は、「甲野太郎の連帯納付義務者甲野花子」のように表示するとともに、配当計算書謄本及び充当明細書は、連帯納付義務者宛送達すること。

残余金が生じたときには、連帯納付義務者に対して交付することになるものであること(別紙10―1から10―3参照)。

10 連帯納付義務者からの延滞金の徴収

連帯納付義務の成立は、3のとおりであり、連帯納付義務者は、延滞金についても被保険者と同様の金額を負担することになる。

延滞金額は、徴収金完納又は財産差押えの日の前日までの日数によって計算することとされているところ(法第97条1項)、法上は、誰の財産を差押えしたかまで限定していないことから、連帯納付義務者のみの財産を差押えした場合であっても、当該差押えの対象となった保険料に係る延滞金額は、差押えの日の前日までの日数によって計算することになるため、差押調書の「延滞金」欄には、その金額を記載すること。

被保険者の財産を差押えし、その差押えの効力が存続している間に連帯納付義務者の財産を差押えした場合、又は連帯納付義務者の財産を差押えし、その差押えの効力が存続している間に被保険者の財産を差押えした場合のいずれであっても、最初に差押えした日の前日までの日数によって保険料に係る延滞金額を計算するものである(別紙11)。

連帯納付義務者から督促保険料の一部又は全部が納付された場合は、納付された督促保険料に係る延滞金額が確定し、当該延滞金についても連帯納付義務が課されることとなるが、この延滞金の納付書を発行するときは、被保険者宛送付することで差し支えない。

11 納付義務の消滅等

(1) 保険料の納付

連帯納付義務者が保険料を納付した場合、被保険者の納付義務もその範囲で消滅するものであること。また、被保険者が保険料を納付(滞納処分による換価代金等の充当を含む。)した効果は、連帯納付義務者全員に及び、その納付があった範囲において連帯納付義務が消滅し、被保険者について生じた過誤納金が保険料に充当されたときも、同様であること。

(2) 国民年金の免除

被保険者の保険料について、納付義務の免除がされた場合、その限度で連帯納付義務も免除されることになるものであること。

(3) 消滅時効の完成等

被保険者の保険料の消滅時効が完成し、又は滞納処分の執行停止による消滅があったときは、連帯納付義務者の納付義務も消滅するものであること。

12 連帯納付義務者からの収納

連帯納付義務者が被保険者の保険料を納付する場合、被保険者宛の領収証書を交付することで問題のない事例が多数であることから、被保険者からの納付として徴収すること。

ただし、連帯納付義務者宛の領収証書を交付するよう特段の申出があった場合に限って、「甲野太郎の連帯納付義務者甲野花子」として現金領収証書を交付するものとし、納付書での納付申し出があった場合、特段の申し出があったときを除き、被保険者宛の納付書を送付すること。

この場合、被保険者宛納付書を連帯納付義務者宛に送付することは差し支えないこと。

13 滞納処分の執行停止

被保険者及び連帯納付義務者のいずれにも、国税徴収法(昭和34年法律第147号)第153条第1項各号に該当する場合には、滞納処分の執行停止(以下「執行停止」という。)をすることとする。

この場合、執行停止の決議は1件とすることで差し支えないものとし、その旨を被保険者及び連帯納付義務者にそれぞれ通知すること。

14 連帯納付義務者が死亡した場合

連帯納付義務者が督促保険料を未納のまま死亡した場合は、通常、相続人は、連帯保険料債務を法定相続によって承継することとなるが(国税通則法第5条)、費用対効果を考慮すると、生存している被保険者又は他の連帯納付義務者から督促保険料の全額を徴収する対応を行うことで差し支えないものとする。

なお、被保険者が督促保険料を未納のまま死亡した場合は、国税徴収法第153条第5項により該当する場合を除き相続人より徴収することになること〈参考8〉。

15 保険料の還付

国民年金保険料における連帯納付義務は、主たる債務と連帯保証債務との関係に類似したものと解されるところ、連帯納付義務者の財産を取立て又は換価した場合、連帯納付義務者は被保険者に対して求償権を有するものであること(民法459条)。

その後、当該、連帯納付義務者の財産を取立て又は換価して充当した月分について、資格変動等によって保険料を還付することがあり得る。被保険者と連帯納付義務者間の関係にかんがみて、当該、還付保険料は被保険者に対して行って差し支えないものとするが、還付に際して連帯納付義務者から特に申し出があった場合で、連帯納付義務者の財産を取立て又は換価したものであることを証明したときは、当該連帯納付義務者に還付することも差し支えないこと。

16 事務処理の流れ

被保険者と連帯納付義務者に対する強制徴収の流れ図を示すことから参考とされたいこと。

様式第1号

被保険者と連帯納付義務者に対する強制徴収の流れ図

別紙1(連帯納付義務を追求する場合の例示)

画像5 (32KB)別ウィンドウが開きます

画像6 (10KB)別ウィンドウが開きます

別紙2

別紙3

別紙4―1(外国人登録原票の写し交付請求用)

別紙4―2(外国人登録原票記載事項証明書交付請求用)

別紙5

別紙6(連帯納付義務者宛督促状作成例)

別紙7(延滞金が課される連帯納付義務者宛説明文)

別紙8

別紙9(連帯納付義務者宛差押予告通知例)

別紙10―1

別紙10―2

別紙10―3

別紙11(連帯納付義務者の財産差押えと延滞金計算)

〈参考1〉

《相続税法》

(連帯納付の義務)

第三十四条 同一の被相続人から相続又は遺贈(第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産に係る贈与を含む。以下この項及び次項において同じ。)により財産を取得したすべての者は、その相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について、当該相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付の責めに任ずる。

2 同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者は、当該被相続人に係る相続税又は贈与税について、その相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付の責めに任ずる。

3 相続税又は贈与税の課税価格計算の基礎となつた財産につき贈与、遺贈若しくは寄附行為による移転があつた場合においては、当該贈与若しくは遺贈により財産を取得した者又は当該寄附行為により設立された法人は、当該贈与、遺贈若しくは寄附行為をした者の当該財産を課税価格計算の基礎に算入した相続税額に当該財産の価額が当該相続税の課税価格に算入された財産の価額のうちに占める割合を乗じて算出した金額に相当する相続税又は当該財産を課税価格計算の基礎に算入した年分の贈与税額に当該財産の価額が当該贈与税の課税価格に算入された財産の価額のうちに占める割合を乗じて算出した金額に相当する贈与税について、その受けた利益の価額に相当する金額を限度として、連帯納付の責めに任ずる。

4 財産を贈与した者は、当該贈与により財産を取得した者の当該財産を取得した年分の贈与税額に当該財産の価額が当該贈与税の課税価格に算入された財産の価額のうちに占める割合を乗じて算出した金額として政令で定める金額に相当する贈与税について、当該財産の価額に相当する金額を限度として、連帯納付の責めに任ずる。

〈参考2〉

《相続税における連帯納付義務の成立》

最高裁判所昭和55年7月1日(民集34巻4号535頁)

相続税法34条1項は、相続人又は受遺者(以下「相続人等」という。)が二人以上ある場合に、各相続人等に対し、自らが負担すべき固有の相続税の納税義務のほかに、他の相続人等の固有の相続税の納税義務について、当該相続又は遺贈に因り受けた利益の価額に相当する金額を限度として、連帯納付義務を負担させている。この連帯納付義務は、同法が相続税徴収の確保を図るため、相互に各相続人等に課した特別の責任であって、その義務履行の前提条件をなす連帯納付義務の確定は、各相続人等の固有の相続税の納税義務の確定という事実に照応して、法律上当然に生ずるものであるから、連帯納付義務につき格別の確定手続を要するものではないと解するのが相当である。それ故、相続人等の固有の相続税の納税義務が確定すれば、国税の徴収にあたる所轄庁は、連帯納付義務者に対して徴収手続を行うことが許されるものといわなければならない。

[最判昭55.7.1事案の概要]

原告、訴外甲及び乙は、昭和40年4月父の死亡により共同相続したので、税務署に3名共同して相続税申告書を提出した。ところが、甲及び乙はいずれも自己の負担する相続税を完納しなかったため、国税局長は、昭和46年10月原告が相続税法34条1項の規定により甲及び乙の相続税を連帯納付する義務があるとして、原告所有の土地を差押えた。

その後、原告は差押えされた土地の一部を訴外丙に売却したところ、丙は国税局長に対し、差押えの原因とされている原告の相続税の連帯納付義務の代位弁済として、甲及び乙の滞納税額を支払い、原告に対し、代位弁済によって取得した求償債権をもって原告の丙に対する土地の売買代金債権と対等額で相殺する意思表示を行った。

そこで、原告は、丙が代位弁済した原告の連帯納付義務は存在しなかったから、前記弁済金は過誤納であるとして、国に対して還付を求めたもの。

〈参考3〉

《相続税の連帯納付義務の性質》

大阪地判平13.5.25(訟務48―8―2035)

1 争点1(確定手続あるいは納税告知の要否について)

(1) 法(編注:相続税法)34条1項は、相続人又は受遺者(以下「相続人等」という。)が2人以上ある場合に、各相続人等に対し、自らが負担すべき固有の相続税の納付義務のほかに、他の相続人等の固有の相続税の納税義務について、当該相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、連帯納付義務を負担させている。

この連帯納付義務は、法が相続税徴収の確保を図るため、相互に各相続人等に課した特別の責任であって、その義務履行の前提条件をなす連帯納付義務の確定は、各相続人等の固有の相続税の納税義務の確定という事実に照応して、法律上当然に生ずるものであるから、連帯納付義務につき格別の確定手続を要するものではなく、相続人等の固有の相続税の納税義務が確定すれば、国税の徴収にあたる所轄庁は、連帯納付義務者に対して徴収手続を行うことが許されると解される(最高裁判所昭和55年7月1日第三小法廷判決・民集34―4―535)。

また、国税通則法52条2項は保証人に国税を納付させる場合に、国税徴収法32条1項は国税を第二次納税義務者から徴収しようとする場合に、いずれも納付通知書による告知を要するものと規定しているが、法34条1項の連帯納付義務については、保証人や第二次納税義務者の場合のように補充性を認めた規定がないことから補充性はないと解され(国税通則法52条4項、5項、国税徴収法32条4項参照)、保証人や第二次納税義務とはその性質を異にするものであり、国税通則法52条2項あるいは国税徴収法32条1項が連帯納付義務に準用ないし類推適用されるものではない。

(中略)

3 争点3(徴収における事実上の補充性による連帯納付義務の督促処分の制限の可否)について

原告らは、連帯納付義務については、事実上、補充性があり、延納許可によって甲野(編注:仮名)が無資力でないことが明らかとなった本件では、その後、甲野が無資力になったことについて被告に責任がないことの積極的な主張、立証がなされていない限り、本件各督促処分の違法性が推認されることになると主張するが、前記1(1)で述べたとおり、保証人や第二次納税義務者と異なり、連帯納付義務には法的には補充性はないといわざるを得ず、徴収に当たり事実上補充性が要求されるとの慣習法が成立しているとの証拠もない。

したがって、原告らの主張は採用できない。

4 争点4(被告が甲野から延納許可等に際し法定の担保を取得しなかった違法による本件各督促処分の違法)について

(1) 法34条1項の連帯納付義務については、補充性がないことから、連帯納付義務者は、第二次納税義務者のように、本来の納税義務者に対する滞納処分を執行しても徴収すべき額に不足すると認められる場合に限って、納税義務を負担するものではない。

すなわち、本来の納税義務者に対する徴収手続と連帯納付義務者に対する徴収手続は本来的には別個独立の手続であるということができる。

したがって、国税当局において本来の納税義務者に対する滞納処分等の徴収手続を適正に行っていれば、本来の納税義務者から滞納に係る相続税を徴収することが可能であったにもかかわらず、国税当局がその徴収手続を怠った結果、本来の納税義務者から同相続税を徴収することができなくなったという事実があったとしても、同事実は、法34条1項により各相続人等に課されている連帯納付義務の存在又はその範囲に影響を及ぼすものではないといわなければならない。

このように、本来の納税義務者に対する徴収手続と連帯納付義務者に対する徴収手続は本来別個の手続であるから、延納許可における担保評価と連帯納付義務の履行の督促が法律上密接不可分の関係にあり、延納許可処分等の違法性が連帯納付義務の督促処分に承継されるとの原告らの主張は採用できない。

(争点5略)

6 争点6(連帯納付義務に係る国税の徴収権の時効消滅について)

(中略)

これに対し、法34条の連帯納付義務は、自らが負担すべき固有の相続税の納税義務のほかに負う特別の責任であって、かつ、各連帯納付責任者が相続等により受けた利益の価額等を限度として負担するものであり、この点において民法の連帯債務と異なり、他方、連帯納付義務は、本来の納税義務者以外の者に納付義務を負わせるものである点において、納税保証債務(国税通則法50条6号)や第二次納税義務(国税徴収法32条)に類似するものであるが、補充性を有しない点においてこれとも性質を異にするものである。

これらの性質に鑑みれば、本来の納税義務者が負う納付義務と連帯納付義務との関係は、主たる債務と連帯保証債務との関係に類似すると解するのが相当である。

そして、民法458条は、連帯保証について連帯債務に関する規定434条ないし440条の規定を適用すると規定し、民法434条及び440条によれば、主たる債務者に対する請求以外の時効中断の効力は連帯保証人には及ばないとの解釈も可能であるが、連帯保証も保証に他ならないことから、もっぱら附従性の理論に従い、民法457条1項が規定する主たる債務についての時効中断事由はすべて連帯保証人にも効力を及ぼすと解されるのであり、その趣旨は、主たる債務の存続中に保証債務のみが消滅する場合が生じては保証人を立てた本来の目的を失うに至ることがあるから、債権の担保を確保するための実際の必要性を顧慮して、主たる債務の時効が中断すれば保証債務の時効もまた同時に中断すべきものとしたところに求められる。

このような趣旨は、相続税債権の徴収確保のため、共同相続人中無資力の者があることに備え、他の共同相続人に特別の履行責任である連帯納付義務にも妥当するものであり、本来の納税義務者の時効中断の効力に附従性を認めるのが相当であり、法34条は、この限度で国税通則法8条の通用を排除するものと解される。したがって、本来の納税義務者である甲野に対して時効中断の効力が生じており、その時効消滅前に原告らに督促処分がなされた本件においては、原告らの連帯納付義務についての国税の徴収権は時効消滅していない。

(以下略)

〈参考4〉

《附従性・補充性》

保証債務は主たる債務を担保するものであるから、保証債務が存在するためには、主たる債務が有効に成立していなければならないことを、保証における附従性といい、主たる債務が無効であったり取り消されたりすれば、保証債務も消滅し、主たる債務について生じた事由は原則として保証債務に影響し、主たる債務の時効(消滅時効)が中断した場合には保証債務の時効も中断する(民法457条1項)ことになる。

補充性とは、主たる債務の履行がない場合に、補充的に履行責任を負うことをいう。保証は補充性を有するが、連帯保証は補充性を有しない。また、保険料の連帯納付義務には、補充性が認められないものである。

〈参考5〉

《外国人登録》

観光や友人訪問などの目的での短期間の滞在ではなく、就学や勉学、あるいは同居などの目的である程度長い期間日本で生活する外国人は、自分の身分事項や居住事実を明らかにすることが必要となっている。

本人の旅券や申請に基づいて「登録原票」と呼ばれる原簿に登録され、それに基づいて発行される「外国人登録証明書」は日本で生活していく上での公的証明として利用されている。

「外国人登録証明書」は、顔写真が貼付され、法律の規定によって常に携帯することが義務づけられており(16歳以上の場合)、また、各種の行政手続の場で提示することとされている。他方、社会生活上、たとえば雇傭や各種の契約において外国人から自分自身を立証するために提示されることもあり、外国人登録証明書の「在留の資格」及び「在留期限」の欄の記載内容を見ることにより、その外国人がいつまで日本に滞在することができるのかを容易に確認することができる。

《外国人登録法》

(昭和27年4月28日法律第125号)

(登録原票の開示等)

第4条の3 市町村の長は、次項から第五項までの規定又は他の法律の規定に基づく請求があつた場合を除き、登録原票を開示してはならない。

2 外国人は、市町村の長に対し、当該外国人に係る登録原票の写し又は登録原票に登録した事項に関する証明書(以下「登録原票記載事項証明書」という。)の交付を請求することができる。

3 外国人の代理人又は同居の親族(婚姻の届出をしていないが、事実上当該外国人と婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)は、市町村の長に対し、当該外国人に係る登録原票の写し又は登録原票記載事項証明書の交付を請求することができる。

4 国の機関又は地方公共団体は、法律の定める事務の遂行のため登録原票の記載を利用する必要があると認める場合においては、市町村の長に対し、登録原票の写し又は登録原票記載事項証明書の交付を請求することができる。

5 弁護士その他政令で定める者は、法律の定める事務又は業務の遂行のため登録原票の記載を利用する必要があると認める場合においては、市町村の長に対し、登録原票記載事項証明書の交付を請求することができる。ただし、登録原票の記載のうち、第4条第1項第3号から第7号まで及び第15号から第17号までに掲げる事項以外のものについては、それらの開示を特に必要とする場合に限る。

6 前3項の請求は、請求を必要とする理由その他法務省令で定める事項を明らかにしてしなければならない。

《外国人登録法施行規則》

(平成4年11月27日法務省令第36号)

(登録原票の写し等の交付の請求につき明らかにしなければならない事項)

第3条 法第4条の3第6項に規定する法務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。

一 登録原票の写し又は登録原票記載事項証明書の交付を請求する者の資格並びに氏名及び住所又は居所(外国人にあっては居住地)

二 請求に係る外国人の氏名、居住地その他当該外国人を特定するに足りる事項

《国税徴収法》

(昭和34年4月20日法律第147号)

(官公署等への協力要請)

第146条の2 徴収職員は、滞納処分に関する調査について必要があるときは、官公署又は政府関係機関に、当該調査に関し参考となるべき帳簿書類その他の物件の閲覧又は提供その他の協力を求めることができる。

〈参考6〉

《外国人登録原票》

1 外国人登録原票は、B4版の厚紙で作成される法務省の定める様式である。

外国人登録原票は、市区町村においてによって作成するもので、その表面には、氏名(中国、韓国、朝鮮は漢字、それ以外の国はアルファベットであり、通称名があるときはその通称名が記載されている)、生年月日(西暦)、登録年月日(入国して最初に外国人登録した日)、居住地、本人が世帯主である場合その世帯構成員氏名など、日本に父母及び配偶者が居住している場合の当該父母及び配偶者の氏名などが記載され、裏面では、当該外国人の署名、顔写真、変更登録事項などが記載されている。

2 外国人登録原票は、転出した場合は、その外国人登録原票を転出先市区町村に回送することとなっている。

3 2のことから、転出した場合は、外国人登録原票の写しを請求することはできないが、転出先市区町村は把握されている。

4 外国人登録原票の居住地、配偶者欄などは、当該外国人の申し出にしたがって記載され、ホテルや公園なども居住地になり得る。

5 配偶者欄においても申し出となっており、配偶者が日本人である場合に、必ずしも戸籍又は住民票と審査がされていないことから、離婚した場合であっても、外国人登録原票上では、依然として配偶者が存在している場合がある。

(参考書式)

(参考書式1)

(参考書式2)

〈参考7〉

1 世帯主について

住民基本台帳法第7条の世帯主とは、世帯を構成する者のうちで、その世帯を主宰する者をいう。その世帯を主宰するとは、主として生計を維持する者であって、その世帯を代表する者として社会通念上妥当と認められる者と解されている(住民基本台帳事務処理要領、以下「事務処理要領」という。)。

世帯主の認定に当たっては、事務処理要領に示されているように、その者が主としてその世帯の生計を維持している者であるかどうか、及びその世帯を代表する者として社会通念上認められるかどうかの二点が要件となる。したがって、戸籍の筆頭者又は祭具等の承継者であるからといって当然に世帯主となるものではなく、また、男女性別を問わないものである。「社会通念」というのは、一般的に「社会一般に行きわたっている常識又は見解。」(広辞苑)という幅広い概念であって、その判断の基準として、当該世帯員がどのように考えているかという点も判断材料のひとつになる。

外国人と日本人との混合世帯の場合の取扱いについては、外国人が実際の世帯主であっても、外国人は本法の適用からは除外されているので(住民基本台帳法39条)、日本人の世帯員のうち、事実上世帯主に最も近い地位にある者の氏名を世帯主として記載し、実際の世帯主である外国人の氏名を備考として記入する。なお、この備考としての記入は市町村の行政執務上のためのものであり、したがって、本人又は本人と同一の世帯に属する者からの請求であってその合理的必要性が認められるような場合を除いて、当該備考を記載しない形で住民票の写しを作成することとするのが適当である(新訂住民基本台帳法逐条解説―50)。

2 住所の意義および認定

住民基本台帳法上の住民の住所は、地方自治法第10条の住民としての住所と同一であり、各人の生活の本拠をいうものである(同法4条)。住所の認定にあたっては、客観的居住の事実を基礎とし、これに当該居住者の主観的居住意思を総合して決定する(昭和42年10月4日付け法務省民事甲第2671号、保発第39号、庁保発第22号、42食糧業第2668号(需給)、自治振第150号法務省民事局長、厚生省保険局長、社会保険庁年金保険部長、食糧庁長官、自治省行政局長通知)こととされている。

本法における「住所」は、地方自治法第10条第1項の住所と同一であり、民法第21条に規定するように各人の生活の本拠をいうものである。住所の認定については、客観主義、意思主義をめぐって判例、実例、学説があるが、客観的居住の事実を基礎とし、これに当該居住者の主観的居住意思を総合して決定すべきである(事務処理要領)。そして、住所が単数か、複数かについては、学説の分かれるところであるが、地方公共団体の住民の住所については、関係法令を通じて同一の時点においては、同一の場所にあり、単数に限られると解すべきである。住民基本台帳に記載された住所は、反証のない限り、住民の住所であると推定されるが、その記録に形成的効力を認めたわけではないものである(改訂逐条住民基本台帳法解説―54)とされる。

住民票は居住関係を公証する唯一の公簿であること、また、国民年金の被保険者は、その資格の取得及び喪失並びに種別の変更に関する事項並びに氏名及び住所の変更に関する事項を市町村長に届け出なければならならず、被保険者の属する世帯主は、被保険者に代わって前記届出をすることができ、住民基本台帳法22条から24条までの規定による届出があったときは、その届出と同一の事由に基づく前記届出があったこととみなされる(国民年金法12条1項、2項、3項)ものであり、国民年金法上の住所は、住民基本台帳法と同一の場所にあると考えられ、このことはたやすく否定されるべきものではない。

3 住民基本台帳法に関する質疑応答集について

昭和43年3月26日付け自治振第41号自治省行政局振興課長

問2 職業訓練法に定める職業訓練所に入所し、家族と離れて寄宿舎に居住しながら職業訓練を受けている訓練生の住所はどこにあると認められるか。

答 特段の事情のない限り、訓練期間が1年未満の者については入所前の居住地、訓練期間が1年以上の者については寄宿舎にあると認められる。

問3 会社の研修所で合宿をしながら1年以上の研修を受けている場合、その者の住所はどこにあると認められるか。

答 家族と密接な生活関係がある等特段の事情がない限り、研修所にあると認められる。

昭和46年3月31日付け自治振第128号自治省行政局振興課長

問1 単身者であって刑務所に入所しているものの住所は、刑務所の所在地にあると考えられるが、この取扱いについてはどうか。

答 単独で世帯を構成していた受刑者の住所は、刑務所の所在地にあると認められる。

問2 刑務所に入所するまで家族と住所を一にしていた者の住所については、家族のもとになると認定することはどうか。

答 原則として家族の居住地にある。

問3 病院、療養所等に入院、入所している者の住所は家族のもとにあると認定することはどうか。

答 医師の診断により1年以上の長期、かつ、継続的な入院治療を要すると認められる場合を除き、原則として家族の居住地にある。

問4 勤務する事務所又は事業所との関係上家族と離れて居住している会社員等の住所は家族の居住地にあると認定することはどうか。

答 勤務する事務所又は事業所との関係上家族と離れて居住している者の住所は、本人の日常生活関係、家族との連絡状況等の実情を調査確認して認定するものではあるが、確定困難な者で、毎週土曜日、日曜日のごとく勤務日以外には家族のもとにおいて生活をともにする者については、家族の居住地にあるものとする。

問5 住み込み店員等で定まった給与の支給を受けず、子弟同様の待遇を受けている者については、同居の雇主と同一の地に住所があり、かつ、同一の世帯を構成するものと解されるがどうか。

答 当該雇主と生計を一にしていると認められる場合はお見込みのとおり。

問6 学生、生徒の住所は、原則として寮、下宿等にありと認定することとして差し支えないか。

答 勉学のため寮、下宿等に居住する者の住所は、その寮、下宿等が家族の居住地に近接する地にあり、休暇以外にもしばしば帰宅する必要がある等特段の事情のある場合を除き、居住する寮、下宿等の所在地にある。

問7 船員の住所については、航海と航海の中間期間、休暇等に際して家族と生活をともにする関係を失わず、かつ、家族の居住地以外に居を構えてそこを生活の本拠としているような状況がない限りその者の住所は、家族の居住地にあり、船舶内に居住することを常とし港から港へ転々としている者の住所はないと認定してよいか。

答 前段 お見込みのとおり。

後段 航海を終われば通常帰航する関係にある主たる碇けい港にある。

問8 児童福祉施設、老人福祉施設、精神薄弱者援護施設、身体障害者更生援護施設、婦人保護施設等の施設に入所する者の住所は、施設にあると認定して差し支えないか。

答 それらの施設に1年以上にわたって居住することが予想される者の住所は施設の所在地にある。

問9 海外への出張者は、転出として取り扱って差支えないか。

答 海外出張者の住所は、出張の期間が1年以上にわたる場合を除き、原則として家族の居住地にある。

4 世帯の分離について(昭和49年4月18日・東京都行政局指導課あて電話回答)

問 甲が世帯主となっている世帯員のうち乙は甲および他の世帯員と同一の家屋に住んでいるが、所得を得るようになり、生計を別にしているので世帯を別にしてほしい旨世帯変更の届出があったが、これを受理し、乙も世帯主とする新たな住民票を作成してよいか。

答 居住と生計をともにする社会生活上の単位を世帯としているので、この要件を満たしていれば分離することはできないが、事実上生計を別にしていれば分離することも可能である。

〈参考8〉

《被保険者が死亡した場合》

問 死亡した被保険者に滞納保険料がある場合において、法第95条の規定により国税徴収法第27条の納付義務の承継の規定が適用され相続人に納付義務が発生するか。

答 死亡した被保険者の滞納保険料については、国民年金法第95条の規定によって国税徴収法第27条(編注:現在の国税通則法第5条(相続による国税の納付義務の承継)に相当)の規定は適用されるものであること(国民年金質疑応答 逐条改正経過集覧―294)。