アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律の公布について

(平成19年7月20日)

(/保発第07020005号/年発第0720002号/)

(地方厚生(支)局長あて厚生労働省保険局長・厚生労働省年金局長通知)

(公印省略)

社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律は、別添のとおり、平成19年6月27日法律第104号として公布されたところである。

この法律の制定の趣旨及び概要は次のとおりであるので、公的医療保険各法についてその内容につき御了知の上、指導にあたり、遺漏なきよう御配慮願いたい。なお、公的年金各法については、情報提供するものである。

また、この法律の詳細については、今後制定される予定の関係政省令の公布時期に合わせ通知される予定である。

第1 制定の趣旨

国際化の進展に伴い、企業等を中心とした人的交流が国境を越えて活発化しているが、一時的に外国に派遣される被用者等については、自国と相手国双方の年金制度及び医療保険制度に二重に保険料を負担する義務が生じるほか、外国の年金制度への加入期間が短い場合に年金受給権に結び付かないなどの問題が生じている。

このため、一般的に諸外国との間では二国間協定の締結によりこのような問題の解決を図っており、平成19年7月現在、6ヵ国との間で発効済であり、2ヵ国との間で署名が済んでいるところである。

これらの社会保障協定を実施するに当たっては、従来から社会保障協定を締結するごとに厚生年金保険法等の特例等に関する法律を制定してきたところであるが、これらの法律は、いずれも年金制度及び医療保険制度の適用並びに年金を受ける権利を確立するための期間の通算に関する社会保障協定上の規定の実施につき、国内法の規定との間の調整を要する事項を定めることを主たる内容とするものであり、その形式及び内容は、おおむね定型化されてきているところである。

この法律は、このような状況にかんがみ、社会保障協定に係る法制の簡素化及びその適確かつ円滑な実施を図るため、これまで各国ごとに制定されていた社会保障協定の実施に関する諸法律を統合するとともに、今後締結する社会保障協定の実施に備えて、公的医療保険各法及び公的年金各法について必要な特例を一般的に定めるものである。

第2 法律の基本的考え方

1 被保険者の資格に関する特例(年金及び医療保険が対象)

両国の年金制度及び医療保険制度の二重負担を防止するため、社会保障協定の相手国から我が国に一時的に派遣された者等は、公的年金各法及び公的医療保険各法に関し、被保険者としない等の特例を設けることとした。

2 給付の支給要件に関する特例(年金のみ対象)

両国の年金制度の加入期間を有する者について、年金受給権を確保するため、公的年金各法の給付の支給要件について社会保障協定の相手国の年金制度の加入期間を我が国の年金制度に加入していた期間に算入する等の特例を設けることとした。

3 給付の額の計算に関する特例(年金のみ対象)

前記2の特例により支給要件を満たした場合、我が国の年金制度に加入した期間に応じた額を支給することとした。

第3 法律の要点

1 健康保険法関係

健康保険の適用事業所に使用される者であって医療保険制度に係る我が国の法令及び相手国法令の重複適用の回避に関する事項について定める社会保障協定の規定(以下「医療保険制度適用調整規定」という。)により相手国法令の規定の適用を受けるものは、健康保険の被保険者としないこととした。

2 船員保険法関係

船員法第一条に規定する船員として船舶所有者に使用される者であって、日本国籍を有する船舶又は相手国の国籍を有する船舶等において就労し、かつ、医療保険制度適用調整規定により相手国法令の適用を受けるものは、船員保険の被保険者としないこととした。

3 国民健康保険法関係

市町村又は特別区の区域内に住所を有する者であって、医療保険制度適用調整規定により相手国法令の規定の適用を受けるもの又はその配偶者若しくは子であって政令で定めるものは、国民健康保険の被保険者としないこととした。

4 高齢者の医療の確保に関する法律関係

高齢者の医療の確保に関する法律第五十条に規定する者であって、医療保険制度適用調整規定により相手国法令の規定の適用を受けるもの又はその配偶者若しくは子であって政令で定めるものは、後期高齢者医療の被保険者としないこととした。

5 国民年金法関係

(1) 日本国内に住所を有する者であって、年金制度に係る我が国の法令及び相手国法令の重複適用の回避に関する事項について定める社会保障協定の規定(以下「年金制度適用調整規定」という。)により相手国法令の規定の適用を受けるもの又はその配偶者若しくは子であって政令で定めるものは、国民年金の被保険者としないこととした。

(2) 相手国期間を有する者が、老齢基礎年金又は遺族基礎年金の受給資格要件たる期間を満たさない場合、その者の相手国期間を合算対象期間等に算入することとした。

(3) 相手国期間を有する老齢厚生年金又は退職共済年金の受給権者の配偶者について、当該受給権者がその者の配偶者に係る老齢基礎年金の振替加算等の加算資格要件たる期間等を満たさない場合、当該受給権者の相手国期間を考慮することとした。

(4) 相手国期間を有する者が、障害基礎年金又は遺族基礎年金の納付要件を満たさない場合、その者の相手国期間を考慮することとした。

(5) 相手国期間中に初診日のある傷病による障害を有する者であって、当該障害に係る障害認定日において保険料納付済期間等を有するものは、障害基礎年金の支給要件を定めた規定の適用に当たり、当該初診日において国民年金の被保険者であったものとみなすこととした。

(6) 保険料納付済期間等を有する者が相手国期間中に死亡した場合は、遺族基礎年金の支給要件を定めた規定の適用に当たり、国民年金の被保険者が死亡したものとみなすこととした。

(7) (3)の特例により支給する老齢基礎年金の振替加算等の額は、国民年金法の規定による額に、加算の資格要件たる期間に対する被用者年金被保険者等であった期間の比を乗じて得た額等とすることとした。

(8) (4)から(6)までの特例により支給する障害基礎年金又は遺族基礎年金の額は、按分率を乗じて得た額とすることとした。

(9) 障害認定日が社会保障協定の効力発生の日(以下「発効日」という。)前にある傷病に係る初診日において相手国期間を有する者であって、当該初診日が国民年金の被保険者期間又は相手国期間中にあるものが、当該障害認定日において、障害等級に該当する程度の障害の状態にあり、かつ、保険料納付済期間等を有するときは、障害基礎年金を支給することとした。

(10) 相手国期間及び保険料納付済期間を有する者が発効日前に死亡した場合であって、当該死亡した日が国民年金の被保険者期間又は相手国期間中にあるときは、その者の妻又は子に遺族基礎年金を支給することとした。

(11) 国民年金法による給付等の受給資格要件を満たさない者が二以上の相手国期間を有しているときは、一の社会保障協定に係る相手国期間のみを有しているものとして、(2)から(10)までの特例をそれぞれ適用することとした。

(12) (2)から(10)までの特例により支給する国民年金法による給付等の額は、当該国民年金法による給付等の受給権者が二以上の相手国期間を有しているときは、一の社会保障協定に係る相手国期間のみを有しているものとしてそれぞれ計算した額のうち最も高い額とすることとした。

6 厚生年金保険法関係

(1) 厚生年金保険の適用事業所に使用される者であって、年金制度適用調整規定により相手国法令の規定の適用を受けるものは、厚生年金保険の被保険者としないこととした。

(2) 相手国期間を有する者が、老齢厚生年金、遺族厚生年金、老齢厚生年金の加給、遺族厚生年金の中高齢寡婦加算等の受給資格要件又は加算の資格要件たる期間を満たさない場合、その者の相手国期間を厚生年金保険の被保険者期間等に算入することとした。

(3) 相手国期間を有する者が、障害厚生年金、障害手当金又は遺族厚生年金の納付要件を満たさない場合、その者の相手国期間を考慮することとしたこと。

(4) 相手国期間中に初診日のある傷病による障害を有する者であって、当該障害に係る障害認定日において厚生年金保険の被保険者期間を有するものは、障害厚生年金の支給要件を定めた規定の適用に当たり、当該初診日において厚生年金保険の被保険者であったものとみなすこととした。

(5) 相手国期間中に初診日のある傷病による障害を有する者であって、当該障害に係る障害認定日において厚生年金保険の被保険者期間を有するものは、障害手当金の支給要件を定めた規定の適用に当たり、当該初診日において厚生年金保険の被保険者であったものとみなすこととした。

(6) 厚生年金保険の被保険者期間を有する者が相手国期間中に死亡した場合は、遺族厚生年金の支給要件を定めた規定の適用に当たり、厚生年金保険の被保険者が死亡したものとみなすこととした。

(7) (2)の特例により支給する老齢厚生年金の加給、遺族厚生年金の中高齢寡婦加算等の額は、厚生年金保険法の規定による額に、加算の資格要件たる期間に対する厚生年金保険の被保険者期間の比を乗じて得た額とすることとした。

(8) (3)から(6)までの特例により支給する障害厚生年金、障害手当金又は遺族厚生年金の額は、按分率を乗じて得た額とすることとした。

(9) 障害認定日が発効日前にある傷病に係る初診日において相手国期間を有する者であって、当該初診日が厚生年金保険の被保険者期間又は相手国期間中にあるものが、当該障害認定日において、障害等級に該当する程度の障害の状態にあり、かつ、厚生年金保険の被保険者期間を有するときは、障害厚生年金を支給することとした。

(10) 障害程度を認定すべき日が発効日前にある傷病に係る初診日において相手国期間を有する者であって、当該初診日が厚生年金保険の被保険者期間又は相手国期間中にあるものが、当該障害程度を認定すべき日において、厚生年金保険法第五十五条第一項の政令で定める程度の障害の状態にあり、かつ、当該障害に係る障害認定日において厚生年金保険の被保険者期間を有するときは、障害手当金を支給することとした。

(11) 相手国期間及び厚生年金保険の被保険者期間を有する者が発効日前に死亡した場合であって、当該死亡した日が厚生年金保険の被保険者期間又は相手国期間中にあるときは、その者の遺族に遺族厚生年金を支給する。

(12) 厚生年金保険法による保険給付等の受給資格要件を満たさない者が二以上の相手国期間を有しているときは、一の社会保障協定に係る相手国期間のみを有しているものとして、(2)から(11)までの特例をそれぞれ適用することとした。

(13) (2)から(11)までの特例により支給する厚生年金保険法による保険給付等の額は、当該厚生年金保険法による給付等の受給権者が二以上の相手国期間を有しているときは、一の社会保障協定に係る相手国期間のみを有しているものとしてそれぞれ計算した額のうち最も高い額とすることとした。

7 国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法及び私立学校教職員共済法関係厚生年金保険法に準じた特例を設けることとした。

8 被用者年金各法の規定による給付に係る調整

(1) この法律の規定により同時に二以上の老齢厚生年金の加給又は共済年金各法による退職共済年金の加給の支給を受けることができる者については、その額が最も高い一の加給を支給し、その間、他の加給の支給を停止することとした。

(2) 相手国期間中に初診日のある傷病による障害を有する者であって、当該障害に係る障害認定日において二以上の被用者年金制度の被保険者等であった期間を有するものは、当該障害認定日前の直近の被用者年金制度の被保険者等であった期間のみを有するものとみなして障害厚生年金等に係る特例を適用することとした。

(3) 相手国期間中に死亡した者等であって、当該死亡した日において二以上の被用者年金制度の被保険者等であった期間を有するものは、当該死亡した日前の直近の被用者年金制度の被保険者等の資格を喪失した日の前日における被用者年金制度の被保険者等であった期間のみを有するものとみなして遺族厚生年金等に係る特例を適用することとした。

(4) この法律の規定により同時に同一の死亡を支給事由とする二以上の遺族厚生年金の中高齢寡婦加算又は共済年金各法による遺族共済年金の中高齢寡婦加算の支給を受けることができる者については、その額が最も高い一の中高齢寡婦加算を支給し、その間、他の中高齢寡婦加算の支給を停止することとした。

9 その他

(1) 相手国年金の申請等を行おうとする者は、当該相手国年金の申請に係る文書を社会保険庁長官等に提出することができることとした。

(2) 社会保険庁長官等は、厚生年金保険法の被保険者等に関する情報を、当該情報の本人又はその遺族の権利義務に係る社会保障協定の規定の実施に必要な限度において、相手国の権限のある当局又は相手国実施機関等に提供することができることとした。

第4 施行期日等

1 この法律は、平成20年3月31日までの間において政令で定める日から施行することとした。ただし、高齢者の医療の確保に関する法律関係については、平成20年4月1日から施行することとした。

2 この法律の施行に関し必要な経過措置等を定めることとした。

3 次に掲げる法律を廃止することとした。

(1) 社会保障に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律(平成十年法律第七十七号)

(2) 社会保障に関する日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律(平成十二年法律第八十三号)

(3) 社会保障に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律(平成十六年法律第百二十六号)

(4) 社会保障に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律(平成十六年法律第百二十七号)

(5) 社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律(平成十七年法律第六十四号)

(6) 社会保障に関する日本国とベルギー王国との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律(平成十七年法律第六十五号)

(7) 社会保障に関する日本国とカナダとの間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律(平成十八年法律第七十二号)