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○社会福祉施設等における新型インフルエンザ対策等について

(平成17年11月30日)

(/雇児総発第1130001号/社援基発第1130001号/障企発第1130001号/老計発第1130001号/)

(各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長あて厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長、厚生労働省社会・援護局福祉基盤課長、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長、厚生労働省老健局計画課長通知)

近年、東南アジアを中心に高病原性鳥インフルエンザ(A/H5N1型)が流行しており、このウイルスがヒトに感染し、死亡に至った例も報告されている。また、高病原性鳥インフルエンザの発生がヨーロッパでも確認されるなど、依然として流行が拡大・継続しており、ヒトからヒトへ感染する新型インフルエンザの発生危険性が高まっている。このため、国においては別添1「新型インフルエンザ対策行動計画」及び別添2「新型インフルエンザに関するQ&A」等を作成し、新型インフルエンザ対策を進めているところである。

社会福祉施設等におけるインフルエンザに関する対策については、「社会福祉施設等における今冬のインフルエンザ総合対策の推進について」(平成17年11月8日雇児総発第1108001号、社援基発第1108001号、障企発第1108001号、老発第1108001号厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長、社会・援護局福祉基盤課長、社会・援護局障害保健福祉部企画課長、老健局計画課長連名通知)により、施設内感染防止対策等の推進をお願いするとともに、特に施設内で感染症等が発生した場合の報告については、「社会福祉施設等における感染症発生時に係る報告について」(平成17年2月22日健発第0222002号、薬食発第0222001号、雇児発第0222002号、社援発第0222002号、老発第0222001号厚生労働省健康局長、医薬食品局長、雇用均等・児童家庭局長、社会・援護局長、老健局長連名通知。以下「報告通知」という。(別添3))をお示ししたところである。また、インフルエンザ以外の感染症も含めた社会福祉施設等における感染対策全般については、各種感染対策マニュアルの作成により、その活用を図っているところである。

これらの通知等を、管内市町村及び管内社会福祉施設等に対して周知徹底いただくとともに、以下の点にも留意しつつ、都道府県と市町村が十分に連携を図り、感染症等に対する対策を強力に推進していただくようお願いする。

なお、11月30日に、全国感染症主管課長会議が開催され、新型インフルエンザに関する説明が行われたので、この内容も含めて、衛生主管部局とも十分な連携を図り、新型インフルエンザ対策を進めていただくようお願いする。

1 社会福祉施設等における感染症発生時に係る医療の確保については、特に新型インフルエンザ対策の施設内集団感染の危険性等を踏まえ、報告通知の2.においてお示ししているとおり、社会福祉施設等は、保健所と相談し、指定された医療機関などと十分連携を図るようにするなど医療提供の手段を講じておくこと。

2 社会福祉施設等において家きんが飼養されている場合には、それらの家きんと野鳥との接触を避けるよう、周知徹底を行うこと。

(参考)

○ 新型インフルエンザ対策関連情報

http://www.mhlw.go.jp/index.html

○ インフルエンザ総合対策ホームページ

http://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/h1112-1.html

○ 国立感染症研究所感染症情報センター

http://idsc.nih.go.jp/index-j.html

○ 「高齢者介護施設における感染管理のあり方に関する研究報告書」(平成16年度厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業))における感染対策マニュアル

http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/tp0628-1/index.html

○ 「赤ちゃん・子どもの感染症予防ガイドブック」(平成16年度独立行政法人福祉医療機構[子育て支援基金]助成事業により財団法人母子衛生研究会が作成)

[別添1]

新型インフルエンザ対策行動計画

厚生労働省

(平成17年11月)

―目次―

<総論>

背景

流行規模の想定

対策の基本方針

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 基本的考え方

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 対策の推進体制

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 行動計画のフェーズの概要と目標

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 行動計画の主要5項目

<各論>

フェーズ1

計画と連携

サーベイランス

予防と封じ込め

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 抗インフルエンザウイルス薬

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 ワクチン

医療

情報提供・共有

フェーズ2A

計画と連携

サーベイランス

予防と封じ込め

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 抗インフルエンザウイルス薬

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 ワクチン

医療

情報提供・共有

フェーズ2B

計画と連携

サーベイランス

予防と封じ込め

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 抗インフルエンザウイルス薬

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 ワクチン

医療

情報提供・共有

フェーズ3A

計画と連携

サーベイランス

予防と封じ込め

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 抗インフルエンザウイルス薬

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 ワクチン

医療

情報提供・共有

フェーズ3B

計画と連携

サーベイランス

予防と封じ込め

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 抗インフルエンザウイルス薬

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 ワクチン

医療

情報提供・共有

フェーズ4A

計画と連携

サーベイランス

予防と封じ込め

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 抗インフルエンザウイルス薬

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 ワクチン

医療

情報提供・共有

フェーズ4B

計画と連携

サーベイランス

予防と封じ込め

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 抗インフルエンザウイルス薬

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 ワクチン

医療

情報提供・共有

フェーズ5A

計画と連携

サーベイランス

予防と封じ込め

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 抗インフルエンザウイルス薬

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 ワクチン

医療

情報提供・共有

フェーズ5B

計画と連携

サーベイランス

予防と封じ込め

画像21 (1KB)別ウィンドウが開きます
 抗インフルエンザウイルス薬

画像22 (1KB)別ウィンドウが開きます
 ワクチン

医療

情報提供・共有

フェーズ6A

計画と連携

サーベイランス

予防と封じ込め

画像23 (1KB)別ウィンドウが開きます
 抗インフルエンザウイルス薬

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 ワクチン

医療

情報提供・共有

フェーズ6B(国内パンデミック期)

計画と連携

サーベイランス

予防と封じ込め

画像25 (1KB)別ウィンドウが開きます
 抗インフルエンザウイルス薬

画像26 (1KB)別ウィンドウが開きます
 ワクチン

医療

情報提供・共有

後パンデミック期

計画と連携

サーベイランス

予防と封じ込め

画像27 (1KB)別ウィンドウが開きます
 抗インフルエンザウイルス薬

画像28 (1KB)別ウィンドウが開きます
 ワクチン

医療

情報提供・共有

参考資料

新型インフルエンザ対策の推進体制

WHOにおけるインフルエンザパンデミックフェーズ

鳥インフルエンザと新型インフルエンザの関係

用語解説

※ フェーズの表記について:

表記を簡略化し、国内非発生の場合は「A」、国内発生の場合は「B」とする。

(例.WHOフェーズ2において国内非発生の場合は、「フェーズ2A」)

新型インフルエンザ対策行動計画

<総論>

[背景]

新型インフルエンザは、毎年流行を繰り返してきたウイルスとは表面の抗原性が全く異なる新型のウイルスが出現することにより、およそ10年から40年の周期で発生する。ほとんどの人が新型のウイルスに対する免疫を持っていないため、世界的な大流行(パンデミック)となり、大きな健康被害とこれに伴う社会的影響をもたらす。

20世紀では、1918年(大正7年)に発生したスペインインフルエンザ大流行が最大で、世界中で約4千万人が死亡したと推定されており、我が国でも約39万人が死亡している。また、1957年(昭和32年)にはアジアインフルエンザ、1968年(昭和43年)には香港インフルエンザがそれぞれ大流行を引き起こしており、医療提供機能の低下を始めとした社会機能や経済活動の様々な混乱が記録されている。

近年、東南アジアを中心に高病原性鳥インフルエンザ(A/H5N1型)が流行しており、このウイルスがヒトに感染し、死亡例も報告されている(2003年(平成15年)12月~2005年(平成17年)10月の間で、ヒトの発症者122名、うち死亡者62名)。また、高病原性鳥インフルエンザの発生がヨーロッパでも確認されるなど、依然として流行が拡大・継続しており、ヒトからヒトへ感染する新型インフルエンザの発生の危険性が高まっている。

新型インフルエンザに対する国際的な取組としては、これまで、世界保健機関(WHO)が、世界に4つあるWHOインフルエンザコラボレーティングセンター(日本、米国、英国、オーストラリア)の協力を得て、インフルエンザパンデミック対策を進めてきている。2005年(平成17年)5月には、WHOが「WHO Global Influenza Preparedness Plan(WHO世界インフルエンザ事前対策計画)」を公表し、各国がこれを基準として自国の国民を守るための行動計画の策定を進めている。

一方、我が国では、2003年(平成15年)10月、厚生労働省に「新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会」が設置され、対策の検討を進め、2004年(平成16年)8月に同委員会で「新型インフルエンザ対策報告書」を取りまとめた。その検討開始後には、我が国でも家きんにおいて高病原性鳥インフルエンザ(A/H5N1型)が発生(山口県・大分県・京都府)し、感染家きんの防疫措置が講じられるなど緊迫した状況となり、政府全体の対応として、2004年(平成16年)3月に「鳥インフルエンザ緊急総合対策」が取りまとめられるとともに、早期通報促進、移動制限区域内の農家への補償等を内容とする家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)の改正が行われた。同年11月には、高病原性鳥インフルエンザ防疫マニュアル(平成15年9月農林水産省消費・安全局長通知)が見直され、家畜伝染病予防法に基づく高病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針として策定された。

さらに「新型インフルエンザ対策報告書」の提言に基づき、2005年(平成17年)4月には、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)に基づく「感染症の予防の総合的推進を図るための基本的な指針」(平成11年厚生省告示第115号)等を改正し、ワクチン開発や抗インフルエンザウイルス薬の備蓄等に係る規定を盛り込み、対策を進めてきたところである。

このように我が国においても対策を段階的に進めてきたところではあるが、今般、さらに新型インフルエンザウイルス発生の危険性が高まってきていることから、迅速かつ確実な対策を講ずるため、「WHO世界インフルエンザ事前対策計画」に準じて「新型インフルエンザ対策行動計画」を策定することとした。

[流行規模の想定]

新型インフルエンザ発生の流行規模は、出現した新型インフルエンザウイルスの病原性や感染力の強さ等に左右されるものであり、現時点でその流行規模を完全に予測することは難しいが、今回の新型インフルエンザ対策行動計画を策定するに際しては、「新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会」において一つの例として推計された健康被害を踏まえて想定した。

この推計は、米国疾病管理センター(以下、「CDC」という。)により示された推計モデル(FluAid2.0 著者Meltzerら、2000年7月)を用いて、我が国の状況をそのまま当てはめて行ったものである。推計の結果、全人口の25%が新型インフルエンザに罹患すると想定した場合に医療機関を受診する患者数は、約1,300万人~約2,500万人(中間値約1,700万人)と推計されている。

この推計の上限値である約2,500万人を基に、過去に世界で起こったインフルエンザパンデミックのデータ;アジアインフルエンザ等を中等度(致死率0.53%)、スペインインフルエンザを重度(致死率2%)として、新型インフルエンザの病原性が中等度の場合と、重度の場合について推計した。その上限値はそれぞれ、中等度の場合では、入院患者数は約53万人、死亡者数は約17万人となる。また、重度の場合では、中等度と重度の場合の死亡率から推計すると、入院患者数は約200万人、死亡者数は約64万人と推定される。なお、これらの推計においては、新型インフルエンザワクチンや抗インフルエンザウイルス薬等による介入の影響(効果)、現在の我が国の衛生状況等については考慮されていないことに留意する必要がある。

また、全人口の25%が罹患し、流行が8週間続くという仮定の下での、中等度の場合での入院患者の発生分布の試算では、1日当たりの最大入院患者数は、10万1千人(流行発生から5週目)となっている。さらに、重度の場合には、1日当たりの最大入院患者数も増大すると推定される。

[対策の基本方針]

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 基本的考え方]

新型インフルエンザの出現時期を正確に予知することは困難であり、また、その出現そのものを阻止することは不可能である。また、地球規模でヒト・モノがダイナミックに動いている時代でもあり、世界中のどこかで新型インフルエンザの出現が起これば、我が国への侵入も避けられないと考えられる。

なお、鳥インフルエンザのまん延防止を的確に講じることにより、新型インフルエンザの出現を遅らせることは可能であると考えられている。

従って、新型インフルエンザ対策の目的は、家畜衛生部門との連携を図ることにより、新型インフルエンザの出現を可能な限り防止し、公衆衛生的な介入により、発生初期の段階でできる限り封じ込めを行うとともに、パンデミック時における感染拡大を可能な限り阻止し、健康被害を最小限にとどめ、社会・経済機能の破綻に至らせないことである。

このため、発生・流行時に想定される状況を念頭におき、新型インフルエンザの発生に係るWHOのフェーズごとに、我が国における行動計画をあらかじめ確立しておく必要がある。また、この行動計画を事前に関係者に広く周知し、具体的な行動が速やかにとることができるよう準備しておく必要がある。なお、各フェーズにおける対策に必要となる資器材等については、事前に準備計画を策定し、それを実行して準備体制を整えておくことが重要である。本行動計画は、国における新型インフルエンザ対策の行動計画であり、したがって、都道府県が新型インフルエンザ対策を行う際は、国の行動計画も踏まえ、地域の実情に応じて、必要な対策を行うことが重要である。

本行動計画は国としての対策の具体的方針を示すものであり、各種ガイドラインやマニュアル等を基に具体的な対応を取っていくものとする。

なお、新型インフルエンザのパンデミックは必ずしも完全に予測されたように展開するものではないことが想定されることから、常に行動計画やガイドライン、マニュアル等を見直し、必要に応じて修正を行っていくこととする。

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 対策の推進体制]

新型インフルエンザ対策を推進するに当たり、関係機関等の役割を踏まえた政府の取組を以下に示す。

1.政府の取組

A) 政府

新型インフルエンザ対策のため、「鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議」の枠組みを通じ、政府一体となった取組を推進する。

また、各省庁においても新型インフルエンザが発生した際の具体的な対応について、あらかじめ対応策を検討し、その流行に応じた対策を総合的に推進する。

B) 厚生労働省

関係部局から構成される対策本部を設置し、新型インフルエンザ対策の具体的な行動計画を策定するとともに、新型インフルエンザの発生動向の把握、予防・治療など、その流行状況に応じた対策を総合的に推進する。

また、「サーベイランス」「予防・封じ込め」「医療」「情報提供・共有」「国際対応」の5つの案件に関する専門家から構成される「新型インフルエンザ専門家会議」を組織し、対応の強化を図る。

2.地方自治体の協力

新型インフルエンザ対策の推進及びパンデミックが起こった際の対応を行うため、都道府県レベルでの対策本部の設置、具体的な行動計画の策定など、地域の実情に応じた必要な対策実施の協力を要請する。

3.関係機関の協力

パンデミック時における感染拡大を可能な限り阻止し、健康被害を最小限にとどめるとともに、社会・経済機能の破綻に至らせないようにするため、関係機関(医療関係者、医療機関、社会福祉施設、公共交通機関、マスメディア、企業等)の協力を求める。

4.国民の協力等

国民は、新型インフルエンザ等に関する正しい知識を持ち、その予防に注意を払うよう努める。また、新型インフルエンザ患者等の人権が損なわれることのないようにしなければならない。

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 行動計画のフェーズの概要と目標]

新型インフルエンザへの対策は、その発生状況等に応じてとるべき対応が異なることから、あらかじめ状況を想定し、各状況において迅速かつ的確な対応ができるよう、平時より対応方針を定めておく必要がある。

上述の「WHO Global Influenza Preparedness Plan(WHO世界インフルエンザ事前対策計画)」においては、パンデミックが起こる前からパンデミックがピークを迎えるまでを状況に応じて6つのフェーズに分類して、それぞれの対応等を規定している。そこで、我が国においても、このWHOの定義に準じて6つのフェーズに分類し、さらにフェーズごとに国内で新型インフルエンザが発生していない場合(国内非発生)と国内で新型インフルエンザが発生した場合(国内発生)に細分化して、我が国のパンデミック行動計画を定めることとした。

我が国の段階の決定については、WHOが宣言(実施)するフェーズの引き上げ、及び引き下げに連動させて新型インフルエンザ対策推進本部長が決定し、具体的対応については、我が国の各段階に基づく行動計画を実施することとする。なお、2005年(平成17年)11月14日現在は、WHOによればフェーズ3とされており、我が国の状況はWHOフェーズ3の国内非発生の段階となる。従って、当面の対応は、本行動計画における「フェーズ3A」(フェーズ3の国内非発生)以降の段階について取っていくこととなる。

[WHOフェーズ1]

定義:

ヒトにおいては新たな亜型のインフルエンザウイルスは同定されていない。動物においては、ヒトに感染する恐れのあるインフルエンザウイルスが存在しているが、もしも動物に見られたとしても、ヒトへの感染リスクは小さいと考えられる。

目標:

ヒトに感染する可能性がある亜型インフルエンザは存在していないが、将来の国内におけるインフルエンザパンデミックに対する対策を強化する。

[WHOフェーズ2]

定義:

ヒトにおいては新たな亜型のインフルエンザウイルスは同定されていない。しかしながら、動物において循環している亜型インフルエンザウイルスが、ヒトへの発症に対してかなりのリスクを提起する。

目標:

動物においてヒトに感染する可能性が高い亜型インフルエンザが存在するため、ヒトへの感染伝播のリスクを減少させる対策を講じる。また、そのような感染伝播が発生した際には、迅速に検知し、報告する体制を整備する。

[WHOフェーズ3]

定義:

新しいヒト感染(複数も可)が見られるが、ヒト―ヒト感染による拡大は見られない、あるいは非常にまれに密接な接触者(例えば家族内)への感染が見られるにとどまる。

目標:

ヒトに対する感染が発生しているため、新しい亜型のウイルスの迅速な同定と、追加症例の早期検知、報告、対応を確実に実施する。

[WHOフェーズ4]

定義:

限定されたヒト―ヒト感染の小さな集団(クラスター)が見られるが、拡散は非常に限定されており、ウイルスがヒトに対して十分に適合していないことが示唆されている。

目標:

ワクチン開発を含めた、準備した事前対策を導入する時間を稼ぐため、新型ウイルスを限られた発生地域内に封じ込めを行う。あるいは、拡散を遅らせる。

[WHOフェーズ5]

定義:

より大きな(一つあるいは複数の)集団(クラスター)が見られるが、ヒト―ヒト感染は依然限定的で、ウイルスはヒトへの適合を高めているが、まだ完全に感染伝播力を獲得していない(著しいパンデミックリスクを有していない)と考えられる。

目標:

可能であるならパンデミックを回避し、パンデミック対応策を実施する時間を稼ぐため、新型ウイルスの封じ込めを行う。あるいは、拡散を遅らせるための努力を最大限行う。

[WHOフェーズ6]

定義:

パンデミック期:一般のヒト社会の中で感染が増加し、持続している。

小康状態:パンデミック期が終わり、次の大流行(第2波)までの期間。

第2波:次の大流行の時期

目標:

社会機能を維持させるため、パンデミックの影響(被害)を最小限に抑える。小康状態の間に、次の大流行(第2波)に向けて、これまでの対策の評価、見直し等を行う。

[WHO後パンデミック期(リカバリ期)]

定義:

パンデミック間期への回帰

目標:

これまでの実施対策を段階的に縮小させる。

また、これまで実施した対策について評価を行い、行動計画の見直しを行うとともに、次期流行に備えた対策を実施する。

(※本行動計画におけるフェーズの表記について:

表記を簡略化し、国内非発生の場合には、「A」、国内発生の場合には、「B」とした。

(例:WHOフェーズ2における国内非発生は、フェーズ2A、国内発生はフェーズ2B。))

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 行動計画の主要5項目]

我が国における行動計画は、その目標と活動を、WHOの示した加盟各国の包括的目標を参考に、「計画と連携」「サーペイランス」「予防と封じ込め」「医療」「情報提供・共有」の5分野に分けて立案している。各分野に含まれる内容を以下に示す。

[① 計画と連携]

新型インフルエンザ対策の目的は、パンデミック出現時における健康被害を最小限にとどめるとともに、社会機能の破綻を防止して社会活動を維持するという危機管理にある。この危機管理に迅速かつ的確に対応するためには、各段階に応じた行動計画をあらかじめ策定しておき、広く関係者に周知しておく必要がある。

また、新型インフルエンザは、鳥インフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスが再集合すること等により変異し、出現するとされていることから、特に、公衆衛生部門と家畜衛生部門との緊密な連携が求められる。さらに、パンデミック時には、社会機能を維持するため政府一丸となった取組が求められる。

このため、「鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議」の枠組みを通じ、関係省庁における認識の共有を図るとともに、関係省庁間の連携を確保し、一体となった取組を推進する。

厚生労働省は、厚生労働大臣を本部長とする「新型インフルエンザ対策推進本部」において、新型インフルエンザ対策行動計画を策定するとともに、各段階に応じた行動計画の実施に支障が生じないよう必要な措置を講ずる。

さらに、高病原性鳥インフルエンザの発生状況等に関する情報交換を行うとともに、海外派遣専門家チームを編成し、国際機関又は発生国からの要請に応じて派遣を行うなど、国際的な連携の強化を図る。

[② サーベイランス]

新型インフルエンザの流行に備えた国内体制を速やかにとるためには、新型インフルエンザが出現したことをいち早く察知する必要があり、そのためのサーベイランス体制を確立し、国内外の情報を速やかに入手することが重要である。

国内においては、感染症発生動向調査による患者発生の動向、ウイルスの亜型を検査する病原体サーベイランス、家きんにおける高病原性鳥インフルエンザのサーベイランス、豚におけるインフルエンザウイルスの病原体サーベイランスの実施等により、常時、監視体制をとる。また、WHOフェーズの進展に従い、感染のみられた集団(クラスター)を早期に発見するためのクラスターサーベイランスの実施や、疾病罹患状況の異常を早期に検知するための症候群サーベイランスの実施等サーベイランス体制の強化を図る。

諸外国の状況については、WHOを中心としたインフルエンザサーベイランスに関する国際的なネットワークであるFlu Netや国際獣疫事務局(OIE)が導入している早期警戒システム(The OIE Early Warning System)を通じ、必要な情報を迅速に入手する。

[③ 予防と封じ込め]

新型インフルエンザの発生予防及び感染拡大防止・封じ込め対策は、健康被害を最小限にとどめるとともに、社会・経済機能の破綻に至らせないためにも重要であるが、これには、新型インフルエンザへの変異を起こす可能性が高い高病原性鳥インフルエンザが発生している時期から対策をとる必要がある。

そのため、高病原性鳥インフルエンザの発生予防として、発生国・地域からの鳥類等の輸入の停止、輸入鳥類等に係る輸出国衛生証明書の確認、高病原性鳥インフルエンザ発生国・地域への渡航者に対する注意喚起、農場段階における衛生管理(ヒトや車両の消毒、野鳥の侵入防止対策等)の徹底を行うほか、国内で高病原性鳥インフルエンザが発生した場合には、発生を限局的に防圧するためのまん延防止措置(患畜等の殺処分、周辺農場の飼養家きんの移動制限等)を実施する。

また、新型インフルエンザ予防については、うがい、手洗い、マスク着用等の基本的な感染症防御方法の実施や感染者に接触しないという個人単位での感染防止策の徹底を図るとともに、国外での発生がある場合には、同地域への渡航情報の発出や入国者の新型インフルエンザ罹患チェックのため検疫の強化等を実施する。

さらに、感染拡大防止・封じ込めのため、パンデミック時等における患者の隔離、接触者調査及び接触者に対する抗インフルエンザウイルス薬の予防投与を検討するとともに、場合によっては国民の社会活動の制限(例:不特定多数の集まる活動の自粛勧告、新型インフルエンザ様症状が見られた者の出勤停止・受診勧告等)を実施する。

なお、安全で有効なワクチンが実用化されれば、ヒトへの感染防止に大きな効果を発揮することが期待できるが、現在、新型インフルエンザウイルスに対するワクチンは未だ実用化に到っていない。このため、モックアップ(プロトタイプ)ワクチンの開発及び製造販売承認の迅速な取得を当面の共通目標として関係者間で共有し、認識を徹底し、新型インフルエンザの発生が見られた段階で迅速な製造に取りかかれるよう必要な手続き等の準備を進める。

[④ 医療]

流行規模の想定において、新型インフルエンザ(中等度)のパンデミック時には一日最大10万1千人の患者が入院するとの推計がされており、また、それ以上に外来患者が受診すると考えられるが、医療資源(病床数等)には制約があり、その中でいかに効果的・効率的な医療を行うのかを事前に計画する必要がある。さらに、新型インフルエンザの病原性が重度である場合には、これを超える入院患者数が想定されていることから、このような場合の医療体制についても事前に考慮しておく必要がある。

新型インフルエンザの診断及び治療方法等を確立させ、それを各医療機関に周知徹底を図り、早期治療等を実施させるとともに、それらを基に、新型インフルエンザが疑われる者とそれ以外の疾患の患者との接触を避けることや、医療従事者の健康管理、患者と接触した医療従事者等に対する抗インフルエンザ薬の予防投与・ワクチン接種による院内感染対策を実施し、二次感染防止を行う。

また、病床については、我が国での新型インフルエンザ発生初期(フェーズ4B,5B)には、患者の治療とともに封じ込め対策としても有効であることから、症例基準に合致する新型インフルエンザ疑い患者を感染症指定医療機関に入院させることとし、そのための感染症病床や結核病床等の陰圧病床の利用計画を策定する。

さらに、フェーズ6B(国内発生期)になった場合には、患者数が増大することが想定されることから、感染症指定医療機関以外の医療機関や大型施設等に患者を入院・入所させることができるように、その活用計画を検討しておく必要がある。

なお、抗インフルエンザウイルス薬については、社会機能を維持させるために抗インフルエンザウイルス薬の備蓄が必要なこと、通常のインフルエンザにも同薬が使用されることから、治療薬の適正な使用が実施されないと、新型インフルエンザパンデミック時には、その供給量の絶対的不足の可能性がある。そのため、国は備蓄計画や治療薬の適正な使用方法(抗インフルエンザウイルス薬の投与優先順位等)等をあらかじめ策定し関係者の理解を得ておく必要がある。

[⑤ 情報提供・共有]

現在、新型インフルエンザが発生したという情報はないが、鳥インフルエンザの発生や鳥インフルエンザのヒトへの感染事例等に関する情報は、新型インフルエンザ発生を示唆する重要な情報の一つである。これらの情報は適宜、発生国、国際機関(WHO、OIE、FAO等)などから発信されているが、これらの情報を収集し、関係者間で共有する体制を構築する。

なお、収集した情報については、新型インフルエンザの感染防止・拡大防止の観点から、適宜、国民に情報提供しながら、情報を共有していくとともに、国民のパニック防止という観点も含め対応していく必要がある。このため、厚生労働省内に広報担当官(スポークスパーソン)を設置し、情報提供の一元化を図るとともに、新型インフルエンザの流行状況に応じて、国内外の発生状況・対応状況等について、定期的に国内外に向けた情報提供を行う。また、国民がこれら情報を受け取る媒体や受け取る内容についても千差万別であることが考えられるため、複数の情報提供媒体の設定、理解しやすい内容での情報提供を行う。

新型インフルエンザ対策行動計画

<各論>

フェーズ1

(ヒトから新しい亜型のインフルエンザは検出されていないが、ヒトへ感染する可能性を持つウイルスが動物に検出)

[計画と連携]

[関係省庁間の連携]

・ 「鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議」の枠組みを通じ、関係省庁間の認識の共有を図る。(各省庁)

[情報収集]

・ 国内外の情報を収集する。(厚生労働省、農林水産省、外務省、文部科学省)

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 情報収集源

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 世界保健機関(WHO)、国際獣疫事務局(OIE)、国連食糧農業機関(FAO)

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 国立感染症研究所:WHOインフルエンザコラボレーティングセンター

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 独立行政法人動物衛生研究所

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 国立大学法人北海道大学:OIEリファレンスラボラトリー

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 在外公館等

・ 各種ガイドラインの作成及び見直しを行う。(厚生労働省、各省庁)

[国際間の連携(協力・協調)]

・ 研究者、医療関係者、動物衛生専門家、保健担当行政官の海外における人材育成のために、研修員受入、専門家派遣、現地における研修を行う。(外務省、厚生労働省、農林水産省、関係省庁)

[サーベイランス]

・ ヒトで毎年冬季に流行するインフルエンザ(5類感染症)について、約5,000の医療機関(指定届出機関)における発生動向の週毎の把握。うち、約10%の500機関において、ウイルスの亜型などについて病原体サーベイランスを実施する。(厚生労働省)

・ インフルエンザ流行期におけるインフルエンザ関連死亡者数を把握する。(厚生労働省)

・ 家きん、豚等におけるインフルエンザのサーベイランスを実施する。(農林水産省、厚生労働省)

・ 日本に飛来する渡り鳥における高病原性鳥インフルエンザウイルス保有調査を実施する。(環境省)

・ 各国のサーベイランス体制の強化に協力する。(外務省、関係省庁)

[予防と封じ込め]

[家きんにおける高病原性鳥インフルエンザの防疫対策]

・ 家きん疾病小委員会において防疫対策を検討するとともに、高病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針を策定し、対応する。(農林水産省)

・ 万一の発生に備え、迅速な措置が講じられるよう都道府県及び関係機関と協力し、防疫演習を実施する。(農林水産省)

・ 防疫対策として必要となる資材(インフルエンザ迅速診断キット、マスク等)、一般国民の需要急増が予測される衛生資材等(消毒薬、マスク等)の生産・流通・在庫等の状況を把握する仕組みを確立する。(農林水産省、厚生労働省)

・ 高病原性鳥インフルエンザが急速に拡大し、迅速なまん延防止措置が困難となる事態に備えて、緊急接種用の家きん用のワクチンを備蓄する。(農林水産省)

・ 感染国各国の現地における封じ込めへの協力を行う。(外務省、関係省庁)

[抗インフルエンザウイルス薬]

[科学的知見の収集・整理・分析]

・ 既存の抗インフルエンザウイルス薬の有効性やウイルスの薬剤耐性などに関する研究を実施する。(厚生労働省)

・ 既存の抗インフルエンザウイルス薬の安全性を評価する。(厚生労働省)

・ インフルエンザ迅速診断キットや抗インフルエンザウイルス薬の適正使用を医療機関に周知する。(厚生労働省)

[パンデミック時の流通体制の確保]

・ 抗インフルエンザウイルス薬の流通状況を確認し、効果的に供給される体制を構築する。(厚生労働省)

[ワクチン]

[技術開発の促進]

・ 新型インフルエンザに対する有効なワクチン開発やワクチン開発基盤技術の開発を促進する。(厚生労働省)

・ 毎年冬季に流行するインフルエンザ用ワクチンの接種に関する情報を提供する。(厚生労働省)

・ ワクチン接種の需要量が増大した場合に、迅速に接種できるための新投与方法に係る必要な技術開発・導入の可能性を検討する。(厚生労働省)

・ ワクチン製造用株の作成と製造業者への供給体制を、政府、国内研究機関及び製造業者の連携を通じて確立する。(厚生労働省)

・ ワクチンの抗原量を減少させても有効性が期待できる製剤等、接種対象人数を増大できる技術の開発及び増殖性のよいウイルスの開発による生産性の向上を促進する。(厚生労働省)

[接種体制に関する基本方針策定]

・ 実施に関する各省庁・自治体の間の協力・調整のフレームワークの作成、ワクチン接種準備を行う。(厚生労働省)

[接種体制](厚生労働省)

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 接種の実施基本案作成(運営組織構成、接種場所(各職場、居住地域、他)、必要な実施施設・人員の推定、ワクチンの流通・保管・警備計画)

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 接種実施医療機関・施設の選択基準検討

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 接種の実施の際の職域・地域における人材の登録制度の設立検討

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 集団予防接種関連機材の確認、生産状況の把握と増産可能性の検討

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 使用した接種器具の回収・保管・廃棄方法の検討、現在の能力の評価と強化方法の検討

[国際間の連携(協力・協調)]

・ 動物間のインフルエンザ流行国等との情報の交換を促進する。(厚生労働省)

・ ワクチンの有効性、安全性のモニタリングについてのWHO等を通じた共通の指標の作成に協力する。(厚生労働省)

[医療]

・ 都道府県に対し、感染症指定医療機関の整備を進めるよう要請する。(厚生労働省)

[情報提供・共有]

・ 国内外のネットワーク等のうち、情報提供に利用可能な媒体・機関について整理する。(厚生労働省、農林水産省)

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 政府広報

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 関係機関のホームページ、メディア

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 関係団体:医師会、学会、獣医師会等

・ 国内外の情報について共有する。(厚生労働省、農林水産省、外務省)

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 情報収集源

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 WHO、OIE、FAO、その他国際組織

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 在外公館