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○災害時の人工透析提供体制の確保について

(平成19年8月23日)

(/医政指発第0823001号/医政経発第0823001号/健疾発第0823001号/健水発第0823001号/社援総発第0823001号/)

(各都道府県衛生主管部(局)長・災害救助法主管部(局)長あて厚生労働省医政局指導課長医政局経済課長、健康局疾病対策課長、健康局水道課長、社会・援護局総務課長通知)

災害時の人工透析提供体制の確保については、慢性腎不全の患者は2、3日に1回人工透析を実施することが生命維持に不可欠であるため、災害時においても、人工透析を継続することがきわめて重要であり、本年の能登半島地震や新潟県中越沖地震でも、他病院への受け入れなどの措置が講じられたところである。

一方、本年の能登半島地震は、大規模地震の発生する可能性が低いとされていた地域で発生し、新潟県中越沖地震では新潟県中越地震の被災地が再び被災するなど、いつでもどこでも地震災害は起こり得るということを改めて認識させられたところである。

このような中、今後も災害時に適切に人工透析を提供することができるようにすることが重要であることから、このたび、災害時の人工透析提供体制の確保について求められる取組を、下記のとおりとりまとめたので、参考の上、災害時の人工透析の確保体制に遺漏がないよう、平時よりマニュアルの策定等、一層の取組をお願いするとともに、貴管下市町村及び関係機関に周知方お願いする。

なお、参考として平成12年度厚生科学研究報告書「地域災害下における透析医療の実態調査と対応マニュアルの策定に関する研究―有珠山噴火における透析医療をふまえて―」を添付するので参考とされたい。

1.情報収集・情報提供

都道府県は、平時から、市町村、地域医師会、(社)日本透析医会、関係団体等と連携し、透析医療機関に関する情報(医療機関数、当該所在地、透析ベッド数、医師数等)及び患者数に関する情報等を収集・把握すること。また、情報伝達網を確立しておくことが望ましい。

都道府県は、災害発生時には、(社)日本透析医会の災害時情報ネットワークを活用するなどして、上記関係機関等と連携しながら、透析医療機関の被害状況、稼働状況を把握するとともに、患者を受け入れ可能な透析医療機関の情報収集を行う。

これらに基づき、都道府県・市町村は、広報紙、報道機関、避難所・救護所、医療機関等を通じ、透析患者や患者団体等へ的確な情報を提供し、受療の確保を図ること。また、都道府県は、被災状況を厚生労働省健康局に報告するほか、必要に応じ、国に助言や支援を求めるとともに、他の地方自治体に支援を要請する。

2.水・医薬品等及び医療機関の確保

都道府県は、平時においては、透析医療機関の耐震化に努めるとともに、水道事業者等と連携し当該施設に至る水道施設の耐震化の促進に努める。また、水等の供給が絶たれた場合の対応について、自己水源や自家発電装置の確保状況の把握、他の地方自治体との応援態勢の構築など事前に対策を講じておくことが望ましい。医薬品・医療機器については、その確保状況を把握し、不足した場合に備えて事前に対策を講じておくことが望ましい。

都道府県は、災害発生時には、(社)日本透析医会等と連携しながら透析医療機関の状況を把握し、断水等により水の供給がないため人工透析を実施できない恐れのある医療機関に対しては、市町村、水道事業者等と連携し給水車による応急給水を実施する。必要な場合には、自衛隊や他の地方自治体に応急給水を依頼する。人工透析に必要な医薬品・医療機器が不足する場合には、関係団体等に要請するなどして、医薬品・医療機器の供給の確保に努める。

都道府県は、必要に応じ、(社)日本透析医会及び地域医師会と連携して、他の透析医療機関への入院・通院患者の受け入れを要請する。

都道府県はこれらの取組のため、あらかじめ地域防災計画等において、透析医療機関を明示する等により、関係機関が連携して対応できる体制を整備しておくことが望ましい。

3.患者の移送

都道府県は、透析患者を他の医療機関に移送する必要が生じる場合には、市町村と連携して、徒歩、自転車等による移動、消防による搬送、その他の自動車の手配、必要によりヘリコプター・船舶等の手配を行うこと等が考えられる。また、都道府県・市町村により対応が困難な場合は、必要に応じ応援協定等に基づく他の地方自治体への広域搬送の依頼、自衛隊への災害派遣要請等を行う。クラッシュシンドロームにより生命の危機が考えられる場合等、緊急時には、DMAT(災害派遣医療チーム)の派遣、災害拠点病院を経由した広域医療搬送の活用が考えられる。いずれにせよ、平時から搬送ルート、搬送手段を含めた検討を行っておくこと。

4.避難所・救護所等での対応

都道府県は、災害発生時には、市町村と連携し、避難所・救護所等において、透析を実施する医療機関や移送手段についての情報提供等を行う。また、可能な限り透析患者に適切な食事(減塩、低カリウム、十分なカロリー等)を確保するとともに、必要に応じ透析患者に必要な医薬品(カリウム吸着薬等)、医療材料等を供給する。