添付一覧
○社会福祉施設、介護保険施設等におけるノロウイルスによる感染性胃腸炎の発生・まん延防止策の一層の徹底について
(平成19年12月26日)
(/雇児総発第1226001号/社援基発第1226001号/障企発第1226001号/老計発第1226001号/)
(各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長あて厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長、厚生労働省社会・援護局福祉基盤課長、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長、厚生労働省老健局計画課長通知)
ノロウイルスによる感染性胃腸炎については、昨今の状況を踏まえ、既に「社会福祉施設、介護保険施設等におけるノロウイルスによる感染性胃腸炎の発生・まん延対策について」(平成19年9月20日雇児総発第0920001号、社援基発第0920001号、障企発第0920001号、老計発第0920001号厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長、社会・援護局福祉基盤課長、社会・援護局障害保健福祉部企画課長、老健局計画課長連名通知)を通知したところです。
今月に入り、特別養護老人ホーム等の入所者が、感染性胃腸炎を発症し、死亡する事例が増加しており、また年末年始に向けて各施設等への来訪者が増大するにつれ、さらに感染が拡がりやすい状況になることも予想されます。
貴職におかれましては、引き続き保健衛生部局と連携しながら、管内市区町村、関係団体、所管の施設等に対する対策の一層の周知徹底をお願いします。
また、社会福祉施設、介護保険施設等においては、感染症の発生及びまん延の防止について「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第39号)等で、感染を防止するための対策を検討する委員会の定期開催や指針の整備及び研修等の必要な措置(別紙参照)を定めていることから、これらの実施を徹底するとともに、発生時においては、発生状況の把握、感染の拡大防止、関係機関との連携等に関して迅速かつ適切に対応することが必要であり、別添「社会福祉施設等におけるノロウイルスに関する留意事項」の周知徹底を図っていただきますようお願いします。
(別紙)
「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」
(平成11年3月31日厚生省令第39号)
―抜粋―
衛生管理等
第27号 第2項
指定介護老人福祉施設は、当該指定介護老人福祉施設において感染症又は食中毒が発生し、又はまん延しないように次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
1 当該指定介護老人福祉施設における感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会を月に1回程度、定期的に開催するともに、その結果について、介護職員その他の従業員に周知徹底を図ること。
2 当該指定介護老人福祉施設における感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止にための指針を整備すること。
3 当該指定介護老人福祉施設において、介護職員その他の従業員に対し、感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための研修を定期的に実施すること。
4 前3号に掲げるもののほか、別に厚生労働大臣が定める感染症及び食中毒の発生が疑われる際の対処等に関する手順に沿った対応を行うこと。
【第2項4号の「厚生労働大臣が定める」】:平成18厚労告268(厚生労働大臣が定める感染症又は食中毒の発生が疑われる際の対処等に関する手順)
※ なお、「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」、「指定介護療養型医療施設の人員、設備及び運営に関する基準」、「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」及び「養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」においても、上記「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」と同様の規定である。
[別添]
[「社会福祉施設等におけるノロウイルスに関する留意事項」]
社会福祉施設等においては感染防止対策及び発生時の対応に関して、以下が特に重要です。
Ⅰ.感染症発生の防止
Ⅱ.発生状況の把握
Ⅲ.感染の拡大防止
Ⅳ.医療処置
Ⅴ.行政への報告
○「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」
http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/tp0628-1/index.html
○「ノロウイルスに関するQ&A」
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/dl/040204-1.pdf
等を参考に留意事項をまとめたので、対応を徹底しましょう。
【Ⅰ.感染症発生の防止】
ノロウイルスは手指や食品などを介して、経口で感染し、ヒトの腸管で増殖し、おう吐、下痢、腹痛などを起こします。健康な方は軽症で回復しますが、子どもや高齢者などでは重症化したり、吐ぶつを誤って気道に詰まらせて死亡することがあります。高齢者が集団で生活している施設においてノロウイルスが発生した場合、感染者の吐ぶつや排泄物から二次感染や飛沫感染を予防し、まん延を防ぐことが重要です。
皆様の周りの方々と一緒に、次の予防対策を徹底しましょう。
○患者の排泄物や吐ぶつには大量のウイルスが排出されるので、 ① 食事の前やトイレの後などには、必ず手を洗いましょう。 ② 下痢やおう吐等の症状がある方は、食品を直接取り扱う作業をしないようにしましょう。 ③ 胃腸炎患者に接する方は、患者の排泄物や吐ぶつを適切に処理し、感染を広げないようにしましょう。 ④ おむつ交換の際は、1人ごとに手洗いや手指消毒をしましょう。 ※おむつの一斉交換は感染拡大の危険が高くなります。 ○子どもやお年寄りなどの抵抗力の弱い方の食事について、加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱するようにしましょう。また、調理器具等は使用後に洗浄、殺菌をしましょう。 |
【Ⅱ.発生状況の把握】
(1) 施設利用者と職員の健康状態(症状の有無)を把握し、発生した居室・階ごとにまとめ、受診状況や診断名、検査と治療内容を記録しましょう。
(2) 職員や来訪者の健康状態によっては、利用者との接触を制限したり、面会を制限したりする等の措置を講じてください。
(3) 特に食品への二次汚染を防止するため、食品取扱者は日頃から自分自身の健康状態を把握し、下痢やおう吐、風邪のような症状がある場合には、調理施設等の責任者(営業者、食品衛生責任者等)にその旨をきちんと伝え、適切な対応を取りましょう。
【Ⅲ.感染の拡大防止】
(1) 消毒薬について
ノロウイルスにはアルコール消毒が無効なので、次亜塩素酸ナトリウム又は煮沸にて消毒しましょう。
手指は石けんと流水できれいに洗い流しましょう。
次亜塩素酸ナトリウムは、塩素のような特異な臭気(プールの臭いとか漂白剤の臭いとか言われる臭い)があり、酸化作用、漂白作用、殺菌作用があります。
家庭用に販売されている液体の塩素系漂白剤、消毒薬(洗濯用、キッチン用、ほ乳ビンの殺菌用など)に含まれています。
<消毒薬の作り方> ☆漂白剤として市販されている次亜塩素酸ナトリウム液の塩素濃度は約5%です(家庭用塩素系漂白剤ハイター、ブリーチなど)。消毒薬としては5%や10%などがあります。必ず確認してください。 例)市販の漂白剤(塩素濃度約5%)の場合:漂白剤のキャップ1杯約20~25ml |
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消毒対象 |
濃度 |
希釈方法 |
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希釈倍率 |
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○便や吐ぶつが付着した床等 ○衣類などの漬け置き |
1000ppm(0.1%) |
① 500mlのペットボトル1本の水に10ml(ペットボトルのキャップ2杯) ② 5Lの水に100ml(漂白剤のキャップ5杯) |
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50倍 |
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○食器などの漬け置き ○トイレの便座やドアノブ 手すり、床等 |
200ppm(0.02%) |
① 500mlのペットボトル1本の水に2ml(ペットボトルのキャップ半杯) ② 5Lの水に20ml(漂白剤のキャップ1杯) |
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250倍 |
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希釈する際は、直接塩素剤が手に付かないよう手袋をしましょう。 |
(2) 吐ぶつや排泄物の処理には細心の注意
<準備> 次のようなものを常にセットにして用意しておくと慌てず対応できます。 使い捨てビニール手袋、マスク、エプロン、ペーパータオルか布、ビニール袋、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤など)、バケツ(ペーパータオルを湿らせるため) |
<手順> ① 窓を開け換気をしましょう。 ② 手袋、マスク、エプロンを着けてください。 ③ ペーパータオルなどを軽く湿らせ、吐ぶつ等に覆いかぶせ、外から内に向けて静かに拭き取ります。一度使ったペーパーは捨てます。 ④ 拭き取ったペーパーや布はビニール袋に入れて密封してください。 ⑤ おう吐した場所や、汚れた床と周囲は次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約1000ppm)などを染みこませたペーパータオルや布で覆うか、浸すように拭き、その後、水拭きします。(漂白作用があるので注意しましょう。) 使用した洗面所等もよく洗い、消毒をしてください。 ⑥ おむつ等は速やかに閉じて排泄物等を包み込み、ビニール袋に密封し破棄します。 ⑦ 手袋、マスク等もビニール袋に入れて処分し、入念に手洗いをしましょう。 ⑧ トイレ使用の場合も換気を十分にし、便座等環境の消毒も十分にしてください。 *下痢等の症状回復後も数日~数週間にわたってウイルスを含むふん便が排泄されるため、注意してください。 |
(3) 感染者が使用した食器類の消毒にも注意
施設の厨房等多人数の食事の調理、配食等をする部署へ感染者の使用した食器類や吐ぶつが付着した食器類を下膳する場合、注意が必要です。
食器等は厨房に戻す前、食後すぐに次亜塩酸ナトリウム液に十分浸し、消毒したあと下膳しましょう。
感染者が使用した食器は、食べ残しの処理をしたあと、バケツ等の容器に次亜塩酸ナトリウム液(塩素濃度約200ppm)を用意し、漬けて消毒するとよいでしょう。 |
(4) 吐ぶつや排泄物が布団などのリネン類に付着した場合の消毒
① マスク、ビニール手袋を着けましょう。 ② 吐ぶつ等はペーパータオルなどを使用して拭き取り、ビニール袋に入れて密封してください。 ③ 洗剤を入れた水の中で静かに下洗いします。 ④ その時、しぶきを吸い込まないよう注意してください。 ⑤ 下洗いしたリネン類の消毒は85℃・1分間以上の熱水洗濯が適しています。(他の洗濯物とは別にする。) ⑥ 熱水洗濯ができない場合には、次亜塩素酸ナトリウム液(塩素濃度約1000ppm)に浸けて消毒をしましょう。次亜塩素酸ナトリウムには漂白作用があるので「使用上の注意」を確認してください。 使用した洗面所等もよく洗い、消毒をしてください。 ⑦ 十分すすぎ、高温の乾燥機などを使用すると殺菌効果は高まります。 ⑧ 布団などすぐに洗濯できない場合は、スチームアイロンや布団乾燥機を使うと効果があります。 |
(5) 感染者が発生した場合の環境の消毒
ノロウイルスは感染力が強く、直接吐ぶつ等が付着したところだけではなく、環境(ドアノブ、カーテン、リネン類、日用品など)からもウイルスが検出されます。
感染者が発生した場合、換気を十分しながら、これらの環境についても次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約1000ppm)などを使用して消毒しましょう。ただし、次亜塩素酸ナトリウムは金属腐食性があるので、消毒後の薬剤の拭き取りを十分にしてください。 |
【Ⅳ.医療処置】
おう吐、下痢など感染症状が発生した場合、施設職員は、感染症の症状を緩和し回復を促すために、速やかに配置されている医師や看護職員に連絡して指示を仰ぐとともに、必要に応じて、協力病院をはじめとする地域の医療機関との連携を図り、早期に対応してください。
特に高齢者の場合、脱水症状で体力が低下したり、吐ぶつを誤嚥しやすくなったりすることもあり、重症化することもあるので、疑わしい症状が生じた場合には、協力病院をはじめとする地域の医療機関への早期受診など適切な対応を取りましょう。
【Ⅴ.行政への報告】
施設長等は、「厚生労働大臣が定める感染症又は食中毒の発生が疑われる際の対処等に関する手順」(平成18年厚労告268)に定められた事項(下記報告要件)が発生した場合、迅速に市町村等に報告し、指示を求めるなどの対策等をしてください。
<報告要件> イ 同一の感染症若しくは食中毒による又はそれらによると思われる死亡者又は重篤な患者が1週間内に2名以上発生した場合 ロ 同一の有症者等が10名以上又は全利用者の半数以上発生した場合 ハ イ及びロに掲げる場合のほか、通常の発生動向を上回る感染症の発生が疑われ、特に管理者等が必要と認めた場合 |