○「避難支援プランの全体計画」のモデル計画について
(平成20年2月19日)
(/府政防第111号/消防災第54号/社援総発第0219001号/国河防第671号/)
(都道府県防災担当主管部(局)長・都道府県民生主管部(局)長・都道府県土木主管部(局)長あて内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(災害応急対策担当)、総務省消防庁国民保護・防災部防災課長、厚生労働省社会・援護局総務課長、国土交通省河川局防災課長通知)
災害時要援護者の避難支援につきましては、先般通知した「災害時要援護者の避難支援対策の推進について」(平成19年12月18日付府政防第885号、消防災第421号、社援総発第1218001号、国河防第563号)により、市区町村において「避難支援プランの全体計画」などの策定を進めていただいているところですが、そのモデル計画を別添のとおり作成いたしましたので、これを参考としつつ、地域の実情に応じた計画が策定されますよう、貴管内の市区町村に対するご支援とご協力をお願いするとともに、ご周知くださるようお願いいたします。
お問い合わせ先 ○内閣府(防災担当)災害応急対策担当 〒100―8969 東京都千代田区霞が関1―2―2 中央合同庁舎5号館3階 電話:03―3501―5695 FAX:03―3503―5690 ○総務省消防庁国民保護・防災部防災課 〒100―8927 東京都千代田区霞が関2―1―2 電話:03―5253―7525 FAX:03―5253―7535 ○厚生労働省社会・援護局総務課 災害救助・救援対策室 〒100―8916 東京都千代田区霞が関1―2―2 電話:03―3595―2614 FAX:03―3595―2303 ○国土交通省河川局防災課 〒100―8918 東京都千代田区霞が関2―1―3 電話:03―5253―8459 FAX:03―5253―1607 |
避難支援プラン全体計画のモデル計画
1 基本的考え方(避難支援プランの目的、自助・共助・公助の役割分担等)
2 避難支援プランの対象者の考え方(範囲)
3 要援護者情報の収集・共有の方法
4 避難支援体制(市町村各部局や関係機関の役割分担等)
5 避難準備情報、避難勧告・指示等の発令・伝達方法
6 洪水・土砂災害・津波・高潮ハザードマップ等の整備・活用方法
7 避難誘導の手段・経路等
8 避難所における支援方法
9 要援護者避難訓練の実施
10 避難支援プラン(個別計画)の策定の進め方(策定の目標年次、策定方法等)
1 基本的考え方(避難支援プランの目的、自助・共助・公助の役割分担等)
○○市(区町村)では、平成○○年に発生した台風○号による災害で○名の犠牲者が生じ、その内○歳以上の高齢者が▽名を占めるなど、近年、避難に時間を要する災害時要援護者の被災が目立っていることから、あらかじめ、気象予報・警報、洪水予報や土砂災害警戒情報などの災害情報の伝達体制を整え、災害時要援護者が円滑かつ迅速に避難するための支援体制を整えておくことが重要である。
このためには、各地域において、高齢者や障害者など災害時の避難にあたって支援が必要となる人を特定し、その一人ひとりについて、災害時に、誰が支援してどこの避難所等に避難させるかを定める「避難支援プラン」を策定していく必要がある。
なお、要援護者に対しては、その特性に応じた十分な配慮が必要であることから、要援護者マップ等を作成するなど、日頃から障害者・高齢者関係施設等の場所や在宅の障害者の状況の把握に努め、災害発生時には、適切かつ速やかに、ニーズに沿った対策を実施する。
この計画は、災害発生時における災害時要援護者への支援を適切かつ円滑に実施するため、国の「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を踏まえ、本市(区町村)における災害時要援護者の避難支援対策について、その基本的な考え方や進め方を明らかにしたものであり、災害時要援護者の自助・地域(近隣)の共助を基本とし、災害時要援護者への情報伝達体制や避難支援体制の整備を図ることにより、もって地域の安心・安全体制を強化することを目的とする。
2 避難支援プランの対象者の考え方(範囲)
本市(区町村)における避難支援プラン(個別計画)の対象者となる災害時要援護者は、必要な情報を迅速かつ的確に把握し、災害から自らを守るために安全に避難するなど災害時の一連の行動をとるのに支援を要する人々とする。
・ 介護保険における要介護・要支援認定者
・ 障害者
・ 妊産婦及び乳幼児
・ 難病患者
・ 日本語に不慣れな在住外国人
・ その他:一人暮らし高齢者、高齢者のみの世帯の者
なお、避難支援プラン(個別計画)の策定に当たっては、支援すべき要援護者の優先度を検討し、災害危険地域など被災リスクの高い地域や孤立のおそれのある地域の者を重点的・優先的に進める。
3 要援護者情報の収集・共有の方法
災害発生時において災害時要援護者の避難誘導や安否の確認、また避難所等での生活支援を的確に行うためには、災害時要援護者情報の把握と関係者間での共有が必要であり、日頃から災害時要援護者の居住地や生活状況等を把握し、災害時には、これらの情報を迅速に活用できるよう整理しておくことが重要である。
市(区町村)は、市町村地域福祉計画に定めたところにより、次に掲げる通常業務等を通じて災害時要援護者情報の把握に努めるものとする。
① 要介護者の情報に関しては、要介護認定情報等により把握する
② 障害者の情報に関しては、各種障害者手帳台帳における情報、障害程度区分情報等により把握する
③ 妊産婦及び乳幼児の情報に関しては、母子健康手帳の発行状況や住民基本台帳担当部局と連携し住民基本台帳を活用する等により把握する
④ 一人暮らしの高齢者世帯などの高齢者の情報に関しては、住民基本台帳担当部局と連携し住民基本台帳を活用する等により把握する
⑤ 民生委員をはじめとする各種相談員などからの情報収集により把握する
⑥ 福祉団体、国際交流団体など関係団体からの情報収集により把握する
<Ⅰ 関係機関共有方式>
市(区町村)は、防災担当部局と福祉担当部局等がそれぞれ把握している災害時要援護者に関する上記の情報について、○○市(区町村)個人情報保護条例第○条の規定に基づき、関係部局での共有に努めるとともに、住所や氏名等の基本的な情報については、自主防災組織、民生委員・児童委員に対して、個人情報保護審査会への諮問・了承を経て、当該情報の提供を行うものとする。なお、災害時要援護者リストの整備や避難支援プラン(個別計画)の策定にあたって、これらの基本的な情報に加え、さらに詳細な情報を把握する必要がある場合には、要援護者本人の同意を得ながら収集するものとする。
自主防災組織等に要援護者に関する情報を提供する場合については、誓約書等の提出により守秘義務を確保するとともに、研修会の実施などにより、その周知を図る。
<Ⅱ 手上げ方式>
「2」(P2)の対象者の範囲にある者で、災害時の避難支援を希望し、平常時から自主防災組織、民生委員・児童委員等に個人情報を開示することに同意するものは、登録申請書に必要事項を記入し、市(区町村)長に提出しなければならないものとする。当該記載事項に変更が生じた場合も、同様とする。
このため、市(区町村)は、広報、ホームページ等を利用して、要援護者登録制度を広く周知する。
<Ⅲ 同意方式>
自主防災組織、民生委員・児童委員等は、地域において支援が必要な人を把握し、要援護者リストへの登録を直接働きかける。
登録に際しては、自主防災組織、民生委員・児童委員、避難支援者等に個人情報を開示することについて要援護者から同意を得る。
〔備考〕
1.要援護者情報の収集・共有に関しては、まず、関係機関共有方式により、対象とする要援護者の情報を共有し、その後、避難支援プランを策定するために必要な情報をきめ細かく把握するため、同意方式により本人から確認しつつ進めることが望ましい。
2.要援護者情報を把握する場合においては、上記Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの方式を単独で行うだけでなく、例えば、手上げ方式と同意方式の併用(手上げ方式で広く登録を呼びかけるとともに、自主防災組織等において支援が必要と考えられる人に直接働きかける)等の方法も考えられる。
3.要援護者情報の外部関係者への提供が困難な場合も、災害時に備えて市(区町村)内部で関係部局が共有することが適切である。
4.手上げ方式にしても、広報、ホームページだけでなく、ダイレクトメールで個別に意向を確認することや、民生委員・児童委員等が自宅等を訪問して登録を呼びかけてもらうようにすることも有効と考えられる。
また、各種認定や各種手帳等の申請・交付等の際、窓口で説明し、本人や家族等に対し直接登録を働きかける方法も考えられる。
5.ⅠやⅢの方式で要援護者に働きかける場合に、例えば、高齢者等は自主防災組織等で、要介護の者や障害者は民生委員・児童委員で分担して働きかけることも考えられる。
また、この場合には、自主防災組織等の理解と協力が不可欠であることから、自主防災組織等への働きかけを行うとともに、当面は理解と協力の得られた地区から順次進めることも考えられる。
6.要援護者情報を収集・整理し、その所在を地図上に明らかにした要援護者マップを作ることも有効であり、地震等の発災時に安否確認のための活用が考えられる。また、自主防災組織、民生委員・児童委員等においては、このマップによって日常的見守り活動を行うことが、災害時の迅速な対応に結びつくと考えられる。
4 避難支援体制(市町村各部局や関係機関の役割分担等)
市役所(区役所・町村役場)内に、横断的組織として「災害時要援護者支援班」を設ける。災害時要援護者支援班の位置付け、構成及び業務は以下のとおりとする。
①【位置付け】
平常時は、防災関係部局や福祉関係部局で横断的なPT(プロジェクト・チーム)を設置。災害時は、災害対策本部中、福祉関係部門内に設置。
②【構成】
平常時は、班長(福祉担当部課長)、班員(福祉担当者、防災担当者等)。避難支援体制の整備に関する取組を進めていくに当たっては、社会福祉協議会、自主防災組織等の関係者等の参加を得ながら進めること。災害時は、基本的に福祉担当部課長・者で構成。
③【業務】
平常時:要援護者情報の共有化、避難支援プランの策定、要援護者参加型の防災訓練の計画・実施、広報等
災害時:避難準備情報等の伝達業務、避難誘導、安否確認・避難状況の把握、避難所の要援護者班(仮称)等との連携・情報共有等
市(区町村)は、自治会組織、自主防災組織、消防団、福祉関係者と連携し、個々の災害時要援護者に対応する避難支援者を明確化するものとする。避難支援者は、要援護者本人の意向を極力尊重した上で、原則として、自主防災組織(自治会)、福祉関係者やボランティア等の構成員から複数名選出する。
避難支援者の選定に当たっては、要援護者に対し、要援護者の支援は支援者の任意の協力により行われるものであることや支援者の不在や被災などにより、要援護者の支援が困難となる場合もあり、要援護者の自助が必要不可欠であることについて十分に周知することとする。
さらに、要援護者の支援体制を整備するにあたっては、地域において要援護者支援に関する人材を育成し、支援者を増やしていくこととする。
5 避難準備情報、避難勧告・指示等の発令・伝達方法
国の「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」を踏まえ、「避難勧告等の判断・伝達マニュアル」を作成し、避難準備情報、避難勧告・指示等を発令する判断基準を明確化するものとする。判断基準は、災害ごと、具体的な地域ごとに留意すべき事項を個別具体的に定めるものとする。
情報伝達は、下記によって行う。
1.情報伝達ルート
避難準備情報等については、市(区町村)から各自治会長(又は自主防災組織の代表者)を通じた災害時要援護者及び避難支援者等への直接伝達する。この際、福祉関係機関・団体のネットワークを情報伝達に活用し、災害時要援護者及び避難支援者に対し確実に情報伝達する体制を整備するものとする。
2.情報伝達手段
情報の伝達手段は、障害の状況に応じて、次の手段についても活用する。
・聴覚障害者:インターネット(電子メール、携帯メール等)、テレビ放送(地上デジタル放送も含む)
・視覚障害者:受信メールを読み上げる携帯電話
・肢体不自由者:フリーハンド用機器を備えた携帯電話 等
3.情報伝達責任者の明確化
災害時要援護者に対する情報伝達については、市役所(区役所・町村役場)に設置された災害時要援護者支援班が行う。
さらに、市区町村地域防災計画に規定された災害時要援護者関連施設に対しては、洪水予報、避難判断水位への水位の到達情報、土砂災害警戒情報などの情報を伝達し、円滑かつ迅速な避難を確保するものとする。
なお、緊急の場合や適切な情報伝達手段がない場合には、支援者等が要援護者宅を直接訪問して、避難準備情報等を伝えることも考慮する。
〔備考〕
1.災害情報の収集に当たっては、「市町村向け川の防災情報」などインターネットの利用などにより、必要な災害情報を収集し、活用することが効果的である。
2.土砂災害の避難勧告等については、土砂災害警戒情報を活用するとともに、「土砂災害警戒避難ガイドライン(平成19年4月 国土交通省砂防部)」を参考にする。
3.洪水時等に河川管理者から提供される防災情報については、住民や市町村の防災担当者、報道機関等に正確に理解され、受け手の的確な判断や行動につながるような情報とするため、平成19年度より洪水等に関する防災情報体系を見直している(【参考資料1】参照)。
6 洪水・土砂災害・津波・高潮ハザードマップ等の整備・活用方法
各種ハザードマップの周知が住民になされるよう、各世帯への直接配布、転入者に対する自治体の窓口での配布、インターネットの利用による公開等(市(区町村)ホームページ、ハザードマップポータルサイト)を行うものとする。
また、各種ハザードマップを用いて災害時要援護者関連施設の位置や避難場所、施設への情報伝達方法、避難経路等を平時から確認するよう、説明会などを通じて住民への周知に努めるとともに、特に災害時要援護者を支援する人などの理解を進め、地域防災に関する意識向上を図るものとする。
併せて、消防、警察、自主防災組織、避難支援者等と平時から災害時に避難支援を必要とする在宅の災害時要援護者に関する情報を共有し、これら情報と各種ハザードマップを組み合わせ、円滑に避難支援を実施できる体制を構築するものとする。
さらに、各種ハザードマップを用いた防災訓練を行うことにより、避難場所や避難経路の確認等を行い、洪水、土砂災害、津波・高潮災害に備えるものとする。
〔備考〕
ハザードマップ(【参考資料2・3】参照)が未整備の市町村にあっては、以下の点に留意した上で、整備を進めていくことが必要である。
○ 洪水ハザードマップについて
水防法に基づき、浸水想定区域の指定がなされた場合、洪水ハザードマップを作成・公表する。
洪水ハザードマップには、①浸水想定区域と浸水深、②避難場所、③避難時危険箇所(アンダーパスや側溝等)、④洪水予報や水位情報、避難情報(避難勧告、避難指示等)の伝達方法、⑤気象情報の在りか等を記載するとともに、⑥災害時要援護者関連施設の名称及び所在地、施設への情報伝達方法等を記載する。
○ 土砂災害ハザードマップについて
土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(以下「土砂災害防止法」という。)に基づき、土砂災害警戒区域等の指定がされた場合、当該地区に係る土砂災害ハザードマップを作成・公表する。
土砂災害ハザードマップには、①土砂災害警戒区域等並びにこれら区域における土砂災害の発生原因となる自然現象の種類、②土砂災害に関する情報の伝達方法、③避難場所及び避難経路、等を記載するとともに、④災害時要援護者関連施設の名称及び位置、施設への情報伝達方法等を記載する。
○ 津波・高潮ハザードマップについて
○○地震による津波災害が想定される地域を対象に、津波ハザードマップを作成・公表する。また、ゼロメートル地帯等一旦大規模に浸水すれば社会経済への影響が膨大である地域を対象に、高潮ハザードマップを作成・公表する。
津波・高潮ハザードマップには、①浸水予測(浸水予測区域、予測浸水ランク、予測到達時間等)、②避難場所(津波・高潮発生時に適した避難場所、公共施設、学校、病院、避難ビル等)、③避難経路及び危険箇所(避難経路、土砂災害のおそれがある等の危険箇所)、④情報の伝達手段(住民への情報の伝達経路と手段、情報入手方法)等を記載するとともに、⑤災害時要援護者関連施設の名称及び所在地、施設への情報伝達方法等を記載する。
7 避難誘導の手段・経路等
風水害や津波等の災害が発生するおそれがあるため、避難準備情報等を発令した場合は、市(区町村)と地域住民等が連携し、避難支援プラン(個別計画)に基づき、避難誘導を行う。
そのため、平時から、避難所配置職員の役割分担を明確にするとともに、市(区町村)、消防本部、消防団、自主防災組織等の役割分担を明確にしつつ連携して、対応する。
また、災害時要援護者自身も、自宅から避難場所等まで、実際に避難支援者とともに歩いてみて、避難経路を確認しておくよう努めるものとする。
なお、避難経路の選定に当たっては、洪水初期の浸水が予想されるアンダーパスなどの危険な箇所を避け、要援護者の避難・搬送形態を考慮した浸水時にも機能する避難経路を優先的に選定するなど、安全な避難の確保に努めるものとする。
8 避難所における支援方法
(1) 避難所における支援対策
避難所においては、要援護者の避難状況に応じて、障害者用トイレ、スロープ等の段差解消設備を発災後速やかに仮設する。
特に体育館等が避難所で避難生活が長期化する場合は、畳・マットを敷く、プライバシー確保のための間仕切り用パーテーションを設ける、冷暖房機器等の増設など環境の整備を行う。
これらの環境整備に必要な設備については、備蓄で対応するほか、関係団体、事業者との事前協定を締結するなどにより、通常時から対応等を講じておくこととする。
避難所には、要援護者の要望を把握するため、災害時要援護者支援班等が中心になり、自主防災組織や福祉関係者、そして避難支援者の協力を得つつ、要援護者班を設置し、要援護者用相談窓口を設ける。その際、女性や乳幼児のニーズを把握するため、窓口に、女性も配置するなどの配慮を行う。また、避難生活が長期化する場合は、高齢者、障害者等の心身の健康管理や生活リズムを取り戻す取り組みが重要であるので、保健師等による健康相談、二次的健康被害(エコノミークラス症候群、生活不活発病等)の予防、こころのケア等、福祉関係職員による相談等の必要な生活支援を必要に応じて実施するとともに、要援護者の状況に応じて、一般避難所から福祉避難所への移動や社会福祉施設への緊急入所、病院への入院等の手続きを行う。なお、発災後、速やかな対応をとるために、予め、関係団体、事業者等との協定を結ぶなど、通常時から役割分担を明確にしておくこととする。
避難所における情報提供は被災者にとって大変重要なものであるので、特に視覚障害者や聴覚障害者等に対する伝達方法については、特段の配慮を行うものとする。
(2) 福祉避難所の指定
要援護者が、相談等の必要な生活支援が受けられるなど、安心して生活ができる体制を整備した福祉避難所を、「3 要援護者情報の収集・共有の方法」により把握した災害時要援護者情報をもとに、福祉避難所への避難が必要な者の状況等を把握し、災害時に必要数を確保できるよう、施設の管理者と事前協定を行い、予め福祉避難所を指定する。
福祉避難所として指定する施設は、原則として耐震、耐火、鉄筋構造を備え、バリアフリー化されているなど、要援護者の利用に適しており、かつ、生活相談職員等の確保が比較的容易である老人福祉センター等の既存施設を活用することとする。
福祉避難所を指定した場合は、避難支援プラン(個別計画)の策定を通して、その所在や避難方法を要援護者を含む地域住民に対し周知するとともに、周辺の福祉関係者の十分な理解を得るものとする。
〔備考〕
1.災害救助法が適用され、同法第30条に基づき都道府県から救助の実施に関する事務が委任された場合には、避難所設置のための費用(福祉避難所を含む)については、国庫負担の対象となる。
なお、災害救助法に基づく救助については、都道府県が実施主体となるので「避難支援プラン全体計画」に基づき、避難所において具体的な措置を行うにあたっては、その内容について都道府県と十分に調整されたい。
2.適切な場所に福祉避難所に指定するような既存施設がない場合又は不足する場合は、公的な宿泊施設、民間の旅館、ホテル等の借り上げで対応することも可能である。これらの施設についても関係団体、事業者等との事前協定を結ぶことにより、必要数を確保する。
9 要援護者避難訓練の実施
要援護者の避難を迅速かつ適切に行うためには、要援護者と避難支援者との信頼関係が不可欠であることから、消防団、自主防災組織等は、普段から、防災活動だけでなく、声かけや見守り活動等、地域における各種活動との連携を深めることが重要である。
また、在宅の災害時要援護者を適切に安全な場所へ避難誘導するためには、平常時から避難支援者を中心とした近隣のネットワークづくりをすすめ、地域住民の協力関係をつくることが重要である。
このため、自主防災組織が中心となり、災害時要援護者や避難支援者とともに、災害時要援護者の避難計画の作成や避難訓練の実施等を行うことにより、支援体制の充実を図る。
避難訓練には、地域住民や要援護者、支援者が積極的に参加し、要援護者の居住情報を共有し、避難準備情報等の伝達の確認、具体的な避難支援方策の検証や障害物の確認等を行うことにより、地域全体の防災意識の向上が図られる。
このため、毎年9月1日に実施している「市(区町村)総合防災訓練」や、「土砂災害・全国統一防災訓練」、「津波防災訓練」などの訓練において、災害時要援護者に対する情報伝達や避難支援、福祉避難所設置運営訓練などの訓練を行うこととする。
10 避難支援プラン(個別計画)の策定の進め方(策定の目標年次、策定方法等)
災害が発生し又はそのおそれが高まったときに、要援護者の避難誘導等を迅速かつ適切に実施するためには、あらかじめ、要援護者一人ひとりについて、誰が支援して、どこの避難所等に避難させるかを定めておくことが必要である。
このため、おおむね○○年度を目途に、自主防災組織、民生委員・児童委員等の協力を得ながら、別紙のとおり避難支援プラン(個別計画)を策定する。
(1) 個別計画の策定方法
個別計画の策定に当たっては、個人情報保護条例の規定に基づき、市(区町村)は自主防災組織等の実際に避難支援に携わる関係者と要援護者に関する基本的な情報(住所や氏名など)を共有した上で、これら関係者が中心となって、要援護者本人と避難支援者、避難場所、避難経路、避難方法、情報伝達方法等について具体的に話し合いながら、作成する。なお、支援者については、消防団、自主防災組織、民生委員・児童委員などの話し合いなどであらかじめ要援護者に紹介できる候補者を定めるとともに、支援者自身の不在や被災も考慮し、複数の支援者を決めておく。
また、個別計画は、要援護者本人、その家族及び市役所(区役所・町村役場)の必要最小限の関係部署のほか、避難支援者等要援護者本人が同意した者に配布する。その際には、誓約書等の提出により守秘義務を確保する。
(2) 個別計画の更新
個別計画は、一人ひとりの災害時要援護者を対象としていることから、要援護者の個人情報が多く含まれている。したがって、上記(1)のとおり、その保護に留意することとする。
また、災害時に迅速かつ適切な避難を行うため、情報の更新を定期的に行っていくこととする。
具体的には、個別計画の内容に変更が生じた場合や本人等からの変更の申請があった場合は、その都度速やかに更新する。その他の場合は、避難支援者等の協力を得て更新を行う。
(3) 個別計画の管理
個別計画の内容は、個別計画の配布先として(1)に列記した者以外が閲覧することのないようにするとともに、併せて、災害発生時の緊急の閲覧に支障を来さないように留意する。個別計画を電子情報で保管する場合は、パスワード等を使用して管理し、紙媒体で保管する場合には施錠付きの保管庫に保管する等、情報管理に十分配慮する。
〔備考〕
1 個別計画の策定に際しては、避難行動要支援者など要支援度の高い者や、ハザードマップの活用等により被災リスクの高い地域を重点的・優先的に進めることが有効である。
2 避難支援者については、上記のように要援護者に応じて複数の支援者を定めておくことが基本であるが、個別の支援者を特定することが困難な場合でも、地域で一定の支援者を確保して支援するなど、支援者を確保する必要がある。
また、避難支援者は自主防災組織、民生委員・児童委員等の協力を得て市(区町村)で登録することが基本であるが、要援護者自ずから依頼する方式をとるとしても、要援護者で依頼できない場合は市(区町村)で調整して支援者を確保する必要がある。
【別紙】
【参考資料1】
【参考資料2】
【参考資料3】