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○経験能力評価基準の作成について

(平成19年9月27日)

(/職発第0927007号/能発第0927002号/)

(各都道府県労働局長あて厚生労働省職業安定局長・職業能力開発局長通知)

(公印省略)

本年6月に成立・公布された「雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律」(平成19年法律第79号)により、事業主は「青少年の有する能力を正当に評価するための募集及び採用の方法の改善その他の雇用管理の改善並びに実践的な職業能力の開発及び向上を図るために必要な措置を講ずることにより、その雇用機会の確保等が図られるように努めなければならない」ものとされたところである。また、青少年の雇用機会の確保等に関して事業主が適切に対処するための指針(平成19年厚生労働省告示第275号)において、事業主が青少年の募集及び採用に当たって講ずべき措置に関し、「青少年の募集及び採用に当たり、就業等を通じて培われた能力や経験について、過去の就業形態や離職状況等にとらわれることなく、人物本位による正当な評価を行う」よう、事業主に求めているところである。

これをより実効あるものとし、いわゆる年長フリーター等の雇用機会の確保を図るためには、アルバイト等の職業経験により培われた職業能力を適切に位置づけ、若年者、事業主双方がそれを正当に評価できるようにすることが必要である。このため、今般、職業能力開発局において、そのよりどころとなる経験能力評価基準を別添1のとおり作成したところである。

ついては、経験能力評価基準が事業主及びフリーター等若年者に有効に活用されるよう、下記に留意し周知及び活用促進をお願いする。

1 経験能力評価基準の概要について

(1) 経験能力評価基準は、アルバイト等の職業経験により培われた職業能力(以下「経験能力」という。)を客観的に把握・評価できるよう、「職務行動」の形で抽出し、事業主が採用に当たって求める能力や一般職務における成果につながる行動特性(コンピテンシー)の観点を踏まえて整序したものであること。

(2) 経験能力(職務行動)の抽出、整序に当たっては、コンビニエンスストア業における職業能力評価基準の作成を検討している「包括的職業能力評価制度整備委員会(コンビニエンスストア業)」(中央職業能力開発協会において、日本フランチャイズチェーン協会の協力を得て、コンビニエンスストア業各社を参集)において検討を行ったこと。

(3) 委員会における検討を踏まえ、経験能力評価基準においては、経験能力を次の4つの段階としたこと。

① 自らの働く意識を形成する段階

② 他者との関係の中で職務を行うために必要な能力を形成する段階

③ 職務への取組をさらに発展したものとするために必要な能力を形成する段階

④ さらに専門的な職業能力を形成する段階

(4) また、それぞれの段階について、第1の段階を「働く意識と取組」「責任感」、第2の段階を「ビジネスマナー」「コミュニケーション」「チームワーク」、第3の段階を「チャレンジ意欲」「考える力」、第4の段階を「自己調整力」「専門性」と計9区分に分類し、それぞれごとに抽出した職務行動を段階的に配列したこと。(別紙参照)

2 各シートの構成等について

(1) 経験能力評価基準は、上記1(3)及び(4)のとおり抽出、整序した経験能力(職務行動)を記載した「経験能力評価基準」本体のほか、本基準を活用した「経験能力(自己診断シート)」、「経験能力(上司アドバイスシート)」及び「経験能力記述シート」並びに経験能力の程度を診断・判定しやすくするための「経験能力評価基準 判定目安表」により構成されるものとしていること。

また、より活用が図られるよう、「経験能力(自己診断シート)」、「経験能力(上司アドバイスシート)」及び「経験能力記述シート」については、その記載例(別添2)も作成したものであること。

(2) 「経験能力(自己診断シート)」は、若年者が自らの経験能力についてアルバイト等における職務行動に照らして診断するもので、具体的には、各職務行動について該当する欄に「○」を付けることにより行うものであること。また、記載に当たっては「経験能力評価基準 判定目安表」を参照するものであること。

なお、レーダーチャートは若年者自身が自らの経験能力を相対的に診断することに使用できるものであり、各欄への記載を数値化して作成される仕組みとしていること。

(3) 「経験能力(上司アドバイスシート)」は、若年者のアルバイト等先での訓練や業務指導を行う立場にある上司等が記載して当該若年者に渡すものであり、アルバイト等においてとられた職務行動に照らして、シートに掲げた職務行動のうち、特に顕著なものの項目に「○」を付け、必要に応じてコメントを付すことにより記載するものであること。また、記載に当たっては、「経験能力評価基準 判定目安表」を参照するものであること。

(4) 「経験能力記述シート」は、若年者が「経験能力(自己診断シート)」や「経験能力(上司アドバイスシート)」の内容に沿って自らの経験能力について、経験業務、保有資格などとあわせて記載するものであること。記載したシートについては、求人者に対して提出することができるものであること。また、必要に応じて「経験能力(自己診断シート)」や「経験能力(上司アドバイスシート)」を添付することができるものであること。

(5) 「経験能力評価基準 判定目安表」は、経験能力評価基準において抽出した職務行動のそれぞれについて、これと同様の場面においてとられる職務行動の例を、より具体的かつ段階的に「“質の高い”職務行動の例」、「“押さえておきたい”職務行動の例」、「“改善したい”職務行動の例」に分けて掲げたもので、若年者や事業主双方に対して、「経験能力(自己診断シート)」や「経験能力(上司アドバイスシート)」の記載等に当たっての共通の診断・判定の目安として活用されるものであり、また、若年者がアルバイト等の職務行動において自身の経験能力の向上を図る際の目安としても活用できるものである。

3 経験能力評価基準を活用するメリット

(1) アルバイト等を行う若年者にとっては、「経験能力(自己診断シート)」や「経験能力評価基準 判定目安表」を活用し、具体的な職務行動で記述された本基準と自分自身の職業経験を照らし合わせることにより、職業能力の向上を図る意識づけ及び目安にすることができること。

また、転職等を考える若年者にとっては、「経験能力(自己診断シート)」や「経験能力(上司アドバイスシート)」を用いて「経験能力記述シート」を記載、求人企業に提出することにより、自らの経験能力を確認・主張することができるものであること。

(2) 求人企業においては、具体的な職務行動で記述された本基準をもとに若年者の職業能力を客観的に評価することができ、また、本基準を共通の指標として活用することにより、若年者と当該若年者の経験能力について確認し合うことができること。

(3) 若年者をアルバイト等として雇用している企業においては、その雇用する若年者の経験能力の向上を図るためのOJTの目安にすることができ、また、「経験能力(上司アドバイスシート)」を活用することにより、当該若年者に対して、キャリア形成のための支援を行うことができること。

4 周知及び活用促進

「経験能力評価基準」は、広く事業主、若年者等が閲覧・活用できるよう厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/09/h0927-3.html)に公開することとし、事業主団体等に対しても活用を呼びかけているところであるので、事業主及び若年者等のうち必要な者に対しては積極的に周知するとともに、職業相談・紹介等において、若年者等への支援を行う際に適宜活用すること。

なお、公共職業安定所等における活用方法等については、別途通知する予定である。

(別紙)

経験能力評価基準において抽出した「職務行動」の配列

「経験能力評価基準」においては、職務経験を重ねる段階を、(1)自らの働く意識を形成する段階、(2)他者との関係の中で職務を行うために必要な能力を形成する段階、(3)職務への取組をさらに発展したものとするために必要な能力を形成する段階、(4)さらに専門的な職業能力を形成する段階の4段階とし、第1の段階において「働く意識と取組」「責任感」、第2の段階において「ビジネスマナー」「コミュニケーション」「チームワーク」、第3の段階において「チャレンジ意欲」「考える力」、第4の段階において「自己調整力」「専門性」を培われる職業能力として分類している。そして、それぞれの能力において、その修得度の段階に応じて抽出した職務行動を配列している。

【自らの働く意識を形成する段階】

○ 働く意識と取組(職業意識・勤労観を持ち職務に取り組む能力)

職業選択や職務遂行を通じて働くことを自らの問題としてとらえ、働くことの意義や目的を考えることにより自らの職業意識・勤労観が形成される。これにより職務の意義を自らの職業意識・勤労観と関連づけて理解し、職務に取り組むことにより培われる能力を「働く意識と取組」とする。

職業意識・勤労観との関連の深まりに沿って、とられる職務行動を段階的に抽出する。具体的には、①既に決められている法令や職場ルール・慣行等の遵守、②自らの職務によって定める時間を確実に守る行動、③業務指示・命令をかみ砕いて自らの職務に取り込む行動、④職務への自らの目的意識の設定、⑤職務に前向きに反映されていることの順となる。

○ 責任感(社会の一員としての自覚を持って主体的に職務を遂行する能力)

職業意識・勤労観に基づき自らの職務に取り組むことにより、職務に対する責任が自覚される。これは自らの職業において職務を分担することに伴う責任であり、社会の一員としての自覚につながる。これに基づいて自らの職務を主体的に遂行することにより培われる能力を「責任感」とする。

自らの責任を意識する職務の程度に沿って、とられる職務行動を段階的に抽出する。具体的には、①依頼され引き受けた仕事に対する責任、②自らも合意した約束事に対する責任、③手順を伴う一連の職務全体に対する責任、④職務を遂行した結果に対する責任、⑤次の職務へのつながりを見通した職務に対する責任の順となる。

【他者との関係の中で職務を行うために必要な能力を形成する段階】

○ ビジネスマナー(円滑に職務を遂行するためにマナーの良い対応を行う能力)

職場において職務を遂行する際には、上司・同僚・後輩及び仕事上の相手や顧客(お客様)などとの接触・やりとりが必要となり、互いに相手に配慮した態度・対応で接することがマナーとして社会通念上定着している。アルバイト等の職業経験においても円滑に職務を遂行するためにマナーのよい対応を行う能力が培われるので、これを「ビジネスマナー」とする。

職務において求められる頻度に沿って、とられる職務行動を段階的に抽出する。具体的には、①身だしなみ、②日常的あいさつ、③状況に応じた敬語、④お客様に対する礼儀、⑤接遇時、訪問時などのビジネスマナーの順となる。

○ コミュニケーション(適切な自己表現・双方向の意思疎通を図る能力)

職場において上司・同僚・後輩及び仕事上の相手や顧客などに接しながら仕事上必要なことを正確に相手に伝えることが必要となる。この適切に自己表現を行い、相手への配慮を行いながら双方向の意思疎通を図ることにより培われる能力を「コミュニケーション」とする。

能力が前提となる職務行動の程度に沿って、①事実等の正確な伝達、②意見や主張の説明、③依頼や折衝、④人間関係構築、⑤困難な人間関係構築の順となる。

○ チームワーク(協調性を発揮して職務を遂行する能力)

職場において上司・同僚・後輩と協同で職務を遂行するためには、仕事上必要なことを正確に伝えながらさらに相手の立場や置かれた状況等を理解することによる協調性を発揮した職務行動をとることが必要となる。この協調性を発揮して職務を遂行することにより培われる能力を「チームワーク」とする。

協調性が発揮される程度により遂行される職務行動に沿って、①周囲に目配りをして手伝っている、②仕事を分担し協同で取り組んでいること、③周囲の状況を考えて実施していること、④困難な人間関係においても協力して仕事をしていること、⑤新人や下位者の指導に当たっていることの順となる。

【職務への取組をさらに発展したものとするために必要な能力を形成する段階】

○ チャレンジ意欲(行動力・実行力を発揮して職務を遂行する能力)

職務遂行に当たってさらに発展的に職務内容の充実を図っていくためには、仕事を効率的に進めるために作業の工夫や改善が必要であり、新たな課題を発見しながらこれを解決していくこと、さらには困難や障害に対しても原因をつきとめ解決していく必要がある。この行動力・実行力を発揮して職務を遂行することにより培われる能力を「チャレンジ意欲」とする。

行動力・実行力を発揮して遂行する業務の困難度に沿って、①与えられた職務に対する工夫や改善、②与えられた職務への発展的対応、③必要性が認められるものの改善への行動、④未経験・難しい職務への意欲、⑤資格取得・自己啓発の順となる。

○ 考える力(向上心・探求心を持って課題を発見しながら職務を遂行する能力)

職務に対する取組みをさらに発展させて新たな課題を発見しながら職務を進めていくためには、現在の職務に対して自ら見通しを立てて必要な行動をとり、仕事を効率的に進めるための作業の工夫や改善が必要であり、新たな課題を発見しながらこれを解決していくこと、さらには困難や障害に対しても原因をつきとめ解決していく必要がある。ここでは、向上心・探求心を持って課題を発見しながら職務を遂行することにより培われる能力を「考える力」とする。

遂行する業務の困難度及びPDCAサイクルの過程に沿って、①与えられた職務に対する分析・計画・実施、②新たな職務に対する取組立案・実施、③実施している職務の評価・改善実施、④困難や障害への対応策発見、⑤予期しない問題の解決策発見の順となる。

【さらに専門的な職業能力を形成する段階】

○ 自己調整力(ストレスをコントロールしながら職務を継続する能力)

職務において上司・同僚・後輩及び顧客(お客様)との関わり、また、負担感の高い職務等に対応の中で、身体面とならび精神面での負担がかかる。これに対して職務を継続していくためには、精神面での自己調整が不可欠になる。そのため、ストレスをコントロールしながら職務を継続することにより培われる能力を「自己調整力」とする。

未然防止、ストレスに直面した際の対応、ストレスをコントロールしての職務遂行の順に沿って、①自己の健康管理、②感情的にならない自己コントロール、③ストレス解消策の実践、④自己調整した上での職務行動、⑤職務上の負担感を乗り越えた前向きな職務行動の順となる。

○ 専門性(自らの専門的能力を蓄積しながら職務に活かしていく能力)

技術や技能などの専門的能力は、自らその能力を意識して職務に活用することにより向上し、さらに職務遂行に当たって職業経験・自己啓発等を通じて蓄積されていく。そこで、さまざまな専門的能力を蓄積しながら職務に活かしていくこと、また活かしていこうとする能力を「専門性」とする。

職務に生かす専門的能力の多寡及び職務遂行への反映度に沿って、①身につけている能力を職務への活かし方に気づいていること、②積極的に活かしていること、③職務内容を踏まえ自己啓発を行っていること、④様々な専門的能力を職務に活かす方法を工夫して組み合わせながら職務に活かしていること、⑤様々な専門的能力をさらに身につけ、困難度の高い職務に取り組んでいることの順となる。

(別添1)

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(別添2)

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