添付一覧
○水道水中のクリプトスポリジウム等対策の実施について(通知)
(平成19年3月30日)
(健水発第0330005号)
(各都道府県・政令市・特別区水道行政担当部(局)長あて厚生労働省健康局水道課長通知)
水道行政の推進につきましては、日頃から格別のご協力を賜り厚くお礼申し上げます。
さて、水道におけるクリプトスポリジウム等の対策については、「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」(「水道水中のクリプトスポリジウムに関する対策の実施について」(平成8年10月4日付け衛水第248号通知)の別添。以下「暫定指針」という。)を貴管下の水道事業者、水道用水供給事業者及び専用水道の設置者(政令市及び特別区にあっては専用水道の設置者に限る。以下「水道事業者等」という。)に対し、周知を図り、これに基づき指導されるようお願いするとともに、「水道施設の技術的基準を定める省令」(平成12年厚生省令第15号。以下、「施設基準省令」という。)において、原水に耐塩素性病原生物が混入するおそれがある場合にはろ過等の設備を設置すべきことを規定し、対策の推進を図ってきたところです。
対策を更に充実するため、クリプトスポリジウム等について必要な調査研究を行っていたところでありますが、今般、最新の科学的知見等を踏まえ、施設基準省令を改正するとともに、新たに、「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」(以下、「指針」という。)を別添のとおりとりまとめ、平成19年4月1日より適用することとしました。
つきましては、改正後の施設基準省令及び指針に基づくクリプトスポリジウム等の対策が的確に講じられるよう、貴管下の水道事業者等に対し、指針について周知を図るとともに、これに基づく対策が徹底されるよう御指導についてよろしくお願いします。
また、貴職におかれては、水道水からクリプトスポリジウム等が検出された場合等には、迅速に情報を収集するとともに直ちに当該水道事業者等の給水区域を管轄する衛生行政担当部局に情報提供するようお願いします。
なお、当省においては、引き続き、指針に基づく対策の実施状況について点検するとともに、新たな知見の集積を行い、適宜指針を見直していくこととしておりますので、貴職の御協力を併せてお願いします。
記
第1 指針設定の趣旨
1.水道原水に係るクリプトスポリジウム等による汚染のおそれの程度を分類し、各分類に対応した施設整備、原水等の検査、運転管理、施設整備中の管理等の措置を示した。
2.新たに導入することとした紫外線処理について、紫外線処理の適用要件、原水の水質変化時の対応、及び、紫外線照射量の常時監視等の運転・維持管理に必要な事項を示した。なお、紫外線処理設備を導入する際の適用要件および運転管理に関する現時点での知見について、参考資料として別途提供することとした。
第2 留意事項
1.定期的な原水に係る検査の実施について
水道原水におけるクリプトスポリジウム等による汚染のおそれの程度を把握するため、指針に基づき、平成19年度以降できるだけ早期に原水に係る検査の実施体制の整備等につき必要な措置を講じ、定期的に原水のクリプトスポリジウム等及び指標菌の検査を実施すること。
また、平成20年度に実施する検査について水質検査計画を策定する際には、原水の指標菌の検査及びクリプトスポリジウム等による汚染のおそれのある施設における原水のクリプトスポリジウム等の検査についても、水道法(昭和32年法律第177号)第20条第1項の規定に基づく水質検査に準じて、当該計画に位置付けられたいこと。
2.定量的な汚染リスクに関する知見の収集について
クリプトスポリジウム等及び指標菌に関しては、水道原水におけるクリプトスポリジウム等による汚染のおそれの程度に関する定量的な知見が必ずしも十分でないことから、今回示した指標菌及びクリプトスポリジウム等の検査方法により、汚染リスクに関する定量的なデータの集積に努めるべきであること。また、当省においては、これらの知見を踏まえ、今後、定量的な汚染リスクに基づく予防対策等について検討を進めることとしていること。
3.水道における指標菌及びクリプトスポリジウム等の検査方法については、標準的な検査方法を別途通知により示すこととした。
第3 関係通知の改廃等
平成19年4月1日付けをもって、厚生省生活衛生局水道環境部長通知「水道水中のクリプトスポリジウムに関する対策の実施について」(平成8年10月4日付け衛水第248号)及び「水道水中のクリプトスポリジウムに関する対策の実施について」(平成10年6月19日付け生衛発第1039号)並びに厚生労働省健康局水道課長通知「水道水中のクリプトスポリジウムに関する対策の実施について」(平成13年11月13日付け健水発第100号)は廃止する。
なお、従来、暫定指針の添付資料として示されてきた、クリプトスポリジウム等の生物学的性状等の知見については、参考資料として別途提供することとしていること。
水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針
1.背景及び目的
水道水中のクリプトスポリジウムによる感染症については、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー市で40万人以上が感染した事例など、海外でいくつかの事例が報告されている。このような状況を踏まえ、WHOは平成7年12月からクリプトスポリジウムを含む病原生物に係る飲料水水質ガイドラインの検討を開始し、その成果を飲料水水質ガイドライン(第2版)追補版(平成14年)や同(第3版)(平成16年)にとりまとめている。
一方、平成8年6月には、我が国で初めての水道水に起因するクリプトスポリジウムによる感染症(クリプトスポリジウム症)が埼玉県越生町で発生した。
このため、厚生労働省では、平成8年に「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」を策定し、さらにその後の知見を踏まえ、平成10年及び平成13年に同指針を改定した。また、平成12年に制定した「水道施設の技術的基準を定める省令」において、原水に耐塩素性病原生物が混入するおそれがある場合には濾過等の設備を設置すべきことを規定し、対策の推進を図ってきた。
しかしながら、各水道施設における対策の進捗状況は十分とは言えず、平成15年の厚生科学審議会答申「水質基準の見直し等について」において、「水道水の安全に万全を期するためには、これら耐塩素性病原微生物に対する対策を一層推進していく必要がある」と提言された。このため、最新の科学的知見等を踏まえ、更に検討を進めてきた結果、今般、本指針をとりまとめたものである。
なお、本指針は、我が国において特に対策を講ずべき耐塩素性病原生物であるクリプトスポリジウム及びジアルジア(以下、「クリプトスポリジウム等」という。)を対象として作成している。
2.水道原水に係るクリプトスポリジウム等による汚染のおそれの判断
(1) レベル4(クリプトスポリジウム等による汚染のおそれが高い) 地表水を水道の原水としており、当該原水から指標菌が検出されたことがある施設 (2) レベル3(クリプトスポリジウム等による汚染のおそれがある) 地表水以外の水を水道の原水としており、当該原水から指標菌が検出されたことがある施設 (3) レベル2(当面、クリプトスポリジウム等による汚染の可能性が低い) 地表水等が混入していない被圧地下水以外の水を原水としており、当該原水から指標菌が検出されたことがない施設 (4) レベル1(クリプトスポリジウム等による汚染の可能性が低い) 地表水等が混入していない被圧地下水のみを原水としており、当該原水から指標菌が検出されたことがない施設 |
○感染経路
クリプトスポリジウムは人間や哺乳動物(ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)の消化管内で増殖し、感染症をもたらす。これらの感染した動物の糞便に混じってクリプトスポリジウムのオーシストが環境中に排出され、オーシストを経口摂取することにより感染症による被害が拡大する。水源がクリプトスポリジウムにより汚染された水道においては、浄水施設でクリプトスポリジウムを十分に除去又は不活化できなければ、水道水を経由して感染症による被害が拡大するおそれがある。また、ジアルジアについても水系を通じた感染症を起こすおそれがあり、基本的にクリプトスポリジウムに対する予防対策を講じることが有効と考えられる。
○指標菌
大腸菌(E.coli)及び嫌気性芽胞菌は水道原水の糞便による汚染の指標として有効である。また、その感染経路から、糞便により汚染された水源の水にはクリプトスポリジウム等が混入するおそれがある。このため、原水にいずれかの指標菌が検出された場合には「原水に耐塩素性病原生物が混入するおそれがある場合」に該当することとなる。
○リスクレベルの判断
(1) レベル4
クリプトスポリジウム等については、し尿、下水、家畜の糞尿等を処理する施設から排出される汚水の他、イノシシ、シカ、サル等の野生生物の糞便も汚染源となることから、地表水である原水から指標菌が検出されている場合は、クリプトスポリジウム等による汚染のおそれが高いと判断される。
(2) レベル3
レベル4に該当しない、伏流水、浅井戸等を水源とする施設であっても、原水から指標菌が検出されたことがある場合、当該原水は糞便により汚染されていると考えられることから、クリプトスポリジウム等による汚染のおそれがあると判断される。
(3) レベル2
原水から指標菌が検出されていない場合は、当該原水は糞便により汚染されていないと考えられることから、当面、クリプトスポリジウム等による汚染の可能性は低いと判断される。
(4) レベル1
井戸のケーシング等が破損していないこと、ストレーナーが被圧地下水のみを取水できる位置にあること等が確認され、かつ、原水の水質検査結果から地表水が混入していないことが確認できる井戸(例えば、大腸菌、トリクロロエチレン等が検出されていないこと等)から取水した被圧地下水を原水とし、当該原水から指標菌が検出されたことがない場合には、クリプトスポリジウム等による汚染の可能性は低いと判断される。
指標菌の検査には別に定める検査方法を用いることを原則とする。
なお、通常使用されていない水源についても、そのリスクレベルを判断しておくこと。
こうしたリスクレベルの判断フローは図に示すとおりである。
3.予防対策
水道事業者等は、水道原水に係るクリプトスポリジウム等による汚染のおそれの程度に応じ、次の対応措置を講ずること。
(1) 施設整備
(ア) レベル4 ろ過池またはろ過膜(以下、「ろ過池等」という。)の出口の濁度を0.1度以下に維持することが可能なろ過設備(急速ろ過、緩速ろ過、膜ろ過等)を整備すること。 (イ) レベル3 以下のいずれかの施設を整備すること。 (a) ろ過池等の出口の濁度を0.1度以下に維持することが可能なろ過設備(急速ろ過、緩速ろ過、膜ろ過等)。 (b) クリプトスポリジウム等を不活化することができる紫外線処理設備。具体的には以下の要件を満たすもの。 ① 紫外線照射槽を通過する水量の95%以上に対して、紫外線(253.7nm付近)の照射量を常時10mJ/cm2以上確保できること。 ② 処理対象とする水が以下の水質を満たすものであること。 ・濁度 2度以下であること ・色度 5度以下であること ・紫外線(253.7nm付近)の透過率が75%を超えること(紫外線吸光度が0.125abs./10mm未満であること) ③ 十分に紫外線が照射されていることを常時確認可能な紫外線強度計を備えていること。 ④ 原水の濁度の常時測定が可能な濁度計を備えていること(過去の水質検査結果等から水道の原水の濁度が2度に達しないことが明らかである場合を除く。)。 |
○紫外線照射量
低圧紫外線ランプから発せられる紫外線10mJ/cm2(照射強度(mW/cm2)×照射時間(s))を水に照射することにより、当該水中のクリプトスポリジウムを99.9%不活化すること(3log不活化)ができる。また、紫外線5mJ/cm2を水に照射することにより、当該水中のジアルジアを99%不活化すること(2log不活化)ができる。
○紫外線処理設備の整備に関する留意事項
・ 紫外線照射槽は水流の偏りのない、所定の滞留時間が得られる構造のものであること。
・ 適正なランプ照射強度を持つ紫外線ランプを選定し、必要な紫外線強度分布を得られるようランプを配置すること。
・ ランプスリーブを適切に洗浄できること。
・ 水質、水量の計測設備を設置し、効率的な運転、信頼性の向上を図ること。
・ 地震時の揺れ対策やランプ本体やランプスリーブの破損防止措置をとること。また、紫外線ランプの点灯状況を常時確認できること。
・ 紫外線照射を阻害する物質がランプスリーブの表面に付着することによる紫外線照射量低下の影響をできるだけ避けるため、処理対象水中の鉄が0.1mg/L以下、硬度が140mg/L以下及びマンガンが0.05mg/L以下であることが望ましいこと。
・ 紫外線照射槽を二つ以上の複数基に分けて設置し、一つの設備が故障しても最低限の処理水量が得られる設計とすることが望ましいこと。
・ ランプ寿命や流量等についても考慮した、紫外線照射量の自動制御が望ましいこと。
・ 停電時の対策として非常用電源設備を設けることが望ましいこと。
・ 異常時の緊急遮断弁を設置することが望ましいこと。
・ 浄水処理の安全性を一層高めるために、ろ過池等の出口の濁度を0.1度以下に維持することが可能なろ過設備と紫外線処理設備を併用することとしてもよいこと。
(2) 原水等の検査
(ア) レベル4及びレベル3 ・ 水質検査計画等に基づき、適切な頻度で原水のクリプトスポリジウム等及び指標菌の検査を実施すること。ただし、クリプトスポリジウム等の除去又は不活化のために必要な施設を整備中の期間においては、原水のクリプトスポリジウム等を3ヶ月に1回以上、指標菌を月1回以上検査すること。 (イ) レベル2 ・ 3ヶ月に1回以上、原水の指標菌の検査を実施すること。 (ウ) レベル1 ・ 年1回、原水の水質検査を行い、大腸菌、トリクロロエチレン等の地表からの汚染の可能性を示す項目の検査結果から被圧地下水以外の水の混入の有無を確認すること。 ・ 3年に1回、井戸内部の撮影等により、ケーシング及びストレーナーの状況、堆積物の状況等の点検を行うこと。 |
○留意事項
レベル4及びレベル3の場合、浄水を毎日1回20リットル採水し、ポリタンクに注入した水または採水した水から得られるサンプルを14日間保存することが望ましい。そのための採水は浄水施設で行うことが望ましいが、当該浄水場からの給水を受ける配水系統内の給水栓の水でも差し支えない。
なお、採取した水については直射日光や高温となる場所を避けて冷暗所に保存すること、採水した水から得られるサンプルについては、乾燥を避けて冷蔵保存することが望ましい。
クリプトスポリジウム等の検査には別に定める検査方法を用いることを原則とする。
(3) 運転管理
(ア) ろ過
① ろ過池等の出口の水の濁度を常時把握し、ろ過池等の出口の濁度を0.1度以下に維持すること。 ② ろ過方式ごとに適切な浄水管理を行うこと。特に急速ろ過法を用いる場合にあっては、原水が低濁度であっても、必ず凝集剤を用いて処理を行うこと。 ③ 凝集剤の注入量、ろ過池等の出口濁度等、浄水施設の運転管理に関する記録を残すこと。 |
○共通の留意事項
・ ろ過池等の出口の水の濁度を常に0.1度以下に維持すること。そのため、原水水質の変化を浄水処理操作に即時に反映できるようにすること。なお、その際、目視のみによって浄水処理の効果を判断せず、必ず十分に調整された濁度計を用いること。
・ ろ過池等の出口の水の濁度は各ろ過池等ごとに測定することとするが、不可能な場合は、各処理系統ごとに測定することとし、いずれの場合も測定記録を残すこと。
○急速ろ過法における留意事項
a) 凝集用薬品の注入
・ 原水が低濁度であっても急速砂ろ過池でろ過するのみではクリプトスポリジウム等を含めコロイド・懸濁物質の十分な除去は期待できないので、必ず凝集剤を用いて処理を行うこと。
・ 原水の濁度、pH、水温、アルカリ度等の検査結果に即応して、凝集剤の適正な注入率が調整できるよう、また、適正なpHに調節できるよう、必要な機器の整備と維持管理を行うこと。
・ 凝集剤の注入率は、処理する原水を用いたジャーテストにより決定することが基本であることから、定期的にジャーテストを実施すること。また、注入率及びpHが適正なものになっているかどうかを確認するため、原水の水質、並びに、当該原水に係る凝集沈殿処理水及びろ過水の濁度の相関関係を十分把握し、注入率及びpHの調整にフィードバックすること。
・ 原水水質が急変した場合にはジャーテストを行う必要があるが、当該ジャーテストの結果を注入率の調整に用いるまでの間タイムラグがある。そのため、あらかじめ、原水に濁度成分(上流の河床底泥等)を添加した人工高濁度水を用いた実験の結果や過去の実績値に基づいて、高濁度時の注入率を設定しておくこと。なお、水源に汚染源が新たに立地された場合には、必ず設定注入率を見直すこと。
・ 凝集剤、アルカリ剤等の浄水用薬品は、その使用期限を遵守して用い、注入量等の記録を残すこと。
b) 凝集操作
・ 凝集剤を注入した直後に攪拌し、原水全体に一様に凝集剤を拡散させること。
・ 凝集用薬品の注入率を変えたときには、必ず、フロック形成池及び沈殿池での処理結果を確認すること。
c) 沈殿操作等
・ 沈殿池の滞留時間、池内の流速に留意し、十分な沈殿処理を行うこと。
・ 沈殿効果を高める必要がある場合は、傾斜板等を設置すること。
d) 急速ろ過操作
・ろ過池のろ過速度を急激に変更してはならないこと。
・ろ過池は、目詰まりの発生が少ない場合であっても、適切な間隔で洗浄を行うこと。
・ろ過池の洗浄は適正な逆流洗浄速度で行うこと。
・ろ過池の洗浄は、通常、洗浄排水の最終濁度が2度以下となることを目標として行うこと。可能であれば1度以下を目標とすることが望ましいこと。また、洗浄の終了時には逆流洗浄速度を段階的に減少すること。
・ろ過池の洗浄等の直後はろ過機能が発現していないため、ろ過開始後のろ過速度を設定流量まで段階的に増加することやろ過池出口の濁度が0.1度以下になるまでの捨て水を行うこと等により、ろ過池出口の水の濁度が0.1度以下を維持できるようにすること。
e) ろ過池洗浄排水等の原水への返送管理
・水道原水水質に急激な変化が生じないよう返送に係る運転・管理に留意すること。
・ろ過池で捕捉されたクリプトスポリジウム等が再び浄水施設内で循環しないように、可能な限り排水池等に濁質の低減機能を持たせること。
○緩速ろ過法における留意事項
・ 生物ろ過膜の損傷を防ぐため、ろ過速度はおおむね5m/日を超えないように、また、ろ過速度の急激な変化が発生しないようにすること。
・ かき取ったろ過砂を再利用する場合には、洗浄水の濁度が2度以下になる程度まで洗浄し、洗浄水は水道原水として利用しないこと。
・ かき取り後、ろ過水を排水しながら、生物膜が再び形成され浄水の濁度が0.1度以下になるまで、低いろ過速度から徐々に速度を上げるようにすること。
○膜ろ過法における留意事項
・ 膜の損傷による事故を防止するため、異常の有無を適切に検知又は検査するとともに、異常が発見された場合には、直ちに該当する膜ろ過設備の運転を停止すること。
(イ) 紫外線処理
① 紫外線強度計により常時紫外線強度を監視し、水量の95%以上に対して紫外線(253.7nm付近)の照射量が常に10mJ/cm2以上得られていることを確認すること。 ② 原水濁度が2度を超えた場合は取水を停止すること。ただし、紫外線処理設備の前にろ過設備を設けている場合は、この限りではない。 ③ 常に設計性能が得られるように維持管理(運転状態の点検、保守部品の交換、センサー類の校正)を適正な頻度と方法で実施すること。 |
○留意事項
・ 原水濁度が2度を超えた場合は、不活化に必要な紫外線照射量が得られないおそれがあるため、直ちに取水を停止すること。そのため、常時監視が可能な濁度計により処理対象水の濁度変動に常時注意を払う必要があること。
・ 紫外線強度計の受光部の曇り及び汚れの有無、使用時間を確認し、定期的に洗浄、校正、交換を行うこと。
・ 紫外線照射槽内の流量について、設計値、ユニットごとの設定流量からの乖離がないか確認すること。
・ 紫外線ランプの点灯状況、運転時間及び出力を把握し、消灯あるいは、ランプまたは紫外線照射施設の状況に応じ必要な出力以下に低下した場合は交換すること。
・ ランプスリーブを定期的に洗浄すること。紫外線照射の有無にかかわらず紫外線照射槽内に水がある場合はスリーブの汚れの原因となるため、紫外線照射停止中であってもスリーブを定期的に洗浄すること。なお、自動洗浄装置を備えておくことが望ましいこと。
・ 紫外線照射槽内の流量、水温を定期的に監視し、異常が発生した場合には速やかに運転を停止し、設備を点検すること。
・ 紫外線が人体に直接照射されることがないよう、ランプ交換等の作業時はランプを消灯し、やむを得ずランプ点灯時に作業する必要がある場合には手袋や紫外線保護マスク等を着用すること。
・ 適切な日常点検を行うとともに、必要な予備部品を保管しておくこと。使用済み紫外線ランプは適切に処分すること。
(ウ) 施設整備中の管理
①レベル4 クリプトスポリジウム等対策のために必要な施設整備を早急に完了する必要があるが、整備中の期間においては、原水の濁度を常時計測して、その結果を遅滞なく把握できるようにし、渇水等により原水の濁度レベルが通常よりも高くなった場合には、原則として原水の濁度が通常のレベルに低下するまでの間、取水停止を行うこと。 ただし、上流の河川工事等が水道原水の濁度を上昇させている場合、底泥をまき上げない工事等のように必ずしもクリプトスポリジウム等による汚染を生じさせないものもあるため、当該工事の種類、場所その他を勘案して取水停止の必要性を判断すること。 ②レベル3 クリプトスポリジウム等対策のために必要な施設整備に時間を要する場合には、以下のいずれかの措置をとること。 ・過去の水質検査結果等から渇水等により原水の濁度レベルが高くなることが明らかである場合には、原水の濁度を常時計測して、その結果を遅滞なく把握できるようにし、原水の濁度レベルが通常よりも高くなった場合には、原則として原水の濁度が通常のレベルに低下するまでの間、取水停止を行うこと。 ・その他の場合には、原水のクリプトスポリジウム等及び指標菌の検査の結果、クリプトスポリジウム等による汚染のおそれが高くなったと判断される場合には、取水停止等の対策を講じること。 |
○留意事項
クリプトスポリジウム等の除去又は不活化のために必要な施設を整備中の期間においては、原水の水質監視を徹底し、クリプトスポリジウム等が混入するおそれが高まったと判断される場合には、取水を停止する等の対策を講じる必要があること。
(4) 水源対策
地表水若しくは伏流水の取水施設の近傍上流域又は浅井戸の周辺にクリプトスポリジウム等を排出する可能性のある汚水処理施設等の排水口がある場合には、当該排水口を取水口等より下流に移設し、又は、当該排水口より上流への取水口等の移設が恒久対策として重要であるので、関係機関と協議のうえ、その実施を図ること。 また、レベル3又はレベル4の施設においてクリプトスポリジウム対策に必要な施設を整備することが困難な場合には、クリプトスポリジウム等によって汚染される可能性の低い原水を取水できる水源に変更する必要があること。 |
○水源対策の実施に関する留意事項
一般に、汚水処理施設等の排水口下流に近接して、水道原水の取水口が設けられている場合は少ないが、特にクリプトスポリジウム等による汚染の可能性がある汚水処理施設等の場合は、より一層の注意が必要であること。
また、水道の取水口の上流近傍に汚水処理施設が設けられる場合が考えられるが、この場合には、当該施設の排水口を水道の取水口の下流に位置させる等、水道事業者等は関係機関と十分協議する必要があること。
レベル3又はレベル4に該当する施設であってクリプトスポリジウム等対策に必要な施設を整備することが困難な場合には、水源を変更することにより、レベル1又はレベル2に移行する必要があること。
○水源対策実施後のリスクレベルの判定
水源対策実施後は、原水のクリプトスポリジウム等及び指標菌の検査結果に基づきリスクレベルを改めて判断することができること。
4.クリプトスポリジウム症等が発生した場合の応急対応
クリプトスポリジウム症等が発生し、水道水がその原因であるおそれがある場合には、関係者は次の対応措置を講ずること。
(1) 応急対応の実施
水道事業者等をはじめ、都道府県の関係部局は連携して応急対応を実施すること。 |
○連絡体制の整備
感染症の発生を迅速に把握するとともに、応急対応が遅滞なく実施されるよう、都道府県(水道行政担当部局、感染症担当部局、食中毒担当部局、保健所等)、水道事業者、水道用水供給事業者等の関係者の間における連絡マニュアル・連絡網を予め策定しておくこと。感染症が発生した場合、予め策定したマニュアルに基づき水道事業者等は都道府県へ、都道府県は国へそれぞれ報告し、連絡を密にすること。また、水道用水供給事業者等とその受水事業者との間の連携を密にし、水道利用者への対応と水道施設における対応を協調して実施すること。
(2) 水道事業者等における応急対応
①水道利用者への広報・飲用指導等
下痢患者等の便からクリプトスポリジウム等が検出される等、水道が感染源であるおそれが否定できない場合には、直ちに、水道利用者への広報・飲用指導等を行うこと。 |
○広報の実施
クリプトスポリジウム等による感染症の発生状況から見て、水道が感染源であるおそれが否定できないと判断される場合には、水道事業者等は都道府県と協力して直ちに、水道利用者に対する広報・飲用指導を行う必要があること。なお、レベル3またはレベル4の浄水施設において、浄水処理の異常等によって、ろ過池出口の水の濁度が0.1度を超過した場合や紫外線照射量が10mJ/cm2を下回った場合等においても、当該水道水が感染源となるおそれがあることに留意して、必要に応じた広報等を行うこと。
○広報の手段
クリプトスポリジウム等による感染症の拡大を防止するため、また、水道の利用者の混乱を招くことがないよう、各種手段(広報車、ビラ、新聞、テレビ)を活用して、迅速かつ確実に広報を行うこと。
○広報の内容
飲用時の注意事項(例:煮沸して飲用すること)や、二次感染の予防方法(例:手洗いを十分行うこと、手拭きを共用しないこと)について周知するとともに、クリプトスポリジウム症等の症状や感染予防策、水道事業者の対応等について、わかりやすくかつ詳細に伝えること。広報の具体例を別添1、2に示す。
②水道施設における応急対応
水道水がクリプトスポリジウム等に汚染されたおそれのある場合には、浄水場からの送水を停止する等の措置を講じた上で、浄水処理の強化を行うか、または、汚染されているおそれのある原水の取水停止・水源の切り替え等を実施すること。 その後、配水管等の洗浄を十分に行った上で、クリプトスポリジウム等の有無の検査により、飲用水としての利用に支障がないと判断された場合に給水を再開すること。 |
○給水停止等の実施
水道水がクリプトスポリジウム等に汚染されたおそれのある場合には、汚染の疑われる浄水場からの送水を停止する等の措置を迅速かつ確実に行うこと。このために通常時より、必要なバルブ等の作動状態を点検しておくこと。
○ろ過等の強化
ろ過については、浄水用薬品の注入率、ろ過速度等の調整を行い、浄水処理条件を適正化して、浄水の濁度を0.1度以下に維持すること。また、紫外線処理については、必要な紫外線照射量が常時照射されていることを確認すること。
○取水停止/水源の変更
浄水処理が適切に実施できない場合には、クリプトスポリジウム等に汚染されているおそれのある原水の取水を停止し、可能な場合は糞便による汚染のない他の水源に切り替えること。
○水道利用者への広報の徹底等
クリプトスポリジウム等による感染症の拡大を防止するため、また、水道の利用者の混乱を招くことがないよう、水道水を飲用することによりクリプトスポリジウム等に感染する危険があることについて、各種手段(広報車、ビラ、新聞、テレビ)を活用して、迅速かつ確実に広報を行うこと。
○給水の確保
断水等による生活への重大な影響や、洗浄を行うための清浄な水の不足が生ずることも想定されることから、あらかじめ、緊急時には汚染されていない水源を活用し、又は、水道用水供給事業による給水量を増加させること等により対処できるよう施設の整備をしておくこと。
なお、給水を停止した場合、代替水源への切り替えや受水量の増加、送配水系統の切り替え等の措置を行っても断水等が生じ、水道利用者の生活に重大な影響を及ぼしたり、洗浄を行うための清浄な水が不足したりする場合に限り、応急的措置として、水道利用者が飲用時の注意事項や二次感染の予防方法等について十分周知、徹底したと判断できる場合において、ろ過等の強化を行った上で、経口感染のおそれのない用途において使用することとすることができる。
○汚染された施設の洗浄
汚染された配水系統内の水道水の排水を行うとともに、汚染されていない水道水で配水管や配水池等の施設の洗浄を十分行うこと。この場合、配水管からの排水が速やかに実施できるよう、ドレーンの適切な設置、配水管網の点検を行うこと。
○水質検査の実施
感染症の発生の原因や影響の規模を特定するため、浄水サンプルを保存している場合には、必要に応じ、それらについてクリプトスポリジウム等の検査を行うこと。
また、給水の再開にあたっては、給水栓水、配水池水及び浄水池水についてクリプトスポリジウム等に係る水質検査を行い、給水栓、配水池及び浄水池のそれぞれにおいて検水20Lについてクリプトスポリジウム等が検出されないことを確認すること(水質検査は、確実性を高めるため、各3試料について40L(給水栓、配水池及び浄水池の各々の水について40Lを3回、一箇所につき合計120L)ずつ採水し行うこと)。
なお、紫外線処理を用いる施設においては、給水栓までの配水系統内の水道水が、必要な量の紫外線を照射されている水に十分に入れ替わったことを確認すること。
また、水源を切り替えることにより給水を再開する場合については、新規の水道原水についても併せて水質検査を行うこと。
水質検査方法については、別に定める方法を用いること。
(3) 都道府県等の水道行政担当部局における対応
関係の水道事業者等、都道府県の感染症担当部局、試験研究機関等と連携を密にして、水道事業者等における対応の円滑な実施を支援するほか、関係都府県とも連絡を密にし、自らも住民への広報に努める等、対策の早期実施に努めること。 |
○水道利用者への広報・指示
水道事業者等と連携し、都道府県の感染症担当部局等や保健所を通じて、病院、老人保健施設、社会福祉施設、学校等をはじめとし、利用者に広報・指示を行うとともに、患者等の問い合わせ等に適切に対応すること。
○受水槽の管理
受水槽の設置者に対し、給水の停止及び水槽内の清掃を行うよう指導すること。また、給水の再開は、汚染されていない水に入れ替えたのちに行うよう指導すること。
○近傍の水道事業者等への連絡等
近傍の地表水又は地表水の影響を受ける地下水(伏流水、浅井戸)を水源とする水道事業者等に対し、クリプトスポリジウム症等の発生について速やかに情報提供を行うとともに、浄水処理の徹底を指導すること。
【別添1】
水道がクリプトスポリジウムの感染源であるおそれが否定できない場合の広報の具体例
1 クリプトスポリジウムに関する情報の提供
水道利用者等に混乱を生じないよう、クリプトスポリジウム症の特徴などを十分説明する。
●クリプトスポリジウムは人間や牛などの小腸に寄生する原虫です。
クリプトスポリジウムは人の他に牛、豚、犬、猫などのほ乳動物の腸に寄生する、大きさは4~6μm(1μmは1mmの千分の1)の原虫です。感染した人や動物の糞便といっしょにオーシストと呼ばれる形で体の外へ排出され、感染源となります。排出量は、1日当たり、人では約10億個、ウシでは約100億個といわれています。
湿った環境の中では、クリプトスポリジウムは2~6ケ月間、感染力をもっています。
●クリプトスポリジウムは食べ物や水を介して口から感染します。
クリプトスポリジウムのオーシストを、食べ物や水を介して口から摂取すると、クリプトスポリジウムは小腸の組織に入り込み増殖を始めます。
●クリプトスポリジウムに感染した場合の症状は下痢や腹痛です。
クリプトスポリジウムが人に感染症を引き起こす原因として知られ始めたのは、1976年からです。
クリプトスポリジウムに感染すると、2日~5日後に、下痢、腹痛、吐き気や嘔吐、軽い発熱などの症状が始まります。下痢はさらさらの泥水の様で、血液が混じることはありません。感染しても症状が出ない人もいます。
健康な方で免疫が正常に働いていれば、クリプトスポリジウム症の症状は4、5日~約1週間程度でなくなります。長い場合は2週間ほど続く場合もありますが、生命に関わる病気ではありません。
一方、免疫不全の方やガンの治療で免疫抑制療法を受けている方などの場合、病気が長びき、深刻な症状になるおそれがあります。
●感染症にかかったら水分の補給に心がけてください。
クリプトスポリジウムによる下痢は、免疫の作用で自然に治りますが、脱水症状にならないよう、水分の補給に気をつけてください。水やお茶よりもスポーツドリンクの方が吸収されやすく、脱水を防ぐのに有効です。
また、症状がひどくて心配な場合は、医師に相談してください。
2 感染症の予防
感染症の流行時に心掛けるべきことを説明する。
●手をきちんと洗ってください。
おむつの交換のあと、患者の糞便にさわったあと、また、料理など食べ物を扱うまえには、アルコール綿等でふき取り、石けんで手を良く洗い紙タオル等で良くふいて乾かしてください。
〔参考〕
クリプトスポリジウムに感染した場合、症状が治った後、あるいは症状が出なくてもオーシストは便から排出されることから、2次感染を防止するため、便に触れた場合や飲食物を扱うときには、アルコール綿等でふき取り、石けん等で十分手を洗って良く拭いて乾かしてください。
●水は煮沸して飲んでください。
クリプトスポリジウムは熱に弱いので、水は1分間以上煮沸して飲んでください。氷も湯冷ましを使って作ってください。プールの水、湖や川の水からも感染することがありますから、再生水を口にすることがないよう注意してください。
この他、生ものは避け、加熱して調理してください。食器も良く拭き乾燥させてください。
〔参考〕
クリプトスポリジウムは加熱、冷凍、乾燥に弱く、60℃以上又は-20℃以下で30分間、又は、常温の場合で1~4日間乾燥状態におかれると、感染力を失います。飲用水の場合は、1分間沸騰させれば十分不活化できます。
●浄水器の使用にも注意してください。
家庭用等の浄水器については、全ての機種がクリプトスポリジウムの除去に有効であるわけではなく、1μmより大きい粒子が確実に除去できるもの以外は効果がありません。
また、クリプトスポリジウムを除去できる浄水器でも、継続した使用に伴ってカートリッジにクリプトスポリジウムが蓄積されるので、使用の手引きに従ってカートリッジの交換を適宜行ってください。なお、カートリッジの交換時には、手にクリプトスポリジウムが付着しないよう気をつけるようにし、交換後には手をよく洗ってください。
●その他
家族で下痢をしている人がいる場合、家族内感染を防ぐため、患者の方の入浴を最後にしてください。また、クリプトスポリジウムは熱湯に弱いので、患者のふん便で汚れた下着やおむつは熱湯をかけてから洗濯してください。
3 水道局での対応
水道事業者等の対応状況を広報し、住民の理解と協力を得ること。
●配水管の洗浄などに伴う断水に関する広報事項(例)
・目的:配水管内のクリプトスポリジウムを除去するため、管の洗浄を実施する
・断水の影響のある世帯、地域等
・断水の開始予定時刻及び終了予定時刻
・洗浄後の安全確認結果
・水道水の利用再開時の注意
しばらく水道水を放水し、給水管内のクリプトスポリジウムを流し出す。
【別添2】
水道がジアルジアの感染源であるおそれが否定できない場合の広報の具体例
1 ジアルジアに関する情報の提供
水道利用者等に混乱を生じないよう、ジアルジア症の特徴などを十分説明する。
●ジアルジアは人間を含む多くの哺乳動物の小腸に寄生する原虫です。
ジアルジアは人やほ乳動物の腸に寄生する、大きさは長径8~12μm、短径5~8μm(1μmは1mmの千分の1)程度の大きさの原虫です。感染した人や動物の糞便といっしょにシストと呼ばれる形で体の外へ排出され、感染源となります。ジアルジアのシストは下痢の治まった後の有形便の中に多量に排出されます。排出されるシストの量は変動するようで、糞便1gあたり106~108個、一人当たり1日10億個以上となりますが、感染しても検出限界以下のごくわずかのシストしか排出しない人も多く見られます。
湿った環境の中では、ジアルジアは少なくとも2ケ月間、感染力をもっています。
●ジアルジアは食べ物や水を介して口から感染します。
ジアルジアのシストを、食べ物や水を介して口から摂取すると、ジアルジアは十二指腸や小腸の上皮細胞表面に吸着して増殖を始めますが、細胞や組織の中に侵入することはありません。一方、輸胆管やさらに上流部まで感染が広がることもあります。
●ジアルジアに感染した場合の症状は下痢や腹痛です。
ジアルジアが人に感染症を引き起こすことは、古くから知られていました。
ジアルジアに感染してから下痢、腹痛などの症状が出るまでの期間は一定しませんが、一般的には6~15日後とされています。下痢は水溶性の激しいものから泥状便まで様々ですが、血液が混じることはありません。また、感染しても症状が出ない人も多く見られます。
健康な方が感染しても2~4週間あるいはそれ以上と比較的長く症状が続きますが、生命に関わる病気ではありません。また、本症には治療薬が知られていることから、正しく診断されれば免疫不全患者においても深刻な症状に発展することはありません。
●感染症にかかったら水分の補給に心がけてください。
ジアルジアによる下痢は、免疫の作用で自然に治りますが、脱水症状にならないよう、水分の補給に気をつけてください。水やお茶よりもスポーツドリンクの方が吸収されやすく、脱水を防ぐのに有効です。
2 感染症の予防
感染症の流行時に心掛けるべきことを説明する。
●手をきちんと洗ってください。
おむつの交換のあと、患者の糞便にさわったあと、また、料理など食べ物を扱うまえには、アルコール綿等でふき取り、石けんで手を良く洗い紙タオル等で良くふいて乾かしてください。
〔参考〕
先にも触れましたが、ジアルジアのシストは下痢の治まった後の有形便の中に多量に排出されます。ジアルジアに感染した場合、症状が治った後、あるいは症状が出なくてもシストは便から排出されることから、2次感染を防止するため、便に触れた場合や飲食物を扱うときには、アルコール綿等でふき取り、石けん等で十分手を洗って良く拭いて乾かしてください。
●水は煮沸して飲んでください。
ジアルジアは熱に弱いので、水は1分間以上煮沸して飲んでください。氷も湯冷ましを使って作ってください。プールの水、湖や川の水からも感染することがありますから、再生水を口にすることがないよう注意してください。
この他、生ものは避け、加熱して調理してください。食器も良く拭き乾燥させてください。
●浄水器の使用にも注意してください。
家庭用等の浄水器については、全ての機種がジアルジアの除去に有効であるわけではなく、1μmより大きい粒子が確実に除去できるもの以外は効果がありません。
また、ジアルジアを除去できる浄水器でも、継続した使用に伴ってカートリッジにジアルジアが蓄積されるので、使用の手引きに従ってカートリッジの交換を適宜行ってください。なお、カートリッジの交換時には、手にジアルジアが付着しないよう気をつけるようにし、交換後には手をよく洗ってください。
●その他
家族で下痢をしている人がいる場合、家族内感染を防ぐため、患者の方の入浴を最後にしてください。また、ジアルジアは熱湯に弱いので、患者のふん便で汚れた下着やおむつは熱湯をかけてから洗濯してください。
〔参考〕
便で汚れた下着などは比較的小さな容器(盥(たらい)やバケツなど)に入れて、熱湯をかけると効果的に消毒ができます。
3 水道局での対応
水道事業者等の対応状況を広報し、住民の理解と協力を得ること。
●配水管の洗浄などに伴う断水に関する広報事項(例)
・目的:配水管内のジアルジアを除去するため、管の洗浄を実施する
・断水の影響のある世帯、地域等
・断水の開始予定時刻及び終了予定時刻
・洗浄後の安全確認結果
・水道水の利用再開時の注意
しばらく水道水を放水し、給水管内のジアルジアを流し出す。