○鉛製給水管の適切な対策について
(平成19年12月21日)
(健水発第1221001号)
(各都道府県水道行政担当部(局)長あて厚生労働省健康局水道課長通知)
鉛に係る水道水質基準については、その毒性、蓄積性を考慮し、平成14年3月27日に公布された水質基準に関する省令の一部を改正する省令(平成14年厚生労働省令第43号)により0.01mg/L以下に強化され、平成15年4月1日から施行されているところであり、鉛製給水管中に水が長時間滞留した場合等には、鉛管からの溶出により、水道水の鉛濃度が水質基準を超過するおそれがあると考えられる。近年の統計調査においても依然として鉛製給水管が残存しており、鉛に対する抜本的な対策としては鉛製給水管の布設替えが必要であることから、平成16年6月に当省が策定した「水道ビジョン」では、達成すべき施策目標のひとつとして、鉛製給水管の総延長を5年後に半減し、できるだけ早期にゼロにするという目標を掲げ、取り組みの推進を図ってきているところである。
また、これに関連して、平成19年8月に実施した「鉛製給水管に関するアンケート調査」の結果、水道事業者間においては鉛製給水管対策の進捗に差異がみられ、鉛製給水管が残存している水道事業者において鉛製給水管布設替計画を策定していないものが半数以上を占めるなど、鉛製給水管の早期全廃への目標達成に依然として課題が残っていることが明らかとなった。
ついては、鉛に係る水質基準確保のためには、以下の内容が重要と考えられるので、貴管下水道事業者等に対して指導方お願いする。
なお、厚生労働省としては、今後水道法第39条の規定に基づく報告の徴収等を通じて、定期的に鉛製給水管に対する取組状況について報告していただく考えであること、また、厚生労働大臣認可水道事業者に対して別途通知していることを申し添える。
記
1 鉛製給水管使用者等への広報活動
(1) 鉛製給水管を使用している住宅を特定できている場合は、当該水道使用者(所有者)に対し、早期布設替えの必要性と布設替えまでの間の注意事項(開栓初期の水は飲用以外の用途に用いること)を個別に周知されたいこと。なお、個別の周知は一度実施するだけではなく、定期的に行われることが望ましい。
(2) 鉛製給水管を使用している住宅を特定できない場合においては、給水台帳等の保有情報を確認することにより特定に努められたいこと。
併せて、例えば給水開始時期等から推定し、使用の可能性のある住宅を中心に、検針時及びメーター交換時に水道メーターます内の鉛製給水管使用状況を確認するほか、水道使用者に調査の方法(鉛製給水管の写真などを提示して、水道管の色による判別を呼びかけるなど)を明らかにするとともに、判別がつかない時の措置として水道事業者への相談を呼びかけるなど、対応を図られたいこと。
2 鉛製給水管の布設替計画の策定と布設替えの促進
(1) 布設替計画の策定
「水道ビジョン」において、鉛製給水管の総延長を5年後に半減し、できるだけ早期にゼロにするという目標を掲げた。また、地域水道ビジョン策定にあたっても鉛製給水管の総延長を5年後に半減し、できるだけ早期にゼロにすることを目指しつつ、目標を設定するものとしている。
これらを踏まえ、次の(2)及び(3)に留意の上、布設替計画を策定し、計画的に鉛製給水管の布設替を進められたいこと。
(2) 配水管分岐部~水道メーターまでの布設替え
配水管分岐部から水道メーター(水道メーターまわりを含む)までは、水道施設と直接接続していること、公道で工事を要すること、布設替えにより漏水を解消し有収率の向上が期待できることから、水道事業者自らが積極的に布設替えに取り組むようお願いする。
また、配水管の布設替えと合わせて鉛製給水管の布設替えを実施する例があるが、配水管更新予定が定まっていない路線においても、鉛製給水管の解消が遅れることがないようにすべきである。
なお、公道下部分の布設替えにあたっては、起債制度の活用も検討されたい。
(3) 水道メーター~給水栓までの布設替え
水道メーター下流部~給水栓は、早期に布設替えするよう給水装置の所有者の意識向上を図るとともに、可能な場合には、水道事業者が助成制度や融資制度を設けるなど、所有者による布設替えを促進する支援策を講じられたいこと。
なお、水道事業者自らが、(2)で記述した水道メーター上流部分の布設替えに積極的に取り組むことは、給水装置の所有者の負担軽減につながり、メーター下流側の布設替実施の契機となるものと思料される。
3 鉛の水質基準の確保
鉛製給水管の布設替えが完了するまでの間においては、以下の(1)から(3)等により、鉛の水質基準の確保に万全を期されたい。
(1) 鉛の溶出対策
鉛製給水管が数多く残存している場合等には、pH調整の実施について検討すること。
(2) 鉛濃度の把握
鉛製給水管を使用している給水栓における鉛濃度の把握に努めること(例えば、定期水質検査の採取場所に含めることや鉛製給水管に着目した水質調査の実施等)。
(3) 鉛濃度が高い給水栓への対応
水質調査等により鉛濃度が高いことが把握されている給水栓について、水道事業者が実施する配水管分岐部から水道メーターまでの布設替えを優先的に実施する、使用者に布設替えを働きかける等の対応を図り、水質基準の確保に万全を期されたいこと。
(参考)
厚生労働省ホームページにおいて鉛製給水管布設替促進方策検討委員会報告書を掲載しているので、鉛製給水管の対策を検討するにあたり参考にされたい。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kyusui/01b.html
別添
鉛製給水管に関するアンケート調査結果
厚生労働省健康局水道課作成
本調査結果は、平成19年8月20日付各都道府県水道行政担当部(局)あて「鉛製給水管に関するアンケート調査(依頼)」による、アンケート調査結果を集計したものである。
本調査は、平成18年度末時点の鉛製給水管の残存状況と鉛製給水管に対する取り組み状況について、都道府県を通じて1,508水道事業者から回答を得た。
なお、アンケートの回答の中には、複数回答のものや無回答であったものが含まれているため、全体数と合致していない部分がある。
1 鉛製給水管の残存状況(水道事業者数)
鉛製給水管が残存している可能性のある水道事業者(以下、「残存事業者」という。)は、「その他」「未回答」を含めて688事業者であった。
残存あり |
612 |
残存なし |
220 |
使用実績なし |
600 |
その他 |
71 |
未回答 |
5 |
合計 |
1508 |
2 残存距離延長(km)、残存給水件数(件)
全国の水道事業者により把握できている鉛製給水管の残存距離延長は9,129km、残存給水件数は5,211,352件であった。
|
延長(km) |
件数(件) |
公道部 |
4,393 |
|
宅地部(私道を含む) |
3,080 |
|
(公道・宅地別)不明 |
1,656 |
|
全体 |
9,129 |
5,211,352 |
3 鉛製給水管の残存給水件数の把握(残存事業者のうち該当の水道事業者数)
鉛製給水管が残存している給水件数を全て把握している水道事業者数は326事業者であったが、逆に全く把握していない水道事業者も233事業者ある。
把握している |
326 |
一部把握 |
118 |
把握していない |
233 |
4 鉛製給水管に関する広報の実施状況(残存事業者のうち該当の水道事業者数)
鉛製給水管に関して、広報を実施している水道事業者は308事業者あり、その内107事業者は個別広報を実施している。
広報実施 |
308 |
そのうち、個別広報を実施 |
107 |
広報未実施 |
371 |
5 鉛製給水管の布設替え計画策定の状況(残存事業者のうち該当の水道事業者数)
策定済み |
162 |
策定作業中 |
59 |
策定していない |
459 |
6 起債制度の利用状況(残存事業者のうち該当の水道事業者数)
公道部分の布設替えに対する起債制度を利用している水道事業者は31事業者であった。
利用している |
31 |
利用について検討中 |
8 |
利用していない |
639 |
7 給水装置所有者の行う鉛製給水管布設替えに対する支援制度の実施状況
助成制度の実施状況(残存事業者のうち該当の水道事業者数)
実施している |
22 |
実施を検討中 |
9 |
実施していない |
649 |
融資制度の実施状況(残存事業者のうち該当の水道事業者数)
実施している |
16 |
実施を検討中 |
4 |
実施していない |
659 |