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○労働時間等設定改善指針の改正について

(平成20年4月1日)

(基発第0401023号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

(公印省略)

[10年保存]

労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)及び同法第4条第1項に基づく労働時間等設定改善指針(平成18年厚生労働省告示第197号。以下「指針」という。)については、平成18年4月1日付け基発第0401006号「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の施行について」により貴職あて通達したところであるが、平成20年3月24日に労働時間等設定改善指針の全部を改正する告示(平成20年厚生労働省告示第108号。別紙1)が公示され、本日から適用することとされたところである(以下、改正後の指針について、「改正指針」という。)。

ついては、下記の事項について十分留意の上、改正後の労働時間等設定改善指針の円滑かつ的確な実施について遺漏なきを期されたい。

1 改正の趣旨

仕事と生活の調和については、平成19年12月にワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議において、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(以下「憲章」という。別紙2)及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(以下「行動指針」という。別紙3)が策定されたところである。

憲章においては、仕事と生活の調和の緊要性についての共通認識を整理した上で、仕事と生活の調和が実現した社会の姿を示し、関係者(企業と働く者、国民、国及び地方公共団体)それぞれが果たすべき役割を明示しており、行動指針においては、憲章で示した目指すべき社会を実現するため、社会全体の目標としての数値目標等を設定している。

これらを踏まえ、労働時間等の設定の改善に関する取組を一層推進するため、今般策定された憲章及び行動指針の趣旨を盛り込むべく指針を改正するものである。

2 改正の内容

(1) 憲章及び行動指針の基本的な内容・考え方の追加(改正指針前文関係)

憲章及び行動指針が今般策定されたことを明記するとともに、それらの基本的な内容・考え方について以下の通り追加したものであること。

ア 憲章においては、国民的な取組の大きな方向性を示すものとして、仕事と生活の調和の緊要性についての共通認識を整理した上で、仕事と生活の調和が実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」であり、具体的には、「①就労による経済的自立が可能な社会」、「②健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」及び「③多様な働き方・生き方が選択できる社会」を目指すべきであるとし、その実現に向けた関係者の役割を明示していること。

イ 行動指針においては、事業主や労働者及び国民の効果的な取組並びに国や地方公共団体の施策の方針を示していること。

ウ さらに、憲章及び行動指針においては、事業主及びその団体並びに労働者の役割について、個々の企業の実情に合った効果的な進め方を互いに話し合い、生産性の向上に努めつつ、職場の意識や職場風土の改革をはじめとする働き方の改革に自主的に取り組み、民間主導による仕事と生活の調和に向けた気運を醸成することが重要であることを示していること。

(2) 仕事と生活の調和の実現に向けた取組の必要性及び意義の追加(改正指針1(1)関係)

憲章において、仕事と生活の調和の実現に向けた取組は次のような必要性及び意義があるとされていることを踏まえ、その旨を追加したものであること。

ア 少子化の流れを変え、人口減少下でも多様な人材が仕事に就けるようにし、我が国の社会を持続可能で確かなものとするために必要な取組であること。

イ 企業の活力や競争力の源泉である有能な人材の確保・育成・定着の可能性を高めるものでもあること。

ウ 企業にとっては、「コスト」としてではなく、「明日への投資」として積極的にとらえていく必要があること。

(3) 経営者に求められる役割の追加(改正指針1(4)関係)

行動指針において、企業、働く者の取組として「経営トップがリーダーシップを発揮し、職場風土改革のための意識改革、柔軟な働き方の実現等に取り組む。」とされていることを踏まえ、その旨を追加したものであること。

また、経営者の姿勢を明確にし、企業内の推進体制を確立するための例として、役員等が指揮して労働時間等の設定の改善に取り組むことを示しているものであること。

(4) 各企業における計画的な取組の必要性の追加(改正指針1(5)関係)

行動指針において、仕事と生活の調和した社会の実現に向けた企業、働く者、国民、国及び地方自治体の取組を推進するための社会全体の目標が定められていることを踏まえ、その内容を別表に示した上で、事業主が労働時間等の設定の改善を図るに当たっては、このような社会全体の目標の内容も踏まえ、各企業の実情に応じて仕事と生活の調和の実現に向けて計画的に取り組むことが必要である旨を追加したものであること。

(5) 事業主が講ずべき措置の内容の充実(改正指針2関係)

ア 改正指針2(1)イ(ニ)関係(業務の見直し等)

行動指針において、企業、働く者の取組として「労使で長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進など、労働時間等の設定改善のための業務の見直しや要員確保に取り組む」こととされていることを踏まえ、これまで「要員計画の策定」としていたところ、これを「要員確保等」としたものであること。

なお、「要員確保等」の「等」には、例えば、より効率的に業務を処理できるようにするために組織の再編を行うことが含まれるものであること。

イ 改正指針2(1)イ(ホ)関係(労働時間等の設定の改善に係る措置に関する計画)

行動指針において、「労働時間等の課題について労使が話し合いの機会を設けている割合」の目標が設定されたことを踏まえ、労働時間等の設定の改善に係る措置に関する計画の策定に当たっては、労使間の話合いの機会の重要性にかんがみ、労働時間等設定改善委員会をはじめとする労使間の話合いの機会において労働者の意見を聴くなど、労働者の意向を踏まえることの必要性を追加したものであること。

ウ 改正指針2(1)ロ関係(労働者の抱える多様な事情及び業務の態様に対応した労働時間等の設定)

行動指針において、「短時間勤務を選択できる事業所の割合」の目標が設定されたことを踏まえ、労働者の抱える多様な事情に対応した労働時間等の設定のため、いわゆる短時間正社員のような柔軟な働き方の活用を図ることの必要性を追加したものであること。

エ 改正指針2(1)ハ関係(年次有給休暇を取得しやすい環境の整備)

行動指針において、「年次有給休暇取得率」の目標が設定されたことを踏まえ、以下の通り年次有給休暇の取得の現状及び意義を追加したものであること。

① 年次有給休暇について、周囲に迷惑がかかること、後で多忙になること、職場の雰囲気が取得しづらいこと等を理由に、多くの労働者がその取得にためらいを感じていること。

② 年次有給休暇の取得は、企業の活力や競争力の源泉である人材がその能力を十分に発揮するための大きな要素であって、生産性の向上にも資するものであり、企業にとっても大きな意味をもつものであること。

オ 改正指針2(1)ハ関係(所定外労働の削減)

行動指針において、「週60時間以上の雇用者の割合」の目標が設定されたことを踏まえ、以下の通り長時間労働の現状及びその抑制の必要性について追加したものであること。

① 週60時間以上の長時間労働者の割合が高水準となっており、特に30代男性で高くなっていること。

② 長時間労働により、健康を損なう者が出るとともに、肉体的、精神的な疲労によって労働者の生産性にも影響を及ぼすおそれがあり、また、男性の家事・育児時間が長時間労働等により短くなっていることから、このような長時間労働が恒常的なものにならないようにする等その抑制を図る必要があること。

カ 改正指針2(1)ヘ関係(ワークシェアリング、在宅勤務、テレワーク等の活用)

行動指針において、「テレワーカー比率」の目標が設定されたことを踏まえ、テレワークの活用を図る必要があること及び活用に当たっては、平成16年3月5日付け基発第0305003号「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」に基づき適切な就業環境の下での在宅勤務の実現を図る必要があることを追加したものであること。

キ 改正指針2(2)イ関係(特に健康の保持に努める必要があると認められる労働者)

行動指針において、「メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所割合」の目標が設定されたことを踏まえ、労働者の健康を守る予防策として、厚生労働大臣が定めた「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を踏まえたメンタルヘルスケアの実施とあわせ、労働時間等の設定の改善に取り組む必要があることを追加したものであること。

ク 改正指針2(2)ロ関係(子の養育又は家族の介護を行う労働者)

行動指針において、「第1子出産前後の女性の継続就業率」、「男女の育児休業取得率」及び「6歳未満児の子どもを持つ男性の育児・家事関連時間」の目標が設定されたことを踏まえ、以下の通り男女が共に職業生活と家庭生活の両立を実現できるよう配慮する必要性を追加したものであること。

① 男性の育児等への参加が進んでおらず、また、出産後の女性が就業継続を希望しながら離職を余儀なくされる場合が見られる現状を踏まえ、男女が共に職業生活と家庭生活の両立を実現できるよう、一層の配慮をする必要があること。

② その際には、男性の育児休業の取得促進等男性が育児等に参加しやすい環境づくりにも努める必要があること。

ケ 改正指針2(2)ホ関係(自発的な職業能力開発を図る労働者)

行動指針において、「自己啓発を行っている労働者の割合」の目標が設定されたこと、職業能力開発のための取組及び短時間勤務の活用の重要性について示されていること並びに職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第10条の4第1項第2号の規定を踏まえ、自発的な職業能力開発を図る労働者に配慮した労働時間等の設定の方法として、勤務時間の短縮の措置を追加したものであること。

コ 改正指針2(3)関係(事業主の団体が行うべき援助)

行動指針において、企業、働く者の取組として「労使団体等は連携して、民間主導の仕事と生活の調和に向けた気運の醸成などを行う。」こととされていることを踏まえ、事業主団体による気運の醸成の必要性について追加したものであること。

3 指針の周知・啓発

指針については、今般の改正を機に、「労働時間等見直しガイドライン」と通称をつけ、さらなる周知啓発を行うこととしているので、この通称の活用も含め、改めてあらゆる機会を通じて周知啓発を図られたい。

特に経営者に対し労働時間等見直しガイドラインを周知することが肝要であるので、都道府県労働局においては労働局長をはじめとする幹部が、また、労働基準監督署においては労働基準監督署長自らが、事業主団体との会合、地域を代表する事業主への訪問等の機会を活用し、積極的に周知啓発を図ること。