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○ヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等の製造管理・品質管理の考え方について
(平成20年3月27日)
(薬食監麻発第0327025号)
(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長あて厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知)
ヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品又は医療機器の製造管理・品質管理に関しては、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第179号)又は医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第169号)が適用されている。
一方、昨年7月に取りまとめられた「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会報告書」においては、細胞・組織利用製品の特徴を踏まえた適切な薬事規制とするため、自家細胞・組織利用製品等に係る製造・品質管理に関する規制の整備を着実に実行されることが求められているところである。
このことから、今般、ヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等の製造管理・品質管理の考え方として、自家細胞・組織利用製品等の特性を踏まえた製造管理・品質管理の実施に係る留意点について、別添のとおり取りまとめたので、貴職におかれては、内容について御了知の上、関係団体、関係機関等に対する適切な指導方ご配慮願いたい。
なお、本通知の写しを別紙の関係団体宛て送付することを申し添える。
(別紙)
日本製薬団体連合会長
日本製薬工業協会長
東京医薬品工業協会長
大阪医薬品協会長
米国研究製薬工業協会在日技術委員会長
在日米国商工会議所製薬小委員会長
欧州製薬団体連合会在日執行委員会長
日本医療機器産業連合会会長
在日米国商工会議所医療機器・IVD小委員会委員長
欧州ビジネス協会医療機器委員会委員長
ヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等の製造管理・品質管理の考え方
ヒト(自己)由来の細胞・組織を加工した医薬品又は医療機器(以下「細胞・組織加工医薬品等」という。)の品質の担保に当たっては、患者本人から直接細胞・組織を採取することから必要最低限の検体でその品質管理を行う必要があるとともに、製品特性や処理工程の特殊性等を踏まえた製造管理及び品質管理を行うことが必要である。
また、細胞・組織加工医薬品等は、テーラーメイド的なものであり、かつ、患者から採取した元の細胞・組織とは異なるものであることに起因するリスクを考慮した適切な管理を行うことも重要である。
このような観点から、細胞・組織加工医薬品等の製造等に当たって踏まえるべき、製造管理及び品質管理の考え方を以下に示す。
第1 総論
1.目的
本考え方は、細胞・組織加工医薬品等がそれぞれ適用を受ける医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第179号。以下「GMP省令」という。)又は医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第169号。以下「QMS省令」という。)の運用において留意すべき点を示したものである。また、あわせて「治験薬の製造管理及び品質管理基準及び治験薬の製造施設の構造設備基準(治験薬GMP)について」(平成9年3月31日付け薬発第480号厚生省薬務局長通知。以下「治験薬GMP」という。)を遵守する際に留意すべき点を示したものであることから、特段の支障がない限り、治験に用いられるヒト(自己)由来の細胞・組織を加工したもの(以下「細胞・組織加工治験製品」という。)についても適用されるものとする。
これに加えて、「ヒト(自己)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について」(平成20年2月8日付け薬食発第0208003号厚生労働省医薬食品局長通知)に示された内容に留意されたい。
2.適用範囲
本考え方の適用範囲は、以下のとおりとする。
(1) 細胞・組織加工医薬品等又は細胞・組織加工治験製品の製造に係る一連の製造工程。
(2) 細胞・組織加工医薬品等又は細胞・組織加工治験製品のいずれかに該当する製品(以下単に「製品」という。)の製造に係る一連の製造工程に、複数の者が関与している場合は、製品の製造に係る作業に従事するすべての職員。
(3) 製造業者等が、運送業者又は医療機関との間で製造管理・品質管理に必要な取決めを結んでいる場合においては、当該運送業者による運送作業及び医療機関が医療行為の一環として行う細胞・組織の採取・移植等については、本考え方は適用しない。
3.定義
本考え方における用語の定義は、以下のとおりとする。
(1) 「細胞・組織の加工」とは、疾患の治療や組織の修復又は再建を目的として、細胞・組織の人為的な増殖、細胞・組織の活性化等を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変、非細胞・組織成分との組み合わせ又は遺伝子工学的改変等を施すことをいう。組織の分離、組織の細切、細胞の分離、特定細胞の単離、抗生物質による処理、洗浄、ガンマ線による滅菌、冷凍、解凍等は加工とはみなさない。
(2) 「製造」とは、細胞・組織の加工に加え、組織の分離、組織の細切、細胞の分離、特定細胞の単離、抗生物質による処理、洗浄、ガンマ線による滅菌、冷凍、解凍等、当該細胞・組織の本来の性質を改変しない操作を含む行為であって、最終製品である細胞・組織加工医薬品等及び細胞・組織加工治験製品を出荷するまでに行う行為をいう。
(3) 「ドナー」とは、細胞・組織加工医薬品等及び細胞・組織加工治験製品の原料となる細胞又は組織を提供するヒトをいう。ヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等及び細胞・組織加工治験製品にあっては、患者はドナーである。
第2 製造管理及び品質管理等に関する留意点
1.ドナー識別
(1) ドナー識別情報による識別
製品を製造するためにドナーから採取した細胞・組織であって、製造所において製造工程にある細胞・組織に係るドナーの識別については、ドナーを判別でき、かつ、混同を確実に防止するために適切な情報(以下「ドナー識別情報」という。)により行うこと。
ドナー識別情報は、その情報から氏名、住所等の個人情報が特定できない記号、番号等であること。また、異なるドナーから採取した細胞・組織と混同を起こす可能性のある紛らわしい記号、番号等の使用は避けること。
(2) ドナー識別情報の表示及び移動
ドナー識別情報は、フラスコ等の培養容器に直接表示すること。また、製造工程にある細胞・組織は、混同を確実に防止するために最低限度必要なドナー識別情報が表示された状態で移動させること。
(3) 人為ミス防止措置
加工・製造過程における細胞・組織については、異なるドナーから採取した細胞・組織との混同を確実に防止するために、職員への教育訓練等必要な措置を採ること。
2.混同防止
(1) 作業区域等
同時に複数の異なるドナーから採取した細胞・組織を取り扱う場合においては、細胞・組織と当該細胞・組織に係るドナー識別情報とが、常に適正な対応関係で移動することを担保し、混同を確実に防止するために、以下に掲げる事項に留意し、必要な措置を採ること。
・ 培養装置等の培養設備は、鍵、暗証番号等で適正に管理することにより、限定された職員だけが取り扱うことができる構造であること。また、作業時において、同時に複数の異なるドナーから採取した細胞を取り扱うことができないようにすること。
・ 細胞・組織の培養に係る作業を開始する前に、培養装置ごと(同一培養装置内に複数の容器がある場合はその容器ごと)に、それらを間違いなく識別する情報(ドナーの識別及び採取部位の識別に係るものを含む。)を分かりやすく表示すること。この識別情報の表示は、混同の原因とならないように適切な時期に廃棄すること。
(2) 培養装置の使用記録
培養装置の使用に際しては、混同を確実に防止するために必要な情報の記録を作成し、これを保管すること。
(3) 患者情報
製造業者等は、製造工程にある細胞・組織又は一連の製造工程を経て製品となったものについて、製品の移植、埋込み、注入、投与等(以下「移植等」という。)を受ける予定である患者を識別するために必要な情報(以下「患者情報」という。)を、細胞・組織又は製品に表示すること。なお、細胞・組織又は製品にドナー識別情報が表示されている場合においては、患者情報として「自己」の表示を行うことで差し支えない。
(4) 出荷先施設情報
製造業者等は、製品について、製品ごとに、製品の移植等を受ける患者へ当該製品が確実に提供されるよう、当該患者が移植等を受ける医療機関等の出荷先施設名、診療科名、主治医の氏名等(以下「出荷先施設情報」という。)の必要な情報を把握するとともに、その記録を作成すること。
(5) 直接の容器・被包への表示
製造所から出荷された製品について、医療機関等への到着後における混同の発生を防止するために、製品の直接の容器・被包に患者情報及び出荷先情報を適正に表示すること。直接の容器にこれらすべての情報を表示することが技術的に困難な場合においては、これに代えて混同の発生を防止するために必要な措置を採ること。
3.汚染防止のための管理
(1) 構造設備等の管理
製品の製造所の構造設備については、製品に係る一連の製造工程において作業が完了するごとに、細菌、真菌及びウイルスの不活化又は除去を行う等、不活化又は除去が行われていない製品等による汚染を防止するために必要な措置(以下「汚染防止措置」という。)を採ること。
(2) 原料・工程の管理
製品又はその原料の特性により、除去(濾過滅菌等)又は不活化(最終滅菌等)のいずれも行うことが出来ない場合には、原料の管理又は製造工程に係る管理において、以下の点に留意し、汚染防止措置を採ること。
・ 培地添加成分等の原料については、微生物等又は他の細胞・組織の混入がないことを確認する等、製造工程における汚染等の発生を防止するために、必要な措置を採ること。
・ 細胞・組織の混同及び交叉汚染を防止する観点から、原則として、同一培養装置内で同時に複数の異なるドナーから採取した細胞・組織を取り扱わないこと。
・ 製造施設は、研究施設と兼用しないこと。ただし、細胞・組織加工治験製品を製造する製造施設については、十分な汚染防止対策及び混同防止対策が講じられていることを文書等の記録により客観的に証明できる場合は、この限りでない。
・ 医療機関から製造所への細胞・組織の受入れに当たっては、細胞・組織の混同及び交叉汚染を防止するために必要な措置が適切に講じられるよう、ドナーの病原体検査その他の必要な措置を採ること。なお、細胞・組織の検査結果判定前に、ドナーの病原体検査の結果等に基づき細胞・組織の加工を行う場合においては、細胞・組織を取り扱う者がその事実を判別できるよう適切な措置を採ること。
・ 製造作業に従事する職員以外の者による感染性因子の持ち込みにより製品が汚染されることを防止するため、製造所については、製造作業に従事する職員以外の者の立入りを制限する構造を有し、かつ、空調、洗浄・消毒設備等を備えていること。
4.適切な加工等
(1) 適切な加工に必要な構造・設備
細胞・組織の生存能力を保ちつつ無菌的に培養、加工又は製造できる構造及び設備を有すること。また、使用する設備等について、必要に応じて、事前に適格性評価を行うとともに、運転が適切に行われていることの確認をすること。異常発生時には、加工又は製造に影響が生じないよう、速やかな対処を行うために必要な措置を採ること。
(2) 適切な加工条件・期間
細胞・組織の種類等に応じ、適切な管理条件の下で培養又は加工を行うこと。また、加工は、細胞・組織の寿命、特質等にかんがみ、損傷、劣化又は死滅しない期間で行うこと。
(3) 工程管理、試験検査等
ロットを構成しない製品の場合については、一般的な製造管理及び品質管理の手法において製品のロットごとに行うこととされる事項について、製品ごとに行うことをもってこれに代えても差し支えないこと。
製品及び原料の試験検査、その記録並びに参考品の保管について、ドナーへの侵襲性が高く採取可能な検体が少ない場合その他必要な検体採取が困難な場合においては、採取した検体の増殖を行うこと、又は、検体の試験検査に代えて工程管理での確認によることとして差し支えないこと。また、このとき代替する工程管理手法の妥当性が、バリデーション等の適切な方法により確認されている場合には、製品の規格試験以外の品質管理の工程においても適用して差し支えないこと。
(4) 搬送容器
搬送に使用する容器、車両等は、目的地に到着するまで製品の品質保持を担保するために、必要な性能を備えていること。
5.その他
・ 製品標準書の製造手順及び生物由来医薬品等に係る規格について、ドナーの年齢、性別、既往歴、体質等の個人差により、逸脱が予測される場合、あらかじめ逸脱事例に関する対応を定めておくこと。
・ 既に移植された製品の回収については、患者のリスクとベネフィットを十分検討し、回収が適切であると判断される場合には行うこと。
・ 個人情報の漏洩を防ぐため、関係法令を遵守するとともに、コンピューターのパスワード管理やネットワーク管理を十分行うなどの措置を採ること。
