添付一覧
○低塩分塩辛の取り扱いについて
(平成19年12月10日)
(食安監発第1210001号)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知)
本年9月に発生した低塩分の「イカの塩辛」を原因食品とする広域食中毒について、当該食品を製造した施設を管轄する自治体が原因調査を実施した結果、当該製品は、伝統的な高塩分熟成塩辛とは異なり、塩分濃度が低く(4%前後)、腸炎ビブリオ等の食中毒菌の増殖抑制効果が期待できないことから、製造から消費に至るまでの一貫した低温管理が必要な製品であるにもかかわらず、原材料の衛生管理及び製造施設における低温管理が不適切であったことが主要因であると推定する調査結果の報告がありました(別紙参照)。
ついては、当該広域食中毒事例を踏まえ、各自治体におかれましては、同種の食品について、生食用鮮魚介類の規格基準を参考として下記の事項に留意し、製造、流通、販売等において、一貫した低温管理(10℃以下)がなされるよう関連食品等事業者への監視指導方よろしくお願いいたします。
記
1.食中毒菌による汚染防止
① 原材料(筋肉、内臓)は、飲用適の水で十分に洗浄すること
② 施設内における殺菌海水等の使用水の衛生管理を徹底すること
③ 細断機等の加工機械、製造ラインなどの洗浄・消毒を徹底すること
2.食中毒菌の増殖防止
① 加工、仕込み、保管時においては、品温を10℃以下に保持すること
② 要冷蔵(10℃以下)である旨及び適切な期限表示を徹底すること
③ 卸先の小売店、調理施設等に対し、伝統的な塩辛と混同することのないよう、低塩分塩辛には10℃以下の低温管理が必要であることの周知徹底を図ること
(別紙)
宮城県内で製造された「イカ塩辛」を原因とする食中毒事件調査結果概要
【食中毒発生状況】
12自治体、死者数0名、患者数595名(10月29日現在 推定含む)
病因物質:腸炎ビブリオ(O3:K6)
【原因食品の特定】
各自治体及び関連保健所からの調査等により、患者に共通する食品が、原因施設で製造されたイカ塩辛のみであり、また、患者の便、保存食品(残品を含む)及び未開封のイカ塩辛から腸炎ビブリオ(O3:K6)が検出されたことによる。
【原因食品への腸炎ビブリオ汚染の可能性】
原因食品の汚染の可能性として次のことが考えられた。
① 原料のイカ耳及びイカ腑は、保健所の検査で腸炎ビブリオは検出されなかったが、原料由来の汚染の可能性は否定できなかった。特に、イカ腑は、洗浄、殺菌の工程がないことから、製品全体に汚染が広がる可能性があると考えられた。
② 原因施設内の切り身加工室では殺菌海水を使用していたが、海水の殺菌に関する記録がなく、適正な殺菌が行われていたかは確認できなかった。このため、殺菌不備な海水の使用による器具、機材等への交差汚染の可能性が考えられた。
③ 従業員からの二次汚染の可能性も否定できない状況であった。
④ カッター、プロペラ洗浄機、充填機、包装機などの機材は、製造終了後に部品毎に分解し、洗浄、消毒することとなっているが、器具機材の消毒に関する記録がなく、適正な消毒の実施について確認できなかった。
【腸炎ビブリオの増殖の可能性】
当該施設における製造工程において腸炎ビブリオが増殖する要因として次のことが考えられた。
① 外気温が高い夏期において、温度管理が行われていない製造施設において長時間(概ね30時間)作業が行われており、かつ、8月中旬から9月中旬までの間においては、充填・包装工程(約3時間)を行う室内の空調設備が故障していたこと
② 仕込みを行う冷蔵庫のパッキン損傷による温度管理の不備(12から18℃で5時間半)の記録があったこと
【考察】
今般の食中毒事件は、当該イカの塩辛の原料の受入から充填・包装のいずれかの過程において、腸炎ビブリオによる汚染があり、かつ、当該施設における製造工程の低温管理の不備が重なったこと、また、それら問題点が早期に改善されずに見過ごされたことにより、不適切な製品が広域に出荷・流通し、被害が拡大したものと考えられる。
さらに、当該品の塩分濃度は4%前後、仕込み期間は概ね1日から3日であり、調味腑などによるいわゆる和え物風のイカの塩辛であり、保存性の低い製品であった。このような製品については、製造から摂食まで、一貫して低温管理の徹底を行う必要があると考えられる。