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○コエンザイムQ10を含む食品の取扱いについて

(平成18年8月23日)

(食安新発第0823001号)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課新開発食品保健対策室長通知)

平成18年8月10日、内閣府食品安全委員会から、コエンザイムQ10(以下、「CoQ10」という。)に関する食品健康影響評価の結果が別紙のとおり通知されたところである。

厚生労働省としては、「「いわゆる健康食品」の摂取量及び摂取方法等の表示に関する指針について」(平成17年2月28日付け食安発第0228001号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)(以下、「指針」という。)において、科学的根拠に基づく1日摂取目安量の設定等について指導しているところであり、「いわゆる健康食品」の成分が経口摂取の医薬品としても用いられるものについては、医薬品として用いられる量を超えないよう指導しているところである。

一方、CoQ10については、すでに様々な製品が流通していることから、個別の製品の安全性については、事業者により適切に確保される必要があり、こうした観点からも、事業者の責任で、用量を考慮した長期摂取での安全性の確認、摂取上の注意事項の消費者への提供、消費者の健康被害事例を収集させる等指導を徹底することとしている。

ついては、貴職におかれても、食品安全委員会の食品健康影響評価の結果について貴管下事業者へ周知するとともに、改めて「指針」に沿った適切な表示を行うこと及び特に一日摂取目安量が医薬品の一日摂取量を超える製品の安全性確保に留意するよう貴管下事業者への指導方よろしくお願いする。

なお、別添のとおり、財団法人日本健康・栄養食品協会において、CoQ10を含む食品の安全性確保のため、消費者の健康被害事例の収集等の取組を進めて行く旨の報告を受けている。この取組については、協会非会員についても参加できる仕組みである旨の報告を受けているので、併せて関係者に周知されたい。

(別紙)

評価書

コエンザイムQ10

2006年8月

食品安全委員会

<審議の経緯>

平成17年8月22日 厚生労働大臣から「コエンザイムQ10の安全性」に係る食品健康影響評価書類の受理

平成17年8月25日 第108回食品安全委員会(事項説明)

平成17年11月7日 第29回新開発食品専門調査会で審査

平成18年3月15日 第34回新開発食品専門調査会で審査

平成18年4月6日 第128回食品安全委員会で審査

平成18年5月25日 第144回食品安全委員会で審査

平成18年6月22日 第148回食品安全委員会で審査

平成18年6月22日~平成18年7月21日 国民からの意見・情報の募集

平成18年8月10日 第155回食品安全委員会(報告) 同日付で、食品安全委員会委員長から厚生労働大臣へ通知

<食品安全委員会委員>

平成18年6月30日まで

委員長 寺田雅昭

委員長代理 寺尾允男

小泉直子

坂本元子

中村靖彦

本間清一

見上彪

<食品安全委員会委員>

平成18年7月1日から

委員長 寺田雅昭

委員長代理 見上彪

小泉直子

長尾拓

野村一正

畑江敬子

本間清一

<食品安全委員会新開発食品専門調査会委員>

平成17年9月30日まで

座長 上野川修一

池上幸江

磯博康

井上和秀

及川眞一

菅野純

北本勝ひこ

篠原和毅

長尾美奈子

松井輝明

山崎壮

山添康

<食品安全委員会新開発食品専門調査会委員>

平成17年10月1日から

座長 上野川修一

座長代理 池上幸江

磯博康

井上和秀

及川眞一

菅野純

北本勝ひこ

篠原和毅

長尾美奈子

松井輝明

山崎壮

山添康

山本精一郎

脇昌子

「コエンザイムQ10」に係る食品健康影響評価に関する審議結果

1.はじめに

食品安全委員会(以下、「委員会」という。)は食品安全基本法に基づき、厚生労働省より、「コエンザイムQ10」の安全性に係る食品健康影響評価について意見を求められた。(平成17年8月22日、関係書類を受理)

2.諮問背景

厚生労働省では、昭和63年より、健康食品の過剰摂取の防止の観点から「健康食品の摂取量及び摂取方法の表示に関する指針」を通知し、科学的根拠に基づく1日摂取目安量の設定等について指導しており、健康食品の成分が経口摂取の医薬品としても用いられるものについては、医薬品として用いられる量を超えないよう指導している。

コエンザイムQ10(以下、「CoQ10」という。)については、健康被害との因果関係は不明ながらCoQ10含有食品を摂取して消化器症状を呈したとの健康被害報告が厚生労働省にあったことから、平成15年11月に財団法人日本健康・栄養食品協会に対し、安全性の確保及び消費者への適切な情報提供の観点から、CoQ10食品に係る注意喚起表示を含む食品規格基準の設定について検討を依頼した。

これを受け、(財)日本健康・栄養食品協会において、データを収集したところ、1日摂取目安量として300mgまで安全であるというデータが得られたことから、1日摂取目安量の上限値を300mg以下と設定したいとの中間報告があった。

(財)日本健康・栄養食品協会からの報告を受けた厚生労働省から、摂取目安量の妥当性等を含め、CoQ10の安全性について、食品安全基本法に基づき、委員会に食品健康影響評価が依頼されたものである。

3.審査の経緯について

第108回委員会(平成17年8月26日開催)において、厚生労働省からの要請内容について、様々な疑問点及び指摘が出されたことから、委員会は新開発食品専門調査会(以下、「専門調査会」という。)に対し、CoQ10の安全性の評価を行うための疑問点及び指摘を専門的な見地から整理し、委員会に報告することを求めた。

第29回専門調査会(平成17年11月7日開催)において、委員会からの依頼に基づき、専門調査会におけるCoQ10の安全性の評価を行うための疑問点及び指摘が検討され、第34回専門調査会(平成18年3月16日)を経て、専門調査会座長から委員会委員長に報告された。

第138回委員会(平成18年4月6日)において、専門調査会座長から報告された疑問点等について厚生労働省に説明を求め、同委員会で整理された疑問点及び指摘について、平成18年4月12日、食品安全委員会事務局評価課長から、厚生労働省食品安全部基準審査課長宛に照会した。

第144回委員会(平成18年5月25日)において、厚生労働省から照会事項に対する回答及び追加資料が提出されたことを踏まえ、委員会において、5つの疑問点を中心に検討を行い、とりまとめたものである。

4.評価対象食品の概要

CoQ10は、ユビキノン又はユビデカレノンとよばれる脂溶性物質であり、動植物の体内で生合成される物質であり、細胞のミトコンドリアに最も多く存在する。(引用文献①)

わが国においては、「いわゆる健康食品」として、1日推奨量を30~300mgの製品が流通している。(引用文献②)

米国においては、サプリメントとして1日推奨量100~1200mgの製品が流通している。(引用文献②)

一方、CoQ10は、わが国の医薬品分野において、ユビデカレノンとして日本薬局方に収載され、「基礎治療施行中の軽度及び中等度のうっ血性心不全症状」の効能・効果及び1日30mgの用量で承認されている。(引用文献②)

食品及び医薬品として併せた生産量は、2004年において推定世界生産量225tの報告がある。(引用文献③)

5.当該食品の評価にあたって

当該食品の評価にあたって、提出資料を精査したところ、概ね以下の5つの疑問点が生じたので、上述した疑問点及び指摘の照会に対する回答を踏まえ、以下のとおり検討経過を詳述する。

(1) CoQ10の摂取上限目安量が判断できる長期摂取試験について

CoQ10の食品としての安全性を評価する場合には、医薬品と相違して、医療従事者としての関与がなく基礎疾患を持った人等様々な人が摂取することなどを考慮する必要がある。しかし、現在、厚生労働省から提出されているヒトでの試験成績は、以下のとおりである。

健常者を対象としてCoQ10を連続摂取させた試験が、21文献提出されているが、このうち最も長期間の試験はCoQ10を90mg/日、9ヶ月間摂取試験(引用文献④)で、他の多くの文献では連続摂取期間は2週間から2ヶ月間である。

また、CoQ10を最も長期間摂取させた試験として、心筋症患者の治療を目的に1日当たり100mgのCoQ10を6年間連続投与した報告(引用文献⑤)が1文献あるが、これは、心筋症患者の治療における有効性を確認する試験であり、併用薬も投与されていることから、CoQ10を食品として長期間摂取する影響を検討するための直接的な科学的資料としては、適切ではない。

なお、CoQ10を大量に摂取させた試験として、初期パーキンソン病患者に対して16ヶ月間、300、600、1200mg/日摂取させた試験(引用文献⑥)があるが、高用量群におけるパーキンソン病の病状の改善に関する報告であり、CoQ10を食品として長期間摂取する影響を検討するための直接的な科学的資料としては、適切ではない。

食品という性格を配慮し、かつ摂取上限目安量が判断できるCoQ10の長期摂取試験の成績が不足していると考える。

(2) CoQ10の生体内の合成・代謝系等に与える影響について

CoQ10を食品として長期継続的に摂取した場合の生体内におけるCoQ10本来の合成・代謝系等に与える影響に関する資料はないが、大量に摂取した場合の資料として、厚生労働省より新たに、健常成人88名を対象に、CoQ10を300mg/日、600mg/日、900mg/日を1日2回、4週間摂取させ、摂取終了2週間後または8ヶ月後の血中のCoQ10濃度を観察した、二重盲検ランダム化プラセボコントロール試験の報告が提出された。(引用文献⑦)

しかし、当該試験では、摂取終了直後から数日間の回復期間中の経時的な血中のCoQ10濃度が測定されておらず、また、被験者の所見、脂質代謝への影響等の情報も不足している。

従って、安全性評価の上で必須の情報と考えるCoQ10を大量または長期継続的に摂取した場合の生体内におけるCoQ10本来の合成・代謝系等に与える影響に関する資料は、現在提出された資料では不足していると考える。

(3) CoQ10の製品別の体内吸収性の差について

CoQ10は、水に溶けにくく体内に吸収されにくい物質であるが、近年これを含むいわゆる健康食品の中には、当該物質の吸収性を改良したと称する製品が流通している。

厚生労働省からは、吸収性については、製品設計によって異なり、吸収性が異ならないとする情報はなく、むしろ乳化剤を添加して水溶性にすることにより、吸収率が2倍程度になるとの報告があるとの回答を受けている。このように製品によって吸収性が異なるのであれば、体内動態も製品によって異なると考えられることから、当該物質の安全性は、物質としてではなく個別の製品について評価することが適切であると考えられる。

(4) 健康被害事例について

厚生労働省より報告された、今回の諮問の契機となったCoQ10の健康被害事例は2例であり、その詳細は以下のとおりである。

① 被害者:60歳代女性

CoQ10含有食品を服用したところ、1日経たないうちに胃腸が痛くなり、おう吐、下痢及び食欲減退症状を呈した。その後、女性は医療機関を受診していない。保健所の調査において、因果関係は不明とのことであった。

② 被害者:70歳代女性

CoQ10含有食品を1粒摂取したところ、約12時間後におう吐。同食品を摂取した女性の家族もおう吐。女性は、医療機関は受診したが、因果関係は不明であった。

その他、医薬品ユビデカレノン製剤(承認用量:30mg/日)の副作用としては、承認前後の調査期間における総症例数5,350例中、78例(1.46%)の副作用が報告されており、主な副作用としては、胃部不快感21件(0.39%)、食欲不振13件(0.24%)、嘔気10件(0.19%)、下痢6件(0.11%)、発疹9件(0.17%)であった(医薬品承認後調査期間:1973年4月20日~1977年4月20日)。なお、医薬品の副作用に関する注意事項は、「発疹等があらわれることがあるので、このような場合には投与を中止する。」とされている。(引用文献⑧)

また、厚生労働省が入手した、ある企業のCoQ10製品(推奨用量:60mg/日及び100mg/日)の健康被害の問い合わせ状況によると、推定服用者数に対する健康被害発生率は0.034%(累計:因果関係は未確認)、主な健康被害としては下痢、胃部不快感、発疹、かゆみ、動悸等であった。(引用文献⑨)

健康被害事例の摂取者の背景とその摂取状況等については、把握されていない。

その他、医薬品との相互作用として、降圧剤及びワルファリンの薬効に影響を与える可能性があるとの報告がある。(引用文献⑩⑪)

現在販売されているCoQ10製品に関し、摂取量との相関性を含めた問題となるべき健康影響が必ずしも明確でないと考える。

(5) CoQ10が、医薬品の用量を超えて食品として流通していることについて

問題となるべき健康影響についても必ずしも明確ではなく、不十分な情報に基づく摂取上限目安量の設定も含めた食品としての安全性の評価を行うよりも、むしろ安全性の確保の観点からは、これまでどおり、原則医薬品の一日用量を超えないというリスク管理のもとで、事業者の責任で、用量を考慮した長期摂取での安全性の確認、摂取上の注意事項の消費者への提供、消費者の健康被害事例を収集させるなどの指導を徹底するのが先決ではないかと考える。

6.まとめ

以上5.の(1)~(4)の結果、食品安全委員会では、本食品の安全性について、厚生労働省から提出された資料では、データが不足しており、安全な摂取上限量を決めることは困難である。

このため、原則医薬品の一日摂取用量を超えないという現状のリスク管理措置に配慮することが重要であるが、一方、CoQ10については、すでに様々な製品が流通していることから、個別の製品の安全性については、事業者により適切に確保される必要があり、こうした観点からも、リスク管理措置を講じる際には、事業者の責任で、用量を考慮した長期摂取での安全性の確認、摂取上の注意事項の消費者への提供、消費者の健康被害事例を収集させるなどについての指導を徹底することについても考慮されるべきである。

7.引用文献(本食品の評価に当たって、引用した文献)

① 平成17年11月7日第29回新開発食品専門調査会資料5.

② 平成17年8月25日第108回食品安全委員会資料1―6.

③ マーケット情報 コエンザイムQ10の市場動向.ファインケミカル(2005)34:55―60.

④ Folkers K,Moesgaard S,Morita M,A one year bioavailability study of Coenzyme Q10 with 3months withdrawal period.Molec.Aspects.Med.(1994)15(Supplement):s251-s285.

⑤ Langsjoen PH,Langsjoen PH,Folkers K,A six-year clinical study therapy of cardiomyopathy with Coenzyme Q10.INT.J.TISS.REAC.(1990)12:169-171.

⑥ Shults CW,Oakes D,Kieburtz K,Beal MF,Haas R,Plumb S,Juncos JL,Nutt J,Shoulson I,Carter J,Kompoliti K,Perlmutter JS,Reich S,Stern M,Watts RL,Kurlan R,Molho E,Harrison M,Lew M,Effects of Coenzyme Q10 in Early Parkinson Disease.Arch Neurol(2002)59:1541-1550.

⑦ Ikematsu H,Nakamura K,Harashima S,Fujii K,Fukutomi N,Safety assessment of coenzyme Q10(Kaneka Q10) in healthy subjects: A double-blind,randomized,placebo-controlled trial. Regulatory Toxicology and Pharmacology(2006)44:212-218.

⑧ 医薬品インタビューフォーム 代謝性強心剤ノイキノン 2003年2月改訂(改訂第2版)

⑨ 平成18年5月25日第144回食品安全委員会資料2別紙4(非公開資料).

⑩ Singh RB,Niaz MA,Rastogi SS,Shukla PK,Thakur AS,Effect of hydrosoluble coenzyme Q10 on blood pressures and insulin resistance in hypertensive patients with coronary artery disease.Journal of Human Hypertension(1999)13:203-208.

⑪ Heck AM,DeWitt BA,Lukes AL,Potential interactions between alternative therapies and warfarin Am.J.Health Syst.Pharm.,(2000)57:1221-1227.

別添(参考)

平成18年8月22日

財団法人 日本健康・栄養食品協会理事長 林裕造

食品安全委員会の「コエンザイムQ10」に係る食品健康影響評価に関する審議結果に関する今後の対応について

内閣府食品安全委員会から平成18年8月10日付けで厚生労働省に答申された『「コエンザイムQ10」に係る食品健康影響評価に関する審議結果』において、リスク管理措置を講じる際には、事業者の責任で、

1.用量を考慮した長期摂取での安全性の確認

2.摂取上の注意事項の消費者への提供

3.消費者の健康被害事例の収集

についての指導を検討するよう述べられています。

当協会では、これまでに、当該審議結果に対するパブリックコメントでも示した通り、数多くのヒト臨床試験や動物試験結果の報告論文等から、コエンザイムQ10が安全な素材であることを確認してきましたが、食品安全委員会の本答申において指摘された以上の内容に対し、厚生労働省食品安全部新開発食品保健対策室の御指導の下、以下の通り対応致します。

1.用量を考慮した長期摂取での安全性の確認

用量を考慮した長期摂取での安全性の確認に関しては、当協会の専門部会会員企業による過去10年間の約6,000報にのぼる文献調査の範囲では、特に重篤な副作用は検出されていませんが、更に、これまで実施されてきている臨床試験内容を精査し、リスクアセスメントの考え方に基づいた評価を検討致します。なお、今後とも健康被害情報を集積することにより、安全性の評価も継続致します。

2.摂取上の注意事項の消費者への提供

摂取上の注意事項の消費者への提供については、既に、当協会のコエンザイムQ10食品規格基準案に注意喚起事項を纏めています。本規格基準案については、9月に予定している当協会学術委員会での審議を経て、JHFAマークの規格基準として年内公示する予定です。

3.消費者の健康被害事例の収集

一般用医薬品、医薬部外品や化粧品で行われている製造販売後調査等を参考とし、表示摂取目安量30mg/日を超える商品にアンケートはがきを同封する等、共通の設問項目で関連情報を収集し、当協会が、集まった情報を整理、評価し、厚生労働省へ報告致します。尚、関連情報の収集方法などの詳細につきましては、10月中旬までに当協会のホームページに掲載するとともに、10月下旬~11月上旬に東京及び大阪で説明会を実施致します。(当協会ホームページアドレス http://www.jhnfa.org)

以上