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○大豆イソフラボンを含む特定保健用食品等の取扱いに関する指針について

(平成18年8月23日)

(食安発第0823001号)

(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)

平成18年5月11日、内閣府食品安全委員会から「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」が通知され、特定保健用食品として、大豆イソフラボンを通常の食生活に上乗せして摂取する場合における安全な一日摂取目安量の上限値が示されたところである。

これを受け、大豆イソフラボンを含む特定保健用食品及び「いわゆる健康食品」(健康に関する効果や食品の機能等を表示して販売されている食品であって、特定保健用食品でないものをいう。)の取扱いについて、別添のとおり「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品等の取扱いに関する指針」として整理したので、貴管下事業者等に対する周知指導方よろしくお願いする。

なお、平成19年4月1日以降に製造、加工、販売及び輸入する大豆イソフラボンを含む特定保健用食品等について、本指針に基づき指導することとするので、それまでの間に指針に沿った表示等を行うよう貴管下事業者等を指導されたい。

本指針は、大豆イソフラボンを含む特定保健用食品及び特定保健用食品以外の錠剤、カプセル状等の形状の食品を対象としたものであるが、その他の大豆イソフラボンを濃縮、強化した食品についても、本指針の考え方を参考に、当該製品を製造、加工、販売及び輸入する事業者等により安全性の確保と消費者への情報提供が推進されるようにご配慮願いたい。

なお、これまでの長い食経験を有する大豆あるいは大豆食品についてはこの指針の対象とはしないものであり、大豆食品の有用性に鑑み、これらの食品を摂食することに対して不安等が生じることのないよう正確な情報提供をお願いする。

(別添)

大豆イソフラボンを含む特定保健用食品等の取扱いに関する指針

1 目的

この指針は、大豆イソフラボンを関与成分として含む特定保健用食品及び錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の形状の「いわゆる健康食品」(ここでは、特定保健用食品以外の食品をいう。以下同じ。)のうち大豆イソフラボンを含む食品の取扱いについて、内閣府食品安全委員会(以下「食品安全委員会」という。)から平成18年5月11日に通知された「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」を踏まえ、一日当たりの摂取目安量及び摂取に当たっての注意事項等について定め、当該食品を製造、加工、販売及び輸入する事業者等に適正な情報提供を行うことを促すことにより、大豆イソフラボンを含む特定保健用食品等の過剰摂取を防止するとともに、国民の健康保持増進に資することを目的とする。

2 特定保健用食品の取扱いについて

(1) 大豆イソフラボンを関与成分とする特定保健用食品の取扱いについて

次に掲げる事項について特に留意すること。

① 一日当たりの摂取目安量の設定

一日当たりの摂取目安量については、当該特定保健用食品を摂取することによる大豆イソフラボンアグリコンとしての一日の摂取量が30mgを超えないように設定すること。

② 成分名の表示

大豆イソフラボンアグリコンとしての含有量を表示すること。

なお、大豆イソフラボンアグリコンとしての含有量の測定は、別紙〔試験法〕によること。

③ 摂取をする上での注意事項の表示

次の事項を表示すること。

・妊娠中の方、授乳中の方、乳幼児及び小児は摂取しないこと。

・過剰摂取はしないこと。(イソフラボンを含有する他の特定保健用食品等との併用には注意すること。)

・医療機関にかかっている方は医師に相談すること。

(2) 大豆たんぱく等関与成分中に大豆イソフラボンを含有する特定保健用食品について

大豆たんぱく等関与成分中に大豆イソフラボンを含有する特定保健用食品については、(1)②と同様に大豆イソフラボンアグリコンとしての含有量を表示すること。

(3) 関与成分中に大豆イソフラボンを含有しない特定保健用食品について

関与成分中に大豆イソフラボンを含有しない特定保健用食品については、この指針の対象とはしないこと。

3 「いわゆる健康食品」の取扱いについて

食品安全委員会においては、個々の「いわゆる健康食品」についての評価は行われておらず、「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」においても、「いわゆる健康食品」についての考え方は示されていない。しかしながら、大豆イソフラボンを通常の食事に上乗せして摂取する場合の安全性を考慮すると、「いわゆる健康食品」であっても、錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の形状の食品(以下「錠剤、カプセル状等食品」という。)のうち、大豆イソフラボンを濃縮、強化した食品については、大豆イソフラボンを関与成分とする特定保健用食品と同様に扱う必要があることから、一日当たりの摂取目安量については、大豆イソフラボンアグリコンとして30mgを超えないように設定するとともに、含有量及び摂取をする上での注意事項を表示することとされたい。

なお、本指針においては、大豆イソフラボンを含む特定保健用食品及び錠剤、カプセル状等食品を対象としたものであるが、今後、大豆イソフラボン以外のイソフラボンを含む食品が広く流通する場合には、過剰摂取による健康被害の発生防止について同様に考慮する必要がある。

4 その他

上記2及び3以外の事項については、特定保健用食品は「特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領」(平成17年2月1日付け食安発第0201002号・別添)に、栄養機能食品は「保健機能食品制度の創設等に伴う取扱い及び改正等について」(平成13年3月27日付け食新発第17号・別添)に、「いわゆる健康食品」は「「いわゆる健康食品」の摂取量及び摂取方法等の表示に関する指針」(平成17年2月28日付け食安発第0228001号・別添)によること。

(別紙)

食品中の大豆イソフラボンアグリコン(アグリコン当量)の試験方法

(1) 高速液体クロマトグラフ法

① 機器・試薬

・高速液体クロマトグラフ(HPLC):紫外部吸収検出器付き

・アセトニトリル:高速液体クロマトグラフ用

・酢酸:特級

・エタノール:特級

・70%エタノール:エタノールと水を7:3(v/v)で混合する。

・イソフラボン標準品(定性用)注1):ダイジン(Daidzin)、グリシチン(Glycitin)、ゲニスチン(Genistin)、ダイゼイン(daidzein)、グリシテイン(glycitein)、ゲニステイン(genistein)、マロニルダイジン(6”-O-Malonyldaidzin)、マロニルグリシチン(6”-O-Malonylglycitin)、マロニルゲニスチン(6”-O-Malonylgenistin)、アセチルダイジン(6”-O-Acetyldaidzin)、アセチルグリシチン(6”-O-Acetylglycitin)、アセチルゲニスチン(6”-O-Acetylgenistin)の12種類の標準品を用いる。

・イソフラボン標準品(定量用):ダイジン、グリシチンおよびゲニスチンの3種の標準品(純度99%以上)を用いる。

② 定性用標準溶液の調製

各イソフラボン標準品を70%エタノールに溶解し、濃度が10~20mg/Lとなるように調製する。

③ 定量用標準溶液の調製

ダイジン、グリシチンおよびゲニスチンをそれぞれ精密に秤量して70%エタノールに溶解し、濃度が10~20mg/Lとなるよう調製する。

④ 試験溶液の調製

1) 固体状及びペースト状食品の場合

a.試料を均一に粉砕もしくは混合した後、イソフラボンとして1~10mgに相当する量を50mL容三角フラスコに精密に秤量する。

b.70%エタノール25mLを加えて溶解させる(溶解し難い試料の場合には,振とうあるいは超音波処理を行って溶解させる)。試料が完全に溶解した後、100mL容メスフラスコに移し変え、70%エタノールで100mLに定容して試験溶液とする。

c.振とうあるいは超音波処理をしても完全に溶解せず不溶物が認められる場合には、30分間室温で攪拌抽出した後、遠心分離して上清を100mL容メスフラスコに移す。残査について同様の抽出操作を更に2回行い、計3回分の上清を集め、70%エタノールで100mLに定容して試験溶液とする。

2) カプセル状食品の場合

a.イソフラボンとして1~10mgに相当する量を50mL容遠沈管に正確に秤量する。

b.水25mLを加えた後、30分間撹拌または超音波処理を行い、カプセル皮膜を溶解あるいは破壊する。

c.遠心分離し、上清を100mL容メスフラスコに移す(必要に応じて濾過操作を行う)。

d.残査に70%エタノール25mLを加え、室温で30分間撹拌した後に遠心分離し、上清を上述の100mL容メスフラスコに移す。同様の操作を再度行って計3回分の上清を集め、70%エタノールで100mLに定容して試験溶液注2)とする。

3) 液状食品の場合

a.イソフラボンとして1~10mgに相当する量を100mL容メスフラスコに正確に分取し、70%エタノールで100mLに定容して試験溶液とする。

b.沈殿物が析出した場合には、必要に応じて振とうあるいは超音波処理を行った後に遠心分離し、上清を試験溶液とする。

⑤ 高速液体クロマトグラフの操作条件

カラム:ODSカラム注3)

移動相:

A アセトニトリル/水/酢酸混液(15:85:0.1v/v/v)

B アセトニトリル/水/酢酸混液(35:65:0.1v/v/v)

濃度勾配:AからBまでの直線濃度勾配を50分間行う。

流速:1.0mL/分

カラム温度:35℃

測定波長:254nm

注入量:10μL

⑥ 定性試験

試験溶液を0.45μmのメンブランフィルターで濾過した後、定性用イソフラボン標準溶液とともに同一条件下でHPLCに注入してクロマトグラムを得る。得られた試験溶液のクロマトグラム上のピークと定性用標準溶液のクロマトグラム上のピークのリテンションタイム(保持時間)の同一性によって試験溶液中の各イソフラボンを同定する注1)

⑦ 定量試験

試験溶液を0.45μmのメンブランフィルターで濾過した後、定量用イソフラボン標準品とともに上記⑤のHPLC条件で処理してクロマトグラムを得る。得られた試験溶液のクロマトグラム上の各イソフラボンのピーク面積を測定する。また、定量用イソフラボン標準品のクロマトグラム上のダイジン、グリシチンおよびゲニスチンそれぞれのピーク面積を測定する。

⑧ 計算

1) 定性試験により同定された試料溶液中の全てのイソフラボンについて、それらの試料溶液中の濃度を下記の式―1~式―3によりアグリコン換算して求める注4~6)

(式―1) TDe=TADe×(CD/AD)×0.611

TDe:ダイゼイン型イソフラボンの濃度(アグリコン当量)[mg/L]

TADe:ダイゼイン型イソフラボンのピーク面積の総和

CD:定量用標準液中のダイジンの濃度[mg/L]

AD:定量用標準液クロマトグラム上のダイジンのピーク面積

(式―2) TGle=TAGle×(CGl/AGl)×0.637

TGle:グリシテイン型イソフラボンの濃度(アグリコン当量)[mg/L]

TAGle:グリシテイン型イソフラボンのピーク面積の総和

CGl:定量用標準液中のグリシチンの濃度[mg/L]

AGl:定量用標準液クロマトグラム上のグリシチンのピーク面積

(式―3) TGe=TAGe×(CG/AG)×0.625

TGe:ゲニステイン型イソフラボンの濃度(アグリコン当量)[mg/L]

TAGe:ゲニステイン型イソフラボンのピーク面積の総和

CG:定量用標準液中のゲニスチンの濃度[mg/L]

AG:定量用標準液クロマトグラム上のゲニスチンのピーク面積

2) ダイゼイン型イソフラボン、グリシテイン型イソフラボン、ゲニステイン型イソフラボンの濃度の和から総イソフラボン濃度T(アグリコン当量)を求める(式―4)。

(式―4) T[mg/L]=TDe+TGle+TGe

3) 試料中のイソフラボン含有量(アグリコン当量)を下記の式―5により求める。

(式―5) 試料中のイソフラボン含量(アグリコン当量)[mg/100gまたはmg/100mL]

=T×(100/1000)×(1/S)×100

ここで、S:試料採取量[gまたはmL]

【注】

1) 現在、サクシニル配糖体を除く12種のイソフラボン標準品が市販されており、定性試験用としては十分な純度(90%以上)が保証されている。標準品は、原則としてこの12種類を用いるが、マロニル配糖体及びアセチル配糖体については、標準品のクロマトグラム例(図1)及び大豆加工品類の典型的なクロマトグラム例(図2~図4)を参照することによって同定することも可能である。なお、標準品の入手が困難な3種のサクシニル配糖体、すなわちサクシニルダイジン(6”-O-succinyldaidzin)、サクシニルグリシチン(6”-O-succinylglycitin)およびサクシニルゲニスチン(6”-O-succinylgenistin)については、納豆の典型的なクロマトグラム例(図4)を参照することによって同定する。

2) カプセル当りのイソフラボン量が10mgを超える試料については、試験溶液中のイソフラボン濃度が10~100mg/Lとなるように適宜希釈する。

3) たとえば、YMC-Pack ODS-AM-303(sizeφ4.6×250mm)などが推奨される。

4) イソフラボンの化合物名及び略語を表1に示す。

表1 イソフラボンの化合物名及び略語

 

ダイゼイン型イソフラボン

グリシテイン型イソフラボン

ゲニステイン型イソフラボン

配糖体

D

ダイジン

Gl

グリシチン

G

ゲニスチン

マロニル配糖体

MD

マロニルダイジン

MGl

マロニルグリシチン

MG

マロニルゲニスチン

アセチル配糖体

AD

アセチルダイジン

AGl

アセチルグリシチン

AG

アセチルゲニスチン

サクシニル配糖体

SD

サクシニルダイジン

SGl

サクシニルグリシチン

SG

サクシニルゲニスチン

アグリコン

De

ダイゼイン

Gle

グリシテイン

Ge

ゲニステイン

5) イソフラボンのアグリコン換算係数及び分子量を表2に示す。

表2 イソフラボンのアグリコン換算係数及び分子量

イソフラボン

係数

分子量

イソフラボン

係数

分子量

イソフラボン

係数

分子量

D

1.000

416.38

Gl

1.000

446.4

G

1.000

432.38

De

0.611

254.24

Gle

0.637

284.26

Ge

0.625

270.24

6) ダイゼイン型イソフラボンの計算例を以下に示す。

TDe=AD×(CD/AD)×(MD/MD)×(MDe/MD)+AAD×(CD/AD)×(MAD/MD)×(MDe/MAD)+AMD×(CD/AD)×(MMD/MD)×(MDe/MMD)+ASD×(CD/AD)×(MSD/MD)×(MDe/MSD)+ADe×(CD/AD)×(MDe/MD)×(MDe/MDe)

=(AD+AAD+AMD+ASD+ADe)×(CD/AD)×(MDe/MD)

=TADe×(CD/AD)×0.611

TDe:ダイゼイン型イソフラボンの濃度(アグリコン当量)[mg/L]

A:ピーク面積

CD:定量用標準液中のダイジンの濃度[mg/L]

M:分子量

TADe:ダイゼイン型イソフラボンのピーク面積の総和

図1 イソフラボン標準品のクロマトグラム例

図2 きなこのクロマトグラム例

図3 豆乳のクロマトグラム例

図4 納豆のクロマトグラム例