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○毒物又は劇物の盗難・紛失防止対策及び流出・漏洩等の事故防止対策の徹底について

(平成15年4月4日)

(医薬化発第0404001号)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局審査管理課化学物質安全対策室長通知)

毒物及び劇物取締法(以下「法」という。)第11条第1項、第2項及び第3項により、毒物劇物営業者、業務上取扱者等は、毒物劇物の盗難・紛失防止、流出・漏洩等の防止のための措置を講じなければならないこととなっているところです。

しかしながら、毒物劇物が盗難・紛失、流出・漏洩等する事故は毎年発生しており、それらの防止に万全を期す必要があることから、今般、発生したこれらの事故等について分析を行い、別添1のとおり分析結果をまとめたので送付するとともに、下記の事故等防止対策が徹底されるよう、立ち入り調査等を通じ、貴管下関係業者、関係団体に対する監視指導をお願いします。

なお、立ち入り調査等にあたっては、平成11年8月27日付け医薬安全局長通知、医薬発第1036号「毒物劇物監視指導指針の制定について」に基づき、届出を要しない業務上取扱者についても監視指導が必要と判断される業種等を勘案し、積極的に監視指導の対象に組み入れ、効率的・計画的に実施するとともに、必要に応じ業界団体等を通じた講習会を実施すること等により毒物劇物の適切な取扱い及び管理が徹底されるようお願いします。

1 毒物又は劇物の盗難・紛失防止対策

(1) 盗難・紛失防止対策

盗難件数の半数以上において、貯蔵陳列場所にかぎをかける等、盗難防止のための保管管理がなされていなかったことから、保管設備や保管場所等を再点検し、次の盗難・紛失防止措置を講じていることを確認すること。

ア 法第11条第1項に基づき、毒物劇物を貯蔵、陳列等する場所は、その他の物を貯蔵、陳列等する場所と明確に区分された毒物劇物専用のものとし、かぎをかける設備等のある堅固な施設とするとともに、敷地境界線から十分離すか又は一般の人が容易に近づけない措置を講じていること。

イ 貯蔵、陳列等されている毒物劇物の在庫量の定期的点検及び毒物劇物の種類等に応じての使用量の把握を行うこと。

(2) 毒物劇物運搬時の紛失防止対策

紛失の大部分は、毒物劇物の運搬中に起きており、その原因は、車両への運搬容器の固定が不十分であったことによる落下及び誤った配送先への運搬又は受け渡し時の数量等の確認が不十分であったことによるものが大部分であることから、運搬時には次の紛失防止措置を講じること。

ア 別添2中2(2)及び(3)の運搬基準及び毒物及び劇物取締法施行令(以下「令」という。)第40条の4で規定された「積載の態様」を遵守すること。

イ 荷の受け渡し時に確実に配送先、品名、数量等に誤りがないかどうかの確認を徹底すること。

2 毒物又は劇物の流出、漏洩等の事故防止対策

(1) 毒物劇物の貯蔵、製造中等に発生する事故防止対策

毒物劇物の貯蔵、製造中等に発生する毒物劇物の流出、漏洩等の事故の原因は、タンク・配管等の腐食・亀裂・老朽化、タンクの弁の閉め忘れ・締めの不十分、タンクに注液中の溢流・過充てん、貯蔵タンクからタンクローリー・船等に液送するホースの接続不良、フォークリフト等の操作誤りによる容器・タンクの弁・配管などの破損、毒物劇物の製造作業中又はタンク・配管等の洗浄・保守点検作業中の機器の誤操作・作業手順誤り、装置等の故障・停止、爆発・火災によるものが主であることから、特に次の点に留意すること。

ア 別添2中1の基準に適合した貯蔵設備を使用するとともに、確実に、当該通知で示されている「日常点検」、「定期検査」等を実施すること。

イ 毒物劇物危害防止規定が作成されていることを確認するとともに、その内容が適切であるか点検を行うこと。

ウ 毒物劇物に関わるすべての作業、機械操作、貯蔵設備等を点検し、保健衛生上の危害を生じる可能性のある人為的ミス、機器の故障等を特定し、それを防止するための措置を講じるとともに、可能な限り、人為的ミス、装置の故障等が発生したとしても毒物劇物流出等の事故につながらないような措置を講じること。

(2) 毒物劇物運搬中に発生する事故防止対策

毒物劇物運搬中に発生する毒物劇物の流出、漏洩等の事故の原因は、タンク・配管等の腐食・亀裂・老朽化、マンホール・注入口・弁の閉め忘れ・締めの不十分、タンクマンホールの留め金のかけ忘れ等の点検の不十分、運搬容器の固定不十分及び交通事故によるものが主であることから、特に次の点に留意すること。

ア 液体状の毒物劇物を車両に固定又は積載された容器により運搬する場合

(ア) 別添2中2(1)の基準に適合した運搬容器を使用し、確実に、当該通知で示されている「使用前点検」及び「定期検査」を実施すること。

なお、弗化水素等であって、令第40条の2で運搬基準を定めているものについても、「使用前点検」及び「定期検査」を行うこと。

(イ) 毒物劇物の積載前には、タンクの弁と液送用ホース、配管等の接続部が確実に緊結されていること、積載中には接続部、配管等に漏洩がないこと、積載後は、注入口の蓋、弁等が確実に閉止、緊結され、タンクから漏洩していないことを確認した上で運搬すること。

イ 小型運搬容器又は中型運搬容器により運搬する場合

(ア) 別添2中2(2)及び(3)の基準に適合した運搬容器を使用し、確実に、当該運搬基準及び令第40条の4で規定された「積載の態様」を遵守するとともに、再使用することを前提として設計された運搬容器については使用前に運搬の安全を損なうおそれのある腐食、損傷等がないこと等を確認すること。

なお、弗化水素等であって、令第40条の2で運搬基準を定めているものについても、同様に運搬容器に腐食、損傷等のないことを確認すること。

ウ 上記ア及びイの場合に共通な事項

(ア) 2(1)イ、ウと同様な措置を講じること。

(イ) 荷送人は令第40条の6に規定する運送人への通知義務を遵守し、運送人は運搬時にイエロー・カードを携行すること。

(ウ) 運転者に対して、法定速度の遵守等安全運転の教育及び事故の際の応急措置に関する教育等を実施するとともに、運転者の過労防止対策、タコメータによる運行速度の確認の励行並びに運行計画及び運行記録による過密運行防止のための確認及び点検等を行うこと。

(エ) 積載された量、防波板又は間仕切の有無等を十分に考慮し、車両の走行安定性に注意をすること。

(オ) 車両を休憩、故障等のために一時停止させるときには、安全な場所を選ぶこと。

別紙1 毒物又は劇物の盗難・紛失事件(平成11年度から平成13年度)

盗難にあった業者の業態別盗難防止措置の有無(平成11年度から13年度)

 

毒物劇物営業者

業務上取扱者

合計

農家

学校

その他

盗難防止措置が講じられていたもの

4

3

1

1

9

盗難防止措置が講じられていなかったもの

1

2

3

9

15

合計

5

5

4

10

24

別紙2 毒物又は劇物の流出・漏洩等事故(平成11年度から平成13年度)

別添1

平成11年度から平成13年度に発生した毒物又は劇物の盗難・紛失事件、流出・漏洩等の事故の集計結果について

平成11年度から平成13年度までの3年間に都道府県等が把握した毒物又は劇物の盗難・紛失事件、漏洩・流出等事故を集計した結果、次のとおりであった。

1 盗難・紛失(別紙1の図表参照)

平成11年度から平成13年度の3年間に発生した盗難・紛失件数の総計は40件であり、その内訳は、盗難24件、紛失16件であった。

(1) 盗難

ア 業態

盗難にあった事業者の業態の面からみると、全24件中、5件が製造業者、輸入業者又は販売業者(以下「毒物劇物営業者」という。)、19件が業務上取扱者であり、業務上取扱者が79%を占めていた。盗難にあった業務上取扱者19件のうち、5件は農家、4件は学校であり、農家と学校を合わせると、業務上取扱者の47%を占めていた。

イ 施錠等盗難防止措置

盗難防止措置の面からみると、全24件中、15件が盗難防止措置が不十分であり、全盗難件数の63%を占めていた。盗難防止措置が不十分であった15件における事業者の業態をみると、1件が毒物劇物営業者、14件が業務上取扱者であり、業務上取扱者が93%を占めていた。

一方、施錠等盗難防止措置に問題のなかった9件における事業者の業態をみると、4件が毒物劇物営業者、5件が業務上取扱者であり、業務上取扱者は56%であった。

(2) 紛失

全16件中13件が運送中に発生しており、13件中6件が荷台への固定不十分であったこと、5件が誤配送、受け渡し時の数量等の確認ミスや確認を行わなかったことに起因する紛失であり、この2つの原因が運送中に起きた紛失の原因の85%を占めていた。

2 流出・漏洩等の事故(別紙2の図表参照)

平成11年度から平成13年度の3年間に発生した流出、漏洩等の事故の総計は151件であった。

(1) 業態

流出・漏洩等の事故を起こした事業者の業態の面からみると、全151件中、48件が毒物劇物営業者、99件が業務上取扱者、4件がその他であった。業務上取扱者のうち、20件が届出の必要な業務上取扱者、79件が届出の不要な業務上取扱者であった。

(2) 発生原因

発生原因を別紙2の表にある15の原因に分類してみると、全151件中、30件がタンク・配管等の腐食・亀裂・老朽化、23件が機器の誤操作・作業手順ミス等、16件がタンクの弁等の閉め忘れ・締め付け不十分、タンクマンホールの留金のかけ忘れにより発生した事故であり、この3つの原因による事故は、他の原因によるものと比べ特に多く、事故発生原因の45%を占めていた。その他、フォークリフトなどの機械を誤ってぶつけたなど何らかの理由(理由不明の場合を含む。)によるタンク・配管等の破損、積載物の固定方法が不適切であったための荷崩れ、タンク等に液入れ中の溢流・過充てん、装置・計器の故障、爆発・火災・引火、交通事故、ホース(タンクとタンクローリー、船等をつなぐホースなど)の外れ・接続不良などであった。分類した15の原因の大部分は、交通事故など一部の原因を除けば、何らかの作業上のミス又は日常の点検不足に集約でき、対策を講じていれば大部分の流出、漏洩等の事故は避けることができたと考えられる。

(3) 発生場所、発生作業

発生場所、発生作業の面からみると、全151件中、事業所内等での事故126件、運搬中の事故が25件であった。具体的には、15件がタンク・配管等の洗浄・保守点検作業中、14件が化学物質の混合・溶解等の作業中、13件がトラック等に積み込んだ容器(タンクローリー、タンクコンテナ以外)による毒物劇物の運搬中、12件がタンクローリー・タンクコンテナによる毒物劇物の運搬中、6件が毒物劇物と関係のない作業中、91件がその他であった。「その他」は、他の5つの作業に属さない作業の他、何らかの作業中であったかどうか不明であるものを多く含んでいる。何らかの作業中であったかどうか不明であるものには、貯蔵中のタンク・弁等から漏れたものが多かった。

ア 事業所内等での事故

化学物質の混合、溶解等の作業中に起きた事故は、機器の誤操作、作業手順ミス等によるものが50%を占め、装置・計器の故障、何らかの原因による爆発・火災・引火を含めると、これら3つの原因が事故発生原因の78%を占めていた。

タンク・配管等の洗浄、保守点検作業中に起きた事故は、機器の誤操作、作業手順ミス等によるものが52%を占め、その他、タンクの弁の閉め忘れ・締め付け不十分、タンク・配管中に別の物質があることの確認不足、ホースの外れ・接続不良などの原因によるものであった。

毒物劇物と関係のない作業中(道路工事中、物置の整理中、倉庫の解体中、機材運搬中など)に起きた事故は、機器により誤って容器を破壊した、不適切に毒物劇物を保管していたため容器に毒物劇物があることを知らずに破壊したなどによるものであった。

イ 運搬中の事故

タンクローリー・タンクコンテナによる毒物劇物の運搬中に起きた事故は、タンクの弁等の閉め忘れ・締め付け不十分・タンクマンホールの留め金かけ忘れ、交通事故、タンク・配管等の腐食・亀裂・老朽化の3つの原因が、83%を占めていた。交通事故以外の原因が67%であった。

トラック等に積み込んだ容器(タンクローリー、タンクコンテナ以外)による毒物劇物の運搬中に起きた事故は、積載物の固定方法が不適切であったための荷崩れが61%を占めており、交通事故以外の原因が85%であった。

(4) 被害

流出・漏洩等の事故による被害の面からみると、全151件中、6件が死亡、48件が死亡以外の何らかの人に対する健康被害があったもの、36件が人以外に対する被害(環境に対する被害など)のみあったもの、62件が特に被害のなかったものであり、人に対する何らかの健康被害があったのは36%、人以外に対する被害まで含めて何らかの被害があったものは60%であった。

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毒物及び劇物取締法第16条の2の規定により、毒物劇物営業者、業務上取扱者は、盗難・紛失事件については警察署への届出義務、流出・漏洩事故については保健所、警察署又は消防機関への届出義務が課せられているが、このうち保健所が把握したものについて集計した。なお、漏洩・流出事故に関しては、法律上、不特定又は多数の者について保健衛生上の危害が生ずるおそれがあるときに届出義務がかかるが、今後の安全対策に資する観点から、人に保健衛生上の被害が生ずる可能性・被害の発生の有無、発生場所を問わず、保健所が把握したものについて、集計対象としている。

別添2

1 貯蔵設備等の基準

(1) 固体以外のものを貯蔵する屋外タンク貯蔵所の基準

ア 昭和52年10月20日付け薬発第1175号薬務局長通知「毒物及び劇物の貯蔵に関する構造・設備等基準―その1(固体以外のものを貯蔵する屋外タンク貯蔵所の基準)について」

イ 昭和52年10月20日付け薬安第66号薬務局安全課長通知「毒物及び劇物の貯蔵に関する構造・設備等基準―その1(固体以外のものを貯蔵する屋外タンク貯蔵所の基準)の運用について」

(2) 固体以外のものを貯蔵する屋内タンク貯蔵所及び地下タンク貯蔵所の基準

ア 昭和56年5月20日付け薬発第480号薬務局長通知「毒物及び劇物の貯蔵に関する構造・設備等基準―その2(固体以外のものを貯蔵する屋内タンク貯蔵所の基準)及びその3(固体以外のものを貯蔵する地下タンク貯蔵所の基準)について」

イ 昭和60年4月5日付け薬安第73号薬務局安全課長通知「毒物及び劇物の貯蔵に関する構造・設備等基準―その1(固体以外のものを貯蔵する屋外タンク貯蔵所の基準)、その2(固体以外のものを貯蔵する屋内タンク貯蔵所の基準)、その3(固体以外のものを貯蔵する地下タンク貯蔵所の基準)の運用等について」

2 運搬容器の基準

(1) 液体状の毒物劇物を車両に固定又は積載する容器の基準

ア 昭和63年6月15日付け薬発第511号薬務局長通知「毒物及び劇物の運搬容器に関する基準について」

イ 昭和63年6月15日付け薬安第60号薬務局安全課長通知「毒物及び劇物の運搬容器に関する基準の運用指針について」

(2) 小型運搬容器の基準

ア 平成3年3月6日付け薬発第255号薬務局長通知「毒物及び劇物の運搬容器に関する基準について」

イ 平成3年3月6日付け薬安第22号薬務局安全課長通知「毒物及び劇物の運搬容器に関する基準の運用指針について」

(3) 中型運搬容器の基準

ア 平成4年9月11日付け薬発第836号薬務局長通知「毒物及び劇物の運搬容器に関する基準について」

イ 平成4年9月11日付け薬安第102号薬務局安全課長通知「毒物及び劇物の運搬容器に関する基準の運用指針について」