添付一覧
テプラロキシジム試験法(農産物)
1.分析対象化合物
テプラロキシジム、5―OH―DP〔2[1―(3―クロロプロプ―2―(E)―エン―1―イル)オキシイミノプロピル]―3,5―ジヒドロキシ―5―(テトラヒドロピラン―4―イル)シクロヘキス―2―エン―1―オン〕、DMP〔ジメチル3―(3,4,5,6―テトラヒドロ―2H―ピラン―4―イル)グルタレート〕、OH―DMP〔ジメチル3―ヒドロキシ―3―(3,4,5,6―テトラヒドロ―2H―ピラン―4―イル)グルタレート〕
2.装置
ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)
還流冷却器
ホットプレート付スターラー
3.試薬、試液
次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。
過酸化水素水 過酸化水素水(30%、特級)
水酸化カルシウム 水酸化カルシウム(特級)
活性炭 化学分析用活性炭
DMP標準品 本品は、DMP 96%以上を含む。
OH―DMP標準品 本品は、OH―DMP96%以上を含む。
4.試験溶液調製法
1) 抽出
豆類及び種実類の場合は、試料10.0gに水20mLを加え、2時間放置する。野菜の場合は、試料20.0gを量り採る。
これに水・メタノール混液(1:4)150mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に水・メタノール混液(1:4)150mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過を行う。得られたろ液を合わせて、40℃以下で約30mLまで濃縮する。これに水70mLを加えた後、イソプロパノールを加えて300mLとする。この150mLに水酸化カルシウム5gを加えて緩やかに振り混ぜた後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物をイソプロパノール・水混液(4:1)20mLで洗い、洗液をろ液に合わせる。
2) 酸化
ろ液に水酸化カリウム1gを加え、還流冷却管を装着し、ホットプレート付スターラー上で撹拌しつつ、加熱還流する。沸騰後、還流冷却管の上部から過酸化水素水3mLを加え、10分間隔で過酸化水素水3mLを加える操作をさらに3回繰り返した後、さらに30分間加熱還流する。
3) 活性炭への吸着
反応液を放冷後、塩化ナトリウム25gを加え10分間撹拌する。飽和塩化ナトリウム溶液20mLを加え、水層を分取する。イソプロパノール層に飽和塩化ナトリウム溶液50mLを加え、5分間激しく振り混ぜた後、静置し、水層を分取する。水層を合わせ、塩酸5mLを加えて50~60℃で減圧濃縮し、イソプロパノールを除去する。
析出した塩化ナトリウムが溶解するまで水を加えた後、活性炭2.5gを加え、10分間激しく振り混ぜた後、吸引ろ過する。水200mLでろ紙上の活性炭を洗った後、5分間吸引する。次いでn―ヘキサン100mLでろ紙上の活性炭を洗った後、5分間吸引する。
4) メチルエステル化
ろ紙及びろ紙上の活性炭を5mm角に切断した後に、メタノール100mL、硫酸20mL、オルトギ酸トリメチル25mL、ペルオキソ二硫酸カリウム2gを加え、還流冷却管を装着し、ホットプレート付スターラー上で撹拌しつつ、加熱還流する。1時間沸騰後、速やかに吸引ろ過する。次いで、メタノール50mLを用いてろ紙上の残留物を洗う。さらに、ギ酸・メタノール混液(1:9)50mLずつを用いてろ紙上の残留物を2回洗う。これらのろ液、洗液を合わせ、水300mLを加え、ジクロロメタン150mLずつで2回振とう抽出する。この抽出液に飽和炭酸水素ナトリウム溶液50mLを加え振とうし、水層は捨てる。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトン1mLに溶かし、ヘキサン19mLを加える。
5) 精製
(1) 合成ケイ酸マグネシウムカラムクロマトグラフィー
クロマトグラフ管(内径15mm)にカラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム10gをn―ヘキサンに懸濁させて充てんし、上に無水硫酸ナトリウム約5gを積層する。このカラムに4)で得られた溶液を注入し、流出液は捨てる。さらに、アセトン・n―ヘキサン混液(1:19)40mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、アセトン・n―ヘキサン混液(1:4)100mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物を酢酸エチル1mLに溶かし、n―ヘキサン19mLを加える。
(2) シリカゲルカラムクロマトグラフィー
シリカゲルミニカラム(1,000mg)にn―ヘキサン5mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに(1)で得られた溶液を注入し、流出液は捨てる。さらに、酢酸エチル・n―ヘキサン混液(3:17)10mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、酢酸エチル・n―ヘキサン混液(3:7)25mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をエーテル1mLに溶かし、n―ヘキサン19mLを加える。
(3) アミノプロピルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー
アミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラム(1,000mg)にn―ヘキサン5mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに(2)で得られた溶液を注入し、流出液は捨てる。次いで、酢酸エチル・n―ヘキサン混液(3:7)10mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトンに溶解し、豆類及び種実類の場合は正確に3mL、野菜の場合は正確に6mLとしたものを試験溶液とする。
5.検量線の作成
DMP及びOH―DMP標準品のアセトン溶液を別々に調製し、1:1の割合で混合した後、0.1~2mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれ2μLをGC/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。
6.定量
試験溶液2μLをGC/MSに注入し、5の検量線でDMP及びOH―DMPの含量を求め、次式により、5―OH―DP及びその他の関連化合物を含むテプラロキシジムの含量を求める。
テプラロキシジム(5―OH―DP及びその他の関連化合物を含む)の含量=DMPの含量×1.40+OH―DMPの含量×1.31
7.測定条件
GC/MS
カラム:35%フェニル―メチルシリコン内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm
カラム温度:100℃(2分)―3℃/分―200℃―30℃/分―280℃
注入口温度:250℃
検出器温度:280℃
キャリヤーガス:ヘリウム
イオン化電圧:70eV
主なイオン:DMP m/z213、182、168 OH―DMP m/z 175、155、143
保持時間の目安:DMP 29分 OH―DMP 32分
8.定量限界
0.05mg/kg
9.留意事項
1) 分析値
テプラロキシジム及び5―OH―DPをDMP及びOH―DMPにそれぞれ変換した後、DMP及びOH―DMPについてそれぞれ定量を行い、それぞれの含量に係数を乗じてテプラロキシジムの含量に換算し、これを分析値とすること。
2) 試験法の概要
テプラロキシジム、5―OH―DP及びその関連の変化生成物のうち、酸化及びメチルエステル化の操作によりDMP及びOH―DMPとなるものを分析対象とした方法である。水・メタノール混液でテプラロキシジム、5―OH―DP及び変化生成物を同時に抽出、水酸化カルシウムで凝固処理後、酸化反応でこれらを3―(3,4,5,6―テトラヒドロ―2H―ピラン―4―イル)グルタール酸(GP)及び3―ヒドロキシ―3―(3,4,5,6―テトラヒドロ―2H―ピラン―4―イル)グルタール酸(OH―GP)に変換する。さらにメチルエステル化によりGPをDMPに、OH―GPをOH―DMPに変換、液々分配、合成ケイ酸マグネシウムカラム、シリカゲルミニカラム及びアミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラムにより精製し、GC/MSでDMP及びOH―DMPを同時に測定する方法である。
3) 注意点
(1) 酸化反応について
環境省告示試験法に従い、水酸化カリウム1gを加えた後、酸化剤として30%過酸化水素水を用いて加熱還流する方法で酸化を行う。
小林らは、水酸化カリウム1gを加え、30%過酸化水素水3mLを10分間隔で4回加えた場合、最も酸化効率が高く、さらに30分間加熱還流を続けることで過剰の過酸化水素を分解できたと報告している。ただし、酸化反応後の溶液のpHが11~13であれば反応は順調に進行するが、pHがそれより低い場合は酸化反応が進行していない可能性が高いので、酸化反応後の溶液を少量取り、pH試験紙でpHを確認する。pHが低い場合は水酸化カリウム及び30%過酸化水素水を加えて酸化反応を再度行う。
(2) 塩析後のイソプロパノールの留去について
イソプロパノールが残存すると、活性炭への吸着率が低下するため、完全に留去させる。イソプロパノールが完全に留去されたことの判断は、減圧濃縮器の冷却管に水滴が付着すること、フラスコ内に塩化ナトリウムが析出すること及びイソプロパノール臭がしなくなることなどから行う。
(3) 活性炭への吸着について
環境省告示試験法に従い、酸化反応後の溶液を塩析させた後の水層に活性炭を加えて振とうすることで、GP及びOH―GPを活性炭に吸着させ、これを吸引ろ過及び洗浄する。
小林らは、GP及びOH―GPは水溶性が高く、一般の有機溶媒に転溶することが困難であったため、酸化反応後の溶液を塩析及び濃縮操作で有機溶媒を完全に留去させ、活性炭を加えることで、GP及びOH―GPを吸着することができたと報告している。
なお、水分が残存するとメチルエステル化反応率が低下するため、ろ過後の活性炭は完全に乾燥させる必要がある。
(4) メチルエステル化について
環境省告示試験法に従い、活性炭にメタノール100mLを加えた後、ペルオキソ二硫酸カリウム2g、オルトギ酸トリメチル25mL及び濃硫酸20mLを加え、1時間加熱還流してメチルエステル化を行う。
小林らは、活性炭に吸着させたGP及びOH―GPのうち、GPについては定量的にDMPに変換されるが、OH―GPについては変換率が低かったため、ペルオキソ二硫酸カリウム及びオルトギ酸トリメチルを加えることでGP及びOH―GPを定量的にDMP及びOH―DMPに変換できたと報告している。
メチルエステル化後、活性炭を除去するために沸騰させた反応液を速やかに吸引ろ過しているが、冷却してしまうとDMP及びOH―DMPの回収率が低下するため、温度が高いうちに手早くろ過を行う。
(5) 試験溶液調製の途中で操作を中断する場合は、活性炭に吸着させ、乾燥させた状態で1晩、メタノールに浸漬させた状態で2日間置くことができる。又は飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄後に置くことができる。
10.参考文献
1) 平成12年環境庁告示第32号「テプラロキシジム試験法」
2) 小林ら、第23回農薬残留分析研究会講演資料集、p.40―47、2000年8月
11.類型
C
テレフタル酸銅試験法(農産物)
1.分析対象化合物
テレフタル酸銅、テレフタル酸
2.装置
紫外分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフ及びメチル化装置を用いる。
メチル化装置の概略は,次の図による。
A:エーテル管
B:ジアゾメタン発生管
C:反応管
3.試薬、試液
次に示すもの以外は,総則の3に示すものを用いる。
ジアゾメタンアセトン溶液 メチル化装置のエーテル管にエーテル5mlを入れる。メチル化装置のジアゾメタン発生管にジエチレングリコールモノエチルエーテル4ml及び10mol/l水酸化カリウム溶液2mlを入れる。メチル化装置の反応管にアセトン50mlを入れる。メチル化装置のジアゾメタン発生管にN―メチル―N―ニトロソ―p―トルエンスルホンアミド2gをエーテル5mlに溶かしたものを加えた後,窒素を5分間緩やかに通じて反応させ,反応管の溶液を採る。用時調製する。
スチレン―ジビニルベンゼン共重合体吸着剤 スチレン―ジビニルベンゼン共重合体吸着剤(無極性,粒径250~850μm)をメタノールを用いて十分洗い,メタノール中で保存する。
テレフタル酸銅標準溶液 テレフタル酸銅100mgを0.03mol/l水酸化ナトリウム溶液に溶かして1,000mlとする。
4.標準品
テレフタル酸銅 本品はテレフタル酸銅三水和物98%以上を含む。
分解点 本品の分解点は130°以上である。
5.試験溶液の調製
a 抽出法
検体約1kgを精密に量り,必要に応じ適量の水を量つて加え,細切均一化した後,検体20.0gに相当する量を量り採り,300mlのナス型フラスコに移し,0.03mol/l水酸化ナトリウム溶液100mlを加える。これに還流冷却器を取り付けて100°の水浴中で1時間加熱した後,少量の水を用いて上記の還流冷却器を洗い,洗液を上記のナス型フラスコに合わせ,放冷する。これを500mlのナス型フラスコ(Ⅰ)に吸引ろ過する。0.03mol/l水酸化ナトリウム溶液50mlを用いて上記の300mlのナス型フラスコを洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗う。洗液をナス型フラスコ(Ⅰ)に合わせる。これに6mol/l硫酸を加えてpH2に調整し,500mlのナス型フラスコ(Ⅱ)に吸引ろ過する。少量の水を用いてナス型フラスコ(Ⅰ)を洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗う。洗液をナス型フラスコ(Ⅱ)に合わせる。
b 精製法
あらかじめ水及びメタノールを用いて洗つたスチレン―ジビニルベンゼン共重合体吸着剤25mlをナス型フラスコ(Ⅱ)に加え,撹拌器を用いて30分間撹拌した後,吸引ろ過する。n―ヘキサン100mlを用いてろ紙上の残留物を洗い,洗液は捨てる。次いで酢酸エチル200mlを用いてろ紙上の残留物を洗い,洗液を毎分約10mlの流速で500mlの分液漏斗に採る。
これに2%リン酸二ナトリウム溶液40mlを加え,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,水層を300mlの分液漏斗に移す。酢酸エチル層に2%リン酸二ナトリウム溶液40mlを加え,上記と同様に操作して,水層を上記の分液漏斗に合わせる。これにジクロロメタン(特級)50mlを加え,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,ジクロロメタン層を捨てる。水層にアセトン及び酢酸エチルの混液(3:7)100ml,塩化ナトリウム20g及び12mol/l塩酸4mlを加え,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,有機溶媒層を300mlの三角フラスコに移す。水層にアセトン及び酢酸エチルの混液(3:7)100mlを加え,上記と同様に操作して,有機溶媒層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え,時々振り混ぜながら15分間放置した後,すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いで酢酸エチル20mlを用いて三角フラスコを洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗う。洗液をその減圧濃縮器中に合わせ,40°以下でアセトン及び酢酸エチルを除去する。
c メチル化
この残留物にメタノール1mlを加えて溶かし,更にジアゾメタンアセトン溶液10mlを加え,密栓し,3時間放置した後,すり合わせ減圧濃縮器中に移し,40°以下でアセトン及びメタノールを除去する。この残留物に酢酸エチル及びn―ヘキサンの混液(1:19)10mlを加えて溶かす。
内径15mm,長さ300mmのクロマトグラフ管に,カラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム5gを酢酸エチル及びn―ヘキサンの混液(1:19)に懸濁したもの,次いでその上に無水硫酸ナトリウム約5gを入れ,カラムの上端に少量の酢酸エチル及びn―ヘキサンの混液(1:19)が残る程度まで酢酸エチル及びn―ヘキサンの混液(1:19)を流出させる。このカラムに上記の溶液を注入した後,酢酸エチル及びn―ヘキサンの混液(1:19)80mlを注入し,流出液をすり合わせ減圧濃縮器中に採り,40°以下で酢酸エチル及びn―ヘキサンを除去する。この残留物にメタノールを加えて溶かし,正確に5mlとして,これを試験溶液とする。
6.操作法
a 定性試験
次の操作条件で試験を行う。試験結果はテレフタル酸銅標準溶液について,7.検量線の作製と同様に操作して得られたものと一致しなければならない。
操作条件
カラム充てん剤 オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)を用いる。
クロマトグラフ管 内径4.0~4.6mm,長さ150mmのステンレス管を用いる。
カラム温度 40°
検出器 波長242nmで操作する。
移動相 水及びメタノールの混液(2:3)を用いる。テレフタル酸ジメチルが約6分20秒で流出する流速に調整する。
b 定量試験
a 定性試験と同様の操作条件で得られた試験結果に基づき,7.の検量線によつてテレフタル酸銅の含量を求める。
7.検量線の作製
テレフタル酸銅標準溶液0.2,0.4,0.6,0.8及び1.0mlを別々に500mlの分液漏斗に量り採り,それぞれに2%リン酸二ナトリウム溶液80mlを加えた後,アセトン及び酢酸エチルの混液(3:7)100ml,塩化ナトリウム20g及び12mol/l塩酸4mlを加える。これらを5.試験溶液の調製のb 精製法及びc メチル化並びに6.操作法のb 定量試験と同様に操作して,検量線を作製する。
8.定量限界
0.5mg/kg
9.留意事項
テレフタル酸銅の分析値には、テレフタル酸銅及びテレフタル酸が含まれる。
10.参考文献
なし
11.類型
A
トリクラベンダゾール試験法(畜水産物)
1.分析対象化合物
トリクラベンダゾール,5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オン
2.装置
紫外分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフを用いる。
3.試薬・試液
総則の3に示すものを用いる。
4.標準品
トリクラベンダゾール 本品はトリクラベンダゾール99%以上を含む。
分解点 本品の分解点は176°である。
5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オン 本品は5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オン98%以上を含む。
5.標準溶液の調製
a 5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オン化法
標準品に無水エタノール1ml及び酢酸1mlを加えて溶かし,過酸化水素1mlを加えて密栓し,よく振り混ぜた後,100°で2時間加熱し,室温になるまで放置する。これに水7mlを加え,よく振り混ぜる。
b 精製法
オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(360mg)に,メタノール10ml及び水10mlを順次注入し,流出液は捨てる。このカラムにa 5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オン化法で得られた溶液を注入した後,水10mlを注入し,流出液は捨てる。このカラムにメタノール10mlを注入し,流出液をすり合わせ減圧濃縮器中に採り,40°以下でメタノールを除去する。この残留物にメタノール1.0mlを加えて溶かし,これを標準溶液とする。
6.試験溶液の調製
a 抽出法
筋肉の場合は,可能な限り脂肪層を除き,細切均一化した後,その5.00gを量り採る。
脂肪の場合は,可能な限り筋肉層を除き,細切均一化した後,その5.00gを量り採る。
肝臓及び腎臓の場合は,細切均一化した後,その5.00gを量り採る。
これにアセトニトリル25ml及び無水硫酸ナトリウム10gを加え,細砕した後,毎分3,000回転で5分間遠心分離を行い,アセトニトリル層を100mlの分液漏斗中に移す。これにアセトニトリル飽和n―ヘキサン25mlを加え,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,アセトニトリル層をすり合わせ減圧濃縮器中に移す。遠心分離管の残留物にアセトニトリル25mlを加え,1分間激しく振り混ぜた後,上記と同様の条件で遠心分離を行い,アセトニトリル層をその分液漏斗中のアセトニトリル飽和n―ヘキサンに加える。振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,アセトニトリル層をそのすり合わせ減圧濃縮器中に合わせ,n―プロパノール10mlを加え,40°以下でアセトニトリル及びn―プロパノールを除去する。
b 5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オン化法
a 抽出法で得られたものに4.標準溶液の調製のa 5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オン化法と同様の操作を行う。
c 精製法
b 5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オン化法で得られた溶液に5.標準溶液の調製のb 精製法と同様の操作を行い,これを試験溶液とする。
7.操作法
a 定性試験
次の操作条件で試験を行う。試験結果は標準溶液と一致しなければならない。
操作条件
カラム充てん剤 オクタデシルシリル化シリカゲルを用いる。
カラム管 内径4.0~6.0mm,長さ150mmのステンレス管を用いる。
カラム温度 40°
検出器 吸光波長295nmで操作する。
移動相 アセトニトリル及び0.025mol/lリン酸―ナトリウム溶液の混液(1:1)を用いる。5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オンが約6分で流出する流速に調整する。
b 定量試験
a 定性試験と同様の操作条件で得られた試験結果に基づき,ピーク高法又はピーク面積法により定量を行う。
8.定量限界
0.01mg/Kg(5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オンとして)
9.留意事項
(1) 標準溶液の調製
(1) トリクラベンダゾール標準品をメタノールに溶解してトリクラベンダゾール標準原液とすること(トリクラベンダゾール109mg/l,5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オンとして100mg/l)。本標準原液は,0~4゜保存で6ヶ月間安定であること。
(2) 5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オン標準品をメタノールに溶解して5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オン標準原液とすること(5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オン100mg/l)。本標準原液は,0~4゜保存で6ヶ月間安定であること。
(3) トリクラベンダゾール標準原液をエタノールで逓減希釈し,試験溶液と同様の方法により酢酸及び過酸化水素で誘導体化し,精製したものをトリクラベンダゾール検量線作成用標準溶液とすること。
(4) 5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オン標準原液をメタノールで逓減希釈し,5―クロロ―6―(2,3―ジクロロフェノキシ)―ベンズイミダゾール―2―オン標準溶液とする。本標準溶液は,高速液体クロマトグラフィーにおけるトリクラベンダゾール誘導体の保持時間の確認,紫外可視吸収スペクトル及び質量スペクトルの確認のために用いること。
(2) その他
本試験法によりトリクラベンダゾールが検出された場合には,紫外可視多波長検出器及び質量検出器付き高速液体クロマトグラフを用いて確認することが望ましいこと。
10.参考文献
なし
11.類型
A
トリクラミド試験法(農産物)
1.分析対象化合物
トリクラミド
2.装置
電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフを用いる。
3.試薬、試液
次に示すもの以外は,総則の3に示すものを用いる。
カラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム カラムクロマトグラフィー用に製造した合成ケイ酸マグネシウム(粒径150~250μm)を130°で12時間以上加熱した後,デシケーター中で放冷する。これに対して水を5%加える。
凝固液 塩化アンモニウム2g及びリン酸4mlに水を加えて400mlとする。
4.標準品
トリクラミド 本品はトリクラミド99%以上を含む。
融点 本品の融点は73~74°である。
5.試験溶液の調製
a 抽出法
検体約1kgを精密に量り,必要に応じ適量の水を量つて加え,細切均一化した後,検体20.0gに相当する量を量り採る。
これにアセトニトリル及びメタノールの混液(1:1)100mlを加え,振とう機を用いて30分間激しく振り混ぜた後,静置し,ケイソウ土を1cmの厚さに敷いたろ紙を用いて吸引ろ過する。ろ紙上の残留物を採り,アセトニトリル及びメタノールの混液(1:1)50mlを加え,振とう機を用いて30分間激しく振り混ぜた後,上記と同様に操作して,ろ液を1,000mlの分液漏斗に合わせる。これに5%塩化ナトリウム溶液300ml及びジクロロメタン100mlを加え,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,ジクロロメタン層を300mlの三角フラスコに移す。水層にジクロロメタン100mlを加え,上記と同様に操作して,ジクロロメタン層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え,時々振り混ぜながら15分間放置した後,すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いでジクロロメタン20mlを用いて三角フラスコを洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗う。洗液をその減圧濃縮器中に合わせ,40°以下でジクロロメタンを除去する。
この残留物にアセトン20mlを加えて溶かし,凝固液50ml及びケイソウ土2gを加え,緩やかに振り混ぜた後,5分間放置し,ケイソウ土を1cmの厚さに敷いたろ紙を用いて吸引ろ過し,ろ液を300mlの分液漏斗に移す。次いでアセトン及び凝固液の混液(2:5)50mlを用いて上記の減圧濃縮器のナス型フラスコを洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗い,吸引ろ過し,ろ液を上記の分液漏斗に合わせる。これにジクロロメタン50mlを加え,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,ジクロロメタン層を300mlの三角フラスコに移す。水層にジクロロメタン50mlを加え,上記と同様に操作して,ジクロロメタン層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え,時々振り混ぜながら15分間放置した後,すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いでジクロロメタン20mlを用いて三角フラスコを洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗う。洗液をその減圧濃縮器中に合わせ,40°以下でジクロロメタンを除去する。この残留物にベンゼン5mlを加えて溶かす。
b アセチル化
上記の溶液にピリジン1ml及び無水酢酸1mlを加え,密栓し,時々振り混ぜながら80°で30分間加熱し,冷後5%塩化ナトリウム溶液50ml及び酢酸エチル50mlを加え,300mlの分液漏斗(Ⅰ)に移す。これに1mol/l塩酸10mlを加え,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,酢酸エチル層を300mlの分液漏斗(Ⅱ)に移す。これに水50mlを加え,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,酢酸エチル層を200mlの三角フラスコに移す。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え,時々振り混ぜながら15分間放置した後,すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いで酢酸エチル20mlを用いて三角フラスコを洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗う。洗液をその減圧濃縮器中に合わせ,2%ジエチレングリコールアセトン溶液0.1mlを加え,40°以下で酢酸エチルを除去する。この残留物に酢酸エチル及びn―ヘキサンの混液(1:24)10mlを加えて溶かす。
c 精製法
内径15mm,長さ300mmのクロマトグラフ管に,カラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム10gを酢酸エチル及びn―ヘキサンの混液(1:24)に懸濁したもの,次いでその上に無水硫酸ナトリウム約5gを入れ,カラムの上端に少量の酢酸エチル及びn―ヘキサンの混液(1:24)が残る程度まで酢酸エチル及びn―ヘキサンの混液(1:24)を流出させる。このカラムにb アセチル化で得られた溶液を注入した後,酢酸エチル及びn―ヘキサンの混液(1:24)80mlを注入し,流出液は捨てる。次いで酢酸エチル及びn―ヘキサンの混液(1:9)80mlを注入し,流出液をすり合わせ減圧濃縮器中に採り,2%ジエチレングリコールアセトン溶液0.1mlを加え,40°以下で酢酸エチル及びn―ヘキサンを除去する。この残留物にn―ヘキサンを加えて溶かし,正確に10mlとして,これを試験溶液とする。
6.操作法
a 定性試験
次の操作条件で試験を行う。試験結果は標準品について,5.試験溶液の調製のb アセチル化と同様に操作して得られたものと一致しなければならない。
操作条件
カラム充てん剤 カラム担体に対してガスクロマトグラフィー用シリコンを5%含ませる。
クロマトグラフ管 内径3mm,長さ1mのガラス管を用いる。
カラム温度 190~220°
試験溶液注入口温度 240~280°
検出器 260~280°で操作する。
ガス流量 キャリヤーガスとして高純度窒素を用いる。N―(1―ブトキシ―2,2,2―トリクロロエチル)―2―アセトキシベンズアミドが約3分で流出する流速に調整する。
b 定量試験
a 定性試験と同様の操作条件で得られた試験結果に基づき,ピーク高法又はピーク面積法により定量を行う。
7.定量限界
0.1mg/Kg
8.留意事項
なし
9.参考文献
なし
10.類型
A
トリクロロ酢酸ナトリウム塩試験法(農産物)
1.分析対象化合物
トリクロロ酢酸ナトリウム塩
2.装置
ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)
3.試薬、試液
次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。
ジアゾメタン溶液 ジアゾメタン生成装置を用い、N―メチル―N’―ニトロ―N―ニトロソグアニジン0.2gに精製水0.5mL及び20%水酸化ナトリウム溶液0.6mLを加え、発生したジアゾメタンを氷冷したtert―ブチルメチルエーテル3mLに捕集し、このtert―ブチルメチルエーテル層をジアゾメタン溶液とする。
トリクロロ酢酸ナトリウム塩標準品 本品はトリクロロ酢酸ナトリウム塩99%以上を含む。
4.試験溶液の調製
1) 抽出
試料10.0gに水70mLを加えて30分間振とうし、ガラス繊維ろ紙を用いて吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に水30mLを加え、上記と同様に振とう及びろ過を行う。
得られたろ液を合わせ、9mol/L硫酸を加えてpH0.5以下に調整した後、塩化ナトリウム20gを加え、tert―ブチルメチルエーテル50mLずつで2回抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、30℃以下で濃縮し、tert―ブチルメチルエーテルを加えて正確に20mLとする。
2) メチル化
抽出溶液2mLを採り、ジアゾメタン溶液1mLを加えて密栓し、60分間静置したものを試験溶液とする。
5.検量線の作成
トリクロロ酢酸ナトリウム塩標準品の0.005~0.5mg/L tert―ブチルメチルエーテル溶液を数点調製し、それぞれについて4.2)メチル化と同様に操作する。それぞれ4μLをGC/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法により検量線を作成する。
6.定量
試験溶液4μLをGC/MSに注入し、5の検量線でトリクロロ酢酸ナトリウム塩の含量を求める。
7.確認試験
GC/MSにより確認する。
8.測定条件
GC/MS
カラム:メチルシリコン 内径0.25mm,長さ25m,膜厚0.1μm
カラム温度:50℃(12分)―10℃/分―150℃(2分)
注入口温度:200℃
主なイオン(m/z):119,117
9.定量限界
0.05mg/kg
10.留意事項
1) 試験法の概要
トリクロロ酢酸ナトリウム塩を試料から水で抽出し、tert―ブチルメチルエーテルに転溶した後、ジアゾメタンでメチル化し、GC/MSで測定及び確認する方法である。
2) 注意点
(1) 本法は水道法水質基準のクロロ酢酸、ジクロロ酢酸及びトリクロロ酢酸のGC/MSによる一斉分析法に、大麦及び「その他の穀類」試料からの抽出操作を追加した方法である。
(2) トリクロロ酢酸は濃縮操作で損失があるため、浴温を低く設定し、乾固させない。
(3) メチル化操作においてジアゾメタン量が不足する場合は、適宜増量し、検量線溶液の作成操作時も同様にジアゾメタンを増量する。
(4) トリクロロ酢酸のメチル化生成物は揮発性が高く、濃縮による損失が大きいため、濃縮を行わずそのまま試験溶液とする。
(5) トリクロロ酢酸ナトリウム塩の標準原液は冷凍保存し、希釈標準溶液は用時調製する。
12.参考文献
なし
13.類型
D(厚生労働省告示第261号「水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法 別表第17に定める方法」平成15年7月22日)
トリシクラゾール試験法(農産物)
1.分析対象化合物
トリシクラゾール
2.装置
アルカリ熱イオン化検出器又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ及びガスクロマトグラフ・質量分析計を用いる。
3.試薬、試液
総則の3に示すものを用いる。
4.標準品
トリシクラゾール 本品はトリシクラゾール99%以上を含む。
融点 本品の融点は187~188°である。
5.試験溶液の調製
a 抽出法
検体を420μmの標準網ふるいを通るように粉砕した後,その10.0gを量り採り,水20mlを加え,2時間放置する。
これにアセトン100mlを加え,3分間細砕した後,ケイソウ土を1cmの厚さに敷いたろ紙を用いてすり合わせ減圧濃縮器中に吸引ろ過する。ろ紙上の残留物を採り,アセトン50mlを加え,3分間細砕した後,上記と同様に操作して,ろ液をその減圧濃縮器中に合わせ,40°以下で約30mlに濃縮する。
これをあらかじめ10%塩化ナトリウム溶液100mlを入れた300mlの分液漏斗に移す。酢酸エチル100mlを用いて上記の減圧濃縮器のナス型フラスコを洗い,洗液を上記の分液漏斗に合わせる。振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,酢酸エチル層を300mlの三角フラスコに移す。水層に酢酸エチル50mlを加え,上記と同様に操作して,酢酸エチル層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え,時々振り混ぜながら15分間放置した後,すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いで酢酸エチル20mlを用いて三角フラスコを洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗う操作を2回繰り返す。両洗液をその減圧濃縮器中に合わせ,40°以下で酢酸エチルを除去する。この残留物にn―ヘキサン2mlを加えて溶かす。
b 精製法
シリカゲルミニカラム(690mg)に,n―ヘキサン10mlを注入し,流出液は捨てる。このカラムにa 抽出法で得られた溶液を注入した後,エーテル10mlを注入し,流出液は捨てる。次いでアセトン及びn―ヘキサンの混液(1:1)10mlを注入し,流出液をすり合わせ減圧濃縮器中に採り,40°以下でアセトン,エーテル及びn―ヘキサンを除去する。この残留物にn―ヘキサンを加えて溶かし,正確に5mlとして,これを試験溶液とする。
6.操作法
a 定性試験
次の操作条件で試験を行う。試験結果は標準品と一致しなければならない。
操作条件
カラム 内径0.25mm,長さ30mのケイ酸ガラス製の細管に,ガスクロマトグラフィー用メチルシリコンを0.25μmの厚さでコーティングしたもの。
カラム温度 50°で2分間保持し,その後毎分10°で昇温し,240°に到達後10分間保持する。
試験溶液注入口温度 230°
注入方式 スプリットレス
検出器 230°で操作する。
ガス流量 キャリヤーガスとしてヘリウムを用いる。トリシクラゾールが約25分で流出する流速に調整する。空気及び水素の流量を至適条件に調整する。
b 定量試験
a 定性試験と同様の操作条件で得られた試験結果に基づき,ピーク高法又はピーク面積法により定量を行う。
c 確認試験
a 定性試験と同様の操作条件でガスクロマトグラフィー・質量分析を行う。試験結果は標準品と一致しなければならない。また,必要に応じ,ピーク高法又はピーク面積法により定量を行う。
7.定量限界
0.02mg/Kg
8.留意事項
なし
9.参考文献
なし
10.類型
A
トリネキサパックエチル試験法(農産物)
1.分析対象化合物
トリネキサパックエチル、トリネキサパック〔4―シクロプロピル(ヒドロキシ)メチレン―3,5―ジオキソシクロヘキサン酢酸〕
2.装置
紫外分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC(UV))
液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS)
3.試薬、試液
次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。
トリネキサパックエチル標準品 本品はトリネキサパックエチル99%以上を含み、融点は36~37℃である。
トリネキサパック標準品 本品はトリネキサパック99%以上を含む。
4.試験溶液調製法
1) 抽出
試料10.0gを量り採り、水20mLを加え、2時間放置する。
これにアセトン100mL及び6mol/L塩酸0.5mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトン50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過を行う。得られたろ液を合わせ、40℃以下で約20mLまで濃縮する。これに10%塩化ナトリウム溶液100mL及び6mol/L塩酸0.5mLを加え、酢酸エチル・n―へキサン混液(1:1)100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。
この残留物にn―ヘキサン30mLを加え、n―ヘキサン飽和アセトニトリル30mLずつで3回振とう抽出する。抽出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をエーテル・n―ヘキサン混液(1:19)で溶解し、正確に10mLとしたものを抽出溶液とする。
2) 精製
(1) ベンゼンスルホニルプロピルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー
ベンゼンスルホニルプロピルシリル化シリカゲルミニカラム(500mg)にエーテル・n―ヘキサン混液(1:19)10mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに1)で得られた抽出溶液5mLを注入し、流出液は捨てる。さらに、エ―テル・n―ヘキサン混液(1:19)5mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、エーテル・n―ヘキサン混液(1:9)15mLを注入し、溶出液を分取する(溶出液Ⅰ)。次いで、酢酸エチル・n―ヘキサン混液(3:7)10mLを注入し、溶出液を分取する(溶出液Ⅱ)。溶出液Ⅰを40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトニトリル・酢酸・水混液(40:1:60)で溶解し、正確に1mLとしたものをトリネキサパックエチル用試験溶液とする。
(2) シリカゲルカラムクロマトグラフィー
シリカゲルミニカラム(500mg)に酢酸エチル・n―ヘキサン混液(3:7)10mLを注入し、流出液は捨てる。(1)で得られた溶出液Ⅱを注入し、流出液は捨てる。さらに、アセトン5mL及びアセトン・メタノール混液(7:3)5mLを順次注入し、各流出液は捨てる。次いで、アセトン・酢酸・メタノール混液(35:1:15)10mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトニトリル・酢酸・水混液(20:1:80)で溶解し、正確に1mLとしたものをトリネキサパック用試験溶液とする。
5.検量線の作成
トリネキサパックエチル標準品については、アセトニトリル・酢酸・水混液(40:1:60)で、トリネキサパック標準品については、アセトニトリル・酢酸・水混液(20:1:80)で、それぞれ0.1~2mg/Lの標準溶液を数点調製し、それぞれ10μLをHPLCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。
6.定量
試験溶液10μLをHPLCに注入し、5の検量線でトリネキサパックエチル及びトリネキサパックの含量を求め、次式によりトリネキサパックを含むトリネキサパックエチルの含量を求める。
トリネキサパックエチル(トリネキサパックを含む)の含量(mg/kg)=A+B×1.13
A:トリネキサパックエチルの含量(mg/kg)
B:トリネキサパックの含量(mg/kg)
7.測定条件
HPLC
(1) トリネキサパックエチルの試験
検出器:UV(波長280nm)
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm) 内径4~4.6mm,長さ250mm
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル・酢酸・水混液(40:1:60)
保持時間の目安:11分
(2) トリネキサパックの試験
検出器:UV(波長280nm)
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm) 内径4~4.6mm,長さ250mm
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル・酢酸・水混液(20:1:80)
保持時間の目安:15分
8.定量限界
0.02mg/kg
9.留意事項
1) 分析値
トリネキサパックエチルは、トリネキサパックエチル及びトリネキサパックのそれぞれについて定量を行い、トリネキサパックについてはその含量に係数を乗じてトリネキサパックエチルの含量に換算し、これらの和を分析値とすること。
2) 試験法の概要
トリネキサパックエチル及びトリネキサパックを塩酸酸性下で試料からアセトンで抽出し、酢酸エチル・n―ヘキサン混液に転溶する。アセトニトリル/ヘキサン分配で脱脂した後、ベンゼンスルホニルプロピルシリル化シリカゲルカラムで2画分に分けて溶出し、トリネキサパップエチル溶出画分についてはそのまま、トリネキサパック溶出画分についてはさらにシリカゲルミニカラムで精製した後、それぞれをHPLC(UV)で測定し、LC/MSで確認する方法である。
10.参考文献
1) 平成12年環境庁告示第32号「トリネキサパックエチル試験法」
2) 上路ら編著「2002年版残留農薬分析法」p.512―514、ソフトサイエンス社(2001)
11.類型
C
トリフルミゾール試験法(農産物)
1.分析対象化合物
トリフルミゾール,トリフルミゾール代謝物〔4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジン〕
2.装置
紫外分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフを用いる。
3.試薬、試液
次に示すもの以外は,総則の3に示すものを用いる。
カラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム カラムクロマトグラフィー用に製造した合成ケイ酸マグネシウム(粒径150~250μm)を130°で12時間以上加熱した後,デシケーター中で放冷する。これに対して水を5%加える。
0.01mol/l炭酸塩緩衝液 0.2mol/l炭酸ナトリウム溶液0.8ml及び0.2mol/l炭酸水素ナトリウム溶液9.2mlに水を加えて200mlとする。
トリフルミゾール及び4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジン標準溶液 トリフルミゾール10mg及び4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジン10mgをアセトニトリルに溶かして100mlとする。
0.05mol/lリン酸塩緩衝液 0.5mol/lリン酸一カリウム溶液55.4ml及び0.5mol/lリン酸二ナトリウム溶液48.2mlに水を加えて1,000mlとする(pH6.8)。
4.標準品
トリフルミゾール 本品はトリフルミゾール99%以上を含む。
融点 本品の融点は63.5°である。
4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジン 本品は4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジン98%以上を含む。
5.試験溶液の調製
a 抽出法
(1) 穀類及び種実類の場合
検体を420μmの標準網ふるいを通るように粉砕した後,その20.0gを量り採り,水40mlを加え,2時間放置する。
これにメタノール100mlを加え,振とう機を用いて30分間激しく振り混ぜた後,静置し,ケイソウ土を1cmの厚さに敷いたろ紙を用いて吸引ろ過し,ろ液を500mlの分液漏斗に移す。ろ紙上の残留物を採り,メタノール50mlを加え,振とう機を用いて30分間激しく振り混ぜた後,上記と同様に操作して,ろ液を上記の500mlの分液漏斗に合わせる。
これに5%塩化ナトリウム溶液200ml及びジクロロメタン(特級)100mlを加え,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,ジクロロメタン層を300mlの三角フラスコに移す。水層にジクロロメタン(特級)100mlを加え,上記と同様に操作して,ジクロロメタン層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え,時々振り混ぜながら15分間放置した後,すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いでジクロロメタン(特級)20mlを用いて三角フラスコを洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗う。洗液をその減圧濃縮器中に合わせ,40°以下でジクロロメタンを除去する。この残留物にアセトン及びn―ヘキサンの混液(1:19)5mlを加えて溶かす。
(2) 果実,野菜及び抹茶の場合
果実及び野菜の場合は,検体約1kgを精密に量り,必要に応じ適量の水を量つて加え,細切均一化した後,検体20.0gに相当する量を量り採り,0.05mol/lリン酸塩緩衝液20mlを加える。
抹茶の場合は,検体20.0gを量り採り,0.05mol/lリン酸塩緩衝液20mlを加える。
これにメタノール100mlを加え,振とう機を用いて30分間激しく振り混ぜた後,静置し,ケイソウ土を1cmの厚さに敷いたろ紙を用いて吸引ろ過し,ろ液を500mlの分液漏斗に移す。ろ紙上の残留物を採り,メタノール50mlを加え,振とう機を用いて30分間激しく振り混ぜた後,上記と同様に操作して,ろ液を上記の500mlの分液漏斗に合わせる。この液のpHを測定し,酸性であれば0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液を用いてpH7付近に調整する。
これに5%塩化ナトリウム溶液200ml及びジクロロメタン(特級)100mlを加え,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,ジクロロメタン層を300mlの三角フラスコに移す。水層にジクロロメタン(特級)100mlを加え,上記と同様に操作して,ジクロロメタン層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え,時々振り混ぜながら15分間放置した後,すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いでジクロロメタン(特級)20mlを用いて三角フラスコを洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗う。洗液をその減圧濃縮器中に合わせ,40°以下でジクロロメタンを除去する。この残留物にアセトン及びn―ヘキサンの混液(1:19)5mlを加えて溶かす。
(3) 抹茶以外の茶の場合
検体4.00gを100°の水240mlに浸し,室温で5分間放置した後,ろ過する。オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(360mg)に,アセトニトリル5ml及び水5mlを注入し,流出液は捨てる。このカラムに上記のろ液30mlを注入した後,水10ml,次いでアセトニトリル及び水の混液(3:7)10mlを注入し,流出液は捨てる。続いてアセトニトリル及び水の混液(4:1)5mlを注入し,流出液を採り,これを試験溶液とする(b 精製法による操作は必要ない。)。
b 精製法
内径15mm,長さ300mmのクロマトグラフ管に,カラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム10gをアセトン及びn―ヘキサンの混液(1:19)に懸濁したもの,次いでその上に無水硫酸ナトリウム約5gを入れ,カラムの上端に少量のアセトン及びn―ヘキサンの混液(1:19)が残る程度までアセトン及びn―ヘキサンの混液(1:19)を流出させる。このカラムにa 抽出法で得られた溶液を注入した後,アセトン及びn―ヘキサンの混液(1:19)50mlを注入し,流出液は捨てる。次にアセトン及びn―ヘキサンの混液(1:9)100mlを注入し,最初の流出液40mlを200mlの三角フラスコ(Ⅰ)に採り,次の流出液60mlを200mlの三角フラスコ(Ⅱ)に採る。各流出液をそれぞれすり合わせ減圧濃縮器中に移し,40°以下でアセトン及びn―ヘキサンを除去する。それぞれの残留物にアセトニトリルを加えて溶かし,正確に10mlとして,前者は,4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジンの試験溶液とし,後者はトリフルミゾールの試験溶液とする。
4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジンの試験溶液を5.操作法のa 定性試験に準じて試験し,試験溶液中の不純物のため試験が困難な場合は次の操作を行う。
三角フラスコ(Ⅰ)に採った流出液の残留物にジクロロメタン(特級)100mlを加えて溶かし,300mlの分液漏斗(Ⅰ)に移す。これに1mol/l塩酸50mlを加え,よく振り混ぜた後,静置し,水層を300mlの分液漏斗(Ⅱ)に移す。ジクロロメタン層に1mol/l塩酸50mlを加え,上記と同様に操作して,水層を分液漏斗(Ⅱ)に合わせる。これに10mol/l水酸化ナトリウム溶液11mlを加え,次いでジクロロメタン(特級)50mlを加え,よく振り混ぜた後,静置し,ジクロロメタン層を200mlの三角フラスコに移す。水層にジクロロメタン(特級)50mlを加え,上記と同様に操作して,ジクロロメタン層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え,時々振り混ぜながら15分間放置した後,すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いで少量のジクロロメタン(特級)を用いて三角フラスコを洗い,洗液をその減圧濃縮器中に合わせ,40°以下でジクロロメタンを除去する。この残留物にアセトニトリルを加えて溶かし,正確に10mlとして,これを4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジンの試験溶液とする。
6.操作法
a 定性試験
次の操作条件で試験を行う。試験結果は標準品と一致しなければならない。
操作条件
カラム充てん剤 オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)を用いる。
クロマトグラフ管 内径2~5mm,長さ200~500mmのステンレス管を用いる。
カラム温度 40°
検出器 波長238nmで操作する。
移動相 アセトニトリル,0.01mol/l炭酸塩緩衝液及び水の混液(7:1:2)に対して4%リン酸を加え、pH9.0に調整したものを用いる。トリフルミゾールの試験を行う場合は,トリフルミゾールが約10分で流出する流速に調整する。4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジンの試験を行う場合は,4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジンが約6分で流出する流速に調整する。
b 定量試験
a 定性試験と同様の操作条件で得られた試験結果に基づき,トリフルミゾール及び4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジンのそれぞれについてピーク高法又はピーク面積法により定量を行い,トリフルミゾール及び4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジンの含量を求め,次式により,4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジンを含むトリフルミゾールの含量を求める。
トリフルミゾール(4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジンを含む。)の含量(ppm)=A+B×1.17
A:トリフルミゾールの含量(ppm)
B:4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジンの含量(ppm)
7.定量限界
0.05mg/kg
8.留意事項
トリフルミゾールは、トリフルミゾール及びその代謝物である4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジンのそれぞれについて定量を行い、4―クロロ―α,α,α―トリフルオロ―N―(1―アミノ―2―プロポキシエチリデン)―o―トルイジンについてはその含量に係数を乗じてトリフルミゾールの含量に換算し、これらの和を分析値とすること。
9.参考文献
なし
10.類型
A
トリブロムサラン及びビチオノール試験法(畜水産物)
1.分析対象化合物
農薬等の成分である物質 |
分析対象化合物 |
トリブロムサラン |
トリブロムサラン |
ビチオノール |
ビチオノール |
2.装置
液体クロマトグラフ・タンデム質量分析計(LC/MS/MS)
3.試薬、試液
次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。
アセトニトリル 液体クロマトグラフ用に製造したものを用いる。
水 液体クロマトグラフ用に製造したものを用いる。
トリブロムサラン標準品 本品はトリブロムサラン98.0%以上を含み、融点は227~228℃である。
ビチオノール標準品 本品はビチオノール98.0%以上を含み、融点は184~187℃である。
4.試験溶液調製法
1) 乳の場合
試料5.0gを量り採り、アセトニトリル20mL及びアセトニトリル飽和n―ヘキサン20mLを加えてホモジナイズした後、毎分3,000回転で5分間遠心分離する。アセトニトリル層及びn―ヘキサン層を綿栓ろ過して分液ロートに移し、アセトニトリル層を採る。これにn―プロパノール10mLを加え40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトニトリル1mLを加えて溶解した後、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過して、これを試験溶液とする。
2) 筋肉、脂肪、肝臓、腎臓及びその他の食用部分の場合
試料5.0gを量り採り、1mol/L塩酸10mL及び酢酸エチル50mLを加えてホモジナイズした後、毎分3,000回転で5分間遠心分離し、酢酸エチル層をすり合わせ減圧濃縮器中に採る。残留物に酢酸エチル20mLを加えて5分間激しく振り混ぜた後、上記と同様に遠心分離し、得られた酢酸エチル層をその減圧濃縮器中に合わせ、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトニトリル20mL及びアセトニトリル飽和n―ヘキサン20mLを加え5分間激しく振り混ぜた後、アセトニトリル層を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトニトリル1.0mLを加えて溶解した後、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過して、これを試験溶液とする。
5.検量線の作成
トリブロムサラン標準品について、0.006~0.1mg/Lのアセトニトリル溶液を数点調製する。
ビチオノール標準品について、0.002~0.1mg/Lのアセトニトリル溶液を数点調製する。
それぞれLC/MS/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。
6.定量
試験溶液をLC/MS/MSに注入し、5の検量線でトリブロムサラン及びビチオノールの含量を求める。
7.確認試験
LC/MS/MSにより確認する。
8.測定条件
LC/MS/MS
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル 内径2.0~6.0mm、長さ50~250mm、粒子径2~5μm
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル、水及びギ酸(500:500:1)混液
主なイオン(m/z):ESI(-)トリブロムサラン251/448、ビチオノール 161/355
保持時間の目安:7~10分
9.定量限界
トリブロムサラン 0.005mg/kg
ビチオノール 0.002mg/kg
10.留意事項
1) 試験法の概要
トリブロムサラン及びビチオノールを乳の場合はアセトニトリルで、その他の場合は酢酸エチルで抽出し、アセトニトリル/ヘキサン分配により脱脂した後、それぞれLC/MS/MSで測定する方法である。
2) 注意点
試験溶液をLC/MS/MSに注入した際に、ピーク高さ又はピーク面積の増強又は抑制が認められる場合には、以下の操作に準じて定量を行うこと。
試験溶液Ⅰ:4で得られた試験溶液0.1mLに、基準値相当濃度の標準品のアセトニトリル溶液0.1mLを加える。
試験溶液Ⅱ:4で得られた試験溶液0.1mLに、基準値の2倍相当濃度の標準品のアセトニトリル溶液0.1mLを加える。
本試験法において検体5.0gから試験溶液1.0mLが得られるので、基準値相当濃度の標準品のアセトニトリル溶液は、次の通り計算する。
基準値相当濃度(mg/L)=基準値(ppm)×5.0(g)÷1.0(mL)
試験溶液Ⅰ及びⅡをそれぞれHPLCに注入し、ピーク高さ又はピーク面積を求め、次式により含量を計算する。
含量(ppm)=基準値(ppm)×(2a-b)÷(b-a)
a:試験溶液Ⅰのピーク高さ又はピーク面積
b:試験溶液Ⅱのピーク高さ又はピーク面積
含量が基準値の2倍を超える場合は、試験溶液をアセトニトリルで希釈して、基準値相当濃度以上、基準値の2倍相当濃度以下となるように調製した後、試験溶液Ⅰ及びⅡを調製し、上記と同様に操作して求めた含量に希釈倍率を乗じて、希釈前の含量を求める。
11.参考文献
なし
12.類型
C
トルトラズリル試験法(畜水産物)
1.分析対象化合物
トルトラズリル
トルトラズリルスルホキシド
トルトラズリルスルホン
2.装置
液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS)又は液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)
3.試薬、試液
次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。
アセトニトリル 高速液体クロマトグラフ用に製造されたものを用いる。
水 高速液体クロマトグラフ用に製造されたものを用いる。
強塩基性陰イオン交換樹脂ミニカラム(150mg) 内径12~13mmのポリエチレン製のカラム管に強塩基性陰イオン交換樹脂150mgを充てんしたもの又はこれと同等の分離特性を有するものを用いる。
トルトラズリル標準品 純度が明らかなもの。
トルトラズリルスルホキシド標準品 純度が明らかなもの。
トルトラズリルスルホン標準品 純度が明らかなもの。
4.試験溶液の調製
1)抽出法
①脂肪の場合
試料5.00gを量り採り、アセトニトリル飽和n―ヘキサン20mL及び無水硫酸ナトリウム10gを加え、ホモジナイズした後、アセトニトリル20mLを加え、振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後、毎分3,000回転で5分間遠心分離する。アセトニトリル及びn―ヘキサン層を採り、振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後、静置し、アセトニトリル層を採る。遠心分離した残留物にアセトニトリル20mLを加え、振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後、毎分3,000回転で5分間遠心分離する。アセトニトリル層を採り、先に分離したn―ヘキサン層を加え、振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後、静置し、アセトニトリル層を、先に分離したアセトニトリル層に合わせ、アセトニトリルを加えて50mLとする。この溶液10mLを、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。残留物に1mol/Lアンモニア水及びメタノールの混液(1:1)10mLを加えて溶かす。
②脂肪以外の場合
試料5.00gを量り採り、アセトニトリル20mL及び無水硫酸ナトリウム10gを加え、ホモジナイズした後、毎分3,000回転で5分間遠心分離する。アセトニトリル層にアセトニトリル飽和n―ヘキサン20mLを加え、振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後、静置し、アセトニトリル層を採る。遠心分離した残留物にアセトニトリル20mLを加え、振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後、毎分3,000回転で5分間遠心分離する。アセトニトリル層を採り、先に分離したn―ヘキサン層を加え、振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後、静置し、アセトニトリル層を、先に分離したアセトニトリル層に合わせ、アセトニトリルを加えて50mLとする。この溶液10mLを、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。残留物に1mol/Lアンモニア水及びメタノールの混液(1:1)10mLを加えて溶かす。
2)精製法
強塩基性陰イオン交換樹脂ミニカラム(150mg)に、メタノール5mL及び水5mLを順次注入し、流出液は捨てる。このカラムに1)抽出法で得られた溶液を注入した後、メタノール5mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに2vol%ギ酸・メタノール溶液10mLを注入し、溶出液を採り、40℃以下でギ酸及びメタノールを除去する。この残留物にアセトニトリル1.0mLを加えて溶かし、これを試験溶液とする。
5.検量線の作成
各標準品のトルトラズリルとして10mg/100mLアセトニトリル溶液を調製し、さらにアセトニトリルで希釈してトルトラズリルとして0.001~0.1mg/Lの溶液を数点調製する。それぞれLC/MS又はLC/MS/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。
6.定量
試験溶液をLC/MS又はLC/MS/MSに注入し、5.の検量線で各化合物のトルトラズリルとしての含量を求め、その和を求める。
7.確認試験
LC/MS又はLC/MS/MSにより確認する。
8.測定条件
LC/MS
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル 内径2.0~6.0mm、長さ100~250mm、粒子径2~5μm
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル及び0.1%ギ酸溶液混液(1:99)から(1:0)までの濃度勾配を35分間で行い、(1:0)で10分間保持する。
イオン化モード:ESI(-)
主なイオン(m/z):
424(トルトラズリル)
440(トルトラズリルスルホキシド)
456(トルトラズリルスルホン)
保持時間の目安:
35分(トルトラズリル)
30分(トルトラズリルスルホキシド)
33分(トルトラズリルスルホン)
9.定量限界
各化合物もトルトラズリルとして0.001mg/kg
10.留意事項
1)試験法の概要
トルトラズリル、トルトラズリルスルホキシド及びトルトラズリルスルホンを試料からアセトニトリルで抽出し、アセトニトリル/ヘキサン分配後、強塩基性陰イオン交換樹脂ミニカラムにより精製後、LC/MSで測定及び確認する方法である。
2)注意点
①トルトラズリルスルホキシド10.38mg、トルトラズリルスルホン10.75mgが、トルトラズリル10.0mgに相当する。
②試験溶液の調製中に、トルトラズリルスルホキシドの一部がトルトラズリルスルホンに酸化されることがある。
③LC/MSにおける標準溶液及び試験溶液の標準的な注入量は、内径3.0mmのカラムにおいて10μLであるが、カラム及び装置により最適な注入量が異なる場合があるので、必要に応じて最適注入量、移動相条件等を検討すること。
④LC/MSにおける測定条件は用いる装置により、最適なイオン化方法、生成するイオンが異なる場合があるので、装置ごとに最適条件を検討すること。
⑤測定値が検量線の上限を超える場合は、試験溶液をアセトニトリルで適宜希釈して、検量線の範囲内で定量すること。
11.参考文献
なし。
12.類型
C
トルフェンピラド試験法(農産物)
1.分析対象化合物
トルフェンピラド
2.装置
アルカリ熱イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(GC(FTD))又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ(GC(NPD))
ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)
3.試薬・試液
次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。
トルフェンピラド標準品 本品はトルフェンピラド99%以上を含み、融点は87~89℃である。
4.試験溶液の調製
1) 抽出
(1) 果実及び野菜の場合
試料20.0gを量り採り、アセトン100mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトン50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、40℃以下で約30mLに濃縮する。これに10%塩化ナトリウム溶液100mLを加え、n―ヘキサン100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトンを加えて溶解し、正確に20mLとする。
(2) 茶の場合
試料5.0gを量り採り、水20mLを加え、2時間放置する。これにアセトン100mLを加え、3分間ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトン50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、40℃以下で約30mLに濃縮する。これに10%塩化ナトリウム溶液100mLを加え、n―ヘキサン100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトンを加えて溶解し、正確に10mLとする。
2) 精製
(1) 活性炭カラムクロマトグラフィー
活性炭ミニカラム(250mg)にアセトン10mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに1)で得られた溶液(果実及び野菜の場合は2ml、茶の場合は4ml)を注入した後、アセトン35mLを注入する。全溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトン・n―ヘキサン混液(1:99)5mLを加えて溶かす。
(2) 合成ケイ酸マグネシウムカラムクロマトグラフィー
クロマトグラフ管(内径15mm)に、カラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム5gをn―ヘキサンに懸濁させて充てんし、上に無水硫酸ナトリウム5gを積層する。このカラムに、(1)で得られた溶液を注入した後、アセトン・n―ヘキサン混液(1:99)100mLを注入し、流出液は捨てる。次いでアセトン・n―ヘキサン混液(1:19)100mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトンに溶解し、正確に2mLとしたものを試験溶液とする。
5.検量線の作成
トルフェンピラド標準品の0.01~0.5mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれ2μLをGCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。
6.定量
試験溶液2μLをGCに注入し、5の検量線でトルフェンピラドの含量を求める。
7.測定条件
1) GC