アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○非血縁者間骨髄移植の実施に関する指針について

(平成15年12月19日)

(健発第1219005号)

(財団法人骨髄移植推進財団理事長あて厚生労働省健康局長通知)

今般、我が国における骨髄バンク事業の一層の推進に資するため、別紙のとおり「非血縁者間骨髄移植の実施に関する指針」を定め、平成15年1月1日から適用することとしたので、これを十分参照の上、引き続き事業の実施に御協力いただくとともに、関係機関、関係団体等に対する周知方につき御配慮願いたい。

(別紙)

非血縁者間骨髄移植等の実施に関する指針

第1 目的

○ 白血病、再生不良性貧血、先天性免疫不全症等の血液難病の患者にとって、骨髄移植又は末梢血幹細胞移植(以下「骨髄移植等」という。)は有効な治療法となっているが、移植を受けるためには、患者と白血球の型(HLA型)が適合する提供者(以下「ドナー」という。)から骨髄又は末梢血幹細胞(以下「骨髄等」という。)の提供を受けることが前提となる。しかし、HLA型が適合する確率は、兄弟姉妹間においては4分の1、それ以外では数百分の1から数万分の1といわれており、血縁者間でドナーが見つからない患者が移植を受けるためには、患者とHLA型の適合する非血縁者のドナーを探しだし骨髄等の提供を受ける必要がある。

○ 非血縁者間における骨髄移植等を必要とする患者(以下「移植希望患者」という。)が移植を受けることができるようにするためには、骨髄等の提供・移植について理解した上で善意の骨髄等の提供を行うことを希望し、データバンクに登録する提供希望登録者(以下「ドナー登録者」という。)を広く募集するとともに、患者に適合するドナーから安全かつ適切に骨髄等が採取され移植希望患者へ提供されるようにするため、ドナー登録者、移植希望患者、移植実施施設及び骨髄等の採取施設の間の連絡調整等の業務を行う機関が不可欠となる。

○ このため、国民の理解と協力を得ながら非血縁者間における骨髄移植等が推進されるよう、厚生労働省、財団法人骨髄移植推進財団(以下「財団」という。)、日本赤十字社、地方公共団体の関係機関が各々役割を分担しながら連携して、骨髄等の提供・移植に係る普及啓発、ドナー登録者の募集、ドナー登録者としての登録(以下「ドナー登録」という。)の受付、ドナー登録者のHLA型等のデータの管理、移植希望患者登録受付並びに連絡調整業務等からなる骨髄バンク事業を実施するものとする。

○ 本指針は、この骨髄バンク事業の基本的な考え方や手続の流れ等について確認し、関係者の役割について明確化することにより、非血縁者間における骨髄移植等を成立させるために必要な骨髄バンク事業の一層の推進に資することを目的とするものである。

第2 非血縁者間における骨髄移植等の実施体制を整備するに当たっての基本的考え方

1 非血縁者間における骨髄移植等のための骨髄等の提供は、骨髄等の提供・移植についての十分な説明を受け、理解した者から、善意かつ任意により行われるものでなければならず、また骨髄等の提供に耐えうる健康状態にある者から安全に行われなければならない。

2 骨髄等の移植を必要とする患者が移植を受ける機会は、公平に与えられるように配慮されなければならない。

また、骨髄等の提供が善意によるものであることにかんがみ、骨髄等の提供・移植に係る普及啓発、ドナー登録者の募集、ドナー登録の受付、ドナー登録者のHLA型等のデータの管理、移植希望患者登録受付、財団に登録した移植希望患者(以下「登録患者」という。)に適合するドナー登録者の検索並びに関係者の間の連絡調整業務等、骨髄等の提供・移植の実現に向けた一連の業務(以下「あっせん業務」という。)は、適切に行われなければならない。

このため、あっせん業務については、全国一元的に、営利を目的としない機関において、一定の手順に従って実施することとし、具体的には、国、地方公共団体及び日本赤十字社の協力の下、財団において全国一元的に行うものとする。

3 非血縁者間における骨髄移植等を成立させるためには、善意かつ任意で骨髄等の提供を行うドナーの存在が前提となるものであることから、財団、国、地方公共団体は、関係団体等の協力を得て、国民、医療関係者等に対し、骨髄等の提供・移植に関する普及啓発に努めるものとする。

第3 非血縁者間における骨髄移植等を成立させるためのあっせんの具体的な手続

1 普及啓発

(1) 普及啓発

財団、国、地方公共団体においては、日本赤十字社等関係団体の協力を得て、①財団の作成した骨髄等の提供・移植に関するパンフレット、リーフレット及びポスター等について、保健所、日本赤十字社の血液センター等の固定ドナー登録窓口や、集団登録会の会場において広く一般に配布するとともに、②インターネットホームページや新聞、ラジオ、テレビ等のマスメディアの活用を含め、あらゆる機会をとらえて登録窓口の案内を始めとする骨髄移植等に関する普及啓発活動を行うものとする。

(2) 国による普及啓発

国においては、上記第3の1(1)の普及啓発のためのパンフレットの作成等について補助を行うとともに、関係者への協力依頼等、必要に応じ骨髄移植等の普及のための方策を講ずるよう、努めるものとする。

2 ドナー登録者の確保・データ管理

(1) ドナー登録の受付業務

ドナー登録は、都道府県・保健所を設置する市・特別区(以下「都道府県等」という。)の保健所及び日本赤十字社の血液センター・献血ルーム等に開設する固定窓口及び集団登録会等において受け付けるものとする。

(2) ドナー登録者に関するデータの管理・適合ドナー登録者の検索

日本赤十字社は、各登録窓口から搬送されたドナー登録希望者の血液検体によりHLA検査を行い、ドナー登録者のHLA型等の情報をデータバンクに登録し、厳密に管理するとともに、財団からの依頼を受け、財団に登録された患者とHLA型が適合するドナー登録者の検索を行い、その結果について財団に連絡するものとする。

3 財団における患者登録及びコーディネート業務等

(1) 財団における患者登録及びコーディネート業務の標準的な手順について

ア 患者登録

医師は、患者の治療上、財団に登録して骨髄移植等のあっせんを受けることが必要であると判断した場合には、財団に対し、患者の同意書を付して当該患者の登録申請を行う。

財団は、医師からの登録申請を受け、必要に応じ当該患者の移植適応について審査した上で患者登録を行い、その結果を当該医師(以下「登録責任医師」という。)に対して通知する。

イ 日本赤十字社に対するHLA型適合ドナー検索依頼

財団は、登録を受理した後、登録患者に適合するドナー登録者の検索を日本赤十字社に対して依頼する。

ウ コーディネート

財団は、登録患者に適合するドナー登録者(以下「ドナー候補者」という。)につき日本赤十字社から連絡を受けた後、登録責任医師に対してドナー候補者の検索結果を通知する。

登録責任医師は、検索されたドナー候補者について、登録患者又はその家族と協議の上、骨髄等の提供に向けた調整を行うことを依頼するか判断し、財団に連絡する。

ドナー候補者について骨髄等の提供に向けた調整を行うことの依頼があった場合、財団は、当該ドナー候補者に対する骨髄等の提供・移植に関する説明、HLA型の適合等の確認検査を実施し、その結果を登録責任医師に通知する。

登録責任医師は、財団からの検査結果等の連絡を受け、複数のドナー候補者がいる場合には最終的にドナー候補者1名を選定する。

財団は、最終的に選定されたドナー候補者について、最終的な提供意思の確認を行い、提供意思が確認された場合には、採取施設における骨髄等の採取及び移植実施施設までの骨髄等の搬送に向けた関係者間の調整を行う。

また、財団は、骨髄等の採取実施後、ドナーに対し電話調査等を行い、健康上の問題がなく日常生活に復帰していることを確認する。

(2) ドナー傷害保険

財団は、ドナーに身体障害等が生じる可能性が否定できないことにかんがみ、ドナーについての有害事象発生時に迅速な補償を行うため、傷害保険に加入するものとする。

(3) 国際協力について

医師は、海外の骨髄バンクから骨髄等の提供を受ける場合についても、財団を窓口として患者登録を行うこととする。

また、海外の骨髄バンクから、国内のドナー登録者とのコーディネートを依頼されることがあるが、その場合においても、上記第3の3(1)の手順に従い、業務を行うこととする。

(4) 骨髄等の移植に関する統計調査等の実施

財団は、その業務に係る調査を実施し、その結果について広報誌やホームページ等を用いて公表するよう努めるものとする。

(5) 記録の保存

財団は、上記第3の3(1)から(3)の業務の実施に関して、ドナーの提供意思確認に係る記録や連絡調整の記録等の書類を、適宜保存しなければならない。

(6) 患者負担について

① 患者負担金の徴収について

財団は、骨髄等の移植を成立させるために必要不可欠な業務を行うために直接必要な経費について、登録患者への費用負担を求めることができるものとする。

② 患者負担金の額の決定と変更について

財団は、患者から患者負担金を徴収するに当たっては、その額を厚生労働省健康局長に届け出なければならない。また、患者負担金の額を変更する際にも、事前に厚生労働省健康局長に届け出なければならない。

厚生労働省においては、対象とされている経費の内容及び患者負担額について確認した上で、問題がある場合には、財団に対し必要な指導を行うものとする。

4 関係者間の連携の確保

各都道府県等においては、関係者間の連携のもと、地域の実情に応じた事業が行われるよう、都道府県等、財団、日本赤十字社、骨髄等の移植医療の専門家、関係医療機関の医師及びボランティア等の関係者からなる連絡協議会を設置するなど、関係者間の情報や意見の交換ができる場を設けることが望ましい。

5 個人情報の保護

ドナー登録者の確保及びデータの管理業務並びにあっせん業務に関わる者は、正当な理由がなく、事業を実施する上で知り得た人の秘密を漏らしてはならない。

また、移植医療関係者は、ドナー登録者、ドナー及び登録患者等の個人情報の保護に努めなければならない。特に、移植医療の特殊性にかんがみ、移植前又は移植後のいずれの段階においても、移植希望患者と当該移植希望患者に係るドナー候補者又はドナーに関する情報が相互に伝わることのないよう、細心の注意を払うものとする。

第4 骨髄移植等の安全性確保に係る基準

ドナーの安全確保及び移植される骨髄等の安全性・有効性の確保を図る観点から、財団は、厚生労働省が別途定めるところに従い、ドナー適格性判定等に関する基準により業務を行うこととする。