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○臓器提供者(ドナー)適応基準及び移植希望者(レシピエント)選択基準の改正について

(平成13年7月30日)

(健発第798号)

(社団法人日本臓器移植ネットワーク理事長あて厚生労働省健康局長通知)

標記基準については、「臓器提供者(ドナー)適応基準及び移植希望者(レシピエント)選択基準について」(平成9年10月16日健医発第1371号)により、実施されているところであるが、その見直しについては、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会の各作業班においてそれぞれ検討がなされ、同委員会において、これら作業班からの報告が、一部変更を加えた上で了承されたところである。

同委員会における了承を踏まえ、今般、これらの基準を一部改正し、別添1及び別添2のとおりとしたので、よろしくお取り計らい願いたい。

なお、各臓器の臓器提供者(ドナー)適応基準に記載されている「クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑い」の取扱いについては、同委員会における了承を踏まえ、当面の間の予防的措置として、別紙のとおり献血における採血者の制限と同様の扱いをすることとなったので、遵守されたい。

別添1

<心臓>臓器提供者(ドナー)適応基準

1.以下の疾患又は状態を伴わないこととする。

(1) 全身性の活動性感染症

(2) HIV抗体、HTLV―1抗体、HBs抗原、HCV抗体などが陽性

(3) クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑い

(4) 悪性腫瘍(原発性脳腫瘍及び治癒したと考えられるものを除く。)

2.以下の疾患又は状態を伴う場合には、移植の適応を慎重に検討する。

(1) 心疾患の既往

(2) 心電図、心エコー図などによる心疾患の所見

(3) 大量のカテコラミン剤の使用(例:ドパミン10μg/kg/minにても血行動態の維持が困難な場合)

3.年齢:50歳以下が望ましい。

付記 上記の基準は適宜見直されること。

<肺>臓器提供者(ドナー)適応基準

1.以下の疾患又は状態を伴わないこととする。

(1) 全身性の活動性感染症

(2) HIV抗体、HTLV―1抗体、HBs抗原、HCV抗体などが陽性

(3) クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑い

(4) 悪性腫瘍(原発性脳腫瘍及び治癒したと考えられるものを除く。)

2.臨床的に肺疾患が存在する場合には、移植の適応を慎重に検討する。

3.肺の機能が良好であることが望ましい。

(1) 肺コンプライアンスが保たれている(注1)

(2) 肺の酸素化能が維持されている(注2)

4.年齢:70歳以下が望ましい。

注1:最大気道内圧<30cmH20(1回換気量15ml/kg,PEEP=5cmH20の条件下)

注2:Pa02>300Torr(FI02=1.0,PEEP=5cmH20の条件下)又はPa02/FI02>250~300Torr(PEEP=5cmH20の条件下)

付記 上記の基準は適宜見直されること。

<心肺同時>臓器提供者(ドナー)適応基準

1.以下の疾患又は状態を伴わないこととする。

(1) 全身性の活動性感染症

(2) HIV抗体、HTLV―1抗体、HBs抗原、HCV抗体などが陽性

(3) クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑い

(4) 悪性腫瘍(原発性脳腫瘍及び治癒したと考えられるものを除く。)

2.以下の疾患又は状態を伴う場合には、移植の適応を慎重に検討する。

(1) 心疾患の既往

(2) 心電図、心エコー図などよる心疾患の所見

(3) 大量のカテコラミン剤の使用(例:ドパミン10μg/kg/minにても血行動態の維持が困難な場合)

3.臨床的に肺疾患が存在する場合には、移植の適応を慎重に検討する。

4.肺の機能が良好であることが望ましい。

(1) 肺コンプライアンスが保たれている(注1)

(2) 肺の酸素化能が維持されている(注2)

5.年齢:50歳以下が望ましい。

注1:最大気道内圧<30cmH20(1回換気量15ml/kg,PEEP=5cmH20の条件下)

注2:Pa02>300Torr(FI02=1.0,PEEP=5cmH20の条件下)又はPa02/FI02>250~300Torr(PEEP=5cmH20の条件下)

付記 上記の基準は適宜見直されること。

<肝臓>臓器提供者(ドナー)適応基準

1.以下の疾患又は状態を伴わないこととする。

(1) 全身性の活動性感染症

(2) HIV抗体、HTLV―1抗体、HBs抗原などが陽性

(3) クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑い

(4) 悪性腫瘍(原発性脳腫瘍及び治癒したと考えられるものを除く。)

2.以下の疾患又は状態が存在する場合は、慎重に適応を決定する。

(1) 病理組織学的な肝臓の異常

(2) 生化学的肝機能検査の異常

(3) 1週間以内の腹部、消化管手術及び細菌感染を伴う腹部外傷

(4) 胆道系手術の既往

(5) 重症糖尿病

(6) 過度の肥満

(7) 重症の熱傷

(8) 長期の低酸素状態

(9) 高度の高血圧又は長期の低血圧

(10) HCV抗体陽性

備考) 摘出されたドナー肝については、移植前に肉眼的、組織学的に観察し、最終的に適応を検討することが望ましい(移植担当医の判断に委ねる)。

付記 上記の基準は適宜見直されること。

<腎臓>臓器提供者(ドナー)適応基準

1.以下の疾患又は状態を伴わないこととする。

(1) 全身性の活動性感染症

(2) HIV抗体、HTLV―1抗体、HBs抗原などが陽性

(3) クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑い

(4) 悪性腫瘍(原発性脳腫瘍及び治癒したと考えられるものを除く。)

2.以下の疾患又は状態が存在する場合は、慎重に適応を決定する。

(1) 血液生化学、尿所見等による器質的腎疾患の存在

(2) HCV抗体陽性

3.年齢:70歳以下が望ましい。

付記:上記の基準は適宜見直されること。

<膵臓>臓器提供者(ドナー)適応基準(脳死下)

1.以下の疾患又は状態を伴わないこととする。

(1) 全身性の活動生感染症

(2) HIV抗体、HTLV―1抗体、HBs抗原、HCV抗体などが陽性

(3) クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑い

(4) 悪性腫瘍(原発性脳腫瘍及び治癒したと考えられるものを除く。)

2.以下の疾患又は状態を伴う場合には、移植の適応を慎重に検討する。

(1) 細菌感染を伴う腹部外傷

(2) 膵の機能的又は器質的障害

(3) 糖尿病の既往

3.年齢:60歳以下が望ましい。

付記:上記の基準は適宜見直されること。

<膵臓>臓器提供者(ドナー)適応基準(心停止下)

1.以下の疾患又は状態を伴わないこととする。

(1) 全身性の活動性感染症

(2) HIV抗体、HTLV―1抗体、HBs抗原、HCV抗体などが陽性

(3) クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑い

(4) 悪性腫瘍(原発性脳腫瘍及び治癒したと考えられるものを除く。)

2.以下の疾患又は状態を伴う場合には、移植の適応を慎重に検討する。

(1) 細菌感染を伴う腹部外傷

(2) 膵の機能的又は器質的障害

(3) 糖尿病の既往

(4) 一過性の心停止

(5) 低血圧

(6) 低酸素血症

(7) 無尿

(8) 高Na血症

(9) ノルアドレナリンや15μg/kg/分以上のドーパミンの投与

(10) 膵機能、肝機能の異常値

3.年齢:40歳以下が望ましい。

付記:上記の基準は適宜見直されること。

<小腸>臓器提供者(ドナー)適応基準

1.以下の疾患又は状態を伴わないこととする。

(1) 全身性の活動性感染症

(2) HIV抗体、HTLV―1抗体、HBs抗原などが陽性

(3) クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑い

(4) 悪性腫瘍(原発性脳腫瘍及び治癒したと考えられるものを除く。)

2.以下の疾患又は状態が存在する場合は、慎重に適応を決定する。

(1) 小腸疾患又はその既往

(2) 細菌感染を伴う腹部外傷

(3) HCV抗体陽性

3.年齢:60歳以下が望ましい。

付記 上記の基準は適宜見直されること

別添2

心臓移植希望者(レシピエント)選択基準

1.適合条件

(1) ABO式血液型

ABO式血液型の一致(identical)だけでなく、適合(compatible)の待機者も候補者として考慮する。

(2) 体重(サイズ)

体重差は-20%~30%であることが望ましい。

ただし、移植希望者(レシピエント)が小児である場合は、この限りでない。

(3) 前感作抗体

リンパ球直接交差試験(ダイレクト・クロスマッチテスト)を実施し、抗T細胞抗体が陰性であることを確認する。

パネルテストが陰性の場合、リンパ球直接交差試験(ダイレクト・クロスマッチテスト)は省略することができる。

(4) CMV抗体

CMV抗体陰性の移植希望者(レシピエント)に対しては、CMV抗体陰性の臓器提供者(ドナー)が望ましい。

(5) HLA型

当面、選択基準にしないが、必ず検査し、登録する。

2.優先順位

適合条件に合致する移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合には、優先順位は、以下の順に勘案して決定する。

(1) 虚血許容時間

虚血許容時間を最優先する。臓器提供者(ドナー)の心臓を摘出してから4時間以内に血流再開することを第一条件とする。

(ただし、全国一元的に臓器をあっせんする体制(ネットワーク)が組織的にも機能的にも、ブロックで分けられる場合には、虚血許容時間内であれば、ブロックを中心に考える(後述する具体的選択法を参照)。)

(2) 医学的緊急度

定義:

Status1:次の(ア)から(エ)までの状態のいずれかに該当すること。

(ア) 補助人工心臓を必要とする状態

(イ) 大動脈内バルーンパンピング(IABP)を必要とする状態

(ウ) 人工呼吸を必要とする状態

(エ) ICU、CCU等の重症室に収容され、かつ、カテコラミン等の強心薬の持続的な点滴投与が必要な状態

Status2:待機中の患者で、上記以外の状態

Status3:Status1、Status2で待機中、除外条件(感染症等)を有する状態のため一時的に待機リストから削除された状態

原則としてStatus1を優先する(後述する具体的選択法を参照)。また、Status3への変更が登録された時点で、選択対象から外れる。除外条件がなくなり、Status1又はStatus2へ再登録された時点から、移植希望者(レシピエント)として選択対象となる。

(3) ABO式血液型

一致を原則とするが、緊急性の高いStatus1の移植希望者(レシピエント)がいない場合や他に一致する移植希望者(レシピエント)がいない場合には、適合者に配分する(後述する具体的選択法を参照)。

(4) 待機期間

以上の条件が全て同一の移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合は、待機期間の長い者を優先する。

○Status1の移植希望者(レシピエント)間では、待機期間はStatus1の延べ日数とする。

○Status2の移植希望者(レシピエント)間では、待機期間は登録日からの延べ日数とする。

3.具体的選択法

(1) ネットワークがブロック化されていない場合

順位*

医学的緊急度

ABO式血液型

1

Status1

一致

2

Status1

適合

3

Status2

一致

4

Status2

適合

*同順位内に複数名の移植希望者(レシピエント)が存在する場合には待機期間の長い者を優先する。

(2) ネットワークが組織的にも機能的にもブロック化された場合

順位*

距離

医学的緊急度

ABO式血液型

1

ブロック内

Status1

一致

2

ブロック内

Status1

適合

3

ブロック内

Status2

一致

4

他ブロック

Status1

一致

5

他ブロック

Status1

適合

6

ブロック内

Status2

適合

7

他ブロック

Status2

一致

8

他ブロック

Status2

適合

*同順位内に複数名の移植希望者(レシピエント)が存在する場合には待機期間の長い者を優先する。

4.その他

将来、Status1の移植希望者(レシピエント)が増加すると、O型の臓器提供者(ドナー)からの臓器が順位2の移植希望者(レシピエント)に配分され、Status2の移植希望者(レシピエント)に配分されない事態が生じることが予想される。この場合はブロック制の再考を含めて、選択基準の見直しをすることとする。

肺移植希望者(レシピエント)選択基準

1.適合条件

(1) ABO式血液型

ABO式血液型の一致(identical)だけでなく、適合(compatible)の待機者も候補者として考慮する。

(2) 肺の大きさ

予測VCD注1)/予測VCR注2)×100の値(%)で判断する。

1) 片肺移植の場合 70~130%

2) 両肺移植の場合 70~130%

注1) 予測VCD:臓器提供者(ドナー)の予測肺活量

注2) 予測VCR:移植希望者(レシピエント)の予測肺活量

予測肺活量の計算式

(男性) 予測肺活量=(27.63―0.112×年齢)×身長(cm)

(女性) 予測肺活量=(21.78―0.101×年齢)×身長(cm)

(3) 前感作抗体

ダイレクト・クロスマッチを実施し、陰性であることを確認する。

パネルテストが陰性の場合、ダイレクト・クロスマッチは省略することができる。

(4) CMV抗体

CMV抗体陰性の移植希望者(レシピエント)に対しては、CMV抗体陰性の臓器提供者(ドナー)が望ましい。

(5) HLA型

当面、選択基準にしないが、必ず検査し、登録する。

2.優先順位

適合条件に合致する移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合には、優先順位は、以下の順に勘案して決定する。

(1) 虚血許容時間

虚血許容時間を最優先する。臓器提供者(ドナー)の肺を摘出してから8時間以内に血流再開することを第一条件とする。

(2) ABO式血液型

ABO式血液型が一致(identica1)する者を適合(compatible)する者より優先する。

(3) 待機期間

(1)、(2)の条件が同一の移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合は、原則として、待機期間の長い患者を優先する。

(4) 術式による優先順位

術式は、片肺移植、両肺移植の2種類とし、第1術式、第2術式の2つまで登録可能とする。

術式による優先順位は次のとおりとする。

1) 臓器提供者(ドナー)の両肺が利用できる場合であり、第1優先順位の選択を行った結果、

① 第1術式に係る両肺移植希望者(レシピエント)が第1優先順位となれば、当該両肺移植希望者(レシピエント)を選択する。

② 第1術式に係る片肺移植希望者(レシピエント)が第1優先順位となれば、第1術式に係る片肺移植希望者(レシピエント)で次の順位に位置する者とそれを分けあうこととする。次順位に位置する第1術式に係る片肺移植希望者(レシピエント)が選択されない場合には、第2術式に係る片肺移植希望者(レシピエント)の中で優先順位の高い者と分け合うこととする。

③ 第1術式に係る片肺移植希望者(レシピエント)が第1優先順位となり、第1術式、第2術式を考慮しても片肺移植希望者(レシピエント)が1名のみである場合、

○ 当該片肺移植希望者(レシピエント)が第2術式として両肺移植を希望していれば、当該移植希望者(レシピエント)を選択し(注1)、

○ 当該片肺移植希望者(レシピエント)が第2術式として両肺移植を希望していなければ、両肺移植希望者(レシピエント)の中で優先順位の高い者を選択する(注2)。

2) 臓器提供者(ドナー)の片肺のみが利用できる場合には、第1術式に係る片肺移植希望者(レシピエント)の中から優先順位の高い者を選択する。第1術式に係る片肺移植希望者(レシピエント)が選択されない場合には、第2術式に係る片肺移植希望者(レシピエント)の中から優先順位の高い者を選択する。

3) 1)、2)の結果、ABO式血液型が一致する移植希望者(レシピエント)が選択されない場合、虚血許容時間内にあり、ABO式血液型が適合する者について、1)、2)と同様の手順により移植希望者(レシピエント)を選択する。

3.その他

基礎疾患、重症度などによる医学的緊急度は、将来考慮されるべきである。

また、この基準は、実績を踏まえて見直しを行う必要がある。

(注1) 当該移植希望者(レシピエント)は必ずしも両肺移植を受ける必要はない。

(注2) 2(4)1)③の2項の場合に限り、待機時間よりも術式を優先し、待機時間の長い第1術式に係る片肺移植希望者(レシピエント)よりも第1術式に係る両肺移植希望者(レシピエント)が優先される。

心肺同時移植希望者(レシピエント)選択基準

1.適合条件

(1) ABO式血液型

ABO式血液型の一致(identica1)だけでなく、適合(compatible)の待機者も候補者として考慮する。

(2) 体重(サイズ)

体重差は-20%~30%であることが望ましい。

ただし、移植希望者(レシピエント)が小児である場合は、この限りでない。

(3) 肺の大きさ

予測VCD注1)/予測VCR注2)×100の値(%)で判断する。

1) 片肺移植の場合 70~130%

2) 両肺移植の場合 70~130%

注1) 予測VCD:臓器提供者(ドナー)の予測肺活量

注2) 予測VCR:移植希望者(レシピエント)の予測肺活量

予測肺活量の計算式

(男性) 予測肺活量=(27.63―0.112×年齢)×身長(cm)

(女性) 予測肺活量=(21.78―0.101×年齢)×身長(cm)

(4) 前感作抗体

リンパ球直接交差試験(ダイレクト・クロスマッチテスト)を実施し、抗T細胞抗体が陰性であることを確認する。

パネルテストが陰性の場合、リンパ球直接交差試験(ダイレクト・クロスマッチテスト)は省略することができる。

(5) CMV抗体

CMV抗体陰性の移植希望者(レシピエント)に対しては、CMV抗体陰性の臓器提供者(ドナー)が望ましい。

(6) HLA型

当面、選択基準にしないが、必ず検査し、登録する。

2.優先順位

適合条件に合致する移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合には、優先順位は、以下の順に勘案して決定する。

(1) 虚血許容時間

虚血許容時間を最優先する。臓器提供者(ドナー)の心肺を摘出してから4時間以内に血流再開することを第一条件とする。

(2) 心臓移植希望者(レシピエント)選択基準で選ばれた移植希望者(レシピエント)が心肺同時移植の待機者である場合であって、かつ、臓器提供者(ドナー)から心臓及び両肺の提供があった場合には、当該待機者が肺移植待機リストで下位であっても、当該待機者に優先的に心臓及び両肺を同時に配分する。

(3) 肺移植希望者(レシピエント)選択基準で選ばれた移植希望者(レシピエント)が心肺同時移植の待機者である場合であって、かつ、臓器提供者(ドナー)から心臓及び両肺の提供があった場合には、当該待機者が心臓移植待機リストで下位であっても、当該待機者に優先的に心臓及び両肺を同時に配分する。

(4) 心臓移植希望者(レシピエント)選択基準及び肺移植希望者(レシピエント)選択基準で選択された待機者が別人であり共に心肺同時移植を希望している場合であって、かつ、臓器提供者から心臓及び両肺の提供があった場合には、

① ABO式血液型が一致(identica1)する者を適合(compatible)する者より優先し、

② ①の条件が同一の移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合は、心臓移植希望者(レシピエント)選択基準における医学的緊急度の高い者を優先し、

③ ①②の条件が同一の移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合には、心臓移植希望者(レシピエント)選択基準の医学的緊急度Status1の待機期間が長い者を優先し、

④ ①~③の条件が同一の移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合には、登録日からの延べ日数の長い者を優先する。

(5) 心臓又は肺の移植希望者(レシピエント)において、第1順位として選択された移植希望者(レシピエント)が心肺同時移植の待機者であっても、臓器提供者(ドナー)から心臓及び両肺の提供を受けられない場合は、心臓又は肺の単独移植希望者(レシピエント)のうちで最も優先順位が高いものを選択する。

3.その他

医学的な理由により心臓移植希望者(レシピエント)選択基準における医学的緊急度がStatus3になった場合、肺移植希望者(レシピエント)の待機リストを「待機inactive」とする。

(附則)

1.心肺同時移植希望者(レシピエント)は、心臓移植希望者(レシピエント)のリスト及び肺移植希望者(レシピエント)のリストの両方に登録される。

2.心肺同時移植希望者(レシピエント)の心臓又は肺に係る待機期間については、既に心臓移植希望者(レシピエント)又は肺移植希望者(レシピエント)のリストに登録されている患者が術式を心肺同時移植に変更する場合には、心臓又は肺のうち、既に登録されているリストに係る待機日数は変更前の当該日数も含めて計算することとし、新規に登録されたリストに係る待機日数は新規に登録した以後の日数を計算することとする。

(参考)

待機inactive制度について

1.概要

○ 移植希望者(レシピエント)の容態が落ち着いており、当面の間、移植を受ける意思がない場合に、(社)日本臓器移植ネットワーク(以下「ネットワーク」という。)にその旨を事前に報告しておき、一時的に臓器あっせんの対象から除外する。

2.具体的な手順

○ 患者と主治医との話し合いの結果、移植希望者(レシピエント)に当面の間移植を受ける意思がないことが確認された場合、各移植施設のネットワーク登録医師から、ネットワークへ書面により連絡する。

○ ネットワークは、移植施設に対して、当該移植希望者(レシピエント)を「待機inactive制度」の対象とした旨の連絡を行う。

○ また、移植希望者(レシピエント)が再度移植を希望した場合、各移植施設のネットワーク登録医師から、ネットワークへ書面により連絡する。

○ この場合についても、ネットワークは、移植施設に対して、当該移植希望者(レシピエント)を「待機inactive制度」の対象から外した旨の連絡を行う。

○ なお、「待機inactive制度」を利用している期間も、移植希望者(レシピエント)の待機期間の対象となる。

肝臓移植希望者(レシピエント)選択基準

1.適合条件

(1) ABO式血液型

ABO式血液型の一致(identical)だけでなく、適合(compatible)の待機者も候補者として考慮する。

(2) 前感作抗体

当面、選択基準にしないが、必ず検査し、登録する。

(3) HLA型

当面、選択基準にしないが、必ず検査し、登録する。

(4) 搬送時間(虚血許容時間)

臓器提供者(ドナー)の肝臓を摘出してから12時間以内に血流再開できること。

2.優先順位

(1) 医学的緊急性

予測余命が1ヶ月以内

9点

予測余命が1ヶ月~6ヶ月以内

6点

予測余命が6ヶ月~1年以内

3点

予測余命が1年を超えるもの

1点

ただし、先天性肝・胆道疾患及び先天性代謝異常症については、肝臓移植が治療的意義を持つ時期及び患者の日常生活に障害が発生している状態を考慮の上、上表に規定する点数のいずれかを用いることがある。

(2) ABO式血液型

ABO式血液型が一致

1.5点

ABO式血液型が適合

1.0点

3.具体的選択法

移植希望者(レシピエント)の選択順位については、2.の(1)、(2)の合計点数が高い順とする。ただし、これらの条件が同一の移植希望者(レシピエント)が複数存在した場合は、待機期間の長い者を優先する。

4.その他

ABO式血液型の取扱いや優先順位の点数付け等、当基準全般については、今後の移植医療の定着及び移植実績の評価を踏まえ、最低毎年1回は見直すこととする。

また、将来ネットワークが整備され、組織的にも機能的にも十分機能した場合は、改めてブロックを考慮した優先順位を検討することが必要である。

膵臓移植希望者(レシピエント)選択基準

1.適合条件

(1) ABO式血液型

ABO式血液型の一致(identica1)だけでなく、適合(compatib1e)の待機者も候補者として考慮する。

(2) リンパ球直接交差試験(全リンパ球又はTリンパ球)陰性

2.優先順位

(1) ABO式血液型

ABO式血液型の一致(identica1)する者を適合(compatible)する者より優先する。

(2) HLA型の適合度

DR座の適合とA座及びB座の適合により、腎移植における順位と同一の順位とする。

(3) 膵臓移植(腎移植後膵臓移植、膵単独移植)と膵腎同時移植

(1)、(2)の条件が同一の移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合は、

① 臓器提供者(ドナー)から膵臓及び腎(1腎の場合を含む)の提供があった場合には、膵腎同時移植、腎移植後膵臓移植、膵単独移植の順に優先される。ただし、膵腎同時移植希望者(レシピエント)が優先されるのは、DR座の1match以上のHLA型の適合がある場合に限る。

② ①以外の場合には、膵腎同時移植以外の希望者について、腎移植後膵臓移植、膵単独移植の順に優先される。

③ ①により、膵腎同時移植希望者(レシピエント)が選定されたものの、臓器摘出手術の開始以降に膵臓が移植に適さないことが判明した場合には、腎臓移植希望者(レシピエント)の選択をやり直すことなく、膵臓移植希望者(レシピエント)選択基準で選ばれた当該膵腎同時移植希望者(レシピエント)に腎臓のみを配分する。

(4) 待機時間

上記(1)~(3)の条件が同一の移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合は、待機期間の長い者を優先する。

(5) 搬送時間

上記(1)~(4)の条件が同一の移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合は、臓器搬送に要する時間がより短く見込まれる者を優先する。

小腸移植希望者(レシピエント)選択基準

1.適合条件

(1) ABO式血液型

ABO式血液型の一致(identica1)だけでなく、適合(compatible)の移植希望者(レシピエント)も候補者として考慮する。

(2) 搬送時間

臓器提供者(ドナー)の小腸を摘出してから血流再開まで12時間以内で行えること。

(3) 移植希望者(レシピエント)について

基礎疾患が良性疾患であること。

(4) CMV抗体

CMV抗体陰性の移植希望者(レシピエント)に対しては、CMV抗体陰性の臓器提供者(ドナー)が望ましい。

(5) 前感作抗体及びHLA型

当面、選択基準にしないが、必ず検索し、登録する。

2.優先順位

適合条件に合致した移植希望者(レシピエント)に対して、以下の項目に従って優先順位をつける。

(1) 医学的緊急度(Status1を最優先とし、次にStatus2、Status3の順に優先する。)

Status1:中心静脈栄養法の維持が不可能になった状態

Status2:血清ビリルビン値の高値持続と、肝臓障害が進行しつつある状態

Status3:中心静脈栄養法の維持が不可能になりつつある状態

(2) ABO式血液型

同一緊急度に移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合は、ABO式血液型の一致を優先する。

(3) 待機期間

以上の条件が全て同一の移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合は、待機期間の長い者を優先する。

別紙

「クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑い」の取扱い

(1) 臓器あっせん機関は、臓器提供施設の医師に臓器提供者がクロイツフェルト・ヤコブ病に感染した可能性が認められるかどうかを確認し、その可能性が認められるとされた場合には、当該提供者の臓器を移植に用いない。

* クロイツフェルト・ヤコブ病に感染した可能性とは、病理診断による確定診断だけではなく、臨床診断を含む(参考)。

(2) 臓器あっせん機関は、臓器提供施設の医師等に協力を求め、以下に示すような、臓器提供者の病歴、海外渡航歴及びその血縁者の病歴等を詳細に把握するよう努め、下記①~⑥に該当する提供者からの臓器の提供は見合わせること。

① ヒト成長ホルモンの投与を受けた者

② 硬膜移植歴がある者

③ 角膜移植歴がある者

④ クロイツフェルト・ヤコブ病およびその類縁疾患の家族歴がある者

⑤ クロイツフェルト・ヤコブ病およびその類縁疾患と医師に言われたことがある者

⑥ 1980年以降、英国、アイルランド、スイス、スペイン、ドイツ、フランス、ポルトガルの7カ国に通算6ヶ月以上の滞在歴を有する者

(3) 臓器あっせん機関には、移植医が患者に対して移植に伴う感染のリスクを十分説明することを促すこと。

<参考>クロイツフェルト・ヤコブ病に感染した可能性

○ クロイツフェルト・ヤコブ病には、スクリーニング方法はない。このため、臓器提供者(ドナー)に対する問診を徹底して行い、クロイツフェルト・ヤコブ病の病因プリオンに感染した可能性があるかどうかを慎重に判断する必要がある。

○ クロイツフェルト・ヤコブ病の感染した可能性は、以下を参考に行うこととする。なお、詳細については、「難病の診断と治療指針」(六法出版社)を参照されたい。

<確定診断>

基本的には病理診断であるが、現在では異常プリオン蛋白の証明が必要である。

異常プリオン蛋白の証明には、免疫染色法またはウエスタンブロット法で行う。

<臨床診断>

・確実例:特徴的な病理所見を有する例で、ウエスタンブロット法や免疫染色法で脳に異常プリオン蛋白の検出しえたもの。

・ほぼ確実例:病理所見がない症例で、進行性痴呆を示し、脳波でPSDを認める。さらに、ミオクローヌス、錐体路・錐体外路障害、小脳症状、視覚異常、無動・無言状態のうち2項目以上を示す症例。

・疑い例:ほぼ確実例と同じ臨床症状を呈するが、PSDを欠く症例。